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財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館) https://blog.goo.ne.jp/avantgarde-october

「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!

財部剣人
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2010/03/19

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  • 『マーメイドクロニクルズ第二部 吸血鬼ドラキュラの娘が四人の魔女たちと戦う刻』の予約が開始されました

    財部剣人です!ついに『マーメイドクロニクルズ第二部吸血鬼ドラキュラの娘が四人の魔女たちと戦う刻』の予約が開始されました〜。2021年9月14日発売予定です。きしもとあや画伯がとても素敵なマクミラの表紙を描いてくれました。乞うご期待!https://www.amazon.co.jp/gp/product/4255012423?pf_rd_r=J45SZMPTHX6Y4NHPR6XE&pf_rd_p=3a18ae70-29cd-40df-b252-334783771910&pd_rd_r=9a438f80-6d71-41cf-ac04-926a29c47279&pd_rd_w=9BMmq&pd_rd_wg=eNG1t&ref_=pd_gw_unkランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!にほんブログ村小...『マーメイドクロニクルズ第二部吸血鬼ドラキュラの娘が四人の魔女たちと戦う刻』の予約が開始されました

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜エピローグ バックナンバー

    語り部の財部剣人です。ついに第二部完結しました!最後まで読んでいただいた方々、本当にご支援ありがとうございました。よろしければ第一部は書籍化されているので、こちらもお読みください。第三部でまたお会いしましょう!「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版序章〜エピローグバックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 エピローグ 神官マクミラの告白(再編集版)

    こうして人間界に来てから二十年目のわたしのクリスマスが終わった。冥界時代には、誰も愛さず誰からも愛されなかったわたしが、愛に人生をかけるとは夢にも思わなかった。もっとも生きながら死んでいるヴァンパイアの生き様を、仮に「人生」と呼べるのならばだが。おろかだ。まるで、わたしがおろかだと嫌っていた人間だ。これまでは、キル、カル、ルルだけが側にいてくればよいと思っていたが・・・・・・四つの部屋の闘いの後のことも、話しておこう。兄上たちと妹は、フェスティバルの後、冥界に帰って行った。アストロラーベ兄さんは、人間界での体験がよほど楽しかったようだ。お前がうらやましいなどと、おかしなことを言っていた。美丈夫に生まれ変わったスカルラーベ兄さんは、蛇姫ライムとの結婚を決めた。さぞかし強くて、美しい子供たちが生まれるだろう。ただし...マーメイドクロニクルズ第二部エピローグ神官マクミラの告白(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−9 ドルガの最後?(再編集版)

    「気持ちだけもらっておくとしよう。自ら命を絶つは、死を最上の体験と位置づける死の神の一族にとって最大の罪。それゆえ、よみがえることはできなくなる。我が望むのは、『不死身の悪魔姫』の伝説のみじゃ。伝説になってしまえば、未来永劫に名誉を得ることがかなう。人間共はわかっていないようだが、死はけっして恐れるべきものではない。意味のある死を生きるため、生のすべてはあるのじゃ。無意味な生にしがみつくことなどに何の意味がある?それに我が取り付いた夏海という娘、精神力がなかなか強い。すべてを取り込んだつもりが、完全には取り込めなかったようだ。日に日に息子トミーを思う気持ちが我の心中にも育ちつつある。フン、くだらない母性愛やらと笑うがよい。さあ、もうおしゃべりは終わりだ」ドルガが上空に向かって叫んだ。ターナートーース!暗雲が立ち...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−9ドルガの最後?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−8 ドルガの約束(再編集版)

    「四番目の部屋の闘いの褒美は、我ら四人の自由であったな」「その通りだ」「我の不戦勝を認めるなら、ここで闘いをやめてもよい。悪い話ではあるまい。知っているぞ、666分間のタイムリミットも。今、闘いをやめれば時空変容ミラージュの儀式を解くにはちょうどよいではないか。堕天使ダニエルは、分裂寸前。マクミラは、命がけで最後の賭に出ようとしている。無敵の悪魔姫の伝説を知るものなら、二人に万に一つの勝ち目もないことを知っておろう」「最初の三つの部屋の勝負は、こちらの勝利か引き分けになっている。あえてお前たちの自由を奪うために、危険をおかす必要性はたしかにもうない」マクミラがおこりだす。「同情などまっぴらだ。正々堂々闘わせろ」「聞き分けのない女だな。我は死の神の娘。死を軽々しく扱う奴には、一番腹が立つ。お前たちは、たった一度き...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−8ドルガの約束(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−7 ドルガの提案(再編集版)

    気づいた時には、本性であるレッド・ドラゴンに変身した父トッドの口から、火の川ピュリプレゲドンの業火が吐き出されていた。炎は、彼女の身体を着実に焦がしていった。まず美しい翼が焼けただれ、髪の毛が燃えさかり、着飾った服が燃え上がり、皮が剥け、肉が焼けこげ、最後には骨まで炎に溶けていった。しかし、ドルガは、生まれてからこれほどの陶酔を感じたことはなかった。死とは、これほどまでに甘美なのか。これほどまでに、自らを解き放ってくれるのか。これほどまでに、父の愛を感じることができるのか。最後に目の前にあったのは、怒りが解けて死の神の姿に戻って自分の娘を殺したことに茫然自失とするトッドの顔であった。それでもトッドは、ドルガを許さなかった。理由は、父を殺そうとしたためではなく、不意打ちをくわせたためであった。卑怯と非難されるとは...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−7ドルガの提案(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−6 ドルガの回想(再編集版)

    マクミラが、一瞬沈黙した後、言った。「今、わかった。ずっと考えていた問いの答えが。プルートゥは、素晴らしいことをしてくれたのだ。わたしを不死者にしなかった。偽りの人生を不本意に生きるよりも、偽りのない愛に死にたい。もうゲームのコマとして生きるのはやめだ。わたしは、これから生きたいように生き、死にたいように死ぬ」マクミラが宣言した。「ドルガ、勝負だ!」「冥界時代の万分の一のすごみもないお前が勝てると思っているのか?ピュリプレゲドン・フィップ程度の技では、蚊に刺されたほどにも感じぬ」「リギスのまねごと、ピュリプレゲドン・フィップのようなねむたい技を使う気はない。数段進化したマキシマム・ピュリプレゲドンでお相手しよう」「なんだ、それは?」「自らを炎の化身として相手を焼き殺す技だ」「ムダだ」「なに?」「ムダと言っている...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−6ドルガの回想(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−5 分離するダニエル(再編集版)

    すべてを燃やし尽くす蒼き炎がすべてを覆い尽くす氷に変わり猛々しき白骨が愛に包まれて石に変わり冥界の神官が一人の人間の女に変わる時巨大な合わせ鏡が割れて太古の蛇がよみがえり新たなる終わりが始まりを告げてすべての神々のゲームのルールが変わるここまでは、アストロラーベの思い通り進んでいる。時空変容ミラージュの儀式によって起きた「すべてを燃やし尽くす蒼き炎が」、第一の部屋で「すべてを覆い尽くす氷に変わり」ナオミが氷天使メギリヌに勝利を収めた。第二の部屋では、「猛々しき白骨が愛に包まれて石に変わる時」、スカルラーベが蛇姫ライムと引き分けた。だが、第三の部屋では、アストロラーベが唄姫リギスに辛勝したものの「冥界の神官が一人の女に変わる時」などなかったではないか?だが、「巨大な合わせ鏡が割れて」しまっても「太古の蛇はよみがえ...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−5分離するダニエル(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−4 ドルガの告白(再編集版)

    「お主たちの言葉で言えば、そうなるのかもしれぬ。当時は、9つの魂のことは知らなかったから・・・・・・我ら一族から見れば、死こそ究極の安楽であり憩いの場なのだ。真意がわからなかった父は襲われた時、本気でやり返してきた。最初の死を迎えた我は、悪魔姫ドルガとして生まれ変わった。それからのことは、お主の方がくわしいであろう」「なるほど。死の神トッド様が、お主のことを黙して語らぬわけだ」「同情など犬も食わぬぞ。最後の闘いを始めようではないか」般若の形相になったドルガが、スッと飛び立った。暴風雨をもろともしないどころか、暴風雨が友人であるかのようなすずしい顔である。ダニエルも、セラフィムが持つ6枚の羽を広げてスッと飛び上がる。ただし羽は金色ではなく暗黒色。こちらも暴風雨を苦にしていない。二人の回りの暴風雨が、一気に激しくな...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−4ドルガの告白(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−3 ナインライヴス(再編集版)

    伝説の魔人の強さを知るマクミラがつぶやいた。「おどろいた。魔神スネールさえ、異次元空間へ送り込んでしまうとは・・・・・・」ドルガが振り向いた。「よいか、ここまでは想定内。お前にすがるスネール様のなさけない姿を見ることで、汚れた世界で落ちぶれた我の力は完全復活した。貴様の愛しいダニエルなど、ひとひねりにしてくれる」普段でも青白いマクミラの顔が、蒼白になった。精神世界に来て以来、頭痛の止まらないダニエルが絞り出すように言った。「俺は、そんなに簡単にやられるつもりはないぜ」「さあ、嵐が吹き荒れる部屋へ移動だ!」アストロラーベが宣言する。嵐の吹き荒れる部屋は、立っていられないほどの暴風雨だった。例によってアストロラーベが、立会人たちのためにセイフティゾーンを作る。アストロラーベが語りかけた。「死の神トッドの娘ドルガよ。...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−3ナインライヴス(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−1 魔神スネール再臨(再編集版)

    「ドルガねえちゃん、何するんだ?アポロノミカンは、魔人をつかまえるためにボクが持ってきたんじゃないか」「スネール様は、降臨する前にマクミラに魂を奪われていた。アポロノミカンを見せて、新魔人として生まれ変わっていただくのだ」「ま、待つんだ!アポロノミカンを人間以外のものが見せたことはまだない。何が起こるかは、誰にもわからないんだよ」「さかさまジョージ、お前らしくもない。何が起こるかわからないからこそ、やってみるべきではないか?」ウッ、さかさまジョージがうなった。ドルガの鋭い爪が特殊ガラスケースを砕く。だが次の瞬間、アポロノミカンが圧倒的思念で語りかけてきた。(死の神の娘よ、今、儂とお主だけは異なった時間帯にいる。ちょっと話をしようではないか?)夏海と合体したドルガが、声に出して答える。「何ごとだ?『神導書』は『悪...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−1魔神スネール再臨(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜第12章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版序章〜第12章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−9 さかさまジョージの魔術(再編集版)

    マクミラ陣営がアストロラーベの勝利にホッとしていると、声が聞こえた。「冥界の軍師もヤキが回ったか。狙いはお前ではない。回りを見ろ!」皆が見ると、数千枚の鏡がドロドロに溶けていた。ケケケッケッケ!甲高い笑い声の方を見ると、さかさまジョージが飛び出した。「打ち合わせをしたのが自分たちだけと思い込むなんてバカじゃない?マクミラねえちゃんが作らせた4つのテーマパーク最後の建物、アポロノミカンランドでは、魔術の研究もしていたのさ。さあ、ここで巨大合わせ鏡を作らせてもらうよ。アストロラーベ兄ちゃん、一回は見届け人も助っ人に入れる約束だね。今は人間時間で真夜中の12時。合わせ鏡を作れば、魔神スネールを呼び出せるのさ」「そんな魔術は聞いたことがない」マクミラが異議を唱えた。「本来、無限に広がる虚無空間に映った鏡から鏡を渡る悪魔...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−9さかさまジョージの魔術(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−8 スーパー・バックドラフト(再編集版)

    「ムダだ・・・・・・スカルラーベ将軍の力の源泉は怒りだ。単なる現身の熱では、サラマンダーの血を引く私を倒すことはできないと言ったではないか」「軍師殿、狙いは兄上ご自身ではござらぬ。槍をご覧くだされ」皆が槍をのぞき込むと、沸騰しないはずの炎の川ピュリプレゲドンの水が蒸発してなくなっている。「さあ、どうされます?これで槍の力は残り2つ・・・・・・」「楽しませてくれるな」アストロラーベが再びフン、と力を込めると、槍に新たな水が満ちる。「まさかここで我が技を自身に使うことになるとは・・・・・・」落ち着きをもたらす「癒しの物質セロトニン」と恍惚感をもたらす「脳内麻薬エンドルフィン」が大量に含まれているステュクスの水が槍の中に現れた。それが身体に入ると、落ち着きと恍惚感に引き裂かれた味方は痛みを感じなくなる。アストロラーベ...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−8スーパー・バックドラフト(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−5 アストロラーベの回想(再編集版)

    「やはり責任を感じていたか」アストロラーベが言った。「シュルド殿が叱責を受けたのは、お主のせいではない。シュルド殿からは娘を救ってやってくれと頼まれているのだ。闘いを止めて、降参するつもりはないか、リギスよ」「おろかでありんす・・・・・・自由を求める歌姫に道理を説くとは。冥界の貴公子ではなく、冥界の詭弁士とでも名前を変えてはどうでありんすか?」「挨拶だな。よかろう。久々の闘い、もしやこれが最後になるやも知れぬ。道理を説くのは、勝負の後とすべきであったな」はたして何百年ぶりだろうか、戦士として闘うのは?不安と期待感で、全身の体毛が逆立ってくるのがわかった。同時に、リギスの魔力の強さを感じて、心の警戒警報が大きな音を立てて鳴りだしていた。しかし・・・・・・不思議だ。おそろしいほどの闘気を感じながら、殺気を感じない。...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−5アストロラーベの回想(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−4 唄にのせた真実(再編集版)

    ガシャーン!リギスが歌い終わった瞬間、天が裂けて土煙にガラスの破片が降ってきた。破片は、あっというまに数千の鏡となって散らばった。「アストロラーベ。土煙空間で有利に勝負を展開するつもりだったのでありんしょうが、こちらも鏡地獄で対応させていただくでありんす」「よいのか?鏡はお主の本当の心も映してしまうかも知れぬぞ」「どういう意味でありんすか?」「お主が『悩ますもの』になったのは、父であられる責任の神シュルド殿へのコンプレックスであろう。もう呪縛から解き放たれても、よい頃ではないか?」「大きなお世話でありんす。冥界の貴公子と呼ばれても、未だに振られたマーメイドに操を立てている軟弱者に言われたくはないでありんす」「挨拶だな。私のことはなんと思われてもかまわないが、お主が『悩ますもの』になった由来には興味がある。お主の...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−4唄にのせた真実(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−3 リギスの戯れ歌(再編集版)

    実は、冥界の川の水には膨大な脳内物質が含まれていたのであった。ピュリプレゲドンの水の成分は、恐怖を感じる「闘争か逃走の物質ノルアドレナリン」と怒りを起こす「興奮物質アドレナリン」。その水が身体に入った相手は、恐怖と怒りに引き裂かれて燃え上がる。ステュクスの水には、落ち着きをもたらす「癒しの物質セロトニン」と恍惚感をもたらす「脳内麻薬エンドルフィン」が大量に含まれている。その水が身体に入ると、落ち着きと恍惚感に引き裂かれた味方は痛みを感じなくなった。アケロンの水には、ひらめきを起こす「記憶と学習の物質アセチルコリン」と「不安と恐怖を換気する物質ノンアドレナリン」が含まれている。その水が身体に入ると、ひらめきと恐怖に引き裂かれて相手は命が燃え尽きた。レテの水には眠気の「睡眠物質メラトニン」と快感を引き起こす「幸福物...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−3リギスの戯れ歌(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−2 責任の神の娘(再編集版)

    「第三の部屋へ移動しよう」アストロラーベが、土煙あふれる部屋に皆を誘う。「誰が私の相手をしてくれるのだ?」ドルガが答える。「冥界最高のネクロマンサーで『あやつるもの』アストロラーベには、冥界の道化師で『悩ますもの』リギスとの魔術対決と行こう。準備はよいか?」「待ちかねていたでありんす。冥界時代の力が使えぬマクミラより、アストロラーベは数倍歯ごたえある相手。リギス一世一代の歌声をお聞かせするでありんす」責任の神シュルドの娘リギスは、その竪琴の音色が神々や神獣さえ虜にしたオルフェウスの遠縁。オルフェウスには、アポロンの落とし子という噂があり、アストロラーベにとってもたやすい相手ではなかった。全員が部屋に入ると、目を開けていられないほどの土煙が荒れ狂っていた。「見届け人がこれでは困ろう」アストロラーベが右の掌を向ける...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−2責任の神の娘(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−1 ライムとスカルラーベの闘いの果て(再編集版)

    石になったスカルラーベが、ゆっくりとだが動いていた。「お前は不死身を呪いと考えているようだが、俺などずっと生きながら死んでいた。というよりも死にながら生きていたというか」喋りにくそうにそう言うと、身構えた。「元々、俺は骸骨の鎧の方が本体で、筋肉は見せかけだった。それが石に変わろうと、どれだけの違いがあるのだ。さあ、二回戦といこうか」大鎌を振り回そうとしたスカルラーベが、ふと気がついた。蛇姫ライムの顔が光っていた。涙が彼女の顔を覆っていたせいだった。「オオ、ついに見つけた。変身後の顔を見ても死なせずにすむ相手を・・・・・・」そう言うと、ライムはスカルラーベに抱きついた。「誰にも殺させない、スカルラーベ殿。嫌われてもよい。我が、これからずっとあなたを守る!」ライムの涙が、石になったスカルラーベの鎧にポタポタとかかっ...マーメイドクロニクルズ第二部第12章−1ライムとスカルラーベの闘いの果て(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜第11章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版序章〜第11章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−9 ライムの受けた呪い(再編集版)

    スカルラーベが身構えた。まるで目の前の空気をつかもうとするかのように、交差して突きだしたスカルラーベの両手がブルブルと震えている。だんだんと、その爪が青白い光を帯びてゆく。すると巨大な岩でもひっかくように後ろ側へ、その爪が今度はゆっくり左右に開きながら引っ張られていく。ムッ、まずい。アストロラーベは、呪文をつぶやくと立会人たちを守るための思念バリアを張った。彼らを囲む半透明の幕が、ギリギリのタイミングで現れた。次の瞬間、スカルラーベが叫ぶと引っ張られていた腕の掌を返して目の前の空気を前方上空へ引き裂いた。秘技スーパー・バックドラフト!たちまち回りの空気が吸い込まれるようになくなって、ライムの姿が真空中に囚われたように見えた。次に、ライムを中心として強大なコロナが誕生した。バックドラフトは、火事現場で見られる現象...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−9ライムの受けた呪い(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−8 さあ、奴らの罪を数えろ!(再編集版)

    「叔母メデューサは、醜くなった姿を見られるくらいなら、死んだ方がマシだと自分自身で石になるための鏡を肌身離さず持っていたくらいなのだ。さあ、奴らの罪を数えろ、スカル仮面!自らの野心のために何の力もない老婆三人を脅迫して、罪のないメデューサを自らの勝手な理屈で殺したペスセウス。もてあそんだ恋人を救おうともせず、見殺しにしたネプチュヌス。自分たちの気まぐれで罪を与えたのみならず、共犯に手を染めた他の神々。死者を悼むどころか、自らの武器として恥ずかしくもなくメデューサの顔を矛にはめ込み悦に入っていた軍神アテネ。自らの猜疑心の虜となってメデューサを殺しておいて、勝手におそろしい化け物として語り継いだものたち。さあ、誰が一番罪深いか、数えてみろ!だが、呪いは叔母メデューサの死によっても終わらなかったのだ。ゴルゴン一族は、...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−8さあ、奴らの罪を数えろ!(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−7 蛇姫ライムの告白(再編集版)

    「何か気にさわったか?敵を倒すために、醜い顔になる。だが、勝利とはつねに何かと引き替えではないのか」「わかったようなことを・・・・・・気に入らなかったのは、醜いうんぬんというセリフではない。どうせ生まれついたからには、どこかでいつか死ぬのが定めという貴様が軽々しく言ったセリフの方じゃ。冥土の土産に言って聞かせてやろう。おっと、貴様は元々冥土から来た存在。死ねばどこに行くのは、死んだ後に貴様の魂に聞くとするか。よいか、あまり知られていないことだが、我が母エウリュアレと叔母ステンノは、メデューサが首をはねられて軍神アテナの盾にはめ込まれてから、美しい堕天使として降臨を許されたのだ。ふん、神々にも多少は、やましい気持ちがあったと見える。そして母は、闘いの神カンフと契りを結び我が生まれた。だが、母と伯母たちにかけられた...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−7蛇姫ライムの告白(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−6 不死身の蛇姫ライム(再編集版)

    いっぺんに数十匹の毒蛇が、スカルラーベに襲いかかった。普通なら、相手がもだえ苦しむのを見ながら勝利の舞を踊るライムであったが、ドクロでできた鎧に阻まれて蛇の鋭い牙もまったく歯が立たない。「なんだ、それは?蚊にさされたほどにも感じぬぞ。それでは、こちらからも行かせてもらうとするか」ブーーン!ものすごい音を立てて、冥界一の切れ味を持つ大鎌がライムの首をとばした。口ほどにもない。あっさり勝負アリか。そう思った瞬間、スカルラーベは、鎌に目を閉じたライムの生首が乗っかっているのに気づいた。鎌の上に乗ったライムの首の眼が開いて、ニッコリ微笑んだ。「口ほどにもない。これで勝負アリとお思いか?」スカルラーベの目の前でライムの髪から生み出された毒蛇たちが、スカルラーベの鎧の隙間から筋肉に向かってうねうねと動き出した。だが、スカル...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−6不死身の蛇姫ライム(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−5 第二の部屋(再編集版)

    全員が、虹のうずまく部屋に入った。あまりの光の流れのすさまじさに、何が目の前にあるのかわからない。これもアストロラーベの作戦で、光の渦でほとんど輪郭しかわからない状態であれば、蛇姫ライムの魔眼によって自陣営が石に変えられてしまう心配もない。もともと盲目のマクミラは心眼ですべてを見切っていたが、どうにもアポロノミカンの予言が気になっていた。すべてを燃やし尽くす蒼き炎がすべてを覆い尽くす氷に変わり猛々しき白骨が愛に包まれて石に変わり冥界の神官が一人の人間の女に変わる時巨大な合わせ鏡が割れて太古の蛇がよみがえり新たなる終わりが始まりを告げてすべての神々のゲームのルールが変わるここまでは、予言通り。さすが天才軍師だけあってアストロラーベの読みによって、最悪と思われた氷天使メギリヌとマーメイドのナオミの勝負は、こちらの勝...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−5第二の部屋(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−4 氷と水(再編集版)

    神獣同士にだけ通じるメッセージで、シンガパウムが何かをジュニペロスに伝えた。三番目の首の右目を傷つけられてぐったりしていた魔犬ジュニベロスがすっくと起き上がった。向かってくる氷柱を砕き続けていたシンガパウムが、自分が乗っていた竜巻に沈み込んだ。同時に、向かってきた数本の氷柱が竜巻の中に吸い込まれた。スキをつかれたメギリヌに、巨大な竜巻から、手に氷柱を持ったシンガパウムが飛び出した。グサリと二本の氷柱がメギリヌの羽の中央に突き刺さった。そのままメギリヌの裏に回ると、羽交い締めにして動きを封じる。その時、ジュニベロスは、冥界でメギリヌに右目をつぶされた父ケルベロスがしたように、足下に落ちていた右目をガリガリと食べた。アオーーン!一泣きすると、ジャンプして動きの取れないメギリヌののど笛に食らいついた。氷天使メギリヌに...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−4氷と水(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−3 最初の闘いの決着(再編集版)

    「たしかに・・・・・・闘いにあたって道理を説くなどとは、柄にもないことをした。メギリヌよ、闘って敗れれば、我らが軍門に下る約束は忘れておらぬであろうな?闘って雌雄を決する方が先であった」「それでこそシンガパウム。そちらこそ、我が勝てばアポロノミカンをいただくことを忘れてはおらぬであろうな」「言うまでもない」ガオーーン!シンガパウムが、咆哮を上げて伸び上がると、一気に身の丈が数メートルにもなったかのように感じた。いきなり方向転換するとそびえ立つ巨大な氷柱に、一撃を加えた。その一撃は、氷柱に固まりきっていない土壁かのようにめり込んでいった。バランスを保っていた氷柱が、メキメキ音を立てると倒れた。崩れた氷柱は、かき氷状になると、一気に轟音を立てて竜巻になった。シンガパウムは振りかぶると、竜巻を別の氷柱に投げつけるしぐ...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−3最初の闘いの決着(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−2 氷天使メギリヌの告白(再編集版)

    「我が父レイデンは、冥主プルートゥより人間を苦しませる役目を負っていた。不安、嫉妬、苦悩、悲しみ、ありとあらゆる苦しみを人間に与え続けた結果、だんだんと脳波共振現象によって、自分が人間に与えた苦しみに自分自身も苦しむようになっていった。そんな時。父は、日本と呼ばれる小さな島国の東北に立ち寄った際に、我が母である深雪に出会った。雪の精であった母の純白の姿は、いっさいのけがれを知らず、冷たいが内に熱い情熱を秘めていた。母は、苦しむ人間を見続けたために疲れ果ても、その責務から逃れることができない父に優しかった。やがて、母は我を身ごもった。しかし、母は産み落とす時に、我が持つ16枚の羽によって激しく傷つき、その命を失った。最初、母にうり二つだった我に父は愛情を注いでくれた。だが、だんだんと父の悩みの影響を受けて、羽の色...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−2氷天使メギリヌの告白(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−1 鬼神シンガパウム(再編集版)

    「夢ではない。私だ。シンガパウムだ」えっ・・・・・・ナオミの意識が、わずかに戻ってきた。「ネプチュヌス様から一度だけ降臨するご許可をいただいたのだ。寝ている時ではないぞ。見よ。お主を救うため、血しぶきをあげたケネスは死にかけている。早く片をつけて、私が体内に戻らなければ・・・・・・」えっ・・・・・・ナオミの目が開いた。「ここは精神世界なのだ。弱気になればつけ込まれる。落ち着いて考えれば、氷天使メギリヌといえども、絶対零度を使いこなすことなどできるものではない。お主は、足に突き刺さった黄金のステッキの冷たさと、氷天使の言葉によって魔術にかかっているだけなのだ。メギリヌは、悩みの神レイデンの娘。最大の能力は、相手を苦しめ悩ませて、闘いを有利に進めることだ。だが、マーメイドの血潮の流れをとめられるものなど、どこの世界...マーメイドクロニクルズ第二部第11章−1鬼神シンガパウム(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜第10章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版序章〜第10章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−9 最悪の組み合わせ?(再編集版)

    氷天使に対してマーメイド?普通に考えれば、最悪の組み合わせに近い。フロストキネシスによって水が凍らされてしまえば、マーメイドにとっては陸地で闘っているも同じ。実際、ここまでの闘いを見る限り、ナオミは苦戦している。ここは冥界最強の炎使いスカルラーベを当てるか、あるいはアストロラーベが軍師役に専念するならば、弱いとはいえサラマンダーの女王の血を引くマクミラでもよい。なんにしても、ここはパイロキネシスを持つものを当てるべきであった。しかし、四人の魔女相手のシミュレーションをしている時でも、アストロラーベは対戦相手の組み合わせは何も漏らしてはくれなかった。それでも、マクミラには確信があった。必ず軍師には、深い考えがあるはずだ。ここまでは、アポロノミカンの予言通りになっている。・・・・・・清らかなる魂と邪なる魂が出会う百...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−9最悪の組み合わせ?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−8 返り討ち(再編集版)

    心眼でものを見られるマクミラには視界がゼロになることなど、何のハンディにもならない。見ていて思った。マズイ。精神世界では、弱気になると相手のパワーが相対的にアップする。ナオミとジュニベロスが一瞬、強い寒風にひるんだ次の瞬間。メギリヌの黄金のステッキが飛んできた。グサッ。イヤな音を立てて、ジュニベロスの三番目の首の右目にステッキが突き刺さる。アォーン!あまりの痛みに耐えかねてジュニベロスが、叫び声を上げる。「血は争えないわね(Whatafamilyresemblance!)」メギリヌがうそぶく。「戻れ!」手元に戻ったステッキが、今度はナオミを襲う。グサッ。かろうじて致命傷は避けたが、左の太ももにステッキが突き刺さっている。黄金のステッキは、ナオミの真珠の鎧を破って刺さっており、真っ赤な血がしたたり落ちている。「と...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−8返り討ち(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−7 ナオミの復活(再編集版)

    めちゃくちゃに走ったのかと思われたが、いつの間にか五芒星形の傷跡が残っている。追われた振りをして、マンモス魔神を星の中央におびき寄せる。ハッ!飛び上がると、ヒビが入りかけた氷に乗ったマンモス魔神の上に飛び乗る。ミシミシと氷が裂けて、重みでマンモス魔神が雄叫びを上げながら沈んでいく。多勢に無勢の時の鉄則2「相手の欠点を利用せよ」。だが、ナオミも勢いあまってマンモス魔神と共に水中に沈んでいく。メギリヌが、再びオーケストラの指揮者のように手を動かして強大な氷柱を引き寄せると、ナオミが沈んだ部分にたたき込んだ。続いて、別の氷柱をたたきこんだ氷柱に組み合わせると強大な十字架が完成した。それはまるでナオミの墓碑銘のように、たたずんでいた。「口ほどにもない。まるで歯ごたえがないではないか」メギリヌがうそぶく。「氷の下で一生を...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−7ナオミの復活(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−6 ペンタグラム(再編集版)

    メギリヌが、オーケストラを指揮するように両手を高くかかげると、次に人差し指を左右に向けた。同時に、美しい16枚の羽が左右に広がった。マニフェスト・ディザスター!メギリヌが叫ぶと、氷がバキバキと音を立てて盛り上がり形を取っていく。気がつけば、ナオミは数体の氷魔神に囲まれていた。ざっと氷魔神たちの姿を確認すると、7体。フッ、アンラッキー・セブンか?いや、前回は7体のゾンビー・ソルジャーたちに勝利を収めているから、またラッキーセブンか。一匹目の魔神は、達磨のようにまん丸。二匹目の魔神は、ダイスのようにまっ四角。三匹目の魔神は、イカのようにとがった姿。四匹目の魔神は、ジャガーのように精悍な姿。五匹目の魔神は、まさかりそのもの。六匹目の魔神は、マンモスのような牙を持っていた。最後の魔神は、ロケット砲のような姿。その時、闘...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−6ペンタグラム(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 最終章−2 ドルガのチョイスはトラジック?(再編集版)

    「スネール様!」翼竜の羽ばたきのたびに小さい竜巻が起こるドルガが、アポロノミカンを差し出す。「こちらをご覧ください」左の鏡から右の鏡に移ろうとしていたスネールの目が、釘付けになった。グムオーーン!「オオ、スネール様が進化される・・・・・・」悪鬼の形相をした蛇が、巨大化、凶悪化し始めた。次にスネールの口から出た言葉は、ドルガの想定外だった。「マ、マ、マクミラ・・・・・・」「マクミラだと!?やはりアポロノミカンをもってしても、ダメか・・・・・・」「マクミラはどこじゃ?我は、マクミラを守るために人間界で待っておった。おお、愛しいマクミラよ。そこにおったか」マクミラが、ハスキーボイスで言い放つ。「魔人ともあろうものが、時と場所をわきまえろ。緊張感のない奴め。せっかく三つの部屋の闘いで場が盛り上がっていたのに、台無しでは...マーメイドクロニクルズ第二部最終章−2ドルガのチョイスはトラジック?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−5 最初の部屋(再編集版)

    「俺の身体の奥底から、声が聞こえるんだ。ナオミ、『いたぶるもの』をなめてかかるのではない」。一瞬、なぜかシンガパウムのオーラを感じてナオミは何も言えなくなった。「さあ、氷天使が待ちくたびれているぜ。最初のドアを開けてもらおう」部屋に入ってから、気づくと全員が空中に浮かんでいた。目の前に広がるのは、不思議な風景だった。ふつう水は高きところから、低きに流れる。だが、ここでは渦巻く水は低きから高きに流れるかと思えば、途中で横に流れを変えたりした。水は、あるところでは灰銀色の輝きを見せるかとおもえば、別のところでは青いしぶきをあげていた。ナオミとケネス、メギリヌが水面に下りたが沈まない。部屋の中は、信じられないほどの広さを持っていた。ナオミは、初めての精神世界に緊張していたが、あちこちの十数メートルも幅のある水流を見て...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−5最初の部屋(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・(再編集版)

    皆の視線が、アストロラーベに集まった。アストロラーベがつぶやいた。リギスめ、知っておったか・・・・・・その時、ずっと黙っていたミスティラが、口を開いた。「かまいませぬ。もとより裁かれて刑を受ける運命だった我が命。それにマクミラ様がお兄様たちの助太刀を受けている以上、魔女たちなどに負ける道理がございません」「うるわしき姉妹愛よな」ドルガが言う。「だが、後悔することになっても知らぬぞ。よかろう、第一の闘いにはメギリヌを送ろう。そちらからはマーメイドの小娘が出るのじゃな?」アストロラーベが確認する。「ナオミよ。どうじゃ、闘うか?」「水が渦巻く部屋と聞いて、引っ込めるはずがないでしょ。この真珠で出来た戦闘服を着て、水中の闘いで私が誰かに遅れを取るとでも?」「その意気やよし」部屋に入ろうとするナオミに、マクミラが声をかけ...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−4メギリヌ対ナオミと・・・・・・(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−3 軍師アストロラーベの策略(再編集版)

    「そうだ、アポロノミカン!私たちの最後の希望よ」ドルガが、怒りをあらわにする。「最後の希望か。どこまでおろかなのだ。人間どもを救うことが出来るなど、どこをどう見れば、あやつらが生き残る材料があるというのだ?天は汚れ、海は穢れ、地中は汚染され、宇宙空間にさえ争いを持ち込もうとする者どもに。自然界の動植物の怨嗟の声が、聞こえぬか?自らは数限りない獣と同胞さえ殺しておきながら、自分たちに対して危害を加えることはいっさい許さぬ。そんな都合のよい理屈が通ると思っているのか?最後の希望だと?この闘いで、お主たちの希望など根こそぎ奪ってくれるわ」「悪魔姫、それでこそお主らしい」アストロラーベが、誘いをかける。「だが、誇り高いお主のことだ。せっかく用意した決戦の舞台ミラージュで最高のカーニヴァルを始めようではないか」「望むとこ...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−3軍師アストロラーベの策略(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−2 人類は善か、悪か?(再編集版)

    「たしかに。マクミラとの闘いも、これが最後となろう。誤解されたまま死なれては目覚めが悪い。お主たちは勝手に思い込んでいるようだが、マクミラへ復讐などは、序の口。我らが次なる目的は、闘いの巨大なエネルギーを起こして魔人スネール様を目覚めさせること。そして、我らの究極の目的は、スネール様と共に新たなるルールを作って人間界を支配することじゃ。太古の蛇と呼ばれたスネール様は、すでにマクミラとの闘いの後、長い時を人間界で過ごして復活の準備をすませておいでた。この惑星から人間共を取り除き、我ら神と堕天使の血を引くものたちが支配する楽園を作るのじゃ。よいか、我らの考えでは人類こそ悪。それは性根が悪いといった次元ではなく、地球という生命体、世界というシステム自体にとって、人間こそ最大の脅威と言ってもよい。だからこそ、人類絶滅を...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−2人類は善か、悪か?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−1 魔女たちの目的(再編集版)

    「ねえ、クリストフのことを忘れてるわ。彼は、本当にクリストフなの?」皆がダニエルの方を見ると、墮天使は苦しそうなうめき声を上げていた。「ウッ、ウッ、ウッ、オレはいったい誰なんだ、クリストフ?そんな名の時も、あったような気がする」「覚えてないの?チャック、シャナハン、それに孔明のことも?ケイティはすぐにあなたがわかったわよ」「ケイティ……。俺を慕っていたケイティ。それじゃ君は……ナ、ナオミ?」「じゃあ、本物!生きてたのね。でも、あのお調子者でプレーボーイだったクリストフの雰囲気が変わっちゃった。まるで……」「まるで堕天使のようにか」マクミラが答える。「なぜ、クリストフが堕天使になってるの?」アストロラーベが答える。「お前が人間として知っているクリストフは元々が、天使長ペルセリアスだったのだ。人間界に来て、マクミラ...マーメイドクロニクルズ第二部第10章−1魔女たちの目的(再編集版)

  • マーメイドクロニクルズ第二部 序章〜第9章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部序章〜第9章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−9 健忘症の堕天使(再編集版)

    精神力の弱いものは弱いなりに、精神力の強いものは強いなりに、精神世界では、すべてのものが自分のイメージする姿を取ることができる。精神世界の中央広場には、真紅のマントに身をつつんだマクミラがいた。マントの中には二本の真っ赤な鞭を隠し持っている。すぐ脇に、白銀のマントに身をつつむミスティラがいた。右には、漆黒のマントと軍服に身をつつんだアストロラーベがいた。貫き通せぬものはないと噂される半透明の槍を抱えている。左には、一振りで千の魔物の首をはねとばす大鎌を背中に背負ったスカルラーベが、はげ頭に筋骨隆々とした体躯をドクロでできた鎧につつんでいた。ナオミも、カンザスの闘い以来、海神界時代の真珠の戦闘服に身を包んでいる。ケネスは、上半身の服がはだけてメーライオンのタトゥーがむき出しになっているが、自分が変化したイメージを...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−9健忘症の堕天使(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−8 マクミラたちの作戦(再編集版)

    会場にいたすべての人間が、ストップモーションになったかのように動きを止めた。次の瞬間、ケネス、ナオミはグニャリとゆがんでいく時空の裂け目に、冥界所縁のものたちと一緒に吸い込まれていった。これこそがマクミラとダニエルが、何ヶ月もかけて練った作戦だった。アポロノミカンの予言を分析した結果、魔女たちがクリスマス・フェスティバルを狙って来ること、キャストの四人のベリーダンサーに取り憑くこと、それをふせぐことは不可能であることまでは予測がついた。作戦を進展させたのは、アストロラーベだった。今回のゲームに人間を巻きこむことは許されない、冥界、海神界、天界だけで片をつけるべき筋合いである、そして、それが魔女たちに対して勝機を最大限化すると主張した。もとよりマクミラとダニエル、アストロラーベに反対意見があるはずもなかった。しか...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−8マクミラたちの作戦(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−7 魔女たちの正体(再編集版)

    「ダブル・ヴェール」(“Doubleveil”)が流れ出して、マーメイド役の夏海にとりついたドルガが、中央に現れた。金色のフォルスターネックとスパンコールブラとマーメイドスカートが、本物の人魚のような雰囲気を醸し出している。ドルガは、扇子の先に薄手の布がついたファンベールを右手に持っており、ひらひらと炎のような動きをさせる。その美しさに気を取られた次の瞬間、観客は驚愕した。ドルガが、ターンを繰り返すと悪魔姫の本性を現したからだ。彼女は、巨大な翼竜の羽を持っており、羽ばたきのたびに小さい竜巻が起こる。今度は、氷天使メギリヌも本性を現して、美しい16枚の黒い羽を広げる。外面の気高さと内面のサディストは、大魔王サタンになってしまったかつての天使長ルシファーの両面を表していた。次に、蛇姫ライムが、本性を現して母エウリュ...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−7魔女たちの正体(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−6 回り舞台(再編集版)

    フェスティバルは、中盤の第四幕「夕焼けに映える真紅の海は、軍神ベローナの勝利の雄叫びの刻」にさしかかった。都の支配をねらう蜃気楼の魔神が現れて、サソリを通じて魔女たちをそそのかして太陽の化身たちに争いを仕掛けるというストーリーだった。「ヤー・バアヒィヤ」(“YahBahiyya”)の不気味な調べが始まりサソリの仮面がかぶった役者が、ステージに踊り出た。なぜか小脇に何か本のようなものが入った特殊ガラスケースを持っている。役者が、甲高い子供のような声で叫ぶ。ウヒヒヒヒ、ついに時が来たぞ!ピョンと逆立ちすると、台本とはまったく違った歌を歌いだす。いつの間にか曲が、「リバース」(“Rebirth“)に変わっている。すべてを燃やし尽くす蒼き炎がすべてを覆い尽くす氷に変わり猛々しき白骨が愛に包まれて石に変わり冥界の神官が一...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−6回り舞台(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−5 何かが変だ?(再編集版)

    舞台は、第三幕「波しぶきに輝く白色の海は、天かける最高神ユピテルの輝きの刻」に進んでいく。ダニエルが、再び歌い出す。おお、白い海の波しぶきを見るがよい最高神ユピテルの輝きの刻が来た愛こそ、この喜びのときにふさわしい愛こそ、この世でもっとも貴きものだが、愛こそ、この世でもっとも不可思議なもの試みずには、知ることはけっしてできぬもの愛は、論理や倫理にはけっして当てはまらぬ愛は、喜怒哀楽のどれにも似て、どれとも非なるだが、すばらしきがゆえに破滅にみちびく愛は、すべてを奪うものが、奪うことでなにかを与える愛は、苦しめるものが、苦しめることで歓喜を与える愛は、この世でもっとも貴きものだが、貴きがゆえにはかなくうつろいやすい。愛は、愛し合うものがいるときは誰もその価値を知らず失って初めて、どれほど大事であったかを知る次に、...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−5何かが変だ?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−4 奇妙な剣舞(再編集版)

    はたして恋する乙女の直感は、正しいのだろうか。ナオミは今日のフェスティバルが、何かとてつもないものになるような予感がしていた。コロナ役の男性が、スターの甘い声で歌い出す。青い昼の海は太陽神アポロンが天空を駆けめぐる刻だが我が都には、強い日差しはあっても愛はない麗しき魔女たちよお前たちはどこから来たのか?お前たちはどこへゆくつもりなのか?もしもゆくところがないのならこの都にとどまりその美しさで我らと共に愛の花をさかせてはくれまいか?月の女神ティラミス役ミスティラが、引き取って歌う。可憐な外見からは想像できないほど声量がある。しかも、サラ・ブライトマンばりの高音域である。魔女たちよお前たちがさがす魔神スネールははるかかなた遠いオリエントの国に墜ちていった太陽神コロナはうつくしい声と富を持つ太陽神アストローネは光り輝...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−4奇妙な剣舞(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−3 太陽神と月の女神登場!(再編集版)

    三人目の魔女役ユリアに取り付いた金髪のメギリヌは、アームバンドまで含めて、純白のフォルターネックの衣装で決めている。大きなベールを持って登場すると、ステージ中央で数回回転する。ベールを投げ捨てると、雪の妖精が地上に舞い降りたような動きで、「エル・バストン」(“ElBaston”)をバックに踊り出す。アサヤと呼ばれるステッキを身体の一部のようにあつかって、観客の目を集める。全身のシルバー・スパンコールが、雪の結晶のように光り輝く。二人を従えて、再びリギスが中央に来て歌い出す。愛、答えは愛愛だけが呪いを解くことができるだが、愛はどこにあるのか?愛は見ることができるのか?愛はさわることはできるのか?たとえ、見つけることができてもたとえ、見ることができてもたとえ、さわることができてもそれはさっきまでと同じ愛なのか?それ...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−3太陽神と月の女神登場!(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!(再編集版)

    小さいトラブルはあったが、パフォーマンス・フェスティバルの準備は着々と整いつつあった。会場右側のバルコニー席には、ドワイトに招待されたマリア、ケネス、ナオミと幼なじみのケイティの四人が座っていた。マクミラが楽屋で竜延香の香りに気がつき、ナオミが客席で麝香の香りに気がつき、同時に言った。「あいつの匂いがする」いやがおうにも緊張感が高まってきていた。ナオミが、パンフレットを開くとキャストの一覧表が目に入った。第一の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ザムザ”第二の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“シェラザード”第三の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ユリア”マーメイド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夏海・コパトーン太陽...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−2パフォーマンス・フェスティバル開幕!(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−1 パフォーマンス開演迫る(再編集版)

    パフォーマンス・フェスティバルの当日の夕方。ニューヨーク社交界の大物や現地在住の芸能人たちが、次々にヌーヴェルヴァーグ・タワーの特設会場に集まってくる。ある一団が、入場口で係員ともめていた。タキシード姿の紳士や社交服で着飾った貴婦人にまざって、きたないジャケットやジーンズ、スニーカー履きのティーンエイジャーたちの姿は、場違いもいいところだった。「おい、ここはお前らのような連中の来るとこじゃない」「なんだと!俺たちは正式に招待されたんだ」トニーに率いられたタイ系ストリート・ギャングと、ロッコに率いられたイタリア系ストリート・ギャングであった。真夏の夜に冥界を抜け出した魔界の住人に襲われたところをマクミラに救われて以来、ファンクラブのように彼女を慕うようになっていた。マクミラに諭されて以来、犯罪に手を染めるよりも生...マーメイドクロニクルズ第二部第9章−1パフォーマンス開演迫る(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜第8章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版序章〜第8章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−10 民主主義という悲劇(再編集版)

    「どうした?」「今度は、コミュニケーションとは何だと質問をするかと思ったから・・・・・・」「お前からマーメイドがコミュニケーションを学んでいると聞いていたから、コミュニケーションに関してはもう調べてあるのだ。コミュニケーションが得意であるとは、何も雄弁なことばかりではない。皆が見落としていることを指摘したり、最後にうまく全体の意見をまとめたり、雰囲気作りがうまいとか、あるいはタイミング次第では沈黙することさえ有効なコミュニケーションとなる。つまり、コミュニケーションの神髄とは、時宜(じぎ)に応じた対応ができることであろう。弁論術の始祖アリストテレスとかもうす哲人が、レトリックを『いかなる状況においても説得の方法を見いだす能力』と定義している。これこそ、最古のコミュニケーション的有能さの定義なのだ。この男は公的な...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−10民主主義という悲劇(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−9 政治とは何か?(再編集版)

    「くだらない政治なんてものは、冥界にはなかったわね。伝統的な定義では、政治は権力に関連するプロセスと考えられている。政治研究では、誰が持つか、どのようにそれが維持されるか、使われるかとかが問題になる。でもこの定義には、最近は批判も多い。なぜなら権力には、物理的なもの、委託されたもの、権威から生じるもの、経済的なもの、象徴的言語によるものなど、政治とは権力に関連するプロセスであるという定義は、多義的すぎて役に立たない」「だが権力者には何が正しいか、何がまちがっているかを決める力があるのではないか?」「絶対君主の場合はね。でも人間たちは、選ばれた代表者たちが議論する民主主義政治というシステムを生み出してからは、国家という目に見えない巨大な権力が何を真実とするかを決定して、国家認定資格、予算配分、さらに法律を駆使して...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−9政治とは何か?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−8 格差社会−−上位1%とその他99%(再編集版)

    ある日、アストロラーベがマクミラに尋ねた。「富とは何だ?」「冥界では、お金を使うことはなかったものね。富を持つとは、たくさんのお金やお金に換えられるものを持っていること。人間界では、お金さえあればなんでも手にはいるし、なんでも人に言うことをきかせられる」「お金があるとは、魔法が使えるのと同じようなものか?」「たしかにお金は、人間にとっては魔力があるようね」「そうだな。人間も、心の底ではその魔力をおそれているのではないか?」「そうかも知れないし、そうでないかも知れない。皮肉ね。冥主の本当の名を口に出すことは、何人たりともはばかられる。それゆえ人間共が苦し紛れに、お追従で呼ぶようになったのが『富めるもの』というのは」「プルートゥ様とお呼びするのだ」アストロラーベが、いらついて続ける。「プルートゥ様が宝物殿に人間たち...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−8格差社会−−上位1%とその他99%(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−7 絡み合う運命(再編集版)

    マクミラは、リハーサル会場で兄弟妹の雰囲気を感じていた。3ヶ月前に降臨して以来、兄アストロラーベとスカルラーベ、双子の妹ミスティラは、対照的な時間の過ごし方をしていた。アストロラーベは、冥界の軍師だけあって、ひたすら人間界の知識をどん欲に吸収していた。マクミラが長い時をかけて収集した哲学書、歴史書に加えて、文学作品や理系の書物まで一睡もせず読みあさっていた。スカルラーベは、冥界時代は身体が骨作りだったため、生まれて初めて持った「肉体」を鍛えることが面白くて仕方がなかった。「人間たち」と交流させることは不安だったため、ジェフがニューヴェルヴァーグ・タワーの中のアスレチック・ジムでトレーニングをさせるように手配したが杞憂だった。脳みそが筋肉でできているようなボディビルダーたちとは、メンタリーが近いのか会話らしい会話...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−7絡み合う運命(再編集版)

  • サンキューサンキュー

    財部剣人です‼️今日でブログ開設から3939日(約11年⁉️)です。なんとサンキューサンキューと読めます🤗。これからも頑張りますので😅、応援よろしくおねがいします🤗‼️サンキューサンキュー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−6 キャストたち(再編集版)

    演出家のドワイト・コパトーンは、困惑を禁じ得なかった。昨日までとキャストたちのパフォーマンスが一変してしまったから。ただし、それはよい方に。演出の余地がないほどに、彼女たちの踊りが完璧になってしまっていた。マーメイド役の夏海の踊りは、一つ一つの動きが巨大な猛禽類の羽ばたきのように力強かった。そのくせ目線はゾッとするほどのセクシーさに満ちている。言うまでもなく、夏海にとりついた悪魔姫ドルガの影響であった。一人目の魔女役ザムザは、見ていると吸い込まれそうになる妖しげなシミーと、以前と別人のように艶っぽい歌声でドワイトを驚かせた。昨夜は、魔法の蜜でも飲んだのかいと訊かれても、とりついた歌姫リギスはニヤリとするだけで答えない。二人目の魔女役シェラザードのアイソレーションは、切れ味を増し、人間の動きとは思えないほど各部分...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−6キャストたち(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−5 ドルガとトミー(再編集版)

    まずドルガが近寄っていった。「小僧よ、我が姿が見えるのか?」しゃくり上げながら、トミーが答える。「見えるのって、お姉ちゃんの姿は他の人には見えないの?」「フフフ、そうか。見えるものにとっては、見える方が当たり前。見えない方が不思議か・・・・・・なぜ泣いている?」「携帯が、携帯が、壊れちゃった。もうママに連絡できない」「はぐれ子か。母の名前はなんと申す?」「夏海」ほー、我がとりつこうとしている人間の子なのか。その時、ヌーヴェルヴァーグ・タワーの正面に夏海が現れた。向かいのビルの前で一人っきりの息子を見つけて、真っ青になっている。「トミー!」思わず、大声で名前を呼ぶ。「アッ、ママだ!」トミーは、道路の向かいの夏海に向かって走り出した。すでに、信号が「止まれ」に変わったのには気がつかない。走り出した彼に、能天気な新婚...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−5ドルガとトミー(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−4 トミー、託児所を抜け出す(再編集版)

    電話は向かいのビルの三階の託児所にいる、8才になったばかりの息子トミーからだった。「ママ、もうレッスン終わった?」「うん、ちょうど終わったよ」「おちょいよ〜。もうつかれた」「ごめんね。着替えたらすぐ迎えに行くから、もう少し待っててね」「うん・・・・・・」納得したようなしないような返事をして、トミーは携帯の電源を切った。トミーは思った。そうだ。こっちからママをお迎えに行こう。お着替えにはいつも30分はかかる。きっとビックリするぞ。もしかするとお兄ちゃんになったねってほめてくれるかも知れない。大丈夫さ。いじわるな託児所のおばさんの目を盗んで通りを渡れば、ヌーヴェルヴァーグ・タワーはすぐそこだ。トミーは決心すると、託児所の壁にかかっていたダウンジャケットを保母に気づかれないようにこっそり手に取った。いつもトミーをしか...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−4トミー、託児所を抜け出す(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−3 ベリーダンスの歴史(再編集版)

    今回のジェフェリー・ヌーヴェルヴァーグ・シニア生誕百周年パフォーマンス・フェスティバルは、異例尽くめだった。まず、ミュージカル仕立てと言っても、普通の踊りではなく振り付けにベリー・ダンスが取り入れられていた。さらに、驚くべきは巨額の費用をかけたパフォーマンスが一夜限りだったことだ。通常、ミュージカルは資金を投資家たちから集めて、ロングランになれば配当を配るシステムである。絶対に失敗は許されないだけに、構想と準備に数年をかけることもめずらしくない。今回、そうした心配がいらなかったのもヌーヴェルヴァーグ財団の潤沢な予算あればこそだった。ベリーダンスは、人類最古のダンスとも呼ばれる。その発祥には、諸説ある。最も古い説では、古代シュメール文明の時代に生まれて、豊穣祈願や自然崇拝の目的で、祈りや祭り、弔いの場で踊られたと...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−3ベリーダンスの歴史(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−2 レッスン会場の魔女たち(再編集版)

    ドルガが尋ねる。「なんじゃ、その歌詞は?」「この度のパフォーマンス・フェスタのパンフレットに書かれていたでありんす。おそらくは・・・・・・」「アポロノミカンか?」「そうらしいでありんす。夏海という娘が覚えていたでありんす」「例によって、アポロノミカンの予言は謎じゃが、『太古の蛇がよみがえる』とは幸先よい。よし、リハーサル会場へ飛ぶとしよう」次の瞬間、四人の姿は消え去っていた。フェスティバルの本番を直前に控えて、キャストたちはヌーヴェルヴァーグ・タワー一階ホールでリハーサルに汗を流していた。タイトルは、「砂漠の魔人の城〜ミラージュの伝説」だった。ドワイト・“パライソ”・コパトーンと夏海が書いた七幕のミュージカル仕立てのパフォーマンスになっていた。脚本は、夏海が昔ケネスから聞いた「海は一日7回、その色を変える」とい...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−2レッスン会場の魔女たち(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−1 魔女たちの二十四時(再編集版)

    最近になって、四人の魔女たちが諍いをすることがふえた。といっても力関係がはっきりしているため、つねにリーダーの悪魔姫ドルガを他の三人が説得するという構図であった。真夜中になって成層圏から戻った氷天使メギリヌが言う。「我々はもう長い間、神の姿のままで穢れた人間界にいるために指先や羽が崩れつつあります。もうこれ以上、人間にとりつくことを待つべきではございません」「ひとつはっきりさせておく」ドルガが言った。「命が惜しさにどうでもよい人間にとりつくなどとは、プライドが許さぬ。我らが、そもそも冥界のルールを乱し、魔界の連中とつきあうようになったきっかけを忘れたわけでもあるまい。我らは、冥界でも名門中の名門の出自であった。しかし、父親がちぎった相手が地上で汚れきった墮天使たちであったため、我らはいかなる地位も与えられなかっ...マーメイドクロニクルズ第二部第8章−1魔女たちの二十四時(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 前半・中盤(序章〜第7章)バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」「第二部第1章−1ビックアップルの都市伝説」「第二部第1章−2深夜のドライブ」「第二部第1章−3子ども扱い」「第二部第1章−4堕天使ダニエル」「第二部第1章−5マクミラの仲間たち」「第二部第1章−6ケネスからの電話」「第二部第1章−7襲撃の目的」「第二部第1章−8MIA」「第二部第1章−9オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「第二部第2章−1神々の議論、再び!」「第二部第2章−2四人の魔女たち」「第二部第2章−3プル−トゥの提案」「第二部第2章−4タンタロス・リデンプション」「第二部第2章−5さらばタンタロス」「第二部第2章−6アストロラーベの回想」「第二部第2章−7裁かれるミスティラ」「第二部第2章−8愛とは何か?」「第二部第3章−1スカルラーベの...マーメイドクロニクルズ第二部再編集版前半・中盤(序章〜第7章)バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−9 男と女の勘違い(再編集版)

    ナオミは思った。アチャー、バカなのはケネスの方じゃない。昔の男なんて、手からすべり落ちてしまったショートケーキのようなもの。そう、人間の女なんて一度別れようと決めたら元の鞘に戻ることなんてありえない。それまでステキに思えていたオーラが消えれば、好きだったはずの特徴さえキライな理由に変わってしまう。だが、次の瞬間、ナオミは思い直した。え〜、それじゃ、元の男に会うなんて一番女にとって嫌なことをしてくれた理由は、もしかして私を気遣ってくれたの・・・・・・その考えに思い当たった瞬間、祖母のトーミからマーメイドは簡単に泣くもんじゃないと言われていたことも忘れてナオミは泣きじゃくった。その時、夏海がケネスに言った。「今頃、こんなこと言うなんて遅すぎるかも知れない。だけど女ってズルイね。あなたとナオミを置き去りにしたくせに、...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−9男と女の勘違い(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−8 夏海とケネス(再編集版)

    こうしてマリアの長かった話は終わった。やっと夏海が口を開いた。「ごめんなさい。いろいろ、あやまらなくてはいけないことがありすぎて・・・・・・ケネスと出会ってからはずっと幸せだった。それまでずっとつっぱっていたのが、初めて一緒にいてのびのびできる人に出会えた気がしていた。ナオミをあなたが海でひろってきて、この赤ちゃん、六本指だと思ったときも軽く考えていた。ナオミの六本目の指を切った方がよいと言ったのも、夢の記憶のような子供の時の蛇との約束にとらわれていたわけじゃなくて、本当に五本指の方がナオミのためにはいいと思ったからなの。でも・・・・・・」ケネスは、それまで一度もなかった夏海の提案に逆らった彼の記憶をたぐり寄せて、言った。「でも、どうしたんだ?」「夢を見るようになったの」「夢?」「毎晩、夢の中にあの巨大な蛇が現...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−8夏海とケネス(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−7 夏海の願い(再編集版)

    夏海に起こった出来事は、その後の人生を左右する転機となった。大人になるまで、そのときのことは夢を見たようで忘れていたが、深層心理では消えないトラウマとして残っていた。それは、こんな体験だった。夏海は、文字通り蛇ににらまれたカエルになって固まっていた。目の前にいた身の丈十数メートルはあろうかという、青々とした輝くばかりの鱗に覆われた巨大な蛇。(我が名は、魔神スネール。恐れることはない。お主を、この場でどうこうするつもりはない。冥界の神官マクミラとの闘いに敗れて、人間界に堕ちて来た。娘よ、名はなんと申す?)蛇は、言葉を発するのではなく、心に直接語りかけてきた。「な、なつみ・・・」恐れていながらも、好奇心から夏海は問いかけに答えた。(マーメイドを敬う者たちの一人か・・・・・・よいか。これから我が伝えることを、よく覚え...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−7夏海の願い(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−6 夏海と魔神スネール(再編集版)

    「なぜ、私たちを置き去りにしたの?」その言葉を聞いたとたん、夏海は、涙がとまらなくなってしまった。ケネスも、なんと声をかけていいかわからなかった。今日の仕掛け人マリアが、しかたがないねえという風に語り出した。「最初、夏海は、あたしにだけ本当のことを言うつもりだった。ずっと誰にも話せなくて苦しんでいた話をね。だけど、あたしは訊いたんだよ。嘘を一生つきとおす覚悟はおありかい?それはあんた自身だけの問題じゃない。つかれた方にも、とてもつらいことなんだとね。あたしの長い人生から、ひとつ確実に言えることがある。本当のことはね、どれだけつらくても真実以上に人を傷つけることはない。だけどね、嘘はね、たとえ相手を思いやってついた嘘でも、相手を疑心暗鬼にさせる。さらに悪いことに、ばれちまった時、嘘をつかれたと知られたと知ることで...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−6夏海と魔神スネール(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−5 もうひとつの再会(再編集版)

    レストランの席に着くと、マリアが口を開いた。「乾杯前に、言いにくいことを言っておかなくちゃねえ。去年ニューヨークで、ケネスもよく知ってるドワイトの新作を見せてもらったのさ。その時、キャストの中になんとなく見たことがある子がいたんだよ。向こうも、あたしに気づいたようだった。目が一瞬合った。この年まで生きていると、誰かとどっかであった気がするなんてしょっちゅうだけど、誰だか思い出せないことがほとんどだから、すぐにあたしは忘れてた。だけど、ショーが終わってホテルに帰ろうとした時、あたしの席に係員があわてて飛んで来た。ちょっとお待ちください、ドワイトがあなたに紹介したい人がいるんですってわけさ。ドワイトもお偉いさんになっちまったから、ブロードウェイに行ってもこの頃はなかなか会えないんだ。楽屋でドワイトの隣にいたのは、さ...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−5もうひとつの再会(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−4 再会(再編集版)

    クリスマスを翌週にひかえた12月17日の金曜日の午後7時。ナオミは、猛吹雪の合間をぬってようやく到着した人々でごった返すエジソン・ホテルのロビーで、父ケネスと祖母マリアの到着を待っていた。自動ドアが開いて、筋肉質のケネスと小柄なマリアが入ってきた。「ケネス!」ナオミは、はずむゴムまりのように抱きついた。「ナオミ、元気だったかい?」「うん、元気だよ」マリアが声をかける。「さあ、おばあちゃんにもハグさせておくれ」「もちろん。会えてうれしいわ」「いったい何年振りかね。あたしゃ、もうおなかペコペコだよ。チェックインをさっさとすませて、中華料理に行こうじゃないか。近くのレストランを予約してあるんだ」マリアが予約してくれたシー・ドラゴンは、ビルの地下1階にあるしゃれたチャイニーズ・レストランだった。ケネスからの仕送りがあっ...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−4再会(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−3 決勝ラウンド(再編集版)

    金土曜日の予選ラウンドをとりあえず通っておけば、日曜日の決勝ラウンドに向けて、残りそうな大学の肯定側のケースを分析することもできた。また、米国のディベート大会では予選ラウンドですでに対戦したチームと、再び決勝ラウンドで対戦した場合、異なったサイドでたたかうルールになっている。そのために、予選において否定側で負けたチームと再びまみえることがあっても肯定側で挑むことができた。他大学のケースで要注意は、「アメリカ軍は、公式に同性愛者の採用を宣言すべきである。軍が同性愛者に対する偏見がないことを宣言することで、国内の同性愛者差別は劇的に改善される」、「二種類の化学物質が発射後に混ざって相手を殲滅するバイナリー兵器(binaryweapon)は、使用するには問題がありすぎるため禁止すべきである」、あるいは「抑止力の意味し...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−3決勝ラウンド(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−2 3年目のシーズン(再編集版)

    1993年秋から冬にかけて、ナオミは充実したディベート・シーズンを過ごしていた。7月に発表された今シーズンの政策ディベート論題は、「アメリカはNATO加盟国に対する軍事的コミットメントのひとつを破棄すべし」であった。ナオミとパートナーのケイティにとって脂の乗りきった3年生のシーズンは、ここまで最高の結果を納めていた。幕開けとなった9月の北アイオワ大学主催大会で準優勝すると、11月のノースウエスタン大学主催オーエン・クーン記念大会で3位。クリスマス直前に開かれた南カリフォルニア大学主催大会では初優勝と、参加した大会すべてで3位以内という見事な成績であった。今回の論題も、さまざまなケースを含んでおり、破棄される軍事的コミットメントの定義には、米陸海空軍のすべての現存するプログラムをリサーチする必要があった。さらに現...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−23年目のシーズン(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−1 イヤー・オブ・ブリザード(再編集版)

    1993年。「今世紀史上最悪」と言われた雪嵐が、アメリカ全土を襲っていた。12月初頭から、北東部、中西部、北西部では猛吹雪が吹き荒れて、華氏零度(摂氏マイナス17.78度)に達する日さえもめずらしくなかった。ニューヨーク、シカゴ、シアトルといった大都市では交通機関がマヒしたり、大雪によるスリップ事故や車が立ち往生したりする事態が多発した。悲惨だったのはホームレスで、住む家も生活の糧のない彼らの凍死者が続出した。どれくらいブリザードがひどかったかと言うと、火事で出動した消防士の帽子や服の裾に鎮火中にツララができた記事がタイム誌に載ったほどであった。さらに、“ウィンディ・シティ”(風の街)と異名を取るシカゴに住む人々は、ウィンド・チル・ファクター(風の冷却効果)に苦しめられた。これは、風速1メートルごとに体感温度が...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−1イヤー・オブ・ブリザード(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第六章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ第二部のストーリーマーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか...マーメイドクロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第六章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−10 さかさまジョージからのファックス(再編集版)

    アストロラーベが言葉を返す。「たしかにお主がペルセリアスの時代に、第一次神界大戦で闘ったことがある。あのときは敵味方だったが、今度は共に闘うことになるであろう」「スカルラーベだ。俺様が来たからには、勝負はすでに決まったようなもんだ。暴れさせてもらうぜ。腕がなるぜ。それにマクミラの育ての親ジェフと恋人のダニエルにも会えてうれしいぜ」めずらしくマクミラがあわてて否定する。「恋人だなんて・・・・・・」「違うのか?」「ダニエルは、貴重な戦力よ」それだけ言うと、マクミラは黙ってしまう。いままで黙っていたミスティラが、言いにくそうに話に加わる。「あの〜、話し合わなくてはいけないことがあると思うのですが」ジェフが言う。「おお、そうでした。ミスティラ様、初めてお目にかかります。マクミラ様の妹君だけあって、さすがお美しい」「それ...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−10さかさまジョージからのファックス(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ(再編集版)

    三人は、屋上へ直行する高速エレベータに飛び乗った。エレベータを飛び出したジェフは、かつて見た悪夢を思い出した。目の前で時空間がゆがみ、裂け始めていた。星空が消え去って、景色が真っ暗になる。バキバキと焚き火に爆竹を投げ込んだような音を立てて裂け目が渦巻き、冷たい炎が吹き出す。子供の絵本にあるファイヤー・ドラゴンが、夜空に浮かび上がった。口から紫の煙をあげるドラゴンの背に乗るのは、おそろしく不機嫌な顔をした紅色に燃えたつ髪をした男。(マクミラよ、人間時間ではかなりの時間がたったが、元気そうじゃな)3人の頭に思念が、ガンガンこだました。「おひさしゅうございます、プルートゥ様。こちらでは思念が使えませぬ。言葉・・・・・・人間の伝達手段で失礼いたします」ダニエルが訊ねる。「誰だ、こいつ?」(我は冥主じゃ。ペルセリアス、お...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−9アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−8 プル−トゥ、再降臨(再編集版)

    「マクミラ様が先日お知り合いになられたストリート・ギャングたちが、一例でございましょう。彼らのほとんどは、まだ右も左もわからぬ若者ばかりです。普通に考えれば、若いにもかかわらず組織犯罪に関わり、銃やナイフを携帯して命を危険にさらすバカ者共です。ところがカルチュラル・パフォーマンス的に考えれば、若いがゆえに自らを危険にさらし対立する組織と闘うことで自らのアイデンティティを確立しようとしていると考えられます。同時に、ああした組織に所属することは、シャバにいようと監獄にいようと同胞同士による自衛手段であり、大半は若い身空で命のほむらを散らすかもしれません。運良く生き残って、守るものができれば、カタギになってストリート・ギャングを引退するでしょう。それが、生涯を通じてギャングとして生きる職業的犯罪者集団であるマフィアと...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−8プル−トゥ、再降臨(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−7 支配する側とされる側(再編集版)

    「わたしには、絶対的価値観の否定の方が正しいような気がするけどね」「そこがむずかしいところでして。たとえば、ナチスによるホロコーストを野蛮な行為と考えれば啓蒙による社会の解放が妥当な選択肢に見えますし、フランクフルト学派が言うようにナチスの暴挙を理性が道具化された状況と考えればモダニズムは妥当性を失います。しかし、支配的な価値観があるからこそ、対抗的な価値観が光り輝くという点は否定できません。フランシス・リオタールは、ポスト・モダニティー(ポストモダン時代)ではなくポストモダン・コンディション(ポストモダンの条件)という言葉を使っています」「ポストモダニズムが、モダニズムを崩壊させてしまうのではなく、あくまで支配的な状況に対するアンチテーゼなのかしら?」「その点は、どのような思想家の立場を取るかによって、多少、...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−7支配する側とされる側(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究(再編集版)

    「話をわかりやすくします。演劇の実践者が虚構世界のスクリプトを演じるのに対して、パフォーマーは現実世界における差別、偏見、権威などに対する社会批評を試みます。多くの文化による出会い、衝突、摩擦が多くの問題と新しい創造の可能性を提起する今日、人文、社会諸科学にまたがる幅広いスペクトルにおけるパフォーマンス研究は、教育、娯楽、儀礼、癒しの理論化などの分野で大きな役割を担っていると言われています。パフォーマーは、一人芝居、紙芝居、映像作品、掛け合い漫才、即興演奏、バックグラウンド・ミュージック、ボディ・ペインティング、人形劇、スキット、寸劇、ロール・プレイング等、ありとあらゆる手段を駆使して、長期間のリサーチやフィールドワークを元にパフォーマンスを行います。たとえば、ボディ・ペインティングの世界では、デミ・ムーアの表...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−6ジェフの語るパフォーマンス研究(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する(再編集版)

    1993年8月末、マクミラはヌーヴェルヴァーグ・タワー内の書斎で忙しい毎日を過ごした。昼は、明かりの届かぬ図書室で人間心理や行動の本を読みあさった。ただし、多くの心理学研究はデータの実証可能性ばかりを重視しすぎていて、現実にどのように人間が行動するかを理解する手助けにはあまりならなかった。どこかで聞いた「直接的に役に立たなければ立たないほど学問的」という皮肉なセリフを思い出した。夜は堕天使ダニエルと四人の魔女たちにどう対すべきか考えていた。災厄を抱え込んだと思う反面、勝ちの見えたゲームに興味を失いつつあったので、ウキウキする部分もあった。圧倒的精神力と魔力を持った冥界時代ならともかく、今、まともにあたっては勝ち目がないことははっきりしていた。ジェフが、おずおずと話しかけた。「マクミラ様、たまには昼はお休みを取ら...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−5マクミラ不眠不休で学習する(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ(再編集版)

    マッドがメイクアップでもしたようなピエロ顔で、ニヤニヤ笑いを浮かべる。髪がザンバラになって、下に垂れている。リギスが言う。「やっと表に出てきたでありんすか。でも、おかしなオーラでありんす。子供のように純粋かと思えば、感受性の強い青年のようにひねくれ、老成しているかと思えば、特攻兵のように自暴自棄。サーカス団で育てられた悪魔の子、遊園地に住みついた魔法使い、人にまざってレスリングに興じるゴブリンとでも言うでありんすか?いったい、お前さんは何でありんす?」質問に答えて、子供の声で話が始まった。「ボク、トリックスターのさかさまジョージ。でもおねえちゃんたち、なんでさかさまなの?えっ、ボクの方が逆だって!自分がまともだなんて誰に言われたの?まともじゃない人から見たら、まともな方が変で変がまともだよ。おねえちゃんたちこそ...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−4トリックスターのさかさまジョージ(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−3 リギスの唄(再編集版)

    レイモンドが猿の敏捷さで巨木の陰から飛び出すと、両肩に備え付けられたレーザーガンから白光を発射する。ドルガの羽に黒く小さな穴がうがたれて煙を上げるが、蚊にかまれたほどの痛みも感じない。面倒くさそうに腕を振ると、小さな竜巻がレイモンドを襲う。ドルガの瞳が輝くとレーザーガンが竜巻にあっさり爆破されて、身体が次々と異次元空間に持って行かれる。サムソンが筋肉のかたまりの身体から雄叫びを上げると、胸のフルオート・マシンガンがメギリヌに放縦を開始する。銃弾が当たっても、メギリヌは表情一つ変えない。いつの間にか、手中に数百発の銃弾が握られている。彼女が息を吹きかけると銃弾が凍りつく。次の瞬間、投げつけられた銃弾を受けたサムソンが凍りつき崩れ落ちる。サムソンはゾンビ能力を発揮することもなく粉々に砕け散った。ゴーレムは、最も悲惨...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−3リギスの唄(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−2 ミリタリー・アーテフィシャル・インテリジェンス (MAI)(再編集版)

    「それだけか?」「どういう意味だ?」「自分でも、気づいておらぬか。第3のペルソナが育っておるのに」「ふざけるな。怖がっているのでなければ、降りてくるがよい。目にもの見せてやるわ」魔女たちが顔を見合わせた。まあ、いいだろうとドルガが他の魔女たちに目配せする。リギスだけは、空中浮遊しての精神攻撃が得意だけに、不満そうな顔をしている。「見せられるものなら、見せてもらおう。たかが人間に、どの程度のことができるか」ドルガが言うが早いか、軽やかに四人が地上に降り立つ。彼女たちの本性を知らなければ、天使の降臨かと勘違いしたかも知れない。それほど四人は美しかった。ドルガは、威厳あふれる顔つきで、その「死の羽」はふれる者すべての魂を引き込む羽ばたきを持っていた。メギリヌの白面は、気高い外面とサディストの内面を持っており、くるくる...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−2ミリタリー・アーテフィシャル・インテリジェンス(MAI)(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビーランド襲来!(再編集版)

    夕闇ただよう上空から、四人の魔女たちは不老不死研究を行うゾンビーランドの様子をうかがっていた。ミシガン山中の建物は、ブラム・ストーカーの小説から抜け出したドラキュラ城のような不気味さをたたえていた。敬愛する父の「伝説」に、娘のマクミラが無意識の内にしたがっていたのかも知れない。軍事研究を行うノーマンズランドは、ゾンビーランドに隣接している。警備員の姿はないが、見る者が見ればハイテク監視装置が完備されているとわかった。精神世界研究をおこなうナイトメアランドは、二つの建物に隠されていたため様子が分かりにくかった。最後の建物アポロノミカンランドは、さらに奥に鎮座しており、最も厳重な管理体制下におかれていた。「警戒厳重な建物じゃな。爆撃して様子を見てみるか?」人間界に来て肉を持ったドルガが、まだ慣れない声で言う。「中に...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−1魔女軍団、ゾンビーランド襲来!(再編集版)

  • マーメイドクロニクルズ第一部 序章〜エピローグのバックナンバー

    財部剣人です!現在、第二部を再配信中ですが、第一部もよろしければお楽しみください。「マーメイドクロニクルズ」第一部神々がダイスを振る刻篇あらすじ深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの助太刀には天使たちがつくことになる。人間界に送り込まれたナオミは、...マーメイドクロニクルズ第一部序章〜エピローグのバックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第五章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ「第二部序章」第二部のストーリーマーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うこ...マーメイドクロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第五章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園(再編集版)

    「革命的な人々は、すべての政治的行動はユートピア的な目標を達成する意図の下に変革されるべきだと信じている。彼らは、世界は不完全な社会的正義によって腐敗していると考えて抽象的な価値観を好むわ。永続性を保つための議論は、それ自体が不合理的であり自己の利益のために産み出されている。他人の意見に耳を傾けることは腐敗を招くだけで、党メンバーでない者には粛正が必要と考えている。歴史的には、無政府主義者がこうした革命的な人々の例ね」「リベラル派が、そこまで行くことがあるのですね。でも自らを律するために政府がじゃまなら政府を排除するべきだという主義は、まるで小さい政府を信奉する保守派のように聞こえます」「極端なリベラル派がリベラル派の範囲を突き抜けてしまうと、まるで保守派になってしまうのよ。『逆もまた真なり』で、極端な保守派が...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−9ユートピアとエデンの園(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−7 データのマジック(再編集版)

    「今は保守派が優勢ね。アンケート調査では、保守派を自認する人が3割強、リベラル派を自認する人が3割弱、中道が3割強と言ったところ。80年代のレーガン革命でアメリカは保守化が進んだし、リベラリズムが輝いていた時代の最後の大統領は60年代のケネディまでさかのぼらなくちゃならない。でもアンケート調査なんてあてにならない。どんな場所で、どんな方法で調査をするかによって、データは変わってくる。たとえば、昼の電話アンケートじゃ、生活に追われている人はつかまるわけがないし、ショッピングモールでアンケートを取ってもどんな客層か想像が付くでしょ。ある程度の余裕があって、車で買い物をすることができる幸せな家庭の人々。だから、アンケートからは生活に追われていたり困窮生活を送っている人は、対象からこぼれ落ちてしまうし、不法移民の人々は...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−7データのマジック(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか?(再編集版)

    「これが善と悪が相対的という根拠よ。善は、時代の要請に合えば善となり、時代がそれを排除しようとすれば悪のレッテルを貼られる。あるいは、善も少数派の支持しか得られなければ間違いというレッテルを貼られる。私は思うの。正しいことは悪魔が言っても正しいし、まちがったことは天使が言ってもまちがってる。でも、人はしばしば『奴は悪魔だ。だから、奴の言うことに全て反対する』とか『俺の側には神がいる。だから、つねに自分の決定は正しい』と考える」「問題は、どこにあるのですか?」「そうした判断自体は、誰にでもあることでしかたがない。問題は、たしかに『どこに問題があるか』だわ。視野の狭い、柔軟性に欠けた判断をすることの問題は、最初の決定にしがみついて他の提案を取り入れられなかったり、状況に臨機応変に対応できなかったりすることだわ」「チ...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−8何が善と悪を決めるのか?(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−6 保守派の言い分(再編集版)

    「その通り。リベラルな人々は、大きな政府という基準で政策評価をする傾向がある。変化の原則に基づいて、言論、思想及び公的自由の保障を期待する。個人の選択、ライフスタイル、解放の目的に対しても、合憲文書の拡大解釈が社会に行き渡り適応することが必要と考えている。たとえば、リベラルな人々が同性愛者の結婚に対する権利を尊重するのは、税制上の優遇や遺産相続に関して不利にならないような配慮が時代の要請であると考えるためよ」「故なき差別に苦しんでいる同性愛者に、異性愛者と同様の権利が保証されることに何の問題があるんですか?」「同性婚の対応に関して、保守派は結婚を異性間においてのみ認められた神聖なる儀式と考えて、伝統的なモラルを破滅させるような同性婚は権利ではなく特権であり社会的脅威として捉えているわ」「シビルユニオンのような正...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−6保守派の言い分(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件(再編集版)

    「あなたは、このままでは敵を甘く見るようになる。あるいは、このまま同じ考え方をする人たちにかこまれていると、いつか反対勢力を見失うようになる」「どういう意味でしょうか?私の態度が悪いんでしょうか?」「誤解しないで。文句を言ってるんじゃない。これまで教えた学生の中には、もっと頭の切れるディベーターやリサーチ能力の高い学生もいた。でも総合力では、あなたは数百人人に一人の才能を持ってるわ。持って生まれたものか、何か理由があって才能の方で伸びようとしているのか。でも早熟な才能は、往々にしてトラブルを呼び寄せる。あなたが、ディベート以上に大切なものを見失うのがコワイの。そんな風にならないためにおぼえておいて。現実はディベートよりも、もう少し複雑なの。たとえば、社会正義とは何か?それはつねに相対的なものよ」「社会正義とは相...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−5保守派とリベラル派の前提条件(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング(再編集版)

    「いったい何のこと?」「君に、来年度のディベート奨学金が支給されることになったんだよ!」「本当ですか!」アメリカのディベート名門大学では、フットボールやバスケットボールのように大学の威信がかかっている。対抗試合で優秀な成績をおさめる学生には、授業料免除の奨学金が授与されることがあるし、有望な高校生にはリクルートがかかり大学同士の取り合いになることさえあった。ゴードン自身も1年時から奨学金をもらっており、同時に学年トップクラスの成績を取る秀才であった。「君はナンシーに感謝しなくちゃいけないよ」「どういうことですか?」「まだ聞いてなかったのか。奨学生選考会議で、彼女が君を熱烈に推薦してくれたらしい。ハワイから出て来て一人でがんばってる君の努力に報いないって法はないだろう、とかなり熱弁を振るったみたいだ」そうか。金銭...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−4アイ・ディド・ナッシング(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−3 トーミ(再編集版)

    夢が始まったのは、カンザスの早い夏が始まった6月上旬だった。「ナオミや、元気かい?よろこぶがよい。わしもプルートゥ様の元へ行く日が近づいたようじゃ」「それって、おばあさまが亡くなるってことでしょ!よろこんだりなんて、できないわ。ずっと生きていて欲しかったのに」「おやおや、亡くなるなんて、人間の使うような言葉を使うじゃないよ。魂は不滅じゃ。わしにも生まれ変わりの時期が来たのじゃ」「生まれ変わり?」「そうじゃ。しばらくは霊界で過ごし、その後、転生するのじゃ。わしは神々のように果てしない時を生きたいとは思わないし、これまでの数千年間は十分すぎるほど長かったわい」「おばあさまに、もう連絡は取れなくなるの?」「まず人間界で守護霊として過ごして、いつかどこかで生まれ変わる」「そうしたら、おばあさまに会えるの?」「さあ、プル...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−3トーミ(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−2 全米ディベート選手権(再編集版)

    マクミラが極右組織に接触して以来、メンバーのレベルの低さに辟易していたのとは対照的に、ナオミはリベラルで知性的、つきあっていて気持ちのよい人々に囲まれていた。全米トップクラスの大学で上位の成績を取るディベーターたちは、卒業後、法科大学院やコミュニケーション学部大学院への進学を目指すものも多かった。彼らの中には、卒業後に政治家や大学教授、裁判官や検事になるものも多い。たとえば、1976年に3年生で全米選手権を制したロバート・“ロビン”・ローランドは、ノースウエスタン大学で修士、母校カンザス大学で博士号取得後、同大学コミュニケーション学部教授になり学部長を務めた。また、パートナーのフランク・クロスは、ハーバード大学法科大学院を最優秀等の成績で卒業し、名門テキサス大学法科大学院及び経営学大学院兼任教授になっていた。全...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−2全米ディベート選手権(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱(再編集版)

    1992年9月から翌年4月にかけて、ナオミは聖ローレンス大学2年目をディベート部の活動にどっぷりつかって過ごした。アメリカでは、大学対抗の政策ディベート大会シーズンは9月の北アイオワ大学大会で幕を開ける。一つの山場が11月のシカゴ近郊ノースウエスタン大学のオーエン・クーン記念大会であり、その次の山場がクリスマス直前に開かれるロスでの南カリフォルニア大学大会である。年が明けて、2月に開かれる南部のウェイク・フォレスト大学ディキシー大会を経て、3月のカンザス大学ハート・オブ・アメリカ大会で招待制大会が終了すると、そのシーズンの通算成績のよかった大学による年間最大のイベント、4月の全米ディベート選手権に備えることになる。ディベート部に所属する学生は、一つの論題を9ヶ月にわたってリサーチし、資料を作成し、ほぼ毎週末各地...マーメイドクロニクルズ第二部第5章−1ナオミの憂鬱(再編集版)

  • マーメイドクロニクルズ第一部 序章〜エピローグのバックナンバー

    財部剣人です!おかげさまで第二部序盤の再配信も終了しました。来週からは、第二部中盤の再配信を始める予定です。今後ともどうかよろしくお願いいたします。「マーメイドクロニクルズ」第一部神々がダイスを振る刻篇あらすじ深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの...マーメイドクロニクルズ第一部序章〜エピローグのバックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第四章バックナンバー

    「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ第二部のストーリーマーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか...マーメイドクロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第四章バックナンバー

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ(再編集版)

    最初は、煉獄界の入り口に開いた小さな四つの点に見えた。だんだんと、人間界に近づくにつれて四羽の巨大なチョウに見えた。秩序を乱した罪で閉じ込められていたが、冥界からの脱獄を果たした四人の魔女たちであった。「爆破するもの」悪魔姫ドルガは、翼竜の羽を持っており羽ばたきの度に小さい竜巻が起こる。ドルガを救うことには、父親で死の神トッドの嘆願があった。「いたぶるもの」氷天使メギリヌは、美しい16枚の黒い羽を持っている。その気高さとサディストとしての内面は、遠縁にあたるかつての天使長ルシファーと大魔王となったサタンの両面を表していた。「酔わすもの」蛇姫ライムは、母で「遠くへ飛ぶ女」エウリュアレ譲りの青銅の腕と黄金の翼によって誰よりも力強く、遠くまで飛べた。だが、怒りに身をまかせて変身すれば、顔にイノシシの牙を見せ、髪が蛇に...マーメイドクロニクルズ第二部第4章−9四人の魔女、人間界へ(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕(再編集版)

    マクミラがいない間もクリストフは、死んだように眠っていた。「インフォームド・コンセント無しだが、覚悟はよいな?」アポロノミカンを開くと言った。「さあ、目を見開いて見るがよい!このまま行ったきりで、くやしくないのか?」クリストフは、ピクリともしない。「一瞬でいい、目を開けよ!」それでも動きはない。意を決して、今度は右手首にマクミラが“ドラクール”の眷属の証である鋭い牙を突き立てた。血が、再びクリストフにしたたり落ち始める。「行くんじゃない!カモン、帰ってこい!」その時、呼びかけに答えるように薄くクリストフの目が開いた。「よし、見るがよい。アポロノミカン!」その瞬間、天界にいた頃の人格、人間界に来てからの人格、マクミラの血によって生まれたヴァンパイアの人格のすべてを隔てる壁が一気に崩壊した。さらにアポロノミカンが語...マーメイドクロニクルズ第二部第4章−8堕天使ダニエル生誕(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−7 走れマクミラ(再編集版)

    (ヴラドの娘か?ほう、パラケルススの義理の孫でもあるのか。他の者ならそう簡単には持ち出させぬところだが、お主との因縁に免じて許してやるとするか。だが、ぞんざいな扱いをしたならば一生後悔することになるぞ)マクミラは、生まれかわってから初めてゾッとした。父を死よりツライ目に会わせた元凶を手にし、思わず投げ捨てたい気持ちをおさえつけて、ゾンビーランドで彼女の待つ男ためにきびすを返した。古びた一冊の本とは思えぬほど、アポロノミカンは重かった。大量の血を流したためもあったが、まるで重力にあらがうかのように歩みが重かった。数百年を越える歴史と人々の感情を吸収したアポロノミカンには信じられないほどの重量があった。心配したキル、ルル、カルが、目を閉じたまま声をかける。マクミラが、空元気を出して答える。「何のことはない。これくら...マーメイドクロニクルズ第二部第4章−7走れマクミラ(再編集版)

  • マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン(再編集版)

    「アポロノミカン!?」「たいへんな時間がかかりましたが、神導書の修復はほぼ終わっております。神導書を見たもののほとんどが発狂するか人間以外に変化してしまうため、取り扱いには最高度の注意を要します。ですがマクミラ様なら・・・・・・」「盲目の我になら、何かが起こる心配はないか!だが、この男は耐えられるだろうか?」「オーラから判断して、おそらくこの男も天界から送り込まれたゲームの一部。そうであれば、アポロノミカンの衝撃も乗り切れる可能性大です。それにこの状態では・・・・・・もはや、他に打つ手はないかと」「わかったわ」言うが早いか、3匹をしたがえると部屋を飛び出した。一人残されたジェフは、つぶやいた。「ついにマクミラ様にも愛する男が現れた。ご本人は、まだ意識されておられないが、あのあわてようにまちがいはない。父親のオー...マーメイドクロニクルズ第二部第4章−6神導書アポロノミカン(再編集版)

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