「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!
マーメイド クロニクルズ 第二部(第4章−5 血の契りの儀式)
第4章−5 血の契りの儀式 ジェフは、途方に暮れたように言った。 「魔道、いやマッド抜きで、これだけ損傷を受けた患者を救えるのですか?」 「はなから現代医学の力など、当てにする気はないわ。さあ、ひさびさに祭祀を執り行うとするか」 マクミラが、ハスキーボイスで続ける。 「...
第4章−4 引き抜き ふところが深く優秀なリーダーの下には、よき人間たちが集まって開かれた議論が行われる。そんなときには、それぞれの実力がきちんと認められるだけでなく、上のものが下のものの才能を伸ばしてやることができた。たとえば、世界中から最高の英知の集まる研究機関に傑出...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第4章−3 不条理という条理)
第4章−3 不条理という条理 勘違いしたものが優秀なものの足をひっぱるなどありえない神々の世界を知っているマクミラには、人間界の状況は全く理解しがたかった。まるで人間界においては、「不条理が条理」であるかのようだった。そうした時、マクミラは人間界に送られる場でのプルートゥ...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第4章−2 ポシー・コミタータス)
第4章−2 ポシー・コミタータス 第五期に入って、KKK団は他の極右団体と連帯を図るようになる。 たとえば、1960年代に設立されたアメリカにおけるKKK団と並ぶ強大極右組織「ポシー・コミタータス」である。ポシー・コミタータスは、政治はローカルなものだと考えており、選挙...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第4章−1 ミシガン山中)
第4章−1 ミシガン山中 マクミラは、魔物狩りも一段落して、ヌーヴァルバーグ・タワー最上階の自室で思い出していた。 1991年夏、聖ローレンス大学でのゾンビーソルジャーたちとの闘いで傷ついたクリストフの肉体をミシガン州山中に持ち帰った時のことを。 勝負に勝った「ご褒美...
第3章ー9 金色の鷲 ケイトが、アポロニアに向かって伝える。 (お忘れかい、マクミラ様が降臨してからヴァンパイアになられたことを) 今度は、ユピテルが思念を返す。 (それと今回のことと、いったいどういう関係があるのじゃ?) (マクミラ様とナオミ様が闘った夜、ペルセリアスの...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3章−8 魔神スネール)
第3章−8 魔神スネール (たとえ堕ちたといえども四人は、まだ冥界の一員。神の存在のまま人間界に仮の肉体を持ってとどまれば、1~2年の命。ですが、人間界に長くとどまる別の手だてがございます) (それは、いったい・・・・・・) (いったん魔界に落ちてしまえば、次々と人間に乗り...
第3章−7 天界の議論 遠く映るその影が太陽の黒点として知られる四次元空間、エリュシオン。 そこに鎮座するユピテルの支配するオリンポス神殿。ここは「光の眷属」でなければ、瞬時に蒸発してしまいかねない光と灼熱の空間。 いつものんびり飛び回る神殿の極楽鳥のリーダー錦鶏鳥と銀鶏...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3章−6 トラブルシューター)
第3章−6 トラブルシューター (新たに助太刀を送れるのは、たしかに冥界からだけじゃが、わしはこうした時にそなえて布石を打っておいた) (ナオミの育ての父ケネスの背中のタトゥーでございますな・・・・・・) (さすがかつての「うらなうもの」よ。前もって準備しておいたものを使う...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3章−5 ルールは変わる)
第3章−5 ルールは変わる 未だ何人もかつて訪れたことがなく、今後も誰も訪れないであろう西インド諸島とアゾレス諸島の狭間、インド洋「バミューダトライアングル」。 その2万里を越える海底に、四次元空間につながる海主ネプチュヌスの城。 きらめく宝石のように飾り立てら...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3部−4 異父兄弟姉妹)
第3部−4 異父兄弟姉妹 だが、ここでも我の愛への呪いは生きていた。マクミラは、まるで我の冷たいイヤな部分だけを受け継いだかのような、だが美しい娘に成長した。ミスティラは、まるでひた隠しにしてきた我の弱い部分だけを受け継いだかのような、だがやさしい娘に成長した。 マクミ...
第3章−3 閻魔帳 まだプルートゥ様への未練は断ち切れなかったが、人間界から来たとは思えぬ、そのオーラになぜか惹きつけられた。大将軍殿と思念を交わすようになって、その秘密はアポロノミカンのせいだとわかった。「串刺し公」と呼ばれたほどの情け容赦もない戦歴は、本来、無間...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3章ー2 ローラの告白)
第3章−2 ローラの告白 (母と大将軍殿(註、ヴラド・ツェペシュはかつて冥界の大将軍)以外、誰も知らぬことじゃが、兄弟姉妹で一番不幸な将軍には、知る権利があるも知れぬ。これから言うことは他言無用。愛に「呪い」をかけたのは、我じゃ。我の「燃やし尽くすもの」...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第3章−1 スカルラーベの回想)
第3章−1 スカルラーベの回想 スカルラーベが、おそれながらと名乗り出る。(お待ちください。今度こそ私にも、機会をお与えください)筋骨隆々とした体躯が、興奮でふるえている。 プルートゥが応じる。 (お前もか? 魔女たちの実力を考えれば、アルトロラーベが加勢しても必ず勝て...
第2章−8 愛とは? (なんじゃ?) (ほとんど戦闘能力を持たぬミスティラを送り込んでも、足手まといにはなっても、助っ人にはほど遠いかと) (それでは誰が適任と申すか?) (妹の汚名をそそぐは、兄の使命かと) (うるわしい兄妹愛よのう) 思わずアルトロラーベが、独り言の思...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章−7 裁かれるミスティラ)
第2章ー7 裁かれるミスティラ いつも不機嫌なプルートゥの顔が、なぜか機嫌よさそうに見える。 (これより我が名にかけて、ミスティラの裁きをおこなう。アストロラーベよ、代理の神官として神事を執り行うがよい) ミスティラをかわいがっているアストロラーベに、この役は酷であった...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章−6 アストロラーベの回想)
第2章−6 アストロラーベの回想 冥界中に、プルートゥの思念が響き渡った。 (我が足下にひざまずくがよい。これよりミスティラの裁きをおこなう) 呼びつけられたのは、ミスティラの父で「吸い取るもの」“ドラクール”こと、かつての大将軍ヴラド・ツェペシュ、さらに母で「燃やし尽く...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章ー5 さらばタンタロス)
第2章ー5 さらばタンタロス ライムの唄姫の名称は、ダテではなかった。 おお、ケルベロスよ、ケルベロス 三匹の息子を人間界に送った冥界の魔犬 今日も三つの頭で何思う 今宵、四人の魔女たちが 別れた己の息子らにメッセージを伝...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章−4 タンタロス・リデンプション)
第2章−4 タンタロス・リデンプション ルールを変えるそもそもの発端となった四人の魔女たち。話は、マクミラが人間界に送り込まれて妹ミスティラが後をついだときにさかのぼる。 経験不足から来る自信不足の彼女は、実力不足を露呈した。その結果、冥界の結界がゆるみ、魔女たちが氷結...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章ー3 プルートゥの提案)
第2章−3 プルートゥの提案 冥界は、精神世界を管轄するため、元々魔界からの波動攻撃を受けやすい。侵入する大物魔物たちを、かたはしからコキュートスの牢獄に閉じこめた結果、ここ数千年は「平和」が保たれていた。 かつての冥界親衛隊長ブラド・ツェペシュとマクミラ親子の相性は、...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章−2 四人の魔女たち)
第2章−2 四人の魔女たち 魔界の住人とのちぎりをむすんだドルガ、メギス、ライム、リギスの四人は、本来、死刑宣告にあたる魂百万裂き刑を受けてもおかしくはなかった。 しかし、666年の禁固刑という驚くほど「寛大な」処置の秘密は、彼女たちの血筋にあった。 死の神トッドの娘...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第2章−1 神々の議論、再び!)
第2章−1 神々の議論、再び! 肉を持つ存在の訪れを拒み、精神体の訪れのみが許される場所。 マグマ層とつながる地中深くに存在する4次元空間タンタロス。 そこに冥主プルートゥが支配する王宮があった。 大広間には大魔王サタン率いる魔界の6軍団、その下の66大隊、そのまた下の...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章−9 オン・ザ・ジョッブ・トレーニング)
第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング ケネスが続けた。 「彼女は、教官じゃない。オブザーバーだ。いいか、戦場でのオン・ザ・ジョブは、普通は行われない。初めての戦闘から、つねに本番なんだ。戦場は、本番を訓練にできるほどあまくない。死ねば一巻の終わりだ。通常の職業訓練では...
第1章−8 M I A ケネスが続けた。「話を戻そう。俺は、奴らのカンザス攻撃の目的は、三つ目の可能性が高いと思ってる」 「それは?」 「シミュレーションだ」 「シミュレーション?」 「味方の戦闘能力のチェックと相手の戦闘能力の情報収集が目的だ。様子見とシミュレーションの...
第1章ー7 襲撃の目的 「ケネス、だてに長年ネイビーにはいないね」 「ちゃかすんじゃない。学習能力のない奴はいつか命を落とすか、大切な仲間を失う。学習能力の高い奴だけが、生き残れる。一度くらい勝ったと調子に乗っていると、痛い目を見るし、逆に、敗北から財産を得ることもある。覚...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章ー6 ケネスからの電話)
第1章−6 ケネスからの電話 カンザスの闘いから1年経った1992年初夏のある夜、聖ローレンス大学学生寮で一人ぼんやりとしていたナオミの部屋の電話が鳴った。午前1時ちょうどだった。受話器を取る前から、ナオミには父ケネス・アプリオールからの電話だという確信があった。 「ケネ...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章−5 マクミラの仲間たち)
第1章ー5 マクミラの仲間たち 「お前の妹ミスティラでは、まだ神官には力不足だったのだ。冥界の牢獄の結界が、ゆるんできている」 「やはりそうか・・・・・・だが、お主たちの実力では、牢獄は簡単に破れないはず。何か、他にも理由があるだろう」 「四人の魔女が・・・・・・ドルガ、メ...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章−4 堕天使ダニエル)
第1章−4 堕天使ダニエル その時、グリッドが突然、気づいたように言った。 「う~ん、いいにおいがする。まずは腹ごしらえといくか」 他の二匹もうなずくと、飛び跳ねるやいなやストリート・ギャングたちを頭からバリバリ食べ出す。メンバーたちは、あまりの恐怖に腰が抜けている。 「...
第1章−3 子供扱い マクミラが、一瞬の内にワイヤー入りの鞭を左右に振ると、右の鞭にナイフがからみとられ、左の鞭に銃弾が取り込まれる。いつのまにか、両方の鞭に炎が走っている。 「坊やたち、まだまだあまい」マクミラがつぶやくと、鞭をさらに一振りする。 燃える炎が、二人のスト...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章−2 深夜のドライブ)
第1章−2 深夜のドライブ ハーレーダビットソンをフルスロットルで走らせる堕天使ダニエルが、声をかける。 「マクミラ、今夜はどうするんだ?」 キルベロス、カルベロス、ルルベロスの3匹が合体した魔犬ジュニベロスにまたがったマクミラが、深夜の幹線道路を逆走しながら怒鳴るよう...
マーメイド クロニクルズ 第二部(第1章−1 ビッグアップルの都市伝説)
第1章−1 ビッグアップルの都市伝説 カンザスの戦いから2年、ここは1993年初夏のニューヨーク。 翌年に就任するルドルフ・ジュリアーニ市長の破れ窓理論*を応用した復興キャンペーンはまだ始まっておらず、経済は沈滞、治安は最悪で、文化も衰退していた。レーガン政権下の1980...
ところで、女はいちごのような唇で 蛇が身を焦がすように、体をくねらせ コルセットの骨の上から両の乳房を揉んで 麝香の香りがすっかりしみ込んだ言葉を、 流れ出るにまかせていた。 ――シャルル・ボードレール『悪の華』発禁の断章 恐れられたこの私の腕に一人の男をきつく抱くとき、...
第二部のストーリーの予告 マーメイドの娘を軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデ...
エピローグ こうして、わたしの聖ローレンス大学一年生の夏は終わった。 マクミラが約束した通り、KKK団の講演会は中止になりキャンパスには静寂が戻ってきた。しかし、わたしと孔明、ビルとチャックは極左団体に加担するテロリストだったのではないかと疑いをかけられて、数日にわたる執拗...
マーメイド クロニクルズ 第一部(最終章−8 死闘の終わり)
最終章—8 死闘の終わり その時、孔明とナオミの帰りが遅いのを心配して、寮で待っていたチャックとクリストフがやってきた。 車のドアを開けて飛び出しきた二人はあまりの惨状に声も出せない。もはや勝負はついてしまったのか・・・・・・ ナオミはあきらめかけた。 「勝負は、まだつ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(最終章−7 アルゴス登場)
最終章—7 アルゴス登場 その時、急ブレーキの音が響いた。 クライスラーのジープに乗ったビルがようやく駆けつけてきた。 「すまん。さっき、留守電を聞いた!」 「おそすぎ!」 ナオミが、絞り出すような声で言う。 「孔明、まだ生きてるか? オムニポーテントの俺様にまかしとけ」...
最終章—6 悪夢の行方 ナオミは次々とゾンビたちを倒していった。 しかし、生体エネルギーを相手に打ち込むには多量のエネルギーを消費した。 いくらゾンビたちを救済しようと思っていても、すでに思考や判断能力を失った彼らの攻撃が止むことはなかった。負のエネルギーをはじき飛ばされた...
マーメイド クロニクルズ 第一部(最終章ー5 ラウンド・スリー)
最終章—5 ラウンド・スリー 闇夜に輝きが走った。 真珠の戦闘服に身を包んだ姿になると海神界親衛隊員時代の記憶が戻ってきた。人間界に来てから黒髪だった髪がマーメイド時代の栗色の巻き毛に戻っていた。 右手を高く差し出すと雨でアクアソードができた。 “ラウンド・スリー”! 戦闘...
最終章—4 ビビリ だが、ゾンビたちは腕だけではなく足も進化させていた。 折られた方の膝で地面をロケットのように蹴り出すと孔明を飛び越えてナオミに襲いかかった。 振り返った孔明は甲殻類の手を持ったゾンビが腕を車に突き刺すのを見た。 ナオミィー! わけのわからない叫び声を上げ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(最終章−3 死への旅路の終わり)
最終章—3 死への旅路の終わり ゾンビたちはちぎられた腕や折られた膝や頭から泡を出しながら怪異な変容を遂げつつあった。 最初に倒されたゾンビがバネ仕掛けのおもちゃのように立ち上った。甲虫類のようなハサミがついた左腕が復活したのみならず首がふた回りも太くなっている。 他のゾン...
最終章—2 雨中の闘い ナオミは、前方に太さ五、六メートルはありそうな銀杏の木があるのを確認するとゾンビに向かって走り出した。 ボロボロになった相手の緑色の顔を見ると逃げ出したい気分になったが勇気を奮ってスピードを上げていく。 ワン、ツー、スリー! かけ声をかけて飛び上がる...
マーメイド クロニクルズ 第一部(最終章−1 マクミラのナオミとの邂逅)
最終章—1 マクミラのナオミとの邂逅 「だけど大道芸なら時間と場所を間違えてるんじゃない?」 「昼は美容のため睡眠を取ることにしてるの。わたしの実の父はヴラド・ツェペシュ。冥界の大将軍よ。人間たちは吸血鬼ドラキュラとかふざけたあだ名をつけているようだけど」ジャグリングを続け...
第8章—8 最悪の悪夢 孔明の声で、ナオミは我に返った。 「いったいどうした。ゾンビみたいな奴が明日の会場に現れるって言うのか? まさか・・・・・・」 そう言いながら孔明も今まで感じていた不安の正体に行き当たってショックを受ける。 「ねえ、会場に急いで。イヤな予感がす...
第8章—7 謎かけ 「聞きたいことがあるんだけど、KKK団のビラの文句読んだ? 死への旅路が終わりを告げ、始まりの旅の幕を切って落とされるって部分があったでしょ。何のことかわかる?」 「読むには読んだが、まるでスフィンクスの謎かけだな」 ナオミは、小さい頃に朝は四本足、昼...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第8章ー6 ナイトシフト)
第8章—6 ナイトシフト 深夜の聖ローレンス大学キャンパス。 もう六月も終わりに近いというのに、冷たい雨がしとしと降り続いていた。 ナオミとケネスのパトロールも、最後に講演会場のローデン・オーデトリアムのチェックで終わろうとしていた。 ナオミは、孔明との深夜パトロール中も...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第8章−5 マウスピークスとディベート)
第8章−5 マウスピークスとディベート そのまま死んでしまえたらいいなと思っていた。 だけど、ディベート仲間たちが噂を聞きつけてアパートをのぞきに来て話をしたり出前のピザを食べたりしてるうちに、このまま負けちゃうのがくやしくなって、それからはディベートと勉強に精を出すように...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第8章−4 マウスピークスの告白)
第8章−4 マウスピークスの告白 「ナンシー・・・・・・」 「大丈夫。要件に入りましょう。こんなものがキャンパスで配られていたの」 青ざめた顔のマウスピークスがビラの下の方を指して言った。 ビラはKKK団が講演会の宣伝に作ったものらしかった。そこには、「アポロノミカンから...
第8章—3 不安の町 KKK団が聖ローレンス大学で週末に講演するというニュースは、キャンパスだけではなくカンザスシティ全体にあっという間に広がった。まるで街全体に、火薬の臭いが漂っているかのようだった。 白人のガールフレンドと手をつないでいた黒人学生がいきなり誰かから殴...
第8章—2 最悪の結論 彼らの議論が白熱した頃、マウスピークスが、マーチン・マーキュリーとロイド・アップルゲイトと一緒に部室に戻ってきた。彼らは全米ディベート選手権優勝者ということで委員に選ばれたのだった。 「最悪の事態よ。委員会はKKK団にオーデトリアムの使用許可を与える...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第8章−1 バランスト・ニュートラリティ)
第8章—1 バランスト・ニュートラリティ 一九九一年六月。 聖ローレンス大学ではやっかいな論争が起こっていた。 「言論の自由」の観点からキャンパス内のオーデトリアムでKKK団に講演会を開く許可を与えるべきかという提案がなされたのだった。六〇年代あるいは七〇年代なら、「質の悪...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−8 ブッシュ大統領の開戦演説)
第7章—8 ブッシュ大統領の開戦演説 一九九一年一月、皮肉にも「弱虫」のあだ名の持つジョージ・ブッシュ大統領の開戦演説によって湾岸戦争の幕が切って落とされた。 西洋には「正義の戦争ドクトリン(just war doctrine)」と呼ばれる宗教上の教義に近い理論があり、大統...
第7章—7 湾岸戦争 一九九〇年十二月。 ナオミは、もう何ヶ月も気が気ではなかった。 八月のイラク大統領サダム・フセインによるクェート侵攻に端を発した国際情勢は、きなくささを増しつつあった。国連安保理事会の大量殺戮兵器の査察団の受け入れを拒否したイラクに対する多国籍軍...
第7章—6 転機 六年前に魔道がニューヨーク州オルバニーの邸宅で、ヌーヴェルヴァーグ・シニアに面談してから儂の人生が始まった。 彼は魔道に生命のすべての謎を解き明かす神導書アポロノミカンを見せようと言った。ヌーヴェルヴァーグが神導書を開いた瞬間、頭の中のプロテクターが吹っ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−5 ゾンビー・ソルジャー計画)
第7章—5 ゾンビーソルジャー計画 人間の身体は六十兆個の細胞からなっているが、細胞の種類はたったの二百種類しかない。それが連絡を取り合って秩序の取れた状態を生みだしている。 不要になったり身体に害を与えるため「死ね」という指令を受けた細胞は、あらかじめ増殖や分化と同じよ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−4 フランケンシュタイン計画)
第7章—4 フランケンシュタイン計画 儂が目指していたのは死人を別の存在として生き返らせることだったのじゃ。雷の晩につなぎ合わせた死体に電流を流すといった非科学的方法ではない。 儂が目をつけたのは、アポトーシスと呼ばれるいらなくなった細胞が消えて新しい細胞に取って変わら...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−3 ネクローシスとアポトーシス)
第7章—3 ネクローシスとアポトーシス 「儂の力を試してみるかね?」 「不思議な波動ね。やさしさや憐れみを持たないくせに悪意や傲慢さもない。そのくせ、とてつもない凶暴さを秘めている。上陸寸前の台風、爆発寸前の活火山、あるいはメルトダウンが始まりかけた原子力発電所とでも言えば...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−2 魔道とマッド)
第7章—2 魔道とマッド うっかりすると殺し屋と間違われかねないアウトフィットだったが、知的な顔立ちを見れば大学教授のように見えないこともなかった。 「こちらこそ辺鄙な山奥にまでご足労願って恐縮です。日本語がお上手ですね。一度、早い時期に貴方に会っておきたかったもので」 ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第7章−1 マッド・イン・ゾンビーランド)
第7章—1 マッド・イン・ゾンビーランド 一九九〇年十月。 真紅のドレスをまとったマクミラの姿は、いつビックアップルの社交界にデビューしてもおかしくないほどだった。最高級サングラスの奥の閉ざされた両眼さえ彼女の美しさを引き立てはしても減じてはいなかった。 現実には、勝手気ま...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章1−10 おかしな組み手)
第6章−10 おかしな組み手 なぜ、攻撃してこないのかしら? ナオミは思った。もしかして女だと思ってバカにしてる? その時、トーミの声が聞こえてきた。 ナオミ、違うぞえ。この龍、どうしてよいか迷っておる。心を読んでごらん。神界から来たもの同士、今のお前さんならできるはずだ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第8章ー9 逆鱗に触れる)
第6章−9 逆鱗に触れる 真っ赤になった孔明の顔が次に怒りで黒くなると、三人は後ずさった。 「ナオミ、逃げろ。まさかクリストフが孔明に触れられるとは思っていなかった」 チャックが、絞り出すように言った。 孔明が、構えをとる。 さっきまでとは比べものにならない禍々しいくせ...
第6章−8 ファントム ナオミは吹き出した。 「ハワイから来たと思ってバカにしているの。ファントム・オブ・ザ・キャンパスってわけ。あなたたち本当は演劇部?」 「冗談だと思うのも無理ない。だが、黒マントのあやしい人影が深夜にうろついているのは本当だ。大学のキャンパスなんて、変...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−7 仲間たちとの出会い)
第6章—7 仲間たちとの出会い 一匹の真紅の龍が三匹の神獣たちと演武をしていた。 しなやかな肢体の銀狼。背後が見えないほど巨大な雷獣。そして、所狭しと飛び回る金色の鷲。 はるか昔、ネプチュヌス宮殿でゆうゆうと移動する海龍を見た記憶があるが、これほど見事なたてがみ、背び...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−6 夏季ディベート・セミナー
第6章—6 夏季ディベート・セミナー 聖ローレンス大学は、カンザスシティ空港から車で三十分ほど東に行ったカンザスシティの東のはずれに位置していた。 空港からシャトルバスに乗ってミズーリからカンザスの州境に入ると、Ad astra per aspera. Welcome ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−5 ナオミ、カンザスへ)
第6章−5 ナオミ、カンザスへ 一九九〇年七月二十五日、ナオミは、アメリカの「心臓地帯」(ハートランド)と呼ばれる米国中西部にあるカンザスシティ国際空港に降り立った。 カンザスシティとはまぎらわしい名だが、市の三十パーセントの行政区がカンザス州に属しているだけで、実は大...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−4 マクミラと愛)
第6章—4 マクミラと愛 五四五年前、トルコ軍の看守がマクミラの父ドラクールに同情を禁じ得なかったように、この一族には周囲の人間を惹きつける何かを持っていた。 ヌーヴェルヴァーグ・シニアが残したヴェニスのカーニバルの貴婦人の仮面を前に、暗闇の中でジェフは飾りのついた年代...
第6章—3 極右団体 「極右組織?」 「現体制をひっくり返す気もないくせに既得権益が侵されることには苛立ち、見当違いの八つ当たりをする卑怯者のクズどものことです」 「どうもあまりお友達にはなりたくない連中のようね」 「その分、良心の仮借なしに利用できるのではないですか」ジェ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−2 ジェフが語る国際関係論)
第6章—2 ジェフが語る国際関係論 「はい、よろこんで。今のところテロ組織として認知される集団は世界で約二百九十に上ります。二十世紀のテロ組織はその目的により五つに分類出来ます。一番目は思想的背景を持つ革命指向型ですが、これは冷戦構造の崩壊に伴い衰退していくでしょう」 「わ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第6章−1 動き出すゲーム)
第6章—1 動き出すゲーム 一九九〇年五月、マクミラは十八歳になっていた。 「マクミラ様、またゲームのことをお考えですね?」ジェフが言った。 「お前に隠しごとは出来ないわね。すでに勝ちが見えたゲームで果たすべき役割は何だろうと考えていたの。相手の動きが見えないうちは動きよう...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−11 滅びへの道)
第5章—11 滅びへの道 水と緑と空気と大地のエコシステムは、二十一世紀の声を待たずに完膚なきまでに破壊されようとしていた。オゾン層の破壊、地球温暖化、森林地帯の消滅などはほんの微熱に過ぎないほど、地球という「病人」の容態は悪化していた。警鐘を鳴らそうとする者には利益追求の...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−10 哲学と歴史学)
第5章—10 哲学と歴史学 会社の建て直しが一段落するとマクミラは、ヌーヴェルヴァーグ財団が所有する図書館で毎日を過ごすようになった。 名門大学の図書館に匹敵する蔵書数を誇るだけでなく、宗教、哲学、歴史、神秘学などの分野では世界有数の文献がオーディオ化されていた。しかも、盲...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章ー9 ようこそファン・ハウスへ)
第5章—9 ようこそ、ファン・ハウスへ 列車がぶつかると、お化け屋敷そっくりのドアがギーッと音を立てて観音開きに割れた。終点に着いたのだ。 巨大なベッドに男が横たわっていた。 こぼれ落ちそうなほど巨大な両眼、不自然なほど高いワシ鼻、ナイフで刻み込んだような深いシワ。男...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−8 人間のくせに?)
第5章—8 人間のくせに? 気づくと机上で真っ黒なベビークリフが揺れていた。闇夜のように不吉な思いが広がった。 まあ、最後の願いくらい聞いてやっても罰はあたるまい。ベイビーの顔を見たらおいとましてこの会社の精算の算段でもすることにしようと思い直した。 「お名前は?」 「マク...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−7 ヌーヴェルヴァーグ・シニア)
第5章—7 ヌーヴェルヴァーグ・シニア 一九七二年秋。ここ数ヶ月でジェフェリー・ヌーヴェルヴァーグが行った改革は見事の一言に尽きた。 賠償起訴を乗り切ったジェフは、遊休資産を次々有利な条件で売却し、リストラを徹底的に行った。さらにヨーロッパの製薬会社と提携話を成立させ、あっ...
第5章—6 生きる目的 「つくづくおもしろい子ね」 マウスピークスは考える様子をした。 「『人生はただ歩きまわる影法師、哀れな役者だ』。聞いたことある? 」 「はい」夏海が持っていた教科書で見かけたことがあった。 「そう。でもわたしには、そこまでシニカルには考えられない」...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−5 ホモ・コントラバーシア)
第5章—5 ホモ・コントラバーシア 少し歩いただけで足が痛み出す童話の人魚姫とは違って、ナオミの足は丈夫だった。少女時代の海岸遊びと訓練のたまものだった。 講演が終わるとナオミはゴムまりのように弾んで階段をかけ抜けた。 なぜ彼女はマウスピークスとの邂逅にそれほどまで興奮した...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−4 マウスピークスかく語りき)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−4 マウスピークスかく語りき) - 第5章−4 マウスピークスかく語りき 「一九五〇年代に政治演説研究をしていた英文学部所属の学者たちが始めたのがコミュニケーション学部の前身になったレトリック学部よ。古(いにしえ)の哲人たちは『思索...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−3 マウスピークス)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−3 マウスピークス) - 第5章—3 マウスピークス 一九九一年一月の最終金曜日。 ハイスクール最終学年になってもナオミはアイデンティティギャップに悩み続けていた。身長一六六センチ体重四十九キロと体格こそすくすくと育っていたが、...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−2 神界魚ナオミ)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−2 神界魚ナオミ) - 第5章−2 神界魚ナオミ 「おやおや、深海魚ならめずらしくないが。神界魚のご訪問とはね」 「おばあ様・・・・・・」 「こんな近くにまで来られるほど大きくなったんだね。でもマーメイドはやたらに涙を流すもんじゃな...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−1 残されしものたち)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第5章−1 残されしものたち) - 第5章—1 残されしものたち 強がりながらも夏海を失って、ケネスはすべてにどうでもよくなってしまった。 何をするわけでもなく飲んだくれているケネスにナオミが言った。 「ねえ、海に連れてって」 「うるせ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−10 夏海の置き手紙)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−10 夏海の置き手紙) - 第4章—10 夏海の置き手紙 次の日、喪服のような服を着て夏海は出て行った。 以前出演したホノルルの舞台が評判になり自分目当ての客が増えたのを夏海はよろこんでいた。だが、数ヶ月前から、君には才能がある、チ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章ー9 チョイス・イズ・トラジック)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章ー9 チョイス・イズ・トラジック) - 第4章—9 チョイス・イズ・トラジック ナオミは、何ごとか考えている様子で言った。 「おもしろい?」 「はぁ?」夏海は間の抜けた声を出した。 「何をしたらいいか決めるのって、おもしろいかって聞...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章ー8 なぜ、なぜ、なぜ)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章ー8 なぜ、なぜ、なぜ) - 第4章−8 なぜ、なぜ、なぜ プライマリースクール時代に、ナオミはどんな科目でも言われた通りに勉強する優等生たちの気持ちが理解出来なかった。 なぜそうなるのか? なぜ別の考えをしてはいけないの? なぜ答え...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−7 ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−7 ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー) - 第4章—7 ビック・パイル・オブ・ブルシュガー 「おい、六本指のシュリンプ!」 月曜日にナオミが学校に行くと、いつものようにオーエンがちよっかいを出してきた。ナオミは振り返った。 「な...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−6 シュリンプとウィンプ)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−6 シュリンプとウィンプ) - 第4章−6 シュリンプとウィンプ 一九八〇年九月。 ナオミはすでに七歳になっていた。 つやつやした肌は健康そうに見えた。大きな目が見る者が見ればわかる常人とは違う意思の強さを感じさせた。 マーメイドの...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−5 一難去って・・・・・・)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−5 一難去って・・・・・・) - 第4章−5 一難去って・・・・・・ 夜中近くにもかかわらず電話が鳴った。恐る恐る受話器を取り上げる。 「社長、もう大丈夫です。集団起訴を起こした連中が訴えを取り下げると言ってます。被害者全員のむくみ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−4 赤子と三匹の子犬たち
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−4 赤子と三匹の子犬たち - 第4章—4 赤子と三匹の子犬たち ジェフの目はすやすやと眠る赤子に釘付けになった。 顔色は青白く死人のようだが唇はつやつやしていた。 女だな、彼は直感した。かすかに麝香の香りが辺りに漂っていた。 赤ん坊...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−3 冥主との約束)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−3 冥主との約束) - 第4章—3 冥主との約束 よく出来たホラー小説では、非日常が日常に入り込む。 ドラキュラなら、吸血鬼伯爵がトランシルヴァニアの古城から大都会ロンドンにやってくる。フランケンシュタインなら、天才医学者がつな...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−2 選ばれた男) - 第4章−2 選ばれた男 ジェフには何が起こっているのか皆目見当がつかなかった。 目の前の時空間がゆがみ裂け始めていた。星空が消え去って景色が真っ暗になる。 バキバキと焚き火に爆竹を投げ込んだような音を立てて裂け...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−1 冥主、摩天楼に現る)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第4章−1 冥主、摩天楼に現る) - 第4章—1 冥主、摩天楼に現る ある作家が言った。 「ニューヨークの摩天楼は成功を象徴する屹立した巨大な男根だ」 この比喩に従うなら、十九世紀には巨大船舶、二十世紀にはジャンボジェットに乗って「アメリ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−10 透明人間) - 第3章−10 透明人間 「自分がどうしても受け入れることが出来ない人間だよ。そんな人間は相手から見たら透明人間さ」 「透明人間?」 「目の前に存在していてもいないのと同じ。誰かに腹を立てるのは何かを期待してかま...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章ー9 父と娘) - 第3章—9 父と娘 ナオミが育つにつれてケネスは午前中を海で過ごすのが日課になった。 彼女が海で泳ぐことを好んだからだ。ナオミが泳ぐ姿は巨大な一匹の魚の優雅さを持っていた。黒髪をゆらゆらと揺らしながら泳ぐのが、ナオ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−8 ナオミの名はナオミ)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−8 ナオミの名はナオミ) - 第3章—8 ナオミの名はナオミ 「信じられるか? ネイビー時代のドラッグの影響で頭がおかしくなったんだろうか?」 「信じるわ。あなたがこの何ヶ月かわたしに隠れてタトゥーショップに通いつめてたんじゃなけれ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−7 マーメイドの赤ん坊)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−7 マーメイドの赤ん坊) - 第3章—7 マーメイドの赤ん坊 ケネスが呆然としたのも、不思議はない。 赤ん坊には尾ビレがあったのだ。海軍暮らしの長かったケネスは海の伝説には一通りの知識があった。海の支配者ネプチュヌス、半身半魚の...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−6 ネプチュヌス)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−6 ネプチュヌス) - 第3章—6 ネプチュヌス ネプチュヌスの声が心に直接語りかけてきた。 (そのとおり、儂がネプチュヌスじゃ。ケネス、お主のことなら遠い先祖まで知っておるぞ。今日は頼みがある。ナオミを旅立つ日まで育ててくれ) ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−5 海主現る) - 第3章—5 海主現る 一九七三年九月四日。 ハワイ島最南端カ・ラエ岬の北ナアレスの町からはあきれるほど澄みきった海が見えていた。昨夜、五十数年ぶりという季節はずれの大型ハリケーンが過ぎ去った波打ち際には椰子の葉...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−4 マクミラの旅立ち)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−4 マクミラの旅立ち) - 第3章−4 マクミラの旅立ち (さあ、家族との最後の別れを惜しむがよい) (父上、母上、お世話になりました)マクミラが、両親と妹に顔を向けた。 (名誉なことよ。マーメイドの小娘ごときの後塵を拝するなど神官...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−3 マクミラ降臨)
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−3 マクミラ降臨) - 第3章—3 マクミラ降臨 次兄スカルラーベの思念でマクミラは我に返った。 (プルートゥ様、恐れながらわたくしめにも一暴れする機会をお与えください。マクミラ一人に大役をお任せになるとはあまりの仕打ちではございま...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−2 仮面の男 - 第3章−2 仮面の男 緑色の霧が城内を包み、兵士たちがバタバタと倒れていく中を、ゆうゆうと歩いていく一人の怪人がいた。 カツカツと靴音をさせて石段を降りて行って地下牢の前で立ち止まると、ヴラドの顔を見つめた。眠るこ...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−1 ドラクールの目覚め
マーメイド クロニクルズ 第一部(第3章−1 ドラクールの目覚め - 第3章—1 ドラクールの目覚め 古代からさまざまな民族が入り込んできた東欧南部に位置するバルカン半島。 カトリック文化圏の中央ヨーロッパ、ギリシア正教圏の東ローマ帝国、イスラム圏のオスマン・トルコ帝国の三...
マーメイド クロニクルズ 第一部(第2章−8 人生の目的) - 第2章—8 人生の目的 (「人生の唯一の目的、それを生きること」。 ラティガンとか申す劇作家のセリフかと。 そんなセリフより「人生は一幕の劇」とでも言って欲しいものでございます。わたくしごときにわかりますの...