「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−8 夏海とケネス(再編集版)
こうしてマリアの長かった話は終わった。やっと夏海が口を開いた。「ごめんなさい。いろいろ、あやまらなくてはいけないことがありすぎて・・・・・・ケネスと出会ってからはずっと幸せだった。それまでずっとつっぱっていたのが、初めて一緒にいてのびのびできる人に出会えた気がしていた。ナオミをあなたが海でひろってきて、この赤ちゃん、六本指だと思ったときも軽く考えていた。ナオミの六本目の指を切った方がよいと言ったのも、夢の記憶のような子供の時の蛇との約束にとらわれていたわけじゃなくて、本当に五本指の方がナオミのためにはいいと思ったからなの。でも・・・・・・」ケネスは、それまで一度もなかった夏海の提案に逆らった彼の記憶をたぐり寄せて、言った。「でも、どうしたんだ?」「夢を見るようになったの」「夢?」「毎晩、夢の中にあの巨大な蛇が現...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−8夏海とケネス(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−7 夏海の願い(再編集版)
夏海に起こった出来事は、その後の人生を左右する転機となった。大人になるまで、そのときのことは夢を見たようで忘れていたが、深層心理では消えないトラウマとして残っていた。それは、こんな体験だった。夏海は、文字通り蛇ににらまれたカエルになって固まっていた。目の前にいた身の丈十数メートルはあろうかという、青々とした輝くばかりの鱗に覆われた巨大な蛇。(我が名は、魔神スネール。恐れることはない。お主を、この場でどうこうするつもりはない。冥界の神官マクミラとの闘いに敗れて、人間界に堕ちて来た。娘よ、名はなんと申す?)蛇は、言葉を発するのではなく、心に直接語りかけてきた。「な、なつみ・・・」恐れていながらも、好奇心から夏海は問いかけに答えた。(マーメイドを敬う者たちの一人か・・・・・・よいか。これから我が伝えることを、よく覚え...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−7夏海の願い(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−6 夏海と魔神スネール(再編集版)
「なぜ、私たちを置き去りにしたの?」その言葉を聞いたとたん、夏海は、涙がとまらなくなってしまった。ケネスも、なんと声をかけていいかわからなかった。今日の仕掛け人マリアが、しかたがないねえという風に語り出した。「最初、夏海は、あたしにだけ本当のことを言うつもりだった。ずっと誰にも話せなくて苦しんでいた話をね。だけど、あたしは訊いたんだよ。嘘を一生つきとおす覚悟はおありかい?それはあんた自身だけの問題じゃない。つかれた方にも、とてもつらいことなんだとね。あたしの長い人生から、ひとつ確実に言えることがある。本当のことはね、どれだけつらくても真実以上に人を傷つけることはない。だけどね、嘘はね、たとえ相手を思いやってついた嘘でも、相手を疑心暗鬼にさせる。さらに悪いことに、ばれちまった時、嘘をつかれたと知られたと知ることで...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−6夏海と魔神スネール(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−5 もうひとつの再会(再編集版)
レストランの席に着くと、マリアが口を開いた。「乾杯前に、言いにくいことを言っておかなくちゃねえ。去年ニューヨークで、ケネスもよく知ってるドワイトの新作を見せてもらったのさ。その時、キャストの中になんとなく見たことがある子がいたんだよ。向こうも、あたしに気づいたようだった。目が一瞬合った。この年まで生きていると、誰かとどっかであった気がするなんてしょっちゅうだけど、誰だか思い出せないことがほとんどだから、すぐにあたしは忘れてた。だけど、ショーが終わってホテルに帰ろうとした時、あたしの席に係員があわてて飛んで来た。ちょっとお待ちください、ドワイトがあなたに紹介したい人がいるんですってわけさ。ドワイトもお偉いさんになっちまったから、ブロードウェイに行ってもこの頃はなかなか会えないんだ。楽屋でドワイトの隣にいたのは、さ...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−5もうひとつの再会(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−4 再会(再編集版)
クリスマスを翌週にひかえた12月17日の金曜日の午後7時。ナオミは、猛吹雪の合間をぬってようやく到着した人々でごった返すエジソン・ホテルのロビーで、父ケネスと祖母マリアの到着を待っていた。自動ドアが開いて、筋肉質のケネスと小柄なマリアが入ってきた。「ケネス!」ナオミは、はずむゴムまりのように抱きついた。「ナオミ、元気だったかい?」「うん、元気だよ」マリアが声をかける。「さあ、おばあちゃんにもハグさせておくれ」「もちろん。会えてうれしいわ」「いったい何年振りかね。あたしゃ、もうおなかペコペコだよ。チェックインをさっさとすませて、中華料理に行こうじゃないか。近くのレストランを予約してあるんだ」マリアが予約してくれたシー・ドラゴンは、ビルの地下1階にあるしゃれたチャイニーズ・レストランだった。ケネスからの仕送りがあっ...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−4再会(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−3 決勝ラウンド(再編集版)
金土曜日の予選ラウンドをとりあえず通っておけば、日曜日の決勝ラウンドに向けて、残りそうな大学の肯定側のケースを分析することもできた。また、米国のディベート大会では予選ラウンドですでに対戦したチームと、再び決勝ラウンドで対戦した場合、異なったサイドでたたかうルールになっている。そのために、予選において否定側で負けたチームと再びまみえることがあっても肯定側で挑むことができた。他大学のケースで要注意は、「アメリカ軍は、公式に同性愛者の採用を宣言すべきである。軍が同性愛者に対する偏見がないことを宣言することで、国内の同性愛者差別は劇的に改善される」、「二種類の化学物質が発射後に混ざって相手を殲滅するバイナリー兵器(binaryweapon)は、使用するには問題がありすぎるため禁止すべきである」、あるいは「抑止力の意味し...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−3決勝ラウンド(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−2 3年目のシーズン(再編集版)
1993年秋から冬にかけて、ナオミは充実したディベート・シーズンを過ごしていた。7月に発表された今シーズンの政策ディベート論題は、「アメリカはNATO加盟国に対する軍事的コミットメントのひとつを破棄すべし」であった。ナオミとパートナーのケイティにとって脂の乗りきった3年生のシーズンは、ここまで最高の結果を納めていた。幕開けとなった9月の北アイオワ大学主催大会で準優勝すると、11月のノースウエスタン大学主催オーエン・クーン記念大会で3位。クリスマス直前に開かれた南カリフォルニア大学主催大会では初優勝と、参加した大会すべてで3位以内という見事な成績であった。今回の論題も、さまざまなケースを含んでおり、破棄される軍事的コミットメントの定義には、米陸海空軍のすべての現存するプログラムをリサーチする必要があった。さらに現...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−23年目のシーズン(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第7章−1 イヤー・オブ・ブリザード(再編集版)
1993年。「今世紀史上最悪」と言われた雪嵐が、アメリカ全土を襲っていた。12月初頭から、北東部、中西部、北西部では猛吹雪が吹き荒れて、華氏零度(摂氏マイナス17.78度)に達する日さえもめずらしくなかった。ニューヨーク、シカゴ、シアトルといった大都市では交通機関がマヒしたり、大雪によるスリップ事故や車が立ち往生したりする事態が多発した。悲惨だったのはホームレスで、住む家も生活の糧のない彼らの凍死者が続出した。どれくらいブリザードがひどかったかと言うと、火事で出動した消防士の帽子や服の裾に鎮火中にツララができた記事がタイム誌に載ったほどであった。さらに、“ウィンディ・シティ”(風の街)と異名を取るシカゴに住む人々は、ウィンド・チル・ファクター(風の冷却効果)に苦しめられた。これは、風速1メートルごとに体感温度が...マーメイドクロニクルズ第二部第7章−1イヤー・オブ・ブリザード(再編集版)
マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第六章バックナンバー
「第一部神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ第二部のストーリーマーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか...マーメイドクロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第六章バックナンバー
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