「久しぶり」なんて形式ばった挨拶などすることなく、君はあの日のやさしい笑顔のままで、ぼくのくちびるにくちびるを重ねてきた。脊髄が〝ぶるっ〟と震える甘美なくちづ…
丸ノ内線のドアにもたれかかって、何気もなしに窓を眺めたら、朧げな黒い瞳をした男と目があった。おれとおなじピアスをした彼は、おれと目があってる筈なのに、その瞳に…
階段ってなかったら上にも下にもいけないし、ベンチにもなるから簡単なランチもできるし、こどもの遊び場にもなるし、駆けあがって息を弾ませることもできるし、おまえと…
例えば、ぼくが道化師のこころを持ったなら、両手いっぱいの花束に愛のうたをのせてプレゼントするだろう。例えば、ぼくが聖職者のこころを持ったなら、仮面でできた杯を…
白けた感情がこころを支配するよう誘い、まだ頬をつたう液体の塩分を、どこまでも薄くすることをこころみる。この液体がミネラルウォーターのように純粋な、味すらもたな…
おれのカーキ色のモッズコートは、おまえとおなじヒステリックグラマーで買ったコート。まるっきりペアなんてそんな悪趣味じゃないから、すこしデザインのちがう、だけど…
午前8時40分の下北沢駅。新宿行きの電車を後ろから3輛目のホームで待つ君。毎週月曜日と木曜日には、かならずその場所で電車を待つ君。クリスタルでできたバレリーナ…
新宿をふきぬけていく風は、ぼくをふきぬけていく君そのもの。新宿をふきぬけていく風を、ぼくをふきぬけていく君を、からだじゅうで感じて受けとめながら、2月のオホー…
雨上がりの公園の、おおきなこかげに遠慮がちに顔を覗かせた、名前も知らない、ちいさなふたつの真白い茸。背丈が真白い傘のぶんだけことなっていて、ならんでふたつ、仲…
アフリカの草原で、弱きものが強きものに屠られる。弱きものはその黒い瞳から、ひとすじの涙をながし、苦悶のうちに息絶え、強きものの糧となる。弱きものの涙も、強きも…
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