chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
私的感想:本/映画 https://blog.goo.ne.jp/qwer0987

映画や小説、本の感想を書いています。ネタばれありです。

映画はメジャー作品から、マイナーなミニシアターまで幅広く。 小説は純文学やミステリ、エンタテイメント系の作品など。国内作家、海外作家問わず読んでいます。

qwer0987
フォロー
住所
宮城県
出身
未設定
ブログ村参加

2009/10/06

arrow_drop_down
  • 中村文則『去年の冬、きみと別れ』

    ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが―。日本と世界を震撼させた著者が紡ぐ、戦慄のミステリー!出版社:幻冬舎純文学ながら、ノワールミステリのような味わいがあっておもしろい作品だった。ややつくりすぎの傾向もあるけれど、個人的には好きな小説である。ライターの男が、犯罪者にノンフィクション執筆のため、話を聞きに行く。物語自体は、最初至ってシンプルだ。だが途中か...中村文則『去年の冬、きみと別れ』

  • 天藤真『大誘拐』

    刑務所の雑居房で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は、出所するや営利誘拐の下調べにかかる。狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主とし子刀自。身代金も桁違い、破格ずくめの斬新な展開が無上の爽快感を呼ぶ、捧腹絶倒の大誘拐劇。天藤真がストーリーテラーの本領を十全に発揮し、映画化もされた第32回日本推理作家協会賞受賞作。出版社:東京創元社(創元推理文庫)何より、先に言いたいのは、本作は見事なまでのエンタテイメント小説だってことである。広大な山林を所有する地方の地主を誘拐する。ストーリーはまずそんな風にして始まる。非常にシンプルだ。なのに、主導権を握るのは、誘拐犯ではなく、誘拐される側の柳川家の女当主という点がおもしろい。しかもこの刀自がいちいち的確な助言と作戦を立てるから、痛快なのである。何より刀自のキャラクタ...天藤真『大誘拐』

  • 『日本文学100年の名作 第1巻 夢見る部屋』

    第一次世界大戦が勃発し、関東大震災が発生――。激動の10年間に何が書かれていたのか。池内紀・川本三郎・松田哲夫編出版社:新潮社(新潮文庫)100年間の名作短編を選別して収録したアンソロジーである。こういった企画は、いろんな作家を知ることができるので、非常にありがたい。以下、各作品の感想を列記する。荒畑寒村『父親』昔の吉祥寺の風景が描かれていておもしろい。今でもそれはずいぶんな賑わいだけど、昔は相当辺鄙な田舎だったようだ。父親の愛情が伝わって来るような小品。森鷗外『寒山拾得』寒山拾得が普賢と文殊の生まれ変わりと聞いて、男はあっさり信じたけれど、その印象は実際の寒山拾得を見てのものではない。人はとかく人の評価を鵜呑みするばかりで、当人たちを見ずに判断を下すものであるらしい。ラストの作者の一文は皮肉が利いていておもし...『日本文学100年の名作第1巻夢見る部屋』

  • 冲方丁『光圀伝』

    なぜ「あの男」を殺めることになったのか。老齢の水戸光圀は己の生涯を書き綴る。「試練」に耐えた幼少期、血気盛んな”傾寄者”だった青年期を経て、光圀の中に学問や詩歌への情熱の灯がともり――。出版社:KADOKAWA同作者の『天地明察』でも感じたことなのだけど、『光圀伝』でも、後半は、歴史的な記述に重きを置きすぎて、たるんでしまったきらいはある。これは冲方丁の癖なのだろうか。しかし徳川光圀という男の生きざまを過不足なく描いていて、深く心をゆさぶられる一品だった。まさに大作と言っていいだろう。次男でありながら、水戸の世子として生を受けた光國。しかし彼はなぜ長男ではなく、次男の自分が世継ぎと見なされているか理解できず苦しむことになる。そのために子供のころは兄と張り合ったりするが、包容力のある兄のために対抗意識はなくなって...冲方丁『光圀伝』

  • 小島信夫『アメリカン・スクール』

    アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作「小銃」や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇「汽車の中」など全八編を収録。一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。出版社:新潮社(新潮文庫)喜劇的なおかしみがありながら、どこか哀しみを感じさせる作品が多く、その点が魅力的な短編集である。中でも表題作『アメリカン・スクール』が一番おもしろかった。特に、敗戦後の日本の状況を暗喩的に描きだしているあたりがすばらしい。アメリカに馬鹿にされてはいけないと、やたら気張った態度を取る山田とか、外国人を恐れて卑屈に目立たないように振る舞う伊...小島信夫『アメリカン・スクール』

  • 中村元『原始仏典』

    仏教経典を片端から読破するのはあまりに大変だが、重要な教えだけでも知りたい―本書は、そうした切実な希望にこたえるものである。なかでも、釈尊の教えをもっとも忠実に伝えるとされる、「スッタニパータ」「サンユッタニカーャ」「大パリニッバーナ経」など、原始仏教の経典の数々。それらを、多くの原典訳でも知られる仏教思想学の大家が、これ以上なく平明な注釈で解く。テレビ・ラジオ連続講義を中心に歴史的・体系的にまとめたシリーズから、『原始仏典1釈尊の生涯』『原始仏典2人生の指針』をあわせた一冊。出版社:筑摩書房(ちくま学芸文庫)仏典と書くと非常に難解な響きを持つものだが、中村元の文章は非常にわかりやすくて、すんなりと頭に入ってくる。それが本書の優れた点だ。おかげで、特別難しいと感じることなく、原始仏教の世界とエッセンスを知ること...中村元『原始仏典』

  • 黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』

    「きみは、本当は、いい子なんだよ!」小林宗作先生は、トットちゃんを見かけると、いつもそういった。「そうです、私は、いい子です!」―トモエ学園の個性を伸ばすユニークな教育と、そこに学ぶ子供たちをいきいきと描いた感動の名作。出版社:講談社ともかくも、すばらしい作品である。黒柳徹子の実話に基づいているようだが、子を教育するということ、子が育っていくということについていろいろ考えさせられる作品だった。トットちゃんは今でいうところのADHDだったのだろう。授業をまともに受けず、机のふたを何回も開け閉めするなど、落ち着きのない行動はあからさまで騒々しい。いまでこそADHDと言う言葉があるので、認識は進んでいるけれど、昔はそうはいかなかったことだろう。集団に馴染めない子どもは劣等生のレッテルを貼られ、退けられてしまう時代なの...黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』

  • 麻耶雄嵩『木製の王子』

    比叡山の麓に隠棲する白樫家で殺人事件が起きた。被害者は一族の若嫁・晃佳。犯人は生首をピアノの上に飾り、一族の証である指環を持ち去っていた。京都の出版社に勤める如月烏有の同僚・安城則定が所持する同じデザインの指輪との関係は?容疑者全員に分単位の緻密なアリバイが存在する傑作ミステリー。出版社:講談社ノベルスおもしろいか、おもしろくないか、で言ったならばおもしろい。しかし人に薦めるか否かで言ったならば、薦めない。本書の感想はそれだけで尽きるような気がする。エンタテイメントとしては楽しいのだが、どうにもツッコミどころが多くて、萎えてしまうのだ。萎えてしまうのは、設定の一語に尽きる。もちろんこの手の作品はそういう点を気にしてもいけないけれど、殺人の動機のむちゃくちゃなところと、創り物っぽさが如実に出過ぎているのが、厄介だ...麻耶雄嵩『木製の王子』

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、qwer0987さんをフォローしませんか?

ハンドル名
qwer0987さん
ブログタイトル
私的感想:本/映画
フォロー
私的感想:本/映画

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用