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中原中也インナープラネット http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/

中原中也ファンのブログです。

およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!

チューヤ
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2009/05/04

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  • 中原中也・夜の詩コレクション30/春宵感懐

    春宵感懐 雨が、あがって、風が吹く。 雲が、流れる、月かくす。みなさん、今夜は、春の宵(よい)。 なまあったかい、風が吹く。 なんだか、深い、溜息(ためいき)が、 なんだかはるかな、幻想が、湧(わ)くけど、それは、掴(つか)めない。 誰にも、それは、語れない。 誰にも、それは...

  • 中原中也・夜の詩コレクション29/わが半生

    わが半生 私は随分苦労して来た。それがどうした苦労であったか、語ろうなぞとはつゆさえ思わぬ。またその苦労が果して価値のあったものかなかったものか、そんなことなぞ考えてもみぬ。 とにかく私は苦労して来た。苦労して来たことであった!そして、今、此処(ここ)、机の前の、自分を見出(...

  • 中原中也・夜の詩コレクション28/雪の賦

    雪の賦 雪が降るとこのわたくしには、人生が、かなしくもうつくしいものに――憂愁(ゆうしゅう)にみちたものに、思えるのであった。 その雪は、中世の、暗いお城の塀にも降り、大高源吾(おおたかげんご)の頃にも降った…… 幾多(あまた)々々の孤児の手は、そのためにかじかんで、都会の夕べ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション27/除夜の鐘

    除夜の鐘 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。千万年も、古びた夜の空気を顫(ふる)わし、除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。 それは寺院の森の霧(きら)った空……そのあたりで鳴って、そしてそこから響いて来る。それは寺院の森の霧った空…… その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦(そば)を食う...

  • 中原中也・夜の詩コレクション26/お道化うた

    お道化うた 月の光のそのことを、盲目少女(めくらむすめ)に教えたは、ベートーヴェンか、シューバート?俺の記憶の錯覚が、今夜とちれているけれど、ベトちゃんだとは思うけど、シュバちゃんではなかったろうか? 霧の降ったる秋の夜に、庭・石段に腰掛けて、月の光を浴びながら、二人、黙っ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション25/初夏の夜

    初夏の夜 また今年(こんねん)も夏が来て、夜は、蒸気(じょうき)で出来た白熊が、沼をわたってやってくる。――色々のことがあったんです。色々のことをして来たものです。嬉(うれ)しいことも、あったのですが、回想されては、すべてがかなしい鉄製の、軋音(あつおん)さながらなべては夕暮迫(...

  • 中原中也・夜の詩コレクション24/夏の夜に覚めてみた夢

    夏の夜に覚めてみた夢 眠ろうとして目をば閉じると真ッ暗なグランドの上にその日昼みた野球のナインのユニホームばかりほのかに白く―― ナインは各々(おのおの)守備位置にあり狡(ずる)そうなピッチャは相も変らずお調子者のセカンドは相も変らぬお調子ぶりの 扨(さて)、待っているヒット...

  • 中原中也・夜の詩コレクション23/冬の夜

    冬の夜 みなさん今夜は静かです薬鑵(やかん)の音がしています僕は女を想(おも)ってる僕には女がないのです それで苦労もないのですえもいわれない弾力の空気のような空想に女を描(えが)いてみているのです えもいわれない弾力の澄み亙(わた)ったる夜(よ)の沈黙(しじま)薬鑵の音...

  • 中原中也・夜の詩コレクション22/湖 上

    湖 上 ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けましょう。波はヒタヒタ打つでしょう、風も少しはあるでしょう。 沖に出たらば暗いでしょう、櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音(ね)は昵懇(ちか)しいものに聞こえましょう、――あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。 月は聴き耳立てるで...

  • 中原中也・夜の詩コレクション21/冷たい夜

    冷たい夜 冬の夜に私の心が悲しんでいる悲しんでいる、わけもなく……心は錆(さ)びて、紫色をしている。 丈夫な扉の向うに、古い日は放心している。丘の上では棉(わた)の実が罅裂(はじ)ける。 此処(ここ)では薪(たきぎ)が燻(くすぶ)っている、その煙は、自分自らを知ってでもい...

  • 中原中也・夜の詩コレクション20/幼獣の歌

    幼獣の歌 黒い夜草深い野にあって、一匹の獣(けもの)が火消壺(ひけしつぼ)の中で燧石(ひうちいし)を打って、星を作った。冬を混ぜる 風が鳴って。 獣はもはや、なんにも見なかった。カスタニェットと月光のほか目覚ますことなき星を抱いて、壺の中には冒瀆(ぼうとく)を迎えて。 雨後ら...

  • 中原中也・夜の詩コレクション19/夏の夜

    夏の夜 ああ 疲れた胸の裡(うち)を桜色の 女が通る女が通る。 夏の夜の水田の滓(おり)、怨恨(えんこん)は気が遐(とお)くなる――盆地を繞(めぐ)る山は巡るか? 裸足(らそく)はやさしく 砂は底だ、開いた瞳は おいてきぼりだ、霧(きり)の夜空は 高くて黒い。 霧の夜空は...

  • 中原中也・夜の詩コレクション18/月

    月 今宵(こよい)月は襄荷(みょうが)を食い過ぎている済製場(さいせいば)の屋根にブラ下った琵琶(びわ)は鳴るとしも想(おも)えぬ石灰の匂いがしたって怖(おじ)けるには及ばぬ灌木(かんぼく)がその個性を砥(と)いでいる姉妹は眠った、母親は紅殻色(べんがらいろ)の格子を締めた! さてベ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション17/夜更の雨――ヴェルレーヌの面影――

    中原中也・夜の詩コレクション17/夜更の雨――ヴェルレーヌの面影―― 夜更の雨 ――ヴェルレーヌの面影―― 雨は 今宵(こよい)も 昔 ながらに、 昔 ながらの 唄を うたってる。だらだら だらだら しつこい 程だ。 と、見る ヴェル氏の あの図体(ずうたい)が、倉庫の ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション16/むなしさ

    むなしさ 臘祭(ろうさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて 心臓はも 条網(じょうもう)に絡(から)み脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなぢ)も露(あら)わ よすがなき われは戯女(たわれめ) せつなきに 泣きも得せずて この日頃 闇(やみ)を孕(はら)めり遐(とお)き空 線条(せんじょ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション15/憔 悴

    憔 悴  Pour tout homme, il vient une èpoque
 où l’homme languit. ―Proverbe.
 Il faut d’abord avoir soif……
 ――Cathèrine de Mèdicis.私はも早、...

  • 中原中也・夜の詩コレクション14/羊の歌 安原喜弘に

    羊の歌 安原喜弘に  Ⅰ 祈 り 死の時には私が仰向(あおむ)かんことを!この小さな顎(あご)が、小さい上にも小さくならんことを!それよ、私は私が感じ得なかったことのために、罰されて、死は来たるものと思うゆえ。 ああ、その時私の仰向かんことを!せめてその時、私...

  • 中原中也・夜の詩コレクション13/生い立ちの歌

    生い立ちの歌  Ⅰ  幼 年 時 私の上に降る雪は真綿(まわた)のようでありました  少 年 時 私の上に降る雪は霙(みぞれ)のようでありました  十七〜十九 私の上に降る雪は霰(あられ)のように散りました  二十〜二十二 私の上...

  • 中原中也・夜の詩コレクション12/雪の宵

    雪の宵  青いソフトに降る雪は 過ぎしその手か囁きか 白 秋 ホテルの屋根に降る雪は過ぎしその手か、囁(ささや)きか ふかふか煙突(えんとつ)煙吐(けむは)いて、 赤い火の粉(こ)も刎(は)ね上る。今夜み空はまっ暗で、暗い空から降る雪は……  ほんに別れ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション11/更くる夜 内海誓一郎に

    更くる夜 内海誓一郎に  毎晩々々、夜が更(ふ)けると、近所の湯屋(ゆや)の 水汲(く)む音がきこえます。流された残り湯が湯気(ゆげ)となって立ち、 昔ながらの真っ黒い武蔵野の夜です。おっとり霧も立罩(たちこ)めて その上に月が明るみます、と、犬の遠吠(とおぼえ)...

  • 中原中也・夜の詩コレクション10/心 象

    心 象  Ⅰ 松の木に風が吹き、踏む砂利(じゃり)の音は寂しかった。暖い風が私の額を洗い思いははるかに、なつかしかった。 腰をおろすと、浪(なみ)の音がひときわ聞えた。星はなく空は暗い綿(わた)だった。 とおりかかった小舟の中で船頭(せんどう)がその女房に向って何か...

  • 中原中也・夜の詩コレクション9/失せし希望

    失せし希望 暗き空へと消え行きぬわが若き日を燃えし希望は。 夏の夜の星の如(ごと)くは今もなお遐(とお)きみ空に見え隠る、今もなお。 暗き空へと消えゆきぬわが若き日の夢は希望は。 今はた此処(ここ)に打伏(うちふ)して獣(けもの)の如くは、暗き思いす。 そが暗き思いいつの...

  • 中原中也・夜の詩コレクション8/寒い夜の自我像

    寒い夜の自我像 きらびやかでもないけれどこの一本の手綱(たずな)をはなさずこの陰暗の地域を過ぎる!その志(こころざし)明らかなれば冬の夜を我(われ)は嘆(なげ)かず人々の憔懆(しょうそう)のみの愁(かな)しみや憧れに引廻(ひきまわ)される女等(おんなら)の鼻唄をわが瑣細(ささい)な...

  • 中原中也・夜の詩コレクション7/妹 よ

    妹 よ 夜、うつくしい魂は涕(な)いて、 ――かの女こそ正当(あたりき)なのに――夜、うつくしい魂は涕いて、 もう死んだっていいよう……というのであった。 湿った野原の黒い土、短い草の上を 夜風は吹いて、 死んだっていいよう、死んだっていいよう、と、 うつくしい魂は涕くの...

  • 中原中也・夜の詩コレクション6/秋の夜空

    秋の夜空 これはまあ、おにぎわしい、みんなてんでなことをいうそれでもつれぬみやびさよいずれ揃(そろ)って夫人たち。 下界(げかい)は秋の夜(よ)というに上天界(じょうてんかい)のにぎわしさ。 すべすべしている床の上、金のカンテラ点(つ)いている。小さな頭、長い裳裾(すそ)...

  • 中原中也・夜の詩コレクション5/ためいき 河上徹太郎に

    ためいき 河上徹太郎に ためいきは夜の沼にゆき、瘴気(しょうき)の中で瞬(まばた)きをするであろう。その瞬きは怨めしそうにながれながら、パチンと音をたてるだろう。木々が若い学者仲間の、頸(くび)すじのようであるだろう。 夜が明けたら地平線に、窓が開くだろう。荷車(にぐるま)を...

  • 中原中也・夜の詩コレクション4/冬の雨の夜

    冬の雨の夜  冬の黒い夜をこめてどしゃぶりの雨が降っていた。――夕明下(ゆうあかりか)に投げいだされた、萎(しお)れ大根(だいこ)の陰惨さ、あれはまだしも結構だった――今や黒い冬の夜をこめどしゃぶりの雨が降っている。亡き乙女達(おとめたち)の声さえがしてaé ao, aé ao, ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション3/深夜の思い

    深夜の思い これは泡立つカルシウムの乾きゆく急速な――頑(がん)ぜない女の児の泣声(なきごえ)だ、鞄屋(かばんや)の女房の夕(ゆうべ)の鼻汁だ。 林の黄昏は擦(かす)れた母親。虫の飛交(とびか)う梢(こずえ)のあたり、舐子(おしゃぶり)のお道化(どけ)た踊り。 波うつ毛の猟犬...

  • 中原中也・夜の詩コレクション2/都会の夏の夜

    都会の夏の夜 月は空にメダルのように、街角に建物はオルガンのように、遊び疲れた男どち唱(うた)いながらに帰ってゆく。 ――イカムネ・カラアがまがっている―― その脣(くちびる)は胠(ひら)ききってその心は何か悲しい。頭が暗い土塊(つちくれ)になって、ただもうラアラア唱ってゆくの...

  • 中原中也・夜の詩コレクション1/春の夜

    春の夜 燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに一枝(ひとえだ)の花、桃色の花。 月光うけて失神し庭の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。 ああこともなしこともなし樹々(きぎ)よはにかみ立ちまわれ。 このすずろなる物の音(ね)に希望はあらず、さてはまた、懺悔(ざんげ)もあ...

  • 中原中也・春の詩コレクション35/春と恋人

    春と恋人 美しい扉の親しさに私が室(へや)で遊んでいる時、私にかまわず実ってた新しい桃があったのだ…… 街の中から見える丘、丘に建ってたオベリスク、春には私に桂水くれた丘に建ってたオベリスク…… 蜆(しじみ)や鰯(いわし)を商(あきな)う路次のびしょ濡れの土が歌っている時、...

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