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中原中也インナープラネット http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/

中原中也ファンのブログです。

およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!

チューヤ
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2009/05/04

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  • 中原中也・春の詩コレクション34/春の消息

    春の消息 生きているのは喜びなのか生きているのは悲みなのかどうやら僕には分らなんだが僕は街なぞ歩いていました 店舗(てんぽ)々々に朝陽はあたって淡い可愛いい物々の蔭影(かげ)僕はそれでも元気はなかったどうやら 足引摺(ひきず)って歩いていました  生きているのは喜びなの...

  • 中原中也・春の詩コレクション33/狂気の手紙

    狂気の手紙 袖の振合い他生(たしょう)の縁僕事(ぼくごと)、気違いには御座候(ござそうら)えども格別害も致し申さず候間切角(せっかく)御一興とは思召(おぼしめ)され候て何卒(なにとぞ)気の違った所なぞ御高覧の程伏而懇願仕候(ふしてこんがんつかまつりそうろう) 陳述此度(のぶればこた...

  • 中原中也・春の詩コレクション32/朝

    朝 雀の声が鳴きました雨のあがった朝でしたお葱(ねぎ)が欲しいと思いました ポンプの音がしていました頭はからっぽでありました何を悲しむのやら分りませんが、心が泣いておりました 遠い遠い物音を多分は汽車の汽笛(きてき)の音に頼みをかけるよな心持 心が泣いておりました寒い...

  • 中原中也・春の詩コレクション31/夜明け

    夜明け 夜明けが来た。雀の声は生唾液(なまつばき)に似ていた。水仙(すいせん)は雨に濡(ぬ)れていようか? 水滴を付けて耀(かがや)いていようか?出て、それを見ようか? 人はまだ、誰も起きない。鶏(にわとり)が、遠くの方で鳴いている。――あれは悲しいので鳴くのだろうか?声を張上げて鳴いて...

  • 中原中也・春の詩コレクション30/朝

    朝 雀が鳴いている朝日が照っている私は椿(つばき)の葉を想う 雀が鳴いている起きよというだがそんなに直(す)ぐは起きられようか私は潅木林(かんぼくばやし)の中を走り廻(まわ)る夢をみていたんだ                                           ...

  • 中原中也・春の詩コレクション29/(とにもかくにも春である)

    (とにもかくにも春である) ▲此(こ)の年、三原山に、自殺する者多かりき。 とにもかくにも春である、帝都は省線電車の上から見ると、トタン屋根と桜花(さくらばな)とのチャンポンである。花曇りの空は、その上にひろがって、何もかも、睡(ねむ)がっている。誰ももう、悩むことには馴れたので、黙...

  • 中原中也・春の詩コレクション28/早春散歩

    早春散歩 空は晴れてても、建物には蔭(かげ)があるよ、春、早春は心なびかせ、それがまるで薄絹(うすぎぬ)ででもあるようにハンケチででもあるように我等の心を引千切(ひきちぎ)りきれぎれにして風に散らせる 私はもう、まるで過去がなかったかのように少なくとも通っている人達の手前そうであ...

  • 中原中也・春の詩コレクション27/(吹く風を心の友と)

    (吹く風を心の友と) 吹く風を心の友と口笛に心まぎらわし私がげんげ田を歩いていた十五の春は煙のように、野羊(やぎ)のように、パルプのように、 とんで行って、もう今頃は、どこか遠い別の世界で花咲いているであろうか耳を澄ますとげんげの色のようにはじらいながら遠くに聞こえる あれは...

  • 中原中也・春の詩コレクション26/間奏曲

    間奏曲 いとけない顔のうえに、降りはじめの雨が、ぽたっと落ちた…… 百合(ゆり)の少女の眼瞼(まぶた)の縁(ふち)に、露の玉が一つ、あらわれた…… 春の祭の街の上に空から石が降って来た人がみんなとび退(の)いた! いとけない顔の上に、雨が一つ、落ちた…… (「新編中原中也...

  • 中原中也・春の詩コレクション25/幼なかりし日

    幼なかりし日 ・・・・・・・・・・在りし日よ、幼なかりし日よ!春の日は、苜蓿(うまごやし)踏み青空を、追いてゆきしにあらざるか? いまははた、その日その草の、何方(いずち)の里を急げるか、何方の里にそよげるか?すずやかの、昔ならぬ音は呟(つぶや)き電線は、心とともに空にゆきしにあ...

  • 中原中也・春の詩コレクション24/春の雨

    春の雨 昨日は喜び、今日は死に、明日は戦い?……ほの紅の胸ぬちはあまりに清く、道に踏まれて消えてゆく。 歌いしほどに心地よく、聞かせしほどにわれ喘(あえ)ぐ。春わが心をつき裂きぬ、たれか来りてわを愛せ。 ああ喜びはともにせん、わが恋人よはらからよ。 われの心の幼くて、...

  • 中原中也・春の詩コレクション23/春の夕暮

    春の夕暮 塗板(トタン)がセンベイ食べて春の日の夕暮は静かですアンダースロウされた灰が蒼ざめて春の日の夕暮は穏(おだや)かです ああ、案山子はなきか――あるまい馬嘶(いなな)くか――嘶きもしまいただただ青色の月の光のノメランとするままに従順なのは春の日の夕暮か ポトホトと臘涙...

  • 中原中也・春の詩コレクション20/(風船玉の衝突)

    (風船玉の衝突) 風船玉の衝突立て膝(ひざ)立て膝スナアソビ心よ!幼き日を忘れよ! 煉瓦塀(れんがべい)に春を発見した福助人形の影法師(かげぼうし)孤児の下駄が置き忘れてありました公園の入口ペンキのはげた立札 心よ!詩人は着物のスソを狂犬病にクイチギられたが……!...

  • 中原中也・春の詩コレクション19/春の日の怒

    春の日の怒 田の中にテニスコートがありますかい?春風ですよろこびやがれ凡俗(ぼんぞく)!名詞の換言(かんげん)で日が暮れよう アスファルトの上は凡人がゆく顔 顔 顔石版刷りのポスターに木履(きぐつ)の音は這(は)い込もう  (「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変え...

  • 中原中也・春の詩コレクション18/道化の臨終(Etude Dadaistique)

    道化の臨終(Etude Dadaistique)  序 曲 君ら想(おも)わないか、夜毎(よごと)何処(どこ)かの海の沖に、火を吹く龍(りゅう)がいるかもしれぬと。君ら想わないか、曠野(こうや)の果(はて)に、夜毎姉妹の灯ともしていると。 君等想わないか、永遠の夜(よる)の浪、...

  • 中原中也・春の詩コレクション17/聞こえぬ悲鳴

    聞こえぬ悲鳴 悲しい 夜更(よふけ)が 訪(おとず)れて菫(すみれ)の 花が 腐れる 時に神様 僕は 何を想出(おもいだ)したらよいんでしょ? 痩せた 大きな 露西亜(ロシア)の婦(おんな)?彼女の 手ですか? それとも横顔?それとも ぼやけた フイルム ですか?それとも前世紀の ...

  • 中原中也・春の詩コレクション16/はるかぜ

    はるかぜ ああ、家が建つ家が建つ。僕の家ではないけれど。 空は曇(くも)ってはなぐもり、 風のすこしく荒い日に。 ああ、家が建つ家が建つ。 僕の家ではないけれど。 部屋にいるのは憂鬱(ゆううつ)で、 出掛けるあてもみつからぬ。 ああ、家が建つ家が建つ。僕の家ではない...

  • 中原中也・春の詩コレクション16/春日狂想

    春日狂想 1 愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。 愛するものが死んだ時には、それより他に、方法がない。 けれどもそれでも、業(ごう)(?)が深くて、なおもながらうことともなったら、 奉仕(ほうし)の気持に、なることなんです。奉仕の気持に、なることなんです...

  • 中原中也・春の詩コレクション15/正午 丸ビル風景

    正 午 丸ビル風景 ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ月給取(げっきゅうとり)の午休(ひるやす)み、ぷらりぷらりと手を振ってあとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口空はひ...

  • 中原中也・春の詩コレクション14/月の光 その二

    月の光 その二 おおチルシスとアマントが庭に出て来て遊んでる ほんに今夜は春の宵(よい)なまあったかい靄(もや)もある 月の光に照らされて庭のベンチの上にいる ギタアがそばにはあるけれどいっこう弾き出しそうもない 芝生のむこうは森でしてとても黒々しています おおチル...

  • 中原中也・春の詩コレクション13/また来ん春……

    また来ん春…… また来(こ)ん春と人は云(い)うしかし私は辛いのだ春が来たって何になろあの子が返って来るじゃない おもえば今年の五月にはおまえを抱いて動物園象を見せても猫(にゃあ)といい鳥を見せても猫だった 最後に見せた鹿だけは角によっぽど惹かれてか何とも云わず 眺めてた...

  • 中原中也・春の詩コレクション12/わが半生

    わが半生 私は随分苦労して来た。それがどうした苦労であったか、語ろうなぞとはつゆさえ思わぬ。またその苦労が果して価値のあったものかなかったものか、そんなことなぞ考えてもみぬ。 とにかく私は苦労して来た。苦労して来たことであった!そして、今、此処(ここ)、机の前の、自分を見出(...

  • 中原中也・春の詩コレクション11/思い出

    思い出 お天気の日の、海の沖はなんと、あんなに綺麗なんだ!お天気の日の、海の沖はまるで、金や、銀ではないか 金や銀の沖の波に、ひかれひかれて、岬の端にやって来たれど金や銀はなおもとおのき、沖で光った。 岬の端には煉瓦工場が、工場の庭には煉瓦干されて、煉瓦干されて赫々(あか...

  • 中原中也・春の詩コレクション10/閑 寂

    閑 寂 なんにも訪(おとな)うことのない、 私の心は閑寂(かんじゃく)だ。  それは日曜日の渡り廊下、  ――みんなは野原へ行っちゃった。 板は冷たい光沢(つや)をもち、 小鳥は庭に啼いている。  締めの足りない水道の、  蛇口の滴(しずく)は、つと光り! 土は薔...

  • 中原中也・春の詩コレクション9/雲 雀

    雲 雀 ひねもす空で鳴りますはああ 電線だ、電線だひねもす空で啼(な)きますはああ 雲の子だ、雲雀奴(ひばりめ)だ 碧(あーお)い 碧い空の中ぐるぐるぐると 潜りこみピーチクチクと啼きますはああ 雲の子だ、雲雀奴だ 歩いてゆくのは菜の花畑地平の方へ、地平の方へ歩いてゆくの...

  • 中原中也・春の詩コレクション8/春と赤ン坊

    春と赤ン坊 菜の花畑で眠っているのは……菜の花畑で吹かれているのは……赤ン坊ではないでしょうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線ですひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど 走ってゆくのは、自転車々々々向(むこ)うの道を、走ってゆくのは...

  • 中原中也・春の詩コレクション7/春の日の歌

    春の日の歌 流(ながれ)よ、淡(あわ)き 嬌羞(きょうしゅう)よ、ながれて ゆくか 空の国?心も とおく 散らかりて、エジプト煙草(たばこ) たちまよう。 流よ、冷たき 憂(うれ)い秘(ひ)め、ながれて ゆくか 麓(ふもと)までも?まだみぬ 顔の 不可思議(ふかしぎ)の咽喉(のん...

  • 中原中也・春の詩コレクション6/春

    春 春は土と草とに新しい汗をかかせる。その汗を乾かそうと、雲雀(ひばり)は空に隲(あが)る。瓦屋根(かわらやね)今朝不平がない、長い校舎から合唱(がっしょう)は空にあがる。 ああ、しずかだしずかだ。めぐり来た、これが今年の私の春だ。むかし私の胸摶(う)った希望は今日を、厳(いか)...

  • 中原中也・春の詩コレクション5/早春の風

    早春の風  きょう一日(ひとひ)また金の風 大きい風には銀の鈴きょう一日また金の風  女王の冠さながらに 卓(たく)の前には腰を掛けかびろき窓にむかいます  外(そと)吹く風は金の風 大きい風には銀の鈴きょう一日また金の風  枯草(かれくさ)の音のかなしくて 煙...

  • 中原中也・春の詩コレクション4/春の思い出

    春の思い出 摘み溜(た)めしれんげの華(はな)を 夕餉(ゆうげ)に帰る時刻となれば立迷う春の暮靄(ぼあい)の 土の上(へ)に叩きつけ いまひとたびは未練で眺め さりげなく手を拍(たた)きつつ路の上(へ)を走りてくれば (暮れのこる空よ!) わが家(や)へと入り...

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