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  • オヤジのあくび459

    山川徹「カルピスをつくった男 三島海雲」を読む2 北京東文学社で海雲は日本語教師となる。中国人に日本語を教えるだけでなく、自らも中国語や中国文化を学んだらしい。やがて北京で土倉五郎に会う。吉野杉を元手に日本の山林王と言われた資産家の息子だ。日華洋行という会社の経営に関わる海雲は軍馬の商いに手を染める。そして着目したのがモンゴルなのだ。 モンゴルと言えば、世界帝国の一翼を担って日本にも攻め寄せてきた元が連想されるが、やがて明によって元は滅ぼされてしまう。けれど元の中核をであった近衛兵の末裔は、強かに草原地帯で生き残り、次なる清王朝と結びつく。海雲が近づいた人々はそういう人たちであった。仏教徒とい…

  • オヤジのあくび458

    山川徹「カルピスをつくった男 三島海雲」を読む1 万里の長城の居庸関を抜けて、モンゴル高原に向かった青年三島海雲。彼は遊牧民の乳製品からヒントを得てカルピスを生み出した。著者も時代は違うが、モンゴルでの草原生活を体験しているようだ。 本書は伝記であるから少年時代の教育歴が語られる。お寺の子でもある海雲は西本願寺文学寮で学僧としての日々を送る。のちに東京に移転して仏教大学になる。そこに反省会というサークルがあった。そこの機関誌が発展して、中央公論になるのですね。海雲は文学寮で恩師となる杉村楚人冠と逢う。朝日新聞の名物記者でもあった人だ。楚人冠のとの関係は生涯続く。 文学寮を出て、山口県にある開導…

  • オヤジのあくび457

    佐々木幹郎「東北を聴く」を読む2 89年前の昭和8年も、三陸海岸を津波が襲っている。その時初代高橋竹山は三陸に来ていて、九死に一生を得た話が出てくる。もし津波に飲まれていたら、私たちは高橋竹山の三味線にふれる機会を永久に失うところだった。川崎ヨシさんという方が海近くの旅館にいた竹山を含む盲目の芸人四人を高台まで押し上げたのだそうだ。時間は真夜中の三時、真っ暗闇の中の避難であった。本書ではヨシさんの妹さんやご遺族の方を訪ね、話を伺うと共に南部の牛方節(牛追い唄)他を演奏している。故人高橋竹山になり代わって所縁の人に披露する芸、本書の後半に出てくる松島桂島の海岸で漁師の方と共に唄う芸、これらに著者…

  • オヤジのあくび456

    佐々木幹郎「東北を聴く」を読む1 津軽三味線の二代目高橋竹山さんと東日本大震災の被災地を門付けして回る旅の様子が描かれる。津波で潰れた家の下から、老人が歌う「八戸小唄」が聴こえてきたという。阪神淡路大震災の時も辛い状況で「赤とんぼ」を歌っていたエピソードが報道されたけれど。ギリギリの状態で歌うとは・・歌には気持ちを落ち着かせる何かの力があるのだろうか? 「八戸小唄」はザザザンーで始まる多田武彦による男声合唱編曲が好きだった。さかえ男声でソロをやらせていただいたことがあって、メチャクチャ高い音に苦労した覚えがある。あの頃はスカスカなファルセットにならない裏声とかカウンターテナーでモンテヴェルディ…

  • オヤジのあくび455

    坂本龍一「音楽は自由にする」を読む2 本はYMOから戦場のメリークリスマス、ラストエンペラーへと続く。苦労話としてはラストエンペラーでのベルトリッチ監督との作業がおもしろい。そして自分か経験してこなかった音楽を求められた時に、坂本龍一は摩訶不思議な能力を発揮するようだ。 レコードを作る以上、坂本龍一といえども売れて、新しいファン層を広げるミッションを背負っているのだけど、ポップスとして作ったのにセールスは伸びず「エナジーフロー」のようにまるで予期しない曲が売れることに戸惑う気持ちが書かれている。降って湧いたように、気がついたら目の前にある感じ。その曲が好きなのかどうかは自分でもよくわからない。…

  • オヤジのあくび454

    坂本龍一「音楽は自由にする」を読む1 本当はひねくれているわけではないのに、文章を書くとひねくれた文になってしまう。坂本龍一氏の場合はどうなのだろう? 子どもの頃、ドビュッシーに感激する場面が描かれているが、率直に美しいものを感じ取る感性がなければ、きっと音楽家などにはならなかっただろうと思う。 学生の頃、銀巴里でシャンソンを伴奏する仕事をしていたことを書いている。ボク的にはポピュラー音楽は、一度味を知ってしまったら、離れないお菓子のようなものだから、坂本氏は頭から出ていかなくて困ったと書いている。どこかで聴いたことがある音の影響下から抜けられないのは、作曲家のジレンマだろうが、この頃から独自…

  • オヤジのあくび453

    ニャロメの「おもしろ生命科学教室」を読む この本は昭和60年が初版の角川文庫でありまして、今から37年前の本です。このシリーズは、数学教室と宇宙論を持っていて、その頃教えていた小学校高学年の「子どもたちに科学に興味を持ってもらえたらいいな」と言う思いが高じたのだろう。その後ドラえもんも学習シリーズを始めて、そちらのシリーズは大手学習塾も監修していたせいか、よく読まれて今に至っている。けれど読者を小学生と限定しないで、興味の赴くままに科学の世界を紹介している点では、赤塚不二夫のこのシリーズに軍配が上がると思う。 私が生命科学と聞いて思い出すのは、高校時代の生物の井上先生。先生は教科書に頼らない授…

  • オヤジのあくび452

    失われた30年ではなくて脱成長の30年なのかも? バブル崩壊後、小さな波はいくつか訪れたが、日本が再び目覚ましい経済成長に転じることはなかった。たしかに昭和元禄といわれた高度経済成長期の好景気は見る影もない。 お叱りを受けそうではあるけれど、この失われた30年こそは、存外未来を先取りした時期ではなかったのだろうか? これでよかったのだとまでは言い切れないが、少なくとも仕方がなかったのだ。郊外にマイホームを建て、住宅ローン返済にあくせく働く必然性が、今の若者にはない。場所を選ばなければ家は余っているからである。地下資源がない国で、おまけに食糧自給率も低い国なので、海外と競争しながら貿易で稼がなけ…

  • オヤジのあくび451

    小林秀雄 考えるヒントより「平家物語」を読む。 「琵琶を弾いています」と言うと、小泉八雲の耳なし芳一や平家物語を連想される方が多い。平曲を奏でる盲目琵琶法師の伝統が途絶えてしまった現代でも、琵琶曲の中に平家物語に題材を求めた曲は多い。 小林秀雄は瀬戸内海に浮かぶ大三島大山祇神社の甲冑を見て、一騎討ちに必要な機能を備え、それが故の鎧の複雑な構造に感嘆する。そして平家物語も複雑な物語であると言う。元来が琵琶法師、検校から座頭に至るまで、口承で語り奏でてこられた物語を今は先ず文字で接するのだから、その落差は大きい。けれど文字にならなかったことにより、心理描写の迷路へと向かわず、朗々とした我が国の口承…

  • オヤジのあくび450

    米山文明「声と日本人」を読む+日本語のためのボクの発声教育試論3 いろいろな声の出し方のうち、始めに教え始めていいのは、地声(表声)と裏声の違いだと思います。ここで言う裏声とは抜いたファルセットではなく頭声的な響きを伴った声のことで、有名な弓場メソッドでは「アーホー」と切り替えを練習するステップが出てきます。ある程度この違いがわかれば、楽になる歌える高音域が広がり響きが出てきていろいろな曲を楽しめるようになります。男子の場合、変声期を迎えると地声のコントロールが難しいので、無理は禁物ですが地声以外の声の出し方を知っていることが有効な場合があります。 ここで強調したいのは、元々の地声を否定しない…

  • オヤジのあくび449

    米山文明「声と日本人」を読む+日本語のためのボクの発声教育試論2 小学生期の音楽、主に歌の話をします。ここ30年間くらい低学年に最も人気のある曲は、となりのトトロの「さんぽ」でしょう。たしかに子どもたちに好かれる要素が揃っている曲です。けれど音域を見てみましょう。低いドからオクターブを超えて高いミまで、低学年にその音域を歌うのは困難でして、当然音程は不正確になります。「子どもたちが楽しく歌っているならそれでいいじゃないのさ」という考えもあるでしょう。けれどそれは発声教育ではないと思うのです。 低学年は自分の声で音楽を楽しむ第一歩だからこそ、無理のない音域で美しい日本語が発声できることを体験させ…

  • オヤジのあくび448

    米山文明「声と日本人」を読む+日本語のためのボクの発声教育試論1 日本語について一貫した発声教育がなされていない。例えば小学校に限ってみても、多くの子どもたちが、国語の授業の音読と音楽の合唱、運動会での応援団は明らかに声を切り替えている。それはTPOに応じた発声の応用と言えるかもしれないが、ベースとなる呼吸や声帯の使い方については、何も教えてもらえない。だいたいが教えている先生からして、発声について教わっていないし、当然メンテナンスもできていない。だから掠れた声やしゃがれ声の先生が多いのだ。 これは政治家の諸先生も同様。 姿勢や呼吸が基本のキであることは言うまでもないが、力んで詰めた発声に気づ…

  • オヤジのあくび447

    福元一義「手塚先生、締め切り過ぎてます! 」を読む 手塚治虫さんの一生で最も大きな事件は、やはり虫プロの倒産でしょう。でも絶壁から谷底に突き落とされたような境遇で、不死鳥のように「ブラックジャック」や「三つ目がとおる」が始まるのが、一漫画ファンとして不思議だったのですが、倒産直前に少年チャンピオンから続いて少年マガジンから連載の依頼があり、そこに筆者も立ち会っていたそうです。依頼の順番が変わっていれば「ブラックジャック」がマガジンに連載されていたかもしれないのです。漫画で血を描くことは斬り合いのシーンなど多いのでしょうが、ブラックジャックでは手術シーンでした。そして血はマジックで色を付けたと本…

  • オヤジのあくび446

    コロナ・ブックス編集部「諸星大二郎の世界」を読む 本書は学者や評論家によりそれぞれの視点から、諸星大二郎の世界を語った文と諸星自身の漫画から構成されている。 水木しげるの妖怪世界でも、つげ義春「ねじ式」のシュールな夢幻の世界でも楳図かずおワールドでもない画風。人類が辿ってきた神話や伝説を下敷きにして、摩訶不思議な世界を構築している諸星大二郎。きっと手塚治虫も宮崎駿も庵野秀明も、大いに刺激を受けたに違いない。高橋留美子に至っては、うる星やつらの主人公の名前にしてしまった。 諸星作品をクトゥルー神話の影響から語ろうとする評論家がいるようだ。説明が付かない=得体の知れない代物に対して、必死で解説する…

  • オヤジのあくび445

    柳原良平「柳原良平のわが人生」を読む2 前回は肝心の本の中身にふれていませんでした。幼少期や寿屋=サントリーで開高健や山口瞳とタッグを組んで大活躍した時代は飛ばして、著者が横浜に移り住んだ昭和39年から。 前回、著者の家の前を通勤していた話をしたけれど、山手の中腹に位置しているお宅から港は見えない。正確に言えば購入当時は見えていたのである。その後レイトンハウス以外目立った高層ビルがなかった山下町に次々と高層ビルが立ち並び、湊を見下ろす視界はますます閉ざされてしまった。 マリンタワーにあった横浜海洋科学博物館が存続の危機に陥った時、著者は「横浜市民と港を結びつける会」を結成して、運動を展開した。…

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