chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2007/11/10

arrow_drop_down
  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 4

    夜、さとみはテスト勉強を切り上げて寝ようとする。ふと思いついて、床のカーペットの上に仰向けに転がる。両脚をそろえてゆっくりと上げて行く。腹筋の無いさとみはすぐに顔が真っ赤になり、脚とお腹がぷるぷると震え出した。それでもがんばって脚を上げ続ける。足裏が天井に向く。それからさらに脚を顔の方へと倒して行く。背中もつられて上がる。「むぎぎぎぎ……」と、謎のうめき声を発しながら続ける。夕食時に見たバラエティ番組で芸人がやっていたものだった。その芸人は出来なくて笑いが起こっていた。「こんなのが出来ないんだ」とさとみも笑った。で、実際に試してみたのだった。思いの外、苦しい。それでもさとみは続けた。ついに爪先が頭より先に付いた。「やったぁ!」さとみはその体勢のままで歓喜する。戻そうとするが、すでに力尽きたさとみには脚が戻せない...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪4

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 3

    「会長!」入って来たのはしのぶだった。手には、鞄と昼に見せていた布袋を持っている。驚いた顔をのしのぶだったが、すぐに笑顔になった。「そうか、会長も協力して下さるって事ですね!」「いや、その……」「分かっています!さすが『百合恵会』の会長ですね!テスト前なのに、わたしを待っていてくれたんですね!うれしいっ!」しのぶはきゃあきゃあ言いながら飛び跳ねている。「だからね……」「実際、一年のわたしが三年の居る二階を歩くなんて怖かったです。なんだか、みんな大人に見えちゃって……」しのぶはほうっと息をつく。「でも、会長がいてくれて、百人力です!」もう何も言えなくなってしまった。しのぶはすっかり心霊モードになっていたからだ。さとみが居たせいもあるだろう。さとみは諦めた。「……今、一番奥の個室は空いているわよ」さとみが言うと、し...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪3

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 2

    午後の授業中、さとみはずっと考えていた。しのぶについてだ。……いくら何でも、女子トイレにボイスレコーダーを設置するのは行き過ぎだわ。一番奥の個室って言っていたけれど、真夜中まで誰も使わないとは言えないわ。それに、もし、仕掛けた事が露見して、それがしのぶちゃんだって分かったら……さとみの脳裏に「退学」や「停学」の文字が躍る。……それだけじゃないわ。どうしてこんな事をしたのか訊かれたら、しのぶちゃんの事だから「わたしは心霊サークル『百合恵会』のメンバーです。二年生の綾部さとみが会長です」って、胸を張って言いそうだわ。下手したら、わたしまで責任とって「退学」か「停学」だわ!それは困るわね。来週から試験だし。いや、それを抜いても盗聴行為なんていけない事だわ!さとみは一人うなずくと、放課後を待った。さとみは悪い方向に向か...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪2

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 1

    しばらくは何事も無く過ぎて行った。と言うよりも、何事も無い様にして過ごしたのだ。相変わらず昼休みにはアイと朱音としのぶがやって来るが、中間テストも近いのでサークル活動はしばらくしない事になった。顧問の松原先生も試験作りで夜な夜な徹夜らしく、しのぶが言うには「ほぼポンコツ状態」なのだそうだ。朱音も必死で勉強に取り組んでいるらしい。ゆとりがあるのはしのぶとアイだ。しかし、この二人のゆとりには真逆の意味がある。しのぶは優秀ゆえのゆとり、アイはどうせ今さらの開き直りのゆとりだった。来週に試験が迫って来た月曜日、昼休みに顔を出したのはアイとしのぶだった。「あれ?朱音ちゃんは?」さとみがしのぶに訊く。「まさか、こんな時期に病気とか?」「いえ、勉強です」しのぶがうんざりした顔で答える。「昼休みに勉強したって、何の意味もないと...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪1

  • 豆蔵捕り物帳 9

    皆が動きを止めて豆蔵を見る。「何が可笑しいんで?」宗右衛門が怪訝か顔で訊く。「それよりも、どうか、わたくしにお縄を」皆がまた口々に「お縄は自分に」と言い出した。「まあ、待ちねぇ」豆蔵が両手で皆を制する。「オレは端っから大入道野郎の話は信じちゃいなかった。そんな野郎が、実際にいるわけがねぇ」「でも、親分は上尾の鬼蔵ってのがいるって言ったじゃないか」おてるが言う。「まあ、偶然って言うのはあるもんだって、あの後みんなで話してなんだけど」「上尾の鬼蔵ねぇ……」豆蔵はにやりと笑う。「そんなヤツ、居ねぇよ。オレの作り話さ」「なんだよ、そりゃあ!」おたきとおてるは一緒に声を出す。「やっぱりな……」公太はため息をつく。「みんな調子に乗って話を盛り過ぎたんだ、親分はそれを承知でオレたちを乗せたんだな」「まあ、そんな所だ」豆蔵は笑...豆蔵捕り物帳9

  • 豆蔵捕り物帳 8

    「わたくし、宗右衛門長屋の大家を務めております桶屋宗右衛門でございます」白髪の年寄は、そう名乗ると深々と頭を下げる。「このたびはわたくしどもの長屋で、親分さんにご迷惑をお掛け致しまして……」「まあ、堅っ苦しい挨拶は良いや」豆蔵は言う。「で、皆さんで何をしに来なすったい?」「……親分さん、既にすべてお分かりなんでしょう?」宗右衛門が観念したように言う。「あの鉄太郎の件でございます」「まあな」豆蔵はうなずく。「おたき婆さんが刺したんだろう?」「……」おたき婆さんは目を丸くして豆蔵を見つめる。「……どうしてそれを……」「鉄太郎が背中を刺されていた事だ。おてるさんの言い分じゃ、男同士が怒鳴り合っていたって事だったが、その時にかっとなって刺しゃあ、腹を刺す。だが背中だった。驚いて逃げた背中を刺したんなら、鉄太郎は木戸に向...豆蔵捕り物帳8

  • 豆蔵捕り物帳 7

    事件があって数日が過ぎた。豆蔵は家でごろりと寝転んでいた。松吉が駈け込んでくる。「親分!何をごろごろしてんでやすか!片倉様が鉄太郎の下手人探しはどうなったってお聞きですぜ!」「……ったく、相変わらずうるせぇヤツだな」豆蔵は面倒くさそうに起き上がる。この文句は松吉に言ったものか、片倉に言ったものか。「オレはな、待っているんだよ」「待っているって?誰をでやすか?」松吉は言ってふっと笑う。「まさか、下手人とか?」「おう、そのまさかだよ」「そんな、棚ぼたみてぇな話がありやすかってんだ。岡っ引きは足で稼ぐって、親分がいつも言ってんじゃねぇっすか」「何でぇ、オレに説教しようってぇのかい?」「言いたくもなりやすぜ。ここ数日、片倉様が番屋でお待ちなんですぜ」「待つぐれぇなら、ここまで足を運びゃ良いじゃねぇか」「同心の旦那になん...豆蔵捕り物帳7

  • 豆蔵捕り物帳 6

    豆蔵は宗右衛門長屋に来た。人死にが出たと言うのに、聞こえてくる声はにぎやかだった。笑い声も交じっている。豆蔵は一番奥にある井戸まで行くと、おかみさんたちが集まっていた。豆蔵を見ると、皆ふっと口を閉じる。「こいつぁ、嫌われたもんだ……」豆蔵は苦笑する。おかみさんの中に、おたき婆さんとおてるもいた。二人は、豆蔵を見るとそそくさと立ち上がった。「おい、待ちねぇ、お二人さん」豆蔵は声を掛ける。「改めて、訊きてぇ事があるんだ」「親分さん、今日は堪忍してやんなよ」井戸端にしゃがんだ恰幅の良いおかみさんが言う。「おたきさんもおてるさんも朝っぱらから大変だったんだからさ」「そうそう、代わりにあたしら話を聞くよ」別のおかみさんが言う。「でもさ、さっきまで来ていた若い衆に話はしたよ」他にいる五名ほどのおかみさんたちがうなずく。おか...豆蔵捕り物帳6

  • 豆蔵捕り物帳 5

    豆蔵は抜いた包丁を見る。朱に染まっているが既に乾いていた。突然、、豆蔵は切っ先を片倉に向ける。「おい、妙な事をするんじゃねぇよ」片倉はイヤそうな顔をする。「いえ、そうじゃねえんで」豆蔵は包丁を高く差し上げる、「どうでやす?かなりの手入れがしてあるように見えやせんか?」「……そうだな」片倉も包丁を覗き込む。「こりゃ、毎日毎日丁寧に研いでいるって感じだな」「へい。ただ、研ぎ過ぎて、ちいと薄くなっているようで……」「豆蔵、お前ぇ、詳しいな。知り合いの女にでも教えてもらったか?」「へへへ、まあ、そんなところで……」相好を崩す豆蔵だが、目は笑っていない。「これじゃ、料理には使えねぇ」「って事は、端っから、人殺し用にしてあったって言うのか?」「あり得る話でやしょうね。これだけ研いでいりゃあ、ぶすりとやるのも大して力が要らね...豆蔵捕り物帳5

  • 豆蔵捕り物帳 4

    番屋へ行くと、土間に菰の掛かった戸板が置かれていた。上がり框に腰を掛け、番屋の親爺の淹れた茶を、つまらなさそうな顔で啜る片倉が居た。「おう、豆蔵、どうした?」片倉が茶の残りを土間に流しながら言う。「下手人を挙げたのかい?」「片倉様、笑えねぇ冗談ですぜ。まだ調べを始めたばかりじゃねぇですか」豆蔵は苦笑する。「……ちょいと遺骸を検めたいと思いやしてね」「ああ、好きにしねぇ」片倉は言うと立ち上がる。「『八重洲の黒豆』の実力、見せてもらおうじゃねぇか」豆蔵は菰を剥がす。背中に包丁が刺さったままなので、鉄太郎は横向きになっている。豆蔵は片膝を突いて背中を見る。「片倉様、どう思いやす?」「え?」突然の豆蔵の問いに片倉は戸惑う。「……どうもこうも、これ以上無ぇほど死んでやがるぜ」「へぇ……」豆蔵は生返事で返す。「……まず気に...豆蔵捕り物帳4

  • 豆蔵捕り物帳 3

    鉄太郎は長屋の自分の部屋を出た所で倒れていて、そこで絶命していた。隣のおたき婆さんが最初に見つけたそうだ。「なんだか男同士が大きな声で怒鳴り合ってての。わしゃ、怖くって部屋の隅で震えとった。そのうち声が止んだんでな、そっと外を覗いたら、鉄太郎が倒れとった。背中に包丁を刺したままでな」おたき婆さんが言う。こんな痩せっぽちの婆さんが震えたら骨のぶつかり合う音がしそうだぜ、と、豆蔵は思った。「言い争っていた相手の声とかに聞き覚えはねぇかい?」「まあ、鉄太郎んとこには碌でねぇ連中がしょっちゅう出入りしとったからのう。そいつらの誰かだとは思うが、誰とは分からん」「あたしゃ、ちらっと見たよ」そう言ってきたのは、鉄太郎の部屋の向かいに住む佐助の女房のおてるだ。「いつもよりも大きな声がしてさ、それも喧嘩っぽいだろう?鉄太郎のヤ...豆蔵捕り物帳3

  • 豆蔵捕り物帳 2

    豆蔵が宗右衛門長屋に着くと、既に幾人かの役人がいた。その中に馴染みの同心、片倉左馬之助が居た。苦み走った良い男で、若い娘に人気だった。実際、死体検分の場であるのに、若い娘が目立っていた。皆、片倉目当てのようだ。「これはこれは、片倉様……」豆蔵が声をかける。「わざわざのお運びとは。何か裏でもある大事件なんで?」「そんなものは無ぇよ」片倉は吐き捨てるように言う。武士からぬ伝法な物言いは同心に共通だ。「たまたま暇していたら、与力の堀田様に言われてよ。これからちょいと繰り出そうかって思っていた矢先だった」「そりゃ、お気の毒様で」豆蔵は心にも無い同情を示す。「で、松吉の話じゃ、鉄太郎が殺されたとか?」「ああ、そのようだ」片倉は戸板に乗せられて菰の被せてある鉄太郎の死骸を顎で示す。「背中から出刃包丁で一突きだ」「そうですか...豆蔵捕り物帳2

  • 豆蔵捕り物帳 1

    「親分、大変だぁ!」子分の松吉が、血相を変えて飛び込んで来た。草履を乱暴に脱ぎ捨て三和土に跳び上がる。ここは八重洲南伝馬町の岡っ引き、豆蔵親分、黒ずくめの着物姿で通称「黒豆」の住まいだ。住まいと言っても小さな古びた一軒家で、豆蔵一人の男所帯。その割に中が小ざっぱりしているのは、近所の豆蔵贔屓のお熊婆さんがあれこれと世話を焼いてくれるおかげだ。そのお蔭で特に不自由もしていない。畳にごろりと横になり、松吉に背を向けたまま、振り返りもしない。奉行所から賜った十手を足元に転がしている。「親分!起きてんでしょう?聞いて下せぇよう!」今日は何時になく五月蝿い松吉だった。「何でぇ、そんな大きな声を出さなきゃなんねぇほど、このぼろ屋は広かねぇぜ」豆蔵は面倒くさそうに言うと、ごろりと向きを変え、松吉を見る。「親分、好い加減にして...豆蔵捕り物帳1

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 33

    その夜。さとみは自分の部屋でベッドの転がっていた。ピンクのスエットを着て、ふんふんふんと鼻歌を歌いながら、膝を曲げて重ねた脚の爪先をぶらぶらと振っている。顔には満足そうな笑みが浮かんでいる。みつを助けた後、三時限目と四時限目を目いっぱい寝て(得意の目を開けたまま寝るを使った)、すっかり回復した。昼休みにアイと朱音としのぶがやって来た。「会長、なんだか機嫌が良いですね」アイが言う。「何か良い事があったんですか?」「え?会長、抜け駆けはダメですよう!」朱音が言う。「わたしたちにも教えてくださいよう!」「そうです」しのぶが言う。「そこの所、詳しく」「ふふふ……」さとみは笑む。「例の窓の件なんだけど、解決しちゃったの」「ええええ~っ!」三人は同時に声を出すが、アイと朱音は驚居いた顔をし、しのぶは悔しそうな顔をしている。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪33

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 32

    「みつさん!」「さとみ殿……」みつはさとみに答えると、不意に体勢を崩し、がくりと片膝を突いた。刀を杖のようにして倒れ込むのを耐えている。「みつさん!大丈夫?」さとみはみつのからだを支える。「大丈夫です。突然意識が戻ったのですが、まだ薄ぼんやりとしていて、はっきりとしない感じです……でも、大丈夫」みつが力ない笑みをさとみに向ける。さとみは心配そうな顔でみつの背を撫でる。「ははは……」ミツルの笑う声がする。さとみは声の方を見る。ミツルは腹を押さえながら立ち上がっていた。「さとみちゃん、君は強いな……」ミツルは言う笑む。が、苦しそうに顔を歪めた。「授かった呪の力が効かなかったようだね。みつの呪まで解いてしまったのだから……」「やっぱり、あの影から力をもらったのね」さとみは言う。「それと言わせてもらうけど、わたしの力が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪32

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 31

    さとみは両腕をだらりと下げ、足の動かないままの姿で、微笑みながらわざとゆっくりと近づいて来るミツルから目が逸らせなかった。「ふふふ……娘の若々しさと言うのは、傍から見ていても良いものだね」ミツルは言う。「それに触れると言うのは、まさに極上だね……」声を出して拒絶できないさとみは、頭を幾度も左右に振る。ミツルの足が止まる。「おや?イヤなのかな?」ミツルは楽しそうに言う。「イヤならそれで構わないけど、さとみちゃんの霊体はもう生身には戻れないよ。さっきよりも苦しくなって来ただろう?」確かにそうだった。このままが続けば、さとみの生身は何の反応も無いまま生きるだけになってしまう。しかも霊体が無いので、それほど長くは命を保てない。砂時計の砂が下に落ちて行くようにして命が尽きてしまう。そうなれば、さとみの霊体は帰る場所を失い...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪31

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 30

    みつはのろのろと顔を上げた。その顔を見て、さとみは息を呑む。いつもは溌溂とした眼差しのみつが、今はとろんとした生気の無い眼差しをしている。さとみが見えているはずだが、表情を変えない。何時も腰帯に手挟んでいる大小の刀は、床に置かれている。壁に背凭れて、だるそうな感じで両脚を前に伸ばしている。両の手を床に付いている。「みつさん!しっかりして!どうしたのよう!」さとみは言いながら、みつに駈け寄ろうとする。しかし、ミツルに腕をつかまれた。それほど強い力では無かったが、足が前へ動かない。「ちょっと!何をしたのよう!」さとみは振り返りミツルを睨む。「あなた、みつさんに何をしたのよう!」「そう大きな声を出さなくても聞こえるよ、さとみちゃん……」ミツルは笑む。「みつはね、わたしのコレクションとなったのさ。身も心もね」ミツルは言...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪30

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 29

    「わたしは、綾部さとみ」さとみはぶっきらぼうに答える。「現役の高校生、この学校に通っているのよ」「ほう……」ミツルは驚く。「じゃあ、君は、生きているのかい?」「そうよ。わたし、昔っから霊体を抜け出させて霊と話が出来るのよ」「それは貴重だね」ミツルは笑む。「コレクションに加えたいな……」「馬鹿な事を言わないでよう!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「さあ、みつさんを返しなさいよう!」「どうしようかなぁ……」ミツルはにやにやする。「返す代わりに君がコレクションになってくれるのかな?」「それじゃ、意味が無いじゃない!」「ははは、君は面白いな」ミツルが楽しそうに笑う。「君の生きる今の時代は、女性でも物怖じせずに自分の意見が言えるんだね。羨ましい話だ。わたしもそんな時代に産まれたかったな。そうすれば、こんな事にはならなかっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪29

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 28

    廊下を抜け階段を降り北校舎へと進む。途中で幾つもの霊体に出会った。刀を腹から背中へと串刺しにされた侍、からだの半分が吹き飛ばされたような軍服姿の軍人、足首に重々しい鎖を巻きつけて濡れそぼっているやくざ風の男、陰湿な笑みを浮かべた下着姿の女、他にも似たようなのが見える。つい最近まで見かけたことの無い性格の悪そうな、恨みつらみを持っていそうな霊体たちだ。良からぬ事が起こりつつあるのかもしれない、そう思わせる雰囲気だ。さとみは不安に思いながらも進む。北校舎には霊体は見当たらなかった。やはり、ここは特別なんだ、さとみは思った。下衆い霊体は近寄れないのかもしれない。さとみは深呼吸をして一階の各部屋を回る。一階にはいなかった。二階を回る。そこにもいない。「ちょっと苦しいなぁ……」さとみはつぶやく。長く距離を置いて生身と離れ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪28

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 27

    一限目から全く身が入らないさとみだった。頭の中では、ずっとみつの事を考えている。先生が「では次のページ」と言っても教科書を繰らないし、「ここは書き取っておくように」と言って板書したものもノートに書かない。そもそもノートを広げていないし、芯の出ていないシャープペンは閉じたノートの上に転がっている。右手で頬杖をついたまま、ぽうっとしている。一限目が終わり、休憩時間になった。麗子がさとみの机の前に立つ。「さとみ、どうしたのよう?」麗子が言う。しかし、さとみは反応しない。相変わらず頬杖をついたままだ。「さとみぃ!」麗子はばんとさとみの机を叩く。周りのクラスメイトが驚いている。さとみはやっと、ゆっくりと顔を上げた。「あら、麗子……」「あら、じゃないわよ。どうしたのよ、ぼうっとしてさ。得意の目を開けたまま寝るってヤツだった...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 26

    「……さてっと、わたしは帰るわ」百合恵は職員専用出口でハイヒールに履き返ると、大きく伸びをした。「ちょっと寝不足だから、帰って寝るわ。美容のためにもね。さとみちゃんも一緒に来る?」「何言ってんですか!」さとみは呆れたように言う。「わたしたちはこれから授業がありますから、このまま残ります!」「ほほほ、分かっているわよ。からかっただけよ」「もうっ!」「あら、もうっは牛よ」百合恵は笑う。それから松原先生に顔を向ける。「今夜はダメと言う事ですけど、明日の夜は、どうでしょうか?」「明日なら、大丈夫ですよ」松原先生はどんと自分の胸を叩いて見せた。「と言う事で、我が心霊サークル『百合恵会』の深夜活動は明日と言う事にします。みんな、良いかな?」アイと朱音としのぶは「へ~い」と、気の無い返事を返す。松原先生は満足そうにうなずく。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 25

    「豆蔵の話だと、学校の中らしいわ」百合恵がさとみに言う。「外に出たら、気合の入った豆蔵たちに見つかるだろうからね。見つかったら……」「許さない、ってところですね」さとみも窓を見る。皆の持つ憤りが大きな塊になっているように思えた。「たしかに、気合は入っていますね……」「そう。だから、結界の張ってある学校内が安心ね。豆蔵たちは入って来れないから」「じゃあ、豆蔵たちが窓から覗くのを見ながら、あっかんべえが出来るんですね」「まあね。あっかんべえどころじゃないと思うけどね」百合恵は苦笑する。「でも、豆蔵たちを煽るって言う意味では同じかもね」「他に何かあるんですか?」さとみは首をかしげる。「相手を小馬鹿にするにはあっかんべえが一番だと思うんですけど……」「ふふふ、『箱入り少女さとみ』は、余計な事を知る必要はないわ」百合恵は...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 24

    校門でたむろっていると、用務員の高島さんがやって来た。アイの合図で、朱音としのぶは高島さんの前に出て「おはようございますぅぅぅ!よろしくお願いいたしますぅぅぅ!」と大きな声で挨拶し、からだを直覚に曲げて礼をする。「はい、おはようございます……」高島さんは驚いている。「皆さん、お揃いで。昨日は二人だったのに、松原先生まで……」「いやいや、ボクはこの子たちのサークルの顧問でしてね」松原先生が言う。「こんな早くから生徒だけで活動って言うのも何ですからね」「ほう、教育熱心ですなぁ」高島は感心している。「……それで、そちらのご婦人は?」「ははは、我がサークルの特別顧問です。関心がおありとかで、いらっしゃったんですよ」「初めまして、百合恵と申します」百合恵は言うと飛び切りの笑みを高島さんに送る。高島さんは相好を崩す。「まあ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 23

    豆蔵たちは皆、心配そうな、悔しそうな表情だ。赤いリボンを庇髪に結び小袖と袴に編上げのブーツを履いた、整った顔の明治時代の女学生が冨美代だろう。他の誰よりも深刻で辛そうな表情だ。さとみは霊体を抜け出させた。「みんな来てくれたんだ」さとみは笑む。そして、冨美代を見る。「……あなたが冨美代さんね?」「はい、左様でございます……」冨美代ははらはらと涙を流す。「この度は、何とお詫びを申し上げて良いものやら……」「そんな事、気にしないで」さとみが努めて明るい声で言う。「みつさんだって、冨美代さんが助かった事は喜んでいるはずよ」「その代わり、あの様な……」「大丈夫よ!わたしが必ず取り返すわ!」さとみは言うと右腕を曲げて力こぶを作る真似をした。実際はぷにぷになので力こぶは出来てはいない。「……嬢様」豆蔵がさとみに言う。「何か策...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 22

    校門前には、朱音としのぶが立っていた。他にはまだ誰もいない。寒い季節では無かったが、ぽつんと立つ二人の様子は寒そうだ。「早く来過ぎよ」朱音がぶすっとしている。「六時前から立っているなんてさ。麗子先輩じゃないけど、美容に悪いわ」「何を言ってんのよ。昨日は明るい顔でオーケーしたじゃない」しのぶが言う。すでに心霊モードだ。「早く来れば何か見えるかもしれないって思うじゃない?ほら、『早起きは三蔵法師』って言うし」「それは『早起きは三文の徳』よ」朱音はため息をつく。「のぶ、少しは国語も勉強しなさいよ。バランスの良い勉強は大切だと思うよ」「でもさ、国語って文字ばかりじゃない?わたし、数式や化学記号の方が好き。だって、ぱっと見ただけで分かるじゃない?文字は読まなきゃ分かんないし」「やれやれ……」呟きながら周りを見ると、アイと...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 21

    地震だ!激しく揺れている。そればかりではない。何かが自分の上に落ちてきている!うわあ!どうしたのよう!どうして地震なんか起こるのよう!「……み!」意味不明な言葉を発する禍々しくて不気味な声がする。「……み!」からだが押さえつけられているようだ。身動きが出来ない。そのくせ、激しく揺れている。絶体絶命だわ!ようし、こうなったら力づくで……「うわあああっ!」さとみは叫んで上半身を起き上がらせた。ぼんやりしている眼を大きく見開く。そこには呆れた顔をして立っている母親がいた。「……何?何があったの?」さとみは言いながらきょろきょろする。「何でお母さんがここに居るの?」「何て声を上げてんの、あんたって娘は!せっかく起こしに来てあげたのに!」母親はぷりぷりと怒っている。「揺すっても叩いてもびくともしないから、力付くでベッドか...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 20

    「えええええええ~っ!」眼を真ん丸に見開いて驚いているさとみの前で豆蔵が土下座をしていた。「嬢様……本当に、面目ねぇ!」豆蔵は苦しそうに言うと、額を床に打ち付ける。「あっしの軽はずみな魂胆で、こんな事になっちまって……詫びの仕様もございやせん!」ここはさとみの部屋だ。机の上の時計は三時半を示している。爆睡中のさとみだったが、何となく気配を察し、目を覚ますと、豆蔵が床に座って頭を下げていた。いつもなら、後ろ姿で現われ、さとみの承諾を得て正面を向く豆蔵がだった。それが、このような姿で現れていることが驚きだった。慌てて霊体を抜け出させたさとみが豆蔵から話を聞いた。そして、さらに驚いたわけだった。「……それで、みんなは無事なの?」さとみは言う。豆蔵は頭を上げる。さとみは心配そうな表情をしている。「……へい、皆無事です…...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 19

    ミツルがみつとともに姿を消した後、豆蔵たちは幾度も校舎への侵入を図ったが、全く出来なかった。「豆蔵さん、どうしたもんだろう……」竜二が不安そうに言う。「おみっちゃんを助けないと……」「分かっておりやす!」豆蔵はもう一度窓に当たる。しかし、弾き返されるばかりだった。「……くそう……」「わたしたちじゃ、学校に入れないわ!」虎之助が忌々しそうに窓ガラスを叩く。「あの変態女め!な~にが男装の麗人よ!ふざけやがってさ!」「皆様……」冨美代が肩を震わせて泣く。「わたくしのために……何と申し上げたらよいか……わたくしが素直にあのミツルに従ごうておれば良かったのですわ……そうすれば……」「そんな事はござんせんよ、冨美代様……」豆蔵が言う。「みつ様は誰のためではなく、正しい事のために動く、心の広いお方です。囚わ人が冨美代様でなく...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 18

    正座をしているみつは両手で袴を引き千切らんばかりに握りしめた。きりきりと音が鳴りそうなほどに歯を噛み締め、めらめらと燃え上りそうな双眼でミツルを睨みつける。ミツルは激怒に震えるみつを穏やかな表情で見つめている。「約束は守るよね?武士に二言はないだろうね?」ミツルは言うと笑む。「別に君を取って食おうと言うのではないのだよ。わたしのものになれと言っているんだ」みつは無言でミツルを睨み付けている。「何か言いたい事があるかね?」「……ひとつだけ、ある……」みつは絞り出すように言う。「受けた屈辱故にやっぱり自害させてくれ、なんて言うのは受け付けないよ」ミツルは冗談めかして言う。「まあ、君の事だから、そんな情けない事は言わないと思っているがね。……で、何かね?」「……ここに居る皆を、解き放ってもらいたい……」「ほう!」ミツ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 17

    気がついたみつはうっすらと目を開ける。すぐ眼に前に目を閉じたミツルの顔があった。「ぬっ!」みつは唸ると身を捩る。抱きしめているミツルの腕に力がこもる。「放せ!この虚け者め!」みつはさらに身を捩る。ミツルが腕を解いた。みつは転がりながらミツルから離れ、立ち上がる。みつの刀は壁に突き立っていた。「ふふふ……」ミツルはゆっくりと立ち上がる。「これは相打ちになるのかな?わたしも君も怪我一つないが?」「くっ……」みつは悔しそうな表情でミツルを見つめる。「ならば、今一度勝負だ!」「だがね、君はほんの一瞬ではあるが気を失っていたね。わたしはそうでは無かったよ」「お前は刀を投げつけると言う卑劣な手段に出た。剣術をなす者として許させる事ではない」「そうか。じゃあ、もう一度勝負をしても良いけど……」ミツルはにやりと笑う。「君の唇は...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 16

    と、金属同士が激しくぶつかり合う音がした。冨美代が目を開け振り返ると、みつがミツルの刀を己が刀で受け止めていた。互いの顔の前で刃が交錯している。「どけ!」ミツルが言う。「斯様な変質者は斬り捨てる!」「どかぬ!」みつが言う。「斬らせはせぬ!」みつとミツルは睨み合う。鍔迫り合いとなった二人の顔はぐっと近づく。「ふふふ……」ミツルが笑う。「こんな間近で見る君は美しいな。わたしが出会った中では一番だ」「たわけた事を申すな!」みつが眉間に縦皺を立てる。「所詮はお前もあの影に操られている小者であろう!」みつは言うと、ぐいっと己が刀を押し出す。その力に押されて、ミツルは後方へ飛び退った。ミツルはじっとみつを見つめる。「ああ、わたしは君に恋をしてしまったようだ」ミツルが言って笑んだ。「君こそが真の男装の麗人と言えるだろう。わた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪16

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、伸神 紳さんをフォローしませんか?

ハンドル名
伸神 紳さん
ブログタイトル
お話
フォロー
お話

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用