**************** どこまで頑張っても無駄なんだ。 京介はぼんやりと思った。 気持ちを話して、過去を打ち明けて、自分を晒してみたけれど、結局こうやって拒まれるんだ。 きっと大輔と同じよ
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
『イレギュラーな状況』1840000ヒットありがとうございました!
**************** 周一郎は机に置かれたインターホンを鳴らす。「高野、コーヒーを」 かしこまりました、と静かな声が応じるのに、椅子に腰掛けてしばらく窓の外を眺めた。 キィ、とかすか
**************** シィグトの部屋の扉を開け放つ。中に居た数人の親衛隊が、驚いたように振り返る。「何を…しているのです」「は…いや、シィグトの見舞いを」「医術師は居ないのですか?」
**************** 思えば、姉は何と正しい眼を持ってこの世界の行く末を見て取っていたのか。何としたたかな冷静さを持って為すべきこと為さねばならないことを見切っていたのか。そして、何と
**************** 親衛隊の1人が真っ青な顔で書庫の中を覗き込んでいる。穏やかなセレド皇国、それもこんな夜中に親衛隊がセアラを探し回ったらしい気配、異常を感じた。「どうしたの?」 立
**************** 「ふ、う」 ラズーンより遠くセレドの空の下、セアラは溜息をついて古書から目を上げた。 子ども子どもしているとよくからかわれる顔を厳しく緊張させ、夜中にもかかわらず
**************** ゆっくりと、遠目にはことさらゆっくり遠ざかって行くような砂埃の雲が動いて行くのを、アシャはユーノが眠っていた部屋の窓から見守っている。 今頃ミダスの館ではリディ
**************** 「え…」 ユーノは固まった。「『聖なる輪』(リーソン)が…?」 そんなことは聞いていなかった。ひょっとして、夢の中で上げた悲鳴がアシャに届いてしまったのだろうか。そ
**************** 「……」 アシャはユーノの目に浮かぶ利かん気な表情に、複雑な想いを抱いて黙り込んだ。 ギヌア・ラズーン率いる『運命(リマイン)』、その配下のガデロのネハルール、レト
**************** 「…んっ!」 身体中を震わせ目を開ける。視界は闇、体を強張らせたままじっと目を凝らしていたが、やがてゆっくりと力を抜いて目を閉じた。噛み千切るほど強く噛み締めていた
**************** 腕が貼り付いていた。 暗闇の中、周囲に遮るもののない平面に、朱に塗れて貼り付いていた。 引き毟られたような断面からは、今もぬったりと毒々しい紅が浸み出し滴り落ち
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**************** どこまで頑張っても無駄なんだ。 京介はぼんやりと思った。 気持ちを話して、過去を打ち明けて、自分を晒してみたけれど、結局こうやって拒まれるんだ。 きっと大輔と同じよ
**************** 「あの、今なんて?」 まさか、でも、本当に? まさか、でも、ならどうして一体? すぐにそれにすがって喜ぼうとしている気持ちと、だって大石圭吾を知っているじゃないか
**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ