エターナル・アイズ

『イレギュラーな状況』1840000ヒットありがとうございました！

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 周一郎は机に置かれたインターホンを鳴らす。「高野、コーヒーを」 かしこまりました、と静かな声が応じるのに、椅子に腰掛けてしばらく窓の外を眺めた。 キィ、とかすか

2019/11/24 14:51

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(9)

​​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ シィグトの部屋の扉を開け放つ。中に居た数人の親衛隊が、驚いたように振り返る。「何を…しているのです」「は…いや、シィグトの見舞いを」「医術師は居ないのですか？」

2019/11/20 07:00

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 思えば、姉は何と正しい眼を持ってこの世界の行く末を見て取っていたのか。何としたたかな冷静さを持って為すべきこと為さねばならないことを見切っていたのか。そして、何と

2019/11/19 22:42

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 親衛隊の1人が真っ青な顔で書庫の中を覗き込んでいる。穏やかなセレド皇国、それもこんな夜中に親衛隊がセアラを探し回ったらしい気配、異常を感じた。「どうしたの？」 立

2019/11/15 07:00

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「ふ、う」 ラズーンより遠くセレドの空の下、セアラは溜息をついて古書から目を上げた。 子ども子どもしているとよくからかわれる顔を厳しく緊張させ、夜中にもかかわらず

2019/11/14 07:00

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ゆっくりと、遠目にはことさらゆっくり遠ざかって行くような砂埃の雲が動いて行くのを、アシャはユーノが眠っていた部屋の窓から見守っている。 今頃ミダスの館ではリディ

2019/11/13 18:11

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「え…」 ユーノは固まった。「『聖なる輪』（リーソン）が…？」 そんなことは聞いていなかった。ひょっとして、夢の中で上げた悲鳴がアシャに届いてしまったのだろうか。そ

2019/11/13 07:00

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「……」 アシャはユーノの目に浮かぶ利かん気な表情に、複雑な想いを抱いて黙り込んだ。 ギヌア・ラズーン率いる『運命（リマイン）』、その配下のガデロのネハルール、レト

2019/11/12 07:00

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…んっ！」 身体中を震わせ目を開ける。視界は闇、体を強張らせたままじっと目を凝らしていたが、やがてゆっくりと力を抜いて目を閉じた。噛み千切るほど強く噛み締めていた

2019/11/10 22:12

『ラズーン』第六部 1.運命（さだめ）のもとに(1)

​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 腕が貼り付いていた。 暗闇の中、周囲に遮るもののない平面に、朱に塗れて貼り付いていた。 引き毟られたような断面からは、今もぬったりと毒々しい紅が浸み出し滴り落ち

2019/11/09 16:15