雲照律師出生から出家修行のこと釈雲照律師は、文政10年(1827)4月15日(旧暦3月20日)辰の刻、今の島根県出雲市東園町に、大変律義者で篤農家と知られる渡部忠左衛門氏の五男として生まれた。その地は簸川がゆるやかに流れる農村地帯で、北には杵築大社(現出雲大社)の森や天台宗の名刹鰐淵寺のある山々が遠く望める信仰豊かな土地柄であった。律師の両親はともに信仰心篤く、二番目の兄宣明は早く出雲市知井宮町本郷多聞院の慈雲上人について出家し、他家に嫁いだ姉の子たちもそれぞれ出家する家系であった。律師は、兄宣明の僧侶としての威儀の立派さ、人々から尊敬される様子を見て出家とは貴いものだと思い、やがて自分も出家したいと両親にお願いしていたという。そんなこともあり、天保7年(1836)2月、この地方の名僧と仰がれていた慈雲上...雲照律師出生から出家修行のこと