四、廃校は寂れた漆喰の臭いがする 夏穂は思いついたことを整理した。すると眠れなくなって、その場所に早くいかなければと朝を迎えていた。もっとも馬鹿な考えだ。親に…
四、廃校は寂れた漆喰の臭いがする 夏穂は思いついたことを整理した。すると眠れなくなって、その場所に早くいかなければと朝を迎えていた。もっとも馬鹿な考えだ。親に…
三…炎の魔力が夏穂を呼ぶ 不謹慎にも、夏穂は火事を待っている。火は昔から人間のたましいを惹きつけて来た。動物にしだってそうかもしれない。火を怖れるというこ…
二、…よもやま話がやって来た 五月に入ってからというもの、ここ水尾出市では立て続けに三件のボヤ騒ぎと一件の全焼が起きた。水曜日のプラゴミ集積所から始まったそれ…
一、火事の尻尾はおいでおいでするこの町のお稲荷様は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を祀ったものなのだろうか?それとも、鬼夜叉のような吒枳尼天(だきにてん)…
21、目に見えない物質 記憶 きみは独りじゃない。 きみは決して切り離されてはいない。 きみのことはきみ自身が知っているはず。 仲間がずっと待っている…
20、ツトラウス再び テルとレイは委員会の活躍によりレイが入院している病室に飛んだ。テルに見舞いには来ないでと言ったあの日だった。「テルの隣に立ちた…
19、ガルーダに化身するその空間では同じ壁画は見つからなかった。「確かこのへんだと思うんだけどな。」「まさに宇宙旅行だよ。」「ほらあれ、銀色に光ってる…
十八、イカロスいつもなら、森が見える場所のはずである。それなのに何も見えない。何も見えないというよりも、何もない。あるのは一面を覆い尽くす深い霧。その霧が…
十七、境界をめざして「ここの時間はもうすぐ繰り返される。明日になるということだ。ただ同じ明日でも何かが違って進行するだろう。新しい経験則が加えられたからな…
十六、思考の冒険 ひどくまじめな顔でルウの話を聞き終えたレニエさんは、一気にコーヒーを飲み干した。「人間に心があるように、時間にも心がある。この地球にも心が…
15、天文台の礼爾枝(レニエ) 琉有たちは天文台の入口に着いた。「こんにちは。礼爾枝さん。礼爾枝さん」ガチャっと開いたドアから思いがけず一人の少年が…
十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰…
十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰…
十三、パパルウは地上に降り立って以来、ずっと推理していた。カブの叫び声がすべてを変えてしまうまでは。「UFOだ」カブが空を指差して叫んだとき、一緒に群れていた…
13、加速器の太陽と時間のピース「そうか。青い鳥か。」ルウが太陽を指差して言った。「あの太陽。あれこそがガルーダだ。見ろよ。三つの光が色を変え、三つの∞を描…
12,囚われたガルーダ 長い闇の先に粉粒ほど小さい光がゆらゆらと飛んでいた。大き目の光は蛍にも思えるほどで、幻想の蛍は三つ、四つと増え、集合し、小さな粉粒の…
11,宇宙の黄泉平坂(よもつひらさか)ぼく達がここにこうして残ったのには何か理由があるのかもしれない。なぜかそんな気がしている。言えることは、これま…
10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝…
10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろ…
9,誰かがいる 「この音・・聞こえる?」「聞こえる!」「どこからだろう?」「見て!」茉莉が指したのは東の方角。黒々とした森に光の噴水が上った。「あそこ…
8,宙に浮かぶ街「今何時?なんで誰もいないの?」時間のことはすっかり忘れていた。ハルとカブを除いた三人が同時に腕時計を見た。月明かりにかざして見ると驚きの…
7,学校へ辿りつくと 「何か音が・・声かも・・」「何か聞こえたのか。ハル?」夜の森が巨大な壁のように建ち並び、その圧倒的な威容は来る者を拒んでいた。慄然とす…
6,流星雨のインパクト森の輪郭が月明かりを浴びて妙に生き生きとしてくる。最初に声を上げたのは誰だったろうか。光の帯が空ではためくたびに、五人の身体は思い思…
5、東の丘に夜は落ちて。影踏みをしたり、追いかけっこをしたり。ぼくらは見晴らしのいい草原を目指した。その間中飛び跳ねて踊っていたのは夏分一人だったが、五…
フィールドを横切る遊星たち野球部がうさぎ跳びをしている脇で、サッカー部はボールを蹴っていた。一晩限りの流星倶楽部はその間を堂々と渡ってグラウンドを横切…
昼休みの図書室は静かに。「マリは行かないって本当?どうしていかないのさ。」テルが問い詰める。図書館には四人が集まっていた。テルにルウにカブ、それにマリの…
七月六日「今日の天気は全国的に晴れ。夜半から朝方にかけて、東の空に天体ショーを見ることが出来るでしょう。ガルーダ流星群は四年振りの流星群。ガルーダとしては…
輝 ーテル。主人公の一人。前向きで行動的に前に進もうとする。琉有 ールウ。秀才でテルのライバル。冷静に判断しようとする。r夏分斗ーカブト。小心者でお調子者…
春を待つ花 赤子のように地面にしがみ付き水鳥のように足を動かす冬の花びらを見送り愛しさを胸に君を待つ煙る空のもとどの季節も変わることなく君を待つ胸深く差し込む…
北には青みがかった泥流の雲が渡って行く南には湖沼のように青空があったごく近くの枝に雀が降り立った私に気づかなかったのかそこに落ちた陽だまりに春を浴びたかったの…
世界は観念の中に死んで肉体は時間の中に死んでいるそんな牢獄にぼくは住んで平和の幻想を夢見ている来ることのない明日と頭脳の描く来世を永遠の今日は打ち壊されもせず…
死化粧はまだ早い死化粧にはまだ早い もう少しこの世に留まってもう少しこの世に悪態をついてぼくには食べ物が必要だ魂に良く効く、とっておきのパンそれにミルクと…
君は政治危機だとがいう 経済が行き詰まっているとも 戦争 心理操作 恐慌 不安 人々は闇の中を手さぐりで進んでいるのかもしれない しかし、本当のことだろうか…
ハルは南天に陽炎を昇らせ太陽からの風は錆びれた情熱に火をつけるのに十分だった電線はぶるぶると青空に映え風の鳴らす旋律は雲の楽譜を一瞬ごとに書き換える空渡る鳥は…
きらきらと輝く光の矢で生まれたての町が輝き生まれたての人々が過ぎてゆく陽炎のように、追憶の行進のように生まれたての風が僕の耳に囁いてくる生まれてくることは さ…
出会いと別れの坂道は今日よりも遠く 昨日よりも近く蝉時雨が道に降り、僕を濡らした見上げる空が僕の目に落ちて歌いそこねた言葉の端々が坂を転がっていくのが見えた君…
開いた窓から三月の風がきみの笑顔のような空色の光にぼくは夢の星をいくつも描いたきっと見えなかった夜の寝息に隠れて星の光が届くようにとそっと海の見える丘に上っ…
終っていく世界の片隅で目を瞑る続いて行く世界がこころにあるように現実が去っていく後ろ姿に痕跡を追うイルカを見る四方八方から押し寄せる存在の海に泳ぐ水夫を見る望…
キースの二月は青と白空から降る氷の符は落ちて昇って飛ばされて地を転がる鈴の調べ地軸は分度器を回転した雪の結晶は車輪となりまだ見ぬ春の上に白いページを残した青い…
すべての方針は選民のエゴですべての政策は感情論それゆえ待て、と君は言う太陽を浴びようと平等のひかりを隅々まで行き渡らせるのだと君はぼくに言った聞く耳を育てよう…
夢という生存夢見た明日は遠い過去となり残照は照り急ぎ薄闇にわずかばかりの明かりを夢の投影と見る夢とはおおよそ人工のものだジ・ランの夢は生きること生きる豊饒さ…
地上に生きる生命よりも無数の死者たちが隠れている惑星惑星は惑星の恒常性の中で新陳代謝をしている人間が作り上げた都市は人間のデザインによって新しさ、いわば生命を…
空は真っ黒ススの雲人生路地を通り過ぎ電信柱にもつまずいてなにが勉学励もうと暗い暗いは夜道の街灯 道は灰色墓石いろ取っても盗られる浮世とて夢を見るのも堕ちた鳥な…
清爽(かわらか)な 思索は天に届き 秋の道は 薄焼き煎餅の音がする… また雪の道は 高級削り刃の音立てる …
十一、夏生、ご神体を宿す「これが斗鬼一族の独鈷杵だ」そう言って父は日枝神社の隅にある小さな宝仏殿の中から、桐箱を取り出して開いた。中を覗くと模様の入った三日…
十、夏生とご神体 ニニギの計らいで夏生はかろうじてその場を離れた。まわりには日常が戻ってきている。夏生の脳裏を去来したのは父のことである。父は母のことをし…
九、澪の秘密と斗鬼一族 自分の喉がゴクリと鳴ったことに、夏生は今更ながら驚いた。得体のしれない緊張に手足が硬直する。…わたしは、澪を、怖れている?…目前にた…
八、舞踏と武闘 采女の声が空から降ってくる。『さあ、舞うのですよ!』そう言って采女は夏生を促した。夏生の内側から暖かい風が吹いて来る。その風に沿いながらする…
七、狩りの実際 そのとき。年配の男性が境内から出ていくのと交互して二人の男女が入って来るのがわかった。その姿を内なる目で見もした。プネーが取り憑いた男子大学…
六、夏生の狩りの設計 二 与えられたことがら、すなわち事実とは、いくつかの事態の成立 にほかならぬ。二・0一 …
五、夏生の狩りの準備「ヤツを良く見ていろ!」火の男の近くにも常世海月が近づいている。男はぶるっと肩を震わしたように見えた。黒い靄、あれは…何?背中から手が出…
四、カグチの火が灯るそんな…溜息とともに夏生が手を伸ばすと、その手に少し小さくなったユフが乗る。重くはない。ふわふわとしていて、例えるならすぐに溶け出す冷凍…
三、叉鬼の眼に囚われて まるで雪…海中のプランクトンのようだわ。眼鏡をかけ直した夏生が美しい幻想に浸っていると、どこからか声がした。「血を浴びたな」確か…
二、夏生と常世海月 冷たい風の吹くテラスに人影はなかった。肩をすくめながら、夏生は風に向かって振り向くと二つに割れた空を見上げた。暗鬱な冬の空が北に張り出し…
一、夏生、二次元の恋 ああ、本当に、言った通りね。久良舞夏生(くらまいなつき)が空を見上げてため息をついたのは、まだ早春になりかけの頃で、雲が空を南北に分け…
魔法の呪文 五、Knocking on Heaven's Door
― Knocking on Heaven's Door 車はペダル違いで大違いというが、事は急いていた。踏んだペダルはアクセルで間違いはない。運転はパレッシュ…
『あなたは私のために生まれてきたそして私はあなたのために生まれてきた』 ― ジーン・ケリー なあ、言ってることが半分もわかんなかったよ…
短編 魔法の呪文 三、Inside looking out and get out
…Inside looking out and get out『時間が静止した場所へようこそ誰も去らず、これからも去らない』 ― メタリカ 「…
…影のシドモンドの影 あの日は閉館まで図書館にいた。『数学の国のミステリー(マーカス・デュ・ソートイ)』に虚数の秘密だのカオスの数字だの、何がなんだかわからな…
…影のシドモンド「プランクドラ・ペストラ・クレストラ」わたしはベッドの上でそう呟き横になった。寝ながら再び影の町に引き込まれるのはお断りだ。ここシドモンド(町…
その声にハッとして後ろを振り返ってみると、一人の老女がいる。背丈は百五十センチもない。腰が曲がっているのかといえばそうでもない。声から老女と思ったがそうだろう…
「えっ、火に包まれる…」「あっ、いえ。町の白壁が夕陽に照らされ燃え上がるようになるのです。わたしはあれが心底苦手で、陽が沈む少しの間、杉の宮に隠れていようと思…
それは、まだ卒業を一年後にひかえた学生の頃で、進路を決めかねていたわたしは何か、とはいえ自分の人生を決定するようなことが待ち構えているなどと考えていたわけでは…
息を吐くたまらなくなって息を吸う その中間に空が見えた色の無い空はあたたかさもなければつめたくもなく色ははねかえる地球の色こころなんてものはそれとおんなじであ…
戸口より 足踏み出せば 人の川 流れてゆくか 意思のまにまに 空高く 知る人もなき 秋の日に 千切れてゆくか 雲の心は てふてふと 人を尻目に…
いつか君は思い出の中いずれ私も思い出の中 すべての思い出が現在の様相を呈するならすべての思い出は取り戻せないそれら取り返すことができない現在はただ思い出の中に…
なにぶん隼世の気持ちはぐちゃぐちゃになっていた。社会通念の裏側を見たような気分だったからだ。これまで想像したことも考えたこともないリアルなすがたがそこにはあ…
マツの間を縫って歩道が続いている。大西洋か見える遊歩道らしいが人っこ一人歩いてはいない。大人二人分の高さを一般道が走っているが、こちらも時折りとトラックが走る…
あの心地よい眠りの中へぼくは静かに帰って行きたい責務におびえることもなく職務に縛られることもなく義務に疲弊することもなく債務におののくこともなく自己を失う闇の…
静かなる日暮れの眼差しが遠い空から落ちてきてこころに隠したさまざまを東の海へと連れ去った 色のにじんだ夏風に町はぼんやりと霞んでいる海色の大気に沈んでいる骸と…
ジョシュの大型バイクは崖の下で発見された。一方ジョシュはというとベッカーに問い詰められていた。「分からないだと。ネアンについて覚えていることは?」やがてカリ…
きみにはきみの生と死があり僕には僕の生と死がある社会には社会の、国には国の興亡がある陸には陸の 山には山の 惑星には惑星のはじまりと終わり 合成と分解 そして…
アリオン・グレイの美しい死体は子供が見つかった場所から三キロ離れた地点で見つかった。その子友の名前はとりあえずネアンと呼ばれている。野生の動物に漁られること…
「立石。夏音になにかあった?」村岡珠理がそう言ってくる。教室を出た先のことだった。教室を覘くと確かに槇村はいない。「何かって、何もないだろう」そう答えると珠…
彼の皮膚には砂のダンスが伝わっていた。これは海の歌の残響?波が伝えた歌はずっと遠くなった。代わって近づいてくるものがある。たわいもない好奇心が虫のように跳ね回…
出来上がった過去の時間と作り上げられようとする未来の時間そして今の自分が交差して存在と時間の十字路にぼくは立っているどこか別の時間にいるきみとぼくは若さにかま…
アメリカ東海岸の町セント・ローズにマイカ・ブラウンは住んでいる。その日は母の虫の居所がこれまでになく悪かった。それには理由があって、日頃折り合いの悪い父の帰宅…
アルゴートは大西洋に面したアルバス湾に面した港町である。これといって何もない町で産業は漁業である。そうした場所に海洋資源研究所の名目でアムニス水族館はある。…
…ミゼル。ミゼル。君の名はミゼルだ。ぼくの音を忘れないで。決して忘れないで… フェリクスの呼びかけはマルクにも届いた。雲の足が早くなり、同時に針葉樹の枝葉がパ…
ぼくは海辺を見下ろす部屋にいる昼には真っ青だった海が夜には真っ黒 なんだかこわい波の音も違うきいていると真っ黒な海に飲み込まれそうな気がする飲み込まれたらどう…
シャルバンティエは表面上リハビリ更生施設として知られている。あくまでも一般的にである。人口五万弱のさほど大きくない町の東部、連なる山脈の麓に施設はひっそりと…
アーロン・ベクスターの会話をフェリはデッサンになぞらえる。「アーロンの頭の中にはできあがった映像がある。例えるなら自画像だよ。言葉のひとつひとつ、文章や会話…
あのひとときは何だったのだろうと夏音は思った。途中から隼世がひとりになりたがってるような気がしたのは事実。話を止めてみた。案の定隼世は口を紡ぎ、それでいて…
『僕は地球の楽器です。耳は僕の胎児です。みんなの声が聴きたいです』フェリ(クス)の短い短冊はいなくなった今も壁に貼られている。ただ不思議なことにそんな記憶がな…
その日、僕とフェリは施設を飛び出しグレイマンズ公園へ向かっていた。季節は落ち葉の秋で、街路樹も、遠くに見える山々も、それは鮮やかに色づいて、非現実的な絵画の中…
知恵の八十%は悪知恵だって君は言ったけど現実は、老獪さが加わって社会を牛耳るマツリゴトは他者を踊らせてナンボのものだ椅子に座った裏方こそ実入りが良くて権力のム…
弓張の月に星ふたつ美しく瞬く金星と木星といまにも落んとする空が地球を包んでいる日中の我執は妄執の闇に夢を見野生は家畜の餌を逃れる 斥力の働き 引力に砕ける肉体…
村岡珠理がそうであるようにいつしか槇村夏音のことを、心の中でナツネと呼ぶようになっていた。しかし実際に呼んだことはない。なぜか心の中でそう呼んでみるとすごく…
こぼれる光のそれぞれにたなびく電波のさきざきに君の歌の 雪融け径は綺羅綺羅と薫る氷滴の無階の調べ隠れる寒さは記憶の底に三月はなおも凍えているか ああ 君よ幾世…
雲の流れる空の上光を浴びて伸び伸びと姿を変えて生き生きとほろほろほろと毀れつつカラの酒瓶は歌いぬ プロバンス(田舎)は家郷に去り来たるmailも届かん秋と春…
あれはこれだこれはこれだそれはこれだ それはそれだあれはそれだこれはそれだ これはあれだそれはあれだあれはあれだ それはそれだあれはあれだこれはこれだ それと…
蒼穹に消え行く白雲を追いかけ涸れた地に干上がった水を探した薄れゆく自分の存在を確かめたこぼれ落ちる砂を受け止め息づく針の柱の横で両手を空高く差し出すそして見上…
……川は過ぎ去っていく現実の時間だ。石はそれをずっと見続けている。まるで時間の外にいるように。思えば人も社会も学生生活もこの川のように過ぎていく。不登校になっ…
森にお寺が浮いていたこんもり繁った梢の上でまあるい月がてらてらと笑っていた寺が啼いたほお ほお ほおこっちにおいで 分けても 分けても そこは森走っても 走っ…
*レミング 大増殖の後に死の行進をするといわれていたタビネズミです。 集団自殺はどうやら迷信らしい ぼくらはレミング崖下へと集団で疾走する…
宵に木々が鳴ったなら嵐と共に彼が来る教会墓地の土の底から屋根を跨いで彼が来るカツコツ木靴でやってくる気づいたときにはもう遅い振り返ってもぼんやりと煉瓦を照らす…
河原の石たちにはそれぞれ個性がある。それぞれに声がある。それぞれに耳があって、話しかければ答えてくる。天気のいい日は河原で良く読書をした。鮎解禁の頃になると…
空と山とが紡ぎだす 雲の糸の花の下故郷の川はゆるゆると流れ 故郷の道はうねうねと曲がるきみが育った町に野にきっと天狗は生きていて朝と夕には疾風が走る目にも止ま…
夏波私の心は揺れる波何も出来ずにぼやいては明日の潮を考える明日の凪を考える 私は波間に浮かぶ舟右や左に流されて着くべき港も持たぬまま浜を尻目に遠ざかる 波、…
この街で過ごした十数年は僕を何者にもすることがなく僕は何者にもなれず変わり続ける街のように寂びれ、一方は開発されていく資本は街の上にも、人の上にも不公平な雨の…
「ブログリーダー」を活用して、吉野さんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。
四、廃校は寂れた漆喰の臭いがする 夏穂は思いついたことを整理した。すると眠れなくなって、その場所に早くいかなければと朝を迎えていた。もっとも馬鹿な考えだ。親に…
三…炎の魔力が夏穂を呼ぶ 不謹慎にも、夏穂は火事を待っている。火は昔から人間のたましいを惹きつけて来た。動物にしだってそうかもしれない。火を怖れるというこ…
二、…よもやま話がやって来た 五月に入ってからというもの、ここ水尾出市では立て続けに三件のボヤ騒ぎと一件の全焼が起きた。水曜日のプラゴミ集積所から始まったそれ…
一、火事の尻尾はおいでおいでするこの町のお稲荷様は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を祀ったものなのだろうか?それとも、鬼夜叉のような吒枳尼天(だきにてん)…
21、目に見えない物質 記憶 きみは独りじゃない。 きみは決して切り離されてはいない。 きみのことはきみ自身が知っているはず。 仲間がずっと待っている…
20、ツトラウス再び テルとレイは委員会の活躍によりレイが入院している病室に飛んだ。テルに見舞いには来ないでと言ったあの日だった。「テルの隣に立ちた…
19、ガルーダに化身するその空間では同じ壁画は見つからなかった。「確かこのへんだと思うんだけどな。」「まさに宇宙旅行だよ。」「ほらあれ、銀色に光ってる…
十八、イカロスいつもなら、森が見える場所のはずである。それなのに何も見えない。何も見えないというよりも、何もない。あるのは一面を覆い尽くす深い霧。その霧が…
十七、境界をめざして「ここの時間はもうすぐ繰り返される。明日になるということだ。ただ同じ明日でも何かが違って進行するだろう。新しい経験則が加えられたからな…
十六、思考の冒険 ひどくまじめな顔でルウの話を聞き終えたレニエさんは、一気にコーヒーを飲み干した。「人間に心があるように、時間にも心がある。この地球にも心が…
15、天文台の礼爾枝(レニエ) 琉有たちは天文台の入口に着いた。「こんにちは。礼爾枝さん。礼爾枝さん」ガチャっと開いたドアから思いがけず一人の少年が…
十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰…
十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰…
十三、パパルウは地上に降り立って以来、ずっと推理していた。カブの叫び声がすべてを変えてしまうまでは。「UFOだ」カブが空を指差して叫んだとき、一緒に群れていた…
13、加速器の太陽と時間のピース「そうか。青い鳥か。」ルウが太陽を指差して言った。「あの太陽。あれこそがガルーダだ。見ろよ。三つの光が色を変え、三つの∞を描…
12,囚われたガルーダ 長い闇の先に粉粒ほど小さい光がゆらゆらと飛んでいた。大き目の光は蛍にも思えるほどで、幻想の蛍は三つ、四つと増え、集合し、小さな粉粒の…
11,宇宙の黄泉平坂(よもつひらさか)ぼく達がここにこうして残ったのには何か理由があるのかもしれない。なぜかそんな気がしている。言えることは、これま…
10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝…
10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろ…
9,誰かがいる 「この音・・聞こえる?」「聞こえる!」「どこからだろう?」「見て!」茉莉が指したのは東の方角。黒々とした森に光の噴水が上った。「あそこ…
闇夜の列車は淋しそう夜の底へとへばりつき町と町とをつないでも線路の向こうは夜ばかり星海漂う夜ばかり 闇を突っ切る星のよに灯りに集まる虫のよに時間のレールを右、…
実家の近くに地下水が川のように湧き上がって流れている場所があった。熊野神社のちょうど下である。小さな沢の小さな清い流れ。その冷たさときたらじんじんと骨まで伝わ…
ある綺麗な月夜の晩に姉やとふたりでホタル狩り社の水辺にホタル狩り 団扇(うちわ)をかざしてホタルを誘えば畦(あぜ)の蛙が身を投げる沢に沿って川上へ蛍の森へと…
下校時、校門に向かっていると夏音と珠理が何か話し合っていた。言い合っていたのかもしれない。夏音はどうしたのという程度で相手にしていない様子。「隼世。チエシャ猫…
きみが好きだった絵本を借りた背中と背中を寄り添ってきみが背景を ぼくが文字を絡め合った時間はすでに遠く 交わることもなく地球はまあるいんだって言ったきみは時の…
鳥居の見える坂道をどこまで上れば星の町きみを追って来たけれど杉はひょろりと立ち並び社は静かに鎮座して欠けた月こそ静かです 恋しき夏の名残の日々は草むらに歌う虫…
蝸牛はホルンを背負っている日がな一日きみは空気を吸って、記憶を吐いて、打ち震える空魚を脳骸の金魚鉢に飼い、十分に豊かな音を餌として言葉の端にぶら下げるああ、そ…
立石隼世と別れたのはちょうど橋のところだった。コンビニのバイトがあると言って走って行った。「また今度話そう」隼世はそう言って橋を渡った。すると奇妙なすき間風…
細胞の数ほどの夢を見髪の毛の数ほどの約束をした叶ったものも、叶わなかったものも口にした言葉と、書かれた文字はwave(電波)となってこの星を回る応えてもらえな…
君は僕からはなれ僕は昨日からはなれ昨日は明日からはなれる留め置くことが叶わない大きな過程(プロセス)が静かな嵐のように吹き荒れる心がいくら追いかけようと新しい…
大きな光の泡に街は包まれていて大切なギフトのように包まれていて目の前にそっと置かれているいったい誰が置いたのだろう?この街がとても好きになったよちょっと濁った…
大きな光の泡に街は包まれていて大切なギフトのように包まれていて目の前にそっと置かれているいったい誰が置いたのだろう?この街がとても好きになったよちょっと濁った…
『わたしたち二人が言葉をかわすきっかけになったのは、黄昏がすばらしかったからだ。』(「ナイトランド」より) 「石は黙ってそこにある」そう言うとあの立石が初め…
ぼくはこの世を求めないこの世の喜びと悲しみはただひとつの経験この世の善と悪はたたひとつの冠この世の知恵と愚かしさはただひとつの閃き求めないこの世には多くの富と…
ぼくはこの世を求めないこの世の喜びと悲しみはただひとつの経験この世の善と悪はたたひとつの冠この世の知恵と愚かしさはただひとつの閃き求めないこの世には多くの富と…
いつもまぶしい記憶の海は曲がりくねった道の先起伏にとんだ坂の先湾に沿って町が伸び道に沿って壁並ぶ潮の香りを風運ぶ海風と山風の始終走る浜もない港町に静かにあった…
天気のいい日は空を見上げるぼくの頭が空色に染まるまで頭の中に空が出来上がるまで出来上がったら散歩の時間だ猫をみてからは猫のように散歩したいと思う音も立てず 身…
天気のいい日は空を見上げるぼくの頭が空色に染まるまで頭の中に空が出来上がるまで出来上がったら散歩の時間だ猫をみてからは猫のように散歩したいと思う音も立てず 身…
俺たちは人生に酔っているが金に酔っているわけではない酒に酔うことはあるが怒りに酔っているわけでもない雨を追ってたどり着いた町は豊かなデルタに拡がっていたが決し…
俺たちは人生に酔っているが金に酔っているわけではない酒に酔うことはあるが怒りに酔っているわけでもない雨を追ってたどり着いた町は豊かなデルタに拡がっていたが決し…