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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • おじいちゃん

    自分の祖父は香川県は金毘羅さん参りで栄えた港町で自転車屋を営んでいた。広島県の福山や宮崎アニメ「崖の上のポニョ」の舞台として描かれた鞆の浦から、小さなフェリーが瀬戸内海を渡っているのだった。そんな潮の香のする田舎町だった。小学生時代は毎夏ひと月ほどそこへ行った。母と東京に住む叔母の里帰りにそれぞれの一家が帯同したのでちょっとした民族移動だった。横浜から新幹線で岡山に出て宇野へ。国鉄の連絡線で高松の港へ。そして海沿いに塩田と山側に讃岐富士を見ながらディーゼル列車に揺られた。中学高校と自分は広島に住んで居たので広島市の宇品港から松山に渡ったこともあったが、多くは福山か鞆の浦経由だった。 屋根の低い…

  • 甲斐からの山・根子岳山スキー

    ・根子岳 2128m 長野県上田市・須坂市 山スキーとはスキーの裏にシールと呼ばれる滑り止めシートを貼り踵の上がるスキー締め具を用いてスキーを履いたまま山頂まで登り、そこでシールを剥がして滑降するという、登山の一形態だ。いろいろと近年物騒な話題を振りまくバックカントリースキーと近いが、大きな違いは山スキーヤーは自らが登山家だと思っている点だろう。地図の読み方、ビーコンとゾンデ、スコップ。そんな雪崩対策。山スキーヤーとして万全を期して山に入るので、オフゲレンデの粉雪を楽しもうとして行動不能に陥る良く報道されるバックカントリースキーと間違えられたくないと思う。自分はそんな山スキーに魅了されて三十年…

  • ハマっ子の味

    横浜には結局自分は何年間住んだだろう。3歳から12歳までの10年間、21歳から60歳までの40年間。ただし40歳の後半から五十歳の前半までの七年間は海外に転勤していた。そうはいっても50年は横浜に住んでいた。すると好きな風景と言うものが出てくる。横浜に住んでいたと言っても大半は京浜工業地帯の街で、工場の煙が見える高台に、そして六年間は横浜の西北部、そちらは産廃物処理場だらけのまったくの田園地帯だった。いわゆるヨコハマらしい風景と言うのは学生時代、そして社会人になってからの家内とのデートコースとして知った。 自分が挙げる横浜の好きな光景とは、横浜駅西口の繁華街と東口の港を見る風景、そして桜木町か…

  • 一日千秋

    今立て込んでいるのです。仕様が決まってから見積書をお送りします。すぐにご確認頂いてから取り掛かりますが、仕上がりは2027年になりますね。 二年か!随分と長いリードタイムだな、と思いながら目の前で受話器を握るご主人の電話を聞いていた。その店を訪れたのはこれで三度目だった。前回の二回の訪問は五年前だっただろう。 ツナギの作業着を着たご主人の顔、それに工具とパーツが雑然と並ぶ広くはない彼の作業場は何となく覚えていた。丸ノコ、ジグソー、サンダー、グラインダー、そんな木工用電動工具に加えてハンダゴテからエアコンプレッサーまでが置いてある。壁にかかった色褪せたミントグリーンのフェンダームスタングも健在だ…

  • ダブルスコア

    139と言うと一体何のスコアだろうか。139点も点を稼げるスポーツは?バスケットボールが近いかもしれないがそんなに多く点が取れるのだろうか。数字が多いほうが良いとするならばきっと139点は歓迎されるのだろう。ボーリングもそうだった。あれはパーフェクトなら300点だったか。 ところで数字が大きいほど悪いというスポーツもある。えーそんな点数なの?と半ばあきれて半ば笑われる。点をはじき出した人も肩をすぼめる。一体どんなスポーツ競技なのだろう? その日に初めて会った二人と組んだ。予め自分はとんでもなく下手くそです、と布石は沢山打ってあったので驚かれることはないだろうと。カートに乗り込んでインコースの1…

  • センチメンタル

    人は誰しもか悲しい気持ちになることがあるだろう。いわゆるセンチメンタルな気分と言うやつだ。自分はなぜだかそんな状態に陥っている自分が好きなのだった。 何かの曲を聞いては少しばかり感傷的になってくる。するともう少しその気持ちを先に進めたくなる。、そのためには精神状態がそうなるような音楽を聴いたり文章を読んだりする。高まった感受性を倍増させたいのだった。 音楽にそれを求めるのならどうだろう。いくつかのクラシック音楽がまず該当する。ブラームスにもモーツァルトにも、時にバッハでも味わえる。ポップスならばユーミンとして知られる荒井由実・松任谷由実だろうか。クラシック音楽には旋律と構成美から何かを感じ取り…

  • 白目は嬉しく可愛い

    白目をむくという表現はあまり好ましい印象はない。驚いたり恐怖を感じたりするときに使われるだろうから。しかし犬と生活をしていると目にするだろう。例えば彼は床に伏せている。何かの拍子で顔を上げずに見上げるならば黒目の裾に白目が見える。この表情がなんとも可愛い。そのまま自分も伏せて彼を抱きしめてしまう。 我が家の犬は眼球が突出している。短刎種と言われる、いわゆる「鼻ペチャ犬」は鼻はぺちゃんこだがそれを補うがごとく目が多きい。シーズー、パグ、フレンチブルドック、ボストンテリア・・・。目が大きい分だけそんな犬の白目は良く見ることが出来て、それを見たらその場ですべて降伏となってしまう。ゲホゲホと息を立てる…

  • 二膳の塗り箸

    大内塗と言う塗りものを知ったのは友人のお陰だった。両親は香川県生まれ、また自分も香川で生まれ、幼稚園からは横浜市民。そして広島市で中学高校と言う多感な時期を過ごした自分は「貴方のアイデンティティは?」と聞かれると、迷わずにこう答えるだろう。「瀬戸内海人です」と。横浜には五十年は住んでいたので時に「ハマっ子です」と答える。それも嘘ではない。実際自分の言葉は、色々な方言が混ぜ合わさっているから。 そんな自分の大学時代の友人の一人は山口県人だった。何かあるごとに「長州は維新のお国柄じゃ」というのが彼の口癖だった。そんな奴は大学のクラス分けであいうえお順に並んで自分の目の前に立っていたのだった。それに…

  • 瀟洒なる春

    山の作家・深田久弥の短編「瀟洒なる自然」を読もうと思い文庫を手に取った。春夏秋冬の四篇からなり、それぞれにその季節の山の思い出や随想が書かれている。瀟洒なる自然とはどんな自然だろうか。瀟洒とはあまり使わない日本語だが自分ならこんな風に使うだろう。「最近渋谷にも瀟洒なビルが増えたな」と。しかしきちんと説明せよと言われるとやや自信も無い。そこでまた広辞苑のお世話になる。1267ページにこう書かれている。「すっきりして垢抜けした様、俗を離れてあっさりしている様」と。 瀟洒という単語を自然と四季に使うとはなんだろう。自然が垢抜けしている、俗世間を離れてあっさりしている、か。確かに自然とは人間の些細な営…

  • 白い薬

    美川憲一の歌に「三面記事の女」という歌がある。1974年の歌なので古い曲となってしまった。自分はまだ小学生だったのにけだるそうな歌声とその歌詞を覚えている。 ♪ ああ、私は三面記事の女 貴方の心を見失い 白い薬を飲みました♪ ああ、私は三面記事の女 近づくサイレン聞きながら 貴方の名前を呼びました 白い薬とは何だろうか。まさかロキソニンでもカロナールでもないだろう。自分の好きなミュージシャンは多くが薬物で世を去ってしまった。ジョン・ボーナム、ブライアン・ジョーンズ、キース・ムーン、ジョン・エントウィッスル、ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョプリン・・。彼らはヘロインやコカインあ…

  • 水栓と虹

    二日前に降った雪も消えた。僅かに白いものが庭や路肩に残すのみとなった。太陽の力とはすごいもので日陰の部分の雪が残るのだが消えるのも時間の問題だろう。 今日は外気温14度と言う。高度差と百メートルあたりの気温の変化の公式で計算するならば海抜ほぼゼロメートルの首都圏は19度を超えている事だろう。長そでシャツ一枚でアウターが不要の季節に思う。 庭に四セット造って置いた薪ラック。仕入れた比率通りに針葉樹1:広葉樹2の比率で薪を燃やしていたが、ともに半分以上は無くなってしまった。替わりに我が家にはずっと暖があった。冬空に切れそうな雪を纏った甲斐駒ケ岳、氷点下の外気、そんな中家の中は薪ストーブの炎が揺れ室…

  • 深い深い雪の中で

    朝目覚めると再び外が白かった。一昨日積った雪は昨日には溶けた。そこに又積もる。葉の未だ生えぬブナにもコナラの枝にもしっかり雪が載っていた。供に若い木なのだからこの程度の雪では枝が曲がることもましてや折れる事もない。しかしナンテンの樹は雪の重みに耐えきれず何本かが枝が折れ掛かっているのだった。折れ曲がった枝はすっかり雪の中に埋まってしまった。綺麗でいて寂しい風景だった。 そんな犠牲者がいるにも関わらずに雪は構わず降り続く。枝と雪の境目は分明でなくなりあたかも枝が雪に溶けているようにも思うのだった。全く無慈悲な雪を見ながら僕は記憶の底をさぐる。こんな風景をどこかで見たな。いや読んだのだった。頭の中…

  • 窮屈な楽しさ

    ゴルフといえばお洒落でやや高慢なスポーツマンが、お金を持っていそうな腹の出たオジサンが頭に浮かんでいた。若い頃から腹は出ているものの自分には全く縁があるとも思わなかった。さらに言えば山歩きが好きな自分にとってゴルフ場はいまいましかった。豊かな緑を切り倒してコースにしているのだから。 しかし会社員を、そして長く営業部門に居ると否応でも避けられなくなってくる。海外営業の自分には無縁だと思っていたがすぐに国内も守備範囲となった。また海外顧客とも上司は積極的にゴルフに出かけては関係ずくりをしていた。上司の口癖は「出世したければゴルフは避けられぬ」だった。 しかたないな、と諦めた。安くはない出費だったが…

  • フライヤーづくり

    ちんどん屋という方々を見なくなって久しい。幼い頃自分は競輪場のある工業都市に住んでいた。駅に出るとちんちんドンドンと鐘と太鼓を鳴らしながら、ラッパが、今思えばサックスかクラリネットだろうか、物悲しい旋律が流れる。新装大開店や大売り出しの紙を首からぶら下げた彼らの顔は旅芸人のように白塗りで、着物の裾がほどけぬようにとしゃなりしゃなりと道を歩くのだった。 その地域の商店や催し物の宣伝をするのが目的なのだから物悲しい曲では人は目を貸さないし誰も寄っていかない。楽しい曲だったのに違いない。しかし幼心にはなぜか淋しく思えたのだった。白塗りの顔が妙に奇妙に見えたのか、そこに浮き草を感じとったのか、子供の感…

  • 上手の手から水が

    隠し事をしながら間違えずにしっかりと確実に進めなければいけない事項がある。会社生活では人事考課・人事委員会というものがある。部門長は部下の人事考課をしなくてはいけない。そして委員会にかけて昇進対象か昇給対象かを個々に決めていく。良い評定が三期連続しなければ昇進はしない。なかなかにシビアでもあった。そして部下に結果をフィードバックする。これはあまり好きな仕事ではなかったが仕方がない。粛々と進めるのみだった。しかし同時にまた自分も事業部長に査定されていた。さらに部下からの評価もあった。こちらは身に染みた。 名人でも失敗する、というのがこの言葉の意味とすれば、名人ではないにせよ何事も「上手の手から水…

  • 素敵で迷惑な魔法

    ここ八ヶ岳南麓は降雪はあってもさして積もらず、風の冷たさと気温の低さに耐えれば済む、そんな経験則をこのこ十二月から四ケカ月の間に得ていた。 朝六時半に火を入れた薪ストーブは薪を足すこともなく十時までは暖かい。昼は余熱にエアコンで暮らす。夕方から再び薪ストーブの世話になる。薪は針葉樹と広葉樹をそろえたので共に燃やす。火付の良い針葉樹、長持ちする広葉樹。不慣れだった火付けも今はあまり苦にならなくなった。 火を見ながら暮らすのは全く飽きないのだった。本当は何も手を加える必要もないのだが時折鉄ばさみで薪を動かしてやったりすると火が喜ぶようにも思う。20時頃には広葉樹の薪を足す。日付が変わる頃にそれは消…

  • カンフル剤

    鍵のかかる野菜倉庫に誤って人が閉じ込められた。船の食糧庫は密閉性が高い。窒息直前の所を三等航海士が救い出し彼はドクターを呼ぶ。「ドクター、カンファー!」と。 息絶えようとする人に向い若い研修医はそれでも試みる。カンフル注射を、と。しかし主治医は制止する。もう無駄であると。 いずれも小説の風景だ。船医として乗り込んだ水産庁の調査船での海外見聞録を描いた北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」。後者は渡辺淳一の医療小説「死化粧」。二人とも医師であり作家だった。 カンファーないしカンフル剤を打つ。止まりかけた心臓が復活するのだろうか。これがカンフルですというアンプルは見たこともないが、強心剤なのだろう。 …

  • 開局申請

    工事現場などで交通整理の警備員がやり取りをしている。スマホではない。「上、止めておいて」「オッケー、通していいよ」それだけの会話。電話をかけるパネル操作はおぼつかない。ボタン一つでもっと簡易にやり取りができるツール。ハンディトランシーバーだ。免許不要な無線機は出力も小さいのでせいぜい数百メートルが通信範囲だろう。 こちらは違う。無線時の出力はけた違いだ。数キロは確実に電波は飛ぶし見通しのきく高台や山頂に立つならば百キロもそれ以上も通信範囲は広がるのだ。それはアマチュア無線機と呼ばれる。国家試験に合格して書類申請をして初めてアマチュア無線局のコールサインが総務省総合通信局から発給される。そして初…

  • 貴方は誰ぁれ?

    山田洋二監督・映画「男はつらいよ」が大好きだ。実質的な作品は全48作。全作を何度も見ている。毎年の盆と暮れに放映された国民的な映画だった。そんな作品を初めは十時間を超える飛行機の機内ビデオで見た。そしてその後はありがたいことにBSテレ東でほぼ毎半期ごとに幾度も再放送してくれている。それに加えてガンで入院中に本作の好きな作品はすべてDVDで揃えてしまった。24枚ある。毎日病床で見ていた。全作ほぼ暗記してしまった。 夕食と共に酒を飲みながら見るこの映画ほど自分を幸せにしてくれるものはない。故・渥美清演ずる主人公の寅さんとは知らぬ人が見れば全く粗野で暴力的な男であり何の共感も抱かぬだろう。が映像を通…

  • ATMにて

    親の銀行預金通帳を預かっている。母はだんだんと記憶力も認知力も衰えてきている。これまでも何度も紛失してはいつも狼狽していたのだから。ここにあるよと言って収納しても次に行った時はない。そして大騒ぎをしている。自分で置く場所を変えたのだ。それを忘れている。こうして通帳を預かるようになった。 しかし自分とて何かを取りに行こうとして何しに来たのかを忘れてしまう。だんだんとその頻度が増してきた。人の事は言えない。母は時折こう言う。自分のお金なのだから手元に置いておきたいと。しかし危なくてそれは出来ない。せいぜい通帳の残高を確認してもらう程度だ。すると酷く安堵した表情を見せる。そして再び自分が保管をしてい…

  • アゲアゲで

    習慣としてNHKの朝ドラを毎日見ている。画面には現在時刻が表示されるのだから、あ、朝飯食べ終えよう、歯を磨こうと追い立てられる。結果的にここ数年はどの作品も見てきた。半年タームの番組ではあるが中では自分も途中離脱するものもある。「反省会」という言葉も見ることもあるが、それで脚本家から演者も評されるのだからつまらない話だ。 現在放映中の番組は「ギャル」がキーワードと言う事だった。最近の朝ドラは現代劇が多い。ギャルと言う言葉は平成の半ばから出てきたように思う。主人公たちはそれぞれに化粧をして可愛い服を着て繁華街を闊歩して皆でプリクラを撮る。その際に「アゲアゲー」と言を手を前に出して笑うのだった。 …

  • 今夜はおでん、ちくわぶ入りで。

    おでんのネタで何が好きかと言われたら困る。オデン汁を吸い込んだ具材はどれもそれなりにおいしくて、具材の良さがおでん汁に溶け出して開くのだから。大根と玉子は必須だが自分はちくわぶが好きだ。ゴニョゴニョとした食感はただの小麦粉の固まりだが。家庭によってはウインナーソーセージを入れる事もある。学生仲間達との安アパートでのおでん鍋でそれを知った。これもパリっと齧ると中からおでん汁が出てくるのだからなかなか美味しい。 銭湯に行った。都会の銭湯はさすがに利用者も多い。年齢別人口分布そのままに、老いも若きも入ってくる。湯船につかりながら自分は見るともなく拝見する。皆さまの持ち物を。幼児のそれは木の芽の如し。…

  • 自由な冬

    自宅の玄関の扉を開けるとそこは雪一面。クロスカントリーの板を履いてふかふかの雪を踏み出そう。ウロコ板は軽快に動き自分は自宅から真っすぐブナの森に向かう。そこには狐の足跡がありうやがてシラカバからカラマツの森になる。雪が再び振りだして手を伸ばせば結晶が手にとれる。雪はなんとそんな結晶体の塊だったのだ。 もういいかと板を返して再び歩いていく。先ほどのシュプールはもう新しい雪に消えてしまった。気まぐれで歩いたので戻れるのかと不安にもなる。森を抜けると我が家が見えた。ストーブの煙突からは薪を焼く煙が漂っている。玄関を開けて暖かい珈琲を飲む。 そんな夢を持っていた。おおむね叶い、残りは少し違う。ガンにか…

  • お先にどうぞ

    ヨコハマから山梨に引っ越して驚いたことがある。その思いはまた隣県の諏訪で強くなった。車のマナーだ。 自分も決して人に言えない運転マナーの持ち主だ。まず気が短い。瞬間湯沸かし器なのだから、かっとなるとクラクションは鳴らすしパッシングはするしアクセルはベタ踏みだ。すぐに愚に気づき何とか収めてきた。がこれらの地は根本的な違いがあるのだろうか。まるでそれが県人としてのDNAであるかのごときだった。埼玉県から越してきた移住組の先輩である友人も言うのだった。運転は荒いね、と。 まず右折しようとしても譲ってくれない。そして路側帯から道路に出ようとしても譲ってくれない。また対向車も減速せずに右折を試みる。そし…

  • ケットラが一番です

    職場は海抜700メートルの原生林の中に在る。ここ数日の積雪は日あたりも悪い場所には雪を残しそれが氷結している。この辺りを走る車は慣れたものでスタックする事もなく走っている。同僚が乗ってきた車がいつもとは違うのだった。彼は確かハイブリッドの車だったはずだったが今日は軽トラックだった。 「雪道だからね、こいつが一番だよ。この辺りの人は誰も二台は持っているよ。乗用車と「ケットラ」。」…そう言われるのだった。ははあ軽トラックの事をケットラと言うのか。 軽トラックほど日本の農作業に向いている車はないだろう。小さなタイヤだが横から見るとわかる。わが愛車ジムニーと同様に鉄梯子であるラダーフレームの上にエンジ…

  • 憧れの君

    好きな異性の容姿というものがあるだろう。学生の頃、だれもが女性アイドルのポスターを部屋の壁に貼っていた。あいつは松田聖子だった。二枚張ってあった。あの男は川島なお美だった。隣に斉藤慶子もいただろう。粋がっていたアイツは薬師丸ひろ子だった。高校の頃の自分の部屋には二枚張ってあった。河合奈保子と柏原芳恵。壁と天井に。目覚めても机に向かっても目にするのた。当時のアイドルは誰もが清純派だったのだが、華奢な女性から豊かな女性迄とそれぞれにファンがいたのだった。自分の好みが後者なのは言うまでも無かったのだろう。好みがあるとは女性とて同じだろう。学生時代の友人には妹さんがいたが、田原俊彦のファンクラブに入っ…

  • 木曽路

    「木曽路はすべて山の中である・・。」 何という魅力的な一文だろうか。これに匹敵する小説の冒頭の文章はこれしか知らない。「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。」いずれもここからどのような話が進むのだろうか。そんな読者の想像力をかきたてる一文だった。 前者は島崎藤村の「夜明け前」、後者は川端康成の「雪国」…。こうして種明かしをしていくとだんだんとつまらなくなっていく。場所など架空で読者の想像の裡に広がるべきだろう。前者は高校生の頃に読んだはずだがうろ覚えだ。後者は大学生になってから読んだ。記憶が正しければ前者は明治政府に世が変わりその流れについていけない人の悲劇を描いていたように思う。うろ覚え…

  • ひな祭り

    スーパーに行った。ひな祭りの音楽が流れていて彩鮮やかなちらし寿司が並んでいた。バレンタインデーのチョコレート、その一月後のお返し、フードロス問題が話題となった節分の恵方巻など、季節に応じたマーケティング努力の賜物と言える食べ物が多い。ひな祭りのそれはちらし寿司なのだろうか。これをこの日に食べるとは一体いつからだろう。 娘たちが生まれた時から作って来たよ。そう家内は言うのだった。そう言えばそう思うし確かにそれを楽しみにしていたことも思い出した。木のおひつで混ぜ合わせていたな。そして娘たちは楽しく食べていた。 我が家にも雛人形が居た。やはり家内もそれを玄関に飾っていた。顔立ちが古い、よくいえば雅な…

  • 春の魔笛

    急速に春めいてきた。家の扉を開けたら空気が丸いのだった。雪を纏った甲斐駒は相変わらず剛毅として暖かい空気を寄せ付けないように気張っている。しかしそんな努力の甲斐もなく少しづつ空気の柔らかさに稜線が溶けていくのだった。こんな朝に車に乗る。車中で一体何を聴こうかと考える。しかし迷う必要もない。春の訪れにはモーツァルトが素敵に思う。なんといってもわくわくさせてくれるからだ。 交響曲かな、ピアノ協奏曲か・・。大ミサにしてもレクイエムにしても宗教曲は春の朝は遠慮願おう。選んだフォルダはオペラの序曲集だった。オトマール・スイトナーがシュターツカペレ・ベルリンとともに録音した一枚を良く聞いている。フィガロの…

  • 甘党なんです

    コラッと叫んでしまった。ついでにポカンと殴ってしまう。すると彼は尻尾を巻いて隅に行くのだった。 またやられた。前は「信州安倍川餅」だった。そしてその前は「西新井大師の栗もなか」だった。口の周りにきな粉がついていた。そしてもなかのかけらが散っていた。すべては車の中の出来事だった。お土産で買ったものを持ち歩かずに車の中に置いておくと十分も経つとやられてしまうのだから困りものだった。 どうやってプラスチックのケースを箱を開けるのだろう。彼には二本の前脚と口しかない。足の爪も刃も形だけで猫のように鋭いわけでもないのに。ケースの壊れ方を見れば前脚で押さえつけ首の角度を何度も替えて全く切れ味の悪そうな犬歯…

  • カタルシス

    大学へ向かうバスの中だった。何の因果か入学が決まった大学の場所はその年から基礎課程の二年間は神奈川県厚木市に出来た新しいキャンバスとなっていた。東京は青山通りにあったキャンバスは三・四年生の専門課程からだった。初めからそこに通いたかったのだが仕方がない。厚木といえばマッカーサー将軍がタラップを降りたあの旧海軍航空隊・現米軍基地の街かと思っていたが違った。基地は大和市と綾瀬市にあり、厚木市は相模川を挟んでそれらの街の西側にあった。しかも市の大半は丹沢とその前衛の山に覆われている場所だった。実際真新しいキャンパスからは丹沢の、とりわけ大山が大きく見えた。そんな場所にあったので小田急線・本厚木駅から…

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