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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • 罪作りな器たち

    中華鍋の把手にはタオルでも巻き付けられている。そこを握り鍋を揺らす。もう一つの手は玉杓子を踊らせる。この時の音を形容するならカラコンカラコンとなる。米は宙を舞い鍋に着地する。ウルトラCだろう。オヤジの鍋杓子使いは神業か。最後に中華鍋をもう一度煽って玉杓子ですくい皿に裏返し。器にこんもりと盛り上がったさまは前方後円墳の後塚を思わせる。 無駄のない動きはいつも見惚れる。大鍋で麺を茹でながら同時に丼にかえしを入れてスープを注ぐ。マルチタスクだ。平ザルを器用に使い大鍋の麺は掬い上げられる。ここからもまた神業だ。魔法の腕さばきは平ザルの上の麺を踊らせ、それは一つの美しい形に纏まりスープの中に流し込まれる…

  • 二つの鍵・台湾的風景

    そのお寺は広くはないが多くの市民で溢れている。ホテルから地図を片手に適当に散歩する。とある路地に迷い込んだ。幅2メートルか。長さは数百メートルありそうだ。ビルの狭間の通りはウナギの寝床だった。一間取り二メートル程度の店舗だ。そこにはさばいたばかりの鶏や取れたての魚、魚肉団子、野菜、安い衣料、色々ならんでいた。現地人の台所だった。大型スーパーもコンビニエンスストアもあるのにやはり庶民はこんな通りが好きなのだろう。上野のアメ横をずっと凝縮して長く伸ばした、そんな雰囲気だった。そこに買い物客は絶えない。旺盛な食への力は生きる力だと思った。 通りを抜けたら目指す寺は近かった。龍山寺はタイペイ市内で最も…

  • 憂いもなく

    新年を迎えて早くも一月が経とうとしている。月日の経過の速さと年齢を重ねる事にはある種の相関関係があると思っている。それは直線で表現できるものではなく何らかの偏向が働く。十歳の時、二十歳の時、五十歳、そして今。感じる一日の速さは高齢になるほど加速度的に早くなる。全くここへきて一日がこれほど短いものか、勘弁してほしいと感じている。 この一月が特に短く思えたのには正月に痛ましい天災や事故が続いたからだろう。罹災された方には早く正常に戻って欲しいが、これでお正月気分は消え飛んだ。何か物足りないなと思っていたのは毎年楽しみにしているお約束を逃したからだった。 正月元旦。GMTプラス一時間はウィーンの地。…

  • 危ない所だった

    中古品を買い取り販売する店は言ってみれば中古再販店だろう。元は古本屋だったが古着やハードウェア一式を扱うようになっている。不景気も手伝ってか規模の大きな店から小さいものまで何種類もあり、売る方も買う方も人が絶えない。自分も不用品や本を買い取ってもらう事もあり時々出かける。そしてまた中古品の棚を見るのも楽しい。何年使ったものかわからぬが大抵のハードウェアは大きく値が下がっている。デジタル家電は最たるものだろうか。あれほど出費して買ったデジタル一眼もレンズも買い取られたときは冗談だろ?と思う値段だったが、また、売られている品も安いのだ。新品を買う事が馬鹿らしくも思える。 そんな中値段がさほど下がっ…

  • 夜市・台湾的風景

    街なかのマクドナルドに入った。眼の前の通りには二階建ての路面電車が走り的士と書かれた赤いタクシーが忙しそうだ。歩く人並みは東京よりも密度が多くざわめく。昨夜に到着した初めての外国、香港の風景だった。朝食にでもと入ったマクドナルドの店員はなにが腹立たしいのかひどく無愛想で怒ったように大声で注文を聞いてくる。僕はなぜ怒られるのかと心が縮んだ。街中の裏路地では屋台が出て誰もがそこに座り粥や麺を食べていた。口角泡を飛ばすように話している。朝から喧嘩なのだろうか。 仕事で中国に行く機会が増えてから判った。彼らは怒っているわけでは無く言葉の持つ発音方法がそう聞こえさせるのだ。大学の第二外国語は中国語を選ん…

  • お好きですな・・

    とある高原の道の駅だった。週末は観光バスも入り近所の高級リゾート施設から流れてくるお客様でここは何時も満車だ。しかも敷地内には日帰り温泉もあれば東京の老舗本格広東料理店もあるのだから人気のほどが知れる。 空気が肌を刺すのはそこが海抜千メートルの等高線にほぼ乗っているからだった。標高が百メートル上がれば気温は0.6度下がることは山屋なら誰もが知っている。それをベースに登山の服や装備を選ぶからだ。つまりそこは東京よりも気温がいつも六度低いことを意味していた。夏は気持ちの良い場所だが冬はどうだろう。確かにそこはとある三千メートル級山岳への夏山登山駐車場まで車で数十分ではあるが冬は雪に閉ざされる。海抜…

  • 鼻ぺちゃ天国・福之記9

    港の見える市営公園だった。そこはクジラの背の様な丘の上を園地にしたものでドッグランやバーベキュー施設もある。一月の港を吹く風は冷たい。戸外で遊ぶにはまだ早いのかもしれない。しかし犬連れの散歩者が多かった。多くの犬種に会える。秋田犬やサモエド、レトリーバなどの大型犬は存在感がある。彼らは一見近寄りがたいがとても大人しいのだった。 公園の犬はやはり小型犬が多い。ダントツ人気はトイプードル。そしてチワワ、ポメラニアンあたりが三役だろう。パピヨン、マルチーズ、ミニチュアダックス、ビションフリーゼも見る。中型だとシバやビーグルか。こんなに犬種がするする出てくるのは犬が好きだからだ。この一派を忘れてはいけ…

  • なぜか心沸き立つ

    港にあるアウドドアショップに来た。一通り揃ってしまいもうアウドドア用品など今更買うものは無いのに、なぜかこの店は胸が弾む。もう四十年近く前にその商品を買ったブランドだが今では人気店で日本中全国展開だろう。今日では街着として人気のブランドに思える。しかし創業者はアパレルに無縁なアウトドアマンでありアウトドアに適した商品は何かを考え世に出してきた。実際のアウトドアマンならわかる痒い所に手が届く的な商品が多く、どれもが単なる街着以上だ。自分の初めてのテントもゴアテックスの雨具も、そして自分が持っているアウドドア用品の三割はこのブランドのものだろう。 今日の店は横浜港の山下埠頭そばにあった。ビルの中に…

  • 紙の上の箱庭

    つい最近まで登山と言えば何時も二種類の地図を持参していた。登山ガイド地図と地形図だった。 登山ガイド地図はルートと所要時間などの情報が記されたものだ。自分達のヤマ屋世代では「エアリア」とだけ呼ばれる地図だ。ユポ紙で出来たそれは耐水性と耐久性を兼ねていた。正式には「昭文社発行・山と高原地図(エアリアマップ)」と言うべきだろうが誰もが単に手短に「エアリア」とだけ呼んでいた。今多分その四文字は通じないだろう。最近の同地図には「エアリアマップ」と書かれていないのだ。先日キャンピング用品に軸足を置いたアウトドア店に行った。そこで「エアリアは何処に置いていますか?」と聞いたら若い店員さんはキョトンとした。…

  • 富士山ここにあり

    僕がこの地を知ったのは昭和40年代初めだろう。父親がこのあたりに家を建てようと土地を探していた。埃だらけの道をバスに揺られて走ったことを覚えている。 次にこの場所を意識したのは中学生か高校生だった。色気だって来る年齢だからそんな小説に惹かれたのだろう。青森は津軽の産んだ作家と言えば太宰治になるが、なぜか石坂洋次郎はそうは出てこない。「青い山脈」「陽の当たる坂道」あたりはそれなりに流行ったのではないだろうか。いずれも映画になったくらいだから。しかし最近は余りその名も見ない。 心配ご無用。自分の書棚には彼の著作は数作ある。特に好きなのは「陽の当たる坂道」だろうか。映画では石原裕次郎がナイーブでぶっ…

  • 僕のセーター・福之記8

    生まれた時から服なんか着たことは無かったよ。生まれたての記憶はないけどママが僕をたくさん舐めてくれたよ。それで目が覚めたのかもしれないんだ。 僕は生まれてからすぐにママと離れてしまって、何故だろう、檻の中にずっといたんだ。時々お爺さんがやってきて「食べろ」と言ってボウルに無造作にカラカラと茶色い物を入れたよ。余り美味しくはないけどとりあえずお腹は一杯になるという訳さ。 一体どのくらいの間に檻の中にいたのかな。ママは何処に行ったのかな。時々外に出されると、そこにはボクと同じような顔をしたお友達がいくつも居たんだ。なんだかお尻から良い匂いがしてね、ボクは思わずお友達の尻尾の上にのしかかってしまった…

  • 手作りの音

    音楽が好きならば多少はオーディオに金をかけるだろう。最近では昔ながらのレコード盤が人気と言う事で新譜をレコードで出すアーティストも出てきている。かさばる、扱うのが面倒だ、そんな理由でCDが世に出た1980年代半ばから自分はレコードを手放しCDに買い替えてきた。その十年後にはウィンドウズが世の中に普及し音楽はデジタルデータとしてPCに取り込めるようになった。すると今度は手元に置いておきたいCD以外はPCに取り込んだらCDを手放した。今思うと慌てずに手放さなくとも残しておいても良かったと思う版も多かった。しかし全ての棚がCDで埋まってしまったのでそれも仕方なかった。今はサブスクの時代で必要な時にネ…

  • 歪み

    車を売るなら〇ッグモーター、あの印象的なコマーシャルもすっかりテレビから消えてしまった。今の自家用車は二年半前にそこで買ったものだった。十年以上年乗っていたジムニーを手放したのは脳の手術をしてから衝突安全防止機能の付いた車が必要に思えたからだ。ジムニーは自分のライフスタイルにピタリと合った素晴らしい車だが古い車にその機能は求めようもなかった。妻も運転するので運転しやすい車を探した。軽自動車ジムニーでの生活を通じて普通乗用車の必要など一切感じなかった。むしろコンパクトさと税金など所有コストの安さに惹かれていた。軽の乗用車タイプで四駆を探すが苦労した。ジムニーや軽バン、軽トラ以外には軽の四駆は余り…

  • 不思議な匂い

    甘い香りがして昼寝から覚めた。それは懐かしくもあり何故みか酸っぱさもこみ上げる匂いだった。 甘酸っぱいといえば初恋だろうが記憶の中でのそれは石鹸の匂いだった。中学二年年だったろう。素敵な女子がいた。何度か文通をしたかもしれなかった。彼女に近づくと何故かとても良い香りがし心臓は早鐘を打った。石鹸の香りだと思った。 目を覚ましてくれた甘い香りは錯覚ではなかった。キッチンで妻がジャムを煮詰めていたのだった。そういえば柚子をご近所さんから譲っていただいた。ジャムを作ろうと話をしていたのだった。絞るところまでは手伝ったが握力不足なのか手がつってしまい早々に出番を失い引っ込んだ。なんだ、レモンスクイーザー…

  • ペルソナと仮面

    会社を早期退職して三年半だった。本来の定年の年をようやく迎えた。二年前からパートをしている。多少は頭を使うとはいえそれはある程度決まった業務だった。ジーンズにフリース、ナイロンのジャケット。汚れても良い格好で仕事をするのだった。 生活のリズムは変わり都心に出ることも無くなった。たまに駅に出たり電車に乗る。世の中の人はなぜこんなに急いでいるのだろう、と思う。品川駅で降りた。スーツ姿が懸命に走ってきた。教習所のパイロンを交わすように人混みを走り抜けてきた。彼は新幹線乗り換え口に向けて必死だった。列車の時間に間に合わそうとしているのだろう。衝突を避けようと足を引いた僕は激しくよろけた。彼は一瞬止まり…

  • 昔の名前で 福之記7

    京都にいた時は「しのぶ」と呼ばれていた。神戸では「なぎさ」と名乗った。そんな人もいたのだろう。彼女はきっと夜の女。幾つもの名前は源氏名。本名と商売の名前の二本立てだったろう。 十二年もの間そう呼んでいたのだから簡単には変わらないようだった。正しい名前で呼ぶと反応するのは嬉しいがうっかり昔の名前を読んでも、なんとなくこちらを向くのは名前というよりむしろ自分達を飼い主として認識してその声に反応しているのだろうか。まぁそれも嬉しい。しかしせっかく名付けて役所に登録したのだから正しい名前で呼びたいものだ。 「ゴン」ちゃんご飯だよ。そう妻は言う。と上げ足取りが大好きな自分は待ってましたとばかり言う。ゴン…

  • 前向きな笑い

    「高いな」。顔をゆがめてそう自然に出てしまった。しかしそこは人が多く、遠慮が働いた。声にせずに口を動かしただけだった。すると真正面でカートを押していた初老の女性が、僕の顔を見てにこりと笑った。とても嬉しそうだった。 「あれ、聞こえました?」「はい、とても良く聞こえました」 互いに笑いあってしまった。彼女は口に出なかった僕の心の声を瞬時に読んだのだった。なぜか?それはきっと彼女もそう思っていたからだろう。 そこはスーパーの店内のお弁当コーナーだった。食事の具材を買いに行ったのだが時間も遅くなり今から作るのも面倒だった。出来あいの品を買って帰ろうと思った。どの弁当も五百円を切る事もなく安くは無かっ…

  • かさぶた剥がし・福之記6

    エリザベスカラー、なぜそう言われるのだろう。故エリザベス女王がつけていたわけでもない。ネットで調べると十六世紀頃の英国はエリザベス朝の頃に女性の首元に実際に使われていたからとの解説があった。確かにそんな絵画は美術や歴史の教科書で絵に見ることが出来る。そのドレス姿から高貴な方々だったのだろうかと思う。またそれを見た時首元がフサフサして痒くならぬか、といらぬ心配をしたこともある。 もう幸せな空へ去ってしまった我が家の先住犬も、新参の二代目もシーズーという犬種だ。鼻がぺちゃんこで少し間抜けな顔が気に入っている。概して大人しく無駄吠えもしない。毛も抜けない。その代わりにメンテをしないと毛は伸び放題にな…

  • 忘れ物とCOPQ

    オルリー空港はパリ市内の南にある。北側のシャルル・ド・ゴール空港は日本からの便も到着する国際便ターミナルを持つフランスの玄関だが、オルリーも小さい規模ながら近郊への国際便が入る。空港チェックインカウンターで指摘された。なんと、娘のパスポートが失効していると。誤って古いパスポートを持ってきたと気付いた。これでは飛行機には乗れない。オルリーから自宅まで渋滞なしでも三十分、帰宅して戻ったら間に合わない。イライラしてもどうしようもない。旅行は取り消しとなった。 溜まったエアラインマイレージを使ってのポルトガル旅行だった。その意味でエアラインチケットはマイルの無駄遣いのみで済んだが予約していたリスボンの…

  • 予算達成

    いつも予算達成だな。なんとも羨ましい・・。 決められた計画。達成したことはあっただろうか?ここで言う計画とは夏休みに何をするか、と言った小学生の立てる目標ではない。仕事の話だ。 仕事には多くの計画がある。事業計画と呼ばれる。会社はその計画で動いていた。例えば売上。既存の顧客だけなら伸びしろはない。では新規顧客をいかに開拓するか。例えば損益。売上から原価を減じたものを粗利と呼ぶ。大雑把な損益と言える。それが製造業ならば原価低減は重要になる。その為には原材料購入費に目を光らせ、品質や製造歩留まりの改善をしなくてはいけない。また何よりも魅力ある商品であること。市場ニーズを先取りして他にない何かを持て…

  • ダイバート

    眠くて仕方なかった。12時間のフライト、そして15時間時計がずれたのだから仕方なかった。米国の入国審査は何処も時間がかかるがシカゴ・オヘア空港は特に長い。長蛇の列をクリアし「ビジネス?カンコウ?シモン」とガムを噛みながらしゃべる審査官にスタンプを押してもらい入国すると、無人列車に乗り国内線ターミナルに移動する。太平洋戦争での米海軍トップエース、エドワード・オヘア中佐の名前を冠した空港のロビーには彼の乗機が展示されている。ネイビーグレーのグラマンF4Fワイルドキャットだ。日本海軍ゼロ戦の好敵手だったF4Fは太平洋戦争初期から中期の機体だが、頑強でずんぐりした機体に直線の主翼。膨らんだ無様なマグロ…

  • 納期の無い仕事

    「ツギハ スローデ イクゼ!」 東京ドームだった。例の粘っこい声でたどたどしい日本語を言うのだった。するとキースとロニーはいつかアコースティックギターに持ち替えていた。次に始まったのは確かにダンスナンバーでもブルースでもカントリーでもロックンロールでもない。スローなバラードだった。アンジーあたりだっただろうか。しかしこの手の曲もやはりミックにかかると映える。流石名人芸だな、と思った。 時間をかけてやろうと思っていることが山積みだ。鉄道模型、飛行機プラモデル・・。あまり順序だてて物事をこなしていくのは得意ではない。齧りかけの物がそこら中にある。以前なら一気に集中して終えてしまった。が今は着手出来…

  • 信頼関係・福之記5

    ザイルパートナーと言う言葉がある。雪山でパーティを組む。ザイルで互いの身を結ぶのは一人が稜線から滑落したらもう一人が滑落防止姿勢を取りそれを防ぐ為だ。ピッケルと雪面に刺すと言うが、さてどれほどのものだろう。不幸にして流されることもあれば供に助かることもあるだろう。自分はザイルパートナーを求めるような登山はしない。しかし山スキーは違う。始めたころは雪崩の可能性の低く厳しくない山を中心に独りでスキーを履いて地図を読んで山頂に立った。下山はスキーの滑り止めを剥がしてワックスを塗る。地図を読んでいざ滑り始める。尾根を一つ間違える。気づかずに三十秒や一分でも滑る。するととても元の尾根には戻れない。晴天下…

  • 笑いすぎと引きこもり

    クラッカーを食べていた。家内とテレビでも見ながら馬鹿話でもしていたのか。何がそんなにおかしかったのだろう?アハハハ、と、大笑いしていた。すると噛み砕いたクラッカーの一かけらが迷子のように気管支に入ってしまった。そこから咳が止まらくなった。自分には喘息の持病があり気温の変化やたばこの副流煙はすぐに気道を収縮させる。喘息を起こさぬようにとステロイドと気管支拡張剤の毎朝毎晩の吸入は欠かせない。気管支の迷子のクラッカーはしかし居続けた。喘息に近い状態になった。激しい咳は異物を肺や気管支から出そうとする為の自浄運動だと言われた。 少し発熱もあった様だった。咳が苦しく夜間に何度も目が覚めた。息が出来ないと…

  • レニングラード攻防戦

    小学生のころから自分はミリオタ、つまりミリタリーオタクだった。自分が小学生と言えば1975年まで。当時本屋には太平洋戦争での日本海軍撃墜王・坂井三郎の著作「大空のサムライ」が並んでいた。ドキドキして読んだ。当時の世の中はベトナム戦争が終わる頃だった。写真誌アサヒグラフには戦火の下を逃げ惑う少女や戦争に反対し自らに火をつけて座して死を待つ僧侶の写真などが載っていた。小学生の自分にはショッキングな世界だった。しかし戦闘機や銃器、兵器の持つ魔力に惹かれていた。それは自分が産まれる二十年前に終わっていた太平洋戦争と欧州での第二次世界大戦にフォーカスされていた。 欧州の戦いは自分には興味深かった。戦後の…

  • 理解できない事

    E=IR。「オームの法則」を習ったのは中学生だろうか。電圧=電流x抵抗 と考えるとああ成程と思う。学問は単純化すればわかりやすくなる例か。アマチュア無線技士という資格を取ったからにはやはり何処かで科学的な事柄に興味があった。それは当時少年漫画の巻末に「趣味の王様」と紹介されており「世界中に仲間ができる」という追記もあっただろう。通っていた中学校にはアマチュア無線クラブがあった。興味がありそこの部室に入りびたりだった。しかし免許取得は自分には難しかった。見せてもらった国家試験の教科書。E=IRなどは序の口で意味不明な公式に溢れていた。 しばらく興味は遠ざかってしまったがやはり一度興味を持ったこと…

  • 今年もありがとう母校・箱根駅伝

    もう脈は薄いかと思っていたら往路では断トツだった。今年こそは気合を入れて応援しようと思った。翌日何故か朝は早く目覚めてしまった。 部活動に打ち込んたわけもなく学業に専心したわけもない。ゼミにも入れなかった。まさに無為徒食だった。顔の広い友が講義のノートを惜しみなく貸してくれたおかげで単位をギリギリでとった。親もまたありがたいことに学費を払ってくれた。そんなおかげで卒業できたようなものだった。ただ言える事、それはかけがえのない仲間たちと知り合った事だろうか。 社会人になってから母校は遠かった。母校は自分の母の憧れの学校だったらしい。高校を卒業し裁縫学校に通っていた頃その学校出身の女性がいて憧れた…

  • 手を抜かぬこと、出さぬこと

    年末年始は決まりごとが多い。師走の半ばから年賀状を出さねばならぬ。大晦日が近づくとお節料理の準備やお年賀などを買うだろう。元旦は初詣、子供たちの帰省、年賀状チェック・・。もともとそんな決まり事を「古い価値観」と考え敢えて軽視していた。が加齢とともにその傾向が強まった様だ。おせち等用意しなくてもいいだろう。お重に空きがあるなら適当に物を入れればよいだろう、そもそもお重に入れなくてもいいだろう、胃の中に入れば同じだから。と言う。妻は妻で言う。「おせちを皿に並べる?お重です。スカスカなおせちは変でしょ、普通じゃないでしょ」と対抗の矢を飛ばし年末年始は険悪になる。元旦。昼前には年賀状が届く。昨年は父親…

  • 願かけ

    願い事にすがりたい。こうなってほしい、こうあってほしい、そんな思いは誰もがあるだろう。多くの日本人は八百万が神様と言われるがやはり神社仏閣を前にすると誰が教えたわけでもないが柏手をうちを頭を下げる。クリスチャンはイエス様を仰ぎ十字を切りロザリオを握るのだろうか。 山梨県の七面山は日蓮宗の聖地だが山頂直下まで250mの標高差を残す場所にある敬慎院までは標高差1300mの辛い登りが続く。七面山は登山者には二百名山であるが信者には身延山の奥の院でもある。こんな山中にどうして立てたのだろうと思う大きな寺院であり宿坊だった。実際自分達の登山の際に白装束の多くの信者が登りそして下っていた。彼らの誰もが皆、…

  • マシラの如く・福之記4

    マシラの如く山を歩いた・・。そんな文章に接したのは高校生だったろうか。そう、当時熱中していた北杜夫氏の何かのエッセイだった。旧制松本高校(現・信州大学)に在学し北アルプスを彼が頻繁に登っていたのはそんな旧制高校時代の話だ。彼の登山趣味は蝶とコガネムシをはじめとする好きな昆虫採集が引き金だったようだが、徳本峠あたりのクラシックルートを歩きそれを描いた紀行文やエッセイなどは記憶に深い。常念岳あたりも登っていたはずだった。 マシラの如く?そもそもマシラとは何者か?いつもの広辞苑頼み。マシラと繰ると一言「猿」(サルの異称)とある。ならばわかる。スズメバチ、熊、猿、山の中で鉢合わせたくないのはどれか。ど…

  • 元旦の朝

    ♪ダッ・ダララ・ダララ・・ ああ、今年も始まるな。 昨夜はたった一本の缶ビールで眠くなってしまった。NHK-Eテレでベートーヴェン第9の演奏会放映を見ているうちは起きていたが、後は憶えていない。年越しそばを食べる事もなく寝てしまったのはこの二週間収まらない咳と肺の炎症か、それに起因する喘息のせいかもしれなかった。深い咳は体力を使う。体を折り曲げるのだからいつか肋骨の内側に明瞭な痛点もあった。晦日に年越しそばを食べなかったのは初めてだったかもしれない。この辺りでは新年カウントダウンが始まると横浜港の船が一斉にボォっと野太く汽笛を鳴らす音が聞こえる。なかなか味がある。しかしそれをも聴き損じた。これ…

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