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岸上達朗
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2022/06/11

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  • 島唄(57)普通

      年が明け、判事補二年目になった秋一は一層職務に精励していた。年末年始も帰省しなかったのは、彼が担当した大型脱税事件を検挙したマルサこと国税庁査察部の調査員…

  • 島唄(56)我が道を行く

      控室ですっかり意識を戻した秋一は、壁の時計を見やった。まだ披露宴は続いている時間であり、慌てて式場に戻ろうと腰を上げたところをスタッフに止められた。  「…

  • 島唄(55)失神

      その年の秋口、秋一の担当した大型脱税事件の第一回公判が全国報道されテレビニュースで流れた。細いフレームの銀縁眼鏡から、テレビカメラを見つめる鋭い眼光と凛々…

  • 島唄(54)結婚式、友人代表

      当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世街道を驀進していた林崎部長から雑談中に指導を受けた秋一は、しばらく今後の判事としての生き方、あり方について思い悩んでいた。 …

  • 島唄(53)着ているもので人を判断するということ

      秋一は悩んでいた。すっかり惚れ込んでしまったユウと毎週土曜日同伴出勤するのはいいが、その本心にはなんとか彼をものにしたいということがあった。彼はウケ専らし…

  • 島唄(52)玲瓏

      先程来、花ママと二人きりのカウンターに、夜の匂いが風に乗って薄っすらと浸潤した。  「あら、ユウくん、おはよう。丁度噂してたところなのよ。」  ユウくんと…

  • 島唄(51)運命の人

      仕事は忙しく毎晩深夜とまではいかないが、夕飯の時間帯を過ぎるまでは残業であった。大きな判決起案をしなければならなくなると土日出勤もやむをえなくなるが、まだ…

  • 島唄(50)判事任官

      秋一は当時暇が出来ると精神医学や心理学の本ばかりを読んでいた。それは大学時代に知己を得て多大なる影響を受けた異端の理論刑法学者水上達夫氏の交際による。水上…

  • 第三部 島唄(49)社会人一年目

      四月から司法修習生になった秋一は、とにかく忙しい研修スケジュールに目を白黒させていた。義人のことを考えるのも卒業旅行で完全燃焼した感があり、かてて加えてハ…

  • 島唄(5)卒業

      義人は、ほんの数年前に英語担当講師として市内で有名な英秀という進学塾に勤めていたという。  数年前のことであるのだから、きっと知り合いの同僚はいるだろうし…

  • 島唄(4)最果てのアパート

      翌朝目を覚ますと、ホテルの二重窓のカーテンの隙間から白い陽射しがさしていた。疲れていたのか夢もみず、セミダブルのベッドで呆れるくらい熟睡した秋一である。 …

  • 島唄(3)旅立ち

      翌日には東京に帰る最後の晩、秋一は家族そろったところで父に頭を下げた。今夜は姉夫婦も祖母も一緒の晩餐である。  「あのさ、俺、卒業旅行に行きたいんだよね。…

  • 島唄(2)オホーツク海

      桜井義人、昭和二十八年十二月十日生まれ。東京都八王子市××町出身。父は日本を代表する大手電機メーカーの事業本部長まで勤め、母は専業主婦であった。六年前に父…

  • 第三部 島唄(1)調査報告書

      「まあ、あの頃からしばらく、ワタシの人生は川面に浮かぶ岩石を駆け抜けるような感じだったのよね。いつも丁度いい位置に石があって、他の人と違って自分だけ簡単に…

  • 島唄(最終話)心の旅

      翌年、大学四年生になった秋一は司法試験を受験することになるのであるが、この時期は司法試験が史上最も難しかった頃であり、その試験範囲の広さには多くの受験生が…

  • 島唄(20)熱き日々

      八月に入ってすぐの金曜日。夕暮れ時、秋一は日独文化センター教室を訪れ、幻の刑法研究者水上達夫と対面することが出来た。  事前に受付スタッフを通して、こんな…

  • 島唄(19)顔フェチ

      水上助教授はドイツ語に秀でてはいたが、法学研究者としては三流であり博士課程にも進学していないし法曹資格も有していなかったという。都内一流大学法学部四年生の…

  • 島唄(18)アブノーマル博士

      水上教授との出逢いは大学二年次の晩秋であり、それは神田の古本街でのことであった。神田の古本街には上京以来足繫く通うように秋一であるが、雰囲気が好きなのであ…

  • 島唄(17)行為無価値一元論

      直美との一事があって、秋一はしばらく落ち込んだ。勿論、直美を傷つけてしまったのが一番の理由であるが、それと併行して彼女にカミングアウトしたということは、彼…

  • 島唄(16)月光よりも輝いて

      銀座八丁目から秋一の世田谷区内小田急沿線のアパートまで、タクシーでは時間がかかった。そもそもタクシー待ちの行列に時間がかかったうえでのことだから、アパート…

  • 島唄(15)奏者

      実際、日曜日のこの時間帯、銀座のバー通りはまるでゴーストタウンのような静けさを保っており、着物姿のホステスは一人しか見かけなかった。その静寂さは新宿二丁目…

  • 島唄(14)銀座

      「アキくん?アタシ、誰だかわかるかしら・・・。」  幾分緊張気味だがおっとりした聞き覚えのある声で、すぐに誰だかわかった。  「直美ちゃんだね。元気でやっ…

  • 島唄(13)意外な訪問者

    秋一と彼に想いを寄せる畠山青年との関係は、一向に進展がなかった。求愛を受け取らないが決して見放すような態度もとらない秋一の態度に、畠山青年は疲弊していた。…

  • 島唄(12)面白きこともなき世を面白く

      同じ大学とはいえ見ず知らずの学生から奇妙な告白を受けた秋一は、独り悩んだ。義人に代わる心のパートナーを熱望している彼としては新たなチャンスであることは事実…

  • 島唄(11)告白

      「こんばんは。」  図書館の丁度出入り口を出た辺りで、前方を進む青年に声をかけた秋一である。  えっ、慌てて振り返る青年は目を真ん丸と大きくさせ茶色のジャ…

  • 島唄(10)迫り来る足音

      やがて夏がきて、秋がきた。昨年同様お盆に少しの期間だけ帰省して東京に戻ってきてからも特に秋に受験予定の行政書士試験の対策はしなかった。  十月の日曜日、都…

  • 島唄(9)月下の道

      「何をやったんですか。」  「寸借詐欺よ。ゲイリブの団体を作りたいと語ってはあちこちで知り合いからお金を借りまくってね。雑誌の文通欄まで利用していたらしい…

  • 島唄(8)宅地建物主任取引者試験

      大学一年次の夏休み、帰省したがすぐに東京に戻ってきた秋一は、既にして自分は島民ではないことに気づいていた。それは島を発った多くの若者と同様であり、そもそも…

  • 島唄(7)花屋敷

      「花屋敷」という店名のそのゲイバーは、林氏の昔からの行きつけであり、ママは年齢不詳、しかし非常に特徴的な外見の持ち主であった。  プロレスラーにしては上背…

  • 島唄(6)女性立入禁止

      当時、新宿二丁目ではなく三丁目の路地裏に「風車」という小さなラブホテルがあった。表向きは普通の男女向けの休憩所であるが、場所柄か同性愛者同士の利用が多く、…

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