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骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
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2022/03/17

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  • 骨董商Kの放浪(30)

    翌日の午後、僕は宋丸さんの店に向かった。今日の目的は二つ。先ずは、今回仕入れたモノを見てもらうこと。定窯白磁碗と黒釉碗の二点。そして、Saeのところの万暦豆彩馬上杯について訊くこと、である。扉を開けると、Reiが笑顔で出迎えた。 「よかったですね。良い仕入れができて」今回仕入れたモノについてはすでにReiに知らせてあり。「良い仕入れなのかどうかは…」判決は今日、宋丸さんによってくだされる。その宋丸さんであるが、どうやらまだ来ていないようだ。「その黒い碗の方は、Kさん、どんな感じなの?」「うーん。僕は、変な新物(あらもの)には思えないけど。どうかなあ」ママの店で買った黒釉の碗について、Reiは、…

  • 骨董商Kの放浪(29)

    帰国して翌日、僕は仕入れた品物を部屋のテーブルの上に飾った。葉(イエ)氏のところで買った定窯白磁の碗。現地で見るより一段と輝いて見えるのは気のせいであろうか。いや、気のせいではない。やっぱり良いモノなのだと、僕は再確認する。それと、ママから買った黒釉碗。素性はまだ知れぬが、宋時代の雰囲気があって面白い。そして最終日に、Lioのところで手に入れた漢時代の蝉の炉。これはあとで送金をしなければならないが、けっこうな珍品。 僕は独り悦にひたりながら、卓の上に置かれた三点を眺める。そして端に置かれたピンクのリボンに目を向けた。これは、Saeへのプレゼントのガラス玉。僕は、その小さな箱と、定窯を鞄に入れた…

  • 骨董商Kの放浪(28)

    マダムは顔を震わせ、「本当に、日本にあるの?」と身を乗り出した。マダムの眼力(めぢから)に気圧され僕は口を閉ざした。考えてみれば、まだはっきりした答えができないことに改めて気づいたからだ。マダムの魂の込められた話しの流れに乗せられ、ふとそう発したが、Saeのところで見たあの馬上杯が、確実にマダムの祖父のモノという証拠など、まだどこにもないのだ。 「すみません。まだ、そうと決まったわけではなく…。もしや、あれかも、と思っただけで…」それを受けてマダムは再び椅子に座り、小さなため息を吐いた。そして、お茶を一口含んでから、気を取り直したように僕に尋ねた。「じゃあ、それは、あなたの知っているひとが持っ…

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