義母が98歳で永眠いたしました。義母が書き溜めた2,000首以上の短歌を少しづつ公開いたします。コメント願えたら幸いです。
定年退職後気ままな半農半X生活をしています。今年傘寿を迎え半農も少しずつ調整中です。
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#411-420 すすき刈る指はすすきに切られおり青くさき指唇にあてる 子の帰る報せにともる奥処の灯大根洗い白菜を引き オレンジのシャツが似合える老い男は脚病む老女抱きてゆけり 七十年足踏みしめて登りきし石塊れ坂も平らになりぬ ひるの月透きてかかれり子の傍で仰げばとみに美しくあり 人を待つ刻のいらだち紛らして反故焼く煙の流れ見て佇つ 思い出す姑炊きくれし芹飯の飢えいる舌にうまかりし事 こんにゃくを温めて湿布せよと言う我が足案ずる娘よりの電話 したたりに尽くるなく浮くみなわ粒真白きをみて飽きぬ刻あり 一本の鉛筆指を離れずに水泡のごとく文字重ねゆく…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#401-410 背戸のあく気配に立てば生きるため栓なき盗みの猫がにげゆく 回覧板届ける家に立ちこめる主待ちいる夕餉の匂い 寒空にとがあるごとく朝顔は池の囲いに終われずに咲く 裸木は飄々と佇ち口重きもののふのごと冬を迎える 夢に詠み醒めて綴れどおぼおぼと掬う指よりこぼれる言葉 溜まり水かめの底辺に静もりててらう陶肌露のしたたる 驕りいし柔きくずの葉黒ずみて霜の下りしを萎へつつ語る 裸木の梢の秀尖露光り朝の茜は柔く輝く 満ち足りる友は花火の明るさに我がやみともし残り火を置く 鍵かけずついまどろみし夢の中救い求める吾が声に醒む <管理人のおまけ> …
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#391-400 真夜の戸を叩く少年道をききシンナー匂う友曳きずりて 真夜を醒め方位も失いさまよえる若者の脚どっと倒れ入る 送りやる少年の名を知らぬまま走らす車に親の面輪顕つ アクセルを踏みつつ鼓動昴まりぬシンナーの呼ぶ豹変おそれて 真夜の街下車する少年深ぶかと頭さげたり憎めぬ姿 日を経るに一度素面で語りたし我にかかわりなき事乍ら 満たされぬ雨の夕昏れいさかいの相手なければ夕餉を早め 石蕗の黄金に光る花茎の何を見むとて背伸びして咲く 限りある命ちろちろ燃え立たせ問いつ応えつ可能を測る 街中に突如湧き出る軍歌あり菊の御紋の車過ぎゆく <管理人のつ…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#381-390 雑草に混じる野ぼたん際立ちて人はばからず花散らしゆく いささかの心残して去る庭の石蕗つましく見送りくれる 柿の実の赤く熟れても人居らず夕昏れの雲の流れは早し 枯れ枝の岸をすべりて音立てる湯船に腰をうかせるもろさ ほんのりとガラス戸染める朝茜夢見心地のうつつを醒ます 朝刊をひと日の始めと広げても文字を辿らぬ眼は遊びいる 静寂の極みに水面蒼あをと底辺に沈む芥もあるに 人影は灯に帰りゆき野に迫る闇に鴉の二声残す 大根を十本余り洗い終え今日を安らぐ極道となり 葬り後の夫婦茶碗も寡婦となる余生の限り我が傍にあれ <管理人のつぶやき> 石…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#371-380 自己意識告げるか枝に鴉啼き人その声を読むときもあり 繁殖のはげしき故に黄金笹火鉢の中にひしめきて生う いずこさす確かな当ても持たず出て友が家に見る夕茜空 豪邸もひとりの軒もへだてなく染めて茜はゆるゆる消ゆる 耳遠き夫故大きく鐘鳴らし外出告げて後髪曳かれ 川霧のたちまち視野けぶらせて我が佇つ地の揺らぐ錯覚 渋柿を頬張るような顔をしてひとつの思い胸に収める 燃える夏水なき石に苔とあり今青あをと軒しのぶ生う 庭石の苔むしりいし庭師の掌ふと残し軒しのぶの緑 庭石のかげに千両万両の鳥の胃満たす季までを赤く <管理人のつぶやき> 黄金笹(…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#361-370 蜘蛛糸にかかる枯葉のクルクルと廻るを病床の窓に見ていつ谷川の細る岩間をひとすじの白布垂れるを描く人あり裸木の枝軽がると天仰ぐ縫いし錦地にかえして過ぎ来しのこもごも秘める掌に浮かびくるもの醒めた眼でみる大根を炊けば誰かのいるような鄙びの匂い夜半までこもる裏軒に味深めゆく新漬けの母の味よしと子の喰むを待つクルクルと渦にもまれるわくら葉を掬いて何と言うにあらねど籠る耳かたむけており戸の外に二、三の女等さざめきゆけばあかときを醒めて見る夢ひとつあり鉛筆熱く握り直して霜月の歌会寒し吾が行手遮る壁の厚きを叩く <管理人のつぶやき> 鄙び(…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#351-360 とどめたき野の草落ち葉の彩よせて色紙に残すひと掬いの秋 七十路にかかるに無邪気と言われいて隠すを知らぬ単細胞なり スーパーのテレビに写る女あり汝れと知るまで数秒を佇つ ひた走る車に入るくる秋の風生きて味わう今日の匂いを 岸と畔と境分かたぬ草もみじ黄の原茫茫と黄昏れるなか それぞれに使途あり葉陰のあばた柚子湯舟に浮かす二つ三つを 客去りてひとりに広きテーブルに湯呑み二つが冷えて残れり 老人車押すあり水筒提げるありゲートの老は大きく掌をふる 人声のしきりに恋し冷ゆる夜書読む目鏡又してもはずす 逃げてゆく野良猫の胴太かりき此の寒空に…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#341-350 庭に散る落ち葉カラカラ吹き溜まり窓にも季の移ろいてゆく 万歩計結わえて今日は二百歩を切るかもしれぬひと日の終わり 日帰りのうから等ひと日賑わして水引くごとく夕べに去れり 朝まだき霧海原の高速を現れ消えて浮くごとき車 ためらわず鄙びし店の扉押し小さな女の喜びを買う 秋深む草むら踏めばこおろぎの老いたるひとつよろばい出でる 鳶が蛇くわえて屋根に止まるを見て鍵たしかめる女のひとり 三日見ぬ路方に燃える草もみじ踏みしく人の地下足袋跡をみる いがの燠赤き鞠藻のうごめきて生きあるごとく互いを燃やす もぎ残る葉陰の柚子の冷ゆるままあばたの皮…
関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 御朱印 <今日からのトップ写真> 今日からトップ写真を「関西花の寺25 第3番金剛院」とします。 ホームページはこちら。(左のこちらを右クリックして新しいウインドウで開いてください) <義母の短歌>#331-340 花と人の訃を聴く昂ぶりの数刻をいてかなしみの涌く 庭師来たらずおごる庭木のひと所綾なすどうだん緑にしみる 飲めぬ筈ないなどひとりつぶやきて満たすビールの冷たく苦く ささやかな女の奢り千円を余してひと日饒舌に酔う 荷をほどく娘の喜びを吾がものと疲れ曳きつつ柿おくりきぬ 過ぐるのみかえる来ぬもの風にして花を倒して我歎かしむ 栄えゆく大江の町の変貌に我…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 手造りのベンチ形見と置くを出し子が掛けているつぶれはせぬか 逝きし面美しくあれと子の掌にて夫の頬髭剃らしめたりし 死の床のうつつに「飯」にせよと言う末期となりし一匙の粥 花びらに露まろばせてふく郁と手折りし菊を黄泉に参らす 別れ告ぐ吾に時計を指さして口きけぬ人首振りており 止まぬ雨も明けぬ夜もなしとつぶやきを漏らす静けさ唇乾く 料理メモ誰が為にとる乱れゆく文字を丸めて篭にほる音 無意識に投げ出す手首の皺が知る七十年の良きも悪しきも 生涯に人に語れぬ事もあり黄泉の荷物のひとつと包む ふと聴けば世にも不思議なアナウンス男性自立の講習会とは <管理人のつぶやき> …
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#311-320 思うまま花咲かせゆく雨の日の絵の具と筆をこよなき友に 音もせで終のひと葉を散らすとき紅葉はすでに新芽を抱く 緑濃き葉陰に産声あげるごと椿の紅い開きそめたり 頁繰る指しなやかにそらせいる若き患者は面あげざり 只今と声に出せり闇深く応えなき家の灯りをともす 読む書に小さき虫は動かざり頁繰りなば消えゆく命 せせらぎの飛沫を受けて猫柳岩のくぼみにじわり根を張る すすき野の続く棚田に見えかくれ一軒家あり庇ひかれる 減反に驕るすすき野飛ぶ鳥の温くきねぐらも幾つかあらむ 醒めきらぬ耳にひたひた細雨音吾頭蓋にも霧と降りくる <管理人のつぶやき…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#301-310 湯豆腐に小さきパックの半分を煮たてる湯気にひとりの夕餉 まなうらに煙り吐く汽車浮かべつつ軽がる走るディーゼルをみる 目のさきに迫りくる冬沈黙の秘み事抱く魔女の如くに 初雪はふうわり落ちて消えゆきぬ一夜の宿も得られぬままに 日の暮れに米研ぐ事をわびしみて求めしお握りみ祖に捧ぐ 雨けぶる昏れがての道待たれいる錯覚なれど脚を早める 白壁にボール投げかくごとくにも頼りなくいる口きかぬ昼 ビニールのハウスに黒豆干されいて法連草も冬を休みぬ 柿くわえ鴉啼かずに飛び立てり枝に揺れいる残されし赤 軽トラで野良さす夫婦窓越しに掌を振りゆけり農ひ…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#291-300 夫病みて捨てし親猫子猫とも逝きしと聴きぬ病室にいて 吾が触れる紙と鉛筆冷蔵庫他に音なき静けさにいる 風船の空気の漏れる如くいてひとりの夜を平びておりぬ 菊折れば白き花びらほろほろと泪の如く掌にこぼれくる 夫冬に逝かしめたれば雪の上にこぼせし泪痛く凍れり エンピツは黒いマントに黒目鏡のっぺらぼうの冬を描けり 傷つきて想いよせくる人に対い強くなるべしうちにもきかせ しほたれて人に対うときは人は去り明るき花に蝶はよりくる 傘の柄の曲がりたるままさしゆけばおのずとかたむき肩濡らしゆく 家ありて所どころに防犯灯人住む事を告げてともれる …
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#281-290 農捨てて今更にかなし夢路にも背に汗して草けづりいる いたずらに夜を点せる灯り消し自らの姿闇に見つめる 雨除けて蛙飛びこむ軒下に暫しならびて降る雨を見る 渡り鳥振りかえらずに去ると言う捨て切れぬ想いに人は寂しむ 案じられぬ母でありたく自負しつつ子を恋いやまぬもひとりもあり 子を送る母の姿か芒穂の揺れに揺れつつ野の風に佇つ ひとときを人の称えし紅葉の散りては芥吹き溜るまま 夫逝かせひとり住む女等集いきてつましき宴の笑いに酔えり 一枚の運転免許は羽根持ちて気の向くままに我を伴う 毬飛ばし幼遊びしグランドに手袋片方露に濡れいる <管理…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#271-280 心せく何に残さん此の彩を紅葉は日毎褪せゆくものを いとけなき山茶花の花咲き初めて花びら早も地を彩る 朝風にマフラーなびかせ過ぎし女若さみなぎる風まき散らし 緑葉に産みつけらりし金色の卵つぶさに潰しゆく爪 文書きつつ涙こぼしぬ老ゆる身に夫なく子なき恩師思いて 人間の歩むとすれば何里ともひたすらに這う蟻の根性 白菜を数枚剥ぎて切り漬けのままごと染みるも何時か馴れゆき 抜き立ての大根おろしさわやかに舌に生きてる辛さの味覚 フイルムに収め得ざりし落日をともに称える人なく佇てり 落日の雄大に遭い釘づけの足許染める名残りの茜 <管理人のつ…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 心地よき眠りを欲りて飲む酒は浮かれもせなく麻痺呼ぶ五体 絶望と言うにあらねどだらだらと醒めてかじれるパンは乾きて 昼暗き峡の山岸明るめりハゼ燃え立ちて限りなき彩 雨の夜落ち葉を叩く紋様のワイングラスのかすかに揺らぐ 竹三本伐りだす事に意義のあり人の知らざる私の心 陽のさせば何か求めて立ち上がる為さずとも済む草などむしり 静けさに馴るると言えども寒ざむと雨音聴けば人を恋わしむ 霜畑の花魁草は寒ざむと装いており夕べを匂う 饒舌の果てるときなく熟女らは黄昏れ忘れて昔を語る 手を掛けぬ白菜ひとつ捲きおれば頭をさげて戴き帰る <管理人のつぶやき> 欲りて(ほりて)・・…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#251-260 旅をせんか宴げ開くか女等は言葉に酔いて会過ぎてゆく 残照に緑彩られたる黄金雲奥処にかがやく菩薩おわすや 水底の砂利に重なる紅葉の影を揺らして尾びれきらめく 欲しらぬ幼きもののいとしかり澄める瞳に神宿らなむ 侮れる秋の夕立ちのしぶきおりけぶる視界をよぎりゆきしもの 灯りひとつともせるままに出でゆきぬ暗闇さぐるひとりの戻りに 耳底に啼く蝉の音のはたと止み又啼き出せば音色変われる 母吾れの想いの深さも四十路の子満たす術なく帰路をうながせり 足早に過ぎゆく秋の気配する夕暮れ刻の翳あわただし 藪椿ひともと剥がれ川べりのせせらぎに水漬き蕾…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#241-250 羽根たたみ動かぬ王者雀蜂艶持つ胴にふくらみ保つ ぬばたまの闇に馴れゆく眼と言わん残り世の路細ぼそと見ゆ 酒座に居て野にある如く黙りいる妻逝かしめし男のひとり 撫子の稚苗を掬う素手の指しとねの土を慣らし慣らして みどり児を寝かす手付きに植えてゆく指にまぎれるニゲラの稚苗 襞深く秘めし繰り言時に吐くと誘い出させる霜月の風 窓少しあけて子を待つ帰らざる報せを受けてもなほも待ちいる カレンダー剥げばうすきが壁に揺れ人重ね着をまさぐる朝 時雨空蜘蛛の巣糸をさながらに文化を支える電線の雫 高きみず満ち足る事が仕合せと言いたる人が寂しさに病…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 掌に払う秋の蚊の羽根虹の色の透きてふるえて動かずなりぬ 一薙の鎌下に散らう彼岸花紅のうす絹ひるがえるごと 子育てに面やつれするうつし絵の実母見て我は良き世に生まれる あれこれと服を選びて無駄な刻過ごす奢りを店舗の軒に 売るとせば二束三文買うときは高き値のつく菊地に臥して 人訪わず電話のベルも鳴らぬ日の白虹寒し血の色さわぐ ひとり旅首振る鳩のまろき眸を暫しの友に列車待つ刻 犬嫌い通じぬものか訪う度に甘える犬を遂に撫ずれり 水溜まりあわやと除けてまだ少し残る若さに一人で笑まう 秋の陽の流れに写る我が影を茫と見ている魂揺れている <管理人のつぶやき> 一薙(ひとな…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 ひと夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小さくて 物売りが電話で齢を確かめて先は語らずガチャリと切れり 瀬戸大橋夫と渡らむ夢失せて醒めても居てもどうにでもよし 逝きし姑何ぞ嬉しき日のありやなし浮かぶ面輪の髪乱れいて 雲みよと子は声弾ませて我を呼ぶ見慣れし峡の夕茜雲 此の空は俺のものだと家の棟を見上げ青空子は称えおり 子の尾燈坂に没りゆくまでを佇つ逃れる術なき夜の静寂 錠外し灯りともせばよみがえる空気ひとりの温くみ寒みに 子と交わす会話の途切れしばしばに佇みにタバコをふかすに足らう 急ぐ身の脚をとどめる戸田橋のコバルト写す蒼き流れは <管理人のつぶやき> …
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌> 咲き誇り触れなば散らん情濃ゆき人思わせる芍薬の花 フロントに鎌上ぐひとつかまきりの生き確かめてアクセルを踏む ざわめきの酒座を逃れて施錠するひと日の終わりこそと音する すきとおる新米友は賜いきぬ農に疲れて農なき我に 浮き立ちし祭りの終わり昏れるなか行事の果ての煙見送る 芒原に佇つ肩撫ずる風かそか旋律に似て耳底になる 施錠する玻り戸の揺れて残る世のひと日を埋める彩を思えり 花ならばひととせ待てば咲くものを自ら散りし無情の葬り 金木犀散りしく片辺を掃き残す金の彩り酔い醒めるまで 胸寒く秋雨の音ひたひたと眠れぬ夜の無聊をつつむ <管理人のつぶやき>…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌> 目に見ゆるもの皆柔し春草の吾に従う如く過去断つ 詣でとは従いゆくのみ坂下の出店に心馳せし幼日 足許に落ちていた一銭嬉しかり使う使はぬに心ふるえし 風除ける厳にも似て祖父の愛貧しき幼を支えくれしが 廃屋の壁這う蔦の千切れ千切れて風に吹かるる解体の日 川風に吹上られし花吹雪信号待つ間の虚空を踊る もの飛ぶ音鳥か木揺れか寝ねられず眼ひらきて闇みるばかり 老いひとりを狙う空巣を許すまじ聞き流している警察なおに 胸内吹く疾風はありあるだけの灯りともして歌集ひもとく 賑わえる酒座を放れて座す老いの動かぬ視界にあるは空のみ <管理人のつぶやき> 厳(いかい…
関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 御朱印 <ページトップの写真> 今日から、関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺(りょうごんじ)の写真にします。 <義母の短歌 #191-200> 秋茄子の艶持つ紺に雪の日の毛糸をおもう肌寒き朝 独り居に特権もある陽の入りを羽根持てる如く胸内かるやか 刺身など好みし亡夫に喰ませたき思いしきりにはまちを捌く 我が衣服人めでくれて単純に心明るむおんなが残りて さつも芋味覚を変へる舌の上戦後の鍋の芋飯が顕つ 貧しき鍋八人もいて囲みしに喰みたる人等幾人逝きしか 厨辺に一刻忘るる独り居を女である事変わらずにおり 落柿に憩える蝶の羽根破れて終の近きか動きのにぶく 草踏めば飛…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 根を下ろす土は選ばず彼岸花秋を走りて夕な夕な褪せゆく 祭り太鼓の音のそぞろに波立てばこもる女も誘われてでる 女の夢詰めて小袖の眠りいる和箪笥ずしりと幅占めており うたた寝より醒めて暫しを見廻せりいま聴きしは己が溜め息と知る いづくより飛び来て生えしやコスモスの茎太るまま畑荒れゆく 唐辛子の濃ゆき緑葉まさぐりて指が目になり篭充たしゆく 気紛れな時雨に濡れて戻り道篭の秋茄子露に艶増す その終を告げているかも中枝よりにぶき音立て柿地に落ちる 垂れ下がる蔓のなかばにまろまろと枝にあけびの我を見下ろす 世は移り腕白どもの影はなく群れてはじけるあけび…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 沢蟹にふれなば鋏振り立てて己を守る本能持てり 今ここに肩押す人のありとせば地獄の果てまで落ちなん危うさ 我が耳に寝息届くる墓参の息彼岸の夜に疲れて眠る 夜風受けコトコトと鳴る窓ガラス夏には聞かず季深みゆく 栗拾うひま喜びもなかりしを柴栗の渋取りつつ思う 単純にひとりある夜の刻に倦み出で来し街のネオンにも酔えず はりと網戸の狭間に生きる蛾に思ういにしえ女の耐ゆるにも似て しばしの間頭と言うもの空にしてマンガ日本昔話しなど見る はばからず幼に還り語りかくる石になりても母優しかり 何もなさぬ刻を惜しみて落ちつかず悲しき性よ終わりし農に <管理人…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 幼日のお手玉かとも酔芙蓉つましくまろぶ花殻あまた 仙人草白き十字の花群れてまばゆきばかり鎌当てられず 撒水の虹に小人を遊ばして幼に語る童話一こま 一夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小さくて 味覚より香りのよきと早生みかんのうすき皮むく目を細めつつ 警備員をマネキン巡査とふと紛う雨中旗持ちて動かずおれば 待つ刻の長きに倦みて語りかく弾む応えは同じ思いに 飛ぶわたの何処に芽吹く当てもなく意思なきままに視界に沈む 執念の幽鬼の如く散らぬまま黒く朽ちゆく彼岸花哀れ 吹く風のながさるるにか いずくより烈しく来たりて戸を打ちやまず <管理人の…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 庭の実を喰みし返しか播かぬ種の数多芽吹けり鳥宿る木下 蝉の終知る思いする裏山に声を限りに啼きつくす聴けば うしろみる憂いも持たず妻の座に安らぎおりしか四十五年 その終を知るや知らずや黒揚羽優雅に舞えり秋の黄昏れ ふり向けば鍬ふるう頬明かるかり癒えたる友の命輝く シャリシャリと間引き葉喰めば歯に舌に生きる証しの青き味する 一匹の蚊に乱される神経のはりはりと細きなど人待てり カリカリと鼠しっこく歯音立てて脳神経の髄掻きまわす もの言わず独りある夜に越前岬の暗き岩打つ飛沫を思う 雀追う案山子は見えず稲刈り跡わだち残れり足跡なくて <管理人のつぶ…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 花蘂の中に没りゆき蜜を吸う蜂も見えざり何時しかに秋 東路に名医のありて来よという老いには遠き千葉に住む娘よ 刃先立て栗の双子を頒つ瞬ドクとベトとの分離思いぬ 仮面など持たずと思えど施錠して人には見せぬ己れもありて 稲刈る時季唯それだけに夫婦して見に行くという羨ましき 女ゆえ寡婦ゆえなどと人並みの劣等感など我がふり捨てて 円筒の断面に似る夜半の月感情のなきまま地上を照らす 石垣に抜け殻かぜ吹かれおり脱ぎたる後を何処に潜む いが踏めば意志持つ如く飛び出せり栗最高に美しき一瞬 純白に紅羞いゆき酔芙蓉摂理のままに花弁閉じゆく <管理人のつぶやき>…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 稜線を抜き去る一樹もやこめて被く貴人の去り行く後姿 安らかに眠れと弔辞結ばれて別離の扉音なく閉まる 誰の待つ夕餉にあらねば没り陽の中を遠出の虚しき安堵 潰れざる程に押さへる青虫もなかなか死なぬ命持ちおり 月の庭すすきそよがずたたずめり掌熱く襟掻きあわす 去年此処にまむしひそみしうかがえば木株は朽ちて土に還れり 夫婦茶碗汝も寡婦なり捨て難く余生の限り我がそばにあれ 玻り一重隔ての取れぬまま別れあこがれあれば早待つ再開を 水も我も器の型に収まれど折り折り飛沫あげたく想う 悲しみの色持つなどと人言えり花は一世を咲き充ちて散る <管理人のつぶやき…
「ブログリーダー」を活用して、okamura920さんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。