結論から言うと、彼は研究者の鑑ではあれるが、その振る舞いが一般に受け入れがたいものであったために死刑宣告をもらったと、私は考える。ソクラテスの姿勢は、何かを探求する人の理想的な姿なのだと思う。すべてを知っていると驕らず、自分は少なくともこれを知らないということを自覚している、という無知の知。あるいはこの事実に耐えられるだけの知的好奇心。問答から変数と論理関係を明らかにし、矛盾を淡々と指摘するさま。研究倫理に反した不正を認めることなく、また不正をただすこと、探求行為における正義の保持のために死んでもかまわないとする覚悟。「死ねば、ひとまずこの世からは脱せられる」ことから「(死ねば無意味になる)貯蓄への固執に対する無価値さ」に触れ「貯蓄をすべて使っても智見や真理の探究など善いことを行う」ことに生きる価値を見出...ソクラテスはなぜ死刑宣告を受けたのか?『ソクラテスの弁明』を読んだ心理学徒の感想。