晩春・宗教/処刑されたイエスの復活を記念する祝祭。春分のあとの最初の満月直後の日曜日。 黒土に鉄骨植ゑぬ復活祭 香西照雄 黒々としていかにも栄養のたっぷりとつまったような地面に、いま太い鉄骨が建つ。 もちろん鉄骨に栄養など必要のないものだが、「植ゑぬ」とみた作者は、ビル建築の印...
三春・人事/ぶらんこ。子供たちが楽しげにぶらんこを漕ぐ姿はいかにも春らしい。 鞦韆を漕ぐとき父も地を離る 鷹羽狩行 父親たるもの常にどっしりと両足を地につけ、何があっても動じない。すべてはわが子を守るため。 そうみずからに言い聞かせなくてはならないのは、本当は気の弱い未熟者だか...
三春・時候/春の日が暮れてまもない頃。明るくつやめいていて感傷をさそう。 春宵やナプキン立てて予約席 長岡きよ子 「人生で起こることは、すべて、皿の上でも起こる」(『王様のレストラン』)。 始まりより終わりを詠むと佳句になると学んだけれど、この句のワンカットはすてきだ。 どんな...
三春・時候/春の日が明るくうるわしく照っているさまをいう。 春うららちりめんじゃこが散り散りに 坪内稔典 ご飯にかけようとしたら手元がくるって、食卓に散らばってしまったちりめんじゃこ。 あーあ、やっちゃった。 ちいさな失敗にもいらだってしまいがちだけれど、きょうはなんだか愉快、...
三春・天文/春の空にうるむように見える星。あたたかさやなつかしさを感じさせる。 盛り場の裏くらがりに春の星 福田蓼汀 いきなりがつんと一発やられた。後頭部だ。 ふり返ることもできず、うずくまった。 奴にちがいない。油断した。裏道に入ったのがまずかった。 これ以上深入りするなとい...
三春・人事/ストローの先に石鹸水をつけ、息を吹き込んでふくらませる遊び。 鉄格子からでも吹けるしやぼん玉 平畑静塔 早くここから出たい。あたしはどうしてこんなところに閉じ込められているんだろう。 鉄格子の間から放たれたしゃぼん玉は風にのってぐんぐん病院の庭を遠ざかっていく。 あ...
仲春・人事/ゆでた蓬の葉を餅につき込んでつくる。きな粉をまぶしたり、餡を包んだりして食べる。 人当たり柔らかく生き蓬餅 岩城久治 地位も名誉も富もない。ただ人には常にやさしく接してきたつもりだ。この蓬餅みたいに地味な人生だけれど、なにも恥じ入ることはない。 すぐにだれかを批判し...
仲春・人事/寒さを防ぐため冬のあいだ閉めきっていた北側の窓を開けること。 北窓を開け父の顔母の顔 阿波野青畝 長く入院していた父が死んだ。冬の間は寒々しくてなにもする気がおきず、そのままにしていた父の寝室に入り窓を全開にした。もうつめたい北風が吹きこむことはなく、やわらかな外気...
三春・動物/別名「春告鳥」。初めおぼつかない鳴き声は、春がたけるにつれ美しくなる。 雨見えてくるうぐひすのこゑのあと 山上樹実雄 きょうは調子がいい。執筆がはかどる。しずかな雨のせいだろうか。 いまどき升目の入った原稿用紙に青インクの万年筆でちまちま文字を書きつける奴など、まず...
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