現在なろうで投稿中の作家です。 内容は自作のエッセイ・詩・小説。 新しい事をしていく中で得た知識を紹介して頑張る人を応援するエッセイ・詩。 異世界物と児童文学系の小説です。
雨兎鳥居潜って二歩三歩踏み入れるは神の領域我はあやかし、夢、幻登る階段、段飛ばし駈け上がるは夢の屍我は人外、雨、兎無くしたモノは返したモノ振り返らない月の先まで-------------------------------- -------------------------------- 景色オハヨウの朝焼けオヤスミの夕暮れ今日も頑張ろうなのか今日が始まるのかなのか明日も頑張ろうなのか明日も在るのかなのか心が景色を映している
14〈新しい1日〉 「秋人もっと早く起きないと遅刻するじゃない!」 朝から急かしたてる秋人の母親は小言を言える喜びを噛みしめているようだが、再び高校に行く準備を始める秋人の表情は浮かない。 入院していた頃は虎太郎の存在が悪友達を遠ざけていたが、学校に虎太郎が居る訳も無く。 見るからに重い足取りでの通学は、今までの学園生活を物語っているようだった。 教室に入るとクラスメイトの中でも目立つ悪友達三人は、秋人が入院する前と同じ席で騒がしくふざけ合っていた。 「おはよ~、やっと退院出来たよ~」 精一杯の造り笑顔で近寄る秋人を一瞥すると、顔を見合せる三人は返事も反さずヒソヒソと相談を始める。 そんな事を…
13〈ポリシー〉 千夏が手術室に入ると、落ち着かない母親は座るでもなくオロオロと右往左往している。 待つ四人には会話も無く、何か話しだせるような雰囲気ではない。 ただ静かに時間が過ぎていくなか、最初に口を開いたのは父親だった。 「千夏が無断外出してたって看護婦から聞いたけど、君達何か知ってるか?」 「今そんな話ししなくても・・・」 母親は引き止めようとするが「今聞かな何時聞くんや」と聞き入れない父親は、静かな怒りに満ちている。 「俺達と一緒に居ました」 正直に虎太郎は話すが、父親の眼は変わらず冷たい。 「どう騙して連れ出したんか知らんけど、もう家の娘には近付かんといてくれへんか?」 「違うんで…
12〈愛の力〉 あの花火をした日から数日が過ぎた休日、目前に迫る千夏の手術日よりも先に虎太郎にはどうしても済ませておきたい事が一つ有った。 「オウ、ほんまにそれでええんやな‥‥」 「ウッス‥‥、その時間でお願いします‥‥」 いつになく礼儀正しく話す虎太郎の電話相手は、鉄鬼のOB。 電話を切った虎太郎は無造作に置かれた特攻服を眺め、感慨深げに煙草の火を付ける。 だが落ち着いて其の煙草を吸う間も無く、携帯の着信音が自宅の狭い部屋に響く。 「虎ほんまに鉄鬼辞めるんか?」 連絡を聞いてすぐだったのだろう、社交辞令も無く竜也は慌てた様子で尋ねる。 「もう決めたんや‥‥」 一言そう言うと、虎太郎は逸れ以上…
11〈天井の無い夜〉 「俺、上手くなったよな?」 夕方秋人の病室に訪ねて来て質問する虎太郎の雰囲気は、何故だか反論を求めてはいない。 「自分で言ってる内はまだまだだよ~」 質問の意図を読み取れない秋人は笑い飛ばしたが、真剣な表情で一睨みする虎太郎にすぐに頷き返す。 「‥‥?」 理由を聞ききれず唖然としている秋人に「行くぞ!」と急かす虎太郎は、相変わらず説明しようとはしない。 柄にもなく少し緊張した様子の虎太郎が移動した先は、千夏の居る病室だった。 「二人で来るの珍しいね」 突然の来訪にも関わらず、千夏は人懐っこい笑顔で二人を迎える。 「今日は作詞の参考に俺の歌聴いてもらおうと思ってな」 「それ…
10〈守るべきもの〉 虎太郎が住むこの地域にはハミダシ者達が集まる二つのグループが有り、一つが虎太郎の所属する鉄鬼でもう一つがラファエル。 其の二つは特別に敵対している訳では無いが、大きな抗争を避ける為互いのグループには手を出さないのが暗黙のルールだった。 夕方8時、この日はバンドメンバー全員が初顔合わせする予定日。 スタジオ近くの喫茶店では、先に来ていた秋人と鈴が「最近練習どう?」「普通~、いつも練習一人だし」と上手く続かない会話で時間を持て余している。 「オウ、待たせたな!」 虎太郎と後輩が到着したのは数分後だった。 「紹介するわ!バイトの後輩でベースのマルや!」 「丸山っス、初心者っスけ…
副業のLINE連絡する前に観るべき動画 やる気を出して頑張ろうとしている内容が もしも副業系なら注意しなければいけない 勿論警戒はしているだろうが 其れでも騙されるケースは多い ツイッターやってると副業を誘うDMが沢山来るが どれも大抵は興味を持ったのならLINEでと誘いだしてくる。 騙す側はLINEやり取りを続ければ騙せる自信が在るからだろう。 何より非公開なのが騙すのに都合良い。 という事で今回オススメする動画はコレです。 youtu.be youtu.be youtu.be 三崎優太 青汁王子 三崎優太さん自分も勉強の為Twitterフォローさせて頂きましたが 他にもオススメしたい動画は…
1「寝相と答え」 愛してるなんて言うような人柄ではない、例え其れが最後の言葉でも。 せめて今までありがとう位は伝えたいが、いざ其の状況になると難しい事の方が多いかもしれない。 実際に自分の時はそうだった。 動かない自分の姿を見た時はさすがにショックだった。 何やら物々しい治療台の上で横たえる自分を処置していた医師は、誰かに死亡時刻を告げカルテを書 き込むと手術室から去って行く。 自分は死んだという事実は疑いようもなかった。 この幽体だか霊体だか何だかよく解らない透けた体と、全く気付いてくれない周りの反応が其れを証明している。 思い出せるのは休日の買い物中に胸が苦しくなり倒れたところ迄で、気が付…
9〈覚悟〉 「このギターなんぼやった?」 夕方いつものように二人は病院の屋上で作曲に励んでいたが、突然ギターを弾く手を止めた虎太郎が尋ねる。 「そんなに高くなかったよ~、中古で2万位だったかな~」 如何にもボンボンらしい秋人の口振りが癇に障ったのか、タバコに火を着けた虎太郎は「お前が2万やったら俺は20万やな」と妙な対抗心を燃やす。 「ギター買うの~?貸すから大丈夫だよ~」 「阿呆か俺の覚悟見せたるわ!」 「別に気にしなくても良いのに~」 金額が金額なだけに秋人は心配そうに呟くが「2万かどうりで俺に合わへんと思うたんや、音が弱い!」と虎太郎は借りてる立場もわきまえず、暴言を吐いている。 「20…
8〈仮タイトル〉 「千夏、コレ届いてたよ」 ベットの上で振り返る千夏は、母親の言葉を待ち構えていたかのように笑顔を返す。 待ちに待った手紙だった。 慌ただしく封を開く千夏を「そんなに急いでも中身は変わらないわよ」と母親は微笑み見つめるが、返事する余裕も無く千夏は手紙の中身を見つめている。 「どうだった?」 優しい口調で尋ねる母親に「駄目だった‥‥」千夏は一言呟き、ため息混じりに天井を見上げた。 皮肉にも窓の外は雲一つ無い青空。 差し込む朝日に照らされた手紙の中身は、千夏が送った詩の賞その結果だった。 努力が必ず実る訳じゃない、そんな聞き覚えの有る言葉が胸に刺さるような朝だった。 其の頃秋人の病…
7〈やる気と実力〉 「へ~、もうお客さん来てるよ~」 まだ客足もまばらなライブハウスのホールを見回し、秋人は立ち尽くす。 「早う行くぞ、一組目が始まる」 「無理だよ~、まだ脚こんなだし~」 急かす虎太郎の後を追い秋人が重い防音扉を開くと、中には椅子も無く50人も入らなさそうな客席と奥行きの無いステージが出番を待っていた。 「すごいね~、スタンドマイクだよ~」 秋人は羨ましそうにステージを眺めているが「こんなもんか‥‥、俺には小さいな」と虎太郎は不満げに呟く。 オシャレに厳しそうな客層の中、場違いに松葉杖をつく二人は妙に目立っている。 会場に流れていた洋楽が止まると「一組目が来たぞ」と誰かが言い…
6〈決意と悪意〉 「けど真人間になるって実際どうするの?」 「それを今から考えるんやろが」 昼飯を食べ終えると、秋人は言われるでもなく自然に二人分の食器を片付ける。 「そうだ!この前みたいに見た目から変えれば良いんだよ!例えば髪型とか~」 「アホか!これは俺のポリシーやぞ!死んでも変えんわ」 そう言って自慢げに髪型を調える虎太郎に「そんな頭の真人間いないよ~!」と秋人は口を滑らせ、ばつが悪そうに黙って下を向く。 「見た目以外でも他に色々有るやろ!」 「そんなの思い付かないよ~」 虎太郎の鋭い視線が気になるのか、秋人は如何にも考えてもいなさそうな返事を返す。 「そうだ~!子供に好かれるようになれ…
46<思惑> 前回ルミニー達が魔王城に来た時は霧で隠された様に感じたのが不気味だったが、まるで誘い込まれた様な今回は更に異質な不気味さを放っていた。 ルミニーが言っていた其れを感じ取ったガルのメンバーは、同様に口をつぐむ。 調査内容として魔王城の存在は聞いていたが、始めて魔王城を目の当たりにしたケルマンとラタは驚き立ち尽くす。 「信じられない……、こんな荒れ地に」 思わずラタは呟き、ケルマンも頷く。 だが其の反応も仕方ない事だと云えるだろう、其れほどに有り得ないのだ。 当初ケルマンは冒険者が金欲しさに嘘を吐いていると疑っていたが、もう認めざるをえなかった。 出来れば近付きたくはない位に、危険な…
45<招待> 一方、時は戻り。 魔王が紅い蟻に胸元を貫かれ殺された頃。 転移魔法で洞穴の入り口に戻ったウスロスは、魔王城に向かい歩き始める。 どうやらウスロスの目的は果たしたらしく、笑い声の鼻唄は高らかに響いている。 洞穴内での道順をコントロールしていたウスロスだが、皆殺しにする気は無かったらしく出口に繋がる道は残していた。 だがそんな事が起きているとは知らない魔王一行のガオンが道を塞ぎ、一行は洞穴内に閉じ込められたのだった。 ウスロスにとってはお遊びの様なものなのか、紅い蟻の誕生や魔王一行が閉じ込められた事等知ろうともせず。 御機嫌なまま帰り道を歩き続けていたのだが、何かを察知したのか突然立…
44<目覚め> ダンジョン攻略を諦めたからと云っても、出口にワープ出来る様なアイテムは持っていない。 魔王が起きていれば魔法で可能かもしれないが、ガオンに担がれたまま起きる気配は無く。 現時点では自分達で出口を探すしか、脱出する方法は無かった。 先ずは来た道を戻り、塞いでしまった道以外で出口に繋がっていないかを探し始める。 自分はエミリの肩に乗っているだけだから何とも無いが、一行の蓄積された疲労は明らかである。 疲れてきたからか一行は息苦しそうにしているが、今の所酸素が無くなる様な感じはしない。 背後から蟻が来た時、完全に道が塞がっていたらと思うと恐いものである。 其れでも探している間にキラー…
5〈真人間の決断〉 「あ~!解らん!解らんな~!」 千夏と出会った翌日の朝から虎太郎は口癖のように同じ言葉を繰り返しているが、秋人が理由を聞くと「シバくぞ!」と脅し説明しようとはしない。 聞きたくても聞けないもどかしさからか、秋人が視線をチラチラと虎太郎に送っていると「お前付き合ってる奴おるか?」と虎太郎は突然意外な質問を投げ掛ける。 「そんなのずっと居ないよ~」 女っ気の無い人生を振り返るように嘆く秋人が、病室の天井を見上げていると「俺は付き合った奴10人以上おるわ!今はフリーやけどな」と虎太郎は自慢げに彼女との画像を携帯で見せつけ、からかうように笑う。 「そんなに付き合った事があったら解ら…
4〈嘘と夢〉 この日は暇を持て余し尋ねて来た秋人の悪友三人が、我が家のようにくつろぎ病室を占領していた。 「おい~、あんまチラチラ見んなや~」 虎太郎を警戒してか、三人はクスクスと小声で笑い余計に目立っている。 「アイツそれにしてもトイレ遅いな~!ウンコマンか~!」 「水掛けに行ったるか?キレイに流したろ~や!」 下品な笑い声と会話が響く病室では一人ずつ患者が退室して行き、患者では虎太郎だけが残っていた。 「それよりも先に配って罠作ろうや」 「アイツ、バカやで絶対気付かんやろ~、ウンコ臭いし」 「じゃあ俺フルハウス~!金全部巻き上げた~ろや~!」 撒き散らしていたトランプを集めた三人は、各々好…
3〈オレンジと男らしさ〉 「お~い!邪魔するで~!!」 「邪魔するんやったら帰ってくれ!」 翌日の正午。 コテコテの関西ノリでお見舞いに来た虎太郎の族仲間竜也に、患者達は苦笑いを噛み殺す。 「ビックリしたわ!虎でも骨折れるんやな~!」 「アホか!俺も人間やわ!」 比較的声の大きい二人の会話は病室中に響き、それを求めてもいない患者達は次々と退室していく。 「お土産は?」 虎太郎が伸ばした手に「ちゃんと持ってきたで、ホレっ!」と竜也は改造車専門雑誌を袋ごと手渡す。 「お~!珍しいな!金どうした!?」 余程予想外だったのか虎太郎は驚きを隠せない。 「久しぶりにパチンコ勝ったんや」 嬉しそうに財布の中…
2〈先生と師範〉 夜になると人が居る喫煙所を避けた虎太郎は屋上に上がり、タバコの火を着けようとすると何処からかギターの音が聴こえてくる。 思わず手を止めて聞き耳をたてていると、聴こえてくる曲は虎太郎がいつも聴いている曲。 「上手いやん‥‥」 こぼすように呟き。 音の鳴る入り口の裏側に近づいていくと、そこでギターを弾いていたのは秋人だった。 「マジか‥‥、お前凄いな‥‥」 「えっ?‥‥、違うよ~!そんな事ないよ~! 一曲全部弾けるのこの曲だけだし‥‥」 下手くそな謙遜に虎太郎は少し苛ついたように眉をひそめるが「いや、マジで凄い!」と素直に認め、一人で納得したかのように頷く。 「ソレ貸せ」 冗談混…
1〈ボンボンとヤンキー〉 「飛~べ!飛~べ!」 「オラッ!度胸試すんちゃうんか~?」 公園前の団地では、悪ふざけする高校生達の威圧的な声と、おちゃらけた手拍子が響く。 「そんな~、無理だよ~」 情けない声を出して愛想笑いを返す秋人は、恐る恐る下を眺める。 秋人が立っている場所は二階の階段前に有る雨よけの部分だった。 「俺達が見本見せたったやろが」 「無理だよ~、怪我するよ~」 しゃがみ込み秋人が怯えれば怯える程、他の三人は嬉しそうに笑い声をあげている。 「ええから早う飛べや~!」 面白がった一人が秋人の背中を押すと、他の二人も真似をして押しだす。 こんなつまらないやり取りが30分以上続いていた…
43<手本> しかし良く見ると、倒れている男の顔には見覚えが在る。 本来骸骨である魔王の顔なんて解らないはずだが、思い返していると思い出した。 魔王城の牢屋に居て、一緒に逃げようとしていた男だ。 娘のエミリも気付いた様で驚いた表情をしていたが、今は心配そうに見つめている。 意識は無いが呼吸はしている様子なので、不死鳥の涙で蘇らせる事は成功したのだろう。 だが疑問が残るのは、牢屋に居た人間が実は魔王だったなんて在るのだろうか。 ミノタウロスにも負けていたし、其れは考えられない。 そうなると魔王に成りすましていた事になるが、なら実際の魔王は何処に居るんだ。 あの時、消えた後に倒したは実力的に有り得…
42<理解> 何が起きたのか理解が追い付かない。 紅い蟻が娘のエミリを攻撃しようとしたのを、魔王が前に立ち助けようとしたのか。 紅い蟻も魔物だからAランク以下ならエミリに触れる事は出来ないはずだが、知らない魔王にとっては守るべき配下なのか。 そんな魔王も胸を貫かれ倒れたままで、連れていた骸骨兵も崩れ身動き一つしない。 まさか死んでしまったのか。 魔王なのに、たった一撃で。 そんな事を考えている間にも、魔王が倒れたからか怒り狂ったガオンが紅い蟻に猛攻を始め。 迫る紅い蟻をガオンが突き飛ばしたので現時点では距離は在るが、再び襲ってくるのは眼に見えている。 響くガオンの咆哮と斬激が大地を揺らす。 其…
41<一対一> 大量の栄養を得て進化した紅いキラーアントは、通常のキラーアントよりも大きく。 もうキラーアントとは別の種族だと云える、だが番いが存在しないのだから種族の繁栄は無く。 他の生物にとっては殺戮しか生まない、災害の発生だと云えるだろう。 そんな誰も遭遇した事の無い災害を前にして、魔王一行は同様に驚き固まっていた。 此れが貫禄というものだろうか。 紅いキラーアントが座る佇まいはまるで王座の様で、其の椅子が残骸の山だと感じさせない。 そんな事を考えていると高らかな笑い声が響き、紅いキラーアントが喋り始める。 「チョウド良い時に飯が来たな、コレは食べ飽きたトコロダ……」 そう言って紅いキラ…
きらい 嫌われてると思っていたら そいつの事が嫌いになった 結局それで嫌われた 神頼み 苦しい時の神頼み 悪いと言えない僕もするから どんな時も神頼み 悪いと言えない僕もいるから 頼み事が無くなるようにと また神様に頼むのさ こども 時に子供は残虐だから僕は子供が嫌いだった 子供のままでいたいけど 子供の頃には戻りたくない 時に子供は残虐だから 現状 深く広く考えても一緒さ 何もしないなら 色々行動しても一緒さ 何も考えないなら したくても出来ない事なら たくさんある世界だから
自作自演の檻 意思やプライドやメンツ 全ての体裁を気にして 手枷足枷をはめられた囚人のように 身動きをとれなくしている僕は 誰よりも自分を愛していた 森の中 子熊「母さんどうして僕を背中に乗せるの」 親熊「森の中は敵が多いからよ 1年後 子熊「母さんどうして僕を背中に乗せないの」 親熊「森の中は敵が多いからよ」 無意味の意味 意味の無い時間の意味 意味の無い物の意味 意味の無い事の意味 無意味という言葉の無意味 意味という言葉の意味
十代の鼓動 僕がこの目で見たものは 限りある時の動きでした 僕がこの手ですくったものは すくえばこぼれる水のようでした 僕のこの手から落ちる血は 悲しくも赤い涙のようでした 僕のこの目から落ちる涙は 僕を生んだ親の涙でした 僕の胸の鼓動の音は それでも生きたい僕の声です 痛み ピストルを手に入れた 僕を撃ってみようか あいつを撃ってみようか きっと撃たないだろうが 僕を撃ってみても あいつを撃ってみても 同じくらい痛いのだろう 混迷 壊れた心を救ったのは雲のような言葉だった 帰れない時に気付いたのは 言えなかった言葉だった 罪悪感を作ったのは 言ってしまった言葉だった 死に脅え憧れたのは死の先…
40<魔笛> 只の洞穴とは知らず、ダンジョンだと騙されたまま魔王一行は進み続けていた。 少ない敵とは戦わないという、宣言以降の気楽さは口笛ものだ。 勿論魔王という立場が在るし、暗闇で口笛を吹くのは不吉だから実際に吹く事は出来ないが。 多少のキラーアントならガオンが瞬殺だし、後はお宝を手に入れエミリと仲良くなれれば完璧だ。 「魔王樣何か良い事でも有りました? 」 そんな事を考えていると、ゴブリンが話し掛けてきた。 「何もないぞ……」 もしかして、俺は二やついていたのか。 弱いから社畜の部分しか気にしていなかったが、コイツも以外と油断出来ない。 やたらと俺の事を観てやがる。 歩き続けていると、背後…
39<狂想曲> 魔王一行がダンジョン探索を続けていた頃、洞穴の入口では魔王城を守っているはずのウスロスが妖しく笑い内部に入って行く。 すでに下見を終えているのかウスロスの歩調に迷いは無く、微かに響く笑い声は鼻唄混じりである。 そのまま幾つかの別れ道を進みながら、魔法を打ち瓦礫で片方の道を塞いでいく。 其の姿はまるで、新しい玩具を組み立てる子供の様に愉しげに。 そんな事を繰り返し、たどり着いた広場で足を止める。 どうやらウスロスの目的地らしく、笑い声の鼻唄は高らかに響いている。 其の広場はキラーアントの休息地のようで、二百匹は居ようキラーアントが静かに眠っていた。 キラーアントの群れを前にしても…
38<宣言> ガオンが寝たのは諦めよう、流石に魔物が来たら起きるだろう。 其れよりも今、気掛かりなのはゴブリンの挙動不審だ。 骸骨兵の帰りを待つ間に気付いたが、魔物を警戒しているのか辺りを何度も見回している。 其れだけならゴブリン自体が弱いから警戒しているのかとも思えるが、時々俺の方もチラ見しているのが気になる。 何か企んでいるのかとも思ったが、あれだけ社畜のゴブリンに限って其れは無いだろう。 となると考えられるのは、ボスである魔王に対しての期待の眼差しだ。 此れはもう有る意味刺客だ。 全く油断出来ない。 戦う姿を見せて弱そうだと思われたら、何が起きるか解らない。 唯一の心の安らぎは傍に居るエ…
37<完璧な布陣> 朝から寝室のドアをノックする音が響く。 偽者とはいえ、わざわざ魔王を起こしに来るとは勇気の在る奴だ。 ドアを開けると、ウスロスが白々しく頭を下げる。 「参謀として重要な報告が在るのですが宜しいでしょうか」 もう相手がコイツという時点で嫌な予感しかしない。 「どうしたんだ?」 「実は城の近くでダンジョンを発見しましたので、至急報告せねばと思いまして……」 まだ怪しい感じはするが一応詳しく聞いてみると、どうやら城近くの岩場に洞穴が有り。 其の洞穴から奥に行くと穴が続いていて、ダンジョンになっているという事らしい。 中には蟻の魔物が居るらしいが大した強さではないので、宝が在る可能…
36<悪巧み> 時は現在に戻り。 ケルマンとルミニーが一時休戦となり、近付く魔物に備えガルのメンバーは書記官のラタを守る為に輪に並ぶ。 索敵報告をしたリジョンの慌てた様子から察すると、魔物が少数の可能性は低い。 そんな一行の予想通り現れた蟻の魔物は一匹二匹どころではなく、二・三十匹は居て全員に緊張が走る。 「アンタ王国騎士だったら、自分の身位は守れるんだね? 」 「ホホッ 随分面白い事を言いますね」 共闘せざるをえないこんな状況になっても、ルミニーとケルマンは牽制し合っている。 戦闘が始まると蟻達は一斉に一行に襲い掛かり、倒された蟻を飛び越え次々と迫る。 ガルのメンバーはラタを守りながらも、攻…
35<二人の知らない事> 町の人に連れられ、孤児院である教会に預けられたルミニー。 まだ預けられたばかりの頃は笑顔も無く、部屋の隅に一人で居る事が多かった。 そんな両親を亡くし落ち込んでいた気持ちを和らげてくれたのは、同じように両親を亡くした同世代の孤児達だった。 まだ子供だからこその遠慮の無さが、ルミニーの心を開き。 いつの間にか笑い合えるようになり、其の仲間達を兄弟と思えるようになるのも自然な事だった。 「薬草採集行ってくるよ」 シスターに挨拶して、駆け出したルミニーが向かった先は近く森。 成長したルミニーは親から授かった知識を活かし、孤児院の運営費を補っていたので重宝され自由に行動する事…
34<代償> 幼少期のルミニーは活発では在ったが決して攻撃的な人間ではなかった。 町外れの森近くに住んでいたその頃。 父親の職業は木こりで、母親と家で父親の帰りを待つ一般的な家庭であり。 森に詳しい父から生活費に為る薬草や、危険な魔物の種類を教えてもらいルミニーは育っていった。 「ルミニーもしも魔物に襲われたら父さんが命懸けで守ってやるからな」 いつも父親はそう言っていたが、魔物の出没が少ない此の町でそんな事が起きるなんて家族の誰も思ってはいなかった。 そんな平和な生活が一変したのは在る日の夜。 眠ろうと家族がベッドに入った頃、いつもなら静かな森から地響きが近付いて来て家の前で止まった。 魔物…
33<冒険者と貴族> 翌日の朝。 ご機嫌なルミニーとは違い、リジョンとルドエルの二人は不満そうな溜め息を吐いていた。 「・・・・・・戻って直ぐは流石に憂鬱だな」 「良いんじゃない、行くだけで報酬貰えるんだから」 ルドエルが溢す愚痴を、ルミニーは笑い軽くあしらう。 さっきからずっと無意味にデーモンバスターの出し入れしてるルミニーは、二人の不満にすら気付いていない。 上級の冒険者がルミニーの持つ剣を羨ましそうに見ていたのが、余程気分良かったらしい。 そんな事は関係無い二人の吐く溜め息は、更に重くなっていくのだった。 「おいでなすったよ」 調査員として待ち合わせ場所で合流したのは、王国騎士ケルマンと…
32<ギャンブルの結果> 所変わり。 ルミニーとルドエルとリジョンの三人は、魔王を倒した事を先に伝書で送り。 一行は街に戻って来たのだが、街道に迎える人も無く凱旋という雰囲気ではなかった。 「先に武器屋行って、このデーモンバスターが幾らになるかだけ・・・・・・」 「駄目に決まってるでしょ」 「駄目に決まってるだろ」 本気でギャンブル資金の算段を始めるルミニーだったが、リジョンとルドエルの二人は声を揃え睨みを効かす。 「・・・・・・仕方ないね、取り敢えずギルドに行くよ」 そう言って馬車を走らすルミニーは、通り過ぎる武器屋を名残惜しそうに眺めている。 このルミニーのギャンブル癖が無ければ、魔王を倒…
31<魔王の狩り> 「実際料理なんて出来るのか?」 自分の記憶ではエミリが料理しているのは、そんなに見た事が無い。 其れに食料を魔王が調達すると云っているのだから、とんでもなくデカイ魔物を渡される可能性も在る。 「簡単なので良いなら大丈夫かも・・・・・・」 自信満々という訳ではなさそうなので、取り敢えず厨房を見ててみる事になった。 「本当に大丈夫なのか? 試しに断ってみても良いんだぞ」 「カレーとかシチューだって作った事あるもん」 そういう意味で聞いた訳ではないが、やる気は在るようなので応援しよう。 この鳥の姿では、大して手伝う事も出来ないしな。 不満そうに膨れっ面していたエミリだが、厨房に着…
<親バカ> エミリが髪を整え終えようとする頃、寝室のドアをノックする音が響く。 ドアを開けると疲れきった顔のゴブリンが立っていて。 云われるがまま俺達は魔王の居る部屋に向う。 ずっと働いていたのか今にも死にそうな表情のゴブリンを見ると、自分の心配は確信に変わる。 やはり怪しい。 牢屋に居た方がマシだと思える位に、自分達も今日から濃き使われるかもしれない。 娘を守りたいがあまりに自分は判断を間違えたのか、そんな考えが頭を過る。 移動を終えると魔王はすでに座って待っていたが、何やら立ち並ぶ昨日と同じ顔ぶれに一体魔物が増えている。 魔王という位なのだから、自分が知らないだけで他にも配下の魔物が沢山居…
<春と修羅> 時は少し戻り。 魔王曰く空いている部屋を使って良いと言っていたので、トウとエミリの二人は魔王城内を歩き寝室を探す。 ついでに消えた少年を探してみたが、当然見付ける事は出来なかった。 まさか其の少年が、さっき迄会っていた魔王だとは思いもせずに。 魔王の仲間になるとトウが勝手に決めたので、困惑していたエミリをトウが説得していた。 「配下ではなく仲間なのだから良いだろう、其れに断れば又牢屋に入れられるかもしれないから仕方ないだろう」 二人には解らない事だが実際は牢屋は開放されたままで、骸骨兵が足りない今もう使われる事はない。 其れらを知らず不満そうに口を尖らすエミリだが、困惑するのも無…
<甲斐性無し> 「其れでは各自早速取り掛かってくれ。我は出掛けてくる」 「お供致しますわ、私はグレン樣の秘書ですので」 まるで散歩に行きたがる犬のように、ネズは尻尾を振っている。 「構わん、我は一人で行く」 此処は強く云っておかないと、付いて来られたら誤魔化すのに手一杯で何も出来なくなるのは目に見えている。 何とか配下達を遠ざけ、俺は一人で魔王城近くの森に移動した。 「上手くやったではないか、中々面白かったぞ」 そう言って意識内で元魔王の、笑う声が頭に響く。 まだコイツが居るのを忘れてたよ。 流石にどうしようもないので、諦めるしかない。 だが配下を遠ざける作戦自体は成功だ。 先ずは[職種・なん…
<メインクエスト> 配下が邪魔者ばかりだという事は解った。 だがコイツらに此れ以上、自由に動き回られると俺の自由が奪われてしまう。 俺のメインクエストを叶える為にも、どうにかしなければ。 少し考え、俺はゴブリンに指示を出す。 「配下を全員集めてくれ、今から重要な話しをする」 移動して5分後。玉座にて待っていると、昨日と同じ顔ぶれにネズが加わり立ち並ぶ。 一同は、静かに俺の発言を待っている。 「改革だ。我は考えたのだが、今日から配下の役職を決めようと思う」 改革という如何にも魔王っぽい言葉が効いたのか、配下達に歓声が上がる。 「先ずは城の防衛隊長ガオン。防衛隊はゴブリンだ。壊れた城の補修と防衛を…
<魔王の一歩> 寝室に移動した俺は、一息ついて寝室内を眺める。 室内には天幕の付いた豪勢なベッドと、机と椅子が綺麗に並んでいた。 異世界に来てからのゴタゴタ続きで疲れていたから、ベッドで寝れるのは素直に嬉しい。 だが、寝る前に確認しておかなければいけない事が幾つか有った。 「魔王なのに配下ってあの獣人しか居ないのか?」 もう呪いの様な状態なせいか、元魔王相手でも敬語を使う気にはなれない。 「魔王など只の呼称にしか過ぎんよ。もう一人ネズという配下が居るが、配下と云っているガオンも戦友みたいなものだからな」 意識内の元魔王が自慢気に語り。 「戦友って・・・・・・」 「まだ我が若かった頃に闘って倒し…
<なんちゃって魔王> ものすごい勢いの足音が近付いて来ている、もう逃げる事も出来なくなってしまった。 「まあ、お前は玉座にでも座っていろ。オロオロしていると疑われるぞ」 落ち込む俺を意識内の元魔王がたしなめる。 どんな状態なんだコレは、授業参観のお父さんか。 諦めた俺は云われたとおりに座り、配下とやらを待つ。 「グレン樣、御無事でしたか」 目の前で跪く、駆け付けた配下を見て椅子から飛び上がりかけた。 見間違い様もない、同室獣人の獅子である。 「ああ、問題無い」 其れっぽい答えで誤魔化すと、獣人は一歩下がり。 「当然です、グレン樣を倒すのは俺ですから」と不吉な言葉を吐く。 様子を見る限りでは気付…
<運命の別れ道> この距離で今更逃げる事が出来る訳なんてなく、三人は覚悟を決めるしかなかった。 残り魔力の少ないリジョンは、支援魔法でルミニーとルドエルを強化。 再び身構え魔王グレンと向き合うが、魔力を開放していない状態でも魔王の威圧感は凄まじく。 斬り込む為に前に出るのも容易ではなかった。 「このまま睨み合ってても埒が明かないね」 そう言ってルミニーが飛び出そうとした時に、魔王が口を開く。 「そう怯えるな人間よ、我に攻撃の意思は無い。我を倒しに来たのだろうが、丁度良い。我は死にたいのだ。寧ろ殺してくれないか」 立ち上がった魔王は、さあ斬れとでも云わんばかりに両腕を広げ一歩前に出る。 「いった…
<期待値> 門番の骸骨兵四体に気付かれないように、城近くの死角に移動したガルのメンバー三人。 ルミニーの合図でリジョンは岩石魔法を上空から城に複数投下、其れに拠り空いた壁の穴から三人は侵入。 リジョンの岩石魔法に依り城は何処崩壊していて、骸骨兵達は何処から攻めて来たのか絞れなくなり。 門番の骸骨兵四体は何が起きたのか理解出来ず、右往左往している。 ルミニーの宣言通り、救出作戦は派手に開始されたのだった。 門番が動揺している隙にリジョンは索敵魔法を展開。 索敵範囲で敵の少ないルートを選び、三人は城の内部に向かって駆けて行く。 何体かの骸骨兵とは遭遇するが、三人は立ち止まらず駆け続け親玉を探す。 …
<オールイン> ガルのメンバー三人に気付く事なく、骸骨兵達は魔王城に入って行った。 門番には骸骨兵四体だけだが、城内には何体居るか見当も付かない。 静かに圧倒的な存在感を放つ魔王城を眺め、ガルのメンバー三人は困惑していた。 骸骨兵を統率する存在位は予想していたが、洞穴に隠れているような低ランクだろうと高を括っていた。 だが現実は、建物なんて建てれないような荒れ地に城。 魔法なのか組織力なのかは解らないが、其の城の主が魔王クラスなのは疑いようもなく。 もしも見付からない二人が連れ去られた場所が此所なら、救出は困難を極めていた。 「さて、どうしたもんかね」 お気楽なルミニーでも流石にメンバーに相談…
<ハズレくじ> 時は戻り、ガルのメンバー三人は沼地で合流していた。 「まだまだだね六体取りこぼしちゃったよ」 24体も骸骨兵を倒したのにルミニーは不満そうに呟く。 「二人はどこに行ったんだい」 ルミニーは不思議そうに訊ね、辺りを見回す。 「六体の骸骨兵を迎え撃とうとしていたら、崖に落ちたんだよ。昨日の夜に回復魔法の使い方試してたから死んではいないと思うけど」 ルドエルは気まずそうに答え、下を向いている。 「仕方ないね、探しにいくよ」 そう言ってルミニーが歩きだそうとすると、ルドエルが静止する。 「ギルドに報告しに戻った方が良いんじゃないか?」 「そんな暇無いよ、あれだけ骸骨達が居るんだから捕ま…
<悪巧みと契約成立> あのククク野郎が付いて来た時に悪い予感はしたが、やはり悪巧みしていやがった。 モノマネした時の仕返しなのか、只の嫌がらせを楽しんでいるのか本当に信用ならない。 だが今は取り敢えず彼女を助けに行かないと、又ククク野郎が何するか解らない。 鍵は開いていたので難なく室内には入れたが、中では黒いローブを纏った誰かが倒れている。 慌てて駆け寄り起こそうと抱き抱えると、其れは骸骨だった。 驚いたと同時に、不気味な違和感を感じる。 朽ちているなら、普通は崩れ落ちていくはずだが。 まるで生きているかの様に骸骨は全体の形を保っていて、今にも動きだしそうだ。 そう思っていると頭に機械的な声が…
<希望と予想> 人との戦争でも起きたのか、もう何が起きているのか解らない。 それぞれ暴れ始める魔物達は逃げる事を優先しているのか、俺達を狙わず分散している。 其れでもミノタウロスだけは変わらず彼女に殴り掛かるが、やはり薄い光りに阻まれミノタウロスは触れる事も出来ない。 「邪魔だ」 そう言って、背後から現れた獅子顔の獣人はミノタウロスを床に叩き付け。 倒れたミノタウロスに拳で数撃くらわせ、ミノタウロスは気を失っている。 チームとでも認識されたのか、頭に機械的な声が響く。 ミノタウロス[能力擬態]の条件が整いました。 <クリティカルヒット>を取得しました。 此れはラッキーだ。 実力なら絶対に倒せな…
<モンスターハウス> 引き摺っていた骸骨兵投げ飛ばしたミノタウロスは、ゆっくりと俺に近付いて来る。 どうやら人間が敵なのは、魔物の共通意識なようだ。 取り敢えず接近戦では勝ち目が無いので、さっき得た<粘糸>を足下に放ち足止めを試みる。 一時的に動けなくなったミノタウロスは驚いた表情をしたが、力任せに歩き始め足止め効果は期待出来ない。 すかさず蜘蛛にやられた<粘糸><微毒>コンボを、ミノタウロスの顔めがけて射出。 足下を見ていたミノタウロスは<粘糸><微毒>の両方を顔面にくらい。 前が見づらくなったのか、ミノタウロスは雄叫びを上げて威嚇しながら両腕を振り回している。 運良く毒をくらわせれたのと視…
<オッズ> 再び鳴り響くゴングと同時に、お祭り気分の魔物達が騒ぎだす。 「オデは人間ガ勝っ方飯1ダ」 「オイは蜘蛛に飯3ダ」 「飯5、ニンゲンダロ」 「飯5クモ勝ツ」 必死に闘う人の気も知らず、魔物達は各々好き勝手に賭けだし。 「ニンゲン死ネ」 「クモ殺セ」と自分都合で、品性の欠片も無い応援を始めている。 前戦が以外と接戦だったからか、怒声のような声援はほぼ半々に分かれていた。 オッズどうとか騒ぎ正に狂喜の祭りと化しているが、実際に闘うコッチは其れどころじゃない。 どう見ても蜘蛛なのは間違いないが、デカさが猫位は在るから気持ち悪さも尋常じゃない。 左右にカサカサと思っていたよりも速く動く何本も…
<デジャブ> 飛び掛かって来た兎をなんとか避け、反撃を試みるがとにかく角が邪魔だ。 兎は角を活かした絶妙な角度と位置取りで、俺をジリジリと人壁へ追い詰める。 現実世界では黒い悪魔Gにすら苦戦するのに、いきなり角付きの魔物とは。 せめて武器くらい渡せよ、あのカタカタ野郎。 其れに昨日助けてくれた獣人。 のんびり腕組んで観てんじゃね-、今こそ助けてくれよ。 思い虚しく、戦闘は止まる気配も無い。 再び飛び掛かって来た兎を辛うじて避けて、掴み床に投げつける。 すかさず何度か踏みつけ、兎は動かなくなった。 なんとか倒す事は出来たが、踏みつけた感触が残っていて後悔感が止まらない。 だが俺も命懸けなのだ。 …
<ゴング> 寝心地は最悪だったが、気分は悪くない。 きっと目覚めても彼女の顔が頭から離れないからだ。 恋の力というのは恐ろしいものだ。 もしかしたら何かの能力かもしれないと、勘違いしたくなる位に。 彼女の為なら魔王とでも闘えるかも知れない。 彼女もこんな所で寝かされたのだろうか。 取り敢えず無事かどうか確認したいが、牢屋から出れないんじゃどうしようもない。 其れにしても改めて観ると殺風景な場所だな。 夜には気付かなかったが、壁際に簡易なトイレらしき穴が在るだけで他は窓以外に何も無い。 何日もこんな場所に居たら気が狂ってしまいそうだ。 そんな事を考えていると、骸骨兵達の足音が近付いて来ている。 …
<精一杯の判断> 「やっぱり騙されたんじゃない、こんな所に人なんて来ないよ」そう言ってルミニーは辺りを見回すが、確かに人の気配は全く無い。 森を抜けた先が目的地の沼だったのだが、魔王城近くというだけあって今にも魔物が出そうな空気を醸し出している。 沼は先が見えない位の広さなので、深さも其れなりに在りそうだった。 馬車で進むには道が悪すぎるので、此れ以上進むには歩くしかない。 「せっかく此所まで来たんだ、のんびり探してみるか」 エミリは小さく頷き、一行は気ままに歩いて行く。 「まぁ後は連れ帰るだけだからウチらは何でも良いけどね」 「何が起きるか解らないので長居は出来ないですけどね」 魔物も居ない…
<駄目な父親の覚悟> 道中魔物には殆んど会わなかったので、宿泊予定地に着いたのは予想よりも早く。 夜になる前に一行はキャンプの準備を済ませ、飯を食べ終えた所だった。 「トウちゃん食べ過ぎだよ、お腹が風船みたいになってる」 「食べないと大きくならないからな」 心配するエミリに其れらしい事を言って誤魔化したが、なんて事はない。 召喚獣だからかも知れないが、単純に魔物が美味いのである。 身体がひよこ並みに小さいから、食べる量も遠慮が要らず油断してしまった。 「女性なのに、とても強いんですね。病弱なので憧れます」 そう言ってルミニーに笑い掛けるエミリは、安心しているように見える。 現実ではないとはいえ…
<B級上位> 保存食や野営の準備を済ました翌日。 「ウチはリーダーのルミニーでコッチの魔法使いはリジョン、で剣士のコイツはルドエル。チーム名はガルって言うんだけど、これでもB級上位のパーティーだからね」 「宜しくお願いします」 恭しくエミリが頭を下げると、ルミニーはエミリの肩に手を置き。 「任しときな、必ず届けてあげるよ」と頼もしい言葉を掛ける。 待ち合わせ場所での自己紹介も終り、一行は馬車に乗り込み魔王城近くの沼に向かう。 鋪装されていない道とサスペンションも無く、タイヤが木造な馬車内部はとにかく跳ねて。 継続的に突き上げる衝撃が体力を奪う。 現代での車移動に比べてしまうと馬車の乗り心地は最…
<好都合な相手> 翌日の朝。 早めに済ませた朝食は、目玉焼きだった。 ギルドで仕事の依頼を探しに来たが、他の冒険者達は変わらず冷たい視線を送る。 「気にするな、人の噂もなんとやらだ」 困った様子のエミリを慰め、依頼が貼り出された掲示板を眺める。 「良いのが無いな・・・・・・」 本当はエミリが回復魔法を使えるので、仕事がギルドじゃなく回復士でも良いのだが。 一般的だったからギルドに来ているのに、依頼が少ないのは予想外だった。 初期設定時に、城から離れた町の方がスローライフで良いかと思ったのは失敗だったかもしれない。 「他の町も検討した方が良いのかも知れないな、回復士で募集している所がないか探して…
<父の審査> 「すみません、私のせいで騒ぎになってしまって」 そう言って申し訳なさそうに近寄って来た女性職員は、冒険者達を取り纏め場所を用意してくれた。 準備された別室は応接室のようで、十人位が入れそうな広さに机とソファーが向かい合って並んでいる。 エミリと並んでソファーに腰掛け、廊下に並んでいる冒険者を呼び掛ける。 「では次の方どうぞ」 まるで面接のような呼び掛けだが気にしない、こっちは娘の将来が掛かっているから真剣なのである。 「チワッス、ヨロシクッス」 「はい、次の方どうぞ」 ノリが軽い、こんな奴は要らん。 「まだ何も話してねーッス」 「はい、残念さーん」 ドアを開け入って来た次の冒険者…
<嫁との約束> ひとしきり泣くと何とか落ち着いた。 久しぶりに娘の笑顔を視ると、本気で思う。 ずっと時間が止まって、このまま此の世界に居たい。 だが先ずは娘に状況を説明しないと、このままでは混乱してしまうだろう。 「自分は召喚獣のトウだ、君を守る為に存在している」 娘は鳥が喋れる事に驚いた表情をしたが「私はエミリ、トウちゃんヨロシクね」と笑顔を返す。 明らかに違う世界だが、自分が大泣きしていたのを慰めた事で緊張感が和らいでいるのかもしれない。 名前がトウだと云えば。トウさんかトウちゃんになると予想していたが、此れで取り敢えず呼び名の作戦は成功した。 我が娘に名前で呼ばれるのは、何だか違和感が在…
<最高の笑顔> 待ち望んでいたゲーム機が自宅に届くのは、嫁の墓参りから二週間後の予定だった。 いよいよ其の日が来たと、仕事が休日の日を選んだのに朝からソワソワして早起きしてしまった。 そうなってしまうのも無理はない。 何故なら前日の夜も中々寝付けなかった位に待ち望んでいたし、職場でも同僚に何か良い事でも在ったんですか?と聞かれてしまう位である。 キャラクター設定等の手続きは今日迄に登録申請済みだから、後はゲーム機だけ。 気が逸るのも仕方ないだろう。 唯一の問題は自分が父親だと告げるかどうかだったが、其れは云わない事に決めた。 言ってしまうと召喚獣として常に隣に居るのが父親だから、気を使い楽しめ…
<天国と地獄の確率> 所変わり現代。 娘が何万人に一人という確率の難病だと解ったのは、妻に先立たれ一人娘との生活も落ち着いてきた頃の出来事だった。 眠りについたまま目覚めない娘を不安に思い、医師を呼んだ結果である。 現代の医療技術では出来る事すら無いという医師の宣告を聞いてから、長々と続く説明は何も頭に入らなかった。 寝返りも無く。そのまま寝ている状態では床擦れになると言われ入院したが、退院の可能性は無く。 何を食べても何を見ても心が感じない位、その日から世界はモノクロに変わった。 どうして娘が、幾ら考えても答えなんて出る訳もなく。 もう死んでしまおうかなんて思う時は何度も在ったが、目覚めない…
<絶望と下心> お手上げだ。 両手上げて、参りましたって言いたい位の。 ゲームならコントローラー放り投げて終りだけど、自分の命を投げ出す事は出来ない。 もう周りの魔物すら気にならない位に、希望も何も無い。 牢屋内の景色と同化して、只天井を見上げる。 其れだけが今の自分に出来る事だった。 せめて死ぬ迄に恋人位は欲しかったが、其れも叶わぬ夢。 こんな時に思い返す自分の人生は、平凡で特に面白い事も無く。 何時死んでもおかしくない。 こんな状況になって思うのは、もっと色んな事に挑戦すればよかっただ。 興味は在ったが、面倒くさくてしなかったスポーツ。 やってみたい仕事の為の勉強。 見てみたい景色や食べて…
<Lv2> 魔物を食べると能力値が上がるという事なら、生き残ればチャンスは在るかもしれない。 其れにしても何でも煮込めば良いってもんじゃないだろ。 腹の底から沸き上がるオーク臭のせいで、込み上げる吐き気が止まらない。 其れを無理矢理押さえ込み、何とかステータスを確認する。 HP20・MP5。からHP21・MP6に変わっている。 確かに上がってはいたが、1って少なすぎだろ。 元が少ないMPは上がった感が有るが。 其れも、この異世界の平均値が解らないのだから安心は出来ない。 先ずは、現時点で解った事を整理しておく必要が有ると思えた。 体力面でのステータスは当分の間、期待出来ない。 より強い魔物を食…
<飯と供物> 気持ちが落ち着いたからか、何だか腹が減ってきた。 この牢屋で飯は支給されるのだろうか?。ふと、そんな事が気になった。 支給されたとしても魔物用の食事だろうから、勿論期待は出来ない。 其れを選べる状況でもないのだが、出来れば餓死だけは避けたいものだ。 そんな事を考えていると無性に、母の手料理が恋しくなった。 此れがホームシックというやつなのだろうか?何だか色んな事を思い返してしまう。 母は運動会のように特別なイベントが在ると、必ず好物のシチューを作ってくれた。 頑張ったご褒美だと云わんばかりに、大振りな肉が入っていて。 其れを一口で頬張り噛み締めると、疲れなんて忘れて幸せな気分にな…
<一矢> ずっと落ち込んでいても殺されるのを待つだけだ。 取り敢えず生き延びる為には此処から脱出しなければいけない。 自分の能力に期待出来ないなら、方法は一つ仲間を募るしかない。 この把握出来た笑えない状況から脱出する為の仲間を。 最低でも二人位は必要だと思うが、相手を選べるような場所ですらない。 振り返り同室の囚人を再確認するが、余り視ていると襲われそうなので視線を剃らした。 魔物とはいえ囚われてるのは同じなのだから、逃げようと企んでいる者も居るとは思うが。 魔物とコミュニケーションか。 会話が出来るかどうかは囚人同士の下品な会話で解っているが、問題は種族の違いだ。 彼等にとって自分は食べ物…
<ユニークスキル> 人を蔑む魔物達の暴言から察すれば人間は食べ物で、確認出来る範囲内に人間は自分だけ。 状況は最悪だった。 だが沢山読んだなろうの小説やアニメから考えれば大抵チートな能力を持っていて、こんな所からでも簡単に脱出出来るはずだ。 きっとそういう事だと自分に言い聞かせ、一呼吸して落ち着かせる。 そうと決まれば先ずは能力確認。 取り敢えず説明書が欲しいけど、そんな我が儘も言ってられない。 その方法すら解らないから、思い付く方法を試していくしかない。 能力確認。そう頭で念じてみる。 結果は何も起きない。 「クククッ、ククッ」 まだ背後では魔族の笑い声が響いているが、流石に気付いてではない…
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