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弌矢
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武蔵野市
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2020/09/14

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  • 茜とその色

    流れる時間のなかで水を流した茜はテーブルに座った。茜と私は暗い部屋の大窓の右側へ没していく陽をながめた。向かいの家と家との隙間の南に夕日の名残りが見える。住宅地で、家と家の隙間から南の地平線が望めた。西へ没していく茜色が南の地平線をも染めていた。 二人は夕暮れの残した色あいに気をとられ、いままでお互いに話していた生活の問題も忘れた。家と家のあいだから望める南の地平線の色は、その下に隠された異国の空をほのめかしている。なおさら、西には陽が燦々と降り注いでいるだろう。遠い異国の色。 茜も私もどこで見たか記憶していないが、異国の落日を見た覚えがあった。その記憶の色彩を、いま見える縦

  • いつもとちがう、帰宅の夜道

    晩に近づくころ道に出るドアを出てしばらく、右車線の歩道側の灰色を歩いていた。パンを作らせれば右に出るもののない、愛すべき喫茶店は藍色にとじていた、 もう口にできない、残念でならない、藍色の深い色、色々な深い青、シャッターを染める色、catがそぞろ歩きする。 暗がりの濃淡に無人の交番がある、夜の暗黒で青姦なんかしている、うしろからのベルが疎ましげに鳴り響く、伏し目がちにしていた顔をふと上げる、 過ぎ去る自転車の浮遊、捕まれ無灯火と不満、あれは普通自転車だな、まれに普通に間違うがな。……今夜家路は制服の身なりだった、今日は上司と喧嘩して上がった。 浮遊の自転車置き場へのこの時間

  • ロシアの村の灯

    夜、成田を飛び立って数時間、ウラジオストクあたりだろうか、見下ろすと、ミニチュアみたいな山村の灯が五つほど見えた。灯はかすかにゆれていた。 あのようなところにも人間が暮らしている、と見入っているこちらをあちらもいま見上げていたりして、などと他愛もないことをかんがえながら、異国の夜空を落下傘か何かで舞い降りてみたいと夢を思った。 ターコイズブルーの優しげな目をしたCAが機内を往来している。シートベルトの確認の際に華やかな微笑を浮かべる。 暗い雲のなかに入ったとき、笑みを浮かべながら歩いているCAに水を頼んだ。聴きかえしてきた。もう一度お願いをすると、彼女は眉を寄せた。水は出せないと

  • 夜景を撮って

    夜の都会の空のなか、おびただしいビルのあかりに、ビル自体が溺れるように暗く沈んでいる。燦然とした夜空を、彼女はヘリコプターでめぐっていた。 それを見上げていたダリは、夜空と道路のあいだの低空を車で浮遊していた。ラジオ番組を流しながら、映像塔へ向かうべく、魔法の絨毯めく上に座っている。くつろげてはいるが、眠い目をとじるわけにはいかなかった。 道に連なる虹の輪のなかに入り込んで進んだ。斜め右上をながめやると、ビルの上で巨大なひかりのライオンが回転している。左上の側面は四角くひかる窓が縦横にびっしりと並んでいる。 すぎては現れる虹の輪とこちらとのあいだ、真横に、夜鳥がスピードをあわせて

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