皓サイド 抱き締められて、僕は頭が揺れて余計にぐらぐらして、そのままぽすんって柊さんに身体を預けた。 ドキドキが、すごい。 もう心臓がジャンプしまくってる。…
柊サイド うふふふふーって、隣から笑い声。 つまみを食いつつ、飲んでる皓は、どうやら笑い上戸らしい。 このチー鱈美味しいねぇ、うふふふふー。 さっきのイルミ…
柊サイド だあああああああっ。 叫びそうになったのを、寸前で堪えた。 あ、危ねぇ。 危ないヤツになるところだった、俺、が。 落ち着け。落ち着こう。そうしよう…
皓サイド 柊さんがさっきと同じようにちょっと前を歩きながら、僕に手を出した。 何だろう?って見てたら手をヒラヒラさせて、んって言った。 どきんって。なった。…
皓サイド コロンコロン涙の粒が落ちて、泣き止まなきゃって思ったときだった。 がばって急に抱き締められて。「ひゃあああっ」 びっくりした。「ごめん」「柊さん……
きこちゃんの足は治った。ひとつ目ちゃんが治してくれた。ひとつ目ちゃんにありがとうって。きこちゃんに良かったねって。きこちゃんを下におろしてふたりを撫で撫でして…
柊サイド 皓、このあとどうする?うちに風呂入りに来るかって、振り向いたら皓が居なくて、俺は目と口が最大限に開いた超アホ面になったと自分で思った。「皓?」 さ…
皓サイド ここは本当に普通にデートスポットなんだなあ。 キラキラしたイルミネーションが続くここは、平日なのにカップルでいっぱいだった。「今でこれじゃあクリス…
皓サイド イルミネーションってどこ?って言われて、僕はここだよってスマホを見せた。 柊さんは、んって言ってナビをセットした。 さっき、迎えに来てくれた柊さん…
柊サイド 皓が住んでる店の近くにあるパーキングに車をとめて、歩いた。 仕事をさくっと終わらせて皓に今から行くってメールした。 淳が、今日何で早いの?って聞い…
皓サイド 今日はもういいや、大学なんてサボっちゃえ‼って、僕は何着て行こうって、持っている服を漁った。 気に入って買った服のほとんどはじいちゃんちに置いてき…
『きこ』は『気狐』というもののけらしい。ひとつ目に足を治してもらった気狐は、ケガに気づいてひとつ目に頼んでくれた光が気に入ったらしく、光から全然離れようとしな…
皓サイド また柊さんにメールをするようにした。 基本は朝。 基本はひと言。 みっくん店長が頑張れって言ってくれた。 僕も柊さんがえっちしたいって思ってくれる…
皓サイド 朝、柊さんに車でお店まで送ってもらって、自分の服に着替えて大学に行った。 いつも通り適当に周りに合わせて適当に過ごして、僕はお店に帰った。 洗濯し…
柊サイド 淳之介………淳の機嫌がすこぶる悪かった。 朝は大概機嫌が悪い。 それはいつものことだけど、今日は輪をかけてより一層機嫌が悪かった。「淳くん何かあっ…
皓サイド 柊さんと喫茶店に入ってコーヒーとボリュームたっぷりのサンドイッチを頼んだ。 服は柊さんに借りた。 最初Gパンを借りたら丈がつんつるてんで、柊さんが…
柊サイド 目が覚めた一発目で超絶美人の柊くんが目の前で俺を見てて、俺はビビりすぎて思わず叫んだ。 ごごごごめん。 よく分かんないけど謝った。 ごめんなさいっ…
僕から逃げようとするきこちゃんを、絶対離さないよってぎゅってした。ここで離したら、いけない気がする。気がするっていうか。離したくない。ちょっとぐらい危なくても…
皓サイド 目が覚めたら駒澤さん………僕の名字として使ってる字と同じ字で違う読み方の、柊さんが、居た。 寝てる。 泊まっちゃった。 駒澤さん………柊さんの部屋…
柊サイド 落ち着け。落ち着け。落ち着くんだYO‼俺‼ ベッド。 隣でスースー寝てる柊………いや、皓、だ、皓。 皓って呼んで?ってあの目で、例によって例の如く…
皓サイド 真っ正面から駒澤さんを見る。 見つめる。 知ってるよ。 こうすると駒澤さんは、だいたい僕にキスをしてくれる。「駒澤さん」「…………うん」 ほら、も…
皓サイド ぎゅううううって抱き締められて、僕はもう頭が真っ白に、なった。 ドキドキする。ううん、ドキドキなんて通り越してる。 ドッキンドッキンのバックンバッ…
皓サイド ガクって項垂れた駒澤さんを、どうしたんだろうって見てた。 駒澤さんはしばらく項垂れたあと、キッと睨むように僕を見て、ドスドスと僕の近くに来て、どす…
ケガ?そこに居た光以外が多分そう思ったはず。ケガ?そもそももののけってケガするのか?光につかまえられつつ撫でられてじたばたしてる『きこ』のどこにって、おい、光…
柊サイド 淳と一緒に居る柊くんを見て、その格好で風呂上がりって分かって、濡れ髪の強烈破壊力の柊くんを思い出したらもう俺の思考力は完全にZE~RO~だった。 …
皓サイド 駒澤さんの部屋、入って。「…………キレイになってる」「…………そこ?」「え?う、うん。だって前は………」「汚かった?」「…………うん」「うんって言…
皓サイド ちょっと来てって僕は駒澤さんに腕を引っ張られて、さっきおりてきた階段をまたのぼった。 え?駒澤さんの部屋に行くの?僕、送って行ってもらえるんじゃな…
皓サイド 靴を履いて玄関を出て階段をおりた。 そう言えば、靴片方どこに行ったんだろう。 あれからちょっと探してみたけど、見つからなかった。「柊くん?」 階段…
皓サイド 車谷さんの家でお風呂に入らせてもらった。 これ入れていいよって言われたボールみたいな入浴剤は、まぜたら泡が立つよって教えてもらって、僕はたくさんま…
きこちゃんだ。分からないのに分かった。そう思った。石の上に立ったから見えた、動く何か。一直線。ひとつ目ちゃんと猫又ちゃんの方に。あの、石みたいに見える黒い塊が…
皓サイド お店からちょっと離れたところ。僕がほとんど来たことがないようなところ。 車で30分ぐらいの、夜景を見下ろしての焼き肉は美味しかった。 お酒飲める?…
皓サイド 着いたよって車谷さんがメールをくれたのは、夜の8時過ぎだった。 裏口から出たら車谷さんは仕事終わりのスーツ姿で立ってて、車はパーキングにとめてある…
柊サイド 昼もとっくに過ぎた頃、やっと仕事が一段落して、飯はまたコンビニかなーって思っていたら、コマさん、ご飯奢ってってヨネに言われて、ラーメン屋に来た。 …
皓サイド ご飯を食べてたらスマホが鳴った。 ドキンって、した。 あれから駒澤さんからメールは来ない。僕もしてない。 だから駒澤さんじゃないよって、自分に言い…
皓サイド もうここに居ても仕方ないから、じーちゃんとばーちゃんちに帰ろうって思って、みっくん店長に次の日言った。 みっくん店長は僕が失恋して泣いてたことも、…
どういう仕組みなのかはまったく分からないけど、天狗は呼ばないと呼ばれたそこまで一気に行くことはできない。だから、上空で旋回しながら鳴くカラスを追うように、天狗…
柊サイド 電話は繋がらなかった。 泣いてた。 傷つけた。 そう、俺が泣かせたんだ。俺が傷つけた。 なのに、その張本人からの電話になんか、出るわけないよな? …
「ぬおおおおおおっ」 夜のマンションに、コマさんの悲鳴が響いた。「あ、ごめん」「びっ………びびびびっくりするだろ、お前‼」「だからごめんって」「おまっ………お…
ピアスをつけていたその日はおかしかった。 出勤が当番制の、今日は火曜日。 当番のコマさんから何回か電話があった。 俺が今商談中のお客さんが3組、他のディーラ…
たまにはひとりで行こうと行った、柊くんがバイトする店。 その日は運悪く、柊くんは休みだった。 つまんねぇなって思いつつ、カウンターで店長さんと話しながら何杯…
「すっぱーーーーーー‼︎」そよそよ風に吹かれながら、ちょっと泣きながら、おにぎりをぱくってかじって、思わず僕は叫んだ。梅干し。だからすっぱい。だけどすっぱい。…
皓サイド「柊くん?え?どうしたの?」「米田、さん?」 極限まで落としたお店の照明。 それでも分かる。カウンターのところに、カーディーラーのつなぎを着たまま座…
皓サイド 駒澤さんの部屋を飛び出して、靴をちゃんと履いていなかったせいで、片方がどこかで脱げた。気づいたらなくなってた。 カッコ悪いけど、探しに行くのも何だ…
柊サイド 柊くんが。 柊くん、が。「柊くん‼」 細い腕にどんだけ力があるんだ。 結構強くつかんでたのに、あっさりと振り払われて、脱兎の如く柊くんは部屋を出て…
皓サイド 唇はあっという間にさらわれた。 重なって本当に本当に息が止まった。「んっ…………」 激しくて、声が漏れた。 駒澤さんのキスはそう、いつも、身体の奥…
いただきますって、天狗が用意してくれた昼飯を食べた。おにぎり。俺の好きな具の。味噌汁にはきのこが入ってた。名前は知らないけど、山のきのこ。うまいやつ。俺の好き…
皓サイド 駒澤さんの髪の毛のかわかしかたはちょっと乱暴で、僕は時々いててってなった。 それがおかしくて笑ったら、なに?って低い声が頭の上から聞こえて、余計に…
皓サイド 思わずぶーって笑い出した僕を、駒澤さんが照れ臭そうな顔して笑って見てるのが見えた。「そんなに、ひどいか?」「ひどいよ」 雑誌や新聞があちこちで山に…
皓サイド タクシーの音が車谷さんの部屋にも聞こえちゃうって、僕は少し離れたところでおりて、歩いた。 マンションの階段も、そっとそっと、足音を立てないようにっ…
柊サイド 落ち着けって言ったのに、落ち着けって言ったのに、落ち着けって言ったのに、俺‼ スマホを握り締めてベットの上、項垂れる。 淳が柊くんの肩を抱いて、耳…
皓サイド 12時になって、僕はいつも通り外の電気を消してドアに営業終了の札をかけた。「皓くん、お疲れさま」「お先に失礼します」 頭を下げて、急いで倉庫に行く…
母さん。鴉が作ってくれたお弁当なのに、高1の僕が食べるにはちょっと小さいお弁当箱の蓋を開けて、僕は母さんって思った。小さめのおにぎりがふたつ。たまご焼きにウィ…
皓サイド 駒澤さんは無言のまま僕の後ろを歩いてきて、トイレはあちらですって言った僕の。 僕の。「駒澤さんっ!?」 腕をつかんでトイレに入った。 駒澤さんが、…
皓サイド『皓くん、3名様お願いね』 車谷さんが住むマンションのお風呂に行って、自己嫌悪でどっぷりで、僕は駒澤さんにメールすることも、車谷さんに上着と自転車を…
柊サイド くそう。 一人暮らしのマンション。ベッドに転がる。 あのキス以来、やたら考えるのは、あの美人………いやいや、俺の名前と同じ字を名字に持つ柊くんのこ…
皓サイド 車谷さんが髪をかわかしてくれた。 丁寧に。 熱くない?大丈夫?って。 よし、終わりってスイッチを切った車谷さんに、ありがとう、もう帰るねって言った…
皓サイド 車谷さんは、タクシーを拾ってくれた。 そんな遠くないよって言った車谷さんのおうちは、本当に店からそんなに遠くなかった。「柊くん、自転車持ってる?」…
春になるのが楽しみだった。光の靴を脇に挟んで、山菜をとった。春が来るのが、楽しみだった。命が芽吹く春が。どれが食べられるもので、どれがダメなやつかは全部天狗に…
皓サイド 近くに居るから家まで送って行くよって、車谷さんは言った。 当たり前だけど車谷さんは僕がお店の倉庫に住んでるなんて知らない。 一応説明したけど信じて…
皓サイド バイトはいつも閉店の12時まで。 とは言っても、酔っぱらいのお客さんは営業時間が過ぎてもなかなか帰らない。全然帰らない。 だから12時になったら僕…
皓サイド 来てくれたのは駒澤さんじゃなくて車谷さんだった。『皓くん、よろしくね』 当たり前みたいに言われて、車谷さんが座ったテーブルについた。 今日は女の人…
皓サイド 次はどうしようって、考えた。 龍の首の珠は、あげた。 だから次のプレゼント。 仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、焼いても燃えない布、燕の子安貝。 うーん…
「うわあ」思わず声が出たのは、ここってひとつ目ちゃんが言っぴょんっておりたところ。猫又ちゃんのふさふさの毛に包まれて、風はそよそよ気持ち良くて、のっしのっし揺…
皓サイド 蓬莱の玉の枝は、イルミネーション。 僕は駒澤さんを夜のドライブに誘った。 通年やってるとこ、探した。いつ行っても、大丈夫なように。 駒澤さんと一緒…
皓サイド ありがとう、おやすみなさい。 心配だからって店の裏口まで送ってくれた駒澤さんに、僕は早速メールを送った。 抱き締めてくれた。 キス、してくれた。だ…
柊サイド やっちまった………。 やっちまった、やっちまった、やっちまったYO、俺!! 何やってんだ、これはダメだろ、まずいだろ、なしだろ、あり得ないだろ。 …
皓サイド 駒澤さんって。 腕に抱き締められて。 熱くなった。顔も、身体も。「そんな顔、しないで」「そんな、顔?」「泣きそうな顔」「……………」 自分じゃどん…
皓サイド 駒澤さんが僕に触れて、僕にキスをしようとして、あって、目を閉じようとした。 あの日のキス。忘れたこと、ないよ? 重なった瞬間の柔らかさ、熱。 あと…
柊サイド 仕事を終えて、まだ残ってる淳にお先って言って店から出たところで、抱きついてきた、誰か。 俺の名前と同じ字の名字の、柊くんだった。 駒澤さんって、泣…
小さい頃に探検し尽くした俺にとって、世界は天狗山だけだけど、どこがどうってすぐに分かる庭と同じだった。さっき『きこ』と対峙したのは確か。木の生え具合、並び方、…
『時間とは命だから』天ちゃんに教えてもらった『うちのルール』は、色々衝撃だったけど、中でもその言葉が一番衝撃だった。時間とは、命。母さん。母さんを、思い出した…
皓サイド お店に行く道、通りすぎてるって思ったけど、僕は黙っていた。 だって少しでも一緒に居たい。 駒澤さんも黙っていた。 黙って車を運転していた。 右手の…
皓サイド 手を引っ張られて、歩く。 表側は大通りに面してるのに、裏側は細い道。 街灯も、薄暗い。 手首、つかまれてるところが熱い。 そして、触れてるところか…
皓サイド 18時半を過ぎて、お店の外側の電気が消えた。 僕はお店の出入り口が見えるところに、でも、お店からは見えないところに、こっそりと立っていた。 通り過…
皓サイド 駒澤さん、ネクタイピン使ってくれてるかなって。 倉庫でゴロゴロしてた。 駒澤さんが来てくれたのはもう何日前? 駒澤さんの会社に夕方行っても仕方ない…
皓サイド 駒澤さん? あの日のあの夜みたいに、駒澤さんが僕を見てた。 ほっぺた、触れて、耳を撫でて、髪に、手を、入れて。 熱を帯びて、熱がこもる目。 これあ…
柊サイド 何で来てしまったのか。 仕事中、偶然見かけた柊くん。 偶然なのか? 分からないけれど、こっちをじっと見つめる姿に、妙にリアルなキスの感触を思い出し…
皓サイド まだバイトまで時間あるなって、そのまま歩いてフラフラしていた。 駒澤さんが、僕に気づいてくれた。 まだドキドキしてる。 あの目が、好き。 見下ろさ…
柊サイド 商談中。 何か気になって、外に視線をやった。 え? うわ、超絶美人ってびっくりして一瞬頭が真っ白になった。 柊くん、だ。 俺の名前と同じ字の名字の…
皓サイド 途中で疲れて僕は歩いた。 空。 夜の帳がおりてきて、藍になる、空。 一際輝く星。満ち始めている月。 照らして。僕を照らして。僕に白銀の輝きを。 ね…
皓サイド 学校から帰るとみっくん店長がお店に居る。 だから僕はただいまってみっくん店長に挨拶をする。 借りてるとは言え、住んでるからには僕の家だし。 今日も…
外に出て指笛を鳴らそうと思ったら、1羽のカラスがものすごいスピードで突進してきた。カラスだ。光を見つけて飛んで来たんだろうけどそのハイスピードで光に行ったら危…
皓サイド 何も言えないまま、何もできないまま、その日は終わった。 せっかく会えたのに。せっかくすぐ側に居たのに。手を伸ばせば触れられるところに。 ありがとう…
柊サイド「な?美人だろ?」 淳之介がニヤニヤして『彼』を指差す。 会社の後輩の、淳之介がうるさかった。 コマさん行こうよ、すっげぇ美人が居るんだよ。俺そっち…
皓サイド ずっとずっと探してた。 ううん。最初はずっと忘れようと思ってた。 月明かりに誘われて、歩いていた竹林。 ひょっこり頭を出していた筍に足を取られて挫…
皓サイド「よ、柊くん」「あ、 車谷《くるまたに》さん、いらっしゃいませ」 お客さんが帰ったあとのテーブルを片付けていたら声をかけられて、振り向いたら常連のお…
皓サイド 今日も見つけられなかった。どうしよう。 バイトを終えて、1時間ぐらい歩き回って、帰って来た深夜の僕の仮住まい。バイトしてるお店の奥の倉庫。 窓を開…
月がキレイだから肝試しをしよう。 それはある満月の夜の、まったく意味不明な、ツレってか職場の同僚からの誘いだった。 入社1年目の社員研修。 抜け出した夜。 …
「光に『うち』のルールを教える」「ルール?」「そう。ルール。『うち』に居るのなら光にも守ってもらう」ルール。『うち』の。僕が『うち』に居るのなら。天ちゃんが言…
だってそんなこと、誰も教えてくれなかったじゃない。なんて言ったところで、どうにもならないことは分かってる。でも、それでも言いたい。言ってしまう。だってそうでし…
それでもやっぱりごめんって思って。 俺はセツにごめんって謝った。 セツは漆黒の目を伏せて、笑った。「倫とこうしていられることが僕の幸せ。そのためのマイナスな…
命の、時間。 セツが言うそれの、意味することが、分からなくて。 俺は次の言葉を待った。 もう、心臓が痛いぐらい、どきんどきんしてた。 長いのか短いのか分から…
「ただいまー」 おりさん早く帰らねぇかなって思ってたら、セツの声が玄関から聞こえて、いつもならお出迎えとかもなしにこっちに来るのを待ってるんだけど、おりさんが…
「………相変わらずですな、おりさん」「ああ?」「ああ?ってあなた………」 昼間は随分とあったかくなってきた3月。 ここは俺の部屋。 に。 季節感クレイジー男、…
光って呼ばれて、気持ち光の背がピンとした。何を言うんだろう。同じところに立ってても身長差で結構違う天狗と光の視線の位置が、玄関の上と下でもっと違う。見下す天狗…
おれの名前は 神田織波《かんだおりは》 れっきとした人間。身体は。 何でかおれは神で、そうと知っていて、そうで『在る』だけ。 何でって聞かれても、そうだから…
「ふごっ」 しばらくおれを見ていたユキオが、くるりと背を向けてのしのしと歩いて行った。『胡散臭い。余計なお世話だ』 遠ざかる大きな背中から聞こえてきた声に、お…
『………っ⁉︎』 突然目の前に現れたおれに、ユキオは驚いているようだった。 大きな身体を小さく丸めて座ってたのに、瞬時に立ち上がって警戒している。「ふごふごっ…
泣き声。 泣き声が聞こえる。今日もまた。 どこからなんて、誰からなんて、そんなの分かってる。 あいつだ。 山奥。真っ白な、雪みたいなもふもふの毛に覆われたあ…
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