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  • 第427日 病巣

    病巣私は時折見る真っ黒な病巣が心の奥にあるのを細い触手を伸ばし毒を放出している近寄るだけで私は戦慄するおとなしくしている時もあれば派手に暴れる時もある不意に心の表まで浮いてくることもある幸福な記憶をまさぐっていると痛い記憶を取り出してくる明るい日常の中に黒い考えの毒を撒くどこから来たのかわからぬどう対処していいかもわからぬ私であるのかそうでないのかもわからぬこの怪物がいる限り私は幸福になることはできない私は呪われているのだろうか第427日病巣

  • 第426日 動乱

    動乱幼年の不安と歓喜青年の狂気と憧憬壮年の自負と傲慢どれもが素晴らしいどれもが深く味わうべきものそしてそれらが生み出す愚行も罪もまた味わわなければならぬそれが人の宿命揺れ動き暴れる心を天は人に与えた静謐を嫌うように禁欲や不動に向かってはならぬ天は静謐を嫌うのだわれらは揺れ動き暴れるものなのだ第426日動乱

  • 第425日 とぼとぼと

    とぼとぼととぼとぼと歩いていけば景色は心に沁み入る何もない村の何もない風景も心にはどんな景勝よりもとぼとぼと歩いた何もない風景が残る天の邪鬼な心の仕組みか私の魂の好みなのか私は知らない何を醸し出すのかわからないまま私は何もない風景を貯め込むとぼとぼと歩きながら第425日とぼとぼと

  • 第424日 死ぬ夏に

    死ぬ夏に晩夏の傾いた日差しはどこか悔恨に似た匂いを立ててヴァイオリンの旋律の幻聴がふとかすめては途絶え何千の日を旅してきたのかそれとも何千の年か私の心は疲れてしまった私が持っているのは苦くて遠い記憶ばかりもう本当の夏は帰って来ないいのちに溢れて走り回ることもできずそれにふさわしい土地もないかすかな風がコスモスの花を揺らすそれでも私は生きるしかないやがて来る雪の死滅まで第424日死ぬ夏に

  • 第423日 毒女

    毒女救って癒してそう毒女は訴える救いたい癒したいそう優男は熱望する救われ癒されることはないそれは関係を終わらせるから優男の精気が尽き果てるまで続くけれどわれらはいつも言っていないか神様に向かって救って癒してとわれらは神様にとっては毒女なのか第423日毒女

  • 第422日 古夢

    古夢石の上に塔の影が差し騎士たちは無言で佇む死が定められた行軍がもうすぐ始まる鎧は血に染まり兜は土に転がるだろうもう何も考えない愛着は裁ち切り名誉は空に消え繰り返し夢に見るその場面は私の故郷のようでもあり理想のようでもある第422日古夢

  • 第421日 繰り言

    繰り言数百も書いていると忘れて同じモチフでもう一度というのがあるアホかいな並べてみるとどっちもどっち忘れただけではなく進歩もしとらん(怒)老人の繰り言というのはこういうものか同じ話を何度も何度もそのうちボードレールではないけど糞糞としか言わなくなるかまあその前に死にたい第421日繰り言

  • 第420日 コギト

    コギトジュ・パンス、ジュ・パンスジュ・スュイ、ジュ・スュイなんにも存在しねえのならそう考えてるおめえも存在しねえのか何だかわからんけど何かがあってえらくあやふやだけど私がいて鶏が先だ卵が先だと議論していてそういうごちゃごちゃがあるんだよそっから出発するけれどあれこれ迷って足を挫いて結局出発点に戻るしかない何度も出発しては何度も挫けて戻ってくるこのあやふやだけが確かなんだよ第420日コギト

  • 第419日 無宗教

    無宗教宗教なんでやめにしたら?そんなのなくても人は立派に生きられるかなり立派な社会だって作れるこの日本を見ればそれは明らか日本人は独自の宗教を持っているという主張もあるけれどそれは悪しき詭弁違う名前でいうべきだ大昔の根拠不明の命題を固守して巨大な権力組織を作り上げその名の下に異分子を虐殺する慈悲や節制や超越への憧憬やらは人が本来持っているもの宗教とは別の名前で呼べばいい第419日無宗教

  • 第418日 卑賎

    卑賤人を釣ろうとしたり押し付けたり囲い込もうとしたりそんな商売ばかり目について豊かになったと言うけれど卑しい世になった気もする商売人よ誇りを持てと言った人たちはどこへ行ったのか田舎町の片隅で毎日淡々と豆腐を作るおばあちゃんは神様のよう生きていければいいじゃないその生きていくこともできないのかこの国はそんな貧乏な国なのか第418日卑賎

  • 第417日 言葉汚し

    言葉汚し言葉をけがす愚か者がいる理想は攻撃の武器となり厳粛な新語は安物のおもちゃとなる傲慢な者調子に乗った者廉恥心のない者私はそれを見たくない政治やメディアはわざわざそれを見せつける人はそれを見たいのだろうか俗悪な見せ物舞台の上で言葉は散々に踏みつけられるその光景に私は痛みを感じる第417日言葉汚し

  • 第416日 幻踊

    幻踊さあもっと幻を紡ごう野にも街にも廃墟にもその景色が逆に幻になるほどに濃密で強固な姿を描こう曲がりくねったハンノキは妖しい精霊となり息苦しい路地は魔王の迷宮となり崩れかけた公民館は秘密結社の儀式場となりそうして私は主となる死んだ物ばかりを見つめることはないこの世は祝祭の場だもっと生き生きと幻を踊らせようやがて幻は私となり私は幻となりそこに真の実在が現れるだろう第416日幻踊

  • 第415日 星の夢

    星の夢幼い頃何度も見た夢で夜空は巨大な星だらけだったドッジボールやピンポン球のようで赤や青に光っていた輪を持っている星もあった二つ連なっている星もあった空の奥には細かい星々も眩しいほどの天の川もあった高原の澄んだ星空もハッブル望遠鏡の映像もあの鮮烈な驚きにはとてもかなわない単なる夢とは思えないあれは別世界の星空?私は眠りの中でそこへ行っていた?第415日星の夢

  • 第414日 重い夜

    重い夜田舎の夜は重すぎる天から降りる闇を押し返す人々もおらず人々は小さな灯りの下で夕餉を済ませそそくさと寝床に入る重い夜はますます重くのし掛かり幼い頃母の郷里で味わった夜の心細さが蘇ってくる少し恐くそして優しい夜夜とは本来こういうものそうでなくなったのはついこの百年人は夜というものを失ったのかもしれない第414日重い夜

  • 第413日 石仏

    石仏鄙びた町の道ばたにこっそりと鎮座した石ぼとけは皆に構われ愛されまるで共同のペットのよう赤い涎掛けやお供えの花やお菓子むしろ人がほとけを慈しみ養っているお助けをなどと大仰に祈るでもなく盛大なお祭りで鎮撫するでもなくただ毎日声を掛ける相手のようでカミほとけはわれらに混じって日々この世を苦労して生きているそれが日本の信仰の一番素晴らしいところだ第413日石仏

  • 第412日 地獄観光

    地獄観光まあここが一種の地獄なんだよ生きていくのは大変なことだし愚行や悪は充ち満ちているし聖なる光はほとんど見えないし諦めてしっかり観光していこう地獄も時々は楽しいし美しさに震える瞬間もあるじっくり見れば神秘も山ほどあるやがてお浄土へ行くのさ地獄旅行は終わるでもまた恋しくて戻ってくる戻って来なくてもよくなるには地獄の謎があらかたわかった時そうなるまでにはどのくらいかかるやら第412日地獄観光

  • 第411日 水への讃歌

    水への讃歌水の輝きは金銀宝石に勝り雑草に宿る小さな露も無限の透徹火は創造土は真理そして水は慈愛その光は無明を救う渓に湧き上がる黄金の霧日が照りながら降る驟雨凍てつく空気の中に舞う氷粒われらは繰り返し水への讃歌を歌わねばならぬ水に恵まれたこの風土への感謝とともに第411日水への讃歌

  • 第410日 カバン

    カバン大きなカバンやリュックサックその中には何が入っているのかなそんなに仕事を持ち歩いているの?あるいは男も化粧道具?昔山歩きをしていた頃は街での鞄にもサバイバルグッズを入れていた阿呆な悪のりだが少しばかりの緊張感と満足感はあった生活に必要なものをすべて一つのカバンに入れられたらどこへ行っても生きていけるのにねなにやら重たいものを担いで勤め人は仕事場へ急ぐそこに夢は入っているのかな?第410日カバン

  • 第409日 頑張るぞ

    頑張るぞ今日も元気だ頑張るぞなどという言葉を発した記憶はどうもない性格が歪んでいるのかね虚弱で生まれてきてそのまま来てしまったのか元気で頑張ったことはあるたぶんかなりたくさんでも頑張るぞおというのはない朝起きて頑張るぞおと言える人はとても貴重だそういう人のおかげで世は進んでいく第409日頑張るぞ

  • 第408日 男根愛

    男根愛絶え間なく射精を続ける男根に私はなりたいあたりに熱い濁り水を撒き散らす生命力のテロリストになりたい張り詰めてそそり立つのだ輝きながら熱く脈打つのだ淀んだ静謐を破壊し枯れた命を蘇らせるのだちょっと滑稽ではあるけれど男根は美しい少し反ったその曲線は絶妙だいにしえの日本人は神として祭った畏敬し崇拝せよ男根はすべての根源だ第408日男根愛

  • 第407日 クソジジイ

    クソジジイ七十年生きてきて結果がそれですかとと申し上げたくなるご仁がいるお前も似たようなものだと言われそうだけれどもあれはひどすぎる廉恥心や寛容何より自己客観視それは身につけるものじゃないか年齢とともに人格を磨くなどという考え方はもうなくなってしまったのか死ねばおしまい自己の快楽の最大化そんな悪魔の思想が勝ったのか第407日クソジジイ

  • 第406日 悲嘆

    悲嘆物語の王は悲劇詩の粋は哀歌人はなぜにわざわざ悲しみと嘆きを求めるのか楽しく暖かいものは楽しく暖かいけれどもその先へ進むことはない世界が破れることはない悲嘆の中でようやく人は目を上に上げるのだそこに何も見えなくとも生きることもまた悲嘆でなければならぬそこにこそ問い掛けがあり光への道がある第406日悲嘆

  • 第405日 ヒグラシの声

    ヒグラシの声ヒグラシの声が聞きたい遠い夏の日暮れに風呂を焚く薪の匂いとともに切なく聞いていたあの声をあのかぐわしい夕はもうない幸せだった記憶を彩る哀歌なしで私はもう夏の終わりを泣くことができないあの声は天からの贈り物美しい夏をより美しくし夏の終わりをより切なくするためのもう人は天の演出など不要なのか季節を生きるのもやめようとしているのか天はそんな人を見捨てるかもしれない第405日ヒグラシの声

  • 第404日 償い

    償い信じれば罪が許されるそんなことはないしあってはならない極悪人が死の床で神を信じると言ったところでどうして許されることがあるだろう罪は自ら償うもの人も神もそれを許すことはできない被害者が許すと言ってさえも私は私の罪を苦しむ人にも神にも許しを求めたりはしない苦しむことだけがなすべきこと第404日償い

  • 第403日 天使の当惑

    天使の当惑あまりにも電波が飛び交っていて天使たちはもう地上に近づけないのかもしれないどこか僻地に行ったら彼らのぼやきが聞こえるかもしれないなんかもうびりびりでさあうるさくてしょうがないんだよねもうほうっておこうよたまに天使の声が聞こえても電波に混ざって歪み悪魔の声に変わっているかもしれない第403日天使の当惑

  • 第402日 空腹

    空腹ああまた腹が減る大したことはしてないのにどういうつもりなのさ補給しても腹周りに溜めるしその溜まってるのをまずは消費してくれないかねお金も時間も節約できるし地球環境とやらにも優しいし本当にこんなに食べる必要があるのかはなはだ疑わしい騙されて思い込んでいるだけではまあおいしく食べられるのは健康の賜物だろうけれどこう頻繁にせっつかれるのはかなわん第402日空腹

  • 第401日 幻の街

    幻の街水平線の向こうに浮かぶ白く美しい町並みは蜃気楼だとわかっていてもいたく心を惹き付ける少し浮き上がって輝く街は散歩をしたら楽しいだろう窓には花が咲き乱れ瀟洒に着飾った人たちが歩いているだろう世界地図なんかなければいい向こうには何があるかわからないあれこれ想像するのがいい現実など忘れ去ってあそこに向けて船出したい私も蜃気楼になりたい第401日幻の街

  • 第400日 甘美か苦か

    甘美か苦かブッダは死直前の旅の途次曽遊の地ヴァサーリで言った「人生は甘美だ」とおいおいちょっと待った生は苦だという思想を撤回したのかもはや生まれ変わらない身にはこの苦にまみれた地上も美しく映るのか悟った後一周回って生を賛美したのか凡夫には知るよしもない生は苦だそして時折生は甘美だしかしまた生はそれらを超えたものなのかもしれない第400日甘美か苦か

  • 第399日 絶滅

    絶滅シオカラトンボやアオスジアゲハが挨拶しながら飛んでいく私は頑張れよと声を掛けるそして絶滅しないようにと祈る多くの絶滅した生物はどこへ行ったのだろう別の地球へ行って楽しく暮らしているのだろうか生物絶滅が激増している取り返しのつかない罪を人は犯しているのか人間のいない地球が別にあったらそこは天国のような所ではないか私もそこへ行きたい第399日絶滅

  • 第398日 雷好き

    雷好きどうも私は雷が好きらしい聳え立つ入道雲遙か彼方から響いてくる雷鳴それらに私はわくわくする熱暑や日照りを破ってくれるだからというわけではないあの激しいエネルギーが聖なる暴力が好きなのだもう少し自然は恐ろしくていい傲慢な人間の鼻を折るためにこの世の命の軽さを突きつけるためにさあ竜爺よ暴れておくれその爆音で人間の言葉を圧しておくれ天空の冷気で下界を凍らせておくれ第398日雷好き

  • 第397日 真実

    真実真実を知りたい万象の意味を理解しそれを肯定できるような真実を知りたい何に向けて創造すべきかはっきりと示されるような真実を知りたい星々を包んで響く壮大な音楽とひとつになりたい真実を知りたい雑草の小さな花に驚嘆の涙を流せるように第397日真実

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