私に何の相談もなく留学を決めたことに、元夫の両親はひどく恐縮してすんなりと離婚手続きが完了した。元夫が自らの意思で決めたとはいえ、私はいつも彼に対して何か秀でた能力を持つことの必要性を過度に煽っていた。私は何も努力していなかったにもかかわらず、周りの友人知人や里帆からの自慢話を聞かされるたびに生じる焦りと劣等感が、一番身近な存在だった元夫の尻を乱暴に引っぱたく攻撃性に変わった。元夫は私を見返すために留学という手段を選んだのかもしれず、それなら私も彼のお手並みを拝見してあげるべきだったけど、私以上に互いの家族が離婚を急いでいるのがわかると彼に対する執着心も弱まってしまい、私たちの夫婦の絆とは水産缶詰の中骨のように脆いのだと彼に打ち明けると、彼は「せめてサクサク感があってくれたら踏みとどまれたんだけどな」と返...連載小説「1999-お菓子系20年目の総括」⑦