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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『ハツカネズミと人間』ジョン・スタインベック|夢は壮大、現実は残酷

    『ハツカネズミと人間』ジョン・スタインベック 大浦暁生/訳 新潮社[新潮文庫] 2024.03.24読了 スタインベックの名作の一つであるが、まだ読んでいなかった。勝手に子ども向けのストーリーかと思っていたのだが、ラストは息を呑むほど苦しくなり心がえぐられそうになった。こうなるしかなかったのだ。この短い作品でこれだけの強烈な印象を残す小説は世にそんなに多くはない。 身体の大きさも頭の良さもまるで正反対のジョージとレニーは、日雇い労働者として各地を放浪している。2人には大きな夢があった。土地を買い、小さな家を持ち、自分たちの楽園としてのびのびと暮らす。レニーはウサギを飼って面倒をみる。 図体が大…

  • 『冬の旅』立原正秋|強い精神があれば、周りから何を思われようが、どんな境遇にいようが成長できる

    『冬の旅』立原正秋 新潮社[新潮文庫] 2024.03.23読了 罪を犯し少年院に入った宇野行助(ぎょうすけ)が、青春の日々約2年間を少年犯たちとの閉塞された集団生活に捧げることで、自己の内面を見つめ、罪とは何か、生きるとは何かを問いた作品である。良作であった。 こんなに優秀な模範囚はいるのかと疑ってしまうほどだ。それもそのはず、行助は本当の意味で罪を犯していない。義兄の修一郎が、母親を凌辱しようとするのを目撃し、なにかの弾みで修一郎を刺してしまうのだ。それでも刺した理由を語らず、内に秘めた復讐心を育む。頭の中に食い込むという手錠の感覚、とても良い。 もしかしたら俺はこの冷たさと重さを生涯忘れ…

  • 『名誉と恍惚』松浦寿輝|芹沢一郎の運命と生き様に魅了される

    『名誉と恍惚』上下 松浦寿輝 ★★ 岩波書店[岩波現代文庫] 2024.03.21読了 数年前に上海1泊3日の弾丸ツアーをしたことがあって、上海ディズニーランドだけを目的に楽しむという旅だった。泊まったホテルも出来たばかりのトイ・ストーリーホテル。日本のディズニーランドに比べると待ち時間も全然耐えられるし人の多さもそんなに気にならない。圧巻だったのが「カリブの海賊」で、これは2回も乗り今でも鮮明に憶えている。 と、、上海といえば私の中でその記憶が新しいのだが、近代史からみると上海事変など日本とは重要な関わりを持っている。この物語の舞台は1937年、日中戦時下の上海で、日本人警官芹沢一郎は陸軍将…

  • 『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン|何かと折り合いをつけていくのが生きるということ

    『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン 斎藤真理子/訳 河出書房新社[河出文庫] 2024.03.13読了 表紙のイラスト、家の洗面台そっくりなんですよね…。これになんだか親近感が湧いてしまう。それに斎藤真理子さんが訳してる!と思ってついつい手に取った。でもこの洗面台の棚、左側にしかモノが置かれていないのがちょっと気になる。精神的になのか肉体的になのか、所有者に偏ったものがあるのだろうか。韓国文学は定期的にというか、思い出した頃に読んでいる感じ。そろそろ読むタイミングみたいだ。 本国で刊行された『優しい暴力の時代』という短篇集に、もう1作『三豊(サムブン)百貨店』を収めた日本独自の短篇集になって…

  • 『二人キリ』村山由佳|みんな大好き阿部定の生き方

    『二人キリ』村山由佳 ★ 集英社 2024.03.11読了 ここ半年以内に、NHKの松嶋菜々子さんがプレゼンテーター役をしている番組で、阿部定事件のことが放映されているのを見た。昔世間を騒がせた事件だが、不思議と阿部定に同情を寄せたり敬する声も多い。こんなにも情熱的になれるのか、自分もこんなふうに愛し愛されたい、と思うからか。捕まって刑期を終えてからはずっとなりを潜めていた定さんが、高齢になってから身を明かし、料理屋をやっていたのは知らなかった。 村山由佳さんが書いた伊藤野枝の評伝『風よあらしよ』がとてもおもしろかったので、この作品も期待して読んだ。前作よりもフィクション感が強めだったけれど、…

  • 『御社のチャラ男』絲山秋子|日本の会社ってこんなだよな

    『御社のチャラ男』絲山秋子 講談社[講談社文庫] 2024.03.09読了 大谷翔平選手の話題で持ちきりの毎日である。彼の好みの女性のタイプに「チャラチャラしていない人」というのがあるらしい。マスコミが言ってるだけかもしれないけれど。「チャラい」っていうのはここ30~40年くらいで浸透した言葉だろうか。 オリエンタルラジオの藤森さんがその筆頭かなと思う。彼はキャラクターにしているだけだけど。この本で書かれるチャラ男は、私が想像していたようないわゆる軽薄な「チャラ男」とは少し違っていた。 地方にあるジョルジュ食品という小さな会社が舞台である。三芳部長(彼が「チャラ男」と呼ばれている)を中心にして…

  • 『タスマニア』パオロ・ジョルダーノ|戦争と原爆、今この本を読む意義と運命

    『タスマニア』パオロ・ジョルダーノ 飯田亮介/訳 ★ 早川書房 2024.03.07読了 最近どうも広島や長崎、つまり戦争や原爆にまつわる書物をよく目にするし、自分でもおのずと選んでしまっている気がする。それだけ心の奥底で意識しているということだろうか。この『タスマニア』は、敬愛する作家の一人、パオロ・ジョルダーノさんの作品だから読んだのだが、原爆のことが主題として私にのしかかる。 しかも、広島への原爆投下について結構な分量が割かれているのだ。アメリカ人が書いた伝記にはほとんどなかったのに、イタリア人が書いたこの本には、原爆投下後の凄まじさがありありと書かれていた。身体から垂れる皮膚、白い火傷…

  • 『フランス革命の女たち 激動の時代を生きた11人の物語』池田理代子|ベルばらを読みたくなってきた

    『フランス革命の女たち 激動の時代を生きた11人の物語』池田理代子 新潮社[新潮文庫] 2024.03.04読了 子供の頃大好きだった漫画の一つが『ベルサイユのばら』である。女子はたいていハマっていた。文庫本の表紙にある、奮い立つオスカルとそれを守ろうとするかのようなアンドレの姿を久しぶりに見て、ベルばらを思い出した。あの漫画は本当に名作だ。フランス革命のことも、ベルばらから学んだようなもの。 この本はベルばらの著者池田理代子さんが、マリー・アントワネットらの有名どころの人物はもちろん、フランス革命の激動の時代を生きた女性たちにクローズアップして書いた本だ。それぞれの肖像画や当時を描いた絵画が…

  • 『ミトンとふびん』吉本ばなな|さぁ、旅に出ようか

    『ミトンとふびん』吉本ばなな 幻冬舎[幻冬舎文庫] 2024.03.03読了 この本、単行本のサイズが特殊だったのと表紙の色が鮮やかだったから、書店でかなり目立っていた。ちょうど永井みみさんの『ミシンと金魚』が並べられていて、タイトルが少し似ているからごちゃまぜになっていた。「ミシンとふびん」だっけ、とか「ミントがなんとか」だっけ、とか…。意外とそういうことが記憶に残るものだ。 今月の新刊文庫本として積み上げられていたから思わず手に取る。さらっと読めるし、今かな、と(この本の前に『オッペンハイマー』を読んでいたから若干疲れ気味なのよね)。やはり、ばななさんの文章は日常に佇むほんのりとした幸せと…

  • 村上春樹×川上未映子「春のみみずく朗読会」に行ってきた

    先週のことになるが、3月1日(金)に、早稲田大学大隈記念講堂にて開催された「村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会」に行ってきた。おそらく、私の書に耽る関連では今年のメインイベントの一つになるであろう。 早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)に基金をするという形で開催されたイベントである。1/15にサイトを開いてちょっと悩んだけど、たぶんこれを逃すと、特に村上春樹さんに生で会えることは二度とないかもしれないと思い、えいっと決断してポチリ。一般の先着は700人とかだったからうかうかしていたらすぐ埋まっちゃったと思う。 実はオーディオブックとかは苦手(というか、オーディブルとか聴いたことな…

  • 『オッペンハイマー』カイ・バード マーティン・J・シャーウィン|愛国心が強すぎた彼は何と闘ったのか

    『オッペンハイマー』[上]異才[中]原爆[下]贖罪 カイ・バード,マーティン・J・シャーウィン 山崎詩郎/監訳 河邉俊彦/訳 ★★ 早川書房[ハヤカワ文庫NF] 2024.03.02読了 昨年広島旅行をした。広島を訪れるのは初めてで、観光名所を中心に見どころを押さえたが、何よりも原爆ドームと原爆資料館は印象的だった。辛い気持ちになったが、日本人として見てよかったと心から思う。 原爆が投下されたのは広島と長崎のみ。日本は唯一の被爆国である。原爆を開発したのが「原爆の父」と呼ばれるロバート・オッペンハイマーだ。日本人なら嫌悪感を抱く人が多いだろう。ましてや、当時原爆のせいで亡くなった人、被爆した人…

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