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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『雨滴は続く』西村賢太|貫多は行くよどこまでも

    『雨滴は続く』西村賢太 文藝春秋[文春文庫] 2024.01.25読了 西村賢太さんの遺作であり、最大の長編作が文庫になった。このろくでなしの堕落した北町貫多がまたもや主人公、そしてもちろん私小説。西村さんの作品は短編であれ中編であれほぼ私小説だから、貫多はもちろんのこと、多くのエピソードに「あ、あの時の場面だな」という既読感がある。それをまるっとまとめたものがこの大長編私小説だ。おんなじところをグルグルとループしているようで読み進めるのに結構時間がかかった。 根が江戸川の乞食育ちで、中卒の日雇い人足上がりの貫多は、或いはそれは殆ど彼の生来の僻み根性から依って来たるところの感覚なのかもしれぬ(…

  • 『十年後の恋』辻仁成|恋をしよう

    『十年後の恋』辻仁成 集英社[集英社文庫] 2024.01.22読了 フランスに住むマリエは、10年ほど前に離婚をし、子育てをしながら仕事をする怒涛の日々を送ってきた。そんな中突然現れた歳上のアンリという男性。もう恋なんてしない(槇原敬之さんの歌を連想しますよね…笑)と思っていたのに。まるで女学生に戻ったように、自分のすべてが相手に翻弄される。恋をしている自分自身に恋をしているかのよう。とっても辛いのに、幸せなこのひととき。 この作品でマリエは「愛」と「恋」を明確に線引きしている、というか、したがっている。フランス語では「amour」一つしか存在しないのに、なぜ日本語には「愛」と「恋」が存在す…

  • 『ミステリウム』エリック・マコーマック|この幻想的、怪奇的、魅惑的な雰囲気を味わうべし

    『ミステリウム』エリック・マコーマック 増田まもる/訳 東京創元社[創元ライブラリ] 2024.01.21読了 こういう幻想的かつ怪奇的、そして魅惑的な世界観ってどうやったら書けるのだろう。イギリスを筆頭にして幻想文学というジャンルがあるけれど、彼もスコットランド出身だからその流れを受け継いでいると思う。日本でいうと、山尾悠子さんなんかがこのジャンルなのかな。まだ彼女の作品は読んだことがないけれど、根強いファンが多いイメージだ。 ある炭鉱町に水文学者を名乗るカークという男性が現れてから、不審なことが次々と起こる。住人たちは奇怪な病で次々と亡くなってしまう。果たして、ここでは何が起きているのかー…

  • 『パディントン発4時50分』アガサ・クリスティー|隣を走る列車の殺害現場を見てしまったら

    『パディントン発4時50分』アガサ・クリスティー 松下祥子/訳 早川書房[クリスティー文庫] 2024.01.19読了 並行して走る電車をぼうっと見てしまうことは誰しもがあるはずだ。私が住む関東では、JR東海道線と京浜東北線はほぼ同じ車窓、隣の線路を走るから、時折り速度を緩めているとゆらゆらと揺れながら隣の車両の中を見ることができる。または、並行して走っていなくても、駅に止まった反対側の車両をまんじりともせずぼうっと見てしまうことがある。 しかしたいていは「覗こう」として見ているわけではないから、その場でなんとなく目を向けてしまうだけ。ただ視覚に入ってしまうだけ。だから、たぶん10分後には忘れ…

  • 『チーム・オルタナティブの冒険』宇野常寛|素直な文章で淡々と独白されるがこれがハマる

    『チーム・オルタナティブの冒険』宇野常寛(つねひろ) 集英社 2024.01.17読了 知らない作家の知らない小説を読みたいなと思って書店をうろうろ物色していたら気になった本がこれである。目にしたことはあったような気がするが読んだことがない作者。宇野常寛さんは評論家で、批評誌「PLANETS」編集長、大学の講師も務めている。批評本をはじめ刊行された本は多数あり、テレビにもコメンテーターとして登場されることもあるようだ。名前はなんとなく見たことあるような。この作品は彼が初めて書いた長編小説である。 主人公は高校生の森本理央(りお)。彼の語りにより、つまり一人称で展開されるわけだが、読んでいて詰ま…

  • 『冬の日誌/内面からの報告書』ポール・オースター|若かりし日から思慮深かった彼は、最初から言語の世界にいた

    『冬の日誌/内面からの報告書』ポール・オースター 柴田元幸/訳 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.01.15読了 もともと単行本は1冊づつ刊行されていたが、文庫化に伴い1冊に収められた。ノンフィクションだけど私小説やエッセイとも取れる。自身の身体のことを書いた『冬の日誌』、精神のことを書いた『内面からの報告書』、この2つの作品は対をなしている。とても読み心地が良くていつまでも浸っていたかった。あぁ、幸せ。観念的で難しめの作品もあるけれど、オースターの作品は総じて好きだ。いつか全集とか出たら買ってしまいそうなほど。 『冬の日誌』 ある冬の日々に、ポール・オースター自身が自分の人生を振り返る。幼い…

  • 『無暁の鈴』西條奈加|転落した人生のその先にあるものは

    『無暁の鈴(むぎょうのりん)』西條奈加 光文社[光文社文庫] 2024.01.10読了 主人公の数奇な運命、転落していく物語は確かに読者を魅了し熱狂させる。人の不幸を嘲笑いたいわけでも、自分のほうがマシだと安心したいわけでもないと思う。この先、彼がどうやって起死回生するのか、どのように生きるよすがを見つけるのかをしかと見届けたいのだ。 無暁は、この小説のラストに辿り着くまでに何度も死にかけた。死にそうになったというよりも、自ら命を絶つことがあり得たという意味で。思うに、人は苦しみや悲しみが大きければ大きいほど、その先には必ず大きな喜びを感じることができる。生きていれば誰しもが感じる小さな小さな…

  • 『人形』ボレスワフ・プルス|翻弄されるヴォクルスキ、ワルシャワの社会構造

    『人形〈ポーランド文学古典叢書第7巻〉』ボレスワフ・プルフ 関口時正/訳 未知谷 2024.01.08読了 このどっしりとした佇まいよ…。ジャケットの高貴な衣装に身を包んだ女性が座る画も、凛とした厳かな風貌で物語の重厚さを予感させる。写真だけでは伝わらないだろうけど、この本はなんと一冊だけで1,230頁もあり、重たい鈍器本だ。これはさすがに持ち運びできないからと、年始の休暇にゆっくり読むことにした。結局正月休みだけでは読み終えられなかったけど。 ポーランド文学といえば、、とすぐに思い浮かぶ作家が出てこなくてググってみた。読んだことがあるのはスタニスワフ・レム『ソラリス』とオルガ・トカルチュク『…

  • 2023年に読んだ本の中からおすすめ10作品を紹介する

    (2023.12 東京都台東区にある古書店「フローベルグ」の書庫 この洞穴みたいな空間は地下に続いていて、乱雑に積み上げられた本たちに囲まれた書店員さんがなんだか羨ましくなった) もうこんな時期に来てしまった。一年があっという間だという陳腐な言葉にもほとほとうんざりする。このブログを続ける限りは年に一度はこの企画をやろうと決めているので、今年も、昨年2023年に読んだ本の中から個人的なおすすめ10作品を読み終えた順(ランキング形式ではなく)に紹介しようと思う。 第1作目 『ネイティヴ・サン アメリカの息子』リチャード・ライト 2023年に入って最初に読み終えた1冊。これが今年のベストになるだろ…

  • 『日本蒙昧前史』磯﨑憲一郎|あの時代に確かにあった、あんなこと、こんなこと

    『日本蒙昧(もうまい)前史』磯﨑憲一郎 文藝春秋[文春文庫] 2024.01.02読了 タイトルにある「蒙昧」とは「暗いこと。転じて、知識が不十分で道理にくらいこと。また、そのさま。(goo辞書より)」という意味である。ということはつまりこの作品は、日本の曖昧なぼんやりとした前史(ここでは昭和の時代)ということであろうか。 日本の歴史になぞらえて小説に落とし込む語り口は、奥泉光さんの『東京自叙伝』を彷彿とさせる。あの時こうだったな、この時代にはそんなこともあったな、あんなに深い意味があったのか、と懐かしみながら、また知らないことは新たな発見をし楽しく読み進められた。私たちが目にする切り取られた…

  • 『誘拐の日』チョン・ヘヨン|日本人では到底考えつかないようなストーリー

    『誘拐の日』チョン・ヘヨン 米津篤八/訳 ハーパーコリンズ・ジャパン[ハーパーBOOKS] 2023.12.30読了 韓国俳優のイ・ソンギュンさんが亡くなったというニュースを見て驚いた。どうやら自殺だったようだ。韓流にそんなに詳しくはないけれど、『パラサイト 半地下の家族』を観ていたから、あのお金持ちでイケメンのIT社長がそうなんだ、、と残念な気持ちになった。 その『パラサイト〜』で登場する豪邸から連想したのか、前に手に入れていたこの『誘拐の日』を引っ張り出した。表紙の感じがまさにそれ。映画では半地下の家族が家庭教師に行くのだけれど。 なんとも奇妙奇天烈なストーリーである。ある理由のために大金…

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