『雨滴は続く』西村賢太|貫多は行くよどこまでも
『雨滴は続く』西村賢太 文藝春秋[文春文庫] 2024.01.25読了 西村賢太さんの遺作であり、最大の長編作が文庫になった。このろくでなしの堕落した北町貫多がまたもや主人公、そしてもちろん私小説。西村さんの作品は短編であれ中編であれほぼ私小説だから、貫多はもちろんのこと、多くのエピソードに「あ、あの時の場面だな」という既読感がある。それをまるっとまとめたものがこの大長編私小説だ。おんなじところをグルグルとループしているようで読み進めるのに結構時間がかかった。 根が江戸川の乞食育ちで、中卒の日雇い人足上がりの貫多は、或いはそれは殆ど彼の生来の僻み根性から依って来たるところの感覚なのかもしれぬ(…
2024/01/30 07:59