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海外オヤジの読書ノート https://lifewithbooks.hateblo.jp/

40代、全く出世しない窓際おじさんが、成長し生き抜くために読書をします。その読書録。最近、生き抜くより息抜く読書が多めです。2014年から海外で生活しています。因みに奥さんは外人。

仕事術、健康(サラリーマンとして)、思想、歴史、陰謀論(趣味用)、教育、金融(家庭の維持用)などの本を読んでいきます。今年は老後の生き方の模索とキリスト教がテーマ

海外オヤジ
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2019/12/13

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  • キリスト教宗教史をバックにスケールの大きいミステリを描く 『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン 訳:越前敏哉

    過日、イタリアに行ってきました。イタリアにゆかりのある映画を物色していると、「インフェルノ」という作品に出合いました。そこそこ楽しみました。 でこの度日本に手術に帰ってきて、映画で見たことはあったダ・ヴィンチ・コードの本を偶然読んでみると、あれ?ラングドン教授? なんか聞き覚えがある。 ということでこれら両者がダン・ブラウン氏のシリーズものであることが判明。 因みに、インフェルノもダ・ヴィンチ・コードも、旅行の予習みたいな感じで映画を見たものですが、後者のダ・ヴィンチ・コードは圧倒的に本が良い!パリやロンドンに行く方にはお勧め! 他のラングドンシリーズ(書籍)のも俄然、興味が湧いてきました。 …

  • 死ぬと分かるのなら、その日あなたは何をするか? 『THEY BOTH DIE AT THE END』ADAM SILVERA

    皆さんこんにちは。 娘が居所にいるとき、ふと娘の洋書(YA系)を読むことが何度かありました。そうした作品につきAMAZONの評価とかも併せて読んでいるうちに、AMAZONに色々な洋書のRecommendationが出てくるようになりました。そのうちの一作が本作。表紙のデザインが印象に残り、この本知っている?とケータイを見せて娘に聞くと、「てか、あるし」と。あらそうなの。 今や娘は日本に進学し、処分を委ねられた洋書ですが、まあ処分する前に読んどくか、という程度に手を出しました。というか居所で読み途中につき日本まで連れてきました。 で今年は、やれムスコ卒業だ、オレ手術だとバタバタしており、洋書は3…

  • シニシズム、あるいは偽善者の欺瞞を描く 『死者の奢り・飼育』大江健三郎

    はじめに・思い出 大江健三郎氏の初期の作品。表題作の「飼育」にて芥川賞を受賞。 本作も再読するのはかれこれ30年ぶりくらい。大江健三郎氏といえば私が大学に入った1994年にノーベル文学賞を受賞した方。 名前は知っていたものの読んだこともなく、同賞受賞がきっかけで私も読んだものです。当時仲の良かった先輩は「当初はとんがっていたのに、障害のある子どもが生まれた途端ヒヨった文章になった」と評していたのが今も脳裏に焼き付いています。 印象 芥川賞受賞の表題作「飼育」を含む初期の短編をまとめたもの。 ほかにもノーベル賞も受賞。受賞理由はからっきし意味不明ですが、NHKの方の解説を読むと、どうやら現代日本…

  • ユダヤ教ルールブック!? 『七十人訳ギリシア語聖書』レビ記、訳:秦剛平

    レビ記=ルールブック!? さて、昨年から始めている聖書読んでみようキャンペーンですが、今度は旧約聖書のレビ記を読了しました。 レビ記はモーセ五書のひとつですが、ひとことで言えば、ルールブック的記述の網羅が印象的でした。 ルールの内容 今付箋の箇所を振り返っています。 印象的なのは食べ物の判断。 地を這うものは不浄、ということで爬虫類は食べてはだめ。これに触ったものは7日間は不浄。蹄が完全に割れ、反芻をする動物は食べても良い、そのいずれかが欠けていたらそれは不浄、とか。 ハンムラビ経典を源流とするといわれる「目には目を」の記述もこのレビ記の24章にあります。ただ単純にやられたらやり返せ、というわ…

  • 小川洋子氏の幻想的世界 with 動物 『いつも彼らはどこかに』小川洋子

    はじめに 小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。 タイトルと主人公について 作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。 タイトルに動物が絡みますが、物語は時として重層的に進みます。 あらすじを書こうと思ったのですが、上記の重層性の関係で説明しきれんと思い、このようにバッサリやりました。 帯同馬・・・タイトルは『フランスの凱旋門賞で優勝が期待されるディープ・インパクト。慣れない土地への移動のストレスを緩和するためにピカレスクコートが帯同場として出国した。』という点より。主人公は(おそらく)大阪モノレール間のみ移動できる電車恐怖…

  • 余程のマニアではない限り、かなり役に立つ 『アウトルック最速仕事術』森新

    はじめに 突然ですが、私はメールというものが嫌いです。 仕事の内容では、諸々の個人的合理化を積み重ね、やり方を変え、順序を入れ替え、マクロを作り、自分の仕事量は上司には教えられない位減りました。 ただ、メールだけはそうなりづらいのです。 役員宛てだとそれなりの文面とデータ、部長(拠点長・支店長)には構えてはいるけどより要点が伝わるシンプルなように。直属の上司だとブレットでも直接入力でもどちらかというとフリーフォーマット。 つまり、メールの打ち方や作り方に決まったやり方が作りづらいのです。結果一通のメールに1時間くらいも使ったりとかあったりで・・・。 本書の売り どうにかならないかということで手…

  • 洒脱な半藤氏の語りが光る 『歴史と人生』半藤一利

    はじめに 齢90にて2021年に逝去された半藤氏。 いつかはその著作を読んでみたいと思っていました。そしてこの度某中古本屋で裏表紙も見ず、タイトルだけで購入した次第です。ちなみに本作は著者が88歳の時に出版したものだそう。すごいですよね。 第一印象は・・・ 作品そのものの第一印象はちょっと残念、あーあー、という感じ。というのも、本作はこれまでの著作集の良い部分などを部分部分取り出して、編者が「リーダーとは」とか「漱石について」などと章立てをしたものゆえ。 個人的には誤った理解でも良いから「直接」著者を感じたかった。編者の介入なくダイレクトに著者のエッセンスを吸いたかったのです。まあ選んだ自分が…

  • 「ギャング」のアクション、今度は誘拐!? 『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

    皆さんこんにちは。 月曜日に手術をして頭蓋骨をこじ開けてバイパス手術をして、火曜日に覚醒しました。まだだるいのですが、ゆっくり元気になって、もう少し学費を稼ぐために頑張りたいと思います。 はじめに 伊坂氏の初期作品。「陽気なギャングが地球を回す」の続編。 もう、これしか言えない 相変わらず、面白い! もうこういう作品には説明は不要。絶妙で洒脱な会話とユニークなキャラが縦横無尽に動き回る。 あらすじ 人間嘘発見器の成瀬、大言壮語の演説家の響野、掏摸の天才久遠、体内時計をもつ雪子。4人の「ギャング」 今度は成瀬(市役所の公務員)の部下の大久保の彼女が焦点に。彼女の父親はやり手のドラッグストアチェー…

  • ちょっぴり不思議で優しい「小川洋子的世界」を 『偶然の祝福』小川洋子

    はじめに 小川さんの作品に一か月ぶりにお目にかかります。 本作は2000年に発表された作品ですから、割と古い部類のものかもしれません。四半世紀か。 構成について 本作は連作というのでしょうか。同じ主人公によるシーンの違う短編で構成されている作品となっています。 作家が主人公、ペットとしてラブラドールを飼っている、息子さんがいる、という背景から、なんだか小川氏本人を模したのかなあなどと勝手に想像してしまいます。作家の母親がキリスト教に没頭している設定も、小川さんが宗教の家で育った(from wikipedia)影響があるのかなあ、とか。 印象:意外と普通かな それでですね、読了した段階ではなんと…

  • 作為的安っぽさと時代のオマージュで読者を引き込む 『さらば雑司ヶ谷』樋口毅宏

    はじめに 樋口氏の作品はこれで三作品目。 これまで読んできたところですと、彼の特徴といえば、どぎつ目なエログロといったところ。 「日本のセックス」ではスワッピング狂の旦那に嫌々連れていかれるうちに欲情してくるその妻の心情を描いていました。性描写がどぎつ目。 「民宿雪国」ではその民宿のおやじの実相を複数の取り巻きの視点から描写し、善人の顔から残酷な人殺しまで、ピンキリの描き方といった様子。殺人がどぎつ目。 作為的な安っぽさとネタばらし そして今回のさらば雑司ヶ谷。 今回も性描写も暴力もどぎつ目だったかもしれません。ただし今回は男と男の方。 というより、まあ設定がぶっ飛んでいてですね・・・。生まれ…

  • パンチに欠ける?もとりあえず三部作終了 『黄金のローマ 法王庁殺人事件』塩野七生

    はじめに 塩野氏による歴史絵巻三部作の最終作。 緋色のヴェネツィア、銀色のフィレンツェ、に続き、黄金のローマ、であります。 もし本作を初めて手に取った場合は、悪いことは申しませんので、是非いちから(ヴェネツィア)から読むことをお勧めします。 歴史的深みにやや欠けたか 主人公はヴェネツィアの貴族マルコ・ダンドロ。今回もまた高級遊女である彼女のオリンピアと一緒です。 ただ、何というかマンネリ感は否めません。 これまでの塩野氏のあとがきによると、架空の人物であるマルコとオリンピアを使い、むしろ「都市を描く」ということでありました。これにはなるほどと感じました。 ヴェネツィアでは、トルコを相手にした諜…

  • 痛快コンゲーム的銀行強盗 『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

    はじめに これまた十数年ぶりに読んだ本作。 初期伊坂作品らしい、エンタメ性・疾走感・そして洒脱なセリフとキャラ構成、と全てが光る作品でした。面白かった。 あらすじ 4人の出自や性別・年齢のばらばらな男女が銀行強盗を働くというもの。 夫々の特徴を生かして、華麗にかつユーモラスに強盗を働き、かつ誰をも傷つけないという、ある意味善良な強盗団の話。 そしてさる機会に、この強盗団がこともあろうか、他のワルに強盗されるという結果に。背景には何が?そしてどうやってやり返すのか? 他作品のプロトタイプが本作に 初期の作品から読み進め、改めて本作を読んでみると、他の作品と類似点に気づきます。 別の言い方をすれば…

  • 強烈なシニシズムを示す作品群 『パニック・裸の王様』開高健

    はじめに 過去にも読みましたが、実に20-30年ぶりくらいの再読。 いやあ、なかなかしびれました。 本作、4編の短編から構成された作品群ですが、強烈に感じたのが、通底するシニシズムでありました。お金、権力、偽善への痛烈な批判のようなものを感じました。 それぞれご紹介 「パニック」では、若手公務員の視点で描かれます。自らの属する官僚組織に巣食う汚職や腐敗、権力を毛嫌いしまた見切りつつ、120年に一度起こる恐慌(ネズミの巨大繁殖とその後の農作物大被害)について声高に対策を上程します。新人の戯言として無視されるも、これを「想定の範囲内のもの」としてあえて看過。のちにネズミ恐慌が起こった時の「それ見た…

  • 労働者の苦境のなかに、ちょっぴり光る幸せをユーモラスに。 『魔が差したパン』O・ヘンリー 訳:小川高義

    O・ヘンリーは昔読んだ気がします。 近年は気にもしなかったのですが、読書系ブログ界隈(まあ私が見回るところ)ではたまに言及されていたので気になっていました。 今回手術のために日本に帰国していますが、母親の「積読」文庫にその姿を発見、読んでみたものです。 はじめに なかなか良かったです。O・ヘンリー短編の中でも傑作選3冊のうちの3冊目。 東工大名誉教授の小川氏による傑作選・翻訳。 全体評 O・ヘンリーは久しぶりです。もう20年以上ぶりかも。この短編集のうち数編は何だか読んだ気がします。 洒脱な雰囲気を漂わせつつ、労働者階級の悲哀や小さな喜びを描くところがいいですね。最後にくすっと笑顔をさせてくれ…

  • メディチ家内の人間ドラマを描く 『銀色のフィレンツェ』塩野七生

    塩野七生氏の歴史絵巻三部作のうち、これが二作目。 こんな話 前作同様、ヴェネツィアの貴族マルコが主人公。 前作末、政治勢力図の変更もありヴェネツィアでの殺人事件のごたごたの責任を取らされ、一時的な追放を余儀なくされたマルコ。外遊ということでフィレンツェへ。 これまたフィレンツェで政治騒動に巻き込まれますが、フィクションですのでそんな偶然もご愛敬。 今回の舞台はルネサンス期後半のフィレンツェです。隆盛を極めたメディチ家、ではなく、むしろ経済的には落ち目にあり、軍事や政治へシフトしつつあるメディチ家を描きます。 政体論からの、現代政治 塩野氏というと、歴史と共に、イタリア政治を語るイメージがありま…

  • ふんわりやさしめ西作品 『しずく』西加奈子

    西さんのイメージ 西さんの作品は、なんというか、「癖のある」感じの印象。 いつも関西弁の女性主人公が出てきて、ちょっと繊細だったり、あるいは男勝りのユーモラスなキャラだったり。 その一方で擬態語や擬音語のチョイスが読者をはっとさせ、唸らせるところも多い作家さんです。 今回はちょっと違う? そしてこの短編集。 いい意味で、何だかマイルドに感じました。曰く言い難いのですが。 いつも通り、関西弁と突き抜けた女性キャラは出てきますが、他の西作品対比、マイルドかな。 あとがきを読むと、何でもプライベートで辛い状況にあり、それを支えてくれた友人たちに捧げる本という位置づけの作品だそう。そうしたことも関連し…

  • 外交に国運を賭するヴェネツィアと、翻弄される人民 『緋色のヴェネツィア』塩野七生

    皆さん、こんにちは。 私事ですが、毎年Year Resolutionを作成しています。簡単に言うとプライベートでのKPI。この中で数年前から旅行KPIというのを作っており(実際は奥様の満足度向上KPI、という名称なのですが)、なるべく家内を旅行に連れ出すという事をしています(怒りの目線を私から反らす、と)。 で、今年は大枚をはたいてイタリアに行きました。 ヴェネツィアにはいきませんでしたが、ローマとフィレンツェをゆっくり回りました。 ということで今回の読書は、事後学習!?とも言うべき後追い読書の位置づけであります。個人的にこつこつと世界史を学んでいる身としては、トルコ関連の内容がこれまたしみい…

  • 次第に全貌が明らかになるエログロ・サスペンス 『民宿雪国』樋口毅宏

    皆さん、こんにちは。 上の子の高校卒業式に参加してきました。 いやあ、青春っていいですね。式が終わった後は講堂から出て、生徒一同で制服のネクタイ(通称『たくあん』:金色・黄色だから)を一斉に放り投げるというシーンも。その後は生徒同士、仲間同士、あるいは先生を交えて・父母を交えての写真撮影。いやあ、いいものじゃないですか。 そして思い返す自分の卒業式。というか出なかったという思い出。 私はその時、荒れていました。ただ成績はそこそこよく、国公立は諦めたものの、私立は概ね願ったところからは合格がいただけました。進学先を決めるところで問題が勃発。 学歴で苦労した父親は、私が合格した所謂有名私立大に行っ…

  • ニューヨークトリビアと凶悪犯との対決 『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー、訳:池田真紀子

    皆さん、こんにちは。 この前約10年ぶりにYahoo!オークションを利用し、文庫本をバルクで購入しました(塩野七生さん関連ですが)。 実は事前にメルカリも見たのですが、概観としてメルカリは高く、Yahoo!オークションは軒並み安いという結果でした。 同じ商品なのに値段が違う。なぜなのでしょうか? 売り手が既存のプラットフォームから新たなプラットフォーム・チャネルを拡大できず、他方買い手はより新しいプラットフォームに流れるから? あるいは私が購入したのは例外だったのか? マーケット、プライシングとは、これまた奥深い世界であります。 こうした複数のプラットフォームから、共通するマークアップ言語の要…

  • 2人の刑事の掛け合いから繙かれる3遺体の真実 『パズル』恩田陸

    皆さん、こんにちは。 そろそろ異動の時期ですね。私は外国でこじんまりと自らサイロを築いてぼちぼちやっています。しかし、所謂駐在さんはそうはいきません。異動の示達があります。 私の一つ下の上司君は、次はなんとブラジルだそうです。と、遠い・・・。日本からだと30時間かかるそう。これでは一時帰国も難しいですね。 彼は、ことし上の子が大学受験、下の子が中学受験らしく、当然の事ながら?単身赴任となる模様。ちなみに上の子は奇遇にもうちの愚息と同じ高校で同じクラブの一つ下。残念ながら甲子園予選は見れないかもしれません。 子どもの成長、家族の急用に柔軟に対応できない部分は気の毒だなあと感じます。その応報として…

  • 話すこと・吐き出すこと・受け止めること。終末に救い。 『十二人の死にたい子どもたち』冲方丁

    皆さん、こんにちは。 この前あっという間に二月が終わったとか言っていました。舌の根が乾く間もなく、日本へ帰国致しました。 これから両親の確定申告を代行します。溜息が出ますが、引退世代の年金額が凄まじい・・・。私は逆立ちしてもこんな額はむりぽ。私が両親から受けた恩恵を同じ形で(つまり金銭的に)子どもたちに与えてあげることはもはや不可能。 となれば切り口を変えて子どもたちを育てなければなりません。なんて言いつつ、子育ては終盤戦。高校生・大学生とここからお金が必要になるんですけどねえ。。。奥さん、働いてくれないかな?? はじめに 冲方氏の作品は実は初めて。 映画化されている模様で、ローティーンからヤ…

  • ノワール系エンタメ小説。最後のツイストにガクブル 『去年の冬、きみと別れ』中村文則

    皆さん、こんにちは。 あっという間に2月が終わってしまいましたね。早いもので2/12が消化されてしまいました。 仕事でもプライベートでも「これやりたい」の年間計画を立てたものの、早速遅延気味です。 PDCA的にはCAをいかに上手にやるかが個人的な課題です。Cでの振り返りが弱いのです。 そもそものPがおかしかったのか、予期しないタスクに予定が押してしまったのか、等を振り返るのが結構苦手。原因をよくよく考えることが課題です。 いつもそのあたりを勢いにかまけて「来月は頑張ろう」と根性論で見ないふりをするんです。そう、自分の駄目な部分は見たくないんですよ・・・とほほ。 中村さんの作品はこれで三作目。 …

  • ユーモアと不穏さの通底する音楽短編 『夜想曲集』カズオ・イシグロ、訳:土屋政雄

    皆さん、こんにちは。 高3ボーイズが日本へ帰っていきました。うちのムスコはもう少しこちらにいる予定です。 そして程なく私もまた日本へ一時帰国。ムスコ君の高校卒業式、大学入学式、そして脳のパイパス手術とイベントが続きます。 仕事や生活にリズムがうまく刻めず、自己啓発系の読書は進まず。ということで小説で自らを慰撫。本日はカズオ先生に慰めてもらいました笑 音楽にまつわる短編集 カズオ・イシグロの作品を読むのはこれで三作目。 これまで読んだ二作の長編(「私を離さないで」と「遠い山なみの光」)と異なり、今回は短編集でした。これまた全く作風が異なり、エンタメ寄りの味わいのある作品集でした。器用な方なのです…

  • 新たな作風の模索!? 伊坂作品に珍しい短編集 『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎

    皆さん、こんにちは。 息子を含めた高校三年生4人組。せっかく東南アジアの端っこまで来てくれたのだからと、やれ世界遺産の街へだとか、やれこれがおいしいから食ってみろとかで、有給をとってあっちこっちへ連れまわしています。 4人もいると性格も行動もそれぞれ違っていて、なかなか見ていて面白いですね。 かばんのパッキングから、服装へのこだわり、大人や友人にもストレートに意見する子。逆に、服装とか髪型とか、あんまりこだわりもなく、へらへらしつつ「僕そういうタイプなんです」と分かっているのか分かっていないのか、のらりくらりな子。周囲の空気を適切によみ、適度な突込みできつめな子も緩めな子も一丸にしてしまうまと…

  • 読み口良すぎ。宝石をタイトルにした多様なストーリー。 『サファイア』湊かなえ

    皆さん、こんにちは。 高校卒業前の今、ムスコがこちらに友人3人を引き連れて帰ってきました。で、なんというか実に面子が多様。 うちの子が一応アジアハーフ。連れてきたのは、ドイツ在住15年の子(英語の方が得意)、カナダと日本のハーフ、そしてこの前初めてパスポートを作ったという子。これだけ異なるバックグラウンドの子たちが作りあげる学生生活というのはどういうものなのでしょうかね。 私なぞは純ジャパとして「いつか海外に行きたい」と思っていましたが、子どもたちは平気で海外を味わうような世代になっているのかもしれません。否、海外も普通で日本の生活を「異文化」として見ている可能性もあります。 ひっそりと日本も…

  • お笑いなし!?大阪の夜の街を綴る純文学作品 『地下の鳩』西加奈子

    皆さん、こんにちは。 突然ですが、最近体調がよろしくありません。よく眠れないのです。 これまで食事、運動、睡眠、とコンディショニングにはそこそこ気を遣ってきました。月初に旅行から帰ってきてから、旧正月のあいさつ回りを経て、昼夜逆転・飲食過多が続き、日中はもうろうとした状況。 仕事は窓際だし、適当でいいのですが(マクロが私より正確に仕事してくれます)、プライベートの読書が進みません。読みたいノンフィクションが沢山あるのですが、体力とやる気がないと読めないのです泣 深夜の2時ごろに目が覚め、体はだるい、それでもケータイで時間つぶしはしたくない、何とか生産的に生きたい。でも小難しい本を手に取る気力が…

  • 作品の書き口と大分ギャップがある!夢想家?天然? 『とにかく散歩いたしましょう』小川洋子

    読了してから一週間近く経ってしまい、印象が薄れてきています。 こういうとき、電子書籍というのはちょっと面倒ですね。読中メモは残せますが、私の端末は手書きのようにササっというわけにいかない。というのは私の持っている端末がかなり古いからですが。フリック入力とかできたらいいのに。 で、記憶の断片と拙いメモとを寄せ集め、自分どう思ったんだっけ?と思い返す始末。 前々日の夕飯すらはっきりと思い出せない位だから、ましてや本の内容をや、ですよね。 はじめに 先月小川氏の作品を久方ぶりに読み、改めてその「静けさ」を堪能しました。その後Kindleでお勧めされたのが本書。 作品の印象とはまた違った、作家さんの素…

  • 作家の多才ぶりを見せつける奇想短編集 『いのちのパレード』恩田陸

    皆さん、こんにちは。 私はそもそも本好きではありましたが、社会人になってからはそれ程本は読んでいませんでした。きっと読んでも10冊あったかどうか。 思い返せば、本をゴリゴリ読むようになった切っ掛けは2つほど。 10年前、日本から逃げるように海外に出た真正ダメリーマンとして、厳しくも慈愛に満ちた年下のメンターと出会い、呻吟しつつビジネス書やノウハウ本に救いを求めたのが一つ。 4-5年程前、インター校に通う子どもたちの国語力が壊滅的であることから、「日本語の本を読ませなければ」と本探しを始めたのがもう一つ。 小説を今も読むようになったのは後者が理由。 今では二人の子どもたちは生活の拠点として日本を…

  • マイクロマネジメント神、降臨! 『七十人訳ギリシア語聖書』出エジプト記、訳:秦剛平

    さて、昨年から始めている聖書読んでみようキャンペーンですが、今般旧約聖書の出エジプト記を読了しました。 ひとこと 結果から言うと、ループ的記述と、マイクロマネジメント神、が印象的です。 神さまは我慢強い?というかTry&Error好き? 本出エジプト記は全体で40章。 そのうちの前半は、モーセの「エジプトから出してください」、ファラオの「ダメ」、神の「じゃあ厄災プレゼント」、ファラオ「わかったよ、とっとと出ていけ」、モーセ「マジで出て行っていいすか?」、ファラオ「気が変わったやっぱダメ」、という件を無限ではないですがループします。 最終的にファラオがモーセ他イスラエルの民を追っ払いますが、所謂…

  • 安定の「静謐」さで世界を優しく描く。 『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

    皆さん、こんにちは。 当地では旧正月を迎えました。 激しく鳴り響く爆竹を十数分と親族との過食?とを堪能しました笑 改めて思いますが、華僑の方々は本当に家族を大事にしますよね。集まりが大好き。そして話好き。私は広東語が喋れんので、連れていかれても食事の後はソファーで読書か居眠りをするだけなのですが、お開きがいつも午前3時頃(時には更に遅く)になるのはやや閉口します。 でも逆に言葉が通じる方が大変か。「あなたのお母さん、本っ当に面倒くさい」とは家内の言。他方私から見れば義母はかわいいおばあちゃん。何しろ言っていること、分かりませんしね。 家族とは難しいですね。 ひとこと 小川さんの作品には、いつも…

  • 軽妙な筆致でワイルドな軽自動車旅行を綴る。楽園、見つかりましたか? 『今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。』石澤義裕

    皆さん、こんにちは。 とうとう居所に戻ってきました。 当初、ローマからアブダビで乗り換えの予定でしたが、ローマでの出発が遅れ、乗り継ぎに接続できず。結局、アブダビからドーハ、ドーハから居所へ戻ってきました。 驚いたのは、EUでは飛行機が当初予定から3時間以上遅延した場合、最大€600の補償金がもらえるらしいのです(うちは当初到着予定から結局6時間遅延して到着、つまり当件該当します)。 で、35%の成功報酬で補償金交渉をするというAirHelpという法律会社(弁護士/行政書士/司法書士事務所?)を、格安航空券を買ったエージェントから紹介されました。 個人情報保護に微妙に抵触しそうな気もしますが、…

  • 意外に読める女性の恋愛バトル!? 『彼女の嫌いな彼女』唯川恵

    イタリアで一番?印象に残ったピサの斜塔。 皆さん、こんにちは。 とうとう短い旅行も終わりに近づきつつあります。これまでヨーロッパはフランスと今回のイタリア、二つしか行ったことがありません。で、もし、住めるとしたら、と考えると、やはりイタリアかな、と感じました。 人がいい、というか、付き合いやすいように感じました。 もちろん、副流煙半端ないとか、たばこが常に臭いとか、ありましたが。 ひとこと 初めて唯川さんの作品を読みました。 どういうアルゴリズムかは分かりませんが、アマゾンのKindle Unlimitedでおすすめ?に入っており、何となく読んでみようかと手に取った作品。 恋愛小説系の作家さん…

  • 社会の同調圧力と狂気の一個人との相克 『コンビニ人間』村田紗耶香

    滞在先のAirbnbの宿からアルノ川を望む。一泊一部屋一万一千円也。 皆さん、こんにちは。 フィレンツェで感じたのですが、こちらは「犬天国」であります。電車の中にも犬、お店の中にも犬、散歩のお供に犬。本当に多くの現地の方が犬を連れて歩いています(ちなみに小型犬が多いですね)。 結果よく見るのは糞です。歩道の真ん中に鎮座するもの。誤って踏みつけられた茶色いくつあと付きのもの。誰かが蹴ったのか、散乱しているもの。 で、家内は動物嫌いかつ匂い敏感な方なので、まあ臭い臭いと煩くて・・・。生返事しかできぬ至らぬ夫であります。 ひとこと 村田さんの作品を読むのはこれで二作目。本作は155回芥川賞受賞作品と…

  • 人間を通じて辿るローマ通史 『教養としてのローマ史の読み方』本村凌二

    皆さん、こんにちは。 数日前までローマにおりました。皇帝の像とか、ヴァチカン博物館に確かにたっくさんありました。んが、改めてローマ史は書籍で読むとなかなか難しい、と感じました。 かつてギボンの大著も、本村氏の別のものも読んだことがあります。でも、脳が劣化しているのか、読中その瞬間瞬間は面白いのに、読了したあと、『じゃあ何が面白かったか?』と問うと言葉に詰まる。というか覚えていない。 今回のも非常に面白かったのです。今回は忘れる前にと、雑巾を絞るように言葉にしました。 ひとこと 以前も本村氏の本を読みました。もう内容も覚えていないのですが、おぼろげに面白かったことを覚えています。 今回、改めてロ…

  • 村田さん、天才か!?すごいディストピア 『信仰』村田紗耶香

    皆さん、こんにちは。 たまには気まぐれを起こすものだなという話を。 私はかなり頑固だと思います。決まった仕事を決まった計画で淡々とこなすことが好きです。 読書に関しても同様で、価値の定まったものに一定の時間を割き、じっくりと堪能し尽くしたい思いがあります。現代の作品よりもできれば西洋の文学をたしなみたいと思いますし、将来残るかどうか分からない現代作品(とくに軽めなかんじのやつ)に時間を費やすのはどうか、と考えてしまう傾向にあります。要は偏屈です。 ただし、です。旅行中など普段と異なる環境、異なる雰囲気では、こうした偏屈が「気まぐれ」に弱まることがあります。 そうやって出会ったのが、今回の村田紗…

  • 古代ローマ入門。説明・ビジュアルが理解を後押し! 『古代ローマ 饗宴と格差の作法』祝田秀全

    皆様、こんにちは。 旅行に出ていて感じるのですが、普段より疲れます。まあ、遊んでいて疲れるとか言って生意気な話なのですが。 考えれば、自宅勤務だと8時45分の始業ですから8時過ぎに起きても問題なし。終業17時45分ぴったりにPCをシャットダウンすることも可能。 対して旅行だと朝は5時起き6時起きは当たり前だし、帰りだって午後7時とか8時とかよくある話。要は活動時間が長いわけです。 当然のことながら、読書時間は減少していきます。 ということで、今回は旅行に資するかもと読み始めた作品。 ムック本的な印象はありましたが、なかなか良かったです。 ひとこと マジでわかりやすい古代ローマ入門。 構成がよろ…

  • 「閉塞感」「喪失感」の中に希望と恢復を描く 『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

    (前段与太話です。失礼します。) 皆さんこんにちは。 突然ですが、今まで一度に大きな買い物(キャッシュアウト)って、どれくらいでしょうか? いやあ、実は私のところの1月のクレジットカードの請求額を見ていてちょっとたじろいだって話ですが。78万7,440円! 上には上がいることは分かります。 私は家無しですが、住宅ローンなどを組んでいればこんな数字は小さく見えるのだと思います。また1枚のカードでの決済で経費を集中させているので、理由も背景も分かっています。ただ、なかなかしびれます。 で、今まで一番大きな買いものを改めて思い返しました。 中古のGibsonレスポール(サンバースト)、28万円。 中…

  • 結構有名なエピソードいっぱい 『七十人訳ギリシア語聖書』創世記、訳:秦剛平

    昨年から引き続き今年も聖書にチャレンジの年にしていきたいと思っています。 昨年は所謂解説書が多く、何だか聖書の中心で円を描きながらうろうろするばかりで、核に「ズバ」っと進むことが出来ませんでした。 新年を迎え何とかその核心に至る一歩を踏み出すことが出来たと思います。 そしてなんとか創世記については読み終えました。今回は所謂モーセ五書のそれぞれの「書」ごとに、読後振り返りたく思います。 間口がひろい 創世記とひとことで言いますが、そのカバレッジはかなり広かったです。 ザックリとコンテンツを振り返れば、 ・天地創造 ・カインとアベル(初の殺人) ・ノアの箱舟 ・イサクを献納するアブラハム ・エサウ…

  • 絵画って奥が深い!うんちく心が刺激される! 『恋する西洋美術史』池上英洋

    皆さん、こんにちは。 私の会社では、今年から週三日のオフィス勤務が義務化されました。なんというか、これがきつい(泣) 実に甘ったれた泣き言なのですが、これが現実。金曜の晩はもうぐったり。 3-4年続いたコロナ期を経てしっかり年もとりました。またこの間、二回も陽性にもなりました。こんなにダルいのは後遺症?いや多分違います。単なる疲れです。 かつては当然のように週五日でオフィス出勤していたのですが、今やそれすらスーパーマンのごとく頑強なように思えてしまいます。 で何か影響あるかというと、結果土日はほぼ引きこもり状態。もうひたすら睡眠と読書に費やされている気がします。 その一気読みの中で今回読んだの…

  • 面白いのに、イヤミス的な後味の悪さ。その癖こそが魅力!? 『PK』伊坂幸太郎

    皆さんこんにちは。 うちの会社、始業は8:45なのですが、週3ある出社日はいつも7:00くらいに出社します。朝早く何やっているのかというと、昨年末に読んだ『メモの魔力』を片手に1000本ノックならぬ1000問自己分析をしています。 50前のおっさんが今更?な感じですね。でも、セカンドライフというか、これから会社で必要とされなくなることを見越して、第二の人生用に改めての振り返りです。 やっと100問近くに迫ってきましたが、なかなか面白いです。自分がこんな感情持っていたのか、とか、結局俺の引っかかりは「承認欲求」なのかとか、自分の事なのになるほどー、とか頷いちゃったりします。 あ、オチはないんです…

  • 英語でエンタメ小説を!格式のある美しい英語 『THE BODY IN THE LIBRARY』AGATHA CHRISTY

    皆さん、こんにちは。 アガサ・クリスティの本を見るといつも冒頭につらつら書かれているのですが、何でも彼女の著作は世界で(累計で)三番目に多く売れたそうです。 一位は聖書、二位はシェークスピア、そして三番目はアガサです。 ・・・なんてことを聞くとアガサ・クリスティもコンプリートしたくなります。 ただ、英語版でぶっ通しですべて読むとなると時間もお金もかかるのが悩みです。 電子版は500円くらいで全集みたいのが買えたりしますが、やはり味気ないんですよねえ。 やはり本の物理的な存在感ってのはインパクトがあります。そして所有するだけで味わえる満足感(読んでも居ないのに!)。 そうした本と静謐に囲まれる愉…

  • イタリアに行く予定がある方、丁度帰ってきた方は楽しく読めるかも 『イタリア 24の都市の物語』池上英洋

    皆さん、こんにちは。 えー、イタリアに行くことになりました!しかも月末に!時間がない!でこの読書はそのための布石です。 日頃から金がない金がないと言っていますが、今回は完全に冥土の土産を意識しています。あとはどうにも方向の定まらない長男君(高3)も引き連れて、言わば卒業旅行・家族旅行・社会科見学を兼ねての旅行になりました。 親としては、なんらカッコいい背中を見せてあげられませんでしたので、まあシブチンがパァーと金を使うこともできるとここで証明しましょうぞ。 言っても結局貧乏性でオールセルフ手配。現地12泊で、エア込・宿込・食事や交通費や入場料込々のall-inclusiveで一人25万円程度に…

  • コンパクト・ハンディな三菱事始め 『岩崎弥太郎と三菱四代』河合敦

    皆さんこんにちは。 本日は小噺なし笑 一週間疲れました。 ざっくりと タイトル通りの三菱四代についてコンパクトにまとまった作品。 四代と言いますが、ページの配分的にはざっくりと、初代の弥太郎が65%、その弟で二代目の弥之助が25%、残り10%が三代目四代目の記述、といったところ。 オーナーシップに富む雰囲気!? 初代弥太郎の記述が中心なので当然ですが、弥太郎のやらかしが目につきます笑 血の気の多さとか、遊郭通いとか、公金使い込みとか。 初期の事業である商船時代の社訓で『俺の会社だー、儲けも損も全て俺の責任だからなー』(P.88)みたいなことを書かれているようです。経費の請求でレシートを白紙に貼…

  • ダメンズ選手権入賞はカタいか!? 『僕のなかの壊れていない部分』白石一文

    皆さんこんにちは。 新年あけてはや一週間ですが、二日から仕事をしていますと普通に正月気分ではありません。むしろここ東南アジアの端くれでは、来月やってくる旧正月にむけてスーパーではミカンの販売が多くなり、街はオレンジ・赤の雰囲気が強くなります。 こちらの家族は当然旧正月のお祝いをしますが、私は広東語が喋れないため、結局中途半端に参加するのみ、というのが例年の状況。 嫁に連れられて親戚の家へ挨拶周りをしますが、私は本を数冊持っていき、会(会話?)が終わるのをひたすら読書して待つみたいな展開ですね。子どもかよって扱いですが笑 まあこうやって顔を見せるという習慣も悪くありません。家族内でのエンゲージメ…

  • 世のプレイングマネージャー諸君、君たちは聖人君主たりうるか 『部下が勝手に活躍する魔法の質問』伊藤治雄

    50間際の窓際として、今まで一人でやっていた仕事に、部下を付けられました。 でも、何だかうまくいきません。 アニメの世界だと無骨な職人は一見ぶっきらぼうも、大抵は根が優しいもの(無骨で恥ずかしがり屋でね)。でも私はダメでした。大声こそ出さないまでもイライラしっぱなし。先週もこんな会話がありました。 弟子『Why are these figures not tally ?』 (なぜ数字が合わないんですか?) 私『Do you think why ?』 (なぜ違うんだと思いますか?) 弟子『I don’t know….』(分かりません) 私『oh, you don’t know even thou…

  • 不条理の極北 『日本軍兵士』吉田裕

    皆さん、こんにちは。 私は、日本軍関連の書籍が存外に好きです。 別に、子供のように強いもの・大きいもの・早いものが好きというわけではありません。むしろ、何でここまでひどい状況になってしまったのかという組織論的な関心、あるいは、このような悲惨な状況と比較して、自分は幸せをかみしめなくてはならない(文句ばっかり言っているのではなく)、といった自省的な観点から読んでいるような気がします。 今回の作品も、ため息がとまらない酷い状況を描きます。 はじめに 本作は一橋大学名誉教授の吉田氏による、太平洋期間中の末端兵士の状況を記録した作品になります。 太平洋戦争を4つの期にに分類し、その中でも絶望的抗戦期に…

  • プロのプレゼン術基礎。ヒントとテクニックが山盛り 『わかりやすく<伝える>技術』池上彰

    皆さんこんにちは。 突然ですがすんごいバンドを見つけました。見つけた、というより漸く知った、という事なのですが・・・。あの、髭男っていう奴ですが、驚きました。『SPY X FAMILY』のタイアップ曲になっていた『ミックスナッツ』という曲なのですが、ジャッズっぽくてリズムや編曲もすごいですよね。ベースもドラムもこれぞ正に縦横無尽という言葉が適切。 さて、本日はプレゼンの本であります。 はじめに NHK出身の池上氏による、『より良く伝える』本。 基礎的な内容ながら、忠実に守れば確実にプレゼン力が上がると思います。伝え方の構成、小ネタの他、パワポとスピーチの切り分けなどの実践的な内容も。 プロのプ…

  • 水郷地帯で頻発する失踪事件。人のアイデンティティとは 『月の裏側』恩田陸

    皆さん、明けましておめでとうございます。 新年早々、嫁と夫婦喧嘩をしております。はあ。 今年も私は嫁の月として彼女の周りをぐるぐるとしていくことになりそうです。 そして、もう一つ。コメントをぎゅぎゅぎゅと短くしてみたく思います。時短、ですね。 概要 恩田陸氏の初期の作品。モダンホラー。 とある町で人が失踪するも、無事帰ってくるという事件が多発。彼らは『盗まれて』しまったのか。 思ったこと 本作、失踪後に当人が帰ってきます。その時の意識だけないのですが、あとは普通なのです。 こうした筋から、自然と洗脳とか、死とかを考えました。 意識や記憶の連続性を自認できる場合、周囲から『お前洗脳されたんだ』と…

  • 2023年読書を振り返る(印象に残った5選)

    来年もがんばってポストします。写真は本年訪れたパースの一コマ。素敵な町。 皆さんこんにちは。 本ブログも何と4年がたちました。今年も有難うございました。 たまに頂ける反応に、じんわりと支えられております。お越しいただきました皆様、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。 方針は変わらず、毎年百冊強の本の備忘録を世間にまき散らし、公共空間でポイ捨てをしているみたいで、いつもちょっと申し訳なく感じております。 相変わらず文章力は向上せず、語彙も増えず、これではうちの子どもたちとあんまり変わんないなあと嘆息しつつ。でも来年以降も文章力を向上させるべく、少しだけ(マジですこしね)、努力したいと思…

  • 常識を覆す(非常識!?)な聖書解説 『絵画で読む聖書』絵画で読む聖書

    皆さん、こんにちは。 先日からやるやる言っていた今年の振り返りですが、お見せできそうにありません。このままいきますと、有限不実行という最もだらしのない結末に。我ながら忸怩たる思いであります。 振り返るには振り返りました。ただ、もう量が膨大になり、見直しと編集が必要。これをヨソサマにお見せするには更に相当の時間がかかる、新年まで間に合わないと判断しました(新年までに自分の振り返りを終わらせ、来年の課題を設定したいので)。 時間があるとか言ってなぜ出来なかったかというと、先日読み終わった「メモの魔力」で自己分析を進めていたからです。いやあねぇ、これがまた1日3、4時間かけても全然進まないのです。そ…

  • 喪失感・諦観を抱え、前へすすんでいく 『羊をめぐる冒険』村上春樹

    皆さん、年末いかがお過ごしでしょうか。 今回たまたま休暇の消化もあり年末居所でゆっくりしております。 準備のない休暇ということもあり本当に家に居るだけなのですが、思索の時間というか今年一年をじっくり振り返ることが出来て、実にいいじゃないか、と感じています。 来年から敢えて何もしない年末with有給、を実行してもいいのではないか、と考えています。 ひとこと 「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」に続く三部作の完結編。 これまでの青春小説とやや趣を異にし、最後はしんみりとした仕上がり。 ってか帯に三部作完結!って書いてあるんですが、アマゾンを見るとさらに「ダンス・ダンス・ダンス」が後続とみなさ…

  • メモによるアウトプット(+思考の深化)のススメ 『メモの魔力』前田裕二

    皆さんこんにちは。 年末の雰囲気になってきましたね。 海外に居て日本のテレビを見るというと、うちではTverを使用しております。リアルタイムではありませんが。で、Tverにも広告があるのですが、年末仕様のものが増えてきたという話。 さるビール会社の広告も「日本のみなさん、お疲れナマです」とか言ってまして、はっと気づきました。あれ、俺はその対象から外れている、と(日本人のみなさんではなく、日本の(日本にいる)みなさん、だよなあ)。勝手に深読みをしてちょっぴり悲しさを覚えました。 まあねえ、飲め飲め言われたってどうせ飲まないんですがね。イスラム教国で酒税は高いし、だいたい金欠だし、ましてや脳梗塞で…

  • 今年一番のインパクト。インド独立と民族浄化、英国の立場やインドの未熟さ。全部知らなかった “Freedom at Midnight” by Larry Collins & Dominique Lapierre

    皆さんこんにちは。 久しぶりに英語の本を完読しました。我ながら驚きますが7/1から読んでいます。むぅ、ほぼ6カ月です。 自身の健康問題だったり、仕事だったり、旅行だったり(「これで人生最後かも」の気持ちでして)、まあ落ち着かないというのはありましたが、大分かかりましたね。 でもこれは、今年一番沁みました。もう英語ができる方には全員に読んで欲しい。自分、まだまだ歴史を知らなすぎ。悲しさと感動に包まれました。 はじめに 独立前後15カ月のインドを詳述する力作。 民族の憎しみの連鎖、マウントバッテン卿の苦悩、インド首脳たちのいがみ合い、ガンジーの頑固さ、ガンジー暗殺を企てる狂信者たちの未熟さ、全てが…

  • 肩ひじ張らない、丁寧なエッセイ 『ひとまず上出来』ジェーン・スー

    ひょんなことから年末は意外にも時間が取れることになりました。 本ブログはひたすらにオッサンの読書感想文を垂れ流すものですが、ひょっとしたら雑記的なものが数日流れるやもしれません。そんなときは時は普通にスルーしてください。 ひとこと 令和の現在に紡がれた、丁寧なコラム・エッセイ、という感じ。 過去に読んできたエッセイ これまでにも幾つかエッセイ的なものを読んできました。面白いなと感じるのは自分と遥か異なるかた、明け透けすぎるかた、等々です。あるいは「現代ならば許されないな、この表現」などと形容されるかた。まあとにかくぶっ飛んだ方。 ふと思い出すのは中島らもさんとか、ナンシー関さんとか。とても彼ら…

  • 普及している食材が持つ数奇な歴史をつまびらかに。 『世界史を大きく動かした植物』稲垣栄洋

    皆さんこんにちは。居所に戻りました。 50手前にして部下なるものを持ちました。 ところがこれがまた、思うように動いてもらえません。ほぼ未経験ながら人柄を見込んで知り合いを採用してもらったのですが・・・。 一番困るのが、「AとBの数字が合いません」とか「うまくいきません」とかその手の会話。内容は100%理解していなくても仕方ないし、ミスも全然問題ないのです。想定内。ただ、「じゃあどうして数字が合わないのかね?」「何がうまくいかない原因だと思う?」という問いへの答えも用意したうえで会話して欲しいんですよねえ。高望みかしら。結局そういう会話をして、相手が困って黙ってしまうのですが。 実は私はそれ以下…

  • 世の中はディストピアに向かいつつある!? 『無理ゲー社会』橘玲

    夜行列車にはなんだか修学旅行的な雰囲気がありました。車掌さんによるベッドメーク中。 皆さんこんにちは。 バンコクのBang Sue中央駅から夜行列車で国境のPadang Besarへ、そして国境を越えた後、マレーシアのButterworthという街へ来ました。ここまでで約24時間。夜行列車は学生時代に北海道で乗って以来30年ぶりでした。家内は初めてとのこと。 今回はそんな移動のさなかに読んだ一冊。 橘氏の作品は証券会社時代に数冊読んで、こりゃ一般の金融の人より詳しいわと思っていました。 今般Kindle Unlimitedで最近の作品を読みましたが、さらに冷徹で鋭い視点で社会を見つめており、ち…

  • 若い調律師のアツい姿勢。周囲に磨かれつつ良き仕事人へと至る成長小説 『羊と鋼の森』宮下奈都

    バンコクはマリファナが合法とか。葉っぱマークの店がいたるところに。 皆さんこんにちは。 引き続きバンコクから書いています。 子どもの学費が片付いたら、今とは違うどこかで暮らそうか、などと家内とよく話します。 今住んでいる居所もいいのですが、別の外国でも住めるのかなー、やっぱり日本に戻るのかなー、でも親がいつまで元気だか分からんし云々。 個人的には田舎でも都会でもない町で、海も山もその県にある、ざっくり人口20万人程度以上の市。ぼんやり茨城県とか(実家から半日で帰れるし)、福岡県近郊(イメージ先行?)とか考えています。まあでも行ってみないと(極論住んでみないと)分かりませんが。 そんな視点でバン…

  • 自分は何をしたいのか。思春期の鬱屈を瑞々しく掬う佳作 『14歳』千原ジュニア

    バンコクのジャムにスタックして家内の機嫌が悪くなるさかなのバス車中 皆さんこんにちは。 東南アジアではジャカルタの渋滞がやばい、という話を聞いたことがあります。同様にバンコクの渋滞も相当だ、という話も耳にしました。 私、無駄に旅情を感じたがるアホでありまして、海外旅行等、時間の余裕が許す限りバスを好んで乗るんです。で、今回のバンコク旅行で休日にバスに乗ったら、あらイヤだ。たったTHB8(約32円)でスイスイ進めるじゃないですか。車掌のおばちゃんとのやり取りも風情があり素敵。 ところがとある平日、午後7時過ぎに予定が終わり、バスに乗って宿まで向かったら、もう大変。BTSで30分で帰ってこれるとこ…

  • バンコクの歴史と下町の記憶 『読むバンコク』下川裕治

    皆さんこんにちは。 バンコクに来ました。LCCを利用したらヘトヘトになりました。子どもは泣き叫び、隣の夫婦は咳と鼻水と痰。咳する人、多くないか?・・・そう、人間力を鍛えるにはもってこいです。 そしてドンムアン空港から何とかアソーク近くのホテルに投宿すると、「すんまへん、宿いっぱいでして」みたいな話で。なぬ!?予約してたじゃん? まあ一日だけ他のホテルを用意してもらい、翌日から予約したホテルとのこと。そんなこんなで疲れました。 ちなみに代替ホテルが予約したところよりめちゃくちゃゴージャス、ということはなく、まあ分相応でした笑 ただ、予約していなかった朝食ビュッフェだけは代替ホテルでいただけるとい…

  • 気怠い雰囲気の中で、真面目に退廃を見つめる 『1973年のピンボール』村上春樹

    皆さんこんにちは。 私、あまり作家さんは手広くは読みません。最近だと恩田陸さん、湊かなえさん、西加奈子さん、が結構多かったかと。そして本は読んだら基本的には処分(売却)です。 他方、印象に残ったもの・もう一度読むかも(読みたい)というものはとってあります。でも物語は少ないのです。この前実家をのぞくと、存外に村上春樹の作品が多く残っていました。結構好きだったみたいです。 とういことで、村上氏の作品、整理もかねて年代順に再読してみようと思いたった次第です。 本作、舞台設定は今から50年前!!古いですねえ。 私が買ったのも古いですよ。もう25年以上前に町の古本屋で買ったみたいですね。本の最後のページ…

  • バンコクを中心にタイの蘊蓄を知る 『タイ 謎解き散歩』柿崎一郎

    みなさんこんにちは。 この前当地の眼科病院に行ってきました。若いころに網膜剥離をやっているので毎年検診がてら見てもらっています。まあちょっとヤバいかもなのですが。。。 それにしても英語で医療用語を喋るのは難しいですよね。網膜剥離はretina detachmentって言いますが、バカの一つおぼえみたいに繰り返していたら使えるようになりました。 で、そろそろ必要なのが、老眼ですよ。これが英語で使いたい。どうやらpresbyopiaというらしいですね。今までは”my eyes are aging so that…”とか随分回りくどい言い方していました。改めます笑 実は今度タイに旅行に行くので、ぼん…

  • MECEによる問題解決入門 『超MBA式ロジカル問題解決』津田久資

    皆さん、こんにちは。 薄々感じられているでしょうが、当方あまのじゃくで、流行りが嫌いです。 出版業界でいうと、最近だと「〇〇がすべて」「○○が9割」「〇〇が3時間で分かる」「世界の〇〇を××冊読んでみた」的なやつです。あれはダメですよ。嘘っぽい。 まあ確かにシンプル化は物事の理解の第一歩として有効です。でもその奥に埋蔵される多彩な真実があるってことを誰かが語らんとダメではないかい? 偏屈オヤジはたまにそうひとりごちています。 さて、今回は20年ほど前に買った本の再読です。本棚整理を兼ねて、です(よくとっておいたこと)。 「超MBA式」なんてまくらですが、15年20年前はMBAの後光は眩しかった…

  • 自分の<哲学>を引き受けよ 『<子ども>のための哲学』永井均

    皆さんこんにちは。 今回は哲学の本です。今年一時帰国をした際に持って帰ってきた本。処分しようかなと思ったけど、これはもう少しとっておくことに決定。自分で読んでもまだ面白いし、他人にあげても喜ばれるかもしれない。 読後なんだか興奮してしまい、下記、普段の取り繕いすら剥がれた文章になりました。そして紹介ですらなく、実に自分本位のメモで、誠に申し訳ない。でも、せっかくなのでそのままポストします。 そうそう、下世話な話ですが、中学受験や高校受験とかで出てきそうな文章です。先生方が好きそうな文章。でもちょっと古いかな。 はじめに 20年以上ぶりの再読。 学生時代に買った本ですが、大事に取ってあったので余…

  • ハードコアエロ、転じて公権力の恐怖、そして思うのは近しい人をどう理解するかという事 『日本のセックス』樋口毅宏

    こんにちは。いやあ、あっという間に今年も終わりですね。 ここでは殆ど読書にまつわることしか書かないのですが、年末は少し趣向を変えようかな、と。読書をして血肉となった知識から立てたYear Resolutionですが、その結果について記事を書きたいと思います。要は振り返りですね。言っておきながら本当にするか分かりませんが。 さて今回のポストは、何度か触れている10年ほど前の『ブルータス』の文芸特集に掲載されていた作品。 名前で損している?かもって思うくらい期待を越えてきた作品です。あるいはこれ、敢えて下品なタイトルにしておいて、読者の期待を下方にアンカリングしているのだとすると、この著者、かなり…

  • 中級者以上向け。歴史の流れとともに隣国同士の関係も詳述。 『東南アジア史10講』古田元夫

    先日、標準月一回のZoomミーティングを子どもたちとしました。 その中で兄(長男)から出た不満。妹(長女)が家事をしないとのことでした。 彼ら、祖父母と同居しており、二階部分を子どもたちが使っています。うち、二階のトイレの掃除、そして洗濯は子どもたちにやらせています。洗濯と物干しは兄、乾いた洗濯ものの取り込みと畳むの、そしてトイレ掃除は妹、という風に決めました。 兄は生活中心ですが、妹は家事の優先順位が低い。結果、兄ばかりが家事をし、妹は家事をすっぽかす。 兄は受験勉強があっても自分の家事タスクをこなして勉強をしていたのに、妹は附属校にいるくせに『洗濯物を畳みもせず、トイレを汚すのは大抵妹(毎…

  • 金融機関収益管理とバーゼルIIIリスク指標を総合的に勘案する 『金融機関のROE戦略』金子康則・平田光義

    皆さんこんにちは。 年末になると当地ではお休みを取る人が増えます。いわゆる有給消化です。 日本にいたとき、確か有給持越しは40日くらいできた記憶がありますが、ほとんど有給など使えず、毎年付与される有給はどぶに捨てるがごとく期限切れとなっていました。 東南アジアの果て、うちの会社では有給持越しは10日(少なっ!)。当地では、年次で与えられる有給は標準的に10日から20日程度ですかね。年末は、皆さん失効を避けるべく持越しできない部分を必死に使い切りますね。という事で職場では「有給ちゃんと使ってる?」「年末どこに行くの」みたいな話題に花が咲きます。 隣に座っているおばさんは、来週シチリア島に飛び、そ…

  • ハッピーエンドのディストピア? スリリングさに洒脱とユーモアが入り混じる傑作 『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

    皆さんこんにちは。 月末憂鬱なこと。私は家計簿つけですね。お手製のエクセルで管理です。 私と家内は国外で、子どもたちは日本ですので、邦貨と外貨で2シート作成し、トップに合算ベースのサマリーシートと3シート構成のエクセルです。 いやあ、今年はもう残高が減るというより、溶けるという感覚。 下は高校初年度ですし、上は高校最終学年で、修学旅行やらなんやら。彼の塾代も高校の授業料一年分くらいしたなあ泣。すごいわ。大学初年度の前期分の納入もありました。。そして何でしょう、最近は合宿免許云々言い出しています。これも親が出すのかね? 私も私で今年は一時帰国を2回もしてしまったし、この前は子どもたちが親族の結婚…

  • 旧約聖書に歴史的考証を加えた良書 『聖書時代史 旧約篇』山我哲雄

    ガザ地域のハマスとイスラエルの衝突・内戦、誠に痛ましい限りです。 私の今年のテーマの一つはキリスト教の勉強でしたが(過去形!?)、その先には、いつかイスラエル近辺を聖書を片手に歩いてみたいという仄かな夢がありました。そんな矢先の紛争ぼっ発でありました。 本件、目先の「どっちが先に手を出した?」という問いは無意味で、第二次大戦時の英国の密約やその後のイスラエルの独立、さらに遡り旧約聖書やそれらを巡る解釈にまで事は及ぶと言っても過言ではないかと思います。結局歴史を遡らないと包括的な理解に至らないのかな、と考えています。 で、本書です。 本書は、旧約聖書の内容について、歴史的な解釈や聖典外資料からの…

  • 東南アジア現代史をちょいかじり。興味の火付け役になれるか 『池上彰の世界の見方 東南アジア』池上彰

    うちの上の子は高校3年なのですが、不精癖が抜けないのか、高校、大学と、所謂「帰国」試験でパスしてしました。 さなかで、某大学の志望動機では「東南アジアでの生活の経験を生かして」云々書いていました。が、その実、基本やりたいことも分からないし、モラトリアムの先延ばしを狙っている節も強く、その大学はサクっと落とされましたが。 で、おそらくそのネタ本の一つがこれ。もう手を付けることなどないだろう思われますが、父親の私が改めて味見・事後検証してみる次第であります。 ひとこと 振りとつかみ、説明の分かりやすさは絶品。 もとキャスターという履歴もあり、かつての要人との対談の逸話も多くあり、また語り・つかみが…

  • 独特の世界観、ファン向けか 『きのうの世界』恩田陸

    そういえば、そろそろ今年も残すところ一カ月半。 毎年一年の計、というか、new year resolutionというのを作っています。「今年はこういうことしたい」という決意表明ですね。 そろそろ締めにかからなねば、ですね。 出来ていることもあり、出来ていないこともある。出来ている理由を振り返り、良いところを評価。出来ていない理由も振り返り、その優先順位で本当に良いのか再考。 至極単純なことを毎年繰り返しますが、3年5年と振り返ると、意外と出来ていることが積もり積もっているものです。 ひとこと 恩田氏独特のクロスオーバー的作品だった気がします。 殺人事件、地方史伝奇風味添え、そして最終的に死者の…

  • 京都と失恋と仲間+伝奇。色褪せない青春の爽やかさ。 『鴨川ホルモー』万城目学

    最近、死ぬことを意識してかしてないのか、ブログの記述に『昔は』『学生時代は』などの表現がおおいな、と感じます(調べていないけど)。さらには学生モノ・青春モノをふと読んでしまっています。 したらほら、今度は万城目ちゃん読んじゃった。この前は森見ちゃんだったし(年、近いから・・・笑) いやマジでこれ無意識。来年春の脳動脈のバイパス手術まで走馬灯ロングバージョンでもやるつもりなんすかねえ、我ながら。 まだ一応40代なんだから今を生きろよオッサン、って自分を少し叱りたくなりました。隣の年下の課長は40から2人子供こさえたしね。あれくらいの懸命さで生きないとねえ。無理だけど。 はじめに 以前、万城目学さ…

  • 相変わらず面白い。洒脱で微熱的おかしみ with死神 『死神の精度』伊坂幸太郎

    皆さんこんにちは。 いやあ、この前結婚式に出たと思ったら、コロナにかかりました。一年ぶり二度目。 ワクチンはチャイナ2本と米系1本の3本も打ったんだけどね。そのせいかそこまで辛くもなし。 ちなみに30歳そこそこの駐在君はあっという間に2回かかってたなあ。しかも彼、ワクチン5本も打っていた!チャイナ2本、英系1本、そして日本で米系2本の合計5回。今年の2月くらいに既に2回目かかっていたので、所謂免疫もそろそろ切れるかも。とすると、近々予定されている日系企業のクリパ辺りでコロナ3回目をゲットしてしまうのではと、不謹慎ながらちょっと期待していたり。 かからないように頑張ってほしいです。 ひとこと 実…

  • 非業の愛を繰り返す男女。永遠の愛か、それとも呪いか 『ライオンハート』恩田陸

    家内の弟の結婚式が週末にあり、バタバタしておりました。 家内は五女一男の三番目で、末っ子の長男とは10歳違い、長女とも10歳違うとのこと。お義母さん、頑張りましたね。おまけに義母・義父も兄弟が多く、私の結婚式もそうでしたが、まあ親戚が覚えられないこと。今回も嫁から繰り出される説明は『おばさん』『おじさん』『いとこ』の三語に尽きます。まあでも、細かく説明されても理解しなかったとは思いますが。 祝日を利用して日本から緊急参戦した子どもたちも親戚の多さに驚いたことと思います。お疲れさまでした。今日から学校頑張りましょう。 生まれ変わりって、どう?あり? 生まれ変わり、信じますか? 私は結構信じる派で…

  • 重厚で尊大な自意識過剰男の有意義な学生生活 『四畳半神話大系』森見登美彦

    再び居所に帰ってきました。 次、来年春に日本に帰国する際は脳の動脈のバイパス手術です。 入院する手術はこれで四度目になりますかね。色々やらかしたものです。まあでも実は意外と泰然自若なのです。 子どもたちも無事に大学までは見えてきましたので子育てはひと段落。万が一の保険についても会社在籍であれば会社から約3000万、自分の死亡保険が2000万、海外で積んでいる年金がざっと1000万程度か(少ないねえ)。子どもたちの学費と嫁の再出発費用としてはまずまずか。家内の生活力(金を稼ぐ力)を鍛えてあげられなかったのだけ申し訳ない。 とはいえ生き残る可能性も普通にあるわけで、最大のリスクは下手な失敗を負いつ…

  • 奇天烈で面白いキャラと展開。なのに最後にほろっと来る。友っていいなあ 『砂漠』伊坂幸太郎

    大学時代の友人とのバカ騒ぎっていうのは、多くの方の記憶に残っていると思います。 本作『砂漠』は、そういういつもつるんでいた仲間のことが脳裏に浮かぶこと間違いなしの名作であります。 僕(北村)、南、鳥井、西嶋、東堂、の五人の個性ある仲間たちのエピソードが春夏秋冬の四季にあわせて描かれます。 実は西嶋の物語 本作は何といって印象に残り過ぎるのは西嶋でしょう。どストレート発言と呼びつけ+敬語。空気読むなんていうことをしない独自の価値観。そしてダサい。そしてかわいい。 読みつつ「あー、これって本当の主役は西嶋だなあー」って思っていたら、書評家の吉田さんの解説でも、やはり西嶋が気に入った旨が書いてありま…

  • 誕生秘話含め、脚本作成過程を楽しめる 『猫と針』恩田陸

    あ、これは脚本なのか これまで恩田さんの作品を幾つか読んできましたが、「舞台にしたら映えるだろうなあ」という作品が幾つかありました。言っても舞台なんて、人生で10回程度しか見たことはありませんが笑 そうしたら、こちら、劇の脚本?を書かれたようです。 脚本の内容そのものは、実をいうと私は良く分かりませんでした。で、恩田氏本人も「最後まで書いていて面白いかどうかわからなかった」とか書いていました。 脚本だけではなく、全制作過程を楽しむ やっぱりちょっと身構えて書いたのかな。 個人的には、舞台に配慮しすぎた(考えすぎた)?ような気がしました。普通の小説だと情景や背景が豊かで、それをイメージするのが面…

  • 企業スポーツの終焉とビジネス環境の変化を描く 『ルーズヴェルト・ゲーム』池井戸潤

    スポーツが好きです。 何っうか、頑張っている姿が好きなんです。うまい下手関係なく一生懸命さが素敵だなあ、と感じます。 才能に完膚なきまでに打ちのめされることもある。相手に追いつくために練習し、打ち勝つための戦略やデータ収集を行い、うまくいくこともある。もちろん、ベストを尽くしてもうまくいかないこともある。 そんなスポ根モノって、誰かの人生の一部なのに、自然と自らを投影してしまうんですよね。 ってまあ、スポーツだけではなく人生すべてそうですけどね。 スポーツ、会社、競争とかって、まあ分かりやすいんですよね。 ひとこと 久しぶりに読んだ池井戸潤さんの作品。そして本作、企業野球のお話であります。 あ…

  • 5人の女性の造形・設定を描き分ける。平たく言えば五股の話!? 『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎

    こんにちは。 めっきり寒くなりましたね。毎朝血圧を測っているのですが、東南アジアの居所で測るのと比較すると、大体10-15くらい(上が)上昇しています。 気温の変化は確実に体に影響を及ぼしていますね。 そういえば、コロナもインフルも再び流行の兆しだとか。皆さまもどうぞご自愛ください。 ひとこと 舞台設定やテイストはまさに伊坂作品。 ただ、五股の別れ話ってのは曰く言い難いなあ笑 平たく言えば「五股」 太宰治の「グッドバイ」へのオマージュとして書き始められたという本作。私、当該作品も読んだこともありません。そして本作、「ゆうびん小説」として一話ずつ抽選で読者に送ったということ。これまた風変りな仕掛…

  • 奈良の史跡を辿るミステリー 『まひるの月を追いかけて』恩田陸

    恩田さんの作品を最近結構読んでいます。 理由?それは、恩田氏って多作につき、ブック〇フで安いものが多いから笑。 かの店は、本の需給バランスによって値段が変わるので、ある意味分かりやすくてありがたいです。在庫が多ければ比較的新しいものも価格は下がるようですし、そうでないものは多少古くても『え?この作品が!?』というものも220円だったり350円だったりします(ごめんなさい、上記のお値段、私は『安い』とも言わず、最低価格のもののみ『安い』と私言っております)。 さてさて、もう少ししたら居所に戻りますが、そこから来年予定している手術の間までは色々考える時間にしたいなあと思います。それまで読書はエンタ…

  • 失恋に負けず、頑張れ! 『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下奈都

    ひとこと 本作ですね、婚約破棄された女性が周囲の助けを得つつ回復する、という話。です。 副題:自分の軸の作り方、作ろう「これが私の生きる道」、的な。 で、私の感想は、・・・合わなかったぁ、でした笑 ジェンダーに固執した発言は気を付け慎まなければなりませんが、何だか「女性女性した」作品に感じました(1000%アナクロニズムな個人的発言)。 ほのぼの系前向きストーリー 全体の雰囲気として、作品にはユーモアが溢れ、ほんわか・ほのぼの雰囲気が漂います。 主人公の明日羽(あすわ)はちょっとおっちょこちょい、というか、若干「抜けてる」キャラっぽくて、叔母の六花(ロッカ)さんが騒々しく助けてくれたり、かわい…

  • 死後4年にして明かされる耽美系作家の死の謎とは 『木曜組曲』恩田陸

    こんにちは。 48歳にして初の部下なるものを持ちましたが、その結果、結構忙しくなってきました。 仕事の内容はまあ単調なのですが、教えるというのはやはり難しいです。居所に居る場合はオフィスに赴き、バランスシートや図を書いて説明できるのですが、オンラインで指示する場合、画面共有をしつつエクセルでブロックの図を描くとか、あるいは最悪口頭の説明となります。 自分でいうのもなんですが、次第にイライラしてきて、結局一定のカットオフタイムを設け、以降は引き取るという流れ。 結果、一日の8割くらいをべったりと教えつつ指示しつつ(進捗は期待値の2割程度)、残り+残業で改めてその仕事を期待値の10割にもっていく感…

  • 天才打者の短い一生を寓話的に描く 『あるキング』伊坂幸太郎

    50も近く、病気もあるので、徐々にですが身辺整理を心がけています。 最近進めているのは銀行口座でしょうか。かつては6つも7つもありました。80を超えた母親がかつて勝手に父親名義で作った口座を今処分できずにいる(父親は半ボケで家から絶対に出ない)のをみると、何かあったときに妻を困らせてはなるまい、と考えました。で、現在は3つまでに減り、来年いっぱいで1つにまで絞りたいと思います。 そういえばお金の細々としたことを教えてくれたFPという資格(CFP)。こちら年会費が高い(二万円!)わりに業務に直結せず、解約に至りました。この手の私的団体が主催する資格は会員代を結構取りますよね。引き続き諸々『見極め…

  • 独特な文体がくせになる、30代男性に親和性のありそうな作品 『パラレル』長嶋有

    そういえば、先日病院に行ってきました。 年初に、海外で軽度の脳梗塞を発症しましたが、日本で幾つかの検査を経て結果、予防的にバイパス手術をした方がよいとのことでした。なんでも、メイン動脈の血流がよろしくなく、そのための辺縁部の細かい血管が頑張り過ぎているそう。そのため、メインの血管の梗塞のリスクと辺縁部の血管の破裂(卒中)のリスクがあるそう。頭皮近くの元気アンドそこまで重要でない血管で全般的な血流を整えるって感じらしいです。 でもって、モヤモヤ病とも診断できるとのこと。これまだ徳永英明氏のり患で知った病気ですが、今更『そうだったんだ』って感じです(辺縁部の血管が血流検査で細かくカリフラワー状に撮…

  • 「心」「意識」があればこそ、世の中は楽しくまた辛い 『劫尽童女』恩田陸

    こんにちは。 長男の受験が突然終わりました。ラッキーなことに所謂帰国試験なるもので大学に拾ってもらえることになりました。 高校でも帰国試験、大学付属校なのにアホすぎて内部進学できず。そして大学入試も小論文と面接の帰国試験。 30年前の私。私大文系ながら一般入試で、一日十時間くらい千本ノックかの如く勉強をしていました。隔世の念がありますね。 馬車馬のように働かねば。 ひとこと 何となく「アキラ」っぽい印象。 何らかの目的のために「不自然に」生み出された生命。そんな生命が「私っていったい何なの」と自問するパターンです。 老成した小学生が自問する。私って何なの? 父伊勢崎博士に遺伝子をいじられたかし…

  • 美しく不穏な流れの中に、多様な解釈を包含する作品 『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ、訳:小野寺健

    長男の学園祭へちょっとだけ行ってきました。 そして顔見知りの部活のお母さまたちへ挨拶。一学年で9人も集まらない野球部で、うちを含め同学年は僅か3人。他の2名のお母さまにお会いできました。お話するのはもっぱら子どもたちの進学です。これからどうするのかと。 この3人のうち一人は海外進学なのだそう。すごいですよねえ。お金もそうですが、子供の心意気も。 SATも受験済み。現在early birdにて出願中。来年の9月入学だそうです。なんでも高校卒業時にはまだ進学先がきまっていないかもしれない状態もありうるとか。強いですよねえ。 高校生のマインド、30年前の高校生のものとは大きく変わりつつあるようです。…

  • 自動化する「組織」に対し、個はどのように反応・反抗するのか 『モダンタイムス』伊坂幸太郎

    皆さんこんにちは。 急に秋らしくなりましたね。部活で出ていた娘が、LINEで、「今日ご飯何?」「できれば鍋がいいんだけど」と送ってきました。それほど。 日本の秋は本当に美味い。かつて女子の食べ物と考えていた焼き芋ですが、今期より私も参戦。シルクスイートという品種に激ハマり中です。家で焼き芋にして毎日食べています。 加工せずそのまま火を入れるだけでおいしいって最高ですね。 ひとこと 今回も洒脱な表現にユーモアセンスあふれる作品でした。当初は展開の分からぬコメディかと思いきや、読み進めていくと政治ドラマやディストピアにとどまらない、「結局個々の人間の生きる意味って何なのよ」と問いかけるようなお話で…

  • マクロ経済学と歴史文化の交差点 『波乱の時代(下)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

    最近気づいたこと。 いつも本文の内容とは全く異なる「まくら」を書いてから感想を書くのですが、この「まくら」の部分が他のポストと関連していると思われることがあるようです。ウーム。 前回高校野球の本を読んだのですが、関連したポストとしてサミュエル・ハンチントンの本の感想が上がっていたんですね。案の定、ハンチントン氏の感想の「まくら」に、息子の高校野球のことがギャーギャー書いてありました。すみません。 今日も懲りずに、日常のことを「まくら」として綴ります。 今日は脳のCTの話をしましょうか。久々にCTをとってきたんです。CT撮るときって、造影剤を注射するのですが、造影剤を入れると一瞬で体がカッと火照…

  • 居酒屋で隣り合わせたオヤジが、実は業界のすんごい人だった、みたいな本 『小倉ノート』小倉清一郎

    しつこいようで申し訳ないのですが、今年は高校野球(甲子園)にドはまりしました。 神奈川県予選の準決勝を横浜球場で見て、その後決勝をテレビ神奈川で見ていました。横浜高校対慶應義塾、9回表のダブルプレー未遂(横浜高校)とその後の逆転ホームラン(慶應義塾)。その時何となく「慶應の優勝とかあるのかもねえ」とか思いつつ、以降バーチャル高校野球で神奈川代表を追っかけて、結局慶應の優勝。 私自身はどこかのファンでもなくどこが勝っても良いのですが、頑張っている選手の姿、これにハマりました。自分にもかつて、あれだけ頑張っていたものがありました(バスケ)。へなちょこでしたが、当時の鬼監督に生徒で団結し反発?しつつ…

  • 自分を塗り替えることでしか生きられなかった者への共感 『ある男』平野啓一郎

    私の在所には、日本映画祭というものがあります。 国際交流基金という独立行政法人が主催しており、主に日本の文化・芸術を広めるような活動をしています。で、そこで上映される日本映画が私のところですと大体300円くらいで見れます! ローカルの外国人ではないのですが、毎度ご相伴にあずかって見させてもらっています。 そして本作、今年当地で上映されたものです。映画がなかなかに心に響くものだったので、今回原作も読んでみることにしたものです。 ひとこと いやあ、面白かったです。 私は映画をはじめに見て、その後に本を読みましたが、どちらにも固有の面白さがあったと思います。そして両方とも鑑賞してもらいたいです。面白…

  • ガヤつく関西弁と美しく印象的な日本語、そして不思議ちゃん 『ふる』西加奈子

    ひとこと 私のお気に入りの一人の西さんの作品。 相変わらずぶっ飛んだ感じの作品でした。 気になったこと、幾つか タイトルからして「ふる」ってのは頭の中では「振る」?雪が? あるいはあだ名が「ふる」みたいな(古川とか古田)みたいな人が出てくるのかなと思いきやそうでもない。結局タイトルの所以は分からずじまいでした。 主人公はAVのモザイク掛けが仕事で、周囲の背後霊?というか後光?みたいな白いふわふわが見れるという池井戸花しす(いけいどかしす)。これまた漫才師の片割れみたいなウケ狙い的名前なのですが、物語では割とスルー気味。 関西弁で、周囲と緩く楽しくやってゆきたい花しす、人生の多くのところで新田人…

  • セントラルバンカー回顧録、現代史的にも面白い 『波乱の時代(上)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

    金融業界で業務に携わっているので、その業界のかたの回顧録は役に立とうと考え、ずっと積読しておりました。 実は一度トライは下のですが、マジで長い!そのため一か月かけても上巻の途中までしか行かず、忙しくなったりなんだリで挫折。今回は気を取り直して一から再読しました。 でも自信がないので、まずは上巻だけでも記録を残しておこうというものです。 概要 第13代FRB議長の回顧録。足掛け19年ものあいだ、FRB議長として国の金利や財政などの経済回りの政策をリード。政治の世界とも付き合ってきた氏によるメモワール。 どんな本? グリーンスパン氏。私の印象にあるのはリーマンショックの陰の立役者(ショック前の低金…

  • 息子と四人の個性的な父親、洒脱な会話とツイスト 『オー!ファーザー』伊坂幸太郎

    またもや面白い! もう毎回面白いのですが、面白さの説明に苦慮します。ボキャブラリーが貧しくて。 伊坂作品の良さ・面白さってどういえばいいんだろ? そう考えて思い浮かんだのは、「洒脱」、「ユーモラス」。我ながら悲しいほどの低表現力です。 で、裏表紙側の帯の言葉が、しっくり来ました。曰く、「軽妙な会話。悪魔的な箴言。息子を守る四人囃子」 てか、これほど的確だと、内容についてこれ以上書くことないよね。。。 多夫一妻のはなし!? 本作の設定はまたぶっ飛んでいますね。 私が住む国はイスラム教国で、イスラム教徒なら五人まで奥様を持つことが出来ます。まあ現実的には殆ど見ませんが。ほらやっぱりお金が、ね。 で…

  • 哲学的キャリア論!? 『だれのための仕事』鷲田清一

    昨年、まだ娘が中三であったときに購入した本作。 娘はキコクというくくりで、日本語力も英語力もどちらも未熟なローティーンでしたが、国語ではとりわけ論説文が苦手でした(多分今も)。大学受験でも往々にして出題されますが、小難しい日本語論、日本文化論、科学技術の功罪、みたいなトピックです。この論説文の強化の一環として何か良いものがないかなと考えておりました。 物語文については素晴らしい師匠との出会いがありました。重松清氏、瀬尾まい子氏、森絵都氏らの作品で彼女も日本語に慣れてくれました。論説文はねえ。。。。何しろ親が分かっていないといざというときに説明できないし。 ということで、本作は今から考えればミス…

  • ピースが連結してゆく快感 『楽園』宮部みゆき

    先日、家で仕事していると、ふと家内が背後に立ちました。もちろん、バックハグではありません。頭ポンポンでもありません。 どうやら私の頭に数本の白髪を見つけて大喜びしている模様です。 遺伝的要素もあろうかと思いますが、私、50手前にして薄毛の気配もなく、髪も黒い。3つ年上の家内は、年齢相応に白髪の束が出始め、「私と合わせてよ」と無理な注文をしているところでした。 ちなみに当方は、私が白で染める・いっそ剃毛するなどを提案しましたがすべて却下されました。 そんなさなかでの白髪の発見。白髪・老化で喜んでもらえるんなら安いものです。これからどんどん増えるんでしょうからね。嫁の平穏こそ家庭の平穏であります。…

  • 村上版ナショナルストーリープロジェクト? 『回転木馬のデッド・ヒート』村上春樹

    かねてから少しずつ実家の書籍を売却していましたが、ここにきて少し勢いがついてきました。 以前からちょくちょくご紹介している通り、居所での本の売却がするするとうまくいくようになってきたからです。 ブックオフで売却すると、特に古い本や人気のない物は5円とか10円でしか売れませんよね。こちらのメルカリ的サイトですと、同じ本が100円とか150円くらいで買ってもらえます。購入者のほとんどが日本語に興味がある方々ですので、ストーリの良しあし・話の筋等、十分にお伝えして、納得した上で購入いただいているという次第。こちらも鼻息荒く儲けようという気もありません(妻だけが「もっと高くうれるじゃん」とかうるさいの…

  • 悪党なのにいい奴。またもや驚愕の設定と展開 『残り全部バーケション』伊坂幸太郎

    自分の感触とあらすじを読んで、全く印象が違う・なんじゃこれ?という体験、お持ちではありませんか? 初めの十数ページを読んだ後、へーなるほど、と思う。そしてその後どうなるのかなと思い、改めて裏表紙のあらすじを確認する。え?そんな話なの?まったくそういう風じゃないじゃん!?てか、違う本のカバー読んでる!? それくらい読み始めとあらすじが異なった作品でありました。 そして、読後の強烈な『やられた』感、『そうくるか』のつぶやきに笑み。 実によくできた、伊坂幸太郎さんらしい作品でありました。 改:決意 えー、決めました。 突然ですが、今年は伊坂幸太郎さんの作品を沢山読むことにします(注:安く買えるものの…

  • アイデンティティを失う大国。他方で感じる大国のダイナミズム 『分断されるアメリカ』サミュエル・ハンチントン 訳:鈴木主税

    いやあ、甲子園、終わりましたねえー。 息子の部活引退をきっかけにドはまりした高校野球でしたが、非常に面白かったですね。汗、涙、信頼、結束。 なんだろ、一匹狼の私ですら刷り込まれている価値観に、涙目になりっぱなしでした。 普段出ないようなミスが大一番で出たり、動揺したり。でも高校生ですからね。ミスがでるという子供らしさがまた、一層選手たちを応援したい気持ちにさせます。はい、もう完全親目線です。 バーチャル高校野球には大感謝でありました。 ひとこと 少し時間がかかりましたが何とか読み終わりました。いやあ、面白かったです。 ひとことで言えば、アイデンティティ措定に苦しむ米国、とでも言いましょうか。米…

  • 死に深く魅入られた高校生が、殺人犯たちを追い詰める 『GOTH(夜の章・僕の章)』乙一

    突然ですが、私、古典が好きです。 誤解を恐れずに言うと、時の洗礼を受けた作品をこなすだけで私の読書人生はもう十分だ、と時に思います。 しかし他方で、だとすると私が今に生きる意味は何なのかとか考えてしまう、と。また、子供を読書教信者にするべく、彼らが読みやすそうな本も渉猟する、というお題目も堅持。ということで結局現代の作品も読んでいます。 ・・・このあたりの気持ちを深く掘り下げて表現してみたいのですが、時間切れにつきバッサリ削除。じゃあ書くなよって話ですよね。その通りっす。 ひとこと いやー、どうにもエグめな作品でした。 ラノベ、オカルト、猟奇的、このあたりの筋が好物ならばドンピシャです。 こん…

  • 運動というクスリで体も心も整える 『脳を鍛えるには運動しかない』ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 訳:野中香方子

    ちょっとした事件がおきました。 なんと、部下が出来ました。 50を目前にし、体も弱ってきて、やる気はもっと弱ってきて、仕事は自分ではなくてマクロ君に大半を任せていたところ、「そろそろオヤジさんの知識を引き継ぐかたも必要かなと」という上司のひとことで決定。 性格はかなり真面目で信用できそうな方ですが、金融業界経験なし、会計知識なし、日本語喋れず、統計知識あり、コーディング可、という方を採用。私が現在従事している、金融機関の計数・管理会計業務をお願いすることなりました。 とは言え、二日で疲れました。やはり一人で済ませる方が楽ですね。 ここから2年ほどは教えることが仕事になりそうです・・・。 教える…

  • 筆者のひととなりがわかる、仙台愛にあふれた一冊 『仙台ぐらし』伊坂幸太郎

    50年近いこれまでの人生で、2日だけ、仙台に行ったことがあります。 遥か昔ですが、東北大学(院生として)に行きたくて、一日は指導教官(になって欲しい)の教授にテーマの面談、もう一日は入試で。 結局、一蹴、という感じて箸にも棒にもかからず不合格。以来東北には踏み込んでいません笑 ということで今現在、私の人生における仙台率はざっと0.011%というところ。 にも拘わらず、以降なんだか勝手にシンパシーを感じ、それから伊坂氏の作品を読むようになりました。 そんな伊坂氏による仙台での暮らしを綴るエッセイ。伊坂氏のエッセイとは、珍しいですよね。 概要 仙台に拠点をおく伊坂幸太郎氏のエッセイ。 震災をはさみ…

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海外オヤジの読書ノート

40代、全く出世しない窓際おじさんが、成長し生き抜くために読書をします。その読書録。最近、生き抜くより息抜く読書が多めです。2014年から海外で生活しています。因みに奥さんは外人。

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