あたしはついに後宮へと足を踏み入れた。 自分の位置がどこなのかさっぱり分からない。 でも前に進むしかないのですもの。 あたしは誰かに見つからないかビクビクしながら廊下を渡っていく。 人気を避けながらドンドン奥に誘われるかのように入っていく。 そして前から誰かが向かってくるのに気がつき慌ててある部屋に入った。 丁度そこは命婦の賜る部屋の一つだった。 そこで命婦の衣装を手にし自分の衣装と取り替えた。 これで少しは周りに不審には思われないと思う。 でも、まだ日が高く人気が多くて身動きがしずらい。 あたしは仕方がないため階におり その床の下に潜り込んで夜になるのを待つことにしたの。 さすがに階の床の下…
鷹男があたしを助けてくれた理由は結局分からなかった。 鷹男の言いたいことなんてさっぱり分からない。 ドンドン混乱に陥ってしまう。 高彬はそんなあたしの不安を取り除くかのように抱き締めてくれる。 そんな高彬をしりめに、あたしは鷹男のことばかりを考えてしまっていたの。 結局あたしは一人にして欲しい そう言い高彬から離れてしっかり考えることにしたのよ。 今は一人。夜も深く周りはとても静かだった。 あんなに宴で騒がしかったのに夜も遅いためか 宴も終わり今は皆寝静まったかのように思う。 あたしは今すぐ気持ちを整理しないといけなかった。 明日には鷹男は東宮御所に戻ってしまうのですもの。 その前にあたしは鷹…
鷹男の出現に、あたしも馬鹿な見知らぬ男も驚きすぎて声もでなかった。 「こんなところで一体何をして居るのだ!権の少将!」 鷹男の声でこの男が権の少将だという事が分かった。 鷹男の声はとても冷たく凄く怒りに満ちていた。 その感情の意図があたしには分からなかった。 権の少将は殴られたあげく東宮の出現に 初めはおろおろしてとても滑稽だった。 そのままそそくさとこの場を立去るのかとあたしは思った。 しかし、少し考えたこの男は 急に虚勢を張りながら鷹男に話かけて来たの。 「と、東宮様こそどうしてこのような場所に現れたのでございますか?」 「そのようなことそなたに言うことではない! さっさとここを出て行け!…
鷹男が方違えのために非公式ではあるものの訪れたため三条邸では大慌て。 それでもさすがは腐っても貴族の名門。 鷹男を受け入れる準備はあっという間に終え今では優雅に宴を催し 楽があたしの部屋まで聞こえてくる状態となった。 鷹男が三条邸にいることは内密だとはいえ、 仮にも東宮様を迎える事が出来たんですもの。 盛大とまではいかなくても十分素晴らしい宴を催していると思うわ。 あたしは父さまにこんな機会はないから宴に参加しなさいと言われた。 でもそれは無理だった。 あたしは鷹男を忘れるつもりだったんですもの。 御簾越しとはいえ遠目でも見てしまったら何を思うか分からない。 今の気持ちをあたしは考えたくなかっ…
もうすぐ夏が終わりを告げようとしている。 それでも天気がいいとまだ暑く風があるから 涼しく感じるそんな季節だった。 あたしは部屋の中で居るよりも 端近に行き風を感じるのが今の日課だった。 部屋だと蒸し暑さを感じるけど端近だと風を感じ、 とても気分がよいのですもの。 ポカポカいい気分であたしは少しウトウトしていた。 でもあたしはすぐに目が醒めてしまった。 一体何事なの? あたしの周りには人の気配は感じない。 でも門周辺や西の対の屋あたりが凄く騒がしいのよ。 一体何があるっていうの? 今日は何も予定はないはずなのに誰かこちらに見えたのかしら? 不思議に思ったけど何かがあれば 誰かあたしに伝えに来て…
注意~やや時期が間違ってしまっていますが気になさらないで下さい<(_ _)> あれから毎日のように高彬は現れた。 以前は融と一緒に私のもとにきていたのに 一人であたしのもとにきて他愛無い話をして帰っていく。 唯それだけだったらあたしは高彬を意識することなんてなかったと思う。 でも高彬はあの頃とはうって変わって 積極的にあたしに誘い文句を掛けてくるの。 いままで弟としか思えなかった高彬の行動に、 あたしは最近ドキドキしてきたの。 下手糞な字であたしに送る御文。 文才のない歌を時々くれるけど、 下手なりに一生懸命考えてくれるその姿に感動し 段々あたしもその文に答えるべく返事を書くようになっていたの…
瑠璃さんが本気で愛した人は僕ではなかった。 驚いたことに瑠璃さんが恋した相手が東宮様だとは誰が思うものか。 瑠璃さんが誰かに恋した時僕はすぐに動かなかった。 まだ安心していたから。 瑠璃さんが僕以外を選ぶわけがないと。 そんな気持ちに支配され僕が恋の舞台に上がった時にはもう遅かったのだ。 僕以外に恋をする瑠璃さん。 そんな瑠璃さんを見る事が僕は辛くて いつのまにか三条邸に行くことも遠ざかっていた。 でも、それでも僕は諦めきれなかった。 瑠璃さんが僕以外を好きだとしてもそれでも僕の思いを伝えなければ。 ついにそう決心した時瑠璃さんの想い人と対面してしまった。 それも最悪な場面で! まさか相手が東…
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