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  • あとがき

    こんにちは、ウルカ。 こんにちは、こんな年の瀬にこの記事を読んでいる奇態なあなた。 約1年間、うぉぉぉぉと更新を繰り返してきたこのブログですが、取り敢えず本日をもって、最後の更新とします。 初めてブログというものをやってみましたが、文章で何かを表現することの面白さに少しだけ触れられたような気がします。 これは今後の俺の人生にとって絢爛なパーティクルとなり、頭上よりパラパラと降り注ぐ事はもはや疑念の余地もないでしょう。 年明け1週目か2週目あたりに再開するつもりもあったりしますが、音沙汰がない場合は、デュビアの祟りでのたれ死んだか、ミクシィ(←まだあるのかね?)とか他のフィールドへ迷いこんだと考…

  • ビッグシルエットの女

    こんばんはウルカ。 昨日の続きを書こう。 目の前を、何かの動物の着ぐるみのような素材で作られたビッグシルエットのブルゾンを着た女が、歩行者用の地下道におりていく。 酔っているのだろうか、ヒールのあるブーツを履いたあしどりはぎくしゃくとおぼつかない。 嫌だな… 夜、人通りのない歩行者用の地下道で、見ず知らずの女と2人きりで居合わせる事ほど気まずいものはない。 チラチラと背後を意識しながら早足になられたり、それこそ悲鳴でもあげられようものなら、怪しくも疚しくも無いはずの自分が、強引に怪しくて疚しい者に覚醒させられるようで、今にも自我が剥がれ落ち、内側から変質のエキスパートにしてエクストリーマーの自…

  • タンバリンは専用です

    こんばんはウルカ。 自分が生まれる以前から、当たり前のように存在するものに対しては、うっかり疑うという事を忘れてしまうね。 例えば、山や海の存在や形態を疑う人間は殆どいないだろう。 それどころか、数字、言語、傘、階段、自動車のタイヤ、カーテンレール、紙幣、メガネ、トイレ、風呂、音楽、上下関係、コラーゲン、道徳、焼きそばパンなど、人間がそれらしく拵えたモノすらも、その存在や形態を疑う者は少ない。 例えば、電車内でプラプラと揺れているつり革を見ていると、なんの疑いもなくあれを掴んでいる自分が恐ろしくなることがある。 つり革とは本当に掴む為のものなのだろうか。 もし、そうだとすれば、あれがベストな形…

  • クリスマスにはぶっ壊れた窓をダンボールで

    こんばんはウルカ。 そういえば、随分前にオオトカゲも良いけど、リクガメの事も書いてよ。というメッセージをいただいていたんだよ。 リクガメとは不思議な生き物だな。 攻撃力 : 1 防御力 : 68 素早さ : 2 H P : 73 弱点 : 寒さ、仰向け 得意技 : 鼻から水が飲める といったところか。 いったん仰向けになると、重すぎる身体と致命的に不便な甲羅の形状から、再び起き上がる事なく生涯に幕をおろす個体も少なくないそうだ。 荒野を魔物と闘いながら囚われの姫を助けにいかなければならない場合、完全に足手纏いとなる。 ただちにその場から退避しなければならない状況などでは、その意味不明な体重量か…

  • クソみたいな糞

    こんにちはウルカ。 以前にも書いたことがあるかもしれんが、今日を休日と名付けてしまうと、本当に、ただただ、休むばかりの、ほぼ意識を失ったも同然の今日となってしまう。 言葉の力というものは本当にすごいね。 とくに名付けるという人間特有の行動は、ライセンス制にした方が良いと思うな。 休日。 まあ、そんな日があっても良いのだろうが、過去を振り返らない、未来を見据えない事で有名な俺としては、極力今日を有意識で過ごしたいものだ。 それなのに、今朝のしょうもない同僚との電話の中で、うっかり言ってしまった。 「ああ、今日、俺、休みなんだよね。」 なんという失態。 「今日、俺、休み」という俺が発した言葉は、ゾ…

  • インドア派

    こんばんはウルカ。 「おじゃましまーす」 「はいはい、ようこそ、我が野へ」 ドアをあけると、そこには瑞々しい自然が溢れている。 マジもんである。 川が流れ、草木が元気に太陽の光をあびている。 牧草地を羊の群れが悠々と移動している。 頭上には、トビが気持ちよさそうに旋回をしている。 木の実を手に持ったリスが、僕の肩に登ってきて頬をふくらませている。 彼方には、雪をかぶった8000メートル級の山々がみえる。 「いやー、先輩、ひろいっすねー!気持ちいいっす!凄い!」 「あはは、まあ、ベースは8畳一間家賃9万円のボロワンルームなんだけどな。この広さでプラス月定額16万9800円なら、なんとか頑張ってみ…

  • 昏がりに埋まる

    こんばんはウルカ。 わたしの住む部屋からは、海がみえる。 わたしは潮の匂いがとても苦手だし、暗い海がとても怖いのに、大きなターミナルのある湾岸近くのさびれた港街に暮らしている。 職場の寮がそこにあるから。 洗濯物を赤錆だらけのベランダに干すと、たちまち生臭い潮干物になってしまうので、狭い部屋の中は吊るされた洗濯物がスペースの大半を占領している。 掠れた窓を覗く。 朝陽を反射した海面が、聖なる魔獣のように畝っている。 わたしは作業着に着替える。 うわべばかりの柔軟剤の香りに混じって、幽かに潮の匂いがした。 わたしは鼻で呼吸する事を諦め、自転車の鍵を手にとると、ひとおもいにドアをあける。 今日も、…

  • 枕のかわりにコーデュロイパンツをなげる

    こんばんはウルカ。 俺は今年最後の仕事を終える。 まるで枕投げか雪合戦のように皆で良いお年をという言葉を投げ合いながら職場を後にする。 フェイドアウトする良いお年をという言葉。 フェードインするエレベイターの静寂。 ビルを出るといつもの喧騒だね。 それでもクリスマスやニュウイヤーの騒ぎはまだまだこれからが本番らしい。 他の社会人と比べるとなんとなく早めの仕事おさめだろうか。 来年は1月6日から仕事のスケジュールが入っている。 他の社会人と比べると何となく同じくらいの仕事始めだろうか。 例えるなら、早寝、普通起きってところか。 早寝、遅起きが最高だとすると、2番目に最高なやつだね。 吉?中吉?な…

  • 騒がしいカフェ

    こんばんはウルカ。 いきつけのカフェがある。 日当たりの良い場所にアウトサイドスペースがあって、暑くも寒くも雨も風もない時季には俺にとって絶好のアイデア湧く湧くプレイスとなる。 ラップトップを持ちこんで、だらだらと過ごすのが好きだね。 仕事用に、そうじゃ無い用に、プチプチとアイデアが湧いてくる。 目の前には、まあまあ人通りのある露地と、味のある街路樹があって、よく鳥が遊びにくるのがとても良い。 暫くこの街を離れていた俺は、久しぶりにこのカフェを訪れた。 さすがに今日は寒いから、アウトサイドスペースにはダウンジャケットを着込んだアウトサイダーな欧米人くらいしか座っていないな。 店のドアを開けると…

  • 随分と最近のことしか書いてねぇ

    こんばんはウルカ。 カウンターで、ビールの入った瓶とビールの入ったグラスを、ビールの入った俺が、交互にみている。 この三者の違いは器の形だけで、内容物は同じラガー・ビールである。 EIZO・モニターに映し出されるピクセルみたいに、全部の原材料が詰まるところ全部同じだとすれば、瓶からグラス、グラスから俺、に注ぎうつされたラガー・ビールは、海水につかるクジラで、妖刀ムラマサで、杉田玄白で、雲で、オゾン層で、アフリカ大陸で朽ちおちたランド・クルーザーで、若大将の燃えてしまったボートで、樹海のあくびを響かせた大気で、合格して拳を突きあげるあの子の感情で、一発ギャグでブレイクしてしまった芸人の苦悩で、泣…

  • ひっつけてる

    こんばんはウルカ。 眉間に接触するほどにスマートフォンを顔に近づけている男がいる。 50代くらいだろうか。 スーツに甲羅のようなリュックを背負っている。 何をみているのだろう。 嬉しそうに笑っている。 水族館の水槽に顔にをひっつけて、ウミガメを夢中でみている子供を思い出すね。 あの男が眉間にひっつけているものは、スマートフォンなんかではなくて、水族館の水槽、又は海そのもので、悠々と泳ぐウミガメの群れを見ているのかもしれんね。 絶対そうだといいな。 今日のニュース 「二日酔いなので休みます」が許可されるイギリスの企業、事前の欠勤予約もOK ネコはアルミホイルが嫌いと良く聞くけど 本当かどうか検証…

  • タカラヅカ

    こんにちはウルカ。 最近は「アプリdeサプリ」が世界中で人気だね。 先ず、スマートフォンの中で冒険をする。 迷宮を弄り魔獣や魔王を倒したり、地下を弄りアイドルを育てたり、ゴミ箱を弄るホームレスとなって骨肉の縄張り争いに勝利したり、リズムにあわせて絶妙のタイミングで太鼓を叩きながらヨイトマケの唄を歌うなどして、アイテムを集める。 集めたアイテムを調合してサプリを作る。 現実世界にもどり、コンビニエンスストアに設置されているポッピーという端末でアプリで調合したサプリをプリントアウトする。 サプリを飲む。 凄いことになる。 という流れである。 犬族を超える聴覚嗅覚サプリ 急速アルコール分解サプリ 寒…

  • 黒い犬

    こんばんはウルカ。 中国大陸にある大きな都市の路上に立っている。 脂の腐ったような臭いのする街。 道沿いに沢山の檻が並んでいて、ペット用と札が下げられた犬々が売られている。 客に犬売りがアブラガノッテオイシイヨと話している。 客と犬売りがニタニタと話す真下の檻に閉じ込められた黒い犬が、真っ直ぐにこちらを見ている。 俺は、すみません、この黒い犬、幾らですか?美味しいですかと犬売りに聞く。 犬売りは三千元ダヨ。あんた日本人かなにかかね? と言う。 食用にしては高いねと俺が言う。 ペット用だよ、ラブラドールレトリバーだよ、イングランドだよと犬売りが言う。 ああ、そうですかと俺は三千元を払う。 あの時…

  • 雨という忖度

    こんばんはウルカ。 ガリガリ君・レーズンバターサンド味を食べた事があるか? あれはもはやガリガリ君自体の割合は数パーセントであり、隠し味程度にしか残っていない。 それなのに、最終的には間違いなくガリガリ君という存在で完結しており、見事にレーズン・バター味を従えている。 数や量では決して敵わないものが、この世には存在する。 それは概念という物体であり、質的評価という現象であり、寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよ、という戯言である。 アンドロイドが夢をみるのかどうかは知らんし、オオトカゲに情けがあるのかどうかは依然としてわからんが、人間はこの寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよ、という戯言に縋って生きている…

  • 家電の月

    こんばんはウルカ。 洗濯機を買ったぜ! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「貴方の用途にぴったりハマるのはこちらです。間違いありません。寧ろ他の商品は貴方にとってクソです。見る価値すらありません。とっととこの年末売れ残りセールのヤツを買っていきやがれよ。私は忙しいんだよ。」 と、目は口ほどにものを言うという言葉の生き証人度を競う世界選手権があれば、銅メダルくらいには食い込めそうな店員のクソな営業スマイルに、逆に心を動かされた俺は、まんまと洗濯機を買ったぜ! 最近の販売手法は輪をかけて巧みなんだな。 なんかこの前も掃除機を買った気がするぞ… 今月は家電の月…

  • すずめ

    こんばんはウルカ。 僕は電車の先頭車両に乗るのが、子供の頃から大好きなんだ。 ほら、他の車両の乗客よりも真っ先に新しい場所へ進んでいるってことになるでしょ。 僕はいつも先頭車両の一番前の隅っこの壁に張り付くように立つよ。 必ず後ろ向きにね。 ほら、前を向いてしまったら、僕よりも先に運転士さんがいるのが悔しくなる。 それに、線路脇やホームから電車に飛び込んでくる無垢な犬や、哀しい人間と目が合うのが怖いんだ。 君も、僕とおんなじだろ?だから先頭車両の先っぽで後ろ向きに壁に張り付いているんでしょ? でも、そこは僕の場所なんだ。 悪いけど、どいてくれるかい? 40歳前後だろうか。 クリーム色のダウンコ…

  • 茫然モノサシ

    こんばんはウルカ。 街を歩いている。 俺の家にいるデュビアの大群よりも遥かに夥しい人間の群れがモシャ〜と蠢いている。 宝くじ売り場に、喫煙スペースに、駅ビルや街路樹やいかがわしいネオンの灯りやバス停や自転車置き場に。 横断歩道のシマシマが、点滅する緑青色の信号の光を反射して、人々を尚更不気味に演出している。 中でも何故か独りで笑いながら横断歩道を走っている奴は、とびきりキモく見えるな。 何が面白いのだろう。 毎朝、俺にピンセットで摘まれて輪廻転生するデュビアと、街ゆく人々の生命は、どのくらいに価値が違うのだろう。 街ゆく人々が俺にとってピンセットで摘まめるサイズだった場合、デュビアと同じ生命の…

  • 小柄なシロクマ

    こんばんはウルカ。 電車に乗っている。 まあ、空いているかな。 皆、忘年会に忙しいのだろう。 オリーブとグレーの中間の色の髪をした異常に痩せた男がスマートフォンに向かって顔を顰めている。 スマートフォンはその顰めっ面に応えるようにブルーとホワイトの中間の色をした光をじんわりと放つ。 その顰めっ面の男のとなりで、小柄な女がトートバッグを弄っている。 何を探しているのか、なかなか見つからないようだ。 どうした、鍵でもなくしたか? トートバッグの中でせわしなく動いていた小柄な女の手がとまる。 小柄な女がゆっくりとトートバッグから取り出したのは、小さなシロクマのイヤリングだった。 小柄な女は安心したよ…

  • 真太郎

    こんばんはウルカ。 選択機というものがある。 コートの色に迷ったとき 昼食のメニューに迷ったとき 贈る言葉、かける言葉に迷ったとき 進学先、就職先に迷ったとき T字路や樹海の獣道に迷ったとき など、人生の岐路に立たされた者の心強い味方として昔から人々に親しまれてきた。 近年では医療メーカーの参入により、人体に埋め込むタイプの選択機が人気を博している。 先月、業界最大手のサニーが満を持して発売した選択機は、高級ブランドのメルメスとのコラボということでも話題となっている。 このラグジュアリーな選択機をなんとしても手に入れようと、富裕層のみならず、国内外の転売屋、キャバ嬢、学生、サラリーマン、サラリ…

  • エキスパート・ロング

    こんにちはウルカ。 クレジットカードを入れてください。 薄いピンク色で頼りなさそうなプラスチック製の箱には、クレジットカード挿入口と暗証番号を入力するためのプッシュボタン、クレジットカードを入れてくださいと書かれたガムテープが貼り付けてある。 私は飛行機と電車とバスとタクシーを乗り継ぎ、さらに車の入れない山道を8時間歩いて、やっとのことでこの薄いピンク色で頼りなさそうなプラスチック製の箱にたどり着いた。 断崖絶壁の頂点にたつその箱の前で私は、ポケットからクレジットカードを取り出す。 それからその箱のクレジットカード挿入口へ入れ、暗証番号を入力する。 ひと息おいて、確認と書かれたボタンを押す。 …

  • バタバタ

    こんばんはウルカ。 年の瀬だね! 年末になると何故こうもバタバタとするのだろう。 尋常ではないほどのマイペースな社会人として有名な俺を以ってしても、やっぱりバタバタしてしまっている。 メールは登っても登っても増える永遠の階段のように未読が積み重なり、電話はドンキ・ホーテのテーマみたいに鳴りっぱなし。 会社内をふらつけば「平山さん、ちょっといいですか?」「平山さん、急で申し訳ないんだけど」「平山さん、ごめん、もう一件いそぎの案件が入った!」「平山さん、もうだめだ…」とテンパった皆様から声をかけられる。 もうね、いやなの。 俺はね、のんびりと過ごしたいのよ。 「平山さん、、」 なに!? これ以上、…

  • ずぶ寒

    こんばんはウルカ。 冬だね。 毎年のことだけど、冬の街でのベストな服装がわからん。 職場や地下街は暖かく、混雑している電車のなかは上着を脱ぐ余裕もなく暑くて臭え。でも外は寒い。 居酒屋の出入り口付近なんてのは、とうとう自分がいま寒いのか暑いのかすらわからなくなる事があるよ。 まあ、夏はその逆なんだけれども。 温度さんよ、もう少しわかりやすくなってくれないか。 例えば雨なんてのは水の粒が空から降ってくるわけよ。 一目瞭然だよ。 濡れたくなければ傘をさす。 たまにずぶ濡れになって感傷にひたるのもそれはそれで良いだろう。 空から寒という字が降ってくる。 凍えたくなければ、鏡をさす。 鏡で反転された寒…

  • 牡蠣鍋にダイソン

    こんばんはウルカ。 今昼は、ローラー・スケートをかついで公園へ行ってきたよ。 俺が最近愛用しているローラー・スケートは、ローラーが縦に四つ並んでいるような平成的仕様ではなくて、自動車のように四角に一つずつ配置されている昭和的仕様のやつだ。 白と変なグリーンと紫の配色でなかなかイカしている。 公園内にあるインライン・スケート場につく。 そこは真夏のビーチのように身動きが取れないほどの混雑ぶりで、皆はただ茫然と水に浸かる海水浴客のように、飛ぶことを忘れた鳥のように、本来のスベるという目的を完全に見失って、様々なタイプのローラーの付いた靴や板の上に乗ってその場に佇み、あんぐりと大口をあけておる。 こ…

  • 自分から見た自分の表は裏向き

    こんにちはウルカ。 覗き見防止フィルムというものがある。 スマートフォンなどに貼って、正面から画面を見る本人以外は何が映し出されているのか見え難くするものである。 俺は以前電車内でババアに執拗にスマートフォンの画面を覗き込まれて以来、この覗き見防止フィルムを貼っている。 このように他人のプライバシーを覗き見ることを生業としている者へのシールドとしての活躍は勿論のこと、スマートフォンを、プライバシーを、公共の場で発光させる側としてのマナーでもあると思う。 スマートフォンの画面は発光しており、チラチラと動画などを再生していると、いやでも目がいっていまう。 意図せず他人のプライバシーを覗き見してしま…

  • 移動中にミュージックを楽しむこと

    こんばんはウルカ。 車窓の枠のなかで凍える街が背後へとながれてゆく。 列車の中、ワイヤレス・イヤフォンでミュージックを聴いている。 青緑色の座席の足元からは、暖かな空氣が循環していて、眠気をさそう。 おそらく、世界で13番目くらいに心地の良い場所ではないだろうか。 スマート・フォンのスマートなミュージック・シャッフル機能が、次の曲を再生する。 眠気を吹き飛ばすようなゴキゲン・ダンサブル・ナンバーだ。 私は思わずボリュームを上げる。 身体が自然に動き出す。 私は思わず肩と頭をミュージックに合わせて揺らす。 ふと、通路をはさんだ隣の青緑色の座席に座る老人が足でリズムをとっているのが視界に入る。 彼…

  • マリオネット京子の亡骸

    こんばんはウルカ。 ワンルームの部屋。 日曜の朝の陽が、遮光のカーテンの隙から洩れている。 殺し屋名鑑2019年度版をみている。 デニーズ片山という殺し屋の紹介に目をとめる。 国籍 無記入 年齢 無記入 性別 無記入 身長 無記入 体重 無記入 学歴 無記入 資格 無記入 憎い者を残虐無惨に殺します。 完全合法・後腐れ無し・オーガニック・美肌効果あり わたしは早速掲載されている連絡先に電話をする。 「はい、片山です。」 「あの、殺して欲しいんですけど」 「はい、お殺しのご依頼ですね、住所をお知らせください。」 「ああ、殺して欲しい人の住所ですか?」 「いえ、あなたの住所です。」 「え...」 …

  • 同乗のタケ

    こんばんはウルカ。 忘年会の季節だね! 殆どの会社は訳も分からず、いや、訳を考えようともせず、年末の最重要行事よろしく忘年会を執行することだろう。 昨今、どれほどの人間が会社で催される忘年会や新年会、慰安旅行などを望んでいるのだろうか。 「まあ、これも仕事のうちだから」 と渋々参加している新卒採用の連中をみると、いたたまれない気持ちになるよ。 面倒な職場の人間関係を延長戦的にプライベート時間にまで強要される。 早く帰ってニンテンドーをプレイしたり、何かしらの動画を見ながらゆっくりと風呂にでも浸かりたいに違いない。 いらっしゃーい! あら、毎度! 2名さま? 少々お待ちください、 すみませ〜ん、…

  • 家族の風景

    こんばんはウルカ。 驟雨が、金属色の冷蔵庫を濡らしている。 空き地に仰向けで横になった金属色の冷蔵庫は、吹っ切れたように清々しい。 雨滴が金属色を乱反射させて、やわらかなグローが冷蔵庫をつつむ。 もう四六時中、低く呻りながら何かを冷やし続けることもないだろう。 隣に転がっている鶯色のソファとは仲良くやっているのだろうか。 男が、左足を引き摺りながら歩いている。 男の褪せた色のコートは、雨滴で肩から順に焦げたように黒く変色をはじめている。 空き地をじわりじわりと進む男は、あの冷蔵庫へ向かっているようだ。 男はやっとの事で冷蔵庫に辿り着くと、扉に手を掛ける。 低く呻りながら冷蔵庫の扉を引き開ける。…

  • 平山ダイジェスト

    こんばんはウルカ。 もう12月だね。 今年の2月から始めたこのブログもちょうど300記事となったよ。 過去を振り返らないことで有名な俺ではあるが、せっかくなので見返してみよう。 一筆書きのような記事ばかりで、鮮度が落ちると、いや落ちなくても、しょうもないものばかりだな! まあ、いいや。 自分の中でちょと気に入ったものを選んでみよう。 あれ、意外に多いな... 今日のニュース マクドナルドの“クリスマスラテ”、「写真」と『実物』の落差に思わず 現在地球上に生存する15の大型の鳥 犬?オオカミ?シベリアの永久凍土で発見された1万8000年前の動物の子どもの謎 そうだ、男ならロシアへ行こう。女性の数…

  • 世が開ける

    こんばんはウルカ。 夜が明ける。 雄大な山々が脈々とつらなっている。 険しい山頂付近は雪と氷でラムネ色に凍てついている。 ヒラヤマ山脈。 僕が立っているこの山も標高5000メートル級である。 カトマンジゥの町より入山して7日目、なんとか良い位置にこぎつけた。 前から数えて128番手か。 僕は列に並んでいる。 僕の前に、後ろに、勇敢な者々が、脈々とつらなっている。 勇者、魔法使い、商人、遊び人、おでん屋の親父、賢者、魔人、ダンピール、学生、狩人、ニート、キャバ嬢、歌手、サラリーマン、YouTuber、芸者、レスラーなど。 本日発売のブレインステーションの人気タイトル、ドラゴン・コマンドー16・初…

  • あしなが鳩

    こんにちはウルカ。 あしなが鳩を連れている。 シャルル・ド・ゴール空港は、相変わらずの混雑で、行き交う人々は外気の冷たさからか、頬をあからめている。 連れているあしなが鳩は、私に寄り添うように歩いている。 もうすぐ、離ればなれにならなければならない。 あしなが鳩は伝書鳩として有名な鳩である。 伝書鳩とは、鳩のもつ帰巣本能を利用して遠隔地から鳩に手紙や小さな荷物を持たせて届けさせる通信手段の一種である。 特にこのあしなが鳩は、脚力、飛翔能力、帰巣本能に優れ、20000km以上離れた地点から巣に戻ることができるといわれている。 また、あしなが鳩は名の通り、人間と瓜二つの長い脚を持っており、その愛嬌…

  • たった今飛んだ女学生は冗談

    こんばんはウルカ。 初めて訪れる都市の駅は、新品の自動車のような匂いがした。ホームにあるベンチには、膝をかかえるように男が座っている。キリキリとした寒さを、荒涼とした自己の時間軸を、何とか忘れようと、何とかやり過ごそうとしているのだろうか。少し踏み出せば、陽のあたるホームの尖端に出る事ができるのに。僕は膝を抱える男を後目に陽のあたるホームの尖端を目指す。 男がガタガタと膝をかかえるベンチから、ほんの数歩のところにあるホームの尖端に、僕は立っている。そこは陽光のあたるとても穏やかな場所であると想像していたが、実際は全くそうではなかった。針を含んだ鉄風が四方から吹き荒れ、断崖絶壁のホームの下には黝…

  • 移動中

    こんにちはウルカ。 移動日、というものがある。 文字通り、移動に邁進する日の事であり、出張が多い職種の人間には耳馴染みのある言葉だろう。 遠方などは、集合指定された時刻が夜中や早朝である場合、前日に移動を済ませておく必要がある。 業界ではこの行動を、前のり、先のり、先っちょのり、前パラダイス、前チャック半開、前ドエフフスキー賢治、先物ドM売買、先っぽファンタジー、わくわくごま塩ラーメン、前マイっチングまちこ先生などと呼ばれ、親しまれ、恐れられている。 いや、そんな事はどうでもよい。 わたしの仕事は、移動することであり、移動日は勿論のこと、移動週間、移動月、移動年など、中には入社以来、帰社するこ…

  • リサイクル

    こんばんはウルカ。 限りなく白に近いシアン色の細氷を含んだ風がふいている。 500デニールのナイロン・シェルのフードを目深に被って、凍結した道路を滑るように進む。 否、実際に滑っている。 ローラ・スケート・シューズを履いているからね。 滑倒を恐れ、滑りにくい靴を履いてビクビクと歩くよりも、滑りやすい靴の代表格にして最高峰であるローラ・スケート・シューズを履く事で滑りに磨きをかけ、凍結した道すらも肯定する、ツルツルに滑る危険な道すらも愛でる、そう、LOVE&苦難(L&H)である。 たとえ滑倒したとしも、それはレクリエーション、またはパフォーマンスの一環であり、灰色の街に色鮮やかな笑顔という花が咲…

  • 深いネイビーの暗くなる前

    こんにちはウルカ。 深いネイビーの一軒家があって、目の前にバス停がある。 深いネイビーの一軒家には、クロアチア人の同性愛者同士の男性カップルとその子供役として中国から連れてこられた6才の男の子が暮らしている。 とても幸せそうで、男の子もクロアチア人の男性カップルもよく笑った。 クロアチア人の男性カップルはどちらも入道雲のような体躯をしていて、いつも傷だらけだし、深いネイビーの一軒家にある小さな庭ではよく柔術の組手をしていることから、おそらく地下格闘家として生計を立てているのではないかと思っている。 わたしは近所に住む16才の女で、深いネイビーの一軒家の目の前にあるバス停から高等学校に通っていて…

  • だらしない施術

    こんばんはウルカ。 雨上がりの街は靄で白くでふやけていて、銭湯の脱衣所のようだ。 のぼせたビルの窓から洩れる灯は、普段よりも少しだけ赤い。 僕は速足で歩いている。 走ったり、自転車に乗れば、もっと速く移動することができる。 自動車や、飛行機に乗れば、もっと速く移動することができる。 でも、僕は速足で歩くことを選択した。 上をみたらきりがないからね。 クッションの良い自慢のスニーカーが、光沢色のアスファルトを蹶る。 僕は靄で白くふやけた街を歩きながら服を脱ぎ、全裸になる。 服といっても、もちろん比喩である。 心に着ている服を一枚ずつ脱いで、裸の心になるということである。 そもそも、はなから身体に…

  • イグアナのプッチンプリン

    こんにちはウルカ。 オオトカゲも良いけど、ゾウガメのことも書いてよ。 といったようなメッセージをいただいたので、今日はグリーンイグアナのプッチンプリンの事を書いてみよう。 グリーンイグアナのプッチンプリンは、数年前よりうちに居候している。 うち来たときには体長10センチメートルほどの明緑色のちっせえトカゲだったのだけど、今では1メートルを超えるでっけえ明緑色のイグアナとなった。 最終的には180センチメートル程になるそうだ。 その容姿は翼こそないが西洋の竜そのもので、姪っ子などはマジで口から炎を吐くと信じている。 イグアナ族は爬虫類の中でワニ族に次いで2番目に知能が高いと言われており、部屋に放…

  • ゲロうま

    こんにちはウルカ。 海外のフォトグラファーのブログに書かれていた。 「普段は滅多に写真を撮らない。しかし撮るときはフィルム100ロール近く撮る。そしてその期間は1年のうちわずか1ヶ月程度」 わたしも充電期間が必要かもしれない。 みたいなことが書いてある日本のブログを見かけた。 充電期間ってなんだ。 ものづくりに携わる人間はなにかと充電をしたがりがちだけど、俺は充電の仕方がわからない。 というかそもそも俺が充電式なのかがわからんぞ。 どちらかといえば、非充電式で電源ケーブルをさすところがなきゃ役立たずの冷蔵庫みたいなタイプではないかと心配になってきたよ。 みたいなことを3軒目の飲み屋で泥酔気味の…

  • 大蜥蜴とマリーゴールドの花

    こんにちはウルカ。 オオトカゲの食性は、大多数が肉食である。 中には草食性のイグアナや、フィリピンの秘島で発見された体長が2メートルを超えるのに体重は10キロにも満たないフルーツを主食とするオオトカゲもあるが、コガネオオトカゲであるウルカはゴリゴリの肉食であり、サニーレタスなどはうまく消化する事が出来ない。 飼育下のオオトカゲは総じて肥満傾向にあるそうだ。 これは運度不足と、自然下ではなかなかありつけないような産まれたての仔マウス、ウズラ、ヒヨコちゃんなど、高栄養な食事をガンガン与えられているのが原因だといわれている。 爬虫類女子!ベッドで一緒に寝ています!などとインスタグラムに写真をあげてい…

  • 群衆の先頭に出る

    こんにちはウルカ。 折りたたみ式のソファーを、脇に抱えて颯爽と歩いている。 茶色の長髪を靡かせて、重量20キログラムのソファーを軽々と、涼しい顔で。 すれ違う人々の羨望の眼差しが、心地の良い電気刺激のように私につきささる。 私はこれから、脇に抱えた折りたたみ式のソファーというサーフボードで、群衆という波に乗るために、新宿駅というビーチへ向かうプロのサーファーである。 季節外れのハーフパンツを履いた私は、駅の階段を軽やかに登る。 朝から足取りの重いサラリーマンなど、おいてけぼりである。 ホームに着くと案の定、通勤群衆という名のビッグ・ウェーブが緑色の電車へなだれこんでいる。 群衆はホームに立つ私…

  • 天鼠の木

    こんにちはウルカ。 紅葉の季節だね! 木の葉は、死が近づくと紅くなる。 それから完全に戦力外となると、見放され、枝から切り離される。 枝から切り離された木の葉は地面に落ち、微生物や虫や動物や雨や風や光にバラバラにされ、自分を切り離した木を支える土となる。 どれだけの木が、戦力外だと見放した葉が自分を支える土となって、やっぱり戦力として活躍している事に気がついているのだろう。 口笛を吹きながら自転車に乗っていると、一枚のコウモリがひらひらと落ちてきた。 冬が近いな。 木から戦力外と判断されたコウモリが切り離されている。 コウモリの木の葉は、死が近づくとコウモリとなる。 枝から離れたコウモリは地面…

  • 飼育記

    こんばんはウルカ。 お前、生卵が好きだったんだな.... その口のかたちで、皿にといた生卵を啜って呑むことができるとは、俺はびっくらこいたよ。 トカゲの口にも啜るという機能がついているんだな。 もしかして本気出したらざる蕎麦とかも啜れるのか? まあ、卵はカロリー高すぎだろうから、偶にやるくらいにしよう。 今日のニュース 地球上で一番生命の少ない場所は?生物が住める限界を調査 ワームホールを利用して雨を降らせる装置を開発したと主張する発明家、農民たちを騙していると物議 切断した指の接合手術のため病院に向かうもタクシーに指を忘れあわや手遅れに 2羽のつもりが1000羽だった!ネットオークションでニ…

  • クラマ

    こんばんはウルカ。 クラマは、古くから人間の移動手段として、住居として、家畜として、ペットとして、友人として、奴隷として、ビジネスパートナーとして、寄り添うように共存してきた。 クラマは、種により様々であるが50年から80年ほど生きる。 中には300年以上生きる種もある。 クラマは、総じて単為生殖の卵生であり、直径1.5mほどの卵から孵化すると、すぐに時速70km以上の速さで移動する事が可能である。 現在の地球環境ではクラマの卵を自然孵化させることは不可能であり、専門の施設と技術を持ったブリーダーが全国に点在している。 対人間、クラマ同士のコミュニケーションは光、または闇を振動させることでおこ…

  • もう、十字架

    こんばんはウルカ。 先ず、とても社会的かつ野生的な色の封筒、そう、薄いブルー・アンド・グリーン色の封筒がデスクにそっと置かれる。 クリスマスの朝の目覚めのようなトキメキを感じながら、俺は封筒を開けると日取りをチェック・イット・アウトする。 なる程、2週間後か。 少なくともあと4キログラムの減量が必要だな。 そうとなれば、こうはしていられない。 俺は隣に座る同僚のタケに、ちからいっぱいデコピンをかますと、うぉぉと職場を飛び出す。 そのまま、うぉぉぉと街を駆け抜けて森へ入り、枯れ枝と枯れ葉で小屋を建て、目の前の小川にて、街を駆け抜ける途中の上州屋で購入した竿と糸と針となんか気持ちの悪い餌蟲で釣りを…

  • 想像という実体の断片化の

    こんにちはウルカ。 昨日はLEGOの事を書いたけど、そろばんや囲碁もデジタル機器に入るらしいな。 デジタル機器には必ず電源があるというわけではないようだね。 デジタルの利点、特徴として、劣化しない、複製が容易、軽いデータ量、というのがあるが、そう考えると言葉、特に書物はデジタルの優位性を持っている。 作者が実体や想像というアナログを言葉というデジタルに変換して書く、読者は言葉というデジタルを読み込んで想像というアナログに変換する。 デジタルのデータ量が軽いのは、アナログを断片化して、本当に余分なのかはさておき、余分な部分を切り捨てているかららしい。 書物の場合、音や目に見える光、匂い、肌に触る…

  • サイズ

    おはようウルカ。 LEGOというものがある。 カラフルなブロックを組み合わせて、動物やお家やロケットをつくって遊ぶことができる。 あのブロックのひとつひとつを目に見えないほど小さくして、色数を65,536色くらいに増やす。 その細かなLEGOで正確に作ったキノボリカンガルーやベンガルハゲワシは、人間の目には実物として映るだろう。 上級者は関節や内臓、脳や魂までもブロックで形成して、本物と同然につくりあげるようになるかもしれない。 問題は、ひとつひとつのブロックが小さすぎるということ。 「見えない、持てない」では、LEGOの魅力が半減してしまう。 開発首脳陣は、あたまをなやませた。 製品化は、ま…

  • ボルネオオランウータンの幽か

    おはようウルカ。 随分前に、といっても数ヶ月程度だと思うけど、このブログにパタパタ時計を買った話を書いた。 遡って調べるのが面倒だけど、遡ろう。 これから書く事に関わるからな。 おう、おう、遡ってきましたよ。 パタパタ時計を買ったのは今年の5月26日だった。 あれからもう半年か… このパタパタ時計は、セイコーというメーカーの1980年代に製造されたデッドストックだそうだ。 まあ、数千円で買ったので、高い買物ではなかったのだと思う。 寝室で使っており、1分進む毎に、スサッ…って、ほんとうに幽かな音がする。 これがなんとも気にいっている。 時計の音はチクタクだけではないのだな。 さておき、このパタ…

  • 死と毛布の間に

    こんばんはウルカ。 自分がメインの会議中とか、重要っぽい時に、ふと浮かんでしまって、どうしても頭から離れないことがあることって、あるよな。 頭で生卵を割る、手が滑って卵が床に落ちる 卵で床が汚れちゃった 生卵で頭を割る、卵が滑って床が卵に落ちる 床で卵が汚れちゃった 俺は今、社内向けのプレゼンをしているのだけど、これが浮かんでしまい、具体的な映像まで脳内でループ再生されるという状況に陥っている。 特に「床で卵が汚れちゃった」ってフレーズが気に入っている。 うわのそらのプレゼンに、誰が心を打たれるだろうか。 同僚が、彼のパートをプレゼンしている隙に、恰も資料を整理しているかのようにこれを書いてい…

  • 面として僕に対に対面と面として面の僕に

    こんばんはウルカ。 クモハ289ー303に乗っている。 バッグから丸めたナイロン製の上着を取り出して羽織る。 雲が、大陸のように空にある。 雲色の大陸を太陽が半ば透過するように照らしている。 太陽は、雲よりも随分と小さいものだと思っていたけれど、反対で、雲など比べ物にならないほどに太陽は大きいらしい。 遠くに見えるあの親指くらいの樹木が、本当は見上げるほどに高いのと同じことなのだそうだ。 この足元の陸とあの雲では、どちらが大きいのだろう。 本当はとても大きなものも、遠く離れれば小さくなる。 それは目に見える大きさだけでは無くて、音も、匂いも、温度も、優しさも、悪意も、哀しみも、愉快も、痙攣も、…

  • 奈津江

    こんばんはウルカ。 タクシーが、雨粒で不透明になったフロントウィンドウをワイパーで拭っている。 扇状に雨粒を拭われたフロントウィンドウは、車内の湿度でやっぱり不透明のままで、 タクシーは半ば投げやりにウィンカーを灯したり消したりしている。 後部座席には、サイドウィンドウを貫通しようとする街の明かりを、髪の長い人影が遮っている。 乗客がいるのだろう。 私という主観は同時には一つしか存在しないので、雨粒や湿度で不透明になったタクシーの車内を感じるには、交差点でウィンカーを灯したり消したりしているタクシーに駆け寄り、ドアを開け、乗り込む、または後部座席に乗っている髪の長い乗客の身体を借りる必要がある…

  • グランディーバ・マッシヴ

    こんばんはウルカ。 駅前に、行きつけの寿司屋がある。 昔ながらの江戸前寿司を謳っているが、大将は南国出身だったりする。 カウンターと、奥に4人がけの席が五つくらいの店。 俺はこの店のカウンターで、本やら動画を持ち込んでは昼間からだらだらと過ごすのが好きだ。 なんの変哲もない日常にこそ幸福があるというやつである。 なんだかんだで、ひと月ぶりに訪れると、店内の雰囲気が少し変わっており、なんとなく小綺麗になったような、なっていないような… よく見ると、各席にはタッチパネルが置いてある。 おお、大将、とうとうここもタッチパネル導入ですかいな? へい、いらっしゃい!お兄さん、そうなんですよ! 時代ってや…

  • 口から出しなさいよ

    こんにちはウルカ。 おい、ウルカ、それは食料ではない。 旨そうにみえるかもしれんが、違うんだ。 俺のペットなのだよ。 ほら、人間でも食用家畜をペットとして可愛がっている奴がいるだろ? あれと同じ感じで接してくれる? おい、だから喰うなって。 口から出しなさいよ。 よし、キモい前置きはさておき、人類が爬虫類飼育にハマるきっかけとなる入門的存在のヒョウモントカゲモドキ a.k.a レオパードゲッコーについてふれよう。 ヒョウモントカゲモドキ a.k.a レオパードゲッコーは、うちにも数年前より3匹ほどが滞在しているが、その可愛らしいルックス、超スローな動き、人慣れ、無体臭、鳴かない、泣かない、寿命…

  • 世界をすくう

    こんにちはウルカ。 随分と人口が増えたね。 陸や海も汚れてきたし、石油も減る一方だよ。 高層な建物を乱立したり、道や列車のダイヤを増やすよりも、地球をコピー・アンド・ペーストで3つに増やそうよ。 3つの地球は団子みたいに並んで太陽の周りを公転すれば、特にだれにも迷惑かからないんじゃない? それは良いね!そうしよう、そうしよう。 でもさ、地球をコピー・アンド・ペーストしたら、人間もコピー・アンド・ペーストされちゃうから、同じ人が3人に増えて別々の星で同時に生きる事になって、騒がしい星が2つふえるだけじゃない? あっ、そっか。 すみませーん、生中、おかわり! 今日のニュース 動物でも光合成ができる…

  • 線路と線路の間の草叢

    こんにちはウルカ。 大きな街の駅が近づくと、何台もの列車が行き交うことができるように、線路の数が増える。 線路と線路の間に、小さな公園ほどの広さの草叢があるのがみえる。 その草叢には人の背丈ほどの草が鬱蒼と茂っており、なぜ手入れをされないのか不思議なほどである。 列車の走行に影響したりしないのだろうか。 私は上り列車の車窓から、なんの気無しに線路と線路の間にある草叢をみている。 職場に着いたらやらなければならない事の数を数える。 ランダムに、草がゆれている。 草は風でゆれることで種を飛ばして生命をつなげるそうだ。 全ての物事には意味があり、繋がっている。 ふと、草叢のなかで人影がみえた。 見間…

  • 正解電飾

    こんばんはウルカ。 無数にLED電飾を括り付けられた街路樹が、オフィス街に並んでいる。 夜になると冗談のように一斉にLED電飾が点灯して、辱めをうける街路樹たちは、何を想うのだろう。 私はそんな街路樹たちの下を申し訳ない気持ちで歩いている。 人間の中にも、私みたいにあなた達への仕打ちを申し訳なくおもう個体もいるのよ。 でも、私は無力で、なにもしてあげられないわ。 ごめんなさい。 コツコツと冷たいコンクリート製の路面と私のヒールが衝突する音が街の喧騒のなかでもはっきりときこえる。 私には、LED電飾を身体中につけて他の種族を愉しませろと言われたら、断る勇気があるのだろうか。 生きるためだからと自…

  • 同僚のタケ9%

    こんばんはウルカ。 層師という者がある。 層師は物事を重ね合わせて一つの物事をつくる職人である。 先ず、ベースとなる層を決め、それから重ねる層とその透明度を決める。 たとえば杉浦さんをベースにして、山本さんを透明度30%、ペルシャ猫を透明度10%、ビーフシチューを透明度9%、ゴンザレスを透明度1%で重ねる。 すると50%は杉浦さんで残りの50%は山本さんやペルシャ猫やビーフシチューやゴンザレスで形成される。 ただしこれは、杉浦さん本人以外の者からの見え方や感じ方であり、ベースとなる杉浦さんの100%が50%に削られるわけではないので安心!である。 対外的には杉浦さんは50%となるが、対内的には…

  • 濫觴

    こんばんはウルカ。 カタカタと窓ガラスが鳴っている。 こんな寂れた街の、今にも崩れ落ちそうなビルとビルの間にも、風が吹き抜ける。 気持ちよく吹き抜けることができる場所は他にいくらでもあるだろうに。 ものずきな風もあるものだな。 オレは掠れた革張りのソファーに転がり、虫食いのような模様が大変不愉快な天井板を見上げながら、非・電子タバコをふかしている。 テーブルには潰れたビールの缶と、随分前にキャパシティをオーバーした灰皿、それからタンバリン。 オレは4時間前、橋の上で不思議な動物を肩にのせた男からこのタンバリンを預かった。 不思議な動物を肩にのせた男は血塗れで、息が荒かった。 4トン車にでも撥ね…

  • 父親は10年間にひとりまで

    こんばんはウルカ。 ロレックスという腕時計をつくっているメーカーがある。 正規店で購入するには身分証明と登録が必要で、1度購入すると、同じ商品は5年間購入することができない。 さらに、同メーカーの他の商品についても1年間購入することができないそうだ。 ほかのものも全てそうしたらどうだろう。 靴も鞄も服も箸も自動車も洗濯ネットもギターもスケボーも束子もMacも爪切りも犬も父親も椅子も、1度購入したら5年とか10年とか20年とか、または一生に一度しか購入できない。 とすれば、購入者は大切に大切に使うだろうし、メーカーは品質を極限まで高めるだろうし、資源の節約にもなるだろう。 それでは、弟か姉でも買…

  • ラーダ・ニーヴァ

    こんばんはウルカ。 ロシア製のラーダ・ニーヴァというクルマがある。 俺は今日初めて実物をみたのだけど、形、サイズ感ともに凄く良いね。 本国ではプーチン氏も愛用しているとかいないとか。 信号待ちで隣になったラーダ・ニーヴァは白色で、左ハンドルの運転席には、拘りと蘊蓄がウザそうな顔つきの女が拘りぬいたであろう、ビンテージであろう帽子をかぶって座っている。 カーオーディオから流れる音楽はきっと下北沢あたりの雑貨屋風なのであろう。 俺のクルマよりもひとまわり小ぶりなラーダ・ニーヴァは、弱ったサイレンのような音を終始発している。 仕様なのか不具合なのかは分からんが、いつパッタリとエンジンが止まって、うん…

  • 軌条の上

    こんばんはウルカ。 軌条の上を歩いている。 地面と平行に両手をぴんとはって、平衡に平衡に。 軌条の高さは15センチメートルほど。 足を踏み外したとしても、約15センチメートル落下するだけである。 少し心拍が速まる程度のことだろう。 これでは刺激がない。 私は地面を、雲が流れる空ということにする。 軌条の下では雷雲に乗った小ぶりの太鼓をアーチ状にデコレートした雷神が、電々と太鼓を鳴らしながらブレイク・ダンスを披露している。 しばらくすると今度は絨毯に乗った褐色の肌をした三つ目の青年がやってきて、手にもつ金色の食器から出現した蒼い肌をした怪物と唾を飛ばしあうほど烈しく言い争っている。男女関係のモツ…

  • しるべ君

    こんばんはウルカ。 スマートフォンに顔をかざすと、俺というアイデンティティを認識して、セキュリティが解除される。 水色のアイコンをタップしてアプリ、しるべ君を起動する。 眉毛が矢印のかたちのキャラクター、しるべ君が挨拶をしてくれる。 「こんばんはタンバリン! きみの未知、未経験は以下の通りだよ! 今日のぼくのおすすめを見る?」 しるべ君は、俺というアイデンティティが未だ知らないこと、未経験なことを解析、リストアップしてくれる。 今夜、しるべ君がリストアップしてくれた俺の未知、未経験は386億2934万7452件だった。 昨夜は365億4754万9873件だったので、24時間で俺が未だ知らないこ…

  • 通称E・E・P

    こんにちはウルカ。 スポーツ選手とかってさあ、なんであんなに金もらってんの? 運動して試合に勝ったり負けたりして、子供が遊んでんのと一緒じゃん。 それ見て喜ぶ奴らがいるから商売になるんだろうけどさあ、病気を治すわけでもないし、食べ物生産してる訳でも、道を作ったりダム作ったりビル建てたりもしないだろ? 映画とか音楽とかゲームとか漫画とか小説とかアート?とかさあ、余計なもんつくって喜んでんの人間だけじゃん? そのせいで余分に金が必要になって争ったり騙したり自然壊して戦争とかもするわけじゃん。 ストレス解消とか精神安定のためにそんな事してんの? マジ人間って、知能高いけど頭悪過ぎじゃね? 感情たかぶ…

  • みんなで指をさして奇声をあげる

    こんばんはウルカ。 幼稚園に通っている。 お家の前で幼稚園バスに乗る。 ママにバイバイと手をふる。 午前中は踊りをおどって大きな柔らかい積み木で遊んでご飯を食べると昼寝をする。 目がさめると黄色い帽子をかぶって幼稚園の周りをせんせいと探検する。 どんぐりをひろう。 緑色の電車が遠くで走っているのが見えるとみんなで指をさして奇声をあげる。 それから幼稚園に戻ると幼稚園バスに乗ってお家へ帰る。 幼稚園バスが家の前に着くとママが待っていておかえりパパとチューをしてくるので少しいやがったふりをする。 週休二日で夏休み制度あり。 月給四十二万五千円。 賞与は年に二度支給される。 ねんちょうさんになると月…

  • しゃがみ頬づえサラリーマン

    こんにちはウルカ。 俺の通う会社の近所に、非常に小さなカウンター席だけのカレー屋がある。 席と席の間は相当狭く、気を抜くと隣に座る者に触れてしまう。 座席は固定式で、自分の好きなポジションで座る事もままならない。 更に、そのカレー屋がお待たせいたしましたと出すカレー皿は異常にデカい。 隣に座る者のカレー皿と干渉してしまうので、自分に対して真っ直ぐにカレー皿を置けず、おかしな体勢で食べることになる。 それでも、俺はこのカレー屋の常連である。 旨いからね。 カツカレーをおかしな体勢で食べていると、今朝も見かけたしゃがみ頬ずえサラリーマンの事を思い出した。 ここ毎朝、決まった場所、時間に、不自然にし…

  • マイルドな全否定にはシャープな握手を

    こんにちはウルカ。 ベスパに乗った青年が、荷台に海を乗せて信号待ちをしている。 「鮮海」と勘亭流フォントで書かれた荷台の海では、ザトウクジラがジャンプをして、海面に飛沫をあげる。 隣に並んで信号待ちをしていた軽トラックでシベリア大陸を運んでいるおっちゃんが、ハザードを点滅させると軽トラックを降りてベスパの青年に何やら話かける。 ベスパの青年は人差し指と親指でマルを作ってOKのジェスチャーをする。 軽トラックのおっちゃんは手を叩いて喜ぶと、服を脱ぎ、パンツ一丁になる。 それからシベリア大陸を積んだ軽トラックをえいやと左足で踏み潰して紅生姜色のサーフボードにかえると、小脇に抱えてベスパの荷台の鮮海…

  • 屋上の鳥獣店

    こんばんはウルカ。 デパートの屋上に寂れた遊園場があって、その隅にひっそりと鳥獣店がある。 私は妻と子を遊園場に放つと、以前から気になっていたその鳥獣店へ一人で向かった。 私は鳥獣が好きだ。 鳥獣たちと気儘に人生を過ごしたい。 自然豊かな土地に住み、小さな畑をやって、庭の先にある小川で釣りをする。 朝陽が昇る頃には野生の鳥獣たちに余らせた穀物や魚の肉をやり、薪を焼いた熱で冬を過ごし、いつか寿命が尽きるときには鳥獣葬で旅立つ。 鳥獣店や鳥獣園で鳥獣たちを眺めながらこんな空想をするとき、私は心から幸福な気持ちになる。 現実といえば、妻の鳥獣嫌い、息子のアレルギー、ペット禁止の分譲マンション35年ロ…

  • リルサとサロサ

    こんにちはウルカ。 臓物を透かせたレントゲン写真のような夜の空だよ。 あのビルやあのビルの灯りがもっと強ければ、臓物のかたちがはっきりと見えるのに。 箱型の段ボールから頭を出したリルサは、隣の明後日の方向を向いているサロサに説明した。 サロサは1週間前に盲目になった。 今はこれまで見てきたものの記憶とリルサの説明を合成して、像を網膜に映している。 人間は、ものを本来の用途とは違う使い方をすることがあるそうだ。 例えば錆びた釘を料理に使ったり、CDケースを蚊取り携帯線香入れとしたり、ゴキジェットの缶で直接ゴキブリを叩いたり、プリンに醤油をかけたり、肩甲骨と肩甲骨の間に五平餅を挟んだり。 一週間前…

  • 包み込むやうに

    こんにちはウルカ。 わたしは保湿の鬼なの 乾燥だけはマジかんべん 保湿ローション、保湿クリーム、保湿入浴剤、保湿ソープ、保湿ミラー、保湿マンション、保湿スマホ、保湿彼氏、保湿両親、保湿煎餅、保湿祖父、保湿ラサアプソ、保湿自転車、保湿ブランドバッグ、保湿suica、保湿ハイヒール、保湿アンブレラ 保湿には1ミリの余念もない 今日は保湿彼氏と電車に乗って、保湿アジアンカレーフェスティバルで保湿ランチして、保湿ミサンガ即売会、そのあと保湿ボルダリング教室 夜は、葛飾区・フリー・スタイル・保湿バトルに参戦するの 公共電車の空調って本当にイヤ 政府は何を考えているのかしら、こんなに乾燥させてしまっては人…

  • 凍えそうにしているつま凍えそうにし

    こんばんはウルカ。 部屋の隅に座っている。 白い部屋で、僕の周りには文字ばかりが敷き詰められている。 文字は当たり前のように真っ黒。 白い部屋にあいた意味を持つ穴。 こんなことなら、ソックスを履いて来るべきだったな。 僕は「凍えそうにしているつまさき」という文字を見てそんなことを思った。 つまさきは本当に本当に凍えそうで、それは見ているだけで腹立たしく不甲斐ない気持ちになった。 メリーゴーランドを思わせる、「メリーゴーランド」という文字は、真っ黒なのにとても煌びやかで、ぐいぐいと恐ろしいスピードで廻る。 僕は「メリーゴーランド」に乗っているはずの子供たちのことが心配になったけれど、僕の想像する…

  • 子供に戻れる製薬の開発を待っているところです

    おはようウルカ。 今日は祝日だと言うのに初めてのクライアントと打ち合わせがある。 キレイなシャツときれいなパンツ、綺麗なクツをはいて、ちょっと良い腕時計をつける。 それから、クソボロボロのバブアーを着たら、けっきょく浮浪者のようなルックスとなった。 まあ、つまるところ俺は俺だなと鏡を見て思う。 一応髭を剃って、笑顔の練習をする。 今日はYEBISUはやめておこう。 駅前でモルツを買う。 予報外に晴れた空の青が押しつけがましい気がするが、自意識過剰なのだろうか。 ここのところ、このブログについてメッセージをいただくことが多くなった。 ありがたいことです。 ありがとうございます。 コメント欄やブッ…

  • 袋ゴミ

    こんばんはウルカ。 分厚い雲にディフューズされた太陽の光が、限りなく平等に街を照らしている。 俺はアスファルトで舗装された道を歩いている。 緑茶のかわりにYEBISUを少しのんだ。 公園の角に集められたゴミ袋に、カラスがたかっている。 黒い鋭い嘴は伸縮性の低いカサカサとしたゴミ袋を突き破って、残飯やプラスチックや紙屑を丁寧に撒き散らす。 公園の角に集められ、丁寧に中身を喰い散らかされたゴミ袋たちの前を、女が嫌そうに顔を背けて通る。 人は、捨てられたコインロッカー・ベイビーや、イヌや、猫や、姥には手をさしのべるのに、ゴミの入った伸縮性の低いカサカサとしたゴミ袋には誰も見向きもしない。 ゴミは捨て…

  • 田中と工藤

    こんばんはウルカ。 ラグビーでビールを飲んでいたらこんな時間になってしまったよ。 明日が始まってしまう前に、田中と工藤の話をしておこう。 影色の鳥が、声を上げながら飛び過ぎてゆく。 ベランダ平線から、太陽が顔を出して僕の目玉に盛大なハレーションを発生させる。 僕は目を細めると、ソファの肘掛けから頭を少しずらして壁に画鋲で無理にくっつけた時計をみる。 時計は午前5時半をさしている。 またソファで眠ってしまっようだ。 だるい。 視線をテーブルの上にうつす。 流線型をしたスタイリッシュなケースが、築40年の古びたアパートの部屋で異彩を放っている。 親指2本分ほどの大きさのそのケースは、工藤龍司から買…

  • ほら、20年もすれば

    こんばんはウルカ。 ほら、此処に大きな建物がたつよ。 あの頑丈そうな沢山の鉄の柱は、骨だよ。 とても高い技術や計算で、あの鉄の柱は組み合わされているんだ。 あの頑丈そうな鉄の柱は、一本一本が正確で正解なんだよ。 おしまいにはきっと、綺麗な白い壁のピカピカの建物が此処にたつよ。 でもね、20年もすれば、ピカピカの白い壁は薄汚れて、ひび割れができる。 ほら、あの元気そうに自転車をこいでいるおばあさんも、20年もすれば、手押し車に凭れかかるように歩くのが精一杯になるよ。 あっ、可愛い仔犬だね、でもね、20年もすれば、老いて死ぬよ。 ほら、あの坂を不満そうに登っている若者も、20年もすれば、何が不満だ…

  • アルダ

    こんにちはウルカ。 先日うちに来たアルダブラゾウガメのアルダ(本当は胸焼けするくらい和風な名だけど、ここではアルダの方がウルカとあいが良いからな、あいが。)のことを書いてみよう。 ウルカ、お前は今週殆ど食事をとっていないね。 先週のあの旺盛な食欲はどうしたというのだ。 アルダをみてみろよ。 毎日、俺が1日に食うサラダを優に超える量の野菜をたいらげているぜ。 俺の100分の1程度の身体サイズしかないというのに、ヤバいだろ、あいつ。 あの水球のボールが拉げたみたいな甲羅のなかには野菜しか入っていないぞきっと。 アルダブラゾウガメはセーシェル(アルダブラ環礁)固有種で、6500万年前~2500万年前…

  • ノーマル・テンパチャリスト

    こんにちはウルカ。 肌寒くなってきたね。 クルマのエアー・コンディショナーについても、冷風より暖風を選択する事がふえたよ。 温度とは面白いものだよな。 一部を除いて生命が快適に暮らす適温は摂氏10°〜30°くらいだろう。 所謂常温というやつだ。 殆どの生き物がこの常温の範囲で生きている。 人間はこの常温に飽き足らず、食べ物を異常に高温にして熱々だねぇ〜なんて喜んで食べてみたり、飲み物をキンキンに冷やしてのどごし最高!なんて喜んでいたりする。 または、熱湯風呂に押すなよ押すなよと言いつつ飛び込んだり、高温サウナでロウリュをくらってすぐに氷入りの水風呂につかるなど、他の生物からしたら常軌を逸した狂…

  • 潤 潤(ルゥェン ルゥェン)

    こんにちはウルカ。 なあ、平山ちゃん、最近、何か欲しいものとか、やりたい事とか、ある? ああ? あるよそりゃあ、手っ取り早く金だろ、休みだろ、旅行へ行きたいし、うーん、いまなら、南米かアイスランドかなぁ、でも結局東南アジアが落ち着くんだよな、ははは! 良い感じの平家一軒家だろ、最新のライカレンズも使ってみたいな。 洒落た服やら靴も欲しいね。 それと、昔バイトしていた居酒屋がさあ、旨い松茸の土瓶蒸しを出す店でさ、あれ、また食いたいな。 あの店、もう潰れちゃったんだけど。 あとドラゴンとかティーカップ・アフリカゾウとかトイ・シロクマとかいたら飼ってみたいね。 中国大陸のどっかに実在する気がしてるん…

  • 欲欲(ユィーユィー)

    こんにちはウルカ。 余裕が無い方、予備余裕の携帯をおすすめします! 時間に... 心に... お金に... 置き場に... 体力に... ギガに... 携帯に便利な専用ポーチ付き⭐︎ お支払いは欲望で! 電子欲望にてお支払いいただいた場合、2%ポイント還元いたします! 株式会社 欲欲(ユィーユィー) 03-9475-xxxxx ねぇ、こんなチラシがポストに入っていたんだけど、最近太ってきちゃったから食欲でお金の余裕、購入しようかなぁ あたしの食欲、いくらになるんだろう? えー!いいな〜、じゃあ、わたしは物欲で時間の余裕購入したいな〜! わたしの物欲まじでヤバいから2年くらい時間の余裕買えそう!…

  • 大人用おじいさんウサギ

    こんにちはウルカ。 女店員がカラーボールを投げる。 大人用ポッピングで逃げる犯人は、高々と跳び上がって、女店員の投げたカラーボールを簡単にかわす。 犯人は空中でくるりと1回転すると、ドシャリドシャリと大人用ポッピングを弾ませて、あっという間に遠く小さくなった。 私は、任せなさいと女店員に言うと、大人用ジャングルジムにのぼる。 大人用ジャングルジムは大人用なので32メートルの高さがある。 私はシャツをまくり上げると、大人用変身ベルトのスイッチをいれる。 大人用変身ベルトは大人用なので本当に変身する。 私はヒーローに変身すると、とうっ!と大人用ジャングルジムからダイヴする。 私は空中でヒーロー飛行…

  • 50%グレイ人間

    こんにちはウルカ。 明るい部屋でマチコを歌うよ。 マチコはとっても暗い歌だけど、明るい部屋で歌えばフラットになるよ。 50%グレイ色の明るさだね。 そう考えると、透明に最も近いのは乳白色ではなくて、50%グレイ色なんだね。 そうだよ、光の三原色の世界では、50%グレイは中性色なんて呼ばれていて、あたかも存在しないかのようにあつかわれているよ。 限りなく透明にちかいね。 そうなんだ。 それなら、透明人間になりたい人は、先ずは50%グレイ人間を目指す事からはじめると、何かしらの手がかりをつかむことができるのかもしれないね。 でもさあ、煩悩とかフラットになった透明人間て、旨味ある? あれ... 今日…

  • ザァザァと記憶の枝を揺らしている

    こんばんはウルカ。 山道を、オートバイで走っている。 オートバイの排気音と風を切る騒々しい音が、辺りの静けさをよけいに深くしている。 すっかりと、夜が広がっている。 旧式のヘッドライトは目の前ばかりを照らして、辺りの暗闇をよけいに深くしている。 俺は、よけいにアクセルをあけた。 1000CCのOHVエンジンが、ギッタンバッタンとオートバイを加速させる。 森が、俺という異物を拒んでいるかのように、ザァザァと樹々が枝を揺らすのがみえた。 俺は道沿いの寂れた休憩所にオートバイを乗り入れると、ひと思いにキーを反時計回りにまわす。 オートバイは、キッパリと静かになった。 死にかけの蛍光灯がランダムに点滅…

  • 黒い光の糸

    こんばんはウルカ。 自分のことを小生って言うやつと、オイラって言うやつ、どっちが苦手? うーん、小生かなぁ。 てか、小生ってなに? なんか、へりくだった言い方らしいよ。 へぇ〜、僕なんて、ちっせぇ生き物ですって感じ? でもさぁ、どことなく偉そうでムカつく感じがするのは、小生、ちょっと難しい言葉知ってます感が滲み出ているからかなぁ。 ちっちゃいカエルとかが言ってたらハマりそうだね。 それならアテレコはやっぱり我修院達也がドンピシャだよね。 我修院達也といえばさぁ、昔、海に釣りに行ったきり行方不明になって、数日後に記憶喪失状態で発見されたらしいよ。 へぇ〜、ヤバイねそれ、ちょっと小生、その数日間や…

  • 生きることとは常に永遠につながるドアを探すようなものだ

    こんにちはウルカ。 やった事がないことを出来ない事と判断する奴は多いね、たしかに。 まったく、最近の若い奴らときたら… ムロさんはそう言うと、非・電子タバコに火をつけた。 ムロさんは、クラゲ結び職人である。 大海に浮かぶ夥しい数のクラゲとクラゲを結び繋げて、大きな大きな絵をつくる。 花や文字や顔や動物、龍やユニコーン、企業ロゴ、手の込んだシュルレアリスム表現など、なんでも御座れだ。 結び繋げたクラゲを海底から最新の照明機器やプロジェクション・マッピングで演出し、自ら操るドローンで撮影した動画、静止画をダヴィンチ・リゾルヴやフォトショップで編集し、ユー・チューブルにアップルすることもある。 伝統…

  • まさに水面にピロシキ

    こんにちはウルカ。 ゲリラ豪雨 ゲリラ豆腐 ゲリラ同封 ゲリラ交付 ゲリラ娼父 ゲリラ毛布 ゲリラ坊主 ゲリラむふふ ゲリラポンプ ゲリラ暴君 ゲリラ浩くん ゲリラ昆布 ゲリラ上手 ゲリラジョーズ ゲリラジョーンズ ゲリラ頬ずり ゲリラ雑炊 ゲリラ脳髄 ゲリラトンファー ゲリラ紀州のドンファン ゲリラおんぶ ゲリラごっつ ゲリラポーズ ゲリラポン酢 ゲリラとん平 ゲリラよねすけ ゲリラるるぶ ゲリラトング ゲリラチョップ ゲリラサップ ゲリラゴブリン ゲリラ忖度 ゲリラゴン太くん ゲリラコンプライアンス野郎 ゲリラあげみざわ ゲリラ高見沢 ゲリラ高見盛 ゲリラかなり三上博史 ゲリラまさに水面に…

  • 沖本さん

    おはようウルカ。 やれたスーツにボロボロのセイコーを左手にまいた40代が、満員電車で歯を食いしばっている。 今月の営業成績順位は、下から数えた方が早かった。 若い奴のような体力も話題も、ない。 ペコペコしたシタテな態度は、取引先にナメられるだけだ。 もう、そんな時代じゃないんだ。 なんでこんな事をしているのだろうという疑問を燃えないゴミにだしてから、15年が過ぎた。 いっそ燃やしてもらえばよかったのかな。 いつからか、嫁は石像のように無表情になった。 娘は、アトピーとイジメに苦しんでいる。 安アパートと穴の空いたコンバースが恥ずかしくて、同窓会へ出席したことはない。 それでもね、小説を書いてい…

  • 傳力

    こんにちはウルカ。 床が腐葉土で座席は苔の生えた岩や樹木の根、吊革や荷棚は絡み合う枝や蔓。 手洗いは3号車にある滝。 ネイチャー・トレインには猿や鳥やカモシカが同乗する。 ゴロゴロと転がる丸太の車輪は、意外に安定していて、振動が心地よい。 アウトドア・ウェアに身を包んだサラリーマンやサラリーウーマン、スチューデントやヴァガボンドが、動植物たちと移動している。 外はジャングル。 しかし、よく見ると樹々や土や岩などが都合よく建物や道路や広場を形成しており、人間が快適に過ごせる街となっている。 人類は新たなエネルギーとして、傳力を発明した。 傳力は動植物に限らず、自然界に意思を伝え、交渉し、人間の都…

  • くそはええ

    こんにちはウルカ。 ゾウガメの子を近所の公園で散歩させている。 意外に素早い。 ハーネスが欲しいね。 ウルカを甲羅に乗せるにはまだまだ小さい。 完全に成体となるには後七十年くらいかかりそうだね。 その前に、ウルカも俺も死ぬな。 いつか、このゾウガメの子を誰かに引き継がなければならない。 現在4才か5才くらいの信頼できる人間を探さなければ。 見込みがありそうな幼児を保育園で物色しよう。 ゾウガメの子を抱え、コガネオオトカゲを肩に乗せた不審な男が、保育園周辺を執拗にうろつく。 保護者たちを戦々兢々とさせそうだな... 秋だね。 秋に生まれたからかどうかは知らんけど、俺は秋が好きだ。 誕生日でテンシ…

  • カラフルで最新

    こんにちはウルカ。 田舎の町へ向かう赤い列車に乗っている。 車窓から秋の陽が差し込むと、ゆるい冷房が効いた車内とバランスが良い。 乗客は疎らで、ひと席空けた隣に老人が座っている。 「随分涼しくなったよ」 独り言のような老人の言葉に、俺はこたえた。 「涼しくなりましたね、もう秋です」 「ああ、一番新しい秋がきたよ」 「はい、去年の秋が、古くなってしまいました」 「ああ、一番新しいワシが今よ」 「はい、去年のあなたが、古くなってしまいました」 車窓から見える風景は、建物の背が低くなり、木々の割合がふえる。 喧々とした踏切の音が近づいて、騒がしさのピークをむかえたあと、音を歪ませながら遠のいた。 ひ…

  • 幸せパーク

    こんにちはウルカ。 テーマ・パークがオープンした。 入場料は1800円。 入場すると先ず、茶碗を渡され、お袋役のおばちゃんに山盛りご飯をよそわれる。 それからジェットコースターに誘導され、ご飯をこぼさないように急降下に悲鳴をあげる。 ジェットコースターを降りるとそこは畳の部屋で、親父役のおっちゃんがちゃぶ台をひっくり返す。 空中を舞う湯呑みをうまくキャッチすると、プラモデルまたはジュエリーがもらえる。 そのあと幼なじみ役の女または男と、恋愛シミュレーションをして、成績が良いとプラモデルまたはジュエリーがもらえる。 お袋役のおばちゃんに山盛りによそわれたご飯の処理に困っていると、タイミングよく腹…

  • おに

    こんにちはウルカ。 力強いゴシック体で、毒と書かれたプレートをつけたトラックが、毒を運んでいる。 運転手は青鬼で、金棒を助手席に立てかけている。 本業はラッパーなのだろう。 Bボーイ・ファッションに身を包み、カーステレオから流れるビートにあわせた呪術師のような手の動き、言葉を連呼するような口の動きは、間違いない。 斜めにかぶったキャップからは、禍々しいツノがはみ出ている。 濃いめに作った水彩絵の具のような青色の肌に、ゴールドのアクセサリーがよく映えている。 生命力に溢れる若者を見るとこちらまで元気になるね。 信号が緑に変わる。 俺は頑張れよと心でつぶやきながら、青鬼トラックとは反対方向へハンド…

  • おかえり、はじめまして、お前

    おはようウルカ。 ゾウゾウと吹く風が、辺りの空気を一掃して、何処かで使い古された空気を恰も新品かのように運んでくる。 俺は、此処では新鮮という事になった空気を吸い込むと、公園でゆれている木をみる。 生まれたての赤ん坊の新品感は眩しいけれど、もともとは、何処かで使い古されたものの寄せ集めでできているのだろう。 人は何か一つだけでも新しくなれば、新品で、新入りで、新米で、若輩者で、出発で、冒険者で、海賊で、開拓者になる。 場所や、想いや、服や、家族や、靴や、時計や、家や、マットレスや、髪型や、仕事や、学校や、趣味や、歩き方や、インターネットや、癖や、ペットや、事故や、季節や、食べ方や、他人や、怪我…

  • 題名なんてない日

    こんにちはウルカ。 炭酸水を買いにコンビニエンスストアに出かける。 もう10月だというのに夏のような日差しだな。 珍しく駐車場は空いている。 太陽に手のひらを透かしていると、遠い地方のナンバープレートをつけた黒いセダンが、コンビニエンスストアの駐車場にとまった。 乱暴に開いた運転席のドアからのぞいた赤いヒールを履いた白い脚が、外光で彩度を上げる。 女は黒いセダンを降りると、面倒な仕事のようにドアを閉めた。 咥えた非・電子タバコには火がついており、薄紫色の煙をあげている。 煙が目にはいったのか、女が不快そうに目を細める。 それから、自分の口からタバコを毟りとると、アスファルトに叩きつけた。 タバ…

  • ずっと下り坂プロジェクト

    こんにちはウルカ。 自転車に乗った学生が、太陽の光と風と排ガスを浴びながら、立ちこぎで坂を登っている。 高校生だろうか、激流に逆らう鮭のように生命力が滾っている。 俺は反対に川下へ車道をくだっている。 アクセルから足を離して、重力にまかせる。 ギアを3速に入れると、やわらかく、エンジン・ブレーキが作用した。 世界の道が全て下り坂であれば、エネルギー消費は随分効率的だよな。 鮭も決死の思いで川を遡らなくていいかもしれん。 下り坂という言葉のイメージもなんとなく良くなり、努力の概念も少し変わるかもな。 電力会社も下り坂発電なんてエコなシステムに変わるだろう。 問題は下り坂をどうやってループさせるか…

  • エレキギターの大きさの穴

    こんにちはウルカ。 湯呑みの茶が湯気を立てている。 テレビが不健康な光をばらまいている。 黄ばんだレースのカーテンが、青白い外光を透かしてシアン色に歪んでいる。 月に一度、田舎から届く段ボール箱は、封を開けられずに玄関の隅に積まれている。 段ボール箱の中には、塩からい干物や、時代遅れの菓子や、つまらない本や、僕の学業について心配する手紙が詰め込まれているのだろう。 もう半年以上学校へは行っていない。 家賃や光熱費は段ボールが届くのとほぼ同じタイミングで口座に振り込まれる。 僕は、食べる事だけなんとかすれば、死なないでいられる。 駅前の不潔な居酒屋でアルバイトをしている。 賄いを食べる気には到底…

  • タフなババア

    こんにちはウルカ。 近所に、一軒家ふたつ分くらいの空き地があって、土が見えないほど色々な種類の雑草が茂っている。 中にはクワ、ヤブガラシ、オオバコなど、草食爬虫類飼いの間では宝物と言われている野草の姿もチラホラ。 これらの野草は、人間が食用としている野菜と比べ、低カロリー、高カルシウムであり、栄養バランスは最高峰。 その宝物が、近所の空き地に、文字通り野放しの状態なのである。 これは、なんとしても手に入れたい。 勝手に空き地に分け入って、野草狩りをしてもきっと問題ないだろう。 それどころか、雑草を処理してくれた尊い人として祭り上げ、崇められるかもしれない。 いやいや、まてよ、雑草だらけの空き地…

  • ウェアラブル型の飛行昆虫

    こんにちはウルカ。 鏡のような銀色のタンクのトラックが、歪めた世界を反射してみせている。 中央分離帯に捨てられた左足用のスニーカーは、草原に放置された廃バスのようだね。 あと3週間ほど、自動車で通勤する事になりそうだ。 運転は楽しい。 マニュアル・トランスミッションは、両手両足を使う。 息切れする程じゃないけど、身体を動かしながらの移動は、考え事をするにはぴったりで、深く考えすぎない適度な思考ができる。 これは、自分が手足を動かすことが動力につながる運動をかましながらの考え事、というところがミソなんじゃないだろうか。 新幹線や電車の車内でいくら手足をバタつかせても、しっくりこない。 たまに列車…

  • 月のない夜はコーラの瓶を

    こんにちはウルカ。 月のない夜は、雲と空が反転してみえる事があるよ。 雨雲が空よりも黒いから。 そう言ってルクは、路上にある段差に座り、コーラの瓶にいれた井戸の水を飲んだ。 ルクは孤児で、正確な自分の年齢を知らない。 外見から、おそらく13才くらいだろう。 自分とは違う肌の色をした観光客に、ハシシや盗品、この地方の珍しいカメを売って、屋台でサモサを買う。 観光客たちは、珍しいカメをプリングルスの筒に隠して飛行機に乗るそうだ。 今日はハシシも、盗んだソニーも、珍しいカメも持っていなかったので、気まぐれでみすぼらしい日本人旅行者のガイドをしている。 夕食と引きかえに、一日街を案内する事で、メイク・…

  • 解放厳禁

    こんにちはウルカ。 昼から夜にスライドがはじまるころ。 オートバイで湾岸道路をはしっている。 ドルドルとエンジンが振動して、丈夫なゴム製のタイヤがアスファルトを蹴る。 空を映した青赤色の海面が遠くにみえる。 月曜から3日目の今日はよく晴れた。 風が少しつめたい。 型の古い銀色の外国車が、大量の白黒い煙をボンネットの隙間からふき出しながら走っている。 追い抜きざま、サングラスをかけたドライバーの男がみえた。 ステアリングにのせた指でリズムをとりながら、何かを歌っているようだった。 この道は海へつづいている。 サングラスの男もきっと海へ向かっているのだろう。 30キロメートル程はしると、波に削られ…

  • ナビゲーション・バー・オリジン

    おはようウルカ。 ナビゲーション・バー・オリジンは、駅から歩いて5分ほどの高架下にある。 私は常連という程ではないが、数ヶ月に一度のペースで訪れている。 雨が、降ることをやめた。 チラチラと街の灯りがともり始め、ゆきすぎる列車の四角い窓が、黄白く発光している。 革靴で踏むアスファルトはまだ少し濡れていて、黒い、鋭利な、洞窟の壁のようだ。 こんな夜は、オリジンへ行ってみようか。 湿気をかきわけて、オリジンに到着する。 ナビゲーション・バー・オリジン 橙色のライトに照らされた看板が、開店を主張している。 店のドアを開けると、バー・カウンターには疎らに先客があった。 私は空いているカウンター席に腰を…

  • 終わらないでくれ

    こんにちはウルカ。 暖かいビーフカレーライスを食べた。 昭和の時代に一斉を風靡したであろう、日本の味。 オーガニックな多種類のスパイスの香りなど皆無だ。 しかし、コクと旨味はたっぷりで、日本の米に良くあう。 このときよ、終わらないでくれと思わせてくれるのは、良い小説とビーフカレーライス。 今日のニュース 帽子の裏側に仕込んでこっそりハゲ治療にハゲめるデバイスが開発される チェンマイ アジアで最も安全な都市に選出、東京は13位 ウルカはデュビアを2匹

  • 持ち物が持つ者

    こんばんはウルカ。 もう、じゅうじか。 うかうかしていると明日が始まっちまうな。 明日が始まってしまうまえに、持ち物が持つ者の話をしておこう。 硝子を運ぶ錆びたトラックが、慎重に振動している。 歩道では、アルペジオ専門のギターリストが、奏でては街の騒音にかき消されている。 ビルとビルの谷間に広場があって、街路樹たちの麓にベンチがいくつか並んでいる。 木洩れ日は涼しげな午後を演出していて、ベンチで休む人々はみな黒いシルエットで匿名者になりきっている。 俺は広場の端にあるベンチに居場所をみつけると、湯船に浸かる時のように、じんわりと腰をおろした。 ラガービールの缶以外の持ち物は、スマートフォンと腕…

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