chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • あしなが鳩

    こんにちはウルカ。 あしなが鳩を連れている。 シャルル・ド・ゴール空港は、相変わらずの混雑で、行き交う人々は外気の冷たさからか、頬をあからめている。 連れているあしなが鳩は、私に寄り添うように歩いている。 もうすぐ、離ればなれにならなければならない。 あしなが鳩は伝書鳩として有名な鳩である。 伝書鳩とは、鳩のもつ帰巣本能を利用して遠隔地から鳩に手紙や小さな荷物を持たせて届けさせる通信手段の一種である。 特にこのあしなが鳩は、脚力、飛翔能力、帰巣本能に優れ、20000km以上離れた地点から巣に戻ることができるといわれている。 また、あしなが鳩は名の通り、人間と瓜二つの長い脚を持っており、その愛嬌…

  • たった今飛んだ女学生は冗談

    こんばんはウルカ。 初めて訪れる都市の駅は、新品の自動車のような匂いがした。ホームにあるベンチには、膝をかかえるように男が座っている。キリキリとした寒さを、荒涼とした自己の時間軸を、何とか忘れようと、何とかやり過ごそうとしているのだろうか。少し踏み出せば、陽のあたるホームの尖端に出る事ができるのに。僕は膝を抱える男を後目に陽のあたるホームの尖端を目指す。 男がガタガタと膝をかかえるベンチから、ほんの数歩のところにあるホームの尖端に、僕は立っている。そこは陽光のあたるとても穏やかな場所であると想像していたが、実際は全くそうではなかった。針を含んだ鉄風が四方から吹き荒れ、断崖絶壁のホームの下には黝…

  • 移動中

    こんにちはウルカ。 移動日、というものがある。 文字通り、移動に邁進する日の事であり、出張が多い職種の人間には耳馴染みのある言葉だろう。 遠方などは、集合指定された時刻が夜中や早朝である場合、前日に移動を済ませておく必要がある。 業界ではこの行動を、前のり、先のり、先っちょのり、前パラダイス、前チャック半開、前ドエフフスキー賢治、先物ドM売買、先っぽファンタジー、わくわくごま塩ラーメン、前マイっチングまちこ先生などと呼ばれ、親しまれ、恐れられている。 いや、そんな事はどうでもよい。 わたしの仕事は、移動することであり、移動日は勿論のこと、移動週間、移動月、移動年など、中には入社以来、帰社するこ…

  • リサイクル

    こんばんはウルカ。 限りなく白に近いシアン色の細氷を含んだ風がふいている。 500デニールのナイロン・シェルのフードを目深に被って、凍結した道路を滑るように進む。 否、実際に滑っている。 ローラ・スケート・シューズを履いているからね。 滑倒を恐れ、滑りにくい靴を履いてビクビクと歩くよりも、滑りやすい靴の代表格にして最高峰であるローラ・スケート・シューズを履く事で滑りに磨きをかけ、凍結した道すらも肯定する、ツルツルに滑る危険な道すらも愛でる、そう、LOVE&苦難(L&H)である。 たとえ滑倒したとしも、それはレクリエーション、またはパフォーマンスの一環であり、灰色の街に色鮮やかな笑顔という花が咲…

  • 深いネイビーの暗くなる前

    こんにちはウルカ。 深いネイビーの一軒家があって、目の前にバス停がある。 深いネイビーの一軒家には、クロアチア人の同性愛者同士の男性カップルとその子供役として中国から連れてこられた6才の男の子が暮らしている。 とても幸せそうで、男の子もクロアチア人の男性カップルもよく笑った。 クロアチア人の男性カップルはどちらも入道雲のような体躯をしていて、いつも傷だらけだし、深いネイビーの一軒家にある小さな庭ではよく柔術の組手をしていることから、おそらく地下格闘家として生計を立てているのではないかと思っている。 わたしは近所に住む16才の女で、深いネイビーの一軒家の目の前にあるバス停から高等学校に通っていて…

  • だらしない施術

    こんばんはウルカ。 雨上がりの街は靄で白くでふやけていて、銭湯の脱衣所のようだ。 のぼせたビルの窓から洩れる灯は、普段よりも少しだけ赤い。 僕は速足で歩いている。 走ったり、自転車に乗れば、もっと速く移動することができる。 自動車や、飛行機に乗れば、もっと速く移動することができる。 でも、僕は速足で歩くことを選択した。 上をみたらきりがないからね。 クッションの良い自慢のスニーカーが、光沢色のアスファルトを蹶る。 僕は靄で白くふやけた街を歩きながら服を脱ぎ、全裸になる。 服といっても、もちろん比喩である。 心に着ている服を一枚ずつ脱いで、裸の心になるということである。 そもそも、はなから身体に…

  • イグアナのプッチンプリン

    こんにちはウルカ。 オオトカゲも良いけど、ゾウガメのことも書いてよ。 といったようなメッセージをいただいたので、今日はグリーンイグアナのプッチンプリンの事を書いてみよう。 グリーンイグアナのプッチンプリンは、数年前よりうちに居候している。 うち来たときには体長10センチメートルほどの明緑色のちっせえトカゲだったのだけど、今では1メートルを超えるでっけえ明緑色のイグアナとなった。 最終的には180センチメートル程になるそうだ。 その容姿は翼こそないが西洋の竜そのもので、姪っ子などはマジで口から炎を吐くと信じている。 イグアナ族は爬虫類の中でワニ族に次いで2番目に知能が高いと言われており、部屋に放…

  • ゲロうま

    こんにちはウルカ。 海外のフォトグラファーのブログに書かれていた。 「普段は滅多に写真を撮らない。しかし撮るときはフィルム100ロール近く撮る。そしてその期間は1年のうちわずか1ヶ月程度」 わたしも充電期間が必要かもしれない。 みたいなことが書いてある日本のブログを見かけた。 充電期間ってなんだ。 ものづくりに携わる人間はなにかと充電をしたがりがちだけど、俺は充電の仕方がわからない。 というかそもそも俺が充電式なのかがわからんぞ。 どちらかといえば、非充電式で電源ケーブルをさすところがなきゃ役立たずの冷蔵庫みたいなタイプではないかと心配になってきたよ。 みたいなことを3軒目の飲み屋で泥酔気味の…

  • 大蜥蜴とマリーゴールドの花

    こんにちはウルカ。 オオトカゲの食性は、大多数が肉食である。 中には草食性のイグアナや、フィリピンの秘島で発見された体長が2メートルを超えるのに体重は10キロにも満たないフルーツを主食とするオオトカゲもあるが、コガネオオトカゲであるウルカはゴリゴリの肉食であり、サニーレタスなどはうまく消化する事が出来ない。 飼育下のオオトカゲは総じて肥満傾向にあるそうだ。 これは運度不足と、自然下ではなかなかありつけないような産まれたての仔マウス、ウズラ、ヒヨコちゃんなど、高栄養な食事をガンガン与えられているのが原因だといわれている。 爬虫類女子!ベッドで一緒に寝ています!などとインスタグラムに写真をあげてい…

  • 群衆の先頭に出る

    こんにちはウルカ。 折りたたみ式のソファーを、脇に抱えて颯爽と歩いている。 茶色の長髪を靡かせて、重量20キログラムのソファーを軽々と、涼しい顔で。 すれ違う人々の羨望の眼差しが、心地の良い電気刺激のように私につきささる。 私はこれから、脇に抱えた折りたたみ式のソファーというサーフボードで、群衆という波に乗るために、新宿駅というビーチへ向かうプロのサーファーである。 季節外れのハーフパンツを履いた私は、駅の階段を軽やかに登る。 朝から足取りの重いサラリーマンなど、おいてけぼりである。 ホームに着くと案の定、通勤群衆という名のビッグ・ウェーブが緑色の電車へなだれこんでいる。 群衆はホームに立つ私…

  • 天鼠の木

    こんにちはウルカ。 紅葉の季節だね! 木の葉は、死が近づくと紅くなる。 それから完全に戦力外となると、見放され、枝から切り離される。 枝から切り離された木の葉は地面に落ち、微生物や虫や動物や雨や風や光にバラバラにされ、自分を切り離した木を支える土となる。 どれだけの木が、戦力外だと見放した葉が自分を支える土となって、やっぱり戦力として活躍している事に気がついているのだろう。 口笛を吹きながら自転車に乗っていると、一枚のコウモリがひらひらと落ちてきた。 冬が近いな。 木から戦力外と判断されたコウモリが切り離されている。 コウモリの木の葉は、死が近づくとコウモリとなる。 枝から離れたコウモリは地面…

  • 飼育記

    こんばんはウルカ。 お前、生卵が好きだったんだな.... その口のかたちで、皿にといた生卵を啜って呑むことができるとは、俺はびっくらこいたよ。 トカゲの口にも啜るという機能がついているんだな。 もしかして本気出したらざる蕎麦とかも啜れるのか? まあ、卵はカロリー高すぎだろうから、偶にやるくらいにしよう。 今日のニュース 地球上で一番生命の少ない場所は?生物が住める限界を調査 ワームホールを利用して雨を降らせる装置を開発したと主張する発明家、農民たちを騙していると物議 切断した指の接合手術のため病院に向かうもタクシーに指を忘れあわや手遅れに 2羽のつもりが1000羽だった!ネットオークションでニ…

  • クラマ

    こんばんはウルカ。 クラマは、古くから人間の移動手段として、住居として、家畜として、ペットとして、友人として、奴隷として、ビジネスパートナーとして、寄り添うように共存してきた。 クラマは、種により様々であるが50年から80年ほど生きる。 中には300年以上生きる種もある。 クラマは、総じて単為生殖の卵生であり、直径1.5mほどの卵から孵化すると、すぐに時速70km以上の速さで移動する事が可能である。 現在の地球環境ではクラマの卵を自然孵化させることは不可能であり、専門の施設と技術を持ったブリーダーが全国に点在している。 対人間、クラマ同士のコミュニケーションは光、または闇を振動させることでおこ…

  • もう、十字架

    こんばんはウルカ。 先ず、とても社会的かつ野生的な色の封筒、そう、薄いブルー・アンド・グリーン色の封筒がデスクにそっと置かれる。 クリスマスの朝の目覚めのようなトキメキを感じながら、俺は封筒を開けると日取りをチェック・イット・アウトする。 なる程、2週間後か。 少なくともあと4キログラムの減量が必要だな。 そうとなれば、こうはしていられない。 俺は隣に座る同僚のタケに、ちからいっぱいデコピンをかますと、うぉぉと職場を飛び出す。 そのまま、うぉぉぉと街を駆け抜けて森へ入り、枯れ枝と枯れ葉で小屋を建て、目の前の小川にて、街を駆け抜ける途中の上州屋で購入した竿と糸と針となんか気持ちの悪い餌蟲で釣りを…

  • 想像という実体の断片化の

    こんにちはウルカ。 昨日はLEGOの事を書いたけど、そろばんや囲碁もデジタル機器に入るらしいな。 デジタル機器には必ず電源があるというわけではないようだね。 デジタルの利点、特徴として、劣化しない、複製が容易、軽いデータ量、というのがあるが、そう考えると言葉、特に書物はデジタルの優位性を持っている。 作者が実体や想像というアナログを言葉というデジタルに変換して書く、読者は言葉というデジタルを読み込んで想像というアナログに変換する。 デジタルのデータ量が軽いのは、アナログを断片化して、本当に余分なのかはさておき、余分な部分を切り捨てているかららしい。 書物の場合、音や目に見える光、匂い、肌に触る…

  • サイズ

    おはようウルカ。 LEGOというものがある。 カラフルなブロックを組み合わせて、動物やお家やロケットをつくって遊ぶことができる。 あのブロックのひとつひとつを目に見えないほど小さくして、色数を65,536色くらいに増やす。 その細かなLEGOで正確に作ったキノボリカンガルーやベンガルハゲワシは、人間の目には実物として映るだろう。 上級者は関節や内臓、脳や魂までもブロックで形成して、本物と同然につくりあげるようになるかもしれない。 問題は、ひとつひとつのブロックが小さすぎるということ。 「見えない、持てない」では、LEGOの魅力が半減してしまう。 開発首脳陣は、あたまをなやませた。 製品化は、ま…

  • ボルネオオランウータンの幽か

    おはようウルカ。 随分前に、といっても数ヶ月程度だと思うけど、このブログにパタパタ時計を買った話を書いた。 遡って調べるのが面倒だけど、遡ろう。 これから書く事に関わるからな。 おう、おう、遡ってきましたよ。 パタパタ時計を買ったのは今年の5月26日だった。 あれからもう半年か… このパタパタ時計は、セイコーというメーカーの1980年代に製造されたデッドストックだそうだ。 まあ、数千円で買ったので、高い買物ではなかったのだと思う。 寝室で使っており、1分進む毎に、スサッ…って、ほんとうに幽かな音がする。 これがなんとも気にいっている。 時計の音はチクタクだけではないのだな。 さておき、このパタ…

  • 死と毛布の間に

    こんばんはウルカ。 自分がメインの会議中とか、重要っぽい時に、ふと浮かんでしまって、どうしても頭から離れないことがあることって、あるよな。 頭で生卵を割る、手が滑って卵が床に落ちる 卵で床が汚れちゃった 生卵で頭を割る、卵が滑って床が卵に落ちる 床で卵が汚れちゃった 俺は今、社内向けのプレゼンをしているのだけど、これが浮かんでしまい、具体的な映像まで脳内でループ再生されるという状況に陥っている。 特に「床で卵が汚れちゃった」ってフレーズが気に入っている。 うわのそらのプレゼンに、誰が心を打たれるだろうか。 同僚が、彼のパートをプレゼンしている隙に、恰も資料を整理しているかのようにこれを書いてい…

  • 面として僕に対に対面と面として面の僕に

    こんばんはウルカ。 クモハ289ー303に乗っている。 バッグから丸めたナイロン製の上着を取り出して羽織る。 雲が、大陸のように空にある。 雲色の大陸を太陽が半ば透過するように照らしている。 太陽は、雲よりも随分と小さいものだと思っていたけれど、反対で、雲など比べ物にならないほどに太陽は大きいらしい。 遠くに見えるあの親指くらいの樹木が、本当は見上げるほどに高いのと同じことなのだそうだ。 この足元の陸とあの雲では、どちらが大きいのだろう。 本当はとても大きなものも、遠く離れれば小さくなる。 それは目に見える大きさだけでは無くて、音も、匂いも、温度も、優しさも、悪意も、哀しみも、愉快も、痙攣も、…

  • 奈津江

    こんばんはウルカ。 タクシーが、雨粒で不透明になったフロントウィンドウをワイパーで拭っている。 扇状に雨粒を拭われたフロントウィンドウは、車内の湿度でやっぱり不透明のままで、 タクシーは半ば投げやりにウィンカーを灯したり消したりしている。 後部座席には、サイドウィンドウを貫通しようとする街の明かりを、髪の長い人影が遮っている。 乗客がいるのだろう。 私という主観は同時には一つしか存在しないので、雨粒や湿度で不透明になったタクシーの車内を感じるには、交差点でウィンカーを灯したり消したりしているタクシーに駆け寄り、ドアを開け、乗り込む、または後部座席に乗っている髪の長い乗客の身体を借りる必要がある…

  • グランディーバ・マッシヴ

    こんばんはウルカ。 駅前に、行きつけの寿司屋がある。 昔ながらの江戸前寿司を謳っているが、大将は南国出身だったりする。 カウンターと、奥に4人がけの席が五つくらいの店。 俺はこの店のカウンターで、本やら動画を持ち込んでは昼間からだらだらと過ごすのが好きだ。 なんの変哲もない日常にこそ幸福があるというやつである。 なんだかんだで、ひと月ぶりに訪れると、店内の雰囲気が少し変わっており、なんとなく小綺麗になったような、なっていないような… よく見ると、各席にはタッチパネルが置いてある。 おお、大将、とうとうここもタッチパネル導入ですかいな? へい、いらっしゃい!お兄さん、そうなんですよ! 時代ってや…

  • 口から出しなさいよ

    こんにちはウルカ。 おい、ウルカ、それは食料ではない。 旨そうにみえるかもしれんが、違うんだ。 俺のペットなのだよ。 ほら、人間でも食用家畜をペットとして可愛がっている奴がいるだろ? あれと同じ感じで接してくれる? おい、だから喰うなって。 口から出しなさいよ。 よし、キモい前置きはさておき、人類が爬虫類飼育にハマるきっかけとなる入門的存在のヒョウモントカゲモドキ a.k.a レオパードゲッコーについてふれよう。 ヒョウモントカゲモドキ a.k.a レオパードゲッコーは、うちにも数年前より3匹ほどが滞在しているが、その可愛らしいルックス、超スローな動き、人慣れ、無体臭、鳴かない、泣かない、寿命…

  • 世界をすくう

    こんにちはウルカ。 随分と人口が増えたね。 陸や海も汚れてきたし、石油も減る一方だよ。 高層な建物を乱立したり、道や列車のダイヤを増やすよりも、地球をコピー・アンド・ペーストで3つに増やそうよ。 3つの地球は団子みたいに並んで太陽の周りを公転すれば、特にだれにも迷惑かからないんじゃない? それは良いね!そうしよう、そうしよう。 でもさ、地球をコピー・アンド・ペーストしたら、人間もコピー・アンド・ペーストされちゃうから、同じ人が3人に増えて別々の星で同時に生きる事になって、騒がしい星が2つふえるだけじゃない? あっ、そっか。 すみませーん、生中、おかわり! 今日のニュース 動物でも光合成ができる…

  • 線路と線路の間の草叢

    こんにちはウルカ。 大きな街の駅が近づくと、何台もの列車が行き交うことができるように、線路の数が増える。 線路と線路の間に、小さな公園ほどの広さの草叢があるのがみえる。 その草叢には人の背丈ほどの草が鬱蒼と茂っており、なぜ手入れをされないのか不思議なほどである。 列車の走行に影響したりしないのだろうか。 私は上り列車の車窓から、なんの気無しに線路と線路の間にある草叢をみている。 職場に着いたらやらなければならない事の数を数える。 ランダムに、草がゆれている。 草は風でゆれることで種を飛ばして生命をつなげるそうだ。 全ての物事には意味があり、繋がっている。 ふと、草叢のなかで人影がみえた。 見間…

  • 正解電飾

    こんばんはウルカ。 無数にLED電飾を括り付けられた街路樹が、オフィス街に並んでいる。 夜になると冗談のように一斉にLED電飾が点灯して、辱めをうける街路樹たちは、何を想うのだろう。 私はそんな街路樹たちの下を申し訳ない気持ちで歩いている。 人間の中にも、私みたいにあなた達への仕打ちを申し訳なくおもう個体もいるのよ。 でも、私は無力で、なにもしてあげられないわ。 ごめんなさい。 コツコツと冷たいコンクリート製の路面と私のヒールが衝突する音が街の喧騒のなかでもはっきりときこえる。 私には、LED電飾を身体中につけて他の種族を愉しませろと言われたら、断る勇気があるのだろうか。 生きるためだからと自…

  • 同僚のタケ9%

    こんばんはウルカ。 層師という者がある。 層師は物事を重ね合わせて一つの物事をつくる職人である。 先ず、ベースとなる層を決め、それから重ねる層とその透明度を決める。 たとえば杉浦さんをベースにして、山本さんを透明度30%、ペルシャ猫を透明度10%、ビーフシチューを透明度9%、ゴンザレスを透明度1%で重ねる。 すると50%は杉浦さんで残りの50%は山本さんやペルシャ猫やビーフシチューやゴンザレスで形成される。 ただしこれは、杉浦さん本人以外の者からの見え方や感じ方であり、ベースとなる杉浦さんの100%が50%に削られるわけではないので安心!である。 対外的には杉浦さんは50%となるが、対内的には…

  • 濫觴

    こんばんはウルカ。 カタカタと窓ガラスが鳴っている。 こんな寂れた街の、今にも崩れ落ちそうなビルとビルの間にも、風が吹き抜ける。 気持ちよく吹き抜けることができる場所は他にいくらでもあるだろうに。 ものずきな風もあるものだな。 オレは掠れた革張りのソファーに転がり、虫食いのような模様が大変不愉快な天井板を見上げながら、非・電子タバコをふかしている。 テーブルには潰れたビールの缶と、随分前にキャパシティをオーバーした灰皿、それからタンバリン。 オレは4時間前、橋の上で不思議な動物を肩にのせた男からこのタンバリンを預かった。 不思議な動物を肩にのせた男は血塗れで、息が荒かった。 4トン車にでも撥ね…

  • 父親は10年間にひとりまで

    こんばんはウルカ。 ロレックスという腕時計をつくっているメーカーがある。 正規店で購入するには身分証明と登録が必要で、1度購入すると、同じ商品は5年間購入することができない。 さらに、同メーカーの他の商品についても1年間購入することができないそうだ。 ほかのものも全てそうしたらどうだろう。 靴も鞄も服も箸も自動車も洗濯ネットもギターもスケボーも束子もMacも爪切りも犬も父親も椅子も、1度購入したら5年とか10年とか20年とか、または一生に一度しか購入できない。 とすれば、購入者は大切に大切に使うだろうし、メーカーは品質を極限まで高めるだろうし、資源の節約にもなるだろう。 それでは、弟か姉でも買…

  • ラーダ・ニーヴァ

    こんばんはウルカ。 ロシア製のラーダ・ニーヴァというクルマがある。 俺は今日初めて実物をみたのだけど、形、サイズ感ともに凄く良いね。 本国ではプーチン氏も愛用しているとかいないとか。 信号待ちで隣になったラーダ・ニーヴァは白色で、左ハンドルの運転席には、拘りと蘊蓄がウザそうな顔つきの女が拘りぬいたであろう、ビンテージであろう帽子をかぶって座っている。 カーオーディオから流れる音楽はきっと下北沢あたりの雑貨屋風なのであろう。 俺のクルマよりもひとまわり小ぶりなラーダ・ニーヴァは、弱ったサイレンのような音を終始発している。 仕様なのか不具合なのかは分からんが、いつパッタリとエンジンが止まって、うん…

  • 軌条の上

    こんばんはウルカ。 軌条の上を歩いている。 地面と平行に両手をぴんとはって、平衡に平衡に。 軌条の高さは15センチメートルほど。 足を踏み外したとしても、約15センチメートル落下するだけである。 少し心拍が速まる程度のことだろう。 これでは刺激がない。 私は地面を、雲が流れる空ということにする。 軌条の下では雷雲に乗った小ぶりの太鼓をアーチ状にデコレートした雷神が、電々と太鼓を鳴らしながらブレイク・ダンスを披露している。 しばらくすると今度は絨毯に乗った褐色の肌をした三つ目の青年がやってきて、手にもつ金色の食器から出現した蒼い肌をした怪物と唾を飛ばしあうほど烈しく言い争っている。男女関係のモツ…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、平山タンバリンさんをフォローしませんか?

ハンドル名
平山タンバリンさん
ブログタイトル
オオトカゲに情けはあるのか
フォロー
オオトカゲに情けはあるのか

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用