オオビコの自伝 外伝3(タケヌナカワの自伝) 皇軍はヤサカシとヤツクシの護る砦をなかなか落とすことができなかった。逆に神出鬼没の奇襲攻撃を受け、わが軍の消耗は日に日に激しくなってきた。なんとかせねば・・・ そこで、わたしは策略を使って敵を落とそうと考えた。 まず、最初に私が誓約(うけい)を行った安婆(あば)まで全軍を退却させた。 そのうえで、兵士らの中から特に勇猛果敢な猛者を選抜し、敵軍の背後に回り込ませたのだ。彼らには十分な武器を用意し、準備万端ととのえて派兵した。 そして本隊は船を何艘も作り、いかだも連ねて海に繰り出したのだ。船やいかだには帆柱を高く立て、雲の下で旗を連ねて荘厳に飾り立てた…
オオビコの自伝 外伝2(タケヌナカワの自伝) わたしは誓約(うけい)を行い、煙が流れて言った方向で、海の対岸の部族が朝敵か否か占おうとした。 その煙はというと・・・海のかなた、東の大海のほうに流れていった。 ・・・対岸の部族は朝敵だった。朝敵と判明した以上、討つには早いほうが良い。 わたしは翌朝、対岸の部族に奇襲をかけることにした。 翌朝、いつもより早く兵士らに食事をとらせた。それが終わると、わたしは皇軍を率いて小舟で湖を渡っていったのだった。 対岸に上陸すると、我々は村を襲撃した・・・しかし村はもぬけのからだった。男も女も子どもも、人っ子一人いない・・・いったいどうしたというのだ・・・ ・・…
オオビコの自伝 外伝1(タケヌナカワの自伝) わたしの名はタケヌナカワ。 第10代の天皇(すめらみこと)である今上天皇陛下の命を受けて、皇軍を率いて東海道を進軍してきた。 陛下はまだ朝廷に服していない部族を平定するため、四方に軍を派遣したのだ。わが父オオビコも軍を率いて北陸道を進軍している。 そしてわたしは東海道を進軍し、走水の海(浦賀水道)を渡り、総国(ふさのくに)を越えて常陸国まで進軍してきた。 そんな折、わたしは常陸国の安婆(あば)に陣を張り、そこで一夜を過ごすことにした。 そこは東の大海に通じる内海のほとりにあった。 ふと海の対岸を見ると、煙が上がっているのが見えた。どうやら対岸にも人…
オオビコの自伝 13 タケハニヤスを討ったわたしは、都に戻り、その旨陛下に奏上した。 そして改めて、当初の命令通り北陸道の平定のため、古志の国のほうへ進軍したのだった。 北陸道の平定は順調に進んでいった。 もちろん、反抗的な部族に対しては武力で制圧した。一方でこれまで通りの領地支配と引き換えに平和的に朝廷の傘下に入った部族も多かった。 そしてわが軍は古志の国から内陸のほうに入り進軍していった。そのとき、斥候に出ていた兵士から報告が上がってきた。 「大変です!大軍がこちらのほうに向かってきております!!」 この報告を受けて、一斉にわが軍に緊張が走る。大軍・・・一体どこの軍だろう・・・我々は厳戒態…
オオビコの自伝 12 ヒコクニブクが射った矢は、軍の後方にいたタケハニヤスに当たった。タケハニヤスは急所を貫かれて即死したのだった。 司令官が射殺されてしまったので、敵軍は混乱に陥ってしまった。 わたしは鏑矢(かぶらや)を空に向かって射った。それを合図にわが軍から一斉に矢が放たれる。 わが軍が射った矢は、敵軍に雨あられと降り注いだ。 敵軍からも反撃があったが、しかし司令官を欠くだけにその反撃も散発的なものだった。 そのうち敵軍は反撃を止め、我先にとに敗走しだした。 わが軍は逃げていく敵軍を追っていく。 そして敵軍に追いつき、淀川のほとりに追い詰めた。わが軍は矢を射て、剣を抜き襲い掛かる。 おい…
オオビコの自伝 11 わたしはタケハニヤスを討つため、山代の国に進軍していた。 そして山代の国に入り、和訶羅川に至った時だった。川の向こうに軍勢が見えた・・・タケハニヤスの軍勢だ。 今まさに大和の都に攻め込もうとしているところだったようだ。 危ない所だった。このままわたしが引き返さずに北陸道のほうに進軍していたら、朝廷は奇襲を受けて壊滅していたことだったろう・・ わが軍とタケハニヤス軍は、川を挟んで向かい合った。 わたしは副官ヒコクニブクに促し、副官ヒコクニブクが前に出てきた。ヒコクニブクは川の向こうの軍勢に向かって叫ぶ。 「朝廷に攻撃を仕掛けてきたのはそなたか!ならばまず、そなたのほうから矢…
オオビコの自伝 10 「陛下!」 わたしは大和の都に戻ると、とる物もとりあえず陛下の御前に駆け付けた。 「オオビコ、どうしたのだ?!そんなに大慌て戻ってきて、何があったのだ?」 陛下は当惑した顔で仰せになった。 わたしは陛下のお顔を拝して、少し安心した。とりあえず、陛下はご無事なようだ。 「陛下!御無事でございましたか!!良かった・・・」 「いや、無事も何も、余の身には変わりはないが・・・オオビコ、いったいどうしたというのだ?」 「あ、はい、陛下!実は・・・」 わたしは弊羅坂で出会った少女のことを陛下に話した。 わたしの話を聞いた陛下は、しばらく考え込んでいたが、おもむろに 「これはもしや、そ…
オオビコの自伝 9 わたしはまだ朝廷に服属していない部族を平定するため、北陸道に派遣されることになった。 わたしは軍勢を率いて、北陸のほうに出発した。 わたしの率いる大軍が大和の平原を出て山代の国に入り、幣羅坂(へらさか)に差し掛かった時のことだった。 道のわきに一人の少女が立っていた。その少女は巫女の衣装を着ていたが、わたしは気にも留めずに馬に乗ったまま通り過ぎようとした。 その時、すれ違いざまに、その少女が歌を詠んだのが聞こえたのである。 ミマキイリヒコは かわいそう ミマキイリヒコは かわいそう 狙われてるよ その命 後ろの戸から その命 手前の戸から その命 狙われてるよ その命 知ら…
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