「このマンゴーは宮崎県産の『太陽のタマゴ』と呼ばれる物だそうです。その中でも全体の5%しかない最上級の『太陽のタマゴ赤秀品』しか使っていないと申しておりました」 最愛の人は怜悧な顔に更に興味を惹かれた表情を浮かべている。「それはこのホテルなどの特殊なルー
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
何となく並んで歩きながら聞いてみた。「いいえ、ただ『田中先生を語る会』でしたっけ? 正式名称は忘れましたがとにかく、そういう田中先生のことを語るライングループが有りまして。 私は(・)入会していないのですけれども、手術室のナースから画面を見せて貰いました
「実は……搭乗していた飛行機でドクターコールが鳴ったので、名乗り出ました」 本当はレアチーズケーキをお豆腐の冷奴と思いっきり勘違いをして醤油を掛けてしまったエピソードも持ち合わせていた。 そしてCAさんに露見するのが恥ずかしくて完食した。 しかし、ケーキも
「いや……私が付けて良いか?」 欲しいなと思っていたが、なかなか買う機会がなかったアップルウオッチだった。 相変わらず最愛の人のプレゼントは祐樹が欲しいと思っている物をピタリと当ててくる点も愛情を感じる。「勿論です。有難う御座います」 上着を脱いでワイ
だって、さぞかしいっぱい手に持っているとか台車?押し車?とにかく呼び名は度忘れしたんだけど、手で運び切れない物を載せて運ぶ企業に置いてある運び道具みたいな物を持って戻って来るかと思っていたら、何も持っていなかったのだから。 幸樹も切れ長の目を驚いたよう
「今の貴方のように薄紅色の指には良く映えると思いまして……。 これはパパラチアサファイヤという石だそうです」 瞠った目が珍しそうな煌めきを宿している。「そうなのか……?ルビーとサファイヤはコランダムだろう。紅く発色すればルビー、青くなるとサファイヤと呼ば
「上野はウチの大学出身者ではなくて京都だろう? 昔は共産主義に命すら捧げるという団体なんかも大学内には有ったらしいが、そういう過激な団体は警察もマークしていたのですよね?」 机の下で手を繋いだままの幸樹が平然とした表情で俺と西野警視正に話している。 俺だ
「済みません、お騒がせ致しました。クラブラウンジでお手洗いに行った時に、大切かつ高価な物なので金庫に入れておいた方(ほう)が良いと咄嗟の思い付きで部屋に入ってしまっていたのをすっかり失念してしまっていて……」 優雅な気分を吹っ飛ばしてしまったなと自責の念に
「そういった警察内部の情報を頂ければと思います」 幸樹はあくまでも涼しい顔をしている。その点、横顔がチラッと見える西野警視正は困ったような表情だった。 まあ、N宮署の署長さんだし、内部情報を漏らすのはマズいと考えているのだろう。また、幸樹のお父様とか龍崎警
「そうです……。しかし、自宅を出た後はずっと鞄を持っていたので、消えるわけはないのですが……?」 客があまり居ないとはいえ、舌打ちしたい気分を必死で堪えた。祐樹にしてはとんでもない大失態だし、箱にも中身にも名前や住所が書いてあるわけではないので、戻って来
「生まれて初めてのプレッシャーを感じて脳が驚いたのでしょうかね……? 喫煙室とか喫煙所に貴方は入ったことはないと思いますが」 手を繋げるほど間近を歩む最愛の人は懐かしそうな表情を浮かべて祐樹を見上げている。「屋外の喫煙スペースなら何回か祐樹と赴いたことが
これはマズいと思って、窓の部分からは見えないように身体を隠した。「あのう、香川教授、でいらしゃいますか?」 その一群が通り過ぎた後に控え目な感じでナースに声を掛けられて、どうしようかと。 変装は完璧を期した積もりだけれどもやはり女性の目は鋭いというのは
そう言えばジャンクフードも大好きな人だった。「何でもデミグラスソース味のシチューがプラスティック容器の中に入っていて、その上からパイ生地を被せて焼いた物らしいです。サクサクのパイを崩してシチューに浸しながら食べるそうです。 シチューとスープ、パイ生地と
あっそうか、秘密保持契約書に署名と拇印を押したのは幸樹と俺だけだった。東野副部長が思いっきり煙草を吸っていたのも、警察関係者に自社の闇を漏らすというプレッシャーに耐えようとしていたのかも知れないな……。「話をして下さって大変感謝しております。 上野に事
「実はそうではなくて。有給休暇の消化率の悪さでも森技官は厚労省で随一だったらしくて、むしろ奨励されたらしい。 だから、この際とばかりに一緒にパリ大学に行って聞いて恋人の話を聞き入っていたらしい」 性格はアレだけれども、森技官が昼夜を分かたずに仕事をしてい
「フカヒレスープの時には老酒(ラオチュウ)を頼んでも良いか?」 細く長い首を優雅に傾げてツリーの薔薇の花よりも瑞々しい笑みを浮かべている。何だかサンタさんが来るのを待ち構えている子供の無邪気さも併せ持っていて、数舜の間見惚れてしまう破壊力だった。「ああ、そ
幸樹・俺と西野警視正が並んで座って、正面に東野副部長が座っている。 俺はドラマでしか見た記憶がないんだけれども、何だか面接を「行う」社員さんが俺達で、入社希望の「学生」が東野副部長といった感じで、何だかちょっと可笑しい。 しかも、東野副部長は物凄く真剣
「実は国内ではなくてパリ大学で講演は行われたのだ……。 呉先生の共同研究者の医師が体調を崩されたということで、言葉を選ばずに言えば、代理というか……」 思わず大きく目を見開いて隣を歩む最愛の人の薄紅色の整った横顔を見詰めてしまった。切れ長の目が明るい光で
しかし、久米先生も想定外のことが起こったら何をしでかすか分からないのも事実だ。まあ、病院内のことなのでいくらでもフォローは出来るなと思い返した。 目の前の女性もドレス風の服やバッグとハイヒールの色まで合わせているのでそこまで不安になることもないだろうと他
「幸樹の邪魔はしないよ?それに、幸樹が俺と一緒に居るだけでとっても幸せだから、それ以上は望まないし、さ」 西野警視正と東野副部長は異なった窓に分散して各々煙草を吸っている。こちらには幸いにも煙は流れて来ないけど、二人とも「煙草をゆっくりと嗜んでいる」とい
「田中先生の件、決まりましたのですね。大変お目出度いことですね。 そして田中先生の勇姿と申しますか、世界的な外科医の登竜門に名を連ねた瞬間をご覧になりたかったのでしょう?」 医局のドアの反対側に寄って立ち話をした。「その通りです。しかし、黒木准教授に采配
「確かにイギリスには爵位を持った人もいるけれども、今では膨大な固定資産税を支払いながらサラリーマンをしていた例など枚挙に暇(いとま)がない。 反対に財を成してそういうお城を買ってしまったり、国家に対して貢献したりした場合男爵位とはいえ、貴族様になれる。 そ
「それは無理だろう……。第一、国交さえない国なのだから」 西野警視正に言われて少しショボーンだ。「確かに正式なルートでは無理ですね。しかし、天下のミツビ〇商事様が船を使って物資を運び入れています。 船の中は一般には公開されていませんが、万が一領海を侵犯し
「今日はどのレストランを予約してるのだ?5階で良いのだろう?」 エレベーターのパネルに薄紅色の手を伸ばし掛けている。「今なお、クリスマスの日にフレンチを食べるという人は一定数いるらしくて……。だから静けさを求めて『香シャン桃タオ』 にしました」 祐樹を見
クリスマスプレゼント無事に届きました~!クリスマスカラーの赤と緑、そして聖母マリアの花でもある百合の花。毎日読みに来て下さったりポチって下さるだけで嬉しいのに、しょうこ様・教授大好き♡様・ゆき様本当に有難う御座いました。今日はイブですね。この年になると、
「いらっしゃいませ。田中様、香川様」 クラブラウンジに着くと顔見知りのスタッフが満面の笑みで迎えてくれた。 この部屋にもふんだんに薔薇が飾ってあるツリーが各所にあった。それを最愛の人は花のよりも綺麗な笑みを浮かべて見ている。 ちなみに祐樹の名前が先に呼ば
一体何のことだろうかと思ったが、薄紅色の花を撒いたような風情で紡いだ唇が花びらがそよいでいるかのように綺麗だった。「精神疾患と建物のことについて、祐樹は何か言いたそうだったな……」 精神病に関しては学生時代にサボりまくった祐樹と真面目に講義を受けて、同
心臓外科の患者さんはベッドから離れない人が大半だ。 しかし、他の科の入院患者さんで歩行が自由な人とか、むしろ歩くことを奨励されている患者さんが、医局の外まで遠征してくることがあると祐樹を始めとして皆が言っていた。 今は病院の一枚看板として心臓外科が挙げ
そんな国と今もビジネスとはいえ取引をしていることがバレたら、過激な嫌韓団体が押しかけて来るとか、そこまでしなくても「あそこの会社は使いたくない」とか「株式を買いたくない」という層は一定数いるだろうなって思った。 その瞬間、東野副部長が一階の受付ではなく
「今年のツリーは薔薇なのだな……。綺麗だけれども折角の本物の樅(モミ)ノ木が隠れてしまっているのは何だか気の毒だ……」 正面入り口の値段が付けることが出来ないとかいうペルシャ絨毯を軽やかな足取りで通り過ぎて、暖炉の有るロビーに二人して来た。今日は12月23
拾い上げて見ると先ほど浜田教授から預かった眼鏡のケースだった。 中身が破損していないか確認するために開けることにする。 床に落ちた音から判断すると大丈夫なような気もしたが、自分の物ではないので壊していたら大変だ。 中には真っ黒の円型のサングラスが入って
まだ、ここまでお互いの気持ちがかみ合っていない頃は祐樹が密かにアメリカの富豪を警戒していたのと同様に、最愛の人はその「綺麗な」男性にタイプが似ている秘書と祐樹が惹かれ合ったらという恐怖に駆られいたと聞いている。 しかし、既に恋を育んでいた祐樹のことも考
そんなことを考えてちょっと泣きそうになったんだけれど、でも俺が泣いていても何の解決にもならないことも分かっていた。 だから、国見君のことは据え置きだ。それよりも幸樹が北の国からじゃなくって、アマゾン由来の薬をどうにかしないと、一番大切な幸樹が最悪なこと
祐樹が知らずに踏んだ大きな地雷は二個だ。 一個目はその時にゲイバー「グレイス」でそこそこ綺麗だろうが全く趣味でない男性に(・)祐樹が(・)「今日はこの人であわよくば性欲の発散をしよう」と安易に考えていた。 しかし容貌的にもホテル代も勿体ないレベルだったので
「ケージに体をぶつけるということは普通のラットは行わないのですよね?」 幸樹は確かめるような口調だった。 いくら高校時代の友達が医学部にもたくさんいる幸樹とはいえ、実験用のラットのことまでは知らないんだろう。「勿論です。ご存知だと思いますが、生命は維持さ
医局付近に行ったら、祐樹を囲んで狂喜乱舞している医師はともかくとして、出入りする主治医を務めている患者さんのベッドを診に行き帰って来る医師や看護師も当然いるわけで。 祐樹や黒木准教授に補佐をして貰っているとはいえ医局の責任者は自分なのだから当然声が掛け
二人で見上げながら感嘆の薔薇色めいた溜め息を紡いでいる人に聞いてみた。「1884年から建設が開始されたみたいだな……」 ということは日本では明治17年という計算になる。「もっと古いのかと思っていました。ゴシック様式だからでしょうかね。灯りも眩しくなくて
でも!!俺はエゴイストって言われても良いから!!幸樹が摂取してしまったアマゾン由来の薬を先に調べて欲しい!って切実に思ってしまう。 だって、上野がワインに混ぜた、そしてサンプルまである薬は幸樹も、そして俺も飲んでないんだから。 でもっ!幸樹は正露〇より
「済みません。こんなところをうるさ(・・・)型の旧弊な教授に見つかったら聞こえよがしの嫌味を言われるのですよ……」 聞こえよがしの……? 拾ったピンク色の髪の美少女の描かれた色々なグッズを掌いっぱいに持っている状態になってしまった。 白衣は見かけ以上にポケ
「祐樹はロンドン観光についてどの程度調べて来たのだ?」 何だか陽光が弾むような声が紡ぎ出されている。その花びらが川面に舞い散っているような錯覚を抱いてしまう。「え?全くといって良いほど調べていません。 招待状にQRコードが付いていたので、ホテルや飛行機の予
東野副部長にきっかりと視線を当てて紙片を取り上げた幸樹に感心してしまった。 契約書などは一言一句良く読んでからハンコを押すんだとか父さんが言っていたのを今思い出した。「もちろんですよ。ご納得頂けた後に署名捺印をお願いするのが契約書ですから。万が一不満
「有難う御座います。医局の名誉のためにも是非成功という結果を持ち帰って欲しいです」 自分の内心は呉先生に吐露するだけにして、公式見解は「医局の名誉のため」と言い続けようと密かに決意した。「そうですね。ちなみに国際公開手術はいつ行われるのですか?」 浜田教
確かにデートで京都タワーには行っていないなと思った。ただ、付き合い始めてから京都を避けて来たのも事実だ。 行きたかったかなと思ったのだけれども、最愛の人は特に負の感情を抱いているふうではない。 研修医時代には二人きりで居るところを病院関係者や患者さんの
「自殺された学生さんは具体的にはどうやって亡くなられたのですか……?」 東野副部長は如才なさそうな顔に汗をかいている。「それはどういう意味でのご質問ですか?」 幸樹が眼光鋭く副部長を見ている。「もちろん、亡くなった学生さんを悼むためですが……。 それ以外
浜田教授がナースの総意を聞いた上で小児科のハロウィンの催し物の主役に、心臓外科の祐樹を指名して来た。 これが小児科の医局の医師の意見だった場合には自分もそこまで驚かない。 医局の医師がお祭り騒ぎをすることは円滑に医局運営している証拠だと内田教授から聞い
「ぶっちゃけた話、心臓外科の実力はそう高くはないと専らの評判でしたね。 それこそT京大学附属病院に敢えて来ずに香川教授の手技を慕って東京からも患者さんが多数いらしていると思いますよ。 患者さんの噂のネットワークは驚くべきものがありますし、インターネットや
「もう、胃の調子は良いのか?」 大阪の昔と現在の地名の相違について語り合っていたので「胃に不快感がある」と口から出任せを言っていたことをうっかり忘れ果てていた。 祐樹は割と嘘を吐(つ)くのは上手だと自負しているが細部まで考えた後に大きな嘘をさらっと口に出す
「お待たせ致しまして申し訳ございません」 一階の受付には受付嬢の他にコーヒーを運ぶ女性まで居たというのに東野副部長はお茶のペットボトルを三つ手に持っていて、他に人は居なかった。 壁に埋め込まれている内線電話がどこに通じているのか全然分からないけど、部下の
しかし、教授戦に敗れ、しかも生粋の病院育ちかつ目の前の浜田教授のようにお父さまが大学病院の元教授といった特別なアドバンテージを持っていない場合のことは黒木准教授に聞いていた。「自分の元ライバルで今は教授職から疎んじられて物凄く僻地の公立病院やK都大学附
「そうみたいだな。特に東京在住の作家さんの場合、関西の土地勘は全くなくて昔の資料だけで書く人が多いみたいだから、関西の私達が読むと今の川の名前との乖離(かいり)に内心驚く結果になるのだろう。 淀川とも大川とも呼ばれていた江戸自体の蔵屋敷が密集していて大商人
「いや、このお客様達は『特別』だから」 東野副部長が何だか気色ばんだ感じで美人さんを制止している。 何だろう?特別って……?後で幸樹か西野警視正にでも聞いてみよう。「左様ですか。失礼致しました」 美人さんはビックリした顔をしているんだろうなと思ったんだけ
背後から小児科の浜田教授の若干高めではあるものの穏やかな声が掛けられて振り向いた。「そうですね。小児科病棟に居られることの方(ほう)が圧倒的に多いですから。 患者さんと出来るだけ触れ合おうとなさっている、その姿勢は素晴らしいですよね」 浜田教授は自分と同
「異邦の地でこうして最愛の貴方とキスが出来る私は幸せです」 名残りを惜しむようにアクアマリンの雫を宿す唇を指で拭った。「祐樹とならどこでもキスは大歓迎だけれども、多彩な色の光で溢れている東洋ではなくて、白と黄色で統一された街というのも新鮮だな……」 艶や
ウチの大学だと「ギリギリ学歴フィルターは突破出来る!運が良ければ。後はコネに頼るかだな」と実しやかに言われているけど、確かにこの職場に憧れる学生が多いのも納得だ。 受付嬢と美人度数が同じくらいの女性がハイヒールの音を立てて早足でこちらに向かって歩いて来た
祐樹の臨む国際公開手術の苛酷さには黒木准教授も驚いた表情を浮かべていた。 祐樹はむしろ得意だといった感じの余裕の笑みが眩し過ぎたけれども。 臨機応変が得意な祐樹ならばそういう反応になるのも無理はないと、上司そして恋人として晴れがましい思いだ。 全ての打
安堵めいた吐息を零したのは祐樹の笑顔が全く変わっていなかったせいだ、多分。 しかし、本当に胃の調子が悪かったとしても、悪臭の話をするだけで体調は悪化しないのを最愛の人は知らない。 若干華奢な身体の最愛の人も出会ってから病気に罹ったことはない。 祐樹も同
「いえ大丈夫です。流石は支店とはいえ日本一の総合商社の建物だと感心して眺めていたところです」 俺の優等生的な答えを聞いた西野警視正は安心した感じで頷いている。ただ、駐車場もきっと広いんだろう、少しだけ息が荒かった。「年なんですから、そんなに急がなくても。
「勿論です。医局を挙げて応援致します。 田中先生の執刀予定ですが、実は脳外科の白河教授から打診を受けておりまして。 そうでしたよね、香川教授?」 ……先ほどから思っていたのだけれども、黒木准教授には芝居っ気がない。 自分が思うのは何だか違う気がするが、ま
「ああ、特に呼吸器に被害が出たらしい。スモッグが公害だという概念がなかったので規制もされなかったらしくて……、特に被害が多かったのは1952年だったと言われている。 あ、祐樹……もうスコッチエッグは食べない方が良いのではないか? 紅茶はカフェインが気にな
「ミツビ〇商事」と何だか墨で書いたような手書きの文字を石に刻んだような表札めいた文字にビックリした。重厚な大理石とか石で出来た階段とか予想と全く違っていた。 何て言うかな……お洒落な商社に相応しく今時の高層ビルを想像していたんだけれど。 そんなことはど
「私は祐樹が術者に選ばれることについて遅いくらいだと思っていた。 だから当然と言えば当然なのだけれども、それでも実際に届いたら感無量だな。 ゆ……田中先生、その便箋(びんせん)を見せて貰えるか」 祐樹が誇らしそうな笑顔を浮かべて男らしい指で差し出した。それ
コカイン中毒には抑鬱(うつ)状態になる可能性が高い。 シャーロックホームズは名探偵としてアクティブに動き回っていたと小学生の頃に読んだ本には書いてあった。 抑うつ状態になって精神病院行きになったという「真実」よりも、ポッと出ながらも、犯罪界のナポレオンと
「……逮捕されて留置所に入る容疑者は念のため女性ならば女性器の中、男性ならば性器見分の後に……肛門まで調べるのが規則なんだよ……」 西野警視正は何だか「肛門」という言葉を発するのを躊躇っているような気がした。 もしかして幸樹と俺の関係を推察しているんじゃ
「この封筒を開けている時に柏木先生が状況を確認しに来られて、医局中は騒然となりました。全員が居たかどうかはすみません、確認しておりません」 祐樹が照れくさそうにサラサラの黒い前髪を男らしい指で掻き上げている。 そういう表情を祐樹が浮かべることは滅多にない
「どんな点ですか?」 俄然興味が出て来て彼の方へと身を乗り出した。 ロンドンの街が最愛の人と祐樹を歓迎しているのか、今までに通りすがった人がいないので少し距離を詰めても大丈夫だろう。「蛇にミルクをご褒美にして調教したという点だな」 ああ、あの話かと思った
コンビニ強盗が身柄を確保されたのだから常識的に考えるとそうなる。俺もこの「事件」に巻き込まれるまでは知らなかったんだけど、警察は軍隊に似ていて指揮官の命令が全てだ。 だからこの緊急配備を指示した人が終了の合図を出すまで終わらない。「はい。本部から解除し
何だか誇らしいような照れくさいような気持ちだった。 祐樹と二人で自分の執務室に入ると秘書が席を立って出迎えてくれた。 呉先生のアドバイスは「自分は成功を1mmたりとも疑っていないと祐樹に確信させないといけない」というものだった。 だったら秘書に報告する
「国費で留学した夏目漱石がこの地に居た当時、ちなみにシャーロックホームズが活躍していたと作者のコナンドイルが書いたのも同じ頃だ。 だから、シャーロックホームズと夏目漱石が会って共に事件を解決したという小説が日本の推理小説作家によって書かれている。なかなか
「発作が起こった時全てではないですが、管轄内にある心療内科・精神科のクリニックの先生をパトカーで迎えに行っています。 外部との接触は精神科の医師やナースだけです。 自室に閉じこもっていた頃も、時折、母親に言わせると意味不明なことを叫び散らかしたり二階の個
祐樹には「怒っている顔も魅力的」と言われたが、祐樹は心にもないことが言えるという素晴らしい才能を持っている。 それも自分には到底真似の出来ないレベルだ。 自分と二人きりの時にはその才能を発揮していないらしいのだけれども。 ただ、祐樹が夜勤で不在の時に家
「それは……。今回は黒木准教授と長岡先生に理由を話して手術のリスケジュールをお願いした。 しかも、お盆休みが重なったのも幸いして比較的長い休みを取ることが出来たのだが、そうそうヨーロッパには来られないだろう? あのホテルの経営陣とか出資者などの関係者と懇
今日無事に届きました!ポチって下さるだけでも嬉しいのに、気管支炎のお見舞いまで頂いてしまいました。リコメもままならない私なのですが、本当に有難う御座います~!Yahoo!ブログ時代からの読者様はご存知かと思いますが、気管支炎は年中行事なので何だか恐縮です。読者
「確か生活安全課の浜口警部……でしたよね」 西野警視正は記憶を確かめるような感じの口調だった。 生活安全課……、警察内部の詳しい仕事内容は俺が知っているわけはないんだけれど「市民の生活を守る」みたいな課なんじゃないかなって。 浜口警部は何だか市役所の職員
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「このマンゴーは宮崎県産の『太陽のタマゴ』と呼ばれる物だそうです。その中でも全体の5%しかない最上級の『太陽のタマゴ赤秀品』しか使っていないと申しておりました」 最愛の人は怜悧な顔に更に興味を惹かれた表情を浮かべている。「それはこのホテルなどの特殊なルー
心臓バイパス術の世界的権威の彼が「自信がある」と言っているのは謙遜、いや控えめな性格の人だから案外本音かも知れない。ウチの大学病院に彼の手技を慕って国内外から患者さんが押し寄せて来るのも事実だ。他科はせいぜい日本国内だけなので「病院の看板教授」とか「稼
彼の言う通り、ずんだ生クリーム味よりも気になっているモノがあったのも事実だ。「どうしてそう思われたのですか?」 最愛の人は街路樹の葉っぱよりも綺麗な翡翠色の笑みを浮かべている。宴会を途中で抜け出して来ていて、乾杯その他でビールを呑んでいるのに僅かに上気
祐樹の目配せと腕の動きに呼応したのは呉先生の方(ほう)が早かった。というか最愛の人は何だか精緻な氷の彫像になっているかのように足が動かないという感じで……。最前列のベテランかつ常連と思しき外科医を丁寧だが有無を言わさずといった感じで森技官が肩を手に乗せる
「ラッフルズホテルでは木で完熟させたパイナップルを使っているので、鮮度が全く異なるらしいな」 そういえばそんなことを聞いた覚えがある。祐樹は脳の容量が美味しそうに苺のカクテルを呑んでいる人よりも格段に劣るので忘れても良いと判断したことは即座に脳の中のゴミ
「素晴らしい!久々に感動に価(あたい)する手技だった!!」「サムライボーイ、凄かった!」 そんな声が会場に響き渡っている。 紹介されて直ぐに喋りだすよりも数十秒間は待った方(ほう)が良いと判断した。理由は二つで熱狂してくれている外科医達の感情の発露をさせ、少
「はー!やっと終わりましたね、日本心臓医学会」 副会長が閉会の挨拶をしているのを聞き流して、ひそひそ話を交わそうと目論んだ。いつぞやリッツカールトン大阪の中華レストランでなし崩し的に決まった理事職は祐樹が囁きかけている最愛の人は条件を満たしているが香川外
同性から狙われたら最悪なのは祐樹も充分理解していた。若干華奢な身体とはいえ職業柄力も有る人だけれども男性に押し倒されるとか薬物を盛られるとかで抵抗不能になる事態もあり得る。病院ではそんな無体なコトを仕出かす大バカ者はいないだろう。教授職という大学病院の
最愛の人に向けたスピーチを今一度脳裏で再生していると、ドアが両方とも開かれた。そのホテルマンだかは肘を折ってコナーズ教授と祐樹をパーティ会場と思しき場所に誘(いざな)ってくれている。先に挨拶をするのはコナーズ教授なので後ろに続いた。 煌々と光り輝くレセプ
森技官の助太刀をするのも、国際公開手術の妬み混じりの質問に答えてくれた彼の恩は返さなければならないからだ。さほど酷く意地悪な質問が飛んで来なかったが、それは結果論に過ぎない。「レセプション会場では私などよりももっとお詳しい香川教授もいらっしゃいますし、
約九千万円をタンスの肥やしか書斎の机の中の抽斗(ひきだし)もしくは金庫の中くらいしか祐樹には推測出来ないが、何処(どこ)にせよ祐樹的には目の飛び出るような大金を忘れて放置しておくなんて信じられない。そもそも医局の同僚ではあるけれども家に行くほど親しくはない
お何故こんなにもコナーズ先生が皇室の正装に興味を持つのか全く分からない。祐樹が見た映画で植民地でのイギリス人の振る舞いはどこに行っても現地人のことを同じ人間と思っていないという権高(けんだか)さと横柄さだった。 アガサ・クリスティーのエジプトを舞台にした
一人腑に落ちた感じのコナーズ先生は話を続けている。「その尊敬する上司がベルリンのレセプション会場でそう言ってくれたから田中先生もいつか来るべき国際公開手術のために英会話もマスターしようと考えたのかね?」 コナーズ先生は興味津々といった感じだった。「全く
海外の銀行の場合通帳がないことも多いと最愛の人に聞いていた。 即座に既読が付いたかと思うと、世界一有名なネズミのキャラクターが飛び跳ねて喜んでいるスタンプが送られてきた。医師同士では文字だけでやり取りするのが不文律になっている。それがスタンプを送って来
頭を下げてもコナーズ先生がその価値を見出していなかった場合は徒労に終わる。けれども話の流れでそうはならない気がしていた。 海外の学会に講師として招待されるレベルに達しているのは救急救命室の北教授しか今の大学病院に存在しない。救急救命室の采配をしなければ
何だっただろう?危機(リスク)回避(ヘッジ)というからには資産運用関係だろうと思うのだけれども……。きっと脳が一時的に忘れてしまっているだけなので、この際、今日あったことを話していけば思い出すだろう。「そういえばウチの医局の三好看護師がNISAについて詳し
副会長のコナーズ先生に身元保証を頼んだのは最愛の人自身の判断だろうが、それなりに親しかったのだろう。 と言っても、祐樹は世界レベルの医師の世界をほとんど知らない。この国際公開手術に成功するまでは一介の大学病院勤務の医師だ。 最愛の人はアメリカ時代にその
「タワーマンションが好きな人を否定する積りはなかったのだけれども……。 私の場合、祐樹と明石海峡大橋が眼前に見えるホテルに泊まったりこのホテルのクラブラウンジや部屋から大阪城を見下ろしたりするのは好きだ……。ただ、そういう特別で格別な景色は特別な日だけで
コナーズ先生は暗い顔をしている。やはり含むところがあるのかも知れない。「田中先生ここだけの話なのだけれどもね……」 深刻そうな表情で祐樹を仮設っぽい応接室スペースに誘った。 ステッキを見て英国貴族のようだと思っていたが、コナーズ先生は途中の机に置いてあ
祐樹が内心を「ある意味」偽って、いや優しい嘘かもしれない表情を、煌めく眼差しで見つめている最愛の人は見透かせなかったようで安心した。 容姿端麗、しかも祐樹好みの大輪の花のような風情だ。そして祐樹の知る限り最高に頭脳明晰な人なのだけれども、想像力に欠ける
「田中先生、執刀医お疲れ様。楽しい手術だった。香川……教授とは全く異なるのだな……」 執刀を終えてシャワールームから出た祐樹に第一助手を務めてくれた柏木先生が親し気な笑みを浮かべて肩を叩いてきた。「楽しいですか?褒(ほ)め言葉なのですよね?」 最愛の人の午
「要するに、入院中は治外法権的な感じで見逃されても、そういう良からぬウワサの有る宮家を後押ししている白足袋族の一人に融通を計ってもらっていたらYouTubeで名指しをされてしまう危惧があるというわけですか……。 確かにそれはかなりマズい気がしますね……」 政治の
「相場を知らなければ大損をすることになるな……。 心理学の興味深いレポートに『人は日常の金銭感覚とあまりにもかけ離れた大金を動かす時には普段の危機感がなくなる傾向が強い』というのが有って、普段はスーパーの野菜などの値段を数円とか数十円単位で節約しているご
読者様、大雨の被害は大丈夫でしたか?私は自転車で十分ほどの所に会社名義で借りている事務所から帰る時には下着までぐっしょりでした……。大きな被害がないことを祈ります。 さて、昨日何気なくブログの管理画面のアクセス解析を見たところ、拙作「心は闇に囚われて
「一介の医局員に過ぎない私のような立場でなってしまっても良いのか若干悩みましたが、聡と出張扱いでご一緒出来る絶好の機会ですのでついつい引き受けてしまいました。 東京以外には出張ってなかったですからね。これから旧国立大学所在地を二人で順番に回ることが出来る
「山科さんは『白(しろ)足袋(たび)族』だろう……。それでやっと思い出したのだけれども、皇室の方を是非京都に住んで貰いたいとか、そういった皇室への熱心なアプローチをしているみたいだ。 今の天皇皇后両陛下ではなくて、その弟宮様夫妻なども白足袋族との関与がYouTube
「医師という職業は他の職種に比べて銀行の融資が通りやすいというのが実情らしい。極度額は6千万円が相場だとPB(プライベートバンク)の担当者から聞いた。元々はメガバンクとか証券会社出身の人達が多い会社なのでその情報は確かだろうな」 お箸で器用に豪華版の卵かけ
事務所で何気なく上のチケットをパラパラとめくっていたら!(ちなみに阪急阪神ホールディングスの株は200株持っています)「グループ優待券」にこんな文字が一泊15%OFFでした!!クラブフロアも泊まることが可能かな?と電話を掛けて聞いてみました。朝ご飯付きと
「そうです。今日までは内緒にしておこうと思いまして。 救急救命室に行く前に病院を抜け出して百貨店に行きました。貴方のサイズは呉先生よりも若干大きい程度なので、呉先生で試着を。 ちなみに、森技官も試着したラベンダー色の同じデザインを物凄く気に入って買ってい
隣に凛とした感じで座っている最愛の人は切れ長の目を大きく瞠(みは)って薄めの唇には大輪の花のような笑みを浮かべている。「私だって日本全国津々浦々のお菓子を知悉しているわけではないので食べてみないことには分からないな。 少なくとも京都の百貨店で売られている
「どちらにせよ、元本割れのリスクは有るけれども、投資は株式とか建物などの資産を持っておいて配当金とか家賃とかでお金を増やすことだな。 投機は上がるか下がるかの賭け(ギャンブル)をしているイメージだろうか……?ハイリスク・ハイリターンを狙うならば投機だろうな
「愛する聡と……こうしている時が、最も敏感な……場所で、かつ私にしか許して……下さらない場所で繋がって……いる感じが……最高に……幸せです、よ……」 根本まで花園の中に挿(い)れるとそれだけで真珠の放埓をばら撒いてしまいそうになるのを必死で耐えつつ言葉を告
人気ブログランキング様やにほんブログ村様から来て頂いている読者様は既にお気付きかと思いますが、また画像を頂きました♡「これはちょっと違う」とか「身長差逆になりませんか?」とか色々リクエストしてしまってすみません。ただ、頭の中に有るイメージを伝えるのは難し
チョコはGODIVA一択とYahooブログで散々書いていたら「お見舞い」に頂きました!とても嬉しいです😃読んでいただけるだけでも幸せなのに。花の箱もとても可愛くて開けた途端に「わぁ!!」ってなりました。有難うございました!!あれ?よく見たら下の段向かって右の二個目ひ
「頂きます」 少し頭を下げてからお茶を口にした。親しき中にも礼儀ありというのが祐樹の信条だったので。 口の中には微かな甘みと苦みが程よく調和して円(まろ)やかな爽快感が広がった。「美味しいです。鬼退治アニメの主人公が始まりの呼吸の剣士の動きを模した絡繰(から
「確かにそうだな……。私は院長先生の厚意で予備校に通うことが出来たし、別に名前を匿名にしておく必要もないので模試の結果発表の冊子に名前は載るようにしていた。 親御さんが医師で自分も医学部に合格しなければならないのに全然良い判定が貰えなくて必死に勉強してい
お湯呑みと茶托が二つ、そして茶筒や厚い布をかぶせたティポットに似た形状の物や急須が置かれている。急須とティポットは同じような用途で使うので何故だろうと思っていたのだけれども、最愛の人は綿入りと思しき緑色の絹を細く長い指で持ち上げた。「ああ、この模様は『
「炎の柱は世襲ですよね。そして痣のことも『無限列車』で活躍したキャラのお父さんが読んでいた書物に――主人公の耳飾りも『書いてあった』と父親が逆切れの嫉妬の余り、ずたずたに破いてしまっていましたけれど――『痣(あざ)』という文字が辛うじて読めたました。ああ、
薄紅色の花びらの中につぷりと指を挿(い)れると厚く熱いシルクがひたりと包み込んでは奥へと誘ってくれる。「あっ……」 満開に咲いた花の満足げな溜め息のような婀娜(あだ)めいた声がシーツの波を紅く染めるようだった。「聡の花園の極上のシルクの感触には、私が差し上
「真言宗や天台宗の寺院は女人(にょにん)禁制だった。稚児は器量(きりょう)の良い子供が選ばれやすかったらしい……。 寺の門から出ることが出来ない大人の僧侶達にとって、稚児は『そういう』欲望というか、憧れの対象として見られていたみたいだな……。 日本の芸能人は