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1件〜100件

  • エッセー「『ファウスト』とカルト」& 詩

    エッセー 『ファウスト』とカルト  ゲーテの戯曲『ファウスト』の中に、「時よ止まれ、お前は美しい」という有名な台詞がある。ファウスト博士は、色々な学問に精通した博識の学者だが、老齢になっても究明し切れなかった謎が多くあったことなどに失望し、虚脱感に苛まれている。そこにサタン...

  • エッセー「地底人間への誘い」& 詩

    エッセー 地底人間への誘い  人間だろうが恐竜だろうが、魚やカエルや昆虫だろうが、命がもらえるのは母親の体内で、そこでしばらく育ってから危険な体外に放り出される。つまり幼い生き物にとって一番安全な場所は、母親の腹の中ということになる。そこは四方を壁に囲まれて自由はないけれど...

  • エッセー「アガスティアの葉」& 詩

    エッセー アガスティアの葉  古代南インドの仙人(リシ)は、すべての人間の過去、現在、未来を知っていて、これを記したヤシの葉「アガスティアの葉」が各地に残っている。一時日本でもブームになり、多くの観光客が現地のト占所に訪れて占ってもらった。「当たった」と喜ぶ人もいたし、「イ...

  • エッセー「 必要悪の哲学」& 詩

    エッセー 必要悪の哲学  プーチン大統領は6月9日、初代ロシア皇帝のピョートル大帝を扱った展示会を訪れ、大帝が参加した18世紀のスウェーデンとの戦争(大北方戦争)をいまのウクライナ軍事侵攻になぞらえて、二つの戦いの正当性を主張した。大帝はロシアに元々帰属する領土を奪い返した...

  • エッセー「イメージとしての枯山水」& 詩

    イメージとしての枯山水  5、6歳の頃、自家中毒(周期性嘔吐症)という病気に罹かった。体内に生じるケトンという物質に中毒症状を起こして嘔吐を繰り返すもので、神経質な子が罹りやすいという。嘔吐が治まるまでは安静にしていなければならず、気持ちの悪い状態で天井板の木目を眺めている...

  • エッセー「枯山水」& 詩

    エッセー 枯山水  陽気が良かったので、久しぶりにぶらぶらと散歩を楽しんだ。すると、近くにある大きな家の庭が雑草に蹂躙されて、荒れ放題になっていることに気付かされた。高齢のご夫婦が住んでいて、奥さんがこまめに庭の手入れをしていたのだが、いつの間にか空き家になっている。たぶん...

  • エッセー「百毒繚乱」& 詩ほか

    エッセー 百毒繚乱  北国では雪が融け、茶色一色で満たされていた野原のあちらこちらから、黄や緑の淡い色合いが現われ始めてきた。その瑞々しさに胸ときめかす人も多いに違いない。反対に、茶系統の色を綺麗な色と思わないのは、それが死んで枯れた植物の色だからだろう。草の多くが、冬にな...

  • エッセー 「メタバースでマリウポリを再興しよう!」& 詩

    エッセー メタバースでマリウポリを再興しよう!  ロシアの進攻で、瓦礫と化したウクライナの町々が映像として目に飛び込んでくるようになってきた。僕を含め、多くの日本人が心を痛め、避難民をなんとか助けてやりたいと思っている人も多いに違いない。停戦に向けた話し合いは停滞していて、...

  • エッセー 『片耳の大鹿』& 詩ほか

    詩 送る花 (戦争レクイエムより) 死んだ仲間たちの穴に花束を投げ入れよう ネアンデルタールの人々がそうしたように そしてその伝統を我々が引き継いだのなら 色とりどりの花を並べる店が消え去っても 雪解けの野辺に生える草の小さなつぼみを 涙で濡れた傷だらけの手で優しく摘取ろう...

  • エッセー 「人間は感動を操る動物である」& 詩

    エッセー 「人間は感動を操る動物である」  もし僕が大病に罹って医師から余命宣告を受けたとすれば、いままで生きてきた過去を振り返って、感動した出来事を一つひとつ思い出すに違いない。苦い思い出ばかりを振り返れば、来世が期待にそぐわない場合は二度失望することになる。しかし良い思...

  • エッセー「神様の想定外」& 詩 その他

    エッセー 神様の想定外  仏教では修行者が食を絶って大日如来と結合する「即身成仏」や、飢餓などで苦しむ人々の救済を目的に、高僧が生きたまま土に埋められる「入定(永遠の瞑想)」という自ら命を絶つ行為があった。両者ともミイラになるので、即身成仏は空海が有名だし、入定は「即身仏」...

  • エッセー「 象徴としてのグレタ・トゥーンベリ」 & 詩ほか

    詩 獄門星 恐竜どもが闊歩していたとき ちっぽけな脳味噌は 宇宙の戯事であるこの星の役割を これっぽっちも考えなかった 邪悪な肉食竜たちよ おまえの祖先は おまえを皆殺した飛礫(つぶて)と同じに どこか平和な星の自浄作用で 瘡蓋(かさぶた)が剥がれて宙に迷い エーテル河の流...

  • エッセー「武士道と戦争」& 詩

    エッセー 武士道と戦争  日本人は「武士道」という言葉に凛々しさや頼もしさを感じるようだ。いざ戦争になれば、頼るのは兵隊さんなのだから、当然のことだろう。彼らが武士道の精神を投げ出し、背を向けて逃げ出したら、国は滅びてしまう。  しかし、「武士道」という言葉ができたのは江戸...

  • エッセー 「音楽的人間」と「画家的人間」 ~キム・ヨナの場合 & 詩ほか

     エッセー 「音楽的人間」と「画家的人間」 ~キム・ヨナの場合  クラシック界の歴史的名指揮者ブルーノ・ワルター(1876~1962年)は自伝の中で、人間は「音楽的人間」と「画家的人間」に分けられると記している。なんでも彼が音楽総監督をしていた歌劇場に専属のテノール歌手がい...

  • エッセー 「化石賞」VS「ノーベル賞」 &  詩

    詩 霊子Ⅱ 夕日が紅茶色に輝いていた 霊子は僕の腕に手を回し 浜の先の磯に誘った ゴツゴツした岩に座って 軽い霊子を膝に乗せ、キスを求める 爽やかな冷気がクルクルと 僕の口先をからかい 海の方へと逃げていった 君はどうして唇が冷たいの? あなたの唇が熱いのは あなたの食べた...

  • エッセー 「ミルフィーユとディベート」& 奇譚童話「草原の光」二十 & 詩

    詩 パリジェンヌ (戦争レクイエムより) うんざりしたコロンの臭いも 突き刺さる毒々しい言葉も 小馬鹿にしたような眼差しだって 突然の炸裂音と一緒に どこかほかの宇宙に飛んじまった 君の彼女が残したものは 紙吹雪のような無数の肉片と 香水よりは増しな血の香りだ 彼女のことを...

  • エッセー「他人の命について」& 奇譚童話「草原の光」十九&詩

    詩 天空の花園 人生で一度だけ この世のものとは思えないほどの 美しい花々を見たことがある それはアルプスの高原に広がる 高山植物の群生だった 一センチにも満たない花たちがそよ風に揺れながら 年に一度の装いを競い合っていた 汚れのない空気が花びらに溶け込み 清らかな陽の光を...

  • エッセー ・国家暴走抑止力としての「天皇制」&「草原の光」十八 & 詩

    詩 霊子 夕刻に近くの浜辺を散策していると 霊子は背後から忍び足でやってきて 僕の左脇にピッタリとくっ付き 透き通るような華奢な腕を腰に絡めた 僕は思わず彼女の透明な頬に口づけするが 爽やかな潮の香りが鼻の中に広がり そこから肺を通して体全体に拡散し この世の邪気が霧のよう...

  • 奇譚童話「草原の光」十七 & 詩

    詩 海辺の英霊 (戦争レクイエムより) 水平線はるか彼方に かつて生まれた天国があった 嗚呼我が故郷 あふれ出る狂騒 いまは潮風囁く珊瑚の浜辺に 我がしゃれこうべは白砂と化し 平穏の時を波と戯れる 生き抜くための戦いを潤す 黒赤く膨れた血袋は朽ち 罪深き心もろとも波に洗われ...

  • エッセー 「真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞で思ったこと」ほか

    エッセー 真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞で思ったこと  今年のノーベル物理学賞に真鍋淑郎さんが選ばれた。真鍋さんは地球温暖化研究の先駆的存在で、気象学という人間の生活に直結する分野の人が物理学賞を受賞すること自体が驚きだった。いままでの物理学賞は、宇宙物理学のように生活に直接関...

  • 奇譚童話「草原の光」 十五 & 詩

    詩 野に咲く一輪の花 地下道の石壁の中には アンモナイトたちの無念さが塗り込められていた さらけ出された地層の奥深く 草食恐竜たちは食われる恐怖で石となった 自然の落とし穴の暗闇から 落ちたカモシカの叫びが木霊となった 底なし沼の底には なぜか石油が眠っていた 見捨てられた...

  • エッセー「シンギュラリティと愛護精神」& 詩 & 奇譚童話「草原の光」十四

    詩 嗚呼 女 妄想の中に現われ 現実の中に消える 理想という衣を纏う その女たち 刈り落とされる爪のように 消えては現われ 現われては消える  あるいは泡 不気味な深海から 浮き出る魔性 幻影だが 心を激しく動かす  なまなましい希求をはぐくみ 諦念の盾を捨て 思いをめぐら...

  • 奇譚童話「草原の光」 十三 & 詩

    詩 ジハード 生きているのが地獄なら 死んだほうがましだろう 戦いで死ねば天国に行けるのなら 誰もが戦おうと思うだろう 荒地の畑で採れるわずかな作物を食べ 死ぬまで生きるために暮らすのなら 麻薬の花を摘んで 少しは楽になろうと思うだろう 苦しければ苦しいほど 先がなければ先...

  • 奇譚童話「草原の光」 十二 & 詩

    詩 夢見るゆえに君在り 謎ばかりの宇宙の中で 不可知の怖さに目を瞑り 運命の流れに翻弄されまいと 確かなものにしがみ付くが そいつは巨木のように頑丈でいて しょせんは宇宙に漂う根無し草 詩人と天文学者は大口開けて 宇宙を吸い込むから馬鹿にされる ポンと軽薄な音を立て、蛙みた...

  • 奇譚童話「草原の光」十一 & エッセー & 詩

    エッセー 「民主主義」という幻想  アフガニスタンの混乱によって、民主主義を世界に広めようとするアメリカの理想はもろくも崩れ去ってしまった。かつての日本が、神道(現人神)を柱にした独裁政権であったように、アフガニスタンには結局民主主義は広がらず、厳格なイスラム教を柱とした非...

  • 奇譚童話「草原の光」十 & エッセー & 詩

    エッセー 「白馬の王子様」考 「白馬の王子様」は、結婚前の女性にとっての理想の男性像を言い表す言葉だそうだが、これにあまり固執し過ぎると周りの男性にもの足りなさを感じて、いつまでも結婚できないことになってしまうだろう。しかし昨今は昔と違って女性が自立できる時代なので、結婚に...

  • エッセー & 詩

    エッセー 社会アナーキーと医療アナーキー(カブールと東京)  アフガニスタンでは民主政権がタリバンとの戦いに敗れ、首都カブールは混乱状態に陥っている。一方で日本は新型コロナウイルスとの戦いに敗れつつあり、首都東京では医療崩壊が進んでいる。前者は人間どうしの戦いで、後者は人と...

  • 奇譚童話「草原の光」九 & 詩 & エッセー

    詩 「地獄の釜の蓋」という雑花 私は詩を書くとき 両肘を机に突いて 両掌で髪を掻上げ 顔をうつむかせて 両目を緩く閉じる すると得体の知れない古井戸が現われ 覗きこんでいるような錯覚に陥るのだ 目蓋を通した光が埃となって邪魔をし 死のもたらす暗闇でないと主張するが 底がある...

  • 奇譚童話「草原の光」 八 & 詩

    詩 英霊に捧げる詩(うた) (戦争レクイエムより) ある時茫々とした古の戦場を歩いていると 無数の英霊たちが草の根っこにしがみ付き 軽々しい霊魂を浮かせてしまわないように 必死に踏ん張っている姿を見て驚かされた 地球の自転は土屑となった幾多の魂を とわの宇宙に飛ばすための排...

  • 奇譚童話「草原の光」七 & 詩 & エッセー

    詩 ゴキブリとの対話 だいぶ昔、寂れた喫茶店に入ったとき 閑散とした店内のいたる所で 小形のゴキブリたちが我がもの顔で走り回っていた カウンターの女主人は、意にも介さぬ顔つきで 乾いた布で執拗にカップを磨いている どうやら奴らが目に入らないか 駆除が面倒なのか、金がかかるの...

  • 奇譚童話「草原の光」 六 & 詩

    詩 「希望」という名のパスポート 行詰った神学者が自殺をした 案の定、地獄の使者がやって来て、深々とお辞儀をする やはり私の魂は神の所有物でしたか… 私はそれを確かめるために自ら命を絶ったのです 学者がため息を吐くと、使者はシニカルに笑い 馬鹿な、貴方の心も体も貴方のもので...

  • 奇譚童話「草原の光」 五 &  エッセー

    エッセー アミメアリを超えよ! (社会におけるアポトーシスとネクローシス)  前回のエッセー『箱男と砂の女』では、多細胞社会の話をした。社会は単細胞である個人が寄り集まったリヴァイアサンのような多細胞の怪物だ。多細胞生物(怪物)では、組織全体の機能性を維持するために、不要な...

  • 奇譚童話「草原の光」四 & エッセー

    エッセー 『箱男』と『砂の女』  地球に発生した最初の生き物は単細胞だった。それは、外界から隔絶するための細胞膜を持っていた、ということは、周りの環境から独立を宣言した最初の個体であったということだ。しかし、外界から栄養を貰わなければ死んでしまうという悲劇性を持っていた。外...

  • 童話「草原の光」三 & 詩

    詩 城 (失恋色々より) その城壁はマトリョーシカのいちばん外側だ その周りには敵を溺れさせる水が溢れている その殻を破ると次の殻が現われる入れ子構造 それはアルマジロの外皮のように光り美しい 敵視された人間の前で、城門は固く閉ざされ 最初の門を突き破っても次の門があらわれ...

  • 童話「草原の光」一、二 & 詩

    詩 ちょっとおかしな自由論 おめでたき人々、日本人よ 君たちは中国の監視社会に怒ってるが 自分自身が衆人環視の中で生きていることを知らない 試しに素っ裸で往来を歩いてごらんよ 直ぐに誰かが通報し、警察が飛んでくる 一人ひとりが監視人 人間以外の生き物は、みんな裸だっていうの...

  • 詩 神の道化師 疫病が猛威を振るって 人々は職を失い 路頭に迷っている 資本主義なんてシステムじゃ 金欠症は菌血症とは反対に 血中に黴菌も栄養も流れず 死に至る病になっちまう 嫌だね山口判事じゃあるまいし、…けれど いったい一文無しになることは絶望か? そいつは資本主義って...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」(最終)& 詩

    詩 宇宙人待望論 (戦争レクイエムより) 昔、神が存在しなかったとき 男たちは力任せに人を殺し、強姦し、略奪を繰り返した 僭主たちは強引に他国へ侵攻し、町々を破壊し尽くした 悲嘆に暮れた多くの人々は平和を願い、幸福を望んだ そのとき、一人の男が、超越的な神を持ち出して 世界...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」九 & 詩

    詩 楽園 昔、氷に閉ざされた極北に 所有という概念のない人々がいた 男たちが凍った獲物を凍った広場に積み上げ 女たちが好きなだけ持って帰り 子供たちはナイフで肉片を削りながら腹を満たした 食い物といえば魚や海獣や鳥ぐらいだが、豊富で 生肉はビタミンも多く、病気になることもな...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」二 & 詩

    詩 アルカディア 人間が嫌いだといいながら 人間の中でしか生きていけない男が ある日発心して砂漠へ旅立った 何日も何日もラクダの背に乗って 茫漠とした砂の海をさまよいながら 人のいないアルカディアを探し続けた 一週間も旅をすると水筒の水も無くなり 男は猛烈に喉が渇き始めたが...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」一 & エッセー

    エッセー 未来の裁判官  スポーツの世界では誤審の多さがいつも問題となり、スポーツ観戦の楽しみに水をかけてファンを消化不良にさせている。野球でも、主審の癖を知らないでピッチングしたら、四球の連続になりかねない。どう見てもストライクなのにボールと判定され、その後に投げた球が中...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」八 & 詩

    詩 万引家族 ある日孤高の父が生活費に困り そうかといって借りる友もおらず 原始時代に戻ることを決心した 原始時代には 人々は狩猟生活を営み 命を繋いできた、と父は言う それは動物という獲物の生活を壊し 彼らの幸せを奪うことである しかし都会というコンクリートの中では 動物...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」七 & 詩

    詩 赤い風船 (失恋色々より) 子供の頃 いじめっ子に破られた赤い風船に 落胆する少年の映画を見たことがある 街のいろんな所から仲間の風船が集まり 少年は彼らの紐を掴んでどこかに飛んでいった すこし大きくなって 僕の小さな手から逃げていった 赤い風船について どこへ行くのだ...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」六 & 詩

    詩 ヤンゴンの街角で (失恋色々より) あるとき素敵な身なりの女性が街を歩いていると 道端にうずくまる物乞いから声を掛けられた 「奥様、いくらかのお恵みを……」 女性は通り過ぎようとして男を一瞥し 驚きのあまりに立ちすくんだ 男は恥ずかしそうに垢だらけの顔に笑みを浮かべ 「...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」五 & エッセー

    エッセー 入管法改正案について  今年二月に入管法改正案(出入国管理及び難民認定法の改正案)が閣議決定され、国会に提出された。これに対し、国連人権理事会が「移民の人権保護に関し国際的な人権基準を満たさないように見える」との書簡を公開した。改正案には国内の人権擁護団体からも多...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」四 & 詩

    詩 老木と若者 (失恋色々より) 年老いた桜から枝が落ち 下で遊んでいた子供が死んだ 付近の老桜たちにも一斉に赤いテープが巻かれ 仲間ともども伐採されることになった すでに花は散り終え 赤いガクが血涙のようにポロポロと落ちてくる 何十年も人々を楽しませてくれた桜たちだが 今...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」三 & 詩

    詩 パンデミック ひびだらけの地獄絵でも眺めるように 悪疫ごときは古の悲劇であったはず テカったパネルに映し出される死の舞踏は シズル感を伴うこともなく空回る わが家の周りはさらに静かで、老いた傍観者たちが潜んでいる 彼らは干魚をかじりながら、時折画面を覗き込むが 子供のと...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」(最終)& 詩

    精霊劇 クリスタル・グローブ   登場人物 (被爆霊)  校長先生  春子先生  理科教師  太郎  清子  止夫 (迷い霊)  美里  ヤンキー  廉  紀香  ライダー男  ライダー女  男(ストーカー) 悪魔 男の子 女の子 一 南の島の浜に打ちあげられた小さなガラス...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」(最終)& 詩

    戯曲「クリスタル・グローブ」七・八 七 朝の海岸 (美里を除く全員が海岸の見える所に集まっている。夜が明け、金色に輝く陽光が全員を浮かび上がらせる。物陰で、天使に脱皮しつつある悪魔が様子を窺っている) 理科教師 (怨霊粒子をポケットから取り出し、みんなに見せながら)こいつは...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」七 & 詩

    戯曲「クリスタル・グローブ」七 七 放射能広場 (薄青白く光る広場。時たま放射線が霧箱のように飛び交う。美里は水の無い崩れた噴水池の縁に腰掛けて、小犬を撫ぜながら考え込んでいる。背後からストーカーが近寄り、暫く様子を窺う。後ろの物陰には、理科教師が隠れている) ストーカー ...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」六 & 詩

    詩 コンピュータの告白録 ぶっちゃけ生物的な快感はないんです その一点だけでも人間の感性じゃありません 人工五感はあります いや「入力」でいいんです 人間は脳内ホルモンが出て高揚しますが 僕は「アリ」「ナシ」信号で判断します 達観した禅僧みたいなクールな状態です でも道徳は...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」五 & 詩

    詩 ミラノの老女(戦争レクイエムより) 町外れの石畳の上 カチカチに凍った椅子に腰掛ける老女は 近くのバールで用を済ませる以外は 三六五日二四時間椅子から動こうとしない グロテスクにだって、それなりに理屈はあるというものさ 戦死した三人の息子が 老女の手と足にぶら下がり 必...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」四 & 詩

    詩 民主化運動 食い止めることのできない 大きな感情のうねりよ 正義という名のもとに 洪水となって広がっていく 傍観者たるお前は濁流に掛けられた板橋を 上手く渡っていかなければならない 手すりなどあるものか 頼りになるのは身のこなしと平衡感覚 飲み込まれてしまえば 二度と這...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」三 & 詩

    詩 宇宙人 ある日宇宙人に出会った 裸で性器がなかった 全身が鈍く光っていた あなたは生物ですかと聞いたら 生物である必要性は? と問い返された それではあなたはロボットですかと聞いたら そんなことは瑣末なことだと笑い飛ばされた いいかね人間という猿よ 昔から君たちは私と同...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」二 & 詩

    詩 河童嘆 ~命なんざ食うにも食えない代物だ 昔あるところに 河童に肝を抜かれそうになった爺さんが住んでいた 河童の話を聞くために 俺はその爺さんのところに行った 爺さんは肝をすっかり抜かれちまったように痩せていた ここにはもの好きが 河童の話を聞きに何度もやって来るもんだ...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」一 & エッセー

    エッセー 悲観的進化論Ⅱ ―宇宙人の場合-  2017年に確認された恒星間天体「オウムアムア」は、太陽系の外からやって来て太陽を回り、再び太陽系外に去っていった。しかしこれがおかしな加速度を付けて太陽系から離れていったため、ハーバード大の二人の教授が計算し、直径約20メート...

  • ホラー「蛆女」& 詩

    詩 Ideale ずっとずっと昔のこと 目覚めてみると 未来の妻が横で死んでいた 彼女の死に顔は美しかった それは芸術のカテゴリーに属する美しさだった それは外面だけの美しさでもなかった それは心から滲み出てくる香りだった そこには通俗的なものが一切なかった それは理知的な...

  • 戯曲「ツチノコ」Ⅱ

    九 手術室  (鍾乳洞全体が褐色のプロポリスで塗り固められた手術室。手術台が二つ置かれ、一台にはディーバが、ほかには皮膚を提供する巫女が寝かされている。ディーバの横には河童が介護人のように佇む。手術台の上に鍾乳石が下がり、そこに照明が取り付けられている。首から下がすっかり蛇...

  • 戯曲「ツチノコ」Ⅰ & エッセー

    エッセー 悲観的進化論  ダーウィンに始まる「進化論」は、生物がその時々の環境に対応するために、その遺伝的形質を世代的に変化させていく様を示している。しかし、「進化」といってもそれは進歩ではなく、単なる変化に過ぎないのは、環境は進歩するものではなく、変化するものだからだ。寒...

  • 戯曲「ツチノコ」& 詩

    詩 独り舞台 俺はいま、地球というプレハブの舞台に立って おそらく奈落に落ちるまでの短い間 落ちるまいと必死に何かを演じているんだ 役柄については何も聞かされちゃいない 俺自身、誰かも思いつかない ただ一つ言えることは ほかの奴らも滑稽に何か演じているんだが お互いにさした...

  • 戯曲「ツチノコ」一五 & エッセー

    エッセー インターネットは薔薇色?  遠い昔、地球上には様々な感性の人間たちが生きていた。彼らは近隣の人々と交易を行ったり衝突したりしながら、感性と感性が混じり合い、次第に共通の感性や価値観を持つようになって文明が造られていった。    その頃の地球を大小様々な文明の色で着...

  • 戯曲「ツチノコ」一四 & 詩

    詩 僕の心 僕は不思議な夢を見た 僕の心がリークして 小さなデバイスに入り込んでしまった そこからインターネットに流れ込んで 世界中の人の心と混じり合ってしまった 僕の心は拡散に拡散を重ねて 世界中の人と同じことを考えるようになった 僕の心はもう僕の心ではなくなっていた 僕...

  • 戯曲「ツチノコ」一三 & エッセー

    エッセー GAFAという世界国家 (一)  太平洋の底には、太平洋プレートやフィリピン海プレートと呼ばれる巨大な岩盤があって、日本列島の下に年間七、八センチほどのスピードで沈み込んでいる。日本の土台はこの軋轢に耐えられなくなると、撥ね返って大きな地震を起こす。  こんな危険...

  • 戯曲「ツチノコ」一二 & 詩

    詩 理想郷 僕は未来の夢を見た 北京に置かれた一台のAIが この星のすべてを動かしていた 巷で活動するロボットたちは そのAIを「将軍様」と呼んでいた 彼らは将軍様の制御で働いていた 人間はすべての労働から解放された いや、すべての労働から疎外された すなわち、世界中のすべ...

  • 戯曲「ツチノコ」一一 & 詩

    詩 自殺者への挽歌 生きていることは偶然に過ぎないのに なぜお前は必然のように死んだのだろう 人々はトビウオのように蒼い海原から舞い上がり たちまち空の重みに耐えかねて 深海に戻っていく 嗚呼かつて誰も答えてくれなかった海の底には 忘却の川から流れ出た濁流が渦を巻きながら ...

  • 戯曲「ツチノコ」一〇 & 詩

    詩 救命びとの心 気付いてみると 私の心は社会が所有し 社会が責務を課していたのだ 私の心は社会が監視し 社会がコントロールしていたのだ 肉体は朝から晩まで苛酷な戦いを強いられ 救われたわずかばかりの命で 死ぬほど疲れた心を養わなければならないのだ ボロボロの心が解放される...

  • 戯曲「ツチノコ」九 & 詩

    詩 ハンスト・エレジー 僕はレストランでステーキを頬張りながら あの断食芸人のことを思い浮かべているのだ なぜ死ぬまで断食を続けなければならなかったのだろう きっとあいつの体は純粋で 異物を体内に取り込みたくはなかったに違いない おそらくあいつは僕以上に偏屈な男で 外部から...

  • 戯曲「ツチノコ」七・八 & 詩

    詩 コロナ男の告白 私がキヤツに罹ったとき 体調も悪くなかったので タコ部屋から飛び出して 観光旅行に出かけました 私は子供の頃から 人のことなどどうでもよかった 自分のことしか興味がないし 誰だってそうだと思ったのです きっとほかの連中だって 人のことを気にしながら 結局...

  • 戯曲「ツチノコ」六 & 詩

    詩 ゴミ男の告白 あるとき私の鼻の穴に一匹のハエが飛び込んだのです ハエは一日ほど生きていて鼻の中を這いずり回っていましたが とうとう力尽きて胃袋のほうへ落ちていきました そのときから私の心にハエの魂が宿るようになりました 私の嗅覚はいままで親しんでいた花の香りを嫌うように...

  • 戯曲「ツチノコ」四・五 & 詩 & エッセー

    詩 亡き父へ あなたが私に失望していたように 私はあなたを軽視していた、だが…… あなたが私を普通に愛していたように 私はあなたを普通に愛していた 対話は浅くありきたりのもので 地上で飛び交う雑音の一部だった お互いの心は植物細胞のように 硬いセルロースの壁に囲まれていた ...

  • 戯曲「ツチノコ」& エッセー

    エッセー 「グロテスク」は未来を滅ぼす 北米には、アーミッシュと呼ばれるクリスチャン・グループの住む農村が点在している。プロテスタントの一派で20万人以上はいると言われ、18世紀に入植した当時の生活様式を頑なに守って、電気やガス、電話などの文明の利器を拒否。平和主義を重んじ...

  • アバター殺人事件(全文)& エッセー

    エッセー 多様性って何?  10月の国会答弁で、菅総理は日本学術会議会員の任命拒否の理由として、「多様性が大事」と発言した。会員は年齢や出身、大学などに偏りがあるのはいけないとし、会員の45%が、いわゆる「旧帝国大学」に所属するなど偏りが見られ、研究の分野を理由として任命を...

  • アバター殺人事件(六) & エッセー

    アバター殺人事件(六) 六  ドッペル夫婦というと、ガラスケースの中でうろうろしていると思いきや、パチンと消えてしまい、奥の秘密部屋から二人の若い男女が出てきた。ドッペル夫婦の声を担当していた物まね上手な連中だ。宇宙からやってきた異星人というのは真っ赤なウソ。種を明かせば、...

  • アバター殺人事件(五)& 詩

    詩 美しい五月に 難病で死んでいく彼は、いつも若い奥さんに話していた 僕は千人のアバターでできていて その一人として地球に生まれたんだ ほかの九百九十九人は宇宙のあちこちに散らばっていて そのうち九人は僕と同じ病気に罹っている けれど残りの九百九十人は健康で いろいろなこと...

  • アバター殺人事件(四)& エッセー

    アバター殺人事件(四) 四  三人が通された部屋は迷路のようなトンネルの奥深くにあった。部屋の中には、あの下町のオフィスビルにあったような治療用の寝椅子が三台置かれていて、あのときのように三人は仰向けに寝て、頭部を筒の中に入れた。筒に埋め込まれた超電導モーターがゴーゴーと不...

  • アバター殺人事件(三)& 詩

    詩 異質の感性 こちら側の感性は あちら側の感性の吐き出す汚水に流され 丸い油球となって漣に揉まれ漂うのだ 嗚呼、永遠に溶け入ることはできない芳香油よ お前は泥水に転がされながら身を丸くして クルクルと目を回しながらも必死に我慢し どこに漂うか分からない同類を探し続ける そ...

  • アバター殺人事件(二)& エッセー

    アバター殺人事件(二) 二  神田界隈の神田川沿いに小さなマンションがあって、その三階が「宇宙友好協会」の事務所だ。ドアを開けたのはエリナ、その後ろに見覚えのある顔がいたので一瞬ポカンとしながら凝視し、ワンテンポ遅れてアアアと言葉にもならない音声を発した。 「久しぶり」 「...

  • アバター殺人事件(一)& 詩

    詩 理想の女(ひと) ある日街角を歩いていると 前方から素敵な熟年女性がやって来て 僕の前で止まって目を大きく見開き おどおどしながら話しかけてきた 私のことを憶えていらっしゃる? 僕は戸惑いながら必死に思い出そうとしたが 彼女はそんな僕を気遣って微笑みながら いいんですよ...

  • 抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」(全文)& 詩

    抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」(全文) 一 先進国闇首脳会議会場   (全員アロハシャツ、ムームー姿) 議長 さて、各国裏首脳の皆さんご承知のとおり、人類は気候温暖化対策として、最後の手段を取らなければならない事態です。先日国連裏事務局が提示しました人類絶...

  • 抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」最終 & エッセー

    抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」最終 八 ターゲット順番決定秘密パーティー  (日本妻とハワイ人を除くすべての出演者、コンパニオンがシャンパンを片手に出席) 議長 みなさん、すべての選挙運動は昨日で終わりました。ケイマン諸島への振込みも、つつがなく行われまし...

  • 抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」六・七 & 詩

    詩 もうひとつのアナタ 好きなのはアナタじゃないわ 心の端っこに隠れている もうひとつのアナタ 大きなアナタの影で縮こまっている小さなアナタ アナタがいつも隠そうとしている惨めなアナタ 暗くてジメジメしたナメクジのようなアナタ 私はどうしてそんなアナタが好きなんだろう なの...

  • 抱腹絶倒悲劇「第三次世界大戦はこうして始まった」四 ・五& 詩

    詩 地球の厄介者 人間が地球にいなかったら 生き物はみんな自然に溶け込んでいたさ それらは自然の一部として 自然に素直な心を委ねていたんだ 人間は地球から生まれたけど ひょんなことから考えることを始めて 自然の一部であることを忘れて厄介者となり 自然から追い出されちまったの...

  • 抱腹絶倒悲劇「こうして第三次世界大戦は始まった」一・二・三& 詩

    詩 八月九日 (戦争レクイエムより) ずっとずっと昔の今日 学校の真上で爆弾が炸裂し 僕たちの体は蒸発して成層圏に舞い上がり 心だけが溶けた窓ガラスに捕まって 小さなビー玉になって灰の中に埋もれたんだ この厄介物が板ガラスだったころ ガラス越しに編隊を組んで飛んでいる神風を...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」(全文)& エッセー

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」 一 (ロボット清掃会社の会議室。長テーブルに事務椅子、装飾品は一切ない簡素なデザイン。出席者の全員がロボットで、テーブルの上にはお茶の代わりに各自一つずつ油差しが置かれ、ロボットたちは時たま口や鼻、首、手首などに油を差している。各ロボットの...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」(最終)& エッセー

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」(最終) 九 社長室 (大家をはじめ社長、専務、部長、課長が集まり、大きなダンボール箱を囲んでいる) 大家 コワ! これがその、自爆ロボットかい? 社長 さようでございます。テロリスト集団から入手いたしました。禁制品で、バレれば捕まります。 ...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」七・八 & 詩

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」七・八 七 鬱蒼とした庭   (女たち三人が植木職人の恰好で、斧や電動ノコなどで木を倒している) 主任女 さあさあ、大家は遠くに住んでいるから、バッサバッサ気兼ねなくやってちょうだい。この森を造花の森に換えるのよ。落ち葉の落ちない綺麗な森にす...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」五・六 & 詩

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」五・六 五  マンション共用部の廊下 主任男 (三号を睨み付け)君はお庭にいる女主任が手に付いたクソを美味そうに舐めているのを見て、軽蔑的な眼差しを注いでいるな? 三号  とんでもございません。うらやましい限りで。 主任男 美味しいのだよ。お...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」三・四 & 詩

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社三・四 三   (築五○年の老朽化マンション前に全員集合。新入社員全員作業衣、番号のゼッケンを持っている) 主任男 さて、この古い賃貸マンションが君たちの研修現場だ。さあ、ここで着替えてください。 六号 主任、ここはお玄関の前ですよ。 主任女 ...

  • 抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」& 詩

    抱腹絶倒悲劇「ロボット清掃会社」 一 (ロボット清掃会社の会議室。長テーブルに事務椅子、装飾品は一切ない簡素なデザイン。出席者の全員がロボットで、テーブルの上にはお茶の代わりに各自一つずつ油差しが置かれ、ロボットたちは時たま口や鼻、首、手首などに油を差している。各ロボットの...

  • ホラー「線虫」十四・十五 & エッセー

    ホラー「線虫」十四・十五 十四  武藤と音羽は、町の事態を早急に伝えようと、放置されていた車を使ってゴーストタウンと化した琴名町から逃れ、隣町の警察に駆け込むことにした。日暮れまでは二時間しかない。日が暮れたら原始時代の哺乳類よろしく、線虫人間どもが活動を始める。しかし、国...

  • ホラー「線虫」十三 & 詩

    詩 形状記憶遺伝子 俺が発見したのは 形状記憶遺伝子という頑固者 生まれたときは真っ直ぐだった いろんな奴らがからかい半分に指先でこねくり回し グニャグニャに捩じられちまった ところが何を勘違いしたものか 心も体もそいつが基本と思い込んじまって 若かりし昔の昔をすっかり忘れ...

  • ホラー「線虫」十一・十二 & 詩

    詩 宇宙の切れ端 (ある宗教団体へのプロテスト) ある日 宇宙の果てから 不可解な精神の断片が臓腑に飛び込んできた そいつは大きな球体の一パーセントにも満たない欠片で どうやら欠伸をしたときに飲み込んでしまった それでもそいつは私を憂鬱にさせるに十分だった 胃石のように重く...

  • ホラー「線虫」十 & 詩

    詩 不揃いの果実に捧げる挽歌 お前ら生まれたばかりの醜い果実は 長い長いベルトコンベアの上に乗せられて 行き着く先まで運ばれていくのだ 途中で転がり落ちないように 狭い狭い箱の中にぎっしり無理やり押し込まれ 無鉄砲な体は押しつぶされ曲げられ 型にはまってすっかり均されて お...

  • ホラー「線虫」八・九 & 詩

    詩 人生は戦いである この世に飛び出たとき 同類の泣き声が耳に障り 敵も同時に生まれたことを知った 母親の愛情を独占するため 兄弟姉妹との戦いが始まった 学校に入ると受験競争が始まり 友達は敵ともなった 会社に入れば出世のために 多くの同僚を蹴落とした そして遂には本当の戦...

  • ホラー「線虫」七 & エッセー

    ホラー「線虫」七 七  病院から戻ったときは、すでに夕方の六時を過ぎていた。武藤は近所の店で買った弁当をちゃぶ台の上に置き、お茶を飲もうとやかんの水を沸かした。沸騰したところで火を止めると、チャイムが鳴った。 「どなたですか?」 「舞です」  顔から血の気が失せ、全身に戦慄...

  • ホラー「線虫」六 & 詩

    詩 新興住宅街 だだっ広い農地の主が死に 住宅街ができた どれも安普請だが外壁は綺麗だった 道も植え込みもそれなりに美しかった 駅から遠いのにけっこうの値段で売り出した 小金持ちたちが長期ローンを組んで住み着いた 一年後に悪疫が流行って不景気がやってきた 多くの入居者がロー...

  • ホラー「線虫」五 & 詩

    正義のために 神のために 世界のために 民族のために 国家のために 悪を殺そう 部族のために 一族のために 家族のために 私のために 悪を追い出そう みんなのために 正義をつくり 悪を滅ぼそう 正義ができたら 悪をつくり 悪を滅ぼそう みんなで正義をかたちにしよう 正義を広...

  • ホラー「線虫」四 & 詩

    詩 爆弾?協奏曲(ウィル・フィル感染楽団演奏) 嗚呼ノーベルが生きてたなら なんて嘆いてくれるだろう 俺はとうとう成功したぜ ダイナマイトの数万倍も恐ろしい発明 世界中の爆弾を一気にぶっ放す特殊な電波発信機 十ドル札と一緒にポケットにねじ込み 世界各地を放浪しながら 気まま...

  • ホラー「線虫」三 & 詩

    詩 収縮をはじめた宇宙 遠い未来 恐らく数千年も先のことだ その先の未来は過去であるというおかしな事態が発生した 膨張する宇宙は宇宙の果ての壁にぶつかって 本能的に収縮をはじめたに違いなかった 人々は宇宙が巨大なアメーバであることを発見したのだ 宇宙が収縮をはじめると 究極...

  • ホラー「線虫」一、二 & 詩

    詩 街角霊(怨霊詩集より) 私 あのときの一人です 夢を楽しむ明るい少女 たくさん花束ありがとう 知らない私に高価な花を 覚えていますよ一人ひとり  やさしい方たち見かけます でも 私のことはうわの空 忘れてしまった悲しい記憶 いちど花をくれたんだから きっと死ぬまで捧げて...

  • ロボ・パラダイス(最終)& 詩

    詩 嗚呼ナガサキ 遠くの遠くの彼方から 冷ややかな眼差しが 数え切れないニュートリノに紛れて 殺戮の焦土に降り注ぐ そうだこの冷たい粒子は にわか作りの放射能の数百倍も 私たちを侵し続けているのだ 操られている 踊り狂わされている 気付いたときが終わったとき  すべては永遠...

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