そのころ神田の一角に、『エロス堂』なる本屋があった。 あまりに直截な屋号を前に、なにごとかを期待した若い男性客どもがちょくちょく迷い込んだとか。 そして彼らの九分九厘までが、ほどなく苦い失望に渋面を作らされている。 陳列済みの書籍はどれも至って真面目なモノばかり。奥に常連客のみが見(まみ)えることを許された「真の目録」があるかと思えば、別段そんなこともない。なんだこれは、どういうことだ、肩透かしもいいところ、話が違うではないか──。 (viprpg『やみいち!』より) ピンク色の情動に脳細胞を毒されきった馬鹿どもは、怒気を発して、ともすれば、店主に掴みかからんばかりの勢を示してにじり寄る。そう…