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2018/12/24

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  • 古雑誌を読む(『かりん』九月号)

    〇 山姥の上路の里に出づといふ猪のこと思ひて悩む 馬場あき子 新潟県糸魚川市大字上路は、謡曲『山姥』の舞台とされている土地である。 その〝上路〟地区に限らず、近年、糸魚川市全域に猪のみならず、ニホンザル・ツキノワグマ・カラス・ハクビシン等の鳥獣が人目を憚ら出没し、農作物被害及び人的被害が多発している、との事。 馬場あき子氏と言えば、人も知る、能楽通であり、名手でありますから、山姥の故郷「上...

  • 「小池光第一歌集『バルサの翼』」を読む

    〇 雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ〇 稚き桃ほのかに揺れゐる瞑れば時のはざまに泉のごとしも〇 宙に置く桃ひとつ夜をささふべし帰るべしわが微熱のあはひ〇 暑のひきしあかつき闇に浮かびつつ白桃ひとつ脈打つらしき〇 したたれる桃のおもみを掌に継げり空翔ぶこゑはいましがた消ゆ〇 桜桃よ皿にあふれてこぼれたるこのひとつぶの眼恋ほしも〇 溶血の空隈なくてさくら降る日...

  • 「小池光第十歌集『梨の花』」を再読する

    〇 黒雲のしたに梨の花咲きてをりいまだにつづく昭和の如く〇 目をあけてしばたたきしばしわが顔を見るがにしたりこの日の母は〇 「終身」まで預かりくるる病院へ母をうつせり秋晴れの日に〇 おもひ出づるまでに遠くに母ありて週にいちどをわが訪へるのみ〇 パンダの縫ひぐるみひしと抱きしめて百四歳の母の誕生日〇 病院庭の満開のさくら見てゐたり雨にぬれてゐる病院さくら〇 ゆくりなくおもひいでたりフォ...

  • 「小池光第七歌集『時のめぐりに』」を読む

    〇 庭椅子のカンヴァス席に雨みづはたまりてゐたり朝はさびしく〇 操觚者を父にもちたる運命にものを書くむすめ書かざる娘〇 「子供より親が大事、と思ひたい」さう、子機よりも親機が大事〇 忽然と打てなくなりしイチローをわが身の上に重ぬるこころ〇 馬の名の「チカテツ」にわれおどろけば「ヒコーキグモ」に更に驚く〇 万華鏡におほき熊ん蜂閉ぢこめて見むとしたれどいまに見るなし〇 弥縫策にすぎぬこと...

  • 山中智恵子第十五歌集『玉蜻』(抄)

    〇 湯の峰は空よりゆかむ十津川のあなや吊り橋 空よりゆかむ〇 今日白露 つゆのたよりにいふべくは萩叢越えてゆきしものあり〇 あかつきをむつなみすばる西に入り星の出入の風吹きわたる〇 春さらばきみとつかふか羽子板星 空の真中にかがやきそめぬ〇 ひめやかに秋霖いつか雨林霖 老いのはてなる虹の夢はも〇 <泥坊消えて雨の日青し>と附けにけむ桃青若くわれは老いたり〇 わが心覚ましてゐるはくきや...

  • 「今野寿美第九歌集『雪占』」を読む

    〇 跳ね駒、種播き爺の雪占に謎なくて春 大地励ます〇 愛すべき冥王星の小ささを誰も言はなくなりけり誰も〇 海の底が見えるまで引いた水のことこどもの目にも世界壊れき 〇 をさなごがきちんと静止するすがた放射線量測らるるため 〇 東京のさくらほころぶ<その日>からもう三週間と思ふその日に 〇 やりすごす春にあらねばこきざみにいかにも耐へてゐるさるすべり〇 ただ笑ふだけではなくて春の山 のた...

  • 「和嶋勝利第四歌集『うたとり』」を読む

    〇 平成は昭和の二日酔ひのごと無為の時間に出口が見えぬ〇 葷酒とふ楽しきことはやめられず味噌をつけては食むエシャロット〇 人の名は時代をうつすものなれば勝たねばならぬ戦争なれば〇 にんげんの必死のすがた見せながら25メートル子は完泳す〇 福島泰樹みたいと妻に疎まれて中折れ帽子もそれつきりなり〇 ひいやりと朝の空気は黙しをり やあ樅の木よまた会ひに来た〇 タラップを降り来る四人の法被に...

  • 「惟任将彦第一歌集『灰色の図書館』」を読む

    〇 この部屋に濃霧立ち込めたる朝の空気清浄機の役立たず〇 最後の力振り絞りたるごと指折り曲げて軍手はありき〇 窓に星座の映る真夜中を読むわれもいつしか本と変はりて〇 灰色の図書館訪ふ白髪のホルヘ・ルイス・ボルヘスたちが〇 ペットボトルもんどりうつて倒れたるもう永遠に夜だ夜だ 〇 缶コーヒーブラックの蓋一捻り「中身が噴き出すおそれがあります」〇 愛ゆえに女房役と呼ばるるかホームにて待ち...

  • 「野樹かずみ第一歌集『路程記』」を読む

    〇 永遠の眠りを眠る始祖鳥の夢かもしれぬ世界に棲めり〇 故郷からわたしから逃れゆく夜の列車にわたしの顔だけ映る〇 遠ざかる光景ならば愛せるかオペラグラスは逆からのぞけ〇 ほんとうの地平をみたい 真夜中の冷たい硝子に口紅をひく〇 花びらはしずかにながれすぎにけり水のおもてのわれを砕いて〇 どんな深い海峡があっていまわれに隔てられている名もなき故国〇 かたちなき憧れゆえに漂着の重油に浮か...

  • 「栗木京子第三歌集『綺羅』」を拾い読みする

    〇 親しげな体温持ちてすり寄れる鬱こそわれの新しき綺羅〇 噴水の秀先をぬらす雨足の昏さかゆふべ子を呼ぶわが声〇 フレミングの左手の法則教へむと子の手をとれば親指ほそし 〇 並びゐるドアというドアわづかづつ反る気遠さで雨のマンション〇 入口に夫を待たせて靴を買ふ降誕祭の電飾うつくし〇 人生はたのしと胸にくり返す文章問題解けぬ子とゐて〇 子に送る母の声援グランドに谺せり わが子だけが大切...

  • 「栗木京子第二歌集『中庭(パティオ)』」を拾い読みする

    ○ 扉の奥にうつくしき妻ひとりづつ蔵はれて医師公舎の昼闌け○ 女らは中庭につどひ風に告ぐ鳥籠のなかの情事のことなど○ 天敵をもたぬ妻たち昼下がりの茶房に語る舌かわくまで○ 庇護されて生くるはたのし笹の葉に魚のかたちの短冊むすぶ○ やすやすと抱かれてしまふ女をり体温もたぬ劇画のなかに○ 粉砂糖ひとさじ掬ひわたくしに足りないものは何ですかと問ふ○ 茹でし黄身の周りわづかに緑色帯ぶるほどの羞恥か...

  • 「小島ゆかり第十三歌集『馬上』(現代短歌社刊・2016年)」を読む

    〇 いま湧けるこのあたたかき感情は要注意、また思ひ出がくる〇 五十代など小学児童と人言へり生きがたきかな小学児童〇 おろしたてのしろい牛乳石鹸のにほひのやうな冬はもうなし〇 空港の夜景かなしくうつくしく全力で走る今際のちちへ〇 飛ぶいのち泳ぐいのちの恋しけれ古びゆくわが足は歩めり〇 はるかなるそのふるさとのゆたかなる海のちからのねむりを君に〇 悲しみを言はぬ人にてつねのごと神保町をわ...

  • 今野寿美(初期)の短歌

    〇 その五月われはみどりの陽の中に母よりこぼれ落ちたるいのち (『花絆』より) 〇 人あらぬ野に木の花のにほふとき風上はつねに処女地とおもふ〇 どうしてもつかめなかった風中の白き羽毛のやうなひとこと〇 紺碧の水に五月の陽をためて海はしずかな弦楽の秀〇 光芒の水に折れゆく見てあれば調絃の音ほのかにきざす 〇 きみが手の触れしばかりにほどけたる髪のみならずかの夜よりは 〇 木染月...

  • 「五十子尚夏第一歌集『The Moon Also Rises』」を読む

    〇 朝焼けのマーキュリーから夕刻のユレイナスへと向く羅針盤〇 水兵の帽子をさらうまっさらな春風だけを傍受していた〇 この夜も朝へと空を明け渡し君はブルネットを掻き上げた〇 九回の裏に斜線を引くような舌っ足らずの初恋でした 〇 ウォーホルの描く無数のモンローが二十世紀に取り残されて 〇 夜という夜の行き着く朝という朝まで君を抱きしめている 〇 空論を机上に描く八月の美(は)しきハーマイオ...

  • 「栗木京子第五歌集『夏のうしろ』」を再読する

    〇 手の先の影つまみゐるごとく見ゆをみなばかりの盆踊りの輪○ 大雨の一夜は明けて試し刷りせしごと青き空ひろがりぬ○ 風景に横縞あはく引かれゐるごときすずしさ 秋がもう来る○ 死真似をして返事せぬ雪の午後 生真似をするわれかもしれず○ 雨降りの仔犬のやうな人が好き、なのに男はなぜ勝ちたがる○ 書き終へて手紙となりしいちまいのこころに朝の日は照り翳る○ さびしさに北限ありや六月のゆふべ歩けど歩...

  • 「吉川宏志第一歌集『青蟬』」を読む

    〇 あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ〇 似ていると思うは恋のはじめかなボート置場の春の雷〇 花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった〇 カレンダーの隅24/31 分母の日に逢ふ約束がある〇 栗の花匂う小道に誰も居ず時間通りに時間は過ぎる〇 サルビアに埋もれた如雨露 二番目に好きな人へと君は変われり〇 夕暮れの梅林行けば木の影と人の影とがすり変わりた...

  • 「佐藤弓生第三歌集『薄い街』」を読む

    〇 手ぶくろをはずすとはがき冷えていてどこかにあるはずの薄い街〇 暮れながらたたまれやまぬ都あり〈とびだすしかけえほん〉の中に〇 酢のような夕映えだからここにいるぼくらは卵生だった きっとね〇 階段にうすくち醤油香る朝わたしがいなくなる未来から〇 みずいろの風船ごしに触れている風船売りの青年の肺〇 まよなかにおなかがすいていつまでもにんげんでいるなんて、錯覚〇 星動くことなき夜のくる...

  • 佐藤弓生歌集『世界が海におおわれるまで』

    風鈴を鳴らしつづける風鈴屋世界が海におおわれるまであたらしい挨拶をする 木枯しの街に尻尾を立てておまえと卓上にバナナぶりぶりひしめいてまひるひみつの闇を飼いおりきよくなることはなけれどいつまでも水をひとくち飲んで寝る癖美しい地獄と思う億年の季節を崩れつづけて月は「なぜ」よりも「なぜいけないの」と問いたまえ少女よ船乗り志願であれば白の椅子プールサイドに残されて真冬すがしい骨となりゆくみっしりと寄りあ...

  • 「森垣岳第一歌集『遺伝子の舟』」を読む

    〇 父親は真冬の寒さ いつの日か乾いて海の向こうへ消える〇 父親の気持ちがポストに届けられ春の冷たい雨に濡れおり〇 三人の妻を娶りし父親を鋏でちょきちょき切り取ってゆく〇 包丁を秋刀魚の腹に突き立てて母を捨てたる父を思えり 〇 離れ住む本当の母唯一の我の母なる海上の島〇 里芋の青き葉のうえ水滴のレンズの中を妻が横切る〇 男らがビニールハウスに集まりてファレノプシスの花と受精す〇 け...

  • 「なみの亜子第一歌集『鳴』」を読む

    〇 われのみが内臓をもつやましさは森の日暮れの生臭きまで〇 深く息をすい込むときに少しだけさざめく森のありなむ我に〇 立ちおれば藻におおわれし沼なりきわたしのなかに沈みおる靴〇 ある夜は羽蟻おびただしき卓の上わたしひとりのものを咬む音〇 ゆっくりと紙飛行機を折るように部屋着をたたむあなた アディオス〇 帰り路が一番さみしい窓際にGジャン斜めに吊るしておくよ〇 死ぬときもひとり 小型の...

  • 「水上比呂美第1歌集『ざくろの水脈』(2009年・柊書房刊)」を読む

    〇 人生は後半がよし八十の義父がデートに出かける日暮れ〇 玉くしげ宮益坂のはかり店こはされしのち駐車場となる〇 羅紗紙にミルク零して二つ折りそして広げし形なり肺は〇 古き世の蛾の名「ひひる」とつぶやけばくびすぢしろき伯母が顕ち来ぬ〇 プロモーション・ミュージック鳴らしトラックが渋谷の街をずちやずちや走る〇 いかづちが近くで鳴りて太束の斜線の雨がわれを追ひ来る〇 ルリタテハ青年が行き胴...

  • 「浜田到歌集『架 橋』」を読む(其のⅠ)

    薔薇失神〇 背さむきわが死を聴けり夕雲に立てば少女の反映も永く 〇 榲桲を文鎮となし書く挽歌蒼き暑熱の土にし消えむ 〇 火の匂ひ、怒りと擦れあふ束の間の冬ふかくして少年期果つ〇 妹、その微睡の髪薫る日を血よりさみしきものかよふかな 〇 葉鶏頭の咲かねばならぬ季節来てしんじつは凜々と秘めねばならぬ 〇 月光に衝たれし後にわがからだこわごわとさぐる―<詩人たり得や?> 〇 祈禱書をしづ...

  • 「福島泰樹第三十一歌集『うたで描くエポック 大正行進曲』」を読む

    〇 「十二人とも殺されたね」うん、深川行きの小窓に映る浅草の灯よ〇 管野スガ二十九歳 中庭に白い蕾がただ顫えてた〇 「平民新聞」小脇に抱え出で行くは少年佐藤春夫でないか〇 監房に青衣を被り俯くは北原白秋ならば蜩〇 谷崎潤一郎のその妻ありて男ありて秋刀魚を喰らうあわれ秋風〇 号外のベルやかましき停車場に堀口大學その若き友〇 愴々と吹く風さむき中庭の 女の影に陽は射していよ〇 人形屋の...

  • 「小池光第十歌集『梨の花』」を読む

    〇 黒雲のしたに梨の花咲きてをりいまだにつづく昭和の如く〇 多力者のなせる業にて大佛次郎生涯に飼ひし猫五百匹〇 板の間に横たはりつつ「ぼろ切か何かのごとく」なりたる猫は〇 辛うじて立つ足腰をはげまして水のみに行く猫よわが猫〇 あんぱんの臍を発明したる人円満なる晩年を送りたりけむ〇 家の中に入り来し太き夜の蟻をつぎからつぎにみなころしけり 〇 「未来」金井秋彦選歌欄にわづかの人が居たり...

  • 「松村正直第五歌集『紫のひと』」を読む

    絵のなかの椅子に座りて悲しみのあるいは喜びの紫のひと 絵のなかのあなたに逢いにゆく朝は木々のみどりも微笑むごとし 紫のひとは部屋から出て行きぬ絵のなかに私ひとり残しててのひらの奥に眠れるわがこころ呼び覚まさんと強くこすりぬウルトラマンの頭のような外観の天文台あり山のいただきあれしいつの母の背中か次々と揚げる唐揚げ つぎつぎと食う先に食べ終えてしばらく見ていたりうどんを啜る君のまつげを展示室に...

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