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2018/11/23

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  • 未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン

    アナニヨ・バッタチャリヤ 訳・松井信彦 みすず書房 2023.9.19読書日:2024.3.21 ハンガリー出身の数学の天才で、数学の力を量子力学、コンピューター、ゲーム理論、AIなど、純粋数学の枠を越えて貢献し、手がけた分野のすべてがその後大きく発展して、いまだに現代に大きな影響を及ぼして、未来から来た男と呼ばれたジョン・フォン・ノイマン(1903ー1957年)の評伝。 わしはなぜかジョン・フォン・ノイマンとクロード・シャノンをごっちゃにしてしまう。どちらも情報工学に関係があるからだろう。今回ジョン・フォン・ノイマンの評伝を読んだから、あとはシャノンの伝記を読めば、もうごっちゃになることはな…

  • 怪獣保護協会

    ジョン・スコルジー 訳・内田昌之 早川書房 2023.8.15読書日:2024.3.17 (ネタばれあり。注意) パンデミックで職を失いフードデリバリーをしていたジェイミーが、偶然得た仕事は、パラレルワールドのもう一つの地球で怪獣を保護する仕事だったが……というおばかSF。 スコルジーって「老人と宇宙(そら)」という本で有名なんだそうだ。知りませんでした(笑)。もともと小説には疎いが、たまに読むSFについてすら、ほとんど知らないんだね、わし。 まあ、それは置いといて、この人SFマニアらしくて(そうでしょうね)、スタートレック愛にあふれた作品とかも書いているんだとか。それで日本の怪獣映画について…

  • イーロン・マスク

    ウォルター・アイザックソン 訳・井口耕二 文藝春秋 2023.9.10読書日:2024.3.13 著名人の伝記を次々発表するウォルター・アイザックソンの最新作であるイーロン・マスクの伝記。 ウォルター・アイザックソンといえば、著名人の伝記を次々発表していて、いちばん有名なのはアップルの「スティーブ・ジョブズ」だろう。この本のおかげで、「現実歪曲フィールド(or空間)」という言葉が一般化してしまった。 最近では「コードブレーカー」という本でキャスパー・キャス9でノーベル賞を取ったジェニファー・ダウドナを主人公にノンフィクションを発表している。 驚くのは、主人公の周囲にいる人のほとんどすべての人に…

  • 日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本”式”経営の逆襲』

    岩尾俊兵 光文社 2023.10.30読書日:2024.3.4 日本発の経営戦略がアメリカ経由で逆輸入され、もともと持っていた経営戦略を日本企業が捨てている現状を憂え、日本自身が世界に広めなければいけないと主張する本。 日本で流行っているアメリカ由来の経営戦略には、もともと日本発のものがたくさんあるんだそうだ。なのに、日本人自身がそれに気が付かずにありがたがっている状況だという。 たとえば次のようなものだ。 (1)両利きの経営:既存のビジネスでしっかり稼ぎながら、新分野の探索を行う経営。提唱者のオイラリー教授とタッシュマン教授は、両利きの経営の典型例は「トヨタ生産方式」だと述べている。(ただし…

  • 同志少女よ、敵を撃て

    逢坂冬馬 早川書房 2021.11.25読書日:2024.2.21 (ネタバレあり。注意) 第2次世界大戦、モスクワ近くのイワノフスカヤ村にドイツ軍が現れ、村人が虐殺される。一人、生き残った少女セラフィマは、もと女性狙撃兵イリーナに導かれ、狙撃兵として訓練を積み、ドイツ軍への復讐を誓うのだが……。 2021年アガサ・クリスティ賞受賞作であり、2022年本屋大賞受賞作である。あんまり小説は読まないわしではあるが、まあ、読んでみようかな、という気になり、遅ればせながら手にとってみた次第。 ところで、第2次世界大戦の独ソ戦に参戦した女性兵士の話となると、どうしてもスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが…

  • 再び窓の世界へ

    わしはあまりウィンドウズが好きではない。とはいっても、マックはもっと性に合わない。わしは垂直統合がそもそも嫌いなのだ。それならウィンドウズのほうがまだまし。そして、わしはCPUをぶん回すよりも、非力なCPUでサクサク動くことを喜ぶタイプなのだ。 そんなわしが数年前に3万円のChromebookを買った。このマシン、acer製だが、なんとCPUは格安スマホに使われているようなものだった。しかもタッチパネル機能付き。つまり、ざっくりキーボード付きアンドロイドタブレットのようなものだったのである。 しかしながら、大変サクサクよく動く。わしはすぐに気に入ってしまった。それにわしはグーグルの環境やアプリ…

  • 日本はデジタル封建制を楽に乗り越えられると信じる理由

    「新しい封建制がやってくる」では、超富裕層と有識者のエリート階級とそれ以外のデジタル農奴との階級が固定化して、「デジタル封建制」とか「ハイテク中世(by堺屋太一)」の時代が来るという。自由と民主主義を愛する人たちにとってはとんでもない事態で、危機感を抱くのはとても理解できる。 だが、この本を読んで、これだったら日本は大丈夫なんじゃないか、というよりも日本こそ次の時代のライフスタイルをリードするんじゃないか、という気がしてきたのである。 なにより、この本の著者自身が、最後にこう言っているのである。 「日本は、たとえ経済の成長が止まっても、その代わりに精神的なものや生活の質の問題に関心を向けられる…

  • 新しい封建制がやってくる グローバル中流階級への警告

    ジョエル・コトキン 訳・寺下滝郎 解説・中野剛志 東洋経済新報社 2023.11.14読書日:2024.2.24 一握りの超富裕層が世界の富の大半を握り、グローバル社会のなかで中流層は没落してデジタル農奴となり、このような状態が世襲化して引き継がれる結果、社会的な流動性がなくなり、階級が固定化して、中世の封建制に似た世界がやってくると警告する本。 まあ、このような格差が広がって、しかもそれが世襲されて固定化するという話は今では珍しくないのだが、それを中世の封建制と比較しているところが新しい。 ヨーロッパでローマ帝国崩壊後に封建制が誕生した経緯は次のようなものだったそうだ。ローマ帝国が滅びると、…

  • なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた

    養老孟司 聞き手・鵜飼哲夫 中央公論社 2023.11.25読書日:2024.2.25 養老孟司が自分の過去を振り返った語り書きの自伝。 養老孟司って、わしにとっては「バカの壁」で突然出てきた人のように見えていたけど、なぜ東大の解剖学の先生がこんな感じで世の中に出てきたのかさっぱり分からなかった。でも本当に養老先生って、子供の頃からずっとこんな感じだったんだね。笑える。東大引退後の虫を採っている養老先生の姿をテレビで見て、母親が、「お前は子供の時からちっとも変わっていない、安心した」と言ってたのだそうだ。 子供の時と同じように、いまでも多くの時間を集めた昆虫の標本作りに費やしている。本が売れて…

  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

    川上弘美 講談社 2023.8.22読書日:2024.2.4 アメリカからの帰国子女の作家、八色朝見が、アメリカ時代の友人たちとゆるく長い付き合いを続けながら、老境にいたる心境を綴ったもの。 小説としては、初・川上弘美である。エッセイは「私の好きな季語」というのを読んだことがある。「センセイの鞄」は小泉今日子の映画で見ただけである。で、小説家の川上弘美はよく知らなかったのでウィキペディアで調べてみると、なんともともとSF系の人で、現実と幻想が交じるタイプなんだそうだ。いまでは純文学はSFっぽくないといけないかのようだから、SF出身というのは、まあいいのかもしれない。あまりにSFやファンタジーの…

  • アガサ・クリスティ とらえどころのないミステリの女王

    ルーシー・ワースリー 訳・大友香奈子 原書房 2023.12.25読書日:2024.2.23 遺族が提供した資料を交えたアガサ・クリスティの最新評伝。 母親がミステリ好きだったこともあって、わしの実家には結構ミステリがあったので、アガサ・クリスティももちろん読んだ。たぶん最初に読んだのは「アクロイド殺し」だったと思う。で、面白かったかと言えば、あまり面白くなかった。わしはミステリを読んでも、面白いと思ったことはほとんどない。(例外はシャーロック・ホームズ。これは気に入った)。 そんなわしでも、アガサ・クリスティがいまだ人気だということは知っている。ほとんどの作家に言えることであるけれど、ミステ…

  • 裁判官の爆笑お言葉集

    長嶺超輝 幻冬舎 2007.3.30読書日:2024.2.18 裁判所の傍聴マニアが、裁判官の印象に残ったお言葉をまとめた本。 爆笑と書いてあるけど、それはほとんどない。いくつかクスッと笑えるものがあるだけだ。裁判なんておおむね深刻な状況だから、そもそもそんなに笑えるものにはなりえないのだ。 というわけで、題名に偽りありだなあ、と思っていたのだが、読んでいて古い事例が多すぎるなあと気がついた。不審に思って、奥付をみて驚いた。この本は初版が2007年と古い。そして、わしが読んでいた本は2023年の第33版だったのだ。 えーっ! ネットで調べてみると、本書は累計35万部以上、シリーズ累計で100万…

  • ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険

    クリストファー・マクドゥーガル 訳・近藤隆文 NHK出版 2015.8.30読書日:2024.2.7 「BORN TO RUN」で、人間はもともと走るようにできていることを語った著者が、その他に人間がもともと持っている野生の能力をクレタ島の人たちの身体能力を中心に語った本。 「BORN TO RUN」ではウルトラマラソンに挑戦する人たちが出てきて、人間はなぜこんなに走れるのかと問い、もともと人間は走って動物が熱中症で動けなくなるまで追いかけるような猟をしていたということを語る本だった。(そしてもともと裸足で走れるような身体構造をしているのだから厚底シューズは必要ない、とかも)。 でも、人間の失…

  • 万物の黎明 人類史を根本からくつがえす

    デヴィッド・グレーバー デヴィッド・ウェングロウ 訳・酒井隆史 光文社 2023.9.30読書日:2024.2.17 農業の始まりが私的所有と不平等を生み、ヒエラルキーが形成され、都市や国家を生んだというビッグヒストリーの思い込みを破壊し、近年の考古学や人類学の研究の進展から、人類は過去にいろいろな社会を自由に実験しており、今後も社会的な実験を行う自由を放棄する必要はないと主張する本。 この本を読んで、なんでデヴィッド・グレーバーは亡くなっちゃったんだろう、と本当に思う。生きていれば、もっといろいろなことを教えてくれただろうに。彼はこの本を完成させて、3週間後に亡くなったのだそうだ。でも、この…

  • 検閲官のお仕事

    ロバート・ダーントン 訳・上村敏郎、矢谷舞、伊豆田俊介 みすず書房読書日:2024.2.8 フランス、英領インド、東ドイツの検閲の実際を調べて、検閲とはなにか、検閲官はどんなふうに検閲という仕事に関わったのか、ということを比較した本。 ロバート・ダーントンの名前を聞いたのは、「猫の大虐殺」以来である。わしもこの本を読んだ覚えがある。でも細かい中身はすっかり忘れてしまった(笑)。なにしろ読んだのは20世紀だからなあ。(なお、新装版が2007年に出ております)。 まあ、細かい中身は忘れたけど、とりあえず、ダーントンの得意技は、無味乾燥な資料のなかから生きている人間の息遣いを復活させることで、今回も…

  • ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う

    坂本貴志 講談社 2022.8.20読書日:2024.1.28 定年後、収入は大幅に減るが同時に支出も減るため生活には困らず、月に数万〜10万円程度の追加収入があれば趣味をおおいに楽しむことができ、ストレスがほぼないため幸福な生活を送る人が大半だと報告する本。 定年後にもらえる年金額を知って、あまりの少なさに愕然とし、このままでは生活できないと苦悩する人がいる。だが、それは養うべき家族を抱えている現状とくらべているからで、定年後は子供が独立し、教育費などがかからなくなるため、必要な生活費が大幅に減少するから心配ないのだという。とくにすでに自宅を確保している人にとってはそうである。 そして大半の…

  • 「反応しない練習」「Chatter」を読んで思ったこと

    最近、「反応しない練習」と「chatter」を続けて読んだ。 偶然、同時期に読んだのだが、これを読んで思ったことがある。 じつはずっと、わしには大きな悩みがあった。その悩みというのは、昔のことが突然思い出されて、心が苛(さい)まされるという悩みである。 まあ、たぶん、誰にでもこういう事はあることは理解している。しかし、どうもその頻度が自分でも呆れるくらいに多いのである。なんだか数分おきに起きていたような気がする。そして、そのたびに声をあげてしまうほどに心が苛まされた。 その内容は、直近に自分が起こした恥ずかしいできごとはもちろんだが、もう何十年も前のちょっとしたことも思い出される。そのちょっと…

  • Chatter(チャッター) 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

    イーサン・クロス 訳・鬼沢忍 東洋経済新報社 2022.12.4読書日:2024.1.26 頭の中では自分の言葉が常に聞こえているが、その声がネガティブなループに入り脱け出せなくなったときをチャッターと名付け、どうすればチャッターから抜け出せるかを指導する本。 誰しも心がネガティブループに入ってしまった経験はあるだろう。何らかの原因で落ち込んだり、自分に嫌気が差したりする。すると、自分を非難する声が自分の中から湧き出てくる。その声を聞くと、さらに気分が落ち込んで、どんどんネガティブな気分が増幅して、心の中が嵐になってしまう。あるいは、何かに怒りを覚えたり、恐怖を覚えたりしても、ネガティブループ…

  • 「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか

    飯田一史 平凡社 2023.6.15読書日:2024.1.22 2000年代に入ってから中学生の読書は増えており、読書離れとは言えない状況であり、さらに読書の内容も以前と異なりラノベ中心ではなくなっていることを報告した本。 読書が急回復している背景は、「朝の読書」などの読書運動の成果なんだそうだ。きっかけは、OECDの学力調査で日本の子どもの読解力の順位が8位まで落ちて、その原因が読書量が少ないことだったかららしい。 このような国際比較があると途端に、なんとかしなくては、ということになるのが日本なので、読書運動が盛り上がって、その結果8割以上が本を読み、読書量も増えて、読解力の順位も回復したら…

  • 太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集②

    佐々木良 万葉社 2023.7.21読書日:2023.1.21 人気となった「愛するよりも 愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①」の続編。 今回は聖徳太子と飛鳥京の時代が中心だそう。聖徳太子の歌が1首だけ載ってるんだって。それがこれ。 家ならば 妹(いも)が手まかむ 草枕 旅に臥(こ)やせる この旅人(たびと)あはれ 訳:旅人が お腹をすかせて倒れている 家にいたなら 恋人と寝ていたんやろうに… 悲しいなあ… ふーん。聖徳太子ってやっぱり聖人なんですねえ。 他に面白いと思ったものをいくつか。 なかなかに 人とあらずは 酒壷に なりにてしかも 酒に染みなむ(大伴旅人) 訳:てゆーかさー …

  • リアリティのダンス

    アレハンドロ・ホドロフスキー 訳・青木健史 文遊社 2012.10.25読書日:2024.1.18 映画、演劇、芸術などの分野で活躍する奇才のアレハンドロ・ホドロフスキーが、スピリチュアルな世界を探求し、リアリティが目に見えないところで繋がっているという、現実が揺らめいているような人生を振り返る本。 アレハンドロ・ホドロフスキーのことはあまり良く知らなかった。たぶん本人が主演している「エル・トポ」というカルト的な人気のウェスタンは遠い昔に見たことがあると思う。だが、その程度だった。 ところが最近、「ホドロフスキーのDUNE」というドキュメンタリーを見て、すっかり感心してしまった。これは1975…

  • 日本の歪み

    養老孟司 ✕ 茂木健一郎 ✕ 東浩紀 講談社 2023.9.20読書日:2024.1.16 日本は生きづらい国であり、それは日本の歪みに由来するのではないかと、三人の賢人が鼎談する本。 三人が考える日本の歪みとはなにかについては、目次から明らかである。「先の大戦」「明治維新と敗戦」「憲法」「天皇」などである。つまり日本が明治維新以来やってきたことがなにも総括されずにそのまま残っており歪みとなっている、ということなのだろう。 憲法9条で戦力は持たないとなっているのに、明らかな戦力である自衛隊を保持しているのだから、それこそ歪みそのものなんだけど、問題はもちろん戦力を保持してることではない。戦力を…

  • 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

    草薙龍瞬 KADOKAWA 2015.7.27読書日:2024.1.14 心は常に何かに反応しているが、そのほとんどは実際にはムダなもので、ムダな反応をしないようにすれば悩みがなくなり心が軽くなると主張する本。 この本は2015年の本だが、未だに売れ続けているベストセラーである。多くの人が、この本に感銘を受けたことが分かる。わしも感銘を受けた。 そもそも、わしは仏教が宗教だと聞くと違和感を覚える。たしかに法華経以降の大乗仏教はそうだと思うが、本来のブッダがとなえた仏教は、哲学とか心理学、あるいはカウンセリングに近いものだと思う。現実をどのように見るかという考え方の一種なのだ。 ブッダのいうには…

  • 一生お金に困らない家投資の始め方

    永野彰一 クロスメディア・パブリッシング 2022.12.1読書日:2024.1.12 全国の空き家を100万円以下、できれば1円で手に入れてリフォームすれば、自分が住んでも良いし、貸しても良く、3件以上持てば累積的に資産が増えて一生の財産になると主張する本。 永野彰一さんのことは以前「一生お金に困らない山投資の始め方」で知ったわけだが、そのなかでも家投資についても述べられていた。今回はその部分のみをくわしく解説している。 基本は、全国の空き家で相続などで処理に困っている空き家が多数あるので、そのなかから若干のリフォームで貸し出し可能な物件を格安(100万円以下)で手に入れて、リフォームして、…

  • 宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選

    立原透耶[編] 新紀元社 2023.12.13読書日:2024.1.19 (ネタバレあり。注意) 中華SFのマニア向けのアンソロジー15編。 やっぱり今1番面白いSFは中国かもしれない。読んでいて感心した。21世紀に入って大きく発展した中国の、科学に対する楽観的な気持ちがSFの発展に寄与しているような気がする。先進国ではすでに行き着くところまで行ってしまって、このようなテクノロジーに対する寄り添い方はもうできないんじゃないだろうか。 どのへんでそう思うかというと、個人の科学者がいとも簡単にあっと驚くような技術を開発するという設定に、なんの躊躇もないところ。もう日本ではこんな技術が可能などと書く…

  • アルツハイマー病研究、失敗の構造

    カール・へラップ 訳・梶山あゆみ みすず書房 2023.8.10読書日:2024.1.10 アルツハイマー病は、脳に蓄積したアミロイドが原因とするアミロイドカスケード仮説が根拠不確かなままにセントラルドグマ化して、この仮説以外は認められない状況が続き、治療方法の研究が20年間以上停滞したと、現役の研究者が報告する本。 読書をしていると、巡り合った喜びを感じることがあるが(せいぜい年に2,3回)、この本もそれを感じた。とても面白い。 内容としては、失敗学の部類に入るのだろう。たとえば帝国陸軍の失敗とか、そんな感じの。そして、人間による失敗というのはまことにどれも似たような経過をたどるのだなあ、と…

  • 母がゼロになるまで 介護ではなく手助けをした2年間の話

    リー・アンダーツ 河出書房新社 2023.9.30読書日:2024.1.8 発達障害でまともに生活できない母を、死ぬまでの2年間手助けしたことをつづった本。 痴呆になると生活能力はなくなり介護が必要になるけど、発達障害の場合はなんか微妙だ。いろんなケースがあるだろうけど、これが生活能力のないというレベルだと、老後は確かに大変なことになるのは目に見えている。 著者の母親の場合は、大変なことになって初めて自分の母親が発達障害ということに気がついたくらいの微妙な感じだ。とりあえず母親は離婚してシングルマザーになっても、娘を高校までは養っているのだから、それなりにやっていけてたはずなのだ。年金ももらっ…

  • ヒトラーの馬を奪還せよ 美術探偵、ナチス地下世界を往く

    アルテュール・ブラント 訳・安原和見 筑摩書房 2023.7.30読書日:2024.1.2 ヒトラー総統の官邸にあり連合軍の空爆により破壊されたと思われた馬の彫刻が、70年後の2015年に発見された経緯を述べた本。 美術界は魑魅魍魎の世界で、有名な作品が、今どこにあり、正式な持ち主が誰か分からないことも多い。最近では、フリーポート(保税倉庫)というグレーゾーンの領域に美術品が次々に飲み込まれて、二度と世間に出てこないのではないかと言われているものも多数ある。 www.hetareyan.com でも、こういうところにある美術品って移動させやすい大きさのものがほとんどだろう。ところが今回の捜索の…

  • 未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること

    河合雅司 講談社 2022.12.20読書日:2023.12.26 日本では少子高齢化で人口が減るという状況なのに、それに対する備えができていないとし、実際に何が起きるのかをリアルに予想し、企業が進めるべき未来の戦略を提示した本。 2部構成になっていて、第1部では実際に人口減少で各業界に何が起きるのかを予想している。これが大変な力作で、各業界の統計や業界ごとの特色をあぶり出して、具体的に示してくれる。 例えば、人口減少で自動車産業で起きることといえば、すぐにドライバーの不足が思い浮かぶだろう。たしかにバスやタクシーの運輸関係ではすでに地方でドライバーの不足が声高に叫ばれている。しかし河合さんに…

  • 99パーセントのための社会契約 会社、国家、市民の未来

    アレックス・ロス 訳・井田光江 早川書房 2023.4.20読書日:2023.12.25 社会契約とは、企業、政府、市民の三者で社会にバランスをもたらすための約束であるが、いまほとんどの国でそのバランスが崩れており、2020年代の選択が重要になっていると主張する本。 この手の本はいまたくさん出版されている。しかし、たいていは企業、政府、市民(労働者)のそれぞれで断片的に語られていることが多い。ここで、社会契約という立場から三者のバランスを考え直すべきだ、という発想はあまりないと思う。しかも、議論は具体的でとても読みやすく、読んでいて飽きない。 簡単に内容を書いていくと次のようである。 1970…

  • 人はどう死ぬのか

    久坂部羊 講談社 2022.4.1読書日:2023.12.21 医者で作家の久坂部羊(くさかべよう)が、人が死ぬということのリアルを教えてくれる本。 人が死ぬときに立ち会うと、医者でも最初は動揺するんだそうだ。しかし、場数を踏んでいくうちに慣れてくるという。不謹慎に思うかもしれないけど、実際に慣れていくという。つまり、人が死んでいく様子には、一定のパターンがあるのだ。そして、人が死ぬということは、特別なことではなく、普通のことで、恐ろしいことでも、いやなことでもないという。 これだ。わしも、死に対しては、このくらいの感覚がぜひ必要だと思う。 所詮、わしらが目にする死は他人の死なので、あまり深く…

  • 社会を変えるには

    小熊英二 講談社 2019.8.1読書日:2023.12.19 デモなどの社会運動が好みという社会科学者の小熊英二が、ギリシャ時代からの哲学を振り返り、運動をして本当に社会が変わるのか、ということを述べた本。 日本の学者ってものすごく頭が良いと思う。教養や学術的なことをまとめさせると、ものすごくよく分かりやすかったりする。ところが、それが自分の意見を述べるという段になると、なんとも力不足なのだ。 この本もギリシャ時代からの哲学の流れを述べるところでは、ものすごくよく分かる。しかし、この本のテーマである「社会を変えるには」に対する結論としては、以下のようだそうだ。 「自分がないがしろにされている…

  • エルドアンが変えたトルコ

    間寧 作品社 2023.6.20読書日:2023.12.19 トルコの公正発展党(AKP)のエルドアンは2002年に政権を取って以来、20年以上に渡って政権を保持しているが、なぜそれが可能だったのかについて、後光力、庇護力、言説力が優れていたからだと主張する本。 最近トルコがウクライナ戦争や中東情勢について存在感を増しているので、トルコの一般的な知識を得ようと思って本書を手に取ったのだが、意外にまじめに数字を扱って説明するような本格的な研究書だったので、ちょっと戸惑った。しかも、そもそも著者の興味は長期政権が成り立つ条件で、日本も含まれており、トルコは分析のサンプルの扱いだ。でもまあ、特に問題…

  • 大規模言語モデルは新たな知性か chatGPTが変えた世界

    岡野原大輔 岩波書店 2023.6.20読書日:2023.12.18 chatGPTなど大規模言語モデルがどのような構成になっているのか、さらに大規模言語モデルの結果分かったことを分かりやすく解説した本。 chatGPTが驚異的な文章生成能力を確保していることについてはいろいろ言われているが、いまいち具体的にどう実現しているのか、わしには理解できなかった。いわく「注意機構」とか「トランスフォーマー」という単語が出てくるが、これらは具体的に何を表しているのだろうか。 この本は薄いながらも(たった130ページ)、しかも上記の特徴ある仕組みについても10ページ程度しか説明していない。でもこれまで読ん…

  • 人生は苦である、でも死んではいけない

    岸見一郎 講談社 2020.3.1読書日:2023.12.12 人は何もしなくても生きているだけで価値があり、今をありのままで生きることで幸福になれると主張する本。 生きているだけで価値があるとはどういうことだろうか。そんなこと説明できるんだろうか。 まずは赤ちゃんである。赤ちゃんは自分では何もできないが、生きているだけで親はありがたいと思う、という。これは、まあいいだろう。 では、大人はどうだろう。大人でも同じことだという。 もしある人が倒れて病院に運ばれたら、家族や友人はあわてて病院に駆けつけて、生きているだけでもありがたいと思うだろう。入院した人が寝ているだけで何もできないからと言って、…

  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

    平野啓一郎 講談社 2012.9.20読書日:2023.12.8 作家の平野啓一郎が、人間とは「個人」という分けられないひとつの人格ではなく、相手によって別の人格がたち現れる「分人」の集合体であり、こう考えることで多くの人間関係が理解でき、悩みも解決すると主張する本。 相手によって自分の態度が変わる(変える)ことは誰でも経験していることであるから、分人が存在することには特に違和感はない。しかし著者の主張は、ひとりの特定の人格をもつ個人がいろいろな側面を見せている、ということでない。そうではなくて、ひとには特定の人格という核になるものは存在せず、その時どきに見せているいろいろな側面自体がひとつひ…

  • エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち

    中山淳雄 日経BP 2023.1.30読書日:2023.12.12 エンタメ社会学者を自称する著者が、日本を席巻するコンテンツを生み出したプロデューサーたちにインタビューし、その思考回路を解明しようとした本。 著者がこんな本を書こうと思ったのは、日本のエンタメが低迷していると映っているかららしい。日本が今稼いでいるのは、ポケモン、遊戯王、ウルトラマン、ガンダム、ドラゴンボールなどの20世紀のレガシーばかりで、21世紀になってから世界的なヒットを生み出していないという。 そうだっけ? 「進撃の巨人」とか、21世紀にも世界を席巻したコンテンツはそれなりにあるような気がするけど? まあ、わしが知って…

  • 2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全

    堀江貴文 徳間書店 2023.6.30読書日:2023.12.3 ホリエモンが58のトピックスについて未来の輪郭を手っ取り早く示す本。 うーん。なんか意外性がない。既視感に満ち溢れている。まるでChatGPTに未来予測のトピックスを書かせて、それに少し手を加えたという感じだ。 というか、ホリエモンはそんなふうに原稿作成にChatGPTを使っていると、この本に書いてある。この本は本当にそうやってできたんじゃないのか、という気がしてきた。(苦笑)。 やはり未来予測という限りは、意外性がほしい。それが当たっているとしても、そりゃそうだろう、というものにはあまり価値はない。ウィーン氏のびっくり大予想が…

  • 「言語哲学がはじまる」を読んで考えたこと

    「言語哲学がはじまる」を読んでいろいろ思うところがあったので、それを書いておこうと思う。 わしは哲学者でもないし、脳科学者でも機械学習のエンジニアでもないけど、両者はかぶるところもあるし、ちょっと違うところもあるようにも思った。それでその辺について考えたことをまとめてみようと思う。 まず、わしは脳の処理というのは基本的に空間を処理する機能だと思う。具体的にはマップを作っているのだと思う。この辺については以下の本に詳しく書いてある。 www.hetareyan.com このようなマップを作る機能は、最初は、動物が空間を把握し、物体の形を把握し、自分が正確に動くために必要だから発達したのだろう。言…

  • 言語哲学がはじまる

    野矢茂樹 岩波新書 2023.10.20読書日:2023.11.20 19世紀末から20世紀にかけて、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタインらがたどった言語哲学の潮流について、著者の考えを述べた本。 言語とは不思議である。人は初めて聞いた(読んだ)文でもその内容を理解できるし、いくらでもこれまでなかった新しい文を生み出すことができる。これはなぜなんだろうか、というのが著者の問いである。 現代の言語哲学を始めたのはフレーゲという人なんだそうだ。この人の画期的なところは「文脈原理」という考え方を導入したことだ。文脈原理とは、文の意味との関係においてのみ語の意味は決まる、と考えることである。 フレ…

  • イラク水滸伝

    高野秀行 文藝春秋 2023.7.30読書日:2023.11.23 チグリス・ユーフラテス川の河口の湿地帯はメソポタミア文明が興った地域であるが、5千年の昔から現在に至るまで敗れた者や迫害された者が逃げ込む地域でもあり、辺境作家の高野秀行が中国の水滸伝になぞらえてその実情を報告する本。 なんといいましょうか、既に全てのことがネット上に答えがあるんじゃないかと思える現代で、なぜか誰も答えを知らないポッカリと空いた真空地帯がこの地球上に存在しているのです。高野秀行はこの真空地帯を見つける名人で、本当にその嗅覚には感心する。目の付け所がタカノである。「謎の独立国家ソマリランド」にも驚いたけど、今度は…

  • 無人島、研究と冒険、半分半分

    川上和人 東京書籍 2023.9.10読書日:2023.11.18 人の手がまったく入っていない文字通り手付かずの無人島、南硫黄島での10年ごとの生物調査に赴く研究者たちの奮闘の記録。 この本に書かれているのは2007年と2017年の調査であるが、わしは2017年の調査の様子をNHKのドキュメンタリーで見ている。なので、南硫黄島の独特の状況はなんとなく理解している。 やはり、浜がほとんどなく、海から垂直な崖がいきなり立ち上がっている独特のフォルムが印象的で、調査のためには崖をロッククライミング並みに登らざるを得ず、本当に研究に来ているのか登山に来ているのか分からない状態である。 というわけで、…

  • ドゥルガーの島

    篠田節子 新潮社 2023.8.20読書日:2023.11.14 (ネタバレあり。注意) 建設会社に勤めているもうすぐ50歳になる男が、インドネシアで未知の文化遺産に出会い、これを人生後半の生きがいにしようと奮闘する話。 篠田節子って名前だけ知っていたけど、どんな作家かまったく知らなかった。オカルトとSF、ミステリーが主な活動領域なんだそうだ。へー、知らなかった。そしてたくさんの賞を受賞している。こっちも知らなかった。どうも申し訳ありません。 というわけで、初・篠田節子ですけど、この作品が初めてで良かったのかしら。まあ、縁というものもありますし、良かったのでしょう。 どうして篠田節子の主たるフ…

  • ナマコは平気! 目・耳・脳がなくてもね! 5億年の生命力

    一橋和義 さくら舎 2023.8.10読書日:2023.11.11 失恋の結果、ナマコの研究を始めたという著者が、ナマコの魅力を物語とコラムでつづった本。 むちゃくちゃ簡単な生物でも、生物って分からないことだらけ。なので、もちろん、ナマコも謎だらけです。 ストレスをかけると全身が溶けたり、半分にしてもそれぞれが再生して2匹になったり、捕食者に襲われると内蔵を出したり皮を脱いだりして捕食者がそれを食べている間に逃げたり、強力な毒を持っていたり、むちゃくちゃ粗食で生きていけるから浅い海から深海までいろんな海に住んでいたり、おしりの穴に魚が住み着いていたり、棘皮(きょくひ)動物で仲間にはヒトデやウニ…

  • わたしたちが光の速さで進めないのなら

    キム・チョヨプ 訳・カン・バンファ ユン・ジヨン早川書房 2020.12.15 (ネタバレあり。注意) 1993年生まれのキム・チョヨプが2017年の18歳のときに出した、かなり衝撃的なSF短編集。 これはもしかしたら最近読んだSF短編集の中でいちばん面白かったかもしれない。圧倒的な傑作「息吹」を除けばだけど。でも、あれは表題の「息吹」以外は質にばらつきがあったように思う。でもこの短編集はどれも面白かった。 作者が工学系の学生なだけあって、科学的な知識に問題はない。意外な科学技術はほぼ出てこないし、予想可能な科学技術の進歩(空想、スペキュレーション)の範囲内で描いている。だからここで描かれた世…

  • なぜヒトだけが老いるのか

    小林武彦 講談社 2023.6.20読書日:2023.11.2 動物は死ぬ瞬間まで老いない事が多いのに、ヒトだけが老いるのは、老いることで種としてメリットの方が多かったからだと主張する本。 動物は老いないんだそうだ。たいていの動物は死ぬ直前までばりばりの現役で、最後の瞬間に急速に老いてそのまま死んでしまう。著者が例としてあげているのはサケで、生まれた川をさかのぼって産卵場所に来るときまではまったく元気なのに、産卵と受精を終えると老いのスイッチが入って急速に衰えて死んでしまう。それはまさしくシャットダウンという表現がふさわしいくらいだ。子孫を残すという役割を終えると、それ以上生きていてもしょうが…

  • 電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史

    鈴木雄一郎 講談社 2019.6.1読書日:2023.10.31 私鉄の電鉄は都市と郊外とを結んで、郊外では住宅地を売り、住宅地の通勤、通学の客を運ぶことをビジネスモデルにしていると思われているが、鉄道を作った最初のビジネスモデルでは寺社を中心とした参詣と物見遊山の客を運ぶことだった、ということを明らかにした本。 何もないところに電車を走らせ、沿線を高級住宅地として売り出し、その郊外の住人を通勤通学の客として毎日運ぶというビジネスモデルは、阪急電鉄の小林一三が始めたものと言われ、東京では東急電鉄をはじめ、各社がそれを真似した……ということを、わしも信じていたが、これはまったくの誤解であったこと…

  • 賃金の日本史 仕事と暮らしの一五〇〇年

    高島正憲 吉川弘文館 2023.9.1読書日:2023.10.30 賃金とは生活そのものであるから、賃金を通して過去の生活の水準や質を考えるとともに、その分析方法に種々の方法があることを伝える本。 そもそも古代の賃金をどうやって測定するのか、とか、その水準や質をどう判断するのか、という疑問はもっともなことで、この本の中で主に述べられているのはそういう話である。 しかしわしがもっとも驚いたのは、昔は一度賃金が決まると、長いこと、それこそ100年、200年というスパンで、賃金が変わらないことだった。 たとえば14世紀から16世紀の後半まで、熟練職人の賃金はほぼ100文に、非熟練職人の場合はほぼ10…

  • トヨタのEV戦争 EVを制した国が、世界の経済を支配する

    中西孝樹 講談社ビーシー 2023.7.25読書日:2023.10.25 トヨタは1000万台の車を売り上げる巨大企業であるが、EV化への事業構造転換は、過去のしがらみなく最初からEVを前提に事業を組み立てられるテスラ、BYDなどの新興企業と比べてはるかに難しく、そのEV化戦略をアナリストの立場から追った本。 トヨタがEV時代を生き残れるのかどうかというには日本経済の帰趨に直結するので、この本を手にとって見たのである。で、トヨタは生き残れるのだろうか? この本を読んで分かったのは、さっぱり分からん、ということである。EV化への道はあまりにいろんなことが不明であり、なにか下手を1回でも打てば、ト…

  • 新冷戦の勝者になるのは日本

    中島精也 講談社 2023.6.19読書日:2023.10.27 グローバリゼーションの間、日本に不利だった状況が新冷戦の世の中になってすべて逆転し、日本は勝者になると主張する本。 ほんの数年前まで、わしは日本の景気が良くなるという本は好んで読んでいたものである。もう日本にいいことが書いてあればなんでもいいくらいの勢いだったのである。(多少オカルトでもオーケーなくらい(笑))。 しかし、現在、日本に追い風が吹き始めると、いったいこれがどのくらいの規模で、今後どうなるかという具体的なことが知りたい、あるいはどんな落とし穴がありえるのかというリスクについて具体的に知りたいと思うようになってきたので…

  • 戦争とデータ ―死者はいかに数値となったか

    五十嵐元道 中央公論社 2023.7.10読書日:2023.10.22 戦争中に死者の数を一つ一つ数えることは不可能で、とくにタグをつけている兵士たち以上に文民の犠牲者の数を数えるのは至難であるため、統計的に解析する方法が開発されて来た経緯を述べた本。 19世紀の後半になるまでは、そもそも兵士の死亡数をカウントすることすら行われていなかったそうだ。ところが、徴兵制で国民が徴兵されるようになると国民のひとりひとりの死について説明する責任が国家にあると考えられるようになり、さらに人道的な発想が浸透するにつれて、兵士以外の文民についても、できるだけ説明することが求められるようになってきた。 このよう…

  • スターメイカー

    オラフ・ステープルドン 訳・浜口稔 国書刊行会 1990.5.20初版 2004.1.30新装版読書日:2023.10.26 (ネタバレ注意) イギリスのヒースの丘に座っていた「わたし」は、霊体となって地球を飛び出すと宇宙を飛び回り、宇宙の端から別の宇宙すら覗き込み、テレパシーで時空を超えて他の知性体とコミュニケーションを取り、数々の人類が滅んでいく顛末を見て取り、宇宙の星々、さらには銀河が知性を持つ存在であることを知るが、宇宙が限りなく広がり死を迎えようとする中、どこかにスターメイカーという宇宙の創造主がいることを確信し、スターメイカーに迫ろうとするのだが……。 わしが読むものは、最近出版さ…

  • なぜ燃やすのか シバター伝

    シバター KADOKAWA 2022.5.26読書日:2023.10.23 YouTuberのシバターが、これまでの生い立ちと意外に堅実な人生観を披露する本。 なぜこんな本を読んだかと言うと、息子が格闘技ファンで、面白いから読んだほうがいいとわしに回してくれたからだ。というわけで、面白い本はみんなで回しあいましょう。 炎上系と言われがちなシバターであるが、自分から炎上させているわけではないという。炎上しているやつに絡んでいるだけなんだそうだ。炎上させているように見えても、それはかなり演出なんだそうだ。それも相手がちゃんと相手をしてくれるから成り立つ話で、たとえば朝倉未来はうまく相手をしてくれる…

  • 無料の読書三昧

    最近、世の中は無料、というか、おまけの読書にあふれています。ネット小説とかではなくて、ちゃんとした本です。(ちゃんとした本とは、編集や校正とか、普通の出版の手続きを踏んでいる本のこと)。 無料の読書といえば筆頭は図書館でしょう。 無料と言っても、住民税は払っているから遠慮することはありません。どんどん読みましょう。当然ながら、読みきれない量の本があります。人気の本は予約して待たなくてはいけないという縛りがありますが、何10冊も予約していると、次から次へと予約が届いて、ときには恐ろしいことになることもあります。 えっ、あなたは10冊しか予約できない、ですって? それは住んでいる地元の図書館しか使…

  • フキダシ論 マンガの声と身体

    細馬宏通 青土社 2023.6.20読書日:2023.10.19 マンガにおける声(内言を含む)を示すフキダシについてあれこれ考察した本。 マンガは日本人のほとんどが日常読んでいるもので、フキダシについて特に思うことはなかったのですが、こうしていろいろなパターンを見ていくと、マンガ家の皆さんは様々な工夫を重ねているんだなあ、と思う次第です。 ともかくマンガ家としては、読者に次のコマ、次のコマとどんどん進んでいってほしいので、次のコマに対する興味を引き立てるようにフキダシも配置するわけです。 たとえば、そのコマに描かれていない人の声のフキダシがあるとすると、読者はこれは誰が話しているんだろうと興…

  • 日本の死角

    現代ビジネス編 講談社現代新書 2023.5.20読書日:2023.10.17 講談社のウェブマガジン「現代ビジネス」に掲載された論考16本をまとめた本。 どれもウェブマガジンに掲載されたもので、短いものだ。深く考えるには足りないけれど、新しい視点を得られて、気になった部分は読者が掘り下げてくれればいいという発想だろう。 当然、発表された時期とは状況も変わっているものもあるので、今回の出版では論者により加筆されたものもある。その最もたるものは、藤田祥平という作家が書いた2017年の中国に関する論考だろう。(『日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのおっさんに言いたいこと』) 1991年生まれ…

  • アナロジア AIの次に来るもの

    ジョージ・ダイソン 監訳・服部桂 訳・橋本大也 早川書房 2023.5.20読書日:2023.10.7 ライプニッツの唱えたデジタルの世界が現在あふれているが、今後はアナログの世界が復権するという主張をする目論見に無理やり自分の体験を組み込んだ本。 デジタルからアナログへの回帰、と言われると、なるほどという気になります。デジタルと言うと白黒がはっきりした論理という感じがしますが、現在のAIはほぼほぼディープラーニングの世界で、そこは曖昧でなんとなくの世界だから、デジタルでアナログを実現していると言えるでしょう。ですから、この辺を議論するときっと面白いに違いない……というようなつもりでこの本を読…

  • ケトン食の名医が教える 糖質制限はしなくていい ―エビデンスにもとづいた科学的に正しい食事

    萩原佳祐 ダイヤモンド社 2023.2.28読書日:2023.10.15 痩せるために無理に糖質制限をすると筋肉が落ちてしまうので、適度に糖分を摂取しつつ、ケトン体質を目指すべきだと主張する本。 わしは血糖値が高かったため糖質制限の食事を行っているのだが、こんなわしでも糖質制限はしなくてもいいのだろうか。 もちろんそんな訳はないのである。糖質制限をしなくてもいいのは、いま普通に健康で、ダイエットのために糖質制限をしようとしている人の話だ。血糖値が高い人は糖質制限をしてもいい、というか、しなくてはいけない。 わしもご飯やパンを食べていないだけで、糖質を摂っていないわけではない。主食以外に含まれて…

  • 影の王

    マアザ・メンギステ 訳・粟飯原綾子 早川書房 2023.2.25読書日:2023.10.14 (ネタバレあり。注意) 1935〜41年、イタリアがエチオピアに侵攻したとき、祖国防衛に立ち上がった女性兵士たちの物語。 内容はフィクションだが、女性兵士がいたことは事実らしい。小説を書き上げたあとに分かったことだが、著者マアザ・メンギステの曾祖母もこの戦争に兵士として参加していたのだそうだ。家族の男兄弟が小さかったからという、まるで「ムーラン」みたいな話だけど。 主人公はヒルトという少女で、貴族のキダネの使用人になる。キダネは祖国防衛の軍隊を組織するなど、地域の大物だ。ヒルトは父親の形見の銃を持って…

  • 資本主義に出口はあるか

    新谷大輔 講談社現代新書 2019.9.1読書日:2023.10.11 近代の歴史を、ロック的なもの(自由)とルソー的なもの(平等)で読み解けば理解ができ、どちらにもとらわれない資本主義の次の時代も見えてくると主張する本。 本の中でも述べられているが、この2つは同じ言葉を使っているので、区別が難しいのである。ルソー的なものの政治的立場は「リベラル」と呼ばれている。リベラル、とは自由という意味である。しかしこのときの自由とは、不平等で虐げられている人を不平等から開放する(引き上げる)という意味で使っているので、基本理念は平等なのである。 いっぽうロック的なものは、本当の好き勝手にやっていいという…

  • 熱烈中華食堂 日高屋 ラーメンが教えてくれた人生

    神田正 開発社 2009.9.28読書日:2023.10.9 日高屋を創業した神田正が自分の人生を振り返る本。 わしは日高屋が好きで、愛用している。わしが住んでいるところはラーメンの激戦区であるが(さいきん、激戦区でないところってあるのかしら?)、ラーメンは日高食堂の中華そば(390円、税込み)が一番おいしいんじゃないかと思ってる。もちろんハイデイ日高の株主になって株主優待も使っている。日高屋によれば、おいしいというよりも、飽きない味を目指しているんだそうだ。確かにそんな印象。もっともわしが一番食べているのは、野菜たっぷりタンメンなんですが。 神田正については、これまでもカンブリア宮殿などで知…

  • 習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか

    ラッセル・A・ポルドラック 監訳・神谷之康 訳・児島修 みすず書房 2023.2.10読書日:2023.10.4 習慣が根付く原理というものが分かってきたが、習慣は恐ろしく固着的で、一度身につくとそれを変えるのは困難で、とくに依存症の場合は難しくなるが、一方では将来的にそれを変えるような技術も見つかっているという、習慣に関する最近の研究成果をかなり網羅的に示した本。 この本のことは知らなかったが、知り合いが勧めてくれたので読んでみることにした。依存症に興味のあるわしには、まさにピッタリの本だった。脳関係の医者に聞いたら、著者のことを知っていたから、脳関係ではそれなりに有名な人らしい。 この本を…

  • シンプルで合理的な人生設計

    橘玲 ダイヤモンド社 2023.3.7読書日:2023.9.28 金融資本(資産)、人的資本(収入)、社会資本(評判、人間関係)の3つの資本を備えた人が幸福だと定義する橘玲が、人生設計を指南する本。 橘玲はこの手の本を20年ぐらい前から数年おきに出していて、感心するのはそのたびに内容がバージョンアップされていることだ。逆に言うと、ずっと変わらない部分については、より普遍的ということになるのかも知れない。 幸福かどうかは主観的なはずなのだが、橘玲は、上記の3つの資本を備えていれば幸福なのだ、と定義してしまう。なかでも、お金があるかどうかでずいぶん違ってくるので、金融資産を作ることに重きを置いてい…

  • ぼくはあと何回、満月を見るだろう

    坂本龍一 新潮社 2023.6.20読書日:2023.9.27 2023年3月に亡くなった坂本龍一が、2009年の「音楽は自由だ」以降について語った回想録。 音楽家と思えないような端正な文章で、インタビューだから編集者の腕もあるんだろうけど、坂本龍一の話す言葉もきっと同じくらいに端正なんだろうなあ、と思う。いろんな本を読んでいるのが明らかで、文章を書く人になっても成功したんじゃないかって思わせるところがある。しかし本人はやっぱり音楽家で、ガンの治療でまいっているときでも、音楽に触れるときは、その辛さを忘れたんだそうだ。 坂本龍一がどんな本を読んできたかについては、別の本があるらしい。その傾向を…

  • 誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版

    押井守 構成・渡辺麻紀 東京ニュース通信社 2021.818読書日:2023.9.24 押井守がジブリについて語った2017年版に、押井守作品のプロデューサーをやっているプロダクション・IG社長の石川と、ジブリの鈴木敏夫の懐刀と呼ばれた高橋望との鼎談、それに鈴木敏夫との往復書簡を加えたもの。 たぶん、わしは2017年度版を読んだことがあると思う。しかし、押井守は同じような話をあちこちでしているので、読んだ気になっているだけなのかも知れない。ともかく、読んでいて既視感がありありだった。 まあ、ジブリの評価を一言でいえば、・宮崎駿 ナチュラル・ボーン・アニメーターで、監督の才能はない。ディテールの…

  • プロジェクト・ヘイル・メアリー

    アンディ・ウィアー 訳・小野田和子 早川書房 2021.12.20読書日:2023.9.22 (ネタバレあり。注意) 自分の名前すら忘れた記憶喪失状態で目覚めたぼくは、自分が宇宙船の中にいて、どうやら別の星系にいるらしいことに気がつく。どうやら人類の危機を救うためにここに来たらしいが、仲間は冬眠中に死亡していて、状況がわからない。徐々に記憶は戻りつつあるが、果たしてこんな状態で、人類を救えるのか……。 デビュー作の「火星の人」は読んでいないが、映画の「オデッセイ」は見たことがある。という状況で本作を読んだわけだが、本作の印象は、なんというか、古き良きSFという感じ。どのくらい古いのかと言うと、…

  • ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く

    ナオミ・クライン 訳・幾島幸子・村上由見子 岩波書店 2011.9.8読書日:2023.9.17 ミルトン・フリードマンの唱える新自由主義は自由のみに価値を置く過激な経済思想だが、過激すぎるゆえに民主主義の世界では受け入れ不可能で、最初は独裁国家のみで実現されていたが、そのうち災害などで社会がショック状態にあるときにすばやく導入するという戦術で民主主義国家でも導入されるようになり、ソ連が崩壊したあとは東ヨーロッパに、アジア通貨危機が発生するとアジアに新自由主義を導入することに成功してグローバル化を達成し、さらにはアメリカでは新自由主義の考えに沿ってイラク戦争すら引き起こし、このため全世界で貧困…

  • 植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間

    稲垣栄洋 SBクリエイティブ 2023.7.15読書日:2023.9.7 植物学を教える大学教授のところに植物をめぐる質問メールが一週間にわたって届くが、いずれもすぐに答えるのが難しい問題で、教授がいろいろ考えを巡らせる本。 この本の最初の質問は植物と動物の違いについてである。これは非常に難しい質問で、結局のところ、大昔に誕生した最初のひとつの生命が植物と動物に別れたので、植物と動物の間には明確な区別がなく、微妙なグラデーションが存在しているからだ。わしは知らなかったが、植物の中には移動するものがあるのだという(ソクラテア・エクソリザ)。もちろん非常にゆっくりとだが。 というわけで、植物につい…

  • 台湾漫遊鉄道のふたり

    楊双子 訳・三浦優子 中央公論新社 2023.4.25読書日:2023.9.6 (ネタバレあり。注意) 太平洋戦争前に植民地だった台湾を訪れて、気兼ねのない鉄道と食事の旅を望む女流作家の青山千鶴子は通訳として似た名前の王千鶴に出会うと、王千鶴は通訳の枠を越えて千鶴子の世話をし、二人はお互いに惹かれ合うが、親友になりたいと願う千鶴子の思いに反して千鶴は心を開かない。そこには千鶴子には思いが及ばない、植民地を支配する側と支配される側の越えられない壁があったのだった。 本作は「美食x鉄道x百合」小説なんだそうだ。いったいいくつ掛け合わさっているんだという感じだが(笑)、キワモノではない。きちんと時代…

  • 安倍晋三回顧録

    安倍晋三 聞き手:橋本五郎 聞き手・構成:尾山宏 監修:北村滋 中央公論社 2023.2.10読書日:2023.9.2 2022.9.27にテロにより亡くなった、安倍晋三さんが、後世のために残してくれた回顧録。 なんというか、安倍晋三さんって、本当に戦略的に考えて行動する人だなあと思う。使命感に溢れた人だから、首相を終えてから回顧録を残すことが自分の使命と感じて、こうして残してくれたのだろう。なんて素晴らしい人なんでしょう。 ほとんどのことはもう知っていることばかりだったが、第1次安倍内閣と第2次の間に何をしていたのか、よく知らなかったので興味深かった。安倍さんは、市井の人々に会っていたのだ。…

  • 街とその不確かな壁

    村上春樹 新潮社 2023.4.10読書日:2023.8.30 17歳のときに当時の恋人から幻想の街の存在を教えられた私は、大人になってその街で訪ね図書館で<夢読み>となるが、一方、街に入るときに引き離された私の影は現実の世界に戻り、自分が影だったことも忘れて私として生き、やがて田舎に移住して図書館の館長として働くようになる……。 いつもどおり現実と幻想が切れ目なくつながった春樹流マジックリアリズムの世界が描かれていて、まあ、確かにいろんなメタファーなんかが絡んでくるんでしょうけど、そんな物語やメタファーの意味なんて考えても仕方がなくて、ただただ村上春樹の世界、とくに独特の文体を楽しむだけでい…

  • 鋼鉄紅女

    シーラン・ジェイジャオ 訳・中原尚哉 早川書房 2023.5.25読書日:2023.8.25 (ネタバレあり。注意) 謎の異星人、渾沌(フンドゥン)からの攻撃を受けてから2000年後、地球人の国、華夏(ホワシア)は渾沌の亡骸を材料に戦闘機械・霊蛹機(れいようき)を作り、渾沌に奪われた土地の奪還を目指している。霊蛹機は人型に変形できる巨大ロボットで、男女がペアになって気で操縦するが、妾女(しょうじょ)と呼ばれる女性の方は戦闘のたびに死に、使い捨ての存在だ。姉を霊蛹機パイロットに殺された武則天(ウー・ゾーティエン)は復讐のために妾女に志願するが……。 いやー、なんと言いましょうか、中華テイストのS…

  • 奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

    三崎律日 KADOKAWA 2019.8.23読書日:2023.8.23 ニコニコ動画で配信した「世界の奇書をゆっくり解説」をまとめた、世界の奇書に関する本。 副題の通り、歴史を動かした本から、これも奇書?というような本も含まれている。たとえばコペルニクスの「天体の回転について」とか。ジュール・ベルヌの「月世界旅行」も後世に与えた影響がむちゃくちゃ大きかったということで紹介されている。これらって奇書なのかしら。有名なフェイク文献群である「椿井文書」も含まれている。 まあ、こういうのもあるけど、個人的にすごく気に入ったのは、ヘンリー・ダガーが書いた1万5000ページの小説「非現実の王国で」だなあ…

  • 名著の予知能力

    秋満吉彦 幻冬舎新書 2023.5.30読書日:2023.8.21 NHK Eテレの「100分de名著」のプロデューサーが、名著には現代に通じる視点があり、生きていくための参考になると主張するとともに、企画を進めていくためのコツのあれこれを述べた本。 「100分de名著」は毎週見ているので、読んでみようかと思ったのです。名著に予知能力があるというのは別に異論はありませんし、そもそもそういう本でないとこの番組で取り上げる意味はないでしょう。番組ではわしが聞いたことがないような本が出てくることがあり、番組で取り上げられたので読んでみようと思った本もけっこうあります。この番組で取り上げられるとたちま…

  • 官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則

    デヴィッド・グレーバー 訳・酒井隆史 以文社 2017.12.10読書日:2023.8.17 たとえ規制緩和してもますます規制が増え、官僚が増える結果になるという「リベラリズムの鉄則」があり、いまや全面的官僚化の世界になってしまったが、このような官僚制を議論するときに、忘れられがちないくつかの論点があるとし、1つは制度に潜む国家の暴力であり、1つは官僚制がテクノロジーに与える負の影響であり、1つには我々が実は規則(ルール)を好むことがある、と主張する本。 惜しくも2020年に亡くなってしまったデヴィッド・グレーバーだが、アナーキストの文化人類学者というユニークなバックボーンを持っているので、な…

  • 逆張りの発想は不安の頂点に出現する

    なぜか世の中では、不安の頂点で、逆の発想の話が出てくることがよくある。最近、へーと思ったのは次のような話。 (1)気候変動は制御可能な領域になってきたという話 日本を含め世界各地で、際限のない山火事、超大型の台風やハリケーン、過去に経験のない洪水や渇水のニュースがあふれています。もう気候変動は現実の話で、しかもこれからもっと悪くなると誰もが思っているこんな時代に、「想定したよりも人類はうまく対処できている」とする本が今後次々と出版されるというのです。 えーっ、そうなの? この話はニューズウィーク日本版に出ていた話で、なんでも再生可能エネルギーへの転換や、EVへの転換がかつて想定されていたよりも…

  • ルワンダでタイ料理屋をひらく

    唐渡千紗 株式会社左右社 2021.3.28読書日:2023.8.9 自分には何の取り柄もないと思っていたシングルマザーがルワンダでタイ料理屋を開くことに決めて、悪戦苦闘する本。 「自転車に乗れるようになったら乗ろう、ではいつまでたっても自転車に乗れない」ということを信条にしている唐渡さんなので、何事も、えいや、と決めてしまうらしい。会社の先輩のマリコさんが暮らしているルワンダを訪ねていいなと思い、タイ料理がいいと思う、というマリコさんの言葉であっさりタイ料理屋「アジアンキッチン」を開くことを決めてしまう。このとき、唐渡さんには外食の経験もなければ、タイ料理の作り方も知らなかったというのだから…

  • 禁城 死の沈黙の武漢で、本当に起きたこと

    ムロン・シュエツン 編・クライブ・ハミルトン 訳・森孝夫 飛鳥新社 2023.3.31読書日:2023.8.7 世界で最初にコロナのロックダウンを経験した武漢市民の体験談。 コロナでは世界中がロックダウンしたのだから、武漢の市民が体験した医療体制が崩壊し、マスクや食料がなくなるといった光景にも、自分の体験として既視感がある。しかし世界で初めてコロナウイルスの惨禍にまみれ、何の予備知識もないままにロックダウンに突入した武漢の人たちの気持ちはどうだったのだろう。 しかも、ここにコロナウイルスを軽視し、それを隠蔽しようとさえした絶対権力である中国共産党の物語が絡んでくる。 ほとんどの人たちは、パンデ…

  • 押井守の人生のツボ 2.0

    押井守 構成・文/渡辺麻紀 株式会社東京ニュース通信社 2023.3.31読書日:2023.8.4 映画監督の押井守が、どうせ他人事だから、という立場で他人の人生相談にのる本。 まあ、いつものように、渡辺麻紀と押井守がだべっているだけの本なのですが(笑)。 お二人によれば、映画を浴びるように観てきたひとは、人生相談なんかしないそうです。映画自体が人生の予習のようなものだから、だそうです。押井さんは、社会のすべてのことを映画で学んできたのだそう。 それもハリウッド映画がいいんだそうだ。なぜなら、ハリウッド映画はアメリカという移民国家を統合するという使命を背負っていて、価値観(イデオロギー)を表明…

  • 天路の旅人

    沢木耕太郎 新潮社 2022.10.25読書日:2023.8.3 第2次世界大戦末期に密偵として内モンゴルに潜入し、そのまま戦争が終わってもチベットやインドを放浪し、帰国後は「秘境西域八年の潜行」という本を出版した以外は、死ぬまで岩手県で美容関係の卸の仕事を坦々と続けた西川一三の、自身も「深夜特急」で西域を放浪した経験のある沢木耕太郎による評伝。 この本のほとんどの内容は「秘境西域八年の潜行」の内容とかぶる。そういうわけで、もしそれだけなら、改めてこの本を書く必要はなかったはずである。もちろん、あとから出版するものの使命として、オリジナルの原稿から削除された部分を復元するとか、間違いを訂正する…

  • 非正規公務員のリアル 欺瞞の会計年度任用職員制度

    上林陽治 日本評論社 2021.2.25読書日:2023.7.26 民間以上に悲惨な雇用実体である非正規公務員のリアルな状況を報告した本。 そもそも非正規公務員は民間の法律が適用されず、その結果、民間以上に悲惨な状況だと聞いていたが、この本を読む限り、想像していた以上にひどい。これはほとんど人権侵害のレベルではないか、という気すらする。 いまや公務員の3人に1人は非正規なんだそうだ。すでに非正規は、彼らがいないと業務が止まってしまう基幹的な存在である。しかし、その年収は正規職員の3分の1しかない。そして何年働いても給料は上がらない。継続的に働いていないことにするために、364日で解雇して、1日…

  • 中国の嫌がらせと岸田政権

    福島原子力発電所の処理水の放出に対して中国が反発し、水産物を全面的に禁輸した。それに加えて中国から日本の原子力と関係のない施設に対して、6000件以上の嫌がらせ電話が届くようになった。 これに対して、わしが思ったことをここに記しておこうと思う。 まず中国側だが、多くの識者が述べているように、これは国内の不満を外に向けるためなのは明らかだろう。経済の成長率は鈍化し、若者の失業率は実質40%に達するのではないかと推定されている状況だ。福島原発の処理水放出が起きたことを奇貨として、国内の不満を外に向けるよう誘導しているのだろう。 こうして日本に対する嫌がらせ電話事件が起きた。 このニュースを見ながら…

  • 酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代 ある東大生の輝き

    藤原章生 山と渓谷社 2023.3.10読書日:2023.7.23 1984年にヒマラヤK7の初登頂を成し遂げた東大スキー山岳部遠征隊の隊長で周囲に強い印象を残し、K7後は登山から引退するも、最後は酒に飲まれて46歳で亡くなった、永田東一郎の評伝。 著者が永田に出会ったのは、都立上野高校の2年のときだったそうだ。その時、永田は上野高校の登山部のOBで、すでに高校を卒業していたが、しょっちゅう顔を出していたという。永田は上下関係にはまったくむとんちゃくな人で、上に対しても下に対しても言葉遣いも態度もまったく変わらない人だったそうで、つまり、上からは疎まれて、下からは慕われるタイプだったらしい。 …

  • 超加速経済アフリカ LEAPFRPGで変わるビジネス地図

    椿進 東洋経済新報社 2021.6.10読書日:2023.7.21 爆速的に成長しているアフリカのリアルを紹介し、日本人にアフリカでのビジネスを勧める本。 近年、最も売れたアフリカの本なんだそうだ。著者はルワンダでナッツビジネスをしていて、アフリカのリアルに詳しい。そして日本の昔からのアフリカに対する思い込みは今では正しくないとして、アフリカに進出するように勧めている。 思い込みのひとつは地理で、アフリカはなんとなくそんなに大きくないように思い込んでいるが、それはメルカトル図法による錯覚で、とんでもなく大きいのだという。実際には縦8000Km、横7400Kmでアメリカと中国とインドとヨーロッパ…

  • #真相をお話します

    結城真一郎 新潮社 2022.6.30読書日:2022.6.30 真実が分かると、状況がすべて反転し、細かく配置された伏線も回収される、楽しめるミステリー短編集。 ミステリーがちっとも面白くないたちなので、ほとんど読まないが、なぜかこれは図書館で予約してしまった。1年以上前の本だがいまだに予約がたくさんついているから、ミステリーがいかに人気なのかが分かる。 というわけで読ませていただいたけど、基本的には前半では日常的な話が続くけれど、どうもおかしいということになって、最後にはすべてが明らかになって実はという話になり、前半で述べたことに別の意味があったという落ち。出だしの話の持って行き方の滑らか…

  • アメリカは内戦に向かうのか

    バーバラ・F・ウォルター 東洋経済新報社 2023.4.6読書日:2023.7.15 独裁政治と民主主義の間には中間のアノクラシーという状態があり、アノクラシーの状態が一番危険で内戦に陥る可能性が高く、アメリカはいまアノクラシーに入ってしまった状態だと主張する本。 内戦という状態は従来はなかなか起きるものではなかったが、20世紀末から21世紀にかけては激増しているという。そういう事もあって、世界中で内戦に関する研究が進んで、どんな国で起きやすく、どんなふうに発生するのかという知見が増えてきた。その結果、国の状態を客観的に評価できるようになり、どの国に内戦が起きそうかということも予見できるように…

  • キツネとわたし ふしぎな友情

    キャサリン・レイヴン 訳・梅田智世 早川書房 2023.4.25読書日:2023.7.13 (ネタバレ注意) 親から虐待を受けて15歳から一人で暮らしてきた著者が、モンタナ州の丘にコテージを建てて暮らし始め、そこに訪れる<キツネ>と友だちになる話。 著者のレイヴンは本当に両親の愛のない家で育ったという。親族でわずかに彼女に愛を注いでくれたのは祖父だけだったらしい。親から虐待も受けたらしい。もともと子供は欲しくなかった、と言われて続けて育ったのだ。それで15歳のときに家を抜け出した。驚いたことに彼女はその後、大学へ行ったのだ。15歳で大学って、どういうこと? 彼女にとって幸いなことに、彼女はとて…

  • わしが経験したヒステリー 「眠り続ける少女たち」を読んで思い出したこと

    「眠り続ける少女たち」には、実際には健康なのに、自分の体の不調はこの病に違いないと主張して、どんどんその症状が起きてしまうという現象が紹介されている。 これって誰にでも経験あるのではないだろうか。恥ずかしながら、わしも経験があるので、そのときのことをここに記そうと思う。 わしはコンタクトレンズを付けていた頃があって、あるときコンタクトをしたまま寝てしまった。起きたとき、片方のコンタクトが無くなっていた。探したが、見つからない。嫌な予感がした。もしかしたら、目の奥に入ってしまったのではないだろうか。 わしはネットで見た、目の奥から何個もコンタクトレンズが出てきたというおどろおどろしい写真を思い出…

  • 眠り続ける少女たち 脳精神科医は<謎の病>を調査する旅に出た

    スザンヌ・オサリバン 訳・高橋洋 紀伊國屋書店 2023.5.10読書日:2023.7.8 心と身体は繋がっており、心により身体はヒステリー状態を起こして、身体はどこも悪くないのに、特殊な病気になってしまうことを示した本。 マトリックスという映画では、仮想空間で受けた傷はそのまま実際の身体にも表れる。だから仮想空間で殺されると、本当に命を落としてしまう。つまり「心と身体は繋がっている」のだという。こんな映画マトリックスのような出来事が世界中で実際に起きているのだと、著者のオサリバンは主張するのだ。 最初に出てくるのが、スウェーデンの少女たちに起きる眠り病だ。どんなに検査を行っても身体に異常は認…

  • 依存症と人類 われわれはアルコール・薬物と共存できるのか

    カール・エリック・フィッシャー 監修・松本俊彦 訳・小田嶋由美子 みすず書房 2023.4.10読書日:2023.7.6 本人のアルコール依存症との戦いを交えて、アメリカの依存症対策の歴史を述べた本。 なんかアメリカの政策って極端すぎる気がする。アルコールについては異常に厳しかったりする一方、化学的に作られた新しい薬物に対しては案外寛容だったりする。そして依存症になってしまった人にたいしては、本人の意志の強さの問題として放置するか、逆に厳しく取り締まる傾向が強い。病気というよりも道徳の問題として取り扱おうとする。この結果、麻薬依存症のひとを犯罪者として取り締まる傾向のほうが強い。他国でやってい…

  • 人間がいなくなった後の自然

    カル・フリン 訳・木高恵子 草思社 2023.5.4読書日:2023.7.2 いろいろな理由で人がいなくなった廃墟を訪ねて、自然が回復していく様子を記した本。 子供の頃、空き地があると、そこに植物がどんどん育っていくのをよく観察してしていた。最初はもちろん雑草だらけだけれど、空き地の中には何年もそのまま放って置かれている所もあり、そうすると空き地には木まで生えてきて、けっこう大きく育つこともあった。 わしは植物や動物の名前を覚えることに興味がないので、どういう植物や動物がそこにいたのかここでいうことはできないが、この本の著者のカル・フリンはたくさんの固有名詞をあげていて、それだけでも大変なこと…

  • DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

    ビル・パーキンス 訳・児島修 ダイヤモンド社 2020.9.29読書日:2023.6.28 人生でいちばん大切なのは経験であり、死ぬときにたくさんの思い出があることが重要で、すべてのお金はこうした経験に変えた方が良いと主張する本。 最初に著者のビルが働き始めた20代の頃の経験が出てくる。まだ安い給料で働いていた頃、ルームシェアをしていたジェイソンがある時、休暇を取ってヨーロッパへ行く決心をする。お金はなかったので、1万ドルの借金までした。著者には信じられないことだった。もし旅行をするのなら、お金を貯めてから行くべきだと思ったからだ。 しかし、旅行から帰ってきたジェイソンの話を聞いて羨ましくなる…

  • 母親になって後悔している

    オルナ・ドーナト 訳・鹿田昌美 新潮社 2022.3.25読書日:2023.6.26 自分は母親になるべきではなかったし、別の人生を与えられたら子供は産みたくないと考えており、母親になったことを後悔している女性がいることを述べた本。 わしは母親になったことを後悔している女性がいても不思議とは思わないが、世間的にはそのことを公言しづらいことは理解できる。なにより母親は、父親と違って、自分が産めば確実に実の子なのだ。血がつながった実の子に対してそのような感情を持つということは理解されづらいだろう。 少々ややこしいが、このような後悔をしている女性が、子供を愛していないというわけではないのである。大部…

  • 捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来

    ジム・ロジャーズ 監修・翻訳 花輪陽子 SBクリエイティブ 2023.2.15読書日:2023.6.21 冒険投資家のジム・ロジャーズが、日本はこのままでは世界から捨てられるとし、日本人は国を当てにしないで生きていかなくてはいけないと主張する本。 ジム・ロジャーズはポジショントークばかりする人のような気がしていたが、今回はあまりそんな話は少なかった。日本が好きだと公言しているから、本気で日本のことを心配しているのかもしれない。 ジム・ロジャーズがあげる日本の今後のリスクは、よく知られているものだ。国の借金、少子高齢化、デジタル化の遅れ、技術革新の停滞、食料危機、米中激突などの地政学的リスクなど…

  • 叛逆航路

    アン・レッキー 訳・赤尾秀子 東京創元社 2015.11.20読書日:2023.6.21 (ネタバレ注意) 星間国家ラドチの戦艦<トーレンの正義>は艦にも属躰(アンシラリー)と呼ばれる人間の死体を利用した兵士にも同時に存在するAIであったが、好意を寄せる副官オーンをラドチの独裁者アナーンダ・ミアナーイの命令により殺さざるを得なくなり、さらに自らもアナーンダに破壊され、生き残ったのはアンシラリーの1体のみとなってしまう。1体だけ生き残った<トーレンの正義>のアンシラリーはブレグと名のり、アナーンダ・ミアナーイへの復讐を誓う。 この作品、とても評判がいいので、読まなくてはと思っていたが、ずっと後回…

  • 千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話

    済東鉄腸 左右社 2023.2.10読書日:2023.6.18 大学を卒業したものの就職しないまま引きこもりになり、膨大な映画を見て英語をマスターして未公開映画を中心に紹介するオンラインメディアを運営し、ルーマニア映画にハマってからはルーマニア語の勉強を始め、ついにはルーマニア語で書いた小説がルーマニアの雑誌に掲載されるようになった体験を書いた本。 引きこもっているくせに、やたらアクティブな人がいるが、済東鉄腸さんはまったくもってそんな人。 大学のときに失恋したことがトリガーになって、心が折れてしまって引きこもってしまったのだという。就職活動はもちろんできなかった。2015年のことである。 そ…

  • AI 2041 人工知能が変える20年後の未来

    カイフー・リー(李開復)、チェン・チウファン(陳楸帆)、訳・中原尚哉 文藝春秋 2022.12.20読書日:2023.6.21 グーグルでAI研究をしていたカイフー・リーが2041年のAIが世の中に広がった世界を、実際に起こり得る10の未来を予想・解説し、それに基づいて元グーグルの同僚のSFサ作家チュン・チウファンがSF短編を10編書いた本。 カイフー・リーの20年後の世界の予想は、それほど衝撃的ではなく、かなり現実的。人間を超えるような知能が出現する、シンギュラリティが起こることについては否定的だ。 わしも21世紀に入ってすぐにシンギュラリティについて知ったころは、もしかして本当にあり得るん…

  • 静かな人の戦略書 騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法

    ジル・チャン 訳・神崎朗子 ダイヤモンド社 2022.7.12読書日:2023.6.8 内向的な人には内向的な人なりの戦略があり、内向的な人でもリーダーシップを発揮することは可能だし、内向的な人こそ力を発揮する局面も多いと主張する本。 わしは自分が内向的なのかどうかよく分からない。内向的というのはどういう人なんだろうか。 ジル・チャンのあげる例をみると、知らない人と一緒にいると疲れてしまい、何か話してと言われると頭が真っ白になってしまい、マンションにずっと暮らしているのにマンション内で知り合いは1人か2人でしかもちょっと駐車場で話したくらいだという。 まあ、全部だいたい自分に当てはまるんだけど…

  • 語学の天才まで1億光年

    高野秀行 集英社インターナショナル 2022.9.10読書日:2023.6.7 辺境冒険家の高野秀行が、これまで巡ってきた語学遍歴を披露して、人間の言語はどれも同じだと達観するに至った経緯を書いた本。 この本は図書館に驚くほどたくさんの予約が入っていた。高野秀行の本でこんなに予約が入っているのを初めて見た気がする。日本人の語学に対するコンプレックスがいかに強いかがわかる気がする。 高野さんによれば、日本語は日本語族といって、世界からまったく孤立した言語なんだそうだ。そうだっけ? わしが学校で習ったのは、日本語はアルタイ語族に属していると思ったが。調べてみると、日本語がアルタイ語族というのはまだ…

  • 寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ

    こかじさら WAVE出版 2022.11.19読書日:2023.6.2 千葉に帰って90歳代の老父母と老叔父叔母の面倒を見ることになったライターの日々の嘆きを書いた本。 90代でも、みなさん、かなり元気なんですね。もちろん人間としては劣化が著しいのですが、とりあえず90歳までなんとか自活できていたというのは、なかなかよくやっていたのではないかという気がします。 著者の言うには、崩壊していく過程では、本人がこれまで歩んできた人生が如実に表れるんだそうです。 著者の老母は、自分の人生を自分で仕切ってきた人なんですね。なので、何もできなくなっても、自分で仕切ろうとする。そして、私がいないと何もできな…

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