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2018/11/23

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  • 新冷戦の勝者になるのは日本

    中島精也 講談社 2023.6.19読書日:2023.10.27 グローバリゼーションの間、日本に不利だった状況が新冷戦の世の中になってすべて逆転し、日本は勝者になると主張する本。 ほんの数年前まで、わしは日本の景気が良くなるという本は好んで読んでいたものである。もう日本にいいことが書いてあればなんでもいいくらいの勢いだったのである。(多少オカルトでもオーケーなくらい(笑))。 しかし、現在、日本に追い風が吹き始めると、いったいこれがどのくらいの規模で、今後どうなるかという具体的なことが知りたい、あるいはどんな落とし穴がありえるのかというリスクについて具体的に知りたいと思うようになってきたので…

  • 戦争とデータ ―死者はいかに数値となったか

    五十嵐元道 中央公論社 2023.7.10読書日:2023.10.22 戦争中に死者の数を一つ一つ数えることは不可能で、とくにタグをつけている兵士たち以上に文民の犠牲者の数を数えるのは至難であるため、統計的に解析する方法が開発されて来た経緯を述べた本。 19世紀の後半になるまでは、そもそも兵士の死亡数をカウントすることすら行われていなかったそうだ。ところが、徴兵制で国民が徴兵されるようになると国民のひとりひとりの死について説明する責任が国家にあると考えられるようになり、さらに人道的な発想が浸透するにつれて、兵士以外の文民についても、できるだけ説明することが求められるようになってきた。 このよう…

  • スターメイカー

    オラフ・ステープルドン 訳・浜口稔 国書刊行会 1990.5.20初版 2004.1.30新装版読書日:2023.10.26 (ネタバレ注意) イギリスのヒースの丘に座っていた「わたし」は、霊体となって地球を飛び出すと宇宙を飛び回り、宇宙の端から別の宇宙すら覗き込み、テレパシーで時空を超えて他の知性体とコミュニケーションを取り、数々の人類が滅んでいく顛末を見て取り、宇宙の星々、さらには銀河が知性を持つ存在であることを知るが、宇宙が限りなく広がり死を迎えようとする中、どこかにスターメイカーという宇宙の創造主がいることを確信し、スターメイカーに迫ろうとするのだが……。 わしが読むものは、最近出版さ…

  • なぜ燃やすのか シバター伝

    シバター KADOKAWA 2022.5.26読書日:2023.10.23 YouTuberのシバターが、これまでの生い立ちと意外に堅実な人生観を披露する本。 なぜこんな本を読んだかと言うと、息子が格闘技ファンで、面白いから読んだほうがいいとわしに回してくれたからだ。というわけで、面白い本はみんなで回しあいましょう。 炎上系と言われがちなシバターであるが、自分から炎上させているわけではないという。炎上しているやつに絡んでいるだけなんだそうだ。炎上させているように見えても、それはかなり演出なんだそうだ。それも相手がちゃんと相手をしてくれるから成り立つ話で、たとえば朝倉未来はうまく相手をしてくれる…

  • 無料の読書三昧

    最近、世の中は無料、というか、おまけの読書にあふれています。ネット小説とかではなくて、ちゃんとした本です。(ちゃんとした本とは、編集や校正とか、普通の出版の手続きを踏んでいる本のこと)。 無料の読書といえば筆頭は図書館でしょう。 無料と言っても、住民税は払っているから遠慮することはありません。どんどん読みましょう。当然ながら、読みきれない量の本があります。人気の本は予約して待たなくてはいけないという縛りがありますが、何10冊も予約していると、次から次へと予約が届いて、ときには恐ろしいことになることもあります。 えっ、あなたは10冊しか予約できない、ですって? それは住んでいる地元の図書館しか使…

  • フキダシ論 マンガの声と身体

    細馬宏通 青土社 2023.6.20読書日:2023.10.19 マンガにおける声(内言を含む)を示すフキダシについてあれこれ考察した本。 マンガは日本人のほとんどが日常読んでいるもので、フキダシについて特に思うことはなかったのですが、こうしていろいろなパターンを見ていくと、マンガ家の皆さんは様々な工夫を重ねているんだなあ、と思う次第です。 ともかくマンガ家としては、読者に次のコマ、次のコマとどんどん進んでいってほしいので、次のコマに対する興味を引き立てるようにフキダシも配置するわけです。 たとえば、そのコマに描かれていない人の声のフキダシがあるとすると、読者はこれは誰が話しているんだろうと興…

  • 日本の死角

    現代ビジネス編 講談社現代新書 2023.5.20読書日:2023.10.17 講談社のウェブマガジン「現代ビジネス」に掲載された論考16本をまとめた本。 どれもウェブマガジンに掲載されたもので、短いものだ。深く考えるには足りないけれど、新しい視点を得られて、気になった部分は読者が掘り下げてくれればいいという発想だろう。 当然、発表された時期とは状況も変わっているものもあるので、今回の出版では論者により加筆されたものもある。その最もたるものは、藤田祥平という作家が書いた2017年の中国に関する論考だろう。(『日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのおっさんに言いたいこと』) 1991年生まれ…

  • アナロジア AIの次に来るもの

    ジョージ・ダイソン 監訳・服部桂 訳・橋本大也 早川書房 2023.5.20読書日:2023.10.7 ライプニッツの唱えたデジタルの世界が現在あふれているが、今後はアナログの世界が復権するという主張をする目論見に無理やり自分の体験を組み込んだ本。 デジタルからアナログへの回帰、と言われると、なるほどという気になります。デジタルと言うと白黒がはっきりした論理という感じがしますが、現在のAIはほぼほぼディープラーニングの世界で、そこは曖昧でなんとなくの世界だから、デジタルでアナログを実現していると言えるでしょう。ですから、この辺を議論するときっと面白いに違いない……というようなつもりでこの本を読…

  • ケトン食の名医が教える 糖質制限はしなくていい ―エビデンスにもとづいた科学的に正しい食事

    萩原佳祐 ダイヤモンド社 2023.2.28読書日:2023.10.15 痩せるために無理に糖質制限をすると筋肉が落ちてしまうので、適度に糖分を摂取しつつ、ケトン体質を目指すべきだと主張する本。 わしは血糖値が高かったため糖質制限の食事を行っているのだが、こんなわしでも糖質制限はしなくてもいいのだろうか。 もちろんそんな訳はないのである。糖質制限をしなくてもいいのは、いま普通に健康で、ダイエットのために糖質制限をしようとしている人の話だ。血糖値が高い人は糖質制限をしてもいい、というか、しなくてはいけない。 わしもご飯やパンを食べていないだけで、糖質を摂っていないわけではない。主食以外に含まれて…

  • 影の王

    マアザ・メンギステ 訳・粟飯原綾子 早川書房 2023.2.25読書日:2023.10.14 (ネタバレあり。注意) 1935〜41年、イタリアがエチオピアに侵攻したとき、祖国防衛に立ち上がった女性兵士たちの物語。 内容はフィクションだが、女性兵士がいたことは事実らしい。小説を書き上げたあとに分かったことだが、著者マアザ・メンギステの曾祖母もこの戦争に兵士として参加していたのだそうだ。家族の男兄弟が小さかったからという、まるで「ムーラン」みたいな話だけど。 主人公はヒルトという少女で、貴族のキダネの使用人になる。キダネは祖国防衛の軍隊を組織するなど、地域の大物だ。ヒルトは父親の形見の銃を持って…

  • 資本主義に出口はあるか

    新谷大輔 講談社現代新書 2019.9.1読書日:2023.10.11 近代の歴史を、ロック的なもの(自由)とルソー的なもの(平等)で読み解けば理解ができ、どちらにもとらわれない資本主義の次の時代も見えてくると主張する本。 本の中でも述べられているが、この2つは同じ言葉を使っているので、区別が難しいのである。ルソー的なものの政治的立場は「リベラル」と呼ばれている。リベラル、とは自由という意味である。しかしこのときの自由とは、不平等で虐げられている人を不平等から開放する(引き上げる)という意味で使っているので、基本理念は平等なのである。 いっぽうロック的なものは、本当の好き勝手にやっていいという…

  • 熱烈中華食堂 日高屋 ラーメンが教えてくれた人生

    神田正 開発社 2009.9.28読書日:2023.10.9 日高屋を創業した神田正が自分の人生を振り返る本。 わしは日高屋が好きで、愛用している。わしが住んでいるところはラーメンの激戦区であるが(さいきん、激戦区でないところってあるのかしら?)、ラーメンは日高食堂の中華そば(390円、税込み)が一番おいしいんじゃないかと思ってる。もちろんハイデイ日高の株主になって株主優待も使っている。日高屋によれば、おいしいというよりも、飽きない味を目指しているんだそうだ。確かにそんな印象。もっともわしが一番食べているのは、野菜たっぷりタンメンなんですが。 神田正については、これまでもカンブリア宮殿などで知…

  • 習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか

    ラッセル・A・ポルドラック 監訳・神谷之康 訳・児島修 みすず書房 2023.2.10読書日:2023.10.4 習慣が根付く原理というものが分かってきたが、習慣は恐ろしく固着的で、一度身につくとそれを変えるのは困難で、とくに依存症の場合は難しくなるが、一方では将来的にそれを変えるような技術も見つかっているという、習慣に関する最近の研究成果をかなり網羅的に示した本。 この本のことは知らなかったが、知り合いが勧めてくれたので読んでみることにした。依存症に興味のあるわしには、まさにピッタリの本だった。脳関係の医者に聞いたら、著者のことを知っていたから、脳関係ではそれなりに有名な人らしい。 この本を…

  • シンプルで合理的な人生設計

    橘玲 ダイヤモンド社 2023.3.7読書日:2023.9.28 金融資本(資産)、人的資本(収入)、社会資本(評判、人間関係)の3つの資本を備えた人が幸福だと定義する橘玲が、人生設計を指南する本。 橘玲はこの手の本を20年ぐらい前から数年おきに出していて、感心するのはそのたびに内容がバージョンアップされていることだ。逆に言うと、ずっと変わらない部分については、より普遍的ということになるのかも知れない。 幸福かどうかは主観的なはずなのだが、橘玲は、上記の3つの資本を備えていれば幸福なのだ、と定義してしまう。なかでも、お金があるかどうかでずいぶん違ってくるので、金融資産を作ることに重きを置いてい…

  • ぼくはあと何回、満月を見るだろう

    坂本龍一 新潮社 2023.6.20読書日:2023.9.27 2023年3月に亡くなった坂本龍一が、2009年の「音楽は自由だ」以降について語った回想録。 音楽家と思えないような端正な文章で、インタビューだから編集者の腕もあるんだろうけど、坂本龍一の話す言葉もきっと同じくらいに端正なんだろうなあ、と思う。いろんな本を読んでいるのが明らかで、文章を書く人になっても成功したんじゃないかって思わせるところがある。しかし本人はやっぱり音楽家で、ガンの治療でまいっているときでも、音楽に触れるときは、その辛さを忘れたんだそうだ。 坂本龍一がどんな本を読んできたかについては、別の本があるらしい。その傾向を…

  • 誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版

    押井守 構成・渡辺麻紀 東京ニュース通信社 2021.818読書日:2023.9.24 押井守がジブリについて語った2017年版に、押井守作品のプロデューサーをやっているプロダクション・IG社長の石川と、ジブリの鈴木敏夫の懐刀と呼ばれた高橋望との鼎談、それに鈴木敏夫との往復書簡を加えたもの。 たぶん、わしは2017年度版を読んだことがあると思う。しかし、押井守は同じような話をあちこちでしているので、読んだ気になっているだけなのかも知れない。ともかく、読んでいて既視感がありありだった。 まあ、ジブリの評価を一言でいえば、・宮崎駿 ナチュラル・ボーン・アニメーターで、監督の才能はない。ディテールの…

  • プロジェクト・ヘイル・メアリー

    アンディ・ウィアー 訳・小野田和子 早川書房 2021.12.20読書日:2023.9.22 (ネタバレあり。注意) 自分の名前すら忘れた記憶喪失状態で目覚めたぼくは、自分が宇宙船の中にいて、どうやら別の星系にいるらしいことに気がつく。どうやら人類の危機を救うためにここに来たらしいが、仲間は冬眠中に死亡していて、状況がわからない。徐々に記憶は戻りつつあるが、果たしてこんな状態で、人類を救えるのか……。 デビュー作の「火星の人」は読んでいないが、映画の「オデッセイ」は見たことがある。という状況で本作を読んだわけだが、本作の印象は、なんというか、古き良きSFという感じ。どのくらい古いのかと言うと、…

  • ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く

    ナオミ・クライン 訳・幾島幸子・村上由見子 岩波書店 2011.9.8読書日:2023.9.17 ミルトン・フリードマンの唱える新自由主義は自由のみに価値を置く過激な経済思想だが、過激すぎるゆえに民主主義の世界では受け入れ不可能で、最初は独裁国家のみで実現されていたが、そのうち災害などで社会がショック状態にあるときにすばやく導入するという戦術で民主主義国家でも導入されるようになり、ソ連が崩壊したあとは東ヨーロッパに、アジア通貨危機が発生するとアジアに新自由主義を導入することに成功してグローバル化を達成し、さらにはアメリカでは新自由主義の考えに沿ってイラク戦争すら引き起こし、このため全世界で貧困…

  • 植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間

    稲垣栄洋 SBクリエイティブ 2023.7.15読書日:2023.9.7 植物学を教える大学教授のところに植物をめぐる質問メールが一週間にわたって届くが、いずれもすぐに答えるのが難しい問題で、教授がいろいろ考えを巡らせる本。 この本の最初の質問は植物と動物の違いについてである。これは非常に難しい質問で、結局のところ、大昔に誕生した最初のひとつの生命が植物と動物に別れたので、植物と動物の間には明確な区別がなく、微妙なグラデーションが存在しているからだ。わしは知らなかったが、植物の中には移動するものがあるのだという(ソクラテア・エクソリザ)。もちろん非常にゆっくりとだが。 というわけで、植物につい…

  • 台湾漫遊鉄道のふたり

    楊双子 訳・三浦優子 中央公論新社 2023.4.25読書日:2023.9.6 (ネタバレあり。注意) 太平洋戦争前に植民地だった台湾を訪れて、気兼ねのない鉄道と食事の旅を望む女流作家の青山千鶴子は通訳として似た名前の王千鶴に出会うと、王千鶴は通訳の枠を越えて千鶴子の世話をし、二人はお互いに惹かれ合うが、親友になりたいと願う千鶴子の思いに反して千鶴は心を開かない。そこには千鶴子には思いが及ばない、植民地を支配する側と支配される側の越えられない壁があったのだった。 本作は「美食x鉄道x百合」小説なんだそうだ。いったいいくつ掛け合わさっているんだという感じだが(笑)、キワモノではない。きちんと時代…

  • 安倍晋三回顧録

    安倍晋三 聞き手:橋本五郎 聞き手・構成:尾山宏 監修:北村滋 中央公論社 2023.2.10読書日:2023.9.2 2022.9.27にテロにより亡くなった、安倍晋三さんが、後世のために残してくれた回顧録。 なんというか、安倍晋三さんって、本当に戦略的に考えて行動する人だなあと思う。使命感に溢れた人だから、首相を終えてから回顧録を残すことが自分の使命と感じて、こうして残してくれたのだろう。なんて素晴らしい人なんでしょう。 ほとんどのことはもう知っていることばかりだったが、第1次安倍内閣と第2次の間に何をしていたのか、よく知らなかったので興味深かった。安倍さんは、市井の人々に会っていたのだ。…

  • 街とその不確かな壁

    村上春樹 新潮社 2023.4.10読書日:2023.8.30 17歳のときに当時の恋人から幻想の街の存在を教えられた私は、大人になってその街で訪ね図書館で<夢読み>となるが、一方、街に入るときに引き離された私の影は現実の世界に戻り、自分が影だったことも忘れて私として生き、やがて田舎に移住して図書館の館長として働くようになる……。 いつもどおり現実と幻想が切れ目なくつながった春樹流マジックリアリズムの世界が描かれていて、まあ、確かにいろんなメタファーなんかが絡んでくるんでしょうけど、そんな物語やメタファーの意味なんて考えても仕方がなくて、ただただ村上春樹の世界、とくに独特の文体を楽しむだけでい…

  • 鋼鉄紅女

    シーラン・ジェイジャオ 訳・中原尚哉 早川書房 2023.5.25読書日:2023.8.25 (ネタバレあり。注意) 謎の異星人、渾沌(フンドゥン)からの攻撃を受けてから2000年後、地球人の国、華夏(ホワシア)は渾沌の亡骸を材料に戦闘機械・霊蛹機(れいようき)を作り、渾沌に奪われた土地の奪還を目指している。霊蛹機は人型に変形できる巨大ロボットで、男女がペアになって気で操縦するが、妾女(しょうじょ)と呼ばれる女性の方は戦闘のたびに死に、使い捨ての存在だ。姉を霊蛹機パイロットに殺された武則天(ウー・ゾーティエン)は復讐のために妾女に志願するが……。 いやー、なんと言いましょうか、中華テイストのS…

  • 奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

    三崎律日 KADOKAWA 2019.8.23読書日:2023.8.23 ニコニコ動画で配信した「世界の奇書をゆっくり解説」をまとめた、世界の奇書に関する本。 副題の通り、歴史を動かした本から、これも奇書?というような本も含まれている。たとえばコペルニクスの「天体の回転について」とか。ジュール・ベルヌの「月世界旅行」も後世に与えた影響がむちゃくちゃ大きかったということで紹介されている。これらって奇書なのかしら。有名なフェイク文献群である「椿井文書」も含まれている。 まあ、こういうのもあるけど、個人的にすごく気に入ったのは、ヘンリー・ダガーが書いた1万5000ページの小説「非現実の王国で」だなあ…

  • 名著の予知能力

    秋満吉彦 幻冬舎新書 2023.5.30読書日:2023.8.21 NHK Eテレの「100分de名著」のプロデューサーが、名著には現代に通じる視点があり、生きていくための参考になると主張するとともに、企画を進めていくためのコツのあれこれを述べた本。 「100分de名著」は毎週見ているので、読んでみようかと思ったのです。名著に予知能力があるというのは別に異論はありませんし、そもそもそういう本でないとこの番組で取り上げる意味はないでしょう。番組ではわしが聞いたことがないような本が出てくることがあり、番組で取り上げられたので読んでみようと思った本もけっこうあります。この番組で取り上げられるとたちま…

  • 官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則

    デヴィッド・グレーバー 訳・酒井隆史 以文社 2017.12.10読書日:2023.8.17 たとえ規制緩和してもますます規制が増え、官僚が増える結果になるという「リベラリズムの鉄則」があり、いまや全面的官僚化の世界になってしまったが、このような官僚制を議論するときに、忘れられがちないくつかの論点があるとし、1つは制度に潜む国家の暴力であり、1つは官僚制がテクノロジーに与える負の影響であり、1つには我々が実は規則(ルール)を好むことがある、と主張する本。 惜しくも2020年に亡くなってしまったデヴィッド・グレーバーだが、アナーキストの文化人類学者というユニークなバックボーンを持っているので、な…

  • 逆張りの発想は不安の頂点に出現する

    なぜか世の中では、不安の頂点で、逆の発想の話が出てくることがよくある。最近、へーと思ったのは次のような話。 (1)気候変動は制御可能な領域になってきたという話 日本を含め世界各地で、際限のない山火事、超大型の台風やハリケーン、過去に経験のない洪水や渇水のニュースがあふれています。もう気候変動は現実の話で、しかもこれからもっと悪くなると誰もが思っているこんな時代に、「想定したよりも人類はうまく対処できている」とする本が今後次々と出版されるというのです。 えーっ、そうなの? この話はニューズウィーク日本版に出ていた話で、なんでも再生可能エネルギーへの転換や、EVへの転換がかつて想定されていたよりも…

  • ルワンダでタイ料理屋をひらく

    唐渡千紗 株式会社左右社 2021.3.28読書日:2023.8.9 自分には何の取り柄もないと思っていたシングルマザーがルワンダでタイ料理屋を開くことに決めて、悪戦苦闘する本。 「自転車に乗れるようになったら乗ろう、ではいつまでたっても自転車に乗れない」ということを信条にしている唐渡さんなので、何事も、えいや、と決めてしまうらしい。会社の先輩のマリコさんが暮らしているルワンダを訪ねていいなと思い、タイ料理がいいと思う、というマリコさんの言葉であっさりタイ料理屋「アジアンキッチン」を開くことを決めてしまう。このとき、唐渡さんには外食の経験もなければ、タイ料理の作り方も知らなかったというのだから…

  • 禁城 死の沈黙の武漢で、本当に起きたこと

    ムロン・シュエツン 編・クライブ・ハミルトン 訳・森孝夫 飛鳥新社 2023.3.31読書日:2023.8.7 世界で最初にコロナのロックダウンを経験した武漢市民の体験談。 コロナでは世界中がロックダウンしたのだから、武漢の市民が体験した医療体制が崩壊し、マスクや食料がなくなるといった光景にも、自分の体験として既視感がある。しかし世界で初めてコロナウイルスの惨禍にまみれ、何の予備知識もないままにロックダウンに突入した武漢の人たちの気持ちはどうだったのだろう。 しかも、ここにコロナウイルスを軽視し、それを隠蔽しようとさえした絶対権力である中国共産党の物語が絡んでくる。 ほとんどの人たちは、パンデ…

  • 押井守の人生のツボ 2.0

    押井守 構成・文/渡辺麻紀 株式会社東京ニュース通信社 2023.3.31読書日:2023.8.4 映画監督の押井守が、どうせ他人事だから、という立場で他人の人生相談にのる本。 まあ、いつものように、渡辺麻紀と押井守がだべっているだけの本なのですが(笑)。 お二人によれば、映画を浴びるように観てきたひとは、人生相談なんかしないそうです。映画自体が人生の予習のようなものだから、だそうです。押井さんは、社会のすべてのことを映画で学んできたのだそう。 それもハリウッド映画がいいんだそうだ。なぜなら、ハリウッド映画はアメリカという移民国家を統合するという使命を背負っていて、価値観(イデオロギー)を表明…

  • 天路の旅人

    沢木耕太郎 新潮社 2022.10.25読書日:2023.8.3 第2次世界大戦末期に密偵として内モンゴルに潜入し、そのまま戦争が終わってもチベットやインドを放浪し、帰国後は「秘境西域八年の潜行」という本を出版した以外は、死ぬまで岩手県で美容関係の卸の仕事を坦々と続けた西川一三の、自身も「深夜特急」で西域を放浪した経験のある沢木耕太郎による評伝。 この本のほとんどの内容は「秘境西域八年の潜行」の内容とかぶる。そういうわけで、もしそれだけなら、改めてこの本を書く必要はなかったはずである。もちろん、あとから出版するものの使命として、オリジナルの原稿から削除された部分を復元するとか、間違いを訂正する…

  • 非正規公務員のリアル 欺瞞の会計年度任用職員制度

    上林陽治 日本評論社 2021.2.25読書日:2023.7.26 民間以上に悲惨な雇用実体である非正規公務員のリアルな状況を報告した本。 そもそも非正規公務員は民間の法律が適用されず、その結果、民間以上に悲惨な状況だと聞いていたが、この本を読む限り、想像していた以上にひどい。これはほとんど人権侵害のレベルではないか、という気すらする。 いまや公務員の3人に1人は非正規なんだそうだ。すでに非正規は、彼らがいないと業務が止まってしまう基幹的な存在である。しかし、その年収は正規職員の3分の1しかない。そして何年働いても給料は上がらない。継続的に働いていないことにするために、364日で解雇して、1日…

  • 中国の嫌がらせと岸田政権

    福島原子力発電所の処理水の放出に対して中国が反発し、水産物を全面的に禁輸した。それに加えて中国から日本の原子力と関係のない施設に対して、6000件以上の嫌がらせ電話が届くようになった。 これに対して、わしが思ったことをここに記しておこうと思う。 まず中国側だが、多くの識者が述べているように、これは国内の不満を外に向けるためなのは明らかだろう。経済の成長率は鈍化し、若者の失業率は実質40%に達するのではないかと推定されている状況だ。福島原発の処理水放出が起きたことを奇貨として、国内の不満を外に向けるよう誘導しているのだろう。 こうして日本に対する嫌がらせ電話事件が起きた。 このニュースを見ながら…

  • 酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代 ある東大生の輝き

    藤原章生 山と渓谷社 2023.3.10読書日:2023.7.23 1984年にヒマラヤK7の初登頂を成し遂げた東大スキー山岳部遠征隊の隊長で周囲に強い印象を残し、K7後は登山から引退するも、最後は酒に飲まれて46歳で亡くなった、永田東一郎の評伝。 著者が永田に出会ったのは、都立上野高校の2年のときだったそうだ。その時、永田は上野高校の登山部のOBで、すでに高校を卒業していたが、しょっちゅう顔を出していたという。永田は上下関係にはまったくむとんちゃくな人で、上に対しても下に対しても言葉遣いも態度もまったく変わらない人だったそうで、つまり、上からは疎まれて、下からは慕われるタイプだったらしい。 …

  • 超加速経済アフリカ LEAPFRPGで変わるビジネス地図

    椿進 東洋経済新報社 2021.6.10読書日:2023.7.21 爆速的に成長しているアフリカのリアルを紹介し、日本人にアフリカでのビジネスを勧める本。 近年、最も売れたアフリカの本なんだそうだ。著者はルワンダでナッツビジネスをしていて、アフリカのリアルに詳しい。そして日本の昔からのアフリカに対する思い込みは今では正しくないとして、アフリカに進出するように勧めている。 思い込みのひとつは地理で、アフリカはなんとなくそんなに大きくないように思い込んでいるが、それはメルカトル図法による錯覚で、とんでもなく大きいのだという。実際には縦8000Km、横7400Kmでアメリカと中国とインドとヨーロッパ…

  • #真相をお話します

    結城真一郎 新潮社 2022.6.30読書日:2022.6.30 真実が分かると、状況がすべて反転し、細かく配置された伏線も回収される、楽しめるミステリー短編集。 ミステリーがちっとも面白くないたちなので、ほとんど読まないが、なぜかこれは図書館で予約してしまった。1年以上前の本だがいまだに予約がたくさんついているから、ミステリーがいかに人気なのかが分かる。 というわけで読ませていただいたけど、基本的には前半では日常的な話が続くけれど、どうもおかしいということになって、最後にはすべてが明らかになって実はという話になり、前半で述べたことに別の意味があったという落ち。出だしの話の持って行き方の滑らか…

  • アメリカは内戦に向かうのか

    バーバラ・F・ウォルター 東洋経済新報社 2023.4.6読書日:2023.7.15 独裁政治と民主主義の間には中間のアノクラシーという状態があり、アノクラシーの状態が一番危険で内戦に陥る可能性が高く、アメリカはいまアノクラシーに入ってしまった状態だと主張する本。 内戦という状態は従来はなかなか起きるものではなかったが、20世紀末から21世紀にかけては激増しているという。そういう事もあって、世界中で内戦に関する研究が進んで、どんな国で起きやすく、どんなふうに発生するのかという知見が増えてきた。その結果、国の状態を客観的に評価できるようになり、どの国に内戦が起きそうかということも予見できるように…

  • キツネとわたし ふしぎな友情

    キャサリン・レイヴン 訳・梅田智世 早川書房 2023.4.25読書日:2023.7.13 (ネタバレ注意) 親から虐待を受けて15歳から一人で暮らしてきた著者が、モンタナ州の丘にコテージを建てて暮らし始め、そこに訪れる<キツネ>と友だちになる話。 著者のレイヴンは本当に両親の愛のない家で育ったという。親族でわずかに彼女に愛を注いでくれたのは祖父だけだったらしい。親から虐待も受けたらしい。もともと子供は欲しくなかった、と言われて続けて育ったのだ。それで15歳のときに家を抜け出した。驚いたことに彼女はその後、大学へ行ったのだ。15歳で大学って、どういうこと? 彼女にとって幸いなことに、彼女はとて…

  • わしが経験したヒステリー 「眠り続ける少女たち」を読んで思い出したこと

    「眠り続ける少女たち」には、実際には健康なのに、自分の体の不調はこの病に違いないと主張して、どんどんその症状が起きてしまうという現象が紹介されている。 これって誰にでも経験あるのではないだろうか。恥ずかしながら、わしも経験があるので、そのときのことをここに記そうと思う。 わしはコンタクトレンズを付けていた頃があって、あるときコンタクトをしたまま寝てしまった。起きたとき、片方のコンタクトが無くなっていた。探したが、見つからない。嫌な予感がした。もしかしたら、目の奥に入ってしまったのではないだろうか。 わしはネットで見た、目の奥から何個もコンタクトレンズが出てきたというおどろおどろしい写真を思い出…

  • 眠り続ける少女たち 脳精神科医は<謎の病>を調査する旅に出た

    スザンヌ・オサリバン 訳・高橋洋 紀伊國屋書店 2023.5.10読書日:2023.7.8 心と身体は繋がっており、心により身体はヒステリー状態を起こして、身体はどこも悪くないのに、特殊な病気になってしまうことを示した本。 マトリックスという映画では、仮想空間で受けた傷はそのまま実際の身体にも表れる。だから仮想空間で殺されると、本当に命を落としてしまう。つまり「心と身体は繋がっている」のだという。こんな映画マトリックスのような出来事が世界中で実際に起きているのだと、著者のオサリバンは主張するのだ。 最初に出てくるのが、スウェーデンの少女たちに起きる眠り病だ。どんなに検査を行っても身体に異常は認…

  • 依存症と人類 われわれはアルコール・薬物と共存できるのか

    カール・エリック・フィッシャー 監修・松本俊彦 訳・小田嶋由美子 みすず書房 2023.4.10読書日:2023.7.6 本人のアルコール依存症との戦いを交えて、アメリカの依存症対策の歴史を述べた本。 なんかアメリカの政策って極端すぎる気がする。アルコールについては異常に厳しかったりする一方、化学的に作られた新しい薬物に対しては案外寛容だったりする。そして依存症になってしまった人にたいしては、本人の意志の強さの問題として放置するか、逆に厳しく取り締まる傾向が強い。病気というよりも道徳の問題として取り扱おうとする。この結果、麻薬依存症のひとを犯罪者として取り締まる傾向のほうが強い。他国でやってい…

  • 人間がいなくなった後の自然

    カル・フリン 訳・木高恵子 草思社 2023.5.4読書日:2023.7.2 いろいろな理由で人がいなくなった廃墟を訪ねて、自然が回復していく様子を記した本。 子供の頃、空き地があると、そこに植物がどんどん育っていくのをよく観察してしていた。最初はもちろん雑草だらけだけれど、空き地の中には何年もそのまま放って置かれている所もあり、そうすると空き地には木まで生えてきて、けっこう大きく育つこともあった。 わしは植物や動物の名前を覚えることに興味がないので、どういう植物や動物がそこにいたのかここでいうことはできないが、この本の著者のカル・フリンはたくさんの固有名詞をあげていて、それだけでも大変なこと…

  • DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

    ビル・パーキンス 訳・児島修 ダイヤモンド社 2020.9.29読書日:2023.6.28 人生でいちばん大切なのは経験であり、死ぬときにたくさんの思い出があることが重要で、すべてのお金はこうした経験に変えた方が良いと主張する本。 最初に著者のビルが働き始めた20代の頃の経験が出てくる。まだ安い給料で働いていた頃、ルームシェアをしていたジェイソンがある時、休暇を取ってヨーロッパへ行く決心をする。お金はなかったので、1万ドルの借金までした。著者には信じられないことだった。もし旅行をするのなら、お金を貯めてから行くべきだと思ったからだ。 しかし、旅行から帰ってきたジェイソンの話を聞いて羨ましくなる…

  • 母親になって後悔している

    オルナ・ドーナト 訳・鹿田昌美 新潮社 2022.3.25読書日:2023.6.26 自分は母親になるべきではなかったし、別の人生を与えられたら子供は産みたくないと考えており、母親になったことを後悔している女性がいることを述べた本。 わしは母親になったことを後悔している女性がいても不思議とは思わないが、世間的にはそのことを公言しづらいことは理解できる。なにより母親は、父親と違って、自分が産めば確実に実の子なのだ。血がつながった実の子に対してそのような感情を持つということは理解されづらいだろう。 少々ややこしいが、このような後悔をしている女性が、子供を愛していないというわけではないのである。大部…

  • 捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来

    ジム・ロジャーズ 監修・翻訳 花輪陽子 SBクリエイティブ 2023.2.15読書日:2023.6.21 冒険投資家のジム・ロジャーズが、日本はこのままでは世界から捨てられるとし、日本人は国を当てにしないで生きていかなくてはいけないと主張する本。 ジム・ロジャーズはポジショントークばかりする人のような気がしていたが、今回はあまりそんな話は少なかった。日本が好きだと公言しているから、本気で日本のことを心配しているのかもしれない。 ジム・ロジャーズがあげる日本の今後のリスクは、よく知られているものだ。国の借金、少子高齢化、デジタル化の遅れ、技術革新の停滞、食料危機、米中激突などの地政学的リスクなど…

  • 叛逆航路

    アン・レッキー 訳・赤尾秀子 東京創元社 2015.11.20読書日:2023.6.21 (ネタバレ注意) 星間国家ラドチの戦艦<トーレンの正義>は艦にも属躰(アンシラリー)と呼ばれる人間の死体を利用した兵士にも同時に存在するAIであったが、好意を寄せる副官オーンをラドチの独裁者アナーンダ・ミアナーイの命令により殺さざるを得なくなり、さらに自らもアナーンダに破壊され、生き残ったのはアンシラリーの1体のみとなってしまう。1体だけ生き残った<トーレンの正義>のアンシラリーはブレグと名のり、アナーンダ・ミアナーイへの復讐を誓う。 この作品、とても評判がいいので、読まなくてはと思っていたが、ずっと後回…

  • 千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話

    済東鉄腸 左右社 2023.2.10読書日:2023.6.18 大学を卒業したものの就職しないまま引きこもりになり、膨大な映画を見て英語をマスターして未公開映画を中心に紹介するオンラインメディアを運営し、ルーマニア映画にハマってからはルーマニア語の勉強を始め、ついにはルーマニア語で書いた小説がルーマニアの雑誌に掲載されるようになった体験を書いた本。 引きこもっているくせに、やたらアクティブな人がいるが、済東鉄腸さんはまったくもってそんな人。 大学のときに失恋したことがトリガーになって、心が折れてしまって引きこもってしまったのだという。就職活動はもちろんできなかった。2015年のことである。 そ…

  • AI 2041 人工知能が変える20年後の未来

    カイフー・リー(李開復)、チェン・チウファン(陳楸帆)、訳・中原尚哉 文藝春秋 2022.12.20読書日:2023.6.21 グーグルでAI研究をしていたカイフー・リーが2041年のAIが世の中に広がった世界を、実際に起こり得る10の未来を予想・解説し、それに基づいて元グーグルの同僚のSFサ作家チュン・チウファンがSF短編を10編書いた本。 カイフー・リーの20年後の世界の予想は、それほど衝撃的ではなく、かなり現実的。人間を超えるような知能が出現する、シンギュラリティが起こることについては否定的だ。 わしも21世紀に入ってすぐにシンギュラリティについて知ったころは、もしかして本当にあり得るん…

  • 静かな人の戦略書 騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法

    ジル・チャン 訳・神崎朗子 ダイヤモンド社 2022.7.12読書日:2023.6.8 内向的な人には内向的な人なりの戦略があり、内向的な人でもリーダーシップを発揮することは可能だし、内向的な人こそ力を発揮する局面も多いと主張する本。 わしは自分が内向的なのかどうかよく分からない。内向的というのはどういう人なんだろうか。 ジル・チャンのあげる例をみると、知らない人と一緒にいると疲れてしまい、何か話してと言われると頭が真っ白になってしまい、マンションにずっと暮らしているのにマンション内で知り合いは1人か2人でしかもちょっと駐車場で話したくらいだという。 まあ、全部だいたい自分に当てはまるんだけど…

  • 語学の天才まで1億光年

    高野秀行 集英社インターナショナル 2022.9.10読書日:2023.6.7 辺境冒険家の高野秀行が、これまで巡ってきた語学遍歴を披露して、人間の言語はどれも同じだと達観するに至った経緯を書いた本。 この本は図書館に驚くほどたくさんの予約が入っていた。高野秀行の本でこんなに予約が入っているのを初めて見た気がする。日本人の語学に対するコンプレックスがいかに強いかがわかる気がする。 高野さんによれば、日本語は日本語族といって、世界からまったく孤立した言語なんだそうだ。そうだっけ? わしが学校で習ったのは、日本語はアルタイ語族に属していると思ったが。調べてみると、日本語がアルタイ語族というのはまだ…

  • 寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ

    こかじさら WAVE出版 2022.11.19読書日:2023.6.2 千葉に帰って90歳代の老父母と老叔父叔母の面倒を見ることになったライターの日々の嘆きを書いた本。 90代でも、みなさん、かなり元気なんですね。もちろん人間としては劣化が著しいのですが、とりあえず90歳までなんとか自活できていたというのは、なかなかよくやっていたのではないかという気がします。 著者の言うには、崩壊していく過程では、本人がこれまで歩んできた人生が如実に表れるんだそうです。 著者の老母は、自分の人生を自分で仕切ってきた人なんですね。なので、何もできなくなっても、自分で仕切ろうとする。そして、私がいないと何もできな…

  • 生殖細胞の遺伝子編集の倫理について考える コードブレーカーを読んで考えたこと

    コードブレーカーでは、中国の賀建奎(フー・ジェンクイ)がクリスパー・キャス9の技術を使って受精卵のゲノムを編集して、双子の赤ちゃんを誕生させた事件が登場する。 このときの遺伝子操作の名目は、この赤ちゃんのHIVウイルスへの感染を予防する、ということだった。実際にはゲノム編集をしなくても目的は達成できるので(受精卵を選ぶときに、その不利となる遺伝子を含まない受精卵を選択できるから)、たちまちスキャンダルになり、倫理的な手続きをきちんと取らなかった賀建奎は後に有罪判決を受ける。 しかし、この事件は、受精卵に対するゲノム編集の倫理問題を世界に突きつけることになった。コードブレーカーの主人公のダウドナ…

  • コードブレーカー 生命科学革命と人類の未来

    ウォルター・アイザックソン 訳・西村美佐子・野中香方子 文藝春秋 2022.11.10読書日:2023.6.1 遺伝子を任意の場所で切断するクリスパ−・キャス9の発見で2020年のノーベル化学賞を受賞した女性科学者ジェニファー・ダウドナを主人公に、遺伝子編集の最前線とその影響を描いた本。 アイザックソンはたぶんクリスパ−・キャス9に衝撃を受けて取材を開始したのだと思うが、その後次々といろいろな事件が起きて、扱う材料には事欠かないという状況になった。 2018年にはこの技術を使って受精卵を編集するという倫理上の大問題となる事件が中国で起き、さらにコロナ・パンデミックが発生し生命科学者が対応に駆り…

  • シン・養生論

    五木寛之 幻冬舎新書 2023.3.30読書日:2023.5.19 90歳になった五木寛之が、本当の養生とは自分が実践している養生と、世間の空気と体調の関係、はたまたいま日本で作られつつある新しい老人像について述べた本。 この本を読んで、うーんと唸ってしまった。90歳でこの本を書くとは。超人でしょうか? 五木さんは子供の頃から身体が弱かったそうで、自分の身体を使っていろいろ工夫して実験をするのが習慣になっているそうだ。老眼になったら目を訓練してみる。暇があると近くを見たり遠くを見たりすることを繰り返すような訓練をしてみたところ、新聞を老眼鏡なしでも見れるようになったそうだ。これはすごい。耳も、…

  • SF超入門 「これから何が起きるのか」を知るための教養

    冬木糸一 ダイヤモンド社 2023.2.28読書日:2023.5.25 はてなブログの「基本読書」でSF書評専門の冬木糸一が、SFは未来予測のための良質なツールであり、SF初心者のために56の書籍を分野別に紹介した本。 冬木さんの「基本読書」を読むときっと読みたい本がいろいろ見つかるだろう。有用だ。残念ながら、わしのブログではそのような効用は極めて小さい。このブログはただ読んだ本に対するわしの考えを垂れ流すために存在している。他の人の役に立とうという発想は皆無である。(どうもすみません)。 しかしわしが本を読む理由として、未来を知りたいということが強い動機になっているから、この本の趣旨はよく分…

  • 絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか 空間の絵本学

    矢野智司、佐々木美砂 勁草書房 2023.2.20読書日:2023.5.23 絵本では動物などの新しいキャラクターが次々に出てきて、登場した動物たちはいろいろな空間的な配置で積み上がり、その積み上がった構造が崩壊するときにカタルシスが発生しているのだと主張し、絵本の空間的な構造の持つ意味を研究した本。 絵本の場合、ページをめくるごとに新しい展開が想定されており、よくある展開としては新しい動物なんかが出てくる。なぜ動物が出てきがちなのかというと、動物にはいろんな大きさのものがいるので、極端に大きなものと小さなものを対比させて登場させることができるからだそうだ。特に、ゾウとネズミが一緒に出てくるこ…

  • 真の「安定」を手に入れる シン・サラリーマン 名著300冊から導き出した人生100年時代の攻略法

    サラタメ ダイヤモンド社 2021.12.7読書日:2023.5.21 人生100年時代を生き抜くには、ホワイトな企業でできるサラリーマンとして生活の安定を確保しながら、会社に頼らないための副業も行い、マネーリテラシーもしっかり身につけることが重要と主張する本。 いやー、似たような内容を伝える本は多いけれど、本当にこれは決定版かも。なによりそんなに才能のない普通のサラリーマンにも無理なく実行できる内容になっており、たとえば副業にしても、始めるしきい値は相当低く感じる。この本は少なくとも今後5年間は有効だろうし、もしかしたら10年後にも古びてないかもしれない。ベストセラーになるはずである。 なに…

  • なぜ男性の同性愛は絶滅しないのか 「男同士の絆」を読んで思ったこと

    「男同士の絆」を読んで、わしが不思議に思ったのは、イギリスやアメリカでものすごくホモフォビアが強いことだった。わしはとくに同性愛に嫌悪感がないので、余計にそう思う。 なぜ同性愛に嫌悪感がないかって? かつてわしの周りには結構ゲイの人達がいたのだ。 新宿2丁目のとあるバーに1ヶ月に1度くらいミュージカル系ライブの集まりがあり、そこのマスターがもろゲイだった。そして、彼はわしが行くと、なぜか一杯奢ってくれるのだった。他の人にはそんなことしなかったので、わしは彼に気に入られていたのかもしれない。(笑) そんな状況だったし、日本にはお稚児さん文化もあるし、なんとなく個人的には日本は結構ゲイにゆるい国な…

  • 男同士の絆 イギリス文学とホモソーシャルな欲望

    イヴ・K・セジウィック 訳・上原早苗、亀沢美由紀 名古屋大学出版会 2001.2.20読書日:2023.5.19 ジェンダーを理解するには男同士のホモソーシャルな世界を理解する必要があるとし、イギリス文学を読み解くことでその構造を解明しようと試みた本。 この本は原著が1985年で、フェミニズムの基本文献にあげられているらしい。男のホモソーシャルな世界の構造を解明できたのなら、わしも興味があるので、読んでみようと思った。しかし、どうもよくわからないのである。 セジウィックが確認したというのは次のようなことだけに見える。 (1)男は男同士でホモソーシャルな世界を作り、その中でお互いの地位や愛をめぐ…

  • 意味の変容

    森敦 ちくま文庫 1991.3.26(オリジナルは1984年)読書日:2023.5.5 数学的なパラドックスの表現と自分の人生を重ね合わせて、パラドックス(矛盾)を含んでこそ世界全体を表現することができる、と文学的に表現したらしい本。 知り合いでときどき本を貸し借りする人が、よく分からない本を図書館から借りてしまった、と言うので、わしも読んでみたのがこれ。解説をいれても文庫本で160ページという、薄い本だ。 二人が出てきてほとんどそのダイアローグでできているんだけど、主に語っている方は、最初は光学部品の会社にいて、次はダムを作る会社にいて、最後は印刷会社にいるんだけど、この流れは森敦さんの仕事…

  • 巨神のツール 俺の生存戦略 富編

    ティム・フェリス 訳・川島睦保 東洋経済新報社 2022.10.20読書日:2023.5.13 巨神のツール、知性編、健康編についで第1巻目の富編。3分冊されて発行されたこのシリーズを逆の順番で読んでいくことになったが、カタログ集のようなものだから特に問題はない。 富編ではやっぱりあのアーノルド・シュワルツネッガーが注目を集めるな。シュワルツネッガーが資産を不動産に投資していて大金持ちだということは知っていたが、てっきり映画俳優として成功して稼いだお金を投資しているんだと思っていた。でも違った。オーストリの片田舎からカリフォルニアに来たあと、レンガ職人をしたんだけど、そのお金をどんどん不動産に…

  • 心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学

    ニック・チェイター 訳・高橋達二、長谷川珈 講談社 2022.7.14読書日:2023.5.8 脳はその場限りの即興で物事を判断し、意味を作り出して意識に送るということを延々と行っており、意識には無意識といった深層構造は存在しないと主張する本。 たぶんここに書かれてあることは、正しいとわしは思う。人間の心にそんなに深みなどあるとは思えない。 ニック・チェイターは「言語はこうして生まれる」の共著者であり、そこでも人間は言語を即興で創り出しているのだ、と主張している。言語を即興で創り出しているのは、そもそも脳自体が常に即興でその場その場で意味を創り出しているからなのである。 ニック・チェイターによ…

  • わしが陰謀と思うこと

    「陰謀論」を読んだ。陰謀論といえば政治的な話が中心であるが、普通に世間で言われていることでも、これはなにかの陰謀ではないか、と思うことがある。 例えばそれは「幸福」という概念である。 どうも人は幸福にならなければいけないようだ。なにしろ日本国憲法にすら、「幸福追求に対する国民の権利については……最大の尊重を必要とする(憲法13条)」などと記載されているぐらいなので、この権利を行使しないというのは信じられないのかもしれない。まあ幸福を追求するのは権利であって義務ではないのが幸いである。(幸いである…なんて、ちょっとパラドックスっぽい)実際、幸福を追求することを強制されてしまうと困ってしまう。 そ…

  • 陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム

    秦正樹 中公新書 2022.10.25読書日:2023.5.2 陰謀論は外国だけではなく日本でも問題であり、何らかの信条を持っている人ほど陰謀論に陥りやすいことを、ネトウヨ出身の社会学者がデータにより明らかにした本。 陰謀論が恐るべき破壊力を持つということをまざまざと見せてくれたのは、トランプの支持者たちが議会を襲った2021年1月の事件だろう。このとき、Qアノンと呼ばれる人たちがアメリカには一部の人間が支配しているディープ・ステイトであり、トランプはアメリカを救う救世主だ、と信じていた。陰謀論が放置できない問題だと世界中が認識した瞬間だった。 アメリカはリベラルと保守という異なった信条をもつ…

  • ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く

    エリオット・ヒギンズ 訳・安原和見 筑摩書房読書日:2023.4.27 インターネットなどの公開された情報をもとに調査を行うオープンソース調査の手法を開拓したエリオット・ヒギンズが、ベリングキャットを設立し、パソコンとネットを武器にして国家などの巨大組織に立ち向かう様子を記した本。 最近、オープンソース調査という、インターネット上の公開情報から真実を探るという技術が発達してきたが、それはべリングキャットを創設したエリオット・ヒギンズらから始まっている。 ヒギンズはもともとジャーナリストになりたかったらしい。でもうまく行かずに、小さな会社で管理の仕事をしながら、ネットゲームに逃げ込み、ゲームの世…

  • 巨神のツール 俺の生存戦略 健康編

    ティム・フェリス 訳・川島睦保 東洋経済新報社 2022.10.20読書日:2023.4.24 ティム・フェリスの「巨神のツール」シリーズの健康編。概ね、食事(ダイエット含む)、運動、瞑想、そしてなんとサイケな体験ができる薬物の話も載ってる。 いや、このサイケな薬物の体験はきっと日本では不可能でしょう。他の項目ではあげられている参考書は翻訳されているものもあるけれど、この薬物に関してはほとんど日本語になってる本がありません。いかに日本ではタブーかということでしょうか。 もちろん依存症になってはまずいですが、ティムによれば、マイクロドーズ(本当にマイクロg単位)の量を入れるだけで効果があるのだと…

  • 習得への情熱 ーチェスから武術へー 上達するための、僕の意識的学習法

    ジョッシュ・ウェイツキン 訳・吉田俊太郎読書日:2023.4.20 「ボビー・フィッシャーを探して」という映画のモデルになったチェスの世界的選手のジョッシュ・ウェイツキンが、20代に太極拳にはまって太極拳の武術、推手でチャンピオンになったときに学んだことを、チェス競技と比べて述べた本。 これは超おすすめ。 チェスもほぼスポーツと言っていいくらいの競技で、ジョッシュがはまったのも、武闘とチェスがものすごくよく似ているから。頂点のレベルになると、勝負のときにいかにリラックスして、フローの状態になるかでほぼ勝負が決まってしまう。それで、どんなふうに精神状態を持っていくかという話が中心になる。 上達す…

  • WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う

    サイモン・シネック 訳・栗木さつき 日本経済新聞社 2012.1.24読書日:2023.4.17 どうやるか(HOW)、何をやるか(WHAT)の前に、自分の存在意義はなにか(WHY)から始めたほうがうまくいくと主張する本。 というのは、うまくいかなかったときにWHYがしっかりしていれば、HOWやWHATを柔軟に切り替えることが可能だからだ。もしもWHATから始めて、たとえば時計を作る会社と自分を定義すると、会社は時計から離れられなくなってしまう。そうなると、例えば時計産業が落ち込むとそこから脱出するのは難しくなる。 WHYがしっかりしていると、HOWやWHATのやっていることに一貫性が生じる。…

  • 超圧縮 地球生物全史

    ヘンリー・ジー 訳・竹内薫 ダイヤモンド社 2022.9.14読書日:2023.4.13 地球が誕生してから6〜8億年後に生命が誕生し、進化を続けてついには人類が大繁栄し、さらに人類の絶滅までも視野に入れる、壮大な地球生物全史をたった300ページに圧縮した本。 なにか図鑑的な本をイメージしていたのだが、そうではなく完全に物語化しており、読んでいてとても面白かった。そのためにまるで見てきたかのような表現が多用されており、いちおう学術論文の根拠はあるが、著者の想像によっている部分もある。(想像で書いたところは分かるようになっている)。 たった300ページというが、これはけっこう大変だ。全ての時代に…

  • 愛するよりも 愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①

    佐々木良 万葉社 2022.10.10読書日:2023.4.12 万葉集を奈良弁に翻訳したちょっとキワモノ(?)の翻訳歌集。 なんか興味を惹かれて読もうと思ったのだが、どの図書館にも置いていないのだった。なぜ?と思ったが、どうもこの本はアマゾンでしか発売していないらしい。きっと図書館とアマゾンは取引関係がないのだろう。でも既に6刷のベストセラーなんだから、なんとかしてくれないのかしら。 しょうがないので非常に珍しいことだが、アマゾンで注文した。しかもキンドルバージョンがないので、電子本派のわしだが、紙の本を買った。そういうわけで、読み終わったこの本を図書館に寄付してみようかと思うが、図書館は受…

  • 米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ) 伝説の指揮官に学ぶ 究極のリーダーシップ

    ジョッコ・ウィリンクス リーフ・バビン 訳・長澤あかね CCCメディアハウス 2021.7.27読書日:2023.4.11 イラク戦争でネイビー・シールズを指揮したジョッコが、リーダーシップとは究極の責任感を持つことで、究極の責任感とは作戦に関係するすべてのことに責任を持つことだ、と主張する本。 ジョッコ・ウィリンクスのことは、「巨神のツール 俺の生存戦略 知性編」で知った。よく分からんがとても人気のある人らしい。ポッドキャストが人気で、ジョッコの言葉だったらいくら聴いても飽きない、という人がいっぱいいるらしい。 読み始めて、最初は「究極の責任感ねえ」と斜に構えていたが、だんだんこれはすごいこ…

  • 怠惰への讃歌

    バートランド・ラッセル 訳・堀秀彦、柿村峻 平凡社 2009.8.10読書日:2023.4.7 人類の生産性はすでに十分高いから、一日の労働時間は4時間で十分で、余った時間を有効に使えば豊かで幸福な人生を送れると主張する本。 まあ、実質1日2時間ほどしか働いていなかったわしとしては、この発想には全面的に賛成である。残念ながらいまはかなり働いている。昔はアイディアがいちばん重要な仕事だったが、いまやっている仕事はそれなりに誰でもできる仕事になってしまったので、そんなに怠けるわけには行かなくなってしまった。非常に残念である。たぶん1日4時間は働いている。ラッセルの主張する時間になったというわけだ。…

  • 生まれながらのサイボーグ 心・テクノロジー・知能の未来

    アンディ・クラーク 訳・呉羽真、久木田水生、西尾香苗 春秋社 2015.7.25読書日:2023.4.2 電子的に繋がれていなくても、人間は道具を使っているだけで肉体も精神も拡張されており、事実上のサイボーグ状態だと主張する本。 この本の原著は2003年に出版されている。それから10年以上たって翻訳出版されているわけで、この本が投げかけている問題が時間を越えた普遍性を持っているばかりか、当時出現していなかったスマホなどを持つことで、いっそうその主張が説得力を持つ状況になっている。 では、クラークの主張を見ていこう。 人間は苦手なことを道具を用いて能力を補おうとする。クラークによれば、人間は「フ…

  • 71歳、年金5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活

    紫苑(しおん) 大和書房 2022.8.1読書日:2023.3.29 フリーライターとしてあまりお金のことを考えずに暮らしてきた著者が、子供が独立後に年金5万円しかないのにどうやって暮らしていくか悩んだ末に、貯金をはたいて築40年の一軒家を買って、5万円で生活していく様子を書いた本。 一軒家を買う前は公団住宅で暮らしていたそうで、たしかに公団の安いところでも5万円で暮らすのは辛いかも知れない。毎月赤字で、貯金が減っていくのに悩んで、このままいつまで暮らせるのかと頭を悩ませていたそうだ。しかし、貯金をはたいたけど、住むところを確保できて、月5万円で暮らせることが分かると、ずっとやっていけるという…

  • 流浪の月

    (ネタバレあり注意) 凪良ゆう 東京創元社 2019.9.30読書日:2023.3.26 男女関係ではないが、一緒にいると自由になれる二人が人生を共にするようになるまでの物語。 2020年本屋大賞受賞作で、映画化もされた作品である。帯の惹句は「愛ではない、けれどそばにいたい。」である。この言葉はとても良くできていて、実際、この言葉がそのままこの作品のテーマである。 ところで、「愛ではない、けれどそばにいたい。」というような人間関係は、考えてみればごく普通である。世の中にはすでに恋愛関係を越えてしまって、単なる同志、あるいはパパ、ママとしてだけ存在している男女はいくらでもいるのである。そういうわ…

  • ちょっと気分がダウナーになったときに読むもの

    わしはめったに気分が落ち込むことはないし、これまでウツになったこともない。根がお気軽系なのかも知れない。 しかし、やっぱり、なんとなく気持ちが晴れなかったり、先が行き止まりになっているように感じるときもある。 こんなときは人によっては運動したり、好きな映画やドラマを見たり、休暇を取って旅行に出かけたり、ゲームに没頭したりするのかも知れない。わしもちょっとした筋トレでもすれば、だいたい気分は晴れる。 しかしもっと強烈な行き詰まりを感じたときは、運動程度ではスッキリしない。そんなとき、わしの最後の手段は科学雑誌を読むことだ。で、この科学雑誌はほぼ日経サイエンス、一択である。まともな科学雑誌はたぶん…

  • ひろゆき流ずるい問題解決の技術

    西村博之 プレジデント社 2022.3.24読書日:2023.3.25 ひろゆきが、問題解決のコツは自分の負担にならないように考え方を変えるだけ、と伝授する本。 まあ、ひろゆきももういいかな、という気がする。同じ話の繰り返しが多くなってきたし、しかも、わしはどうもひろゆきタイプらしく、思考回路も似ているようで、あまり参考にならない。彼ほど極端ではないが、やってる方向は一緒なので、なんか自分の体験と重なってしまう。 たとえば、大学受験のときにコスパのいい科目の倫理政経を選んだ、というのは、誰でもやってるのでは? わしも倫理政経を選んだ。簡単だからね。それどころか、学科も一番受かりやすいところを選…

  • いままで起きたこと、これから起きること。 「周期」で読み解く世界の未来

    高城剛 光文社新書 2022.8.30読書日:2023.3.24 高城剛が世界に起きている周期を読み解くことによって、これから起きることを予測する本。 わしの出自がエンジニアのせいか、周期で説明しようという話を聞くと、どうも眉唾な印象を受けてしまう。何かを説明するときにいろんな周期をいろんな重みで合成すると、いかようにでも波形を合成できてしまうからである。使う周期の波の数は多ければ多いほどよろしい。その方が合わせやすい。こういうのはパラメータ・フィッティングといって、十分な数のパラメータがあると、本当にどうとでも合わせ込みができてしまうのである。 市場の予測にも、よくコンドラチェフの波動がどう…

  • マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険

    スザンヌ・シマード 訳・三木直子 ダイヤモンド社 2023.1.10読書日:2023.3.23 森の木たちがマザーツリーと呼ばれる古い木を中心に地下の菌根菌の菌糸でつながっており、水や炭素などを融通しあっていることを証明して、森の見方を一変させたカナダの生態学者の回想録。 この本に書かれてある実験を、わしは何かの記事かTV番組で見たことがある。 2つの木の根を共通の菌根菌でつながった状態にしておく。ここで、一方に光合成ができないようにカバーをかけておく。光合成ができないので、普通ならば枯れていく。ところがもう一方の木が菌根菌を通して栄養を分け与えてくれるので、カバーをかけられた木も枯れずに生き…

  • 私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット 中国の富・権力・腐敗・報復の内幕

    デズモンド・シャム 訳・神月謙一 草思社 2022.9.5読書日:2023.3.17 2000年代に中国で総理だった温家宝の一族に接近し、その伝手を利用して新富豪になったデズモンド・シャムとその元妻ホイットニー・デュアンだったが、習近平の腐敗一層キャンペーンの中で逆風にあい、ホイットニーは失踪してしまうという顛末を振り返った本。 この本はデズモンド・シャムが貧しかった上海から両親に連れられて香港に移住し、アメリカの大学を卒業して、中国に投資をする会社に入るまでの過程がまず述べられている。 もともとは富裕な一族だったが、祖父が中国本土に残るという最悪の決断をしたため、元資本家として差別されて厳し…

  • 現代の奴隷 身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    モニーク・ヴィラ 訳・山岡万里子 英治出版 2022.12.20読書日:2023.3.14 現代の奴隷は麻薬や負債で被害者を抵抗できなくして売春や労働を強制するもので、昔の奴隷と異なり使い捨てのローリスク・ハイリターンのビジネスであり、さらに身近で行われているのに気づかれていないという実態を報告した本。 この本では、実際に奴隷状態に陥ったものの、そこからなんとか抜け出したサバイバーの体験談を中心に書かれている。実際の体験に勝るものはないからだろう。 衝撃的なのは、そのうちの一人のマルセーラの体験談だ。彼女はコロンビアから何も知らずに、なんと日本に連れてこられて売春をさせられそうだ。彼女を奴隷化…

  • 巨神のツール 俺の生存戦略 知性編

    ティム・フェリス 2022.10.20 東洋経済新報社読書日:2023.3.11 「週4時間だけ働く」のティム・フェリスが、ポッドキャストで著名人にインタビューした内容をまとめた本(を3分冊にした1冊)。 どうやら週4時間だけ働くと、仕事以外にいろいろな活動ができる時間を捻出できるらしい。有名人になった著者は、新たに作った人間関係を駆使していろんな分野の106人にインタビューを行い、それを本にハック集としてまとめた。ひとり数ページだが、全部で500ページ以上になってしまい、日本では3分冊にされてしまった。 内容からして、どんな順序で読んでも問題なさそうなので、順序をつけずに図書館に予約したら予…

  • 最近読んだ本で未来の社会を想像する

    最近読んだエマニュエル・トッド「我々はどこから来て、今どこにいるのか」と柄谷行人「力と交換様式」などを読み比べて、未来の社会がどうなるのか考えてみたい。 「我々はどこから来て、今どこにいるのか」から次のようなことを学んだ。 家族の形式が社会の姿を規定していて、父権が強い家族形態では権威主義的な社会と相性がよく、核家族の社会では個人の自由を尊重する民主主義的な社会と相性が良い。 驚いたことに、個人主義的な社会よりも父権の強い社会のほうが新しく進化した社会で、父権の強い社会に一度なると、なかなか核家族的な性質を持つように戻らないということだ。(明確に書かれてはいないが、たぶん戻った例はない)。 そ…

  • 力と交換様式

    柄谷行人 岩波書店 2022.10.5読書日:2023.3.8 人類の歴史はその交換様式で区別でき、そのスタイルは4つしかなく、いまは商品や権力に関連した交換様式が強いが、将来は個人に関係した交換様式の世界になると主張する本。 最初はそれがどうしたという感じで読んでいたが、次第にこれは未来を考える上で強力なツールになるような気がしてきて興奮してきた(笑)。 とりあえず、柄谷さんの主張を見ていこう。 柄谷さんはマルクスとエンゲルスを思索の中心においている人らしく(なんかこういう人が多い。まったくこの二人の影響力には驚かされる)、人間の歴史は下部構造の経済の「生産様式」で語られると思っていたが、そ…

  • 87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし

    多良美智子 すばる舎 2022.3.30読書日:2023.3.5 87歳の著者が、古い団地でお金もあまり使わない豊かな暮らしを紹介した本。 最近、この手の高齢者が質素だが豊かに満足して暮らす様子を書いた本がベストセラーになっている。というわけで、読んでみようと思い、何冊か予約したうちの一冊目が届いた。 著者の美智子さんは夫婦でずっと団地住まいで、子供が独立してからは夫婦で住み、夫を7年前に亡くしてからはひとりで住んでいる。入居した当時は新築だったが、いまでは築55年の古い団地になっている。 部屋は4階だがもちろんエレベーターはない。1階に空き部屋もあるから移ったらと言われるが、美智子さんはイン…

  • 天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す 偶然を支配した男のギャンブルと投資の戦略

    エドワード・O・ソープ 訳・望月衛 ダイヤモンド社 2019.4.3読書日:2023.3.4 世界で初めてブラックジャックのカウンティングの技術を発見し、オプションの価値を計算するブラック=ショールズの式を発表前から自力で発見し、適正価格から外れた銘柄をリスク・ニュートラルで運用して大金持ちになった数学者、エドワード・O・ソープの回顧録。 この本は長らく読まなければいけない本に入っていたもので、ようやく読んだ。 わしはエドワード・O・ソープの名前を知っていたし、「ディーラーをやっつけろ」という本のことも知っていた。でも、エドワード・O・ソープがどんな人間かはまったく知らなかった。 この本を読ん…

  • 総員玉砕せよ! 新装完全版

    水木しげる 講談社文庫 2022.7.15読書日:2023.2.27 (ネタバレあり 注意!) 水木しげるが体験したパプアニューギニア、ニューブリテン島での戦いを一兵士の視線で描いたもの。 「のんのんばあとオレ」が印象深かったので、水木さんの代表作を読んでみたもの。マンガは基本書評しないことにしてるんだけど(切りがないから)、これは書くことにした。 物語の概略は以下の通り。 ニューブリテン島に敵が上陸して、部隊が送り込まれるが敵に囲まれてしまう。中隊長はジャングルに後退してのゲリラ戦を主張するが、率いる若い田所少佐は死に場所を求めているようなところがあって、玉砕を決行する。しかし81名は生き残…

  • 人類学者K ロスト・イン・ザ・フォレスト

    奥野克巳 亜紀書房 2023.1.9読書日:2023.2.25 人類学者のKがボルネオの狩猟採集民プナンで一緒に生活した経験を語る本。 人類学者のKとはもちろん著者自身のことだろうが、この本ではまるで小説のように三人称でKの体験を語っている。どうしてこんなふうにしているのかよくわからないが、論文ではなくて曖昧な印象を語るための工夫なのかもしれない。 ところどころに人類学と関係ないKの個人的な話が挿入されている。たぶん事実の話だと思うが、創作かもしれない。そういう意味でも、このようなスタイルがとられているのだろうか。 なお、最初に、カフカの「城」が引用されていて、「城」はKが城に行こうとして決し…

  • 農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ

    久松達央 光文社新書 2022.8.30読書日:2023.2.22 28歳のときに農業に新規参入して実地で農業を見つめてきた著者が、世間が抱いている農業の常識は幻想だと喝破し、小さな自営業の農業が生き残っていくのに必要なのは競争することではなく、ファンを増やす最愛戦略を駆使することで、勝つのではなく負けないことを目指すべきだと主張する本。 久松農園は、農作業の人数が4人で、出荷チームが3人の7人体制で、とれたて野菜をネットで直接販売して、年間5000万円ほどの経営規模なんだそうだ。顧客数は毎週送るのが30件程度、隔週が70件、月イチが30件ほどらしい。そのとき一番いい旬な野菜をみつくろって送る…

  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか

    エマニュエル・トッド 訳・堀茂樹 文藝春秋 2022.10.30読書日:2023.2.18 家族形態と現代政治との関係を見つめてきた人口歴史学者のエマニュエル・トッドが、これまでの研究成果をまとめて、民主主義の行く末を示唆する衝撃の書。 「第三次世界大戦はもう起こっている」を読んで、米英と異なる視点の発言に大いに感心したけれど、この本を読んで、改めてエマニュエル・トッドがフランス人で良かったと思った。米英の研究者ではこの本は書けなかったのではないか。フランスは、ジャック・アタリもそうだが、別の視点から世界を見ることを教えてくれる大切な国だ。 この本はこれまでエマニュエル・トッドが発表してきた研…

  • 早朝のガストで

    わしは早朝のガストがけっこう好きだ。 休みの日には近所のガストで朝食を食べて、そのままドリンクバーのカプチーノ(シナモンが好きなのだ)を飲みながら、喫茶店代わりに数時間ゆっくり過ごし、ランチの客で混み始める午前中11時頃に退店するというパターンが多い。 まあ、ガストを選ぶのは、株主優待の消化という側面も大きいんですけどね。たぶん優待がなかったら、行かないと思う。 朝食を食べている人には固定客が多くて、いつも同じ人が同じ席に座っていることが多い。一度固定化すると、2、3ヶ月はそのままのメンバーが続く。でもガストで過ごすことに飽きるのか、やがて来なくなり、そうやってメンバーは変わっていく。 わしが…

  • 22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家は猫になる

    成田悠輔 SB新書 2022.7.15読書日:2023.2.9 イェール大学の成田悠輔が、国民の無意識からデータを収集して、アルゴリズムにより自動的に政策を立案、実行する「無意識民主主義」を主張する本。 この本、やたら評判がいい。というわけで、読むまでにずいぶん待たされた(笑)。いちおう読んだが、これはうまくいかないだろうなあ、と予感させるには十分な内容である。 とりあえず、成田氏の主張を見ていこう。 世界の半分は、経済は「資本主義」、政治は「民主主義」という構造になっていて、資本主義で好きなだけ儲けてもらい不平等になるが、民主主義でそれを分配して平等にするという仕組みになっている。しかし、い…

  • 遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」

    植原亮 ダイヤモンド社 2022.8.30読書日:2023.2.6 人は素早く答えを得る直観と、じっくり考える熟慮の2つのシステムを持っており、直観には勘違いや錯覚があるので、その特性をよく知って熟慮する遅考術を教える本。 まあ、ともかく題名が素晴らしい。 この本は、ほぼ認知系の本からの引用のみで成り立っているような本なのだが、ここで直観では勘違いしやすい部分を熟慮するということを「遅考術」と名付けて、そのくくりでまとめたところが素晴らしい。これはダイヤモンド社の朝倉陸矢さんのアイディアだそうだ。この本が売れるとしたら、この題名が9割ぐらいのような気がする。 早杉さんと文殊さんの会話形式にした…

  • パンデミックなき未来へ 僕たちにできること

    ビル・ゲイツ 訳・山田文 早川書房 2022.6.20読書日:2023.2.4 ビル・ゲイツがコロナの次のパンデミックを抑えるために、世界的な仕組みを作らなければいけないと主張する本。 ビル・ゲイツは以前から感染症に興味を示していて、すでに2015年にはTEDでパンデミックの危険について訴えている。こうした訴えは、当時はさほど世間に響かなかったであろうことは想像に難くない。しかし、パンデミックが実際に発生してしまった今では、ビル・ゲイツの言葉を聞こうとする機運も高まっているのであろう。ビル・ゲイツが3冊目の本を書いたのはこういうわけであることは容易に想像できる。 世界中に火災に対処する消防の組…

  • 異常【アノマリー】

    エルヴィエ・ル・テリエ 訳・加藤かおり 早川書房 2022.2.15読書日:2023.1.31 (ネタバレあり。注意) ニューヨークに向かうエールフランス機が危険な積乱雲に入り無事に脱出したが、三ヶ月後にまったく同じ旅客機が同じ乗客を乗せて出現し、大混乱になる様子を描いた、フランスのゴングール賞受賞作。 まあ、いちおう本書が出版されたときにチェックはしていましたが、そもそもフィクションはほとんど読まないので、読んでいませんでした。ところが、昨年末のいろんな読書関係の記事で、今年の読書の成果として本書をあげる方が多かったので、読んでみようかと思った次第。 3月の嵐の中、旅客機がまったく同じ2つに…

  • 人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小

    チャールズ・グッドハート マノジ・プラダン 訳・澁谷浩 日本経済新聞社 2022.5.19読書日:2023.1.31 今後は世界の労働年齢人口が減少するというこれまでと逆転する局面になり、労働力不足から供給が減ってインフレが起こる一方、労働力が貴重になり労働者の立場が強くなる結果、不平等は縮小すると主張する本。 人口関係の本は、書名を読めば原因も結論もそのまんまであって、それ以上でもそれ以下でもないらしい。以前「人口革命 アフリカ化する人類」を読んだときも、書名がそのまま結論でした(笑)。この本も書名がそのまま結論です。 でもまあ、少し中身をくわしく見てみましょう。 まず1990年代から最近ま…

  • 衝撃的! 日本人の若者の25人に1人は1日ゼロ食!

    ときどき目を疑うような記事を読むけど、これは久々に衝撃的だった。 社会学者の舞田敏彦氏によれば、日本人の15歳から24歳の25人にひとりは1日1食も取らないゼロ食だというのである。つまり食事をしない。土日ではない。平日の話である。(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100869.php) ダイエットとかで食べない人もいるだろうけど、これが異常であることは過去の数字と比べてみるとすぐに分かる。 2011年、1.6% 2016年、0.6% 2021年、4.0% 2011年も東日本大震災で社会が大混乱した年だということを考…

  • 辻政信の真実 失踪60年-伝説の作戦参謀の謎を追う

    前田啓介 小学館 2021.6.8読書日:2023.1.24 ノモンハン事件やマレー作戦などを主導し、半藤一利から「絶対悪」と呼ばれた、日本陸軍参謀、辻政信の新資料を加えた評伝。 タモリによれば、いまは「新しい戦前」なんだそうだ。今後、戦争の時代になる予感を感じさせる言葉である。そういうわけで、いま、かつての日本軍や軍人たちに再び脚光が集まりつつある。戦争の時代に対するヒントを得ようということなのではないかと思われる。この本がかなり読まれているのも、そのせいなのだろう。 では、辻政信とはどんな人物だったのだろうか。 辻政信はエピソードが豊富な人で、その人生はざっとこんな感じである。 ・石川県の…

  • 歩きながら考える

    ヤマザキマリ 中央新書ラクレ 2022.9.10読書日:2023.1.22 コロナ禍で日本に留まっていた漫画家のヤマザキマリが、ようやくコロナが落ち着きかけた2022年に書いた、自らの死生観や日本社会などに関する考え方をまとめたエッセイ。 この作品の前に、「立ち止まって考える」というエッセイがあって、そのときにはコロナでまったく自宅に留まらざるを得なくなった状況を書いていたが、今回はその続編。前作は、わしは読んでいなかったが、息子は読んだそうだ。なにー。なんで、そのときわしに回してくれなかったのだ。ぷんぷん。 まあ、この本ではようやく動くことができるようになって、イタリアに戻ったり、日本国内を…

  • 言語はこうして生まれる 「即興する脳」とジェスチャーゲーム

    モーテン・H・クリチャンセン ニック・チェイター 訳・塩原道緒 新潮社 2022.11.25読書日:2023.1.15 言語はコミュニケーションを成り立たせるために脳が即興的にそのときどきで生み出しているものであり、脳に遺伝子で設定された特別な隠れた構造があるわけではないと主張する本。 最初に18世紀に太平洋を旅したクック船長の話が出てくる。西洋人が初めて訪れた島で、クック船長は原住民と話をして水を得ようとする。言葉が通じないのにクック船長は、水を手に入れることに自信満々だった。そして、実際、彼らはお互いジェスチャーで意思を通じさせて、クック船長は無事に水を得ることができたという。 というよう…

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