※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
あきらと総二郎は道明寺邸で司に報告していた。「ブラウンさんは学校では牧野つくしとして通っている。 その方が溶け込みやすいからだろうなぁ。 しかも父親が社長では無い事に一部の女生徒が蔑んでいるみてぇだ。 確かに社長じゃねぇがその辺の社長よりもかなり格上なんだけど、それをひけらかさねぇ。 目立つことを嫌う性格のようだな。」「勉強はかなり優秀。 海外では飛び級しているようだ。 もちろん自分から自慢したわ...
あれは幼稚舎で司、あきら、総二郎と言う友達が出来た頃だった。何度か司の家に遊びに行っていたがその時もそうだった。見事なバラが咲き誇る中、門を入ったところでバラの垣根に小さな黒い物体を見つけた。猫だと思った。そう思うと、運転手に声をかけた。「止まって。 ここで降りる。」そして車から飛び出すと猫と思われる黒い物体に近づいた。だがすぐに猫では無い事に気づいた。白い服を着ている小さな子供だ。小さく丸まるよ...
『そのままの方が似合ってる。 何でみつあみを?』『さっきも言ったけど、許嫁が言ったから。 目立つなってね。 つまり注目されるなという事でしょ? 日本人はやまとなでしこと言う大人しくて男性の一歩後ろを歩くような女性がいて、きっとそう言う女性が理想なんだと思った訳。 それでネットでやまとなでしこらしい学生の髪型を調べたらカチッとしたみつあみ姿だったって訳。』『へぇ。』やまとなでしこが司の理想?全然違う...
『じゃああたし達も帰りましょうか? あっ、カヌレ!! 類もカヌレを買うのかな?』類はプッと吹き出す。こんな事がありながら当初の目的のカヌレを思い出す当たり、天然も入っていると感じる。『いや、カヌレはつくしに譲るよ。』『ありがとう。』『でももうしばらく帰れないと思う。 警察に事情を説明しないといけないから。』そこに店員が氷とタオルを持ってきた。店内で売っているパックに入った物だ。「とりあえずこれで冷...
目に飛び込んだのは金庫の中身をバックに詰めている黒ずくめの犯人二人と部屋の隅に両手両足を縛られた店員二人の姿。類が飛び出す前につくしが一歩を出しその後ろから類が追いかける形で手前の犯人をつくしが、後ろの犯人に類が向かった。まさか二人が出てくるとは思わなかった犯人は驚きで動作が遅れる。しかも現金を詰め込む為か拳銃を床に置いていた。つくしは犯人の背中を蹴ると俯けになった犯人の両手を後ろに持っていき、腰...
『立ち上がるよ?』『うん。 お願い。』類はつくしの足をしっかりと持ちゆっくりと立ち上がると通気口の下へ移動する。つくしは両手で通気口をずらす。『足をしっかり持ってくれる? ちょっと覗いてみるから。』『分かった。』つくしは腰を浮かし、立ち上がる格好で通気口の中を覗く。その為、類の顔にスカートが覆い被さり、少し上を向けばパンツまで見える状態だ。こんな体勢、、、何かの罰ゲームだろ?と自分で自分を憐れむほ...
「おい! ここに金を入れろ! 防犯スイッチを押すなよ。」入り口から大きな声が聞こえ二人は同時に入り口を見る。店員はすぐに両手を上げている。すると黒いニット帽を被りサングラスをかけ口元にはマスクをし黒い上下の服を身に纏った男性二人が、手に拳銃のような物を握りしめているのが分かった。犯人の一人はすぐに入り口のドアを閉めるとつくしと類の元へ近づいてきた。類はすぐにつくしの盾になろうと前に立つ。「おい。 ...
月曜日、つくしはいつも通り学校を終えると真木子と一緒に駅へと向かった。「ほんと英徳は車通学が多いよね。」「だね。 専用駐車場まであるしね。 まあ資産家の子供が通う学校だからねぇ。」「アメリカは13歳まで子供を一人で外出させられないのよ。 学校はもちろん習い事も全て親が送迎するかスクールバスを利用。 一人で留守番も禁止。 マンションに住んでいる場合、一階の郵便物を取りに行くのも禁止だよ。」「厳しいね。...
司はあきらと総二郎を引き連れ帰宅した。すると使用人からすぐにプレゼントを渡された。「これをブラウン様が持ってこられました。 司様のお誕生日プレゼントだそうです。」「要らねぇ。」「困ります。 どうか受け取ってくださいませ。」使用人は困り顔だ。そのプレゼントを総二郎が代わりに受け取る。「司に渡しておきますよ。」「んとに余計な事を。 おい、俺の部屋にアルコールと何か摘まみを持ってこい。」「畏まりました。...
休日。つくしは兄のリアムと共に買い物へ出かけた。と言うのも父親のルーカスから司の誕生日にプレゼントを贈ったらどうかと言われたためだ。その時に初めて司の誕生日を知った。知った以上、何かを贈るべきか?と思った物の何を贈って良いのか分からない。趣味の悪い物や気に入らない物を贈ればまた何か言われる可能性があるからだ。その為、兄と相談しながら買う事に決めた。『どんなものを贈るつもりだ?』『あたしからのプレゼ...
翌日。つくしが学校へ行くと女生徒のほとんどが黒髪にみつあみ、そして眼鏡をかけている。昨日真木子が言った通りになっており、そうまでして道明寺に睨まれたいのか?と不思議に思う。だがこれで自分が目立たなくなりラッキーと感じる。そして教室に入ると先に来ていた真木子が駆け寄ってきた。「ねっ? そうなったでしょ?」「うん。 ビックリした。 そんなに道明寺さんに睨まれたいのかな?」「それがファン心理と言う物なの...
つくしと真木子はホールに居た女生徒に囲まれていた。「F3があなた方をジッと見ておられたんですけど何かしました?」「私もビックリしたんですけど何もしていません。 ねぇ、つくしちゃん。」「はい。 何も。」それは三人の視線をすぐに辿った人たちも同じ気持ちだ。二人は何もしていないのに、F3は二人の方を見ていた。だとすれば、、、「その髪形かしら?」「確かに黒髪にみつあみはあなたしかいないわよね。」「もしかしてそ...
午前の授業が終わり、司とあきらと総二郎は廊下に出た。「んとに何で始業式から授業が行われるんだよ!」「仕方ねぇよ。 そうでもしねぇと授業時間が足りねぇんだろ?」司は舌打ちをする。こんな事なら一日休めばよかったぜ。それをこいつらがあの女の姿が見てぇというし、俺もまあどんな風に接触してくるのか興味もあったんだけどよぉ。だが全然接触しねぇじゃねぇか。何で休み時間の度に廊下に出てあいつが来るのを待ったり、そ...
つくしは担任に案内され教室へ向かう。そして中に入ると同時に皆の視線が集まる。幾度となく転校を繰り返してきたつくしだが、やはり最初は緊張する。「今日からこのクラスの一員になる牧野つくしさんだ。 イギリスから来られたばかりだ。 皆、色々教えてあげて欲しい。 じゃあ自己紹介をしてもらおうか。」「はい。 牧野つくしです。 よろしくお願いします。」「じゃあ席はあそこへ。」「はい。」朝のホームルームとオンライ...
英徳が近づくにつれやけに車が多いと感じるつくし。それが門に向かって続いている事に気づくまでそう時間はかからなかった。左車線を車がのろのろと走り、それがまっすぐ門へと続いている為だ。しかも後部座席には英徳の制服を身にまとった人が乗っている。なんで?つくしはネットで調べた日本の通学風景と違うと感じる。ネットでは日本は小学生から子供達だけで登校していると書かれていた。もちろん帰りも子供達だけで帰る。親が...
1月つくしは英徳の制服に身を包み、髪を二つに分けみつあみにする。それはネットで見つけた「やまとなでしこ髪形」と言う物を参考にした。そして眼鏡をかけた。『ママ。 どう? おかしなところはない?』『おはよう。 えっ? どうしたの?』『やまとなでしこに見える髪型らしいから。』母親のオリビアは驚くものの『やまとなでしこ』と言われたら何も言えない。父親のルーカスの仕事の都合で各国で暮らしてきたブラウン家。そ...
道明寺邸のリビングでは要とルーカス、オリビアが和やかに談笑していた。『それにしてもつくしちゃんはかなり美しく成長したなぁ。 確かにルーカスが自慢するだけの事はある。』『だろう? 自慢の娘なんだ。』『お前から養子を取ると聞いた時は驚いたし、つくしちゃんの姿を見た時の衝撃は今も忘れられない。 年齢の割にかなり小さく細かったし、大人しそうな感じを受けたからなぁ。』『私も同じだった。 だがリアムがどうして...
12月28日つくしは緊張した面持ちで両親の後について道明寺邸の門を潜った。『つくし、覚えているかい? 14年ほど前になるか? この家に来た事があるんだが。』つくしは庭に目を向ける。そこにはバラの花は咲いていない物の、バラと思われる垣根が庭一帯を覆っている。『バラを覚えてる。 お兄ちゃんと一緒にバラを見た記憶がある。』『あの時はつくしを引き取ってまだ10日ほどだったかな? 会話もままならず、兄のリア...
ヒュンッ類は自分のいた2024年11月に戻る。そこにはボックス型のタイムマシンがあるが葵の姿はない。ただ中にメモが残されていた。【パパへ。 机の左の引き出しの中にあるLOVE48という雑誌はあたしが結婚する時にプレゼントしてね。習得したいから。 葵】その文面にフッと笑う。そして無事未来へ戻ったと感じる。その未来の葵に心の中で告げる。――ありがとう。葵。プレゼントするよ。そして自分の腕を見る。そこにあった腕時計型...
2024年10月つくしの叫び声に、使用人やボディガードなどが飛んでくる。「中に、、中に、、」つくしは葵を抱きかかえ震えている。そのつくしと葵を使用人が守るように囲み、ボディガード数人が室内に入る。するとバスルームからうめき声のような物が聞こえる。そこに向かうと、右手を押さえ丸まるように蹲っている男がいる。その隅には刃物がある。一人のボディガードはすぐに刃物を取る。もう一人のボディガードは蹲っている男を見...
二人の耳には小山田の自慢話が聞こえている。《君の数々の理論や数式からタイムマシンを作る俺って天才だろ?君にもできなかったタイムマシンが作れたんだから。それなのに単なる大学教授。数々の論文を発表しても夢物語と誰も取り合ってくれない。おかしいと思うだろ?さぁ無駄話は終わりだ。 移動が終わったらそのデータをこちらに投げろ。》《もう良いでしょ! 葵を返して!》二人の耳にはつくしの緊張感がリアルに伝わる。そ...
ヒュンッ類と葵は、類とつくしの部屋に現れた。「過去に来れたかな?」「シッ!」類は葵の口を止める。隣の葵の部屋から声が聞こえるからだ。《ママ。 パパ。 あ~お。》《凄く似てる。 パパも凄く喜ぶと思うよ。》《あ~お、マ~マ。 パパ。 目目。》《口は?チュッするところは?》《笑ってるね。》《うん。》《良く描けてる。パパに見せた後に飾ってもらおう?》《うん。》二人はお絵描きをしていると分かる。「お絵描きを...
2024年11月類はぐっすり眠っている葵の髪を優しく撫でる。頭の中はまだ整理がつかない。つくしが亡くなって一か月が経とうとしているのに、なんで僅かな証拠すら出てこないんだ?なんで自殺と決めつけるんだ?何度思い出しても朝は普通だった。週末に動物園に行くことを喜んでくれた。笑顔で葵と共に送り出してくれた。そこに悩みを抱えている素振りは全くなかった。だから絶対に自殺じゃないのに、、。ねぇ葵。何か見てない?誰が...
葵は、腕時計とカッターを手に自分の部屋へ戻る。そしてパソコンを立ち上げ、そのマイクロチップを差し込んだ。すると中にはファイルが三つ入っている。一つ目をクリックするとそこには『二酸化炭素から電気に変換する方法』というタイトルと共に、数式のような物や説明書きがずらずらと出てくる。「これって、、、MIMASAKAが開発した物?」そう呟くが明らかにおかしいと感じる。ママは10年前に亡くなった。という事は10年前に...
翌朝、類は仕事へ行くことに。葵は週明けから学校へ行くことになっている。「今日中に荷物の片づけを終わらせること。」「分かってる。」「一人になるけど大丈夫?」「もちろん。佳代さんや使用人さんがいるしね。困ったことがあれば誰かに聞くよ。」「ん。 それと今夜は遅くなる。 夕食は先に食べておいて?」「分かった。」葵は類に手を振り、類は車に乗って仕事へと向かった。車が見えなくなったあと、葵は踵を返す。そして佳...
翌日、類と葵は英徳への編入手続きの為学校へ向かった。事務手続きをしていると学園長が在宅という事で挨拶をするために二人で向かう。「お久しぶりです。」「花沢さん。お元気でしたか?」「なんとか。」「そちらが娘さんですね?」「はい。葵と言います。」「そうですか。奥さまによく似ておられますね。」「はい。凄く。」「中学一年への編入になりますが。」中学一年と聞き、葵は思わず大きな声を出す。「えっ?なんで中学一年...
葵は類の腕の中から顔を上げる。「パパ。 あの隔離部屋を見せてくれる? それとバスルームも。 何か思い出すかもしれないし。」「良いよ。」類は隔離部屋に暗証番号を入力するとロックが開く。そしてゆっくりとドアを開いた。中には机と椅子と本棚、そしてパソコンが一台残っている。「この部屋には監視カメラはなかったんだよね?」「情報流出を防ぐためにつけなかった。 パソコンもネットに繋がなかったしね。」「パパたちの...
ソファーに置かれたイルカ。それを見た時にそのイルカを大事に抱えたつくしが見えたような気がして、類は目元を押さえる。十年が経過したというのにまだ色濃くつくしの姿を思い出してしまう。もう大丈夫だろうと思って帰国したのに全然駄目だ。きっとベッドに横になってもつくしの温もりを探して眠れなくなるかもしれない。すると葵が再び声を上げた。「あっ、あれは何?」類は葵が指差す方を見る。それは隔離部屋を指している。類...
2034年10月日本の花沢邸に着いた類と葵。「覚えてる?」「全く覚えてない。」断言する葵に類は苦笑する。もちろんそうしたくてフランスへ連れて行った。辛い記憶を忘れてほしくて。すると佳代が出てきた。「お帰りなさいませ。類様、葵様。」「ただいま。」「ただいま戻りました。」類の記憶よりも数段老けた佳代の姿に、10年という長い月日を噛み締める。それは佳代も同じようだ。葵の姿に涙している。「申し訳ございません。 ...
2034年9月あれから約10年が経とうとしている。類は34歳、葵は12月で13歳になる。今もフランスで暮らしているが、そろそろ日本へ戻ろうかと考えていた。「パパ。おばあちゃま。行ってきます。」「行ってらっしゃい。」「気をつけて。」葵は類に手を振り元気よく家を出て学校へ向かう。もちろん花沢の車での送り迎えだ。「いつも元気よねぇ。」「ん。それでそろそろ日本へ戻ろうと思う。 ここの教育はオープン過ぎてさ。 ...
類は仕事へ行く日になった。すると葵が泣き始め、類から離れない。「いや。パパ。パパ。」首を振り必死に縋りつく葵を、類は優しく抱きしめる。「仕事が終わったら帰ってくるから。絶対に帰ってくる。葵を一人にはしないから。」麗も葵に諭しながら葵を受け取ろうと手を差し出す。「パパが帰って来るまでおばあちゃまと一緒に遊びましょう?お絵描きしましょうか?葵ちゃん凄く上手だものね。」だが葵は麗の手を取ろうとしない。そ...
あけましておめでとうございます。今連載中の『15 years story』ですが、まさかこんな展開で正月を迎えるとは思いませんでした。明るい話で年を迎えたかったところですが申し訳ありません。ですがこのままで終わるはずがないので、お時間のある時にぜひお越しください。類つくを書き始め沢山の作品が生まれました。なんと、10年も書いているんです(笑)こんなに書いていると昔の作品を忘れ、同じような展開も増えてきたように思い...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...
スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...