※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
つくしは百貨店へ向かった。そして食器コーナーでブラウンカンパニーの食器を探す。数店舗目でやっと見つけ、それを手に取りじっくり見る。シンプルなデザインだが重い。だが重厚感があるとも言える。これの何が駄目なんだろう?すると背後から声をかけられた。「先輩。 こんなところで何をされているんですか?」「えっ! 桜子? 何でここに?」つくしは突然の桜子の登場に驚きを隠せない。「おばあさまのお菓子を買いに来たら...
キャリアセンターでチェックしていると電話が鳴った。表示を見るとオリバーからだ。つくしは部屋を出て電話に出る。『はい。 つくしです。』『あっ、つくし! 無事日本に帰った?』『うん。』『あのさ、つくしが勧めてくれた食器部門だけど社長が許可してくれた。』『ほんとに?』つくしも嬉しい。ほんのちょっとした呟きだった。それを真剣に考え本当に実現させた努力は素晴らしい。『おめでとう!』『まだ始まったばかりだけど...
つくしは足しげく大学のキャリアセンターへ足を運んだ。そしてピックアップを急ぐ。ぐずぐずしていたらそれも募集がストップするかもしれないからだ。すると、その姿を桜子に見つかってしまった。「先輩? どうしたんですか?」あからさまにギクッとするつくし。「いや、ちょっとね。」「ちょっと? この場所は先輩には関係ないですよね。 しかも毎日来てますよね。」「げっ! なんでそれを?」「桜子の情報網を舐めてもらって...
日本に到着したつくしはまっすぐ自宅へ帰る。一か月も留守にしていた為、部屋が誇り臭い。全ての窓を開けると、すぐにスーツケースと箪笥を開け整理を始めた。司から貰った靴、服などは処分することにし、アクセサリー、パーティードレスは悩んだ末タマに持っていく事にする。そして数々の課題もすべて処分していく。一番新しいメープルの概要などは地域の観光案内を残しシュレッダーへかけた。その後、掃除をする。とにかく体を動...
翌日、メープルの社員に見送られながらタクシーに乗り空港へ向かった。とてもお土産を買う気にもなれず、まっすぐ国際線へ向かう。すると、、名前を呼ばれた。振り返らなくても分かる声。つくしは無視してまっすぐチェックイン機へと向かった。すると腕を取られる。「おい。 ちょっと待てよ!」「何?」「まだ時間あんだろ? きちんと話をしようぜ。」「何の話? 既にあんたとは終わってるんだけど?」「俺は終わったと思ってね...
翌日、13時過ぎに支配人から連絡があり、つくしはメープル内の一室へ向かった。そこには書類のチェックをしている楓が居た。「ご無沙汰しています。」楓は書類から目を外すとつくしを見る。久しぶりに見るつくしは以前と違いかなり綺麗で聡明に見える。「まず、、あなたに礼を言うわ。 子供を誘拐犯から守ってくださりありがとう。」楓は軽く頭を下げる。突然のお礼と行動につくしは驚き、急いで手を横に振る。「いえ。 とんでも...
西田は時間になっても降りてこない司にしびれを切らし、何度も電話をかけるが出てこない。心配になり直接部屋へと向かった。そして合鍵を使って部屋へ入る。すると部屋が凄い惨状になっていた。モーニングは手を付けられず全て床に転がっているし、ソファーは蹴り飛ばしたのか見るも無残に転り、ガラスのテーブルは粉々に砕けている。明らかに司が暴れたと分かるが、こういう風景は高校以来だ。その汚れた床に司がボーと座っている...
翌朝、つくしは朝食のワゴンを押しながら司の部屋の前まで来た。そして深呼吸を一つした後、インターホンを押した。大丈夫。もし滋さんがいたとしても単に泊まっただけ。それにもし部屋が乱れていたとしても、そこにはあたしの知らない女性がいるだけ。大丈夫。あいつはそこまで馬鹿じゃない。二人の未来のために頑張っているんだから。つくしは必死に自分に言い聞かせる。その為、俯き加減になっていた。暫くしてドアが開く。『中...
翌日、オリバーはチェックアウトする。その手続きをしたのはつくしだ。『いろいろありがとう。 早速、社長に直談判してみるよ。 研究所、品質管理にも確認してみる。 今、どういった物に力を入れているのかさ。』『はい。 頑張ってください。 上手くいくと良いですね。』『その辺は頑張るしかない! つくしも頑張れ!』『はい。 お互い頑張りましょう。 また当ホテルをご利用くださいね。』『もちろん。 まっ、その時つく...
翌日、メープルの玄関前で落ち合い自然博物館へ向かった。オリバーはTシャツにハーフパンツ、つくしはTシャツにワイドパンツだ。そしてセントラルパークを突っ切り、オープンと同時に中に入った。入るとすぐに大きな恐竜の化石標本が出迎える。『凄いな。』『かなり迫力がありますね。 それにあたし達でもかなり大きく見えるんだからマシュー君なら尚更でしょうね。』『ここで既に心奪われたんだろうな。』それを理解しながら順に...
『研修は何時まで?』『後一週間ぐらいです。』『休みはある?』『きちんと貰っています。 明日も休みですし。』『ほんとに? じゃあ一緒に自然博物館へ行かない?』『えっ?』折角だから行ってみたいと思っていた。3歳児のマシュー君が興奮するぐらいの展示物があると分かったし、道明寺に会うまでに気分転換もしておきたかった。『マシューが興奮気味で話してくれてさ。 凄く大きい恐竜の化石があるらしいな。 実はまだ行っ...
レストランの前には、スーツを着たオリバーが待っていた。そしてつくしを見て手を挙げる。『来てくれてありがとう。』『いえ。 こちらこそお待たせしまして申し訳ありません。』『いいえ。 それよりメープルには研修と言う物があるんですね。 その辺も中でお聞きしても良いですか?』『はい。』オリバーにエスコートされる形でレストランの中へ入る。つくしはここで食事をするのは初めてだ。もちろん中を見たことも無い。その為...
翌日、今度はフロント係を始めた。指導係は子供誘拐事件の時、つくしの後をすぐに追いかけたダニエルだ。『あの時はお世話になりました。』『いや、俺も我が目を疑った。 犯人らしき人物を真っ先に追いかけようとするんだからな。』『すみません。』あの時、もしかしたらこのダニエルも流れ弾に当たる可能性があった。それでもあたしを守るために盾になってくれたことに感謝だし、女性を守ると言う意識が高いと感じる。『いや、何...
休日は再びセントラルパークへ足を運ぶ。とにかく広く前回の休みはボーと過ごしたが、今回は散策することにした。べセスタ噴水は中央に天使の像があり、その広げた手の上に鳩が止まっていた。凄く大きな噴水で格好のフォトスポットのようだ。シェイクスピアガーデンも趣があり、ストロベリーフィールズではジョンレノンの碑がありファンが写真を撮っていた。そしてザ・レイクと呼ばれる大きな湖まで来た。ここで5年前に類に見つけ...
翌朝、少し遅めの朝食を食べているとジョディに呼ばれた。つくしはサッと食べると、すぐにジョディの元へ行く。『つくし。 あんた昨日危ない目にあったんだって?』『まあ、そうなんですけど。』『日本で育っているからだろうけど、ここは銃社会。 悪い事をする人はいつも身につけていると思った方が良いよ。 でもそいつが腕の悪い奴で良かったねぇ。』『はい。 それだけは救いでした。』『とにかく十分気をつけるんだよ。』『...
ベル係の仕事も週末は特に忙しい。荷物を客室に運びフロントに戻るとすぐに新たな客の荷物をカートに乗せその部屋へ案内する。繁盛して嬉しい悲鳴なのだが、疲労は半端ない。それでもつくしは疲労の色を見せる事無く明るく接客していた。『この方を1501号室へ。』『畏まりました。』荷物をカートに乗せ押しながらエレベーターの前へ行く。今回のお客様は家族連れだ。観光してきたのか子供の手には恐竜のぬいぐるみが握られてい...
ベル係として働き始めたつくし。フロント前でチェックインを終えた客の荷物を受け取り部屋まで運ぶ。その間にレストラン、非常階段の場所を説明しながら部屋へ。鍵を開け中に荷物を運び入れお辞儀をして退室するのだが、毎回チップを手渡され困惑しつつも受け取る。自分が受け取らなければメープルはチップ不要と間違った印象を持たれるからだ。その分も含め、お客様には喜んで泊まってもらえるよう、会話を重視しながら案内した。...
休日になり、つくしはセントラルパークへ向かった。他に行く場所も無く、かといって部屋に閉じこもっていても虚しいだけだ。あの惨状が脳裏にこびりつきどうしても離れない。つくしはキッチンカーでホットドックとジュースを買うとベンチに腰を下ろす。そしてそれを食べながら今後の事を考え始めた。あたしは何のためにここに来たんだろう。――道明寺との未来の為だよね?じゃあ昨日見た光景は無かったことにする?――出来る訳ない。...
信じられない発言につくしはドキドキと早鐘を打つ。だが必死に冷静を装う。『そうなんですか。』『だから息子さんの部屋には避妊具も準備しておく必要があってね。 あっ、ここだけの話だよ?と言ってもここに勤めているスタッフは全員知っているんだけどね。』『全員が知ってる? そんなに有名なんですか?』『まあねぇ。 いつも決まった女性だし、その女性は大食いで部屋に来ると同時にルームサービスを持って行かなくちゃなら...
翌日からつくしの仕事が始まった。9時にリネン室へ行くと既に数人のハウスキーパーの人がいた。『あらっ? 新人さん?』『はい。 牧野つくしです。 よろしくお願いします。』『こちらこそよろしく。』そこに支配人がやって来た。『今日から一週間の予定でハウスキーピングを手伝ってもらう牧野さんです。 当ホテルの客室備品などいろいろ教えてあげてください。 それでは牧野さん、頑張ってください。』『はい。』サッと挨拶...
夏休みになり、つくしはNYへ向かった。旅券はメープル東京が用意してくれ、行き方や注意点などが書かれた冊子も貰えた。仕事内容などはNYメープルの指示に従うようにと書かれている。何をさせられるのだろうとドキドキしながら、無事NYメープルに到着した。初めて入るNYメープルは東京と同じく高級感漂う内装だ。フロントを見つけると、すぐに向かい挨拶する。『初めまして。 牧野つくしです。 メープルに就職が決まり、本日は研...
6月末。稽古の合間の休憩時。つくしはタマとお茶をしていた。その時、たまたまつけていたテレビ画面に目が止まった。<本日話題の映画が公開され、それに関わった俳優が一堂に会しました。>アメリカで行われた公開イベントには、着飾った俳優陣が順にカメラの前に立ち作品をアピールしている。その後ろに司の姿を捕らえた。その隣には滋の姿も見える。「あの後ろの方に居るのは坊ちゃんじゃないかい?」「はい。 道明寺ですね。...
メープルからつくし宛てに書類が届いた。そこには夏休みにメープルで実践研修があると書かれている。ただその文面にもう一枚クリップで止められた用紙があった。<牧野様。 内定おめでとうございます。牧野様に置かれましてはNYでの研修となりますので、パスポートなど下記の必要書類をメープル本社までご持参いただき~~>それを読み、つくしは心躍る。研修があるだろうとは思っていた。ただ場所がNYだとは思わなかった。直ぐ道...
NY道明寺ホールディングス。楓はメープル東京で採用した人員の資料を見る。どの人材も優秀で即戦力がある。中でもやはり、つくしは群を抜いている。一般常識、世界情勢はほぼ満点だ。さすがね。この三年間の指導の賜物ですが、それを吸収する姿勢は思った以上。もちろん英徳特待生になる程ですから元々頭の出来が良いのでしょう。一般入学で英徳高校へ入学した程ですから元々素質はあったのでしょうけど想像以上です。そして縁故入...
淡く微笑むつくし。司の話になると向日葵のような笑顔を何時も見せていたのにどうしてこうなったのかと、類はやるせない気持ちになる。遠距離の不安もあるが送られてくるプレゼントに他の女性の影がチラチラ見えて不安を感じている。その事実を知っているが、それを話せば牧野はどう思うだろうか?このまま知らずにNYへ行けば、上手くやれるんじゃないだろうか?現に司の元へ行く為に今まで努力してきた。しかも後一年を切った。そ...
つくしはたこ焼きとりんご飴を覗き込んでいたがパッと顔を上げる。「ありがとう。 すっごく嬉しい。 あっ、じゃ一緒に食べよう? 温めるから家に上がって?」一気に疲れが吹っ飛び笑顔になるつくし。その表情に類はホッとする。プレゼントを買う時間が取れなかったのは事実。仕事が忙しく休憩もままならない。もちろん食事もまともに食べられない。疲れが溜まる中これを見つけ牧野に会いたいと思った。これなら気楽に受け取って...
「つくし。 突然なんだけど、パパとママは長野へ引っ越そうと思ってるの。」あまりにも突然の話に、つくしは目を見開く。「またパパが失業?」「本当にすまない。」晴男は頭を下げる。元々契約社員だった。この不況で真っ先にクビになるとは思っていたが突然だ。母親のパートもシフトを減らされ全盛期の半分ほどの稼ぎしかない。その補填をしていたのはつくしの道明寺邸での稽古の頑張りによって支払われる対価。バイト代わりに頑...
3月。F3は英徳大学の卒業式。在校生は休みにも関わらず、間近でF3をみられるのはこれが最後とばかり大勢の生徒が押し掛けた。その生徒たちとは距離を開け、つくしと桜子も最後の雄姿を見るために大学へ行った。行けるかどうか仕事次第と言っていたあきらも、行くつもりはないと言っていた類もそこにいる。三人が揃って歩く姿と共に、そこに居ない人物にも思いを馳せる。思えばつくしが入学した時から横柄な態度で四人はいた。そ...
クリスマス会が終了し、つくしは花沢の車で送ってもらう事に。「久しぶりに楽しかったね。」「俺も。」「類のスーツ姿、よく似合ってる。」「ありがと。」「その姿を見ると頑張ってるんだなって分かるし、あたしも後一年もすれば同じように頑張らないと駄目なんだなって思う。」「まあ、、、そうかもしれないけど、その時は司がいるだろ? あいつ牧野が卒業したらNYに呼ぶと言っていたから、きっとメープルに就職してもNYのメープ...
類はさりげなく司との状況を聞いてみる。「そう言えば、司から電話ある?」「類がNYへ行った時にあったっきりだけど、SNSは来てるよ? あの後、ずっと出張で世界中を飛び回ってるって書いてて、時差が全く分からないから電話がかけられないと書いてた。」再びSNSになっている事に類は肩を落とす。確かに仕事一本になり忙しいとは言っていた。当然海外出張も増えただろう。時差も分からなくなったのも理解できる。ただ、、、なぜす...
「ブログリーダー」を活用して、りおりおさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。
※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...