想像とは微妙に違う… アンは戸惑っていた。 てっきり周りの男どもにメソメソべたべたするしか能がないやからかと思っていたが、銀狼寮のプリンセスは凛とした佇まいで落ち着いていてどこか気品のある、寮長に継ぐ第二の銀狼寮の主だった。
ノマカプのオリジナルとAPH(ヘタリア)のギルアサ、アンアサの二次創作BL小説のサイトです。
5年間ほどPixivで書き続けていた小説を移行しつつ、毎日1P分くらいの更新を続けています。 ゆえに…記事の数だけは多いです(*゜―゜)b 今現在1000記事以上っ!
──毎回毎回すまんな ──ううん、赤ちゃん可愛いし、みんな預かるの楽しみにしてるのよ 今日も水柱とその嫁が赤ん坊を抱いて花柱屋敷に預けに来る。
気づけば大きなおなかを抱えたまま、義勇は18の誕生日を迎えた。 来年の今頃はきっと、大小の錆兎に囲まれているのだろうなと、おなかを撫でながらムフフっと笑う。
甘かった… 祝言から3か月ほどの時が過ぎた頃、本当に自分の考えが甘かったことを義勇は思い知ることになる。
窓際の前から二番目… 柔らかな春の日差しが差し込んで、彼の浅い黄みがかった赤色の髪を明るく照らす。
どうしよう…錆兎がかっこいい…… よく”三国一の花嫁”という言葉があるが、自分たちの場合は花嫁の自分よりも隣で紋付を着ている錆兎の方がよほど素晴らしい”三国一の花婿”である。
水柱の18歳の誕生日兼祝言はものすごい騒ぎだった。 なにしろ柱だけではない。 彼と任務を共にしたことのある隊士や立ち寄ったことのある藤の家の関係者、助けられた街の人々までお祝いだけでも…とさすがに入りきらぬ屋敷の外で列をなしている。
その年の4月8日は朝からどころか数日前から慌ただしかった。 鬼殺隊の桃太郎、鬼退治の代名詞にして鬼殺隊の御旗、水柱渡辺錆兎の誕生日というだけではなく、祝言を挙げる日だからである。
2月8日、義勇は今生で17歳になった。 前世では柱になった年齢である。 まあそんなのはどうでもいい。 男のままだったとしても錆兎が生きていれば錆兎が柱になったに違いないし、柱の座というものに執着もない。
すっかり忘れていた…と言えばしのぶが激怒しそうだが、色々が目まぐるしく過ぎていく中、義勇は”胡蝶カナエが上弦の弐に遭遇して死ぬ”ということを失念していた。 そして前世では経験したそれが、今回は隊士としては引退を余儀なくされるほどの負傷ではあったものの命は助かるという形になって、義...
…姉さん…姉さん、死なないで… カナエを抱えて走る不死川の横をそう言って泣きながら走るしのぶ。
カナエっ!!! 3人が現場に着いたのは、まさに、冷たい氷の蔓のようなものが倒れている胡蝶カナエとそれをかばうように寄り添うしのぶに向かって伸びてきた時だった。
花屋敷には親を鬼に殺されたり、あるいは親に虐待されたりと、家族の元で暮らせなくなった少女たちが多数暮らしている。 それこそ不死川の妹たちくらいの幼い少女がほとんどで、そんな少女たちの面倒をみてやっていると妹たちを思い出して温かい気持ちになる。 だから不死川はこの屋敷の手伝いが好き...
それは最初の柱合会議が終わった夜のことだった。 情緒が多少不安定だったとしても柱ともなれば任務に就かないわけにはいかない。 そういうことで不死川はその日も軽めの任務に就いて、深夜を回る頃には新たにお館様から拝領した風柱屋敷に戻っていた。
水柱屋敷はいつも賑やかで温かい。 水柱である少年が姉妹弟子を継子として3人一緒に住んでいるからというのもあるが、館の主である少年柱の人柄の良さに惹かれて多くの人間が出入りするからというのもあると思う。
不死川が下弦を倒したと聞いたのは、煉獄が柱になった2か月後。 錆兎と義勇、それに真菰が3人揃って休暇を取って、狭霧山に戻っていた時だった。
その日は久々に錆兎との合同任務だった。 初めて一緒の任務に就いた時にはあちらは柱でこちらは隊士になりたての癸で、立場も任務を見守るベテランと見守られる新人だったわけだが、今は違う。
どこか気が重くても足はしっかりと足は前に進んでいて、すぐにたどり着く炎柱屋敷。 ──ごめん下さい。 と、門をくぐると、もう一度、 ──お邪魔します… と声をかけて、錆兎は鍵のかかっていない玄関から家の中に入った。
その日の水柱屋敷はかなりにぎやかだった。 煉獄が炎柱に就いた祝いの席を設けるということがさりげなく広まったらしい。 日中なので遠くの任務に就いている場合以外は夜までは時間がある。 まず主賓の煉獄とその弟の千寿郎はもちろんのこと、他の柱達も祝いを手に続々と顔を出しに来た。
先日…煉獄がコツコツと地道に50体の鬼を斬って炎柱になった。 彼が隊士になりたての頃に任務見守りに付いて早2年強。
自分の勝手な行動で死ぬのは自分だけではない。 他も危険に巻き込むし、下手をすれば隊を全滅させることだってある。 それは今回の任務で不死川が実際に体験して思い知ったことだ。 だから任務が終わったあと、まず錆兎に謝罪して、お館様宛に謝罪をしたためたいが自分は字が書けないので誰か代筆者...
──…ということで、一件落着だなっ!俺は真菰を手伝ってくるからこっちは宇髄頼むっ! 下弦の首が落ちて砂となって消えるのを確認すると、錆兎はまた白い羽織を翻しながらあっという間に走り去っていった。 それを呆然と見送る義勇班。 本当に呆然…だ。
──水の呼吸 拾壱の型…凪 義勇の構えた刀の間合いに入った鬼の攻撃がことごとく消えていく。 錆兎の事は強いと認識していた村田だったが、義勇がここまですごいとは思っていなかった。
そういうことで進むしかないということは決まったわけなのだが、前方からは何かとても嫌な圧がある。 特に気配に敏いというわけでもない村田ですらどこか身震いしてしまうような恐ろしい空気が……
──炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!!! 煉獄を中心に渦巻く炎が彼を囲む鬼を一掃する。
──館内は広いし敵も多いから班に分かれて行動しようと思う。 全員が揃ったところで水柱はそう言った。
「確かに。 今日は任務で来たんだし、開始時間前とは言え無駄口は控えるべきだな。 すまなかったな、不死川」 ひょいっと顔に付けた面を上にずらす少年。 すると口元から右頬にかけて大きな傷跡があるが、それでも端正な顔がのぞく。 そんな風に面を取るとその容姿の見栄えの良さ品の良さからよけ...
──村田っ、久しいなっ! 急にふわりと圧を感じた。 別にそれは殺気とかそういう類のものではなく、単に強烈な存在感というものだったが、不死川は一瞬あわてて刀に伸ばしかけ、しかし寸でで堪えて、そんな自分の過剰な反応を内心恥じる。
「今日の任務は桃太郎と鬼退治らしいぜ」 「俺たち、運が良かったな」 集合場所にはだいぶ早めについたのだが、もうほとんど集まっていて、目の前で何人かの参加者がにこやかに話をしている。
不死川実弥は新米隊士である。 鬼になってしまって6人いた弟妹達の5人までを殺してしまった母親を殺して、それを唯一生き残った弟玄弥に目撃され、誤解されたまま分かれて数か月。
「おかえり。お疲れ様、錆兎」 帰宅時…錆兎に鍵を開けずにチャイムを鳴らす習慣がついて早半年。 ピンポ~ン!と鳴らすと、愛しい伴侶と可愛い娘のお出迎えがあるからだ。
人間に戻って想いを伝えたい… と、その願いが叶ったのは良いが、錆兎はもういまさらだが女性の真菰にまで素っ裸を見られて恥ずか死ぬかと思った。
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想像とは微妙に違う… アンは戸惑っていた。 てっきり周りの男どもにメソメソべたべたするしか能がないやからかと思っていたが、銀狼寮のプリンセスは凛とした佇まいで落ち着いていてどこか気品のある、寮長に継ぐ第二の銀狼寮の主だった。
うん?これは何が起こっているのだろう…と、目の前の光景の意外さにアーサーは小首をかしげる。
──え?な、なにっ?!! いきなり聞こえて来た悲鳴の声は高くて、しかし声変わり前の少年のそれとは明らかに違う。 つまり、この学園にいるたった一人の女性、新任の女性教師のものと思われる。
その夜、アーサーはモブ三銃士の一人のマイクと共にルートの部屋で過ごしていた。 いつもなら当然自室にいる時間だが、今日はギルベルトが金竜のプリンセスに助力を頼まれて金竜を混乱に陥れている金竜の寮長ロディの征伐に行っているので、一人は危ないとギルベルトからルートに預けられているのである。
たとえ逆ハーどころか攻略対象者全員に逃げられようと、このままでは終われないっ! 絶対に…絶対に一矢は報いるっ!!
ほとんどホラーだった。 綺麗で可愛く優し気なだけに、余計にこの状況での満面の笑みが恐ろしい。 怯えるアンを前にフェリシアーノはしばらくニコニコしていたが、 ──話すこと…ないみたいだね? と言うと、華奢な手で銀の呼び鈴をチリンチリンと鳴らした。 それで開いたドアから入ってきた人物...
「お待たせ。 ごめんね、ギルベルト兄ちゃんとの約束でアーサーは部外者に会わせられないから、お話はよければ俺が聞くよ?」 待たされたのはほんの5分ほどだったが、ギルベルトが金竜から戻ってくるまでという時間が区切られているアンにとっては非常に長く感じた時間。 しかもそれだけ待たされて...
アン・マクレガーは正直後悔していた。 教職員宿舎から銀狼寮までは遠い。 もちろん道は伸びているのだから迷子になることはないのだが、それでも暗い道を一人で移動するのはやや怖い。
悔しいがその時の金虎の寮長は実に凛々しくカッコよかった。 金色の虎の刺繍のマントをたなびかせ、剣を掲げて寮生達に号令を下している姿はギルベルトの目から見ても本当にカッコいい。
そんな風に一瞬ギルベルトが考え込んだのを勘違いしたのか、 「馬鹿が~! 俺が孤立したかとでも思ったかっ!! 操られるだけ操られた挙句にシャルルのガキに寝返った馬鹿どもと違って俺は組織に買われているからなっ! ピンチになればちゃんと援軍が来るんだよっ!!」 と急に元気になったロディ...
──申し訳ありませんっ!いかなる処罰も受け入れますっ!! それはなかなか壮観だった。
おそらくシャマシュークの他の寮長や高等部生達が見たら感動のあまり目を潤ませるであろうこの光景は、そのスピリットを根底から否定したロディには不快なものとしか映らなかった様である。 口の端を歪めて嫌な笑みを浮かべてシャルルを見た。
──おや、うちのを連れ帰ってくれたのか、軍曹。 慌てた寮生とは対照的に、少し経って出てきたロディは随分と落ち着いていて、にこやかに言う。
ユーシスがそんな風に暗躍している頃、ギルベルトは寮生達を率いて金竜寮へと向かっていた。 ギルベルトの次に戦力があるであろうバッシュとルートは銀竜の寮生全員と寮長のルークとプリンセスのフェリ、そして金狼の寮長の香とプリンセスとは名ばかりの怪力アルと共に自寮のプリンセスの護衛に残し、...
アンが自分の携帯を取り出すと、ユーシスは ──これ、借りていいかな?直接話したい。 と上から手を伸ばしてそれを取り上げた。
──こんな遅くにごめんなさい… 動揺している様子をより鮮明にするため、上着も着ずにエントランスまで出てきたアン。 さすがに肌寒いがそれもか弱さを強調するためだ。 自分で自分を両腕で抱きしめるようにすれば、紳士なユーシスはきっと ──大丈夫だよ。それより寒いだろう?これを着て? と...
『銀狼寮には手を出すな』といきなり言われた理由は、傭兵派遣や警備を担っている業界一の大企業ツヴィングリ社の社長であるバッシュ・ツヴィングリが銀狼寮の寮生として在籍していて、すでにアンがJSコーポレーションの意志で動いていることを察知されているから、ということである。
打倒、銀狼寮プリンセス!! …を当面の目標にすることを決意したアン。 明日からは本格的に落とすターゲットをギルベルトに絞って、彼と一緒にあの女…もとい、あの女に似た銀狼寮のプリンセスを追い詰めて行こう。 なんならすべてが寮対抗のこの学園でライバルにあたる他の寮のプリンセスをやっぱ...
…ふふ~ん、明日こそは彼の笑顔は私のもの~♪ シャマシューク学園の教職員宿舎の一室で、アン・マクレガーは鼻歌を歌いながらドレッサーを前に髪を梳かしている。
ギルベルトが寮内の大広間についた時には、すでに寮生達は皆、前回の寮対抗戦略大会…通称プリンセス戦争時に着用していた銀狼寮のトレーニングウェアを着用の上、モブ三銃士の一人のマイクの指示で運び込まれたソレ用の防具を身に着けた状態でカイザーを待っていた。
あらかじめ敵の情報があったのもあって、そこからは早かった。 禰豆子が全員を起こして炭治郎達と村田と義勇で乗客の安全を確保し始めてすぐくらいに、もう下弦の壱は倒されて列車が止まっていた。
──お前はまた口元汚しやがってぇ…… などと不死川あたりなら苦言を呈しているところだろうが、錆兎は口の周りを盛大に汚しながら弁当を食う義勇の頬についた米粒を黙って指先で取ってやりながら自分も弁当を食っている。
「…義勇…その格好はなに?錆兎もさ…」 列車の任務当日…待ち合わせ場所の駅の構内で炭治郎達と一緒に錆兎と義勇を待っていた村田は、二人が連れだって来た姿を見てぽかんと呆けた。
炭治郎の諸々が終わったことで村田は次の記憶に残る難関に取り組むことにする。 下弦の操る列車の任務。 それは下弦を倒したあといきなり出くわした上弦の参と戦って煉獄が戦死した任務だ。
炭治郎が引きずり出されて開かれる臨時の柱合会議。 その場でお館様からの事情説明と共に鱗滝元水柱の、禰豆子が人を喰ったなら自分と村田が腹を切って詫びるという手紙が読み上げられる。
あの日から1週間ほど経った頃、村田は宇髄と共に那田蜘蛛山の任務の助勢に向かうことになった。
義勇の言葉の真意の方はわかった。 それが発展した場合の錆兎の対応もわかった。
──俺と錆兎の関係?う~ん…少なくとも将来を固く誓いあった仲ではあるな。 隊士生活も始まって水柱邸に住み始めた炭治郎にどうしてもと頼まれて義勇を館に招待。 炭治郎はその時に直接例の質問をして、義勇にそう答えられて玉砕したらしい。
──義勇さんて綺麗な方ですねっ!! 炭治郎が最終選別を超えて無事隊士になり初任務に就くのに狭霧山から街に降りてきた。 通常は新米隊士達は任務の時以外は藤の家と呼ばれる協力者の宿に泊まりながら日々を過ごすのだが、鬼である禰豆子付きの炭治郎にはそれも難しいだろうと、村田は彼を水柱屋敷...
村田が連れてきた少年少女を預かってもらうということなので、当然錆兎にはいよろしくというわけにはいかない。 そこで、元水柱の鱗滝左近次の元には村田も同行することになった。
アンボイナのシェアを独占してから数か月。 ミナモト商会は猛スピードでマカッサル、スラバヤのシェアも独占。 もちろんその間にはクーンの側もこちらが独占している街に攻撃を仕掛けたりもしてきたが、それを見越しての防壁強化だ。
「ムラタ、アスワングってなんだ?」 その日、いつもよりはやや早い時間に帰船した錆兎の第一声がそれだった。
あれからアンボイナに寄港。 この街のシェアはほぼほぼクーンの物だったが、そこは計略はお家芸のようなものでお手の物のマリアが街に部下を潜ませて秘やかに…そして実に見事にクーンの悪評を流して、度を超えた不信感にクーンとの契約を打ち切ったシェアを買収。 着々とシェアの独占を完了させるま...
──それで…引き受けてきてしまったわけね…… 船に戻って例によって船長室で報告会。 そこで小箱を見せつつ、クーンについての話をすると、マリアは片手を額にあてて、はぁ~…と、小さく息を吐き出した。
「…ってぇことで、対等になったとこで、まあ本題なんだが…」 握手の手を離したところで、ペレイラはもう一度、錆兎に座を勧めて、自身もソファに座りなおした。 こちら側に本題があったように、ペレイラの側にも会見を受け入れるだけの理由、本題があったらしい。
こうして馬車が停まった先、ペレイラ商会の本拠であるマラッカの商館。 とうとう、来てしまった…と、再度緊張するムラタに ──大丈夫。責任者は俺で、すべての責は俺が負う。お前は何も気にしなくていい。 と、錆兎が笑顔で言ってくれる。
バナナ、スイカ、スターフルーツ、マンゴー、グァバ、パパイヤ、パイナップル、ジャックフルーツ、ポメロゥ、ドクゥ、マンゴスチン。 初めて降り立つマラッカの街の市場はとても賑やかで、そこでは驚くほどの種類のカットフルーツが所狭しと並んでいる。
──あ~…それ檮杌じゃないかしら。よく生きて帰って来たわね。 ──ひっ…マジ?!いや、でもさ、あれって伝説上の生き物じゃないの?!
──う~ん…まあ、俺は信じる。 ──ええぇっ?!信じちゃうのっ?!!
──…あなたがいなければ俺は何もできませんでした。ありがとうございます… しばらくして禰豆子を家に置いて炭治郎が穴掘りを手伝いに来た。