chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
リエミブログ https://riemiblog.blog.fc2.com/

不思議な展開をみせる、オリジナル小説、 ほんのり奇妙な短編・ショートショートや、 中編小説を書いています。

◆小説一覧リスト https://riemiblog.blog.fc2.com/blog-entry-2.html  読んで感じたこと、思ったことなど、  ひとことでもいいので、  作品へのご感想をお待ちしています。

リエミ
フォロー
住所
未設定
出身
岡山県
ブログ村参加

2017/10/28

arrow_drop_down
  • ソレイユの森 15 森

    三日経った。 食事や睡眠のために、山を下りたり登ったり、マルは一人で繰り返していた。 ソレイユのいる森が深いので、急な斜面で滑ったり、怪我をしてしまうかもしれない。 危ない目に合わせたくない、と言って、マルはカナを同行させてはくれなかった。 私なら大丈夫、そう言おうともしたが、優しい気遣いを尊重し、今は待つことにした。 カナは、自分の仕事を再開した。 山を守るバリケードの前で、人の侵入を防ぐ監...

  • ソレイユの森 14 光の中

    やってきたマルの手の甲を、カナはそっと、人差し指で優しく撫でた。 葉の間から、細い糸のような、何本もの朝の光が降り注ぎ、森の中に陰影をつける。 ソレイユは陽に、眼を向けて立っていた。 眩し過ぎて、人間には真似できない。マルはその姿を見て、少し笑った。「懐かしいな……服はパンク・ロックだけど。昔の俺を知っているのは、もうお前だけだ」 ビリビリに破れたスーツ姿のソレイユに、持参した黒いスーツを渡し、...

  • ソレイユの森 13 0

    これまで過ごしてきた三百年の歳月は、世界とともに、マルの人生を大きく変えた。 初め、マルは国外へ飛んだ。指名手配を切り抜けての高跳びだった。 地道に働いているうちに、その国の言葉をマスターし、至って普通の暮らしを手に入れた。 しかし、二十年もするうちに、まったく姿の衰えないマルを、気味悪がる人が出てきた。 そのあとは、偽造パスポートを使って抜けた、どこの国でも、同じ結果が待っていた。 マルは誰...

  • ソレイユの森 12 送受信

    夜の深い森の中は、思っていたよりも肌寒い。 風が低い声で唸り、長い髪を逆撫でながら通り過ぎる。 流れの速い雲が丸い月を隠し、また現すのを、カナは、岩に座って仰ぎ見ていた。 保温機能を備えたコートは、寝袋代わりにもなる。 でも、澄みきった森の冷たい空気で、深呼吸を繰り返すうち、眠気はどこかに行ってしまった。 それよりも、今はこの美しい景色を、彼の元に送っておこう。 カナはゆったりとした長い瞬きの...

  • ソレイユの森 11 カナユワテ

    ちょうど三百年目の真夜中、零時ぴったりに、遥か上空で何かが光った。 空から落ちた物体が、強い光と爆風を生んだ。 続けざまに、大きなきのこ雲が立ち上り、静かに、大気に溶けていった。 家から屋根が吹き飛んで、壁も崩れ落ちていた。 しかし温室から伸びた大木の葉が、雨や雪から、その土地を守るようにして伸びていた。 停止と再起動を幾度となく繰り返しながら、ソレイユはまだ、そこにいた。 もはや家とは呼べな...

  • ソレイユの森 10 蜘蛛の巣

    待機状態の中、ソレイユの中の基板の上には、わずかな電気が流れていた。 繰り返される時間の中で、大きく違っているのは、外の天気のことだった。 雨が降るのは、雲が出るから。 そんな小さな情報を、基板の電子回路がメモリに運ぶ。 雲が出ると、気温が下がる。雲が出ると、充電供給率が減る。雲が出ると……。 窓の向こうに見えていた草木が、ゆっくりだが着実に成長していった。 つぼみが膨らみ、花が開く。花が枯れ、...

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、リエミさんをフォローしませんか?

ハンドル名
リエミさん
ブログタイトル
リエミブログ
フォロー
リエミブログ

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用