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  • 「極北の海獣」 トゥルペイネン

    「極北の海獣」(イーダ・トゥルペイネン著2025年5月河出書房新社266p)を読みました。第1章は1741年第2章は1859年第3章は1861年、1950年、2023年が描かれ3つの章を貫いているのは絶滅した海獣ステラーカイギュウというこわおもしろい(怖面白い)ならぬつらたのしい(辛楽しい)話です。第1章はベーリング海の島に流れ着き飢えに苦しみながらも生物への興味を失わなかった博物学者のシュテラーのことが語られる。(ステラーカイギュウの発見者)第2章はアラスカ総督の妹コンスタンス(父親から体よく兄に押し付けられた)てんかんの発作に苦しんでいる。白人女性不足のアラスカでもコンスタンスと結婚しようという人はいないと兄はコンスタンスに代々の総督が集取してきた動物標本の担当を任せる。担当と言っても毎日リストと照ら...「極北の海獣」トゥルペイネン

  • 「本とともに地域で生きる」 南陀楼綾繁

    「本とともに地域で生きる」(南陀楼綾繁著2024年11月大正大学出版会292p)を読みました。新刊書店も古書店も図書館も出版社もブックカフェも全部「本屋さん」と呼んでいいと綾繁さんは言う。ということで第1章は書店を第2章は図書館を第3章は出版社を紹介している。夜の11時から開店する古書店「弍拾db(にじゅうでしべる)」(20dbは、微かな音)女性の手に本とパンをというコンセプトで本屋にパン屋がある「ブックスキューブリック」高校生が起業した無人書店「今時書店」島まるごと図書館という構想で保育園、学校、公民館、シェアオフィス、資料館、診療所などがみんな図書館の分館になっている海士町「図書館があるから移住を決めました」という人もある。衣笠駅徒歩1分図書館(略称キヌイチ)はアパートの2階にある私設図書館だ。その活...「本とともに地域で生きる」南陀楼綾繁

  • 「好きよ、トウモロコシ。」 中前結花

    「好きよ、トウモロコシ。」(中前結花著2023年3月hayaokibooks153p)を読みました。エッセーです。道端の花に足を止めるように著者は「人」に足を止める人のように思う。初めての東京暮らしのために部屋を探して不動産屋に行った時に出会った若い社員さん新幹線で妙に話が合った中年の女性宇宙人なのかもしれないと思うCくん「なんか……結婚したいですね」「一緒に暮らすとたのしいですよ」と言う人→夫そして初めての子育てをする母父エッセイストとして立つまでの東京での十年胸がざわざわすることもたくさんあっただろうに小さな花が束ねられています「好きよ、トウモロコシ。」中前結花

  • 「奇のくに風土記」 木内昇

    「奇のくに風土記」(木内昇著2025年6月実業之日本社322p)を読みました。こういう話なんですよと一言では言えない木内昇の小説は。植物が好きで本草学(植物学)の塾で学び(さすが紀州藩)藩の御薬園の担当者となりしばしば植物採集の旅に出本を書いた畔田翠山(くろだすいざん)が主人公。十兵衛(翠山)の頭の中は植物の知識が整然と整理されているがそれが順序よく口から出てはくれないのだ。それゆえに塾生からは、まあ仲間外れだ。実際、翠山は藩主と師とスポンサーのおかげで恵まれた学者生活を送ったそうだけれど本書の主人公「翠山」も植物に深い関心を持つ藩主・治宝師・小原桃洞桃洞の孫の小原良直らのおかげで一歩一歩道を進んで行くのだが冒頭森に植物観察に行った十兵衛の前に天狗が現れる。その後も亡き父黒百合の姫などなど他の者には見えな...「奇のくに風土記」木内昇

  • 「往来絵巻」 高瀬乃一

    「貸本屋おせん」シリーズの第2巻「往来絵巻」(高瀬乃一著2025年5月文藝春秋238p)を読みました。大河ドラマの少し後の時代の江戸の出版界が描かれる。と言っても大河ドラマの後追い企画ではありません。前巻の「貸本屋おせん」が出たのは2022年だから。(蔦屋重三郎もはじめは貸本屋だった)貸本屋のおせんは本を貸し歩くだけではなく傷んだ本を修繕したり筆写して新しい本を作ったりもする。ある事件をきっかけに母親が出て行き父親は身投げをしておせんはひとり残されてしまう。自分はこの世に置き去りにされるような存在だったのか……いつまでも解けない謎のようにそのことがおせんの胸に燻っている。と言っても読みどころはおせんの足を使っての謎解きとそれを語る威勢のいい啖呵。らくがき落首往来絵巻まさかの身投げみつぞろえ道楽本屋の5編の...「往来絵巻」高瀬乃一

  • 「木曜生まれの子どもたち」 ゴッデン

    「木曜生まれの子どもたち」(ルーマー・ゴッデン著2025年1月岩波少年文庫)を読みました。(以前、偕成社から「バレエダンサー」というタイトルで出ていたものです)4人の男の子のあとにようやく生まれた女の子クリスタルを母親は溺愛する。自分の叶えられなかった夢を叶えてくれる子だと思う。その後に生まれた男の子ドゥーンは育児放棄状態だ。でも、神様が才能を与えてくれたのはドゥーンの方だったバレエを踊るという才能を……クリスタルがドゥーンを陥れようとすればするほどその見返りのようにドゥーンに幸運が降ってくる。周囲の人たちはドゥーンの才能に魅せられて自分の持っているものを差し出さずにはいられないのだ。幼いドゥーンに宙返りやジャンプを教えてくえたベッポ(父の八百屋の使用人以前はサーカスで曲芸をしていた)ピアノを教えてくれた...「木曜生まれの子どもたち」ゴッデン

  • 「ケアと編集」 白石正明

    「ケアと編集」(白石正明著2025年4月岩波新書241p)を読みました。これまで読んでいたら「ケアをひらく」シリーズだったということがよくあった。「弱いロボット」(岡田美智男)「居るのはつらいよ」(東畑開人)「あらゆることは今起こる」(柴崎友香)「超人ナイチンゲール」(栗原康)他にもその「ケアをひらく」シリーズの編集者が書いた本です。(この度定年退職)「先」というものが残り少なくなってもついつい「将来のために」を考えてしまう思考の癖があるので著者の言葉が余計に身にしみる。「ケアというものは将来のために現在を犠牲にしたりしないのだ」問題を解決しようとずるのではなく「問題の外に出る」「もはやこれまでと諦めてうなだれた時に下にまったく違ったモノサシが落ちていたそれで測ってみたらあーらふしぎ自分は変わらなくてもモ...「ケアと編集」白石正明

  • 「崑崙奴(こんろんど)」 古泉迦十

    「崑崙奴」(古泉迦十著2024年11月海星社530p)を読みました。デビュー作を書いてからずっと潜っていてこの度24年目にして2作目を出しそれが推理作家協会賞になったという話題の作品です。舞台は唐親友の崔家の息子静(せい)が朝に家を出て、暗くなるまで帰って来ないという生活を続けているから来てくれと崔家の崑崙奴・磨勒(まろく)に請われて(崑崙奴は東南アジア系の召使い唐では外国人の召使いを抱えることはステイタスだった)浪人生の裴景(はいけい)は崔家にやって来た。そして静の行動の謎を解くために動くことになる。なぜか行動をともにすることになったのはトルコ人の賊曹(ぞくそう・警察官)の兜(とう)そのころ都では連続殺人事件が起こっていた。どの死体も腹部が切り開かれ内臓が取り出されているのだ。現場に内臓は残されていない...「崑崙奴(こんろんど)」古泉迦十

  • 「僕には鳥の言葉がわかる」河合隼雄学芸賞

    「僕には鳥の言葉がわかる」(2025年1月小学館262p)第13回河合隼雄学芸賞受賞表紙絵から野鳥観察が趣味の方の話かなと思ったらとんでもない世界的な発見をした学者の話です。人間だけが言葉を持っているなんてとんでもない。他の生き物たちも言葉を持っているのだ!と、鈴木さんは「動物言語学」を立ち上げた。雑誌に論文が載ったり学会で発表したり……の話にもわくわくしたけれど冬の軽井沢で持って行った食糧が尽きて炊いた素ご飯+水かけご飯+お湯かけご飯の3パターンで凌いでいたらキャベツを貰ったとかすっかり痩せて帰って来た鈴木さんに指導教官のヒロシ先生は毎日4時になると「トシタカ、ビールだ」と声を掛けてくれた。おかげで鈴木さんの体重は回復し夜型生活も朝型に戻すことができたとか鈴木さんが遭遇したあたたかさに魅了されました。シ...「僕には鳥の言葉がわかる」河合隼雄学芸賞

  • 「言葉の国のお菓子番 大切な場所」 ほしおさなえ

    「言葉の国のお菓子番大切な場所」(ほしおさなえ著2025年3月大和書房286p)を読みました。シリーズ6作目です。ベテランから大学生まで広い年齢が集う連句の会「ひとつばたご」は生前の祖母が参加していた会だった。祖母の逝去の挨拶に行って誘われるままに入会した一葉は祖母の後を継いで会のお菓子番(お菓子を買う係)をしている。ストーリーもだけれど登場人物たちのつくる連句が読みたくて読んでいる(定型詩が好きなので)ようなもの連句には複雑なルールがあるらしいけれど(覚えきれない)それが毎回丁寧に解説してあるので助かる。自転車で大きな月を追いかけて道ゆく人のハミングを聞くとか砂の降る近未来にも月のぼるとか旅終えし人々歩む花あかりとかが好きです。連句の会で知り合った人が写真が趣味で一葉の父と坂道写真集を出したりそれを文芸...「言葉の国のお菓子番大切な場所」ほしおさなえ

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