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本棚のすき間でつかまえて https://tsuccy1209.hatenablog.com/

読書感想ばかりを書いているブログです。

海外翻訳本を好んでよく読みます。科学・物理も時々やります。哲学も少しかじります。

tusccy1209
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2017/03/22

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  • 岩城けい「さようならオレンジ」

    「さよなうなら、オレンジ」を読みました。今作は公募による新人賞である太宰治賞を受賞した岩城けいさんのデビュー作。その後、単行本が筑摩書房より出版されると芥川賞の候補作となり、三島賞の候補作にもなった。この二賞は候補で終わったけれども――、大江健三郎さんによって選考される大江健三郎賞を受賞することとなっている。なので当時(2014年頃)には文学方面でけっこう話題になったような記憶がある。事実、その年の本屋大賞は4位になっているから結構売れたのではなかろうか。 読んでみると今作、日本ではこれまで書かれてこなかったタイプの小説かもしれないと思わされる。舞台はオーストラリア。アフリカから難民としてやっ…

  • プラトン「ラケス」 翻訳:三島輝夫

    プラトン著「ラケス」を読みました。ラケスとはアテナイ(ギリシアの都市)の将軍です。ある時にリュシコマスという人物が息子の教育方針についてラケスとニキアスという二人の将軍に問うんです。「どのように教育を行えば最もすぐれた人物になれるのか?」と。何故そんなことを戦いを専門とする将軍に聞くかと言うと――、リュシコマスは息子に重装武闘術を学ばせようと考えていて、それが有益がどうかを聞きたかったわけなんです。二人の意見は対立し――、ラケスは「そんなものは価値はない!」と言い、臆病者が学んだならば無謀になるだけと説きます。対してニキアスは戦いの際に有利になるし、それを取っ掛かりにして陣形・統帥など他のこと…

  • ボルミル・フラバル「あまりにも騒がしい孤独」 翻訳:石川達夫

    ボフミル・フラバル(1914-1997)はチェコの作家。若かりし頃は共産党の体制下(スターリン主義体制)で自由な出版が許されていなかった。1960年代に入りチェコスロバキアには自由化の兆しが見え始めるが1968年にソビエト軍の侵攻「プラハの春」によって再び出版物には規制がかけられた。フラバルの作品は検閲により満足な出版が出来ぬまま、地下出版や外国への亡命出版社によって刊行がされていたらしい。チェコの作家といえばミラン・クンデラが有名だけれども、クンデラはフランスに亡命しフランス語で作品を書いている。対してチェコで書き続けたフラバルは国内ではクンデラをしのぐ人気があり、世界的にも支持される作家の…

  • チェーホフ「ワーニャ伯父さん」 翻訳:小野理子

    今作「ワーニャ叔父さん」はチェーホフの作品のなかで四大戯曲と呼ばれるもののうちのひとつです。人間の誰しもが感じるであろういかんともしがたい思いを表現した作品。言葉にし難い感情が登場人物たちの心の微妙な動きによって読者に再認識されるというもの。この作品が支持されているということは、みんながそう思っているということだから、このテーマは自分だけの悩みではないことを知ることが出来たというのもひとつの収穫。そして人間とは何故こうも面倒くさいのかに気がつかされる作品。 ワーニャ叔父さんとは40代半ばの中年男性。独身で妻も子もなく田舎の屋敷を守るために働き続けてきた、どちらかというと報われない男です。その屋…

  • サミュエル・ベケット「ゴトーを待ちながら」 翻訳:安堂信也・高橋康也

    これはウラジミールとエストラゴンの二人が、ゴドーという人物が来るのを待つ話。二人はゴトーを待ちながらたわいのない話を繰り返している。舞台は木が一本だけ立っている田舎道。いつまで経ってもゴトーはやって来る様子はない。「立ち去ろうか」「いやゴトーを待たなければ」というやりとりを繰り返し、例えばいざ立ち去ろうと決めたとしても、二人はその場から動かない。これはすべてに何かの寓意が含まれているように思われる話です。けれども一向にそれが何なのかは解らない。とにかく不思議な作品。難しいことは書いていない。読んだ通りに頭のなかで想像が出来るし、そこではちゃんと一本のストーリーを作りあげることが出来る。でも振り…

  • アンドレ・ブルトン「シュルレアリスム宣言 溶ける魚」 翻訳:巖谷國士

    シュルレアリスムの生みの親であるアンドレ・ブルトン(1896-1966)が1924年に起草した今作「シュルレアリスム宣言」。これは新たな芸術、縛りつけられた魂の解放、既存の価値観からの脱却などを求めた宣言だが、この内容は当時の人たちには衝撃をもって受け止められ、議論が生まれ混乱を呼び起こしたようです。今現在を生きる我々にとっては前衛的な作品や魔術的な作品、幻想文学などなど、変革の先に生まれたものがひとつのジャンルとして確立しているのを知っているから、あまり不思議に思わないかもしれないが――、これを読めば間違いなくここら辺(今作辺り)にそれらの源流があることが解る。ブルトンがその後の文学にどのく…

  • ソール・ベロー「犠牲者」 翻訳:大橋吉之輔

    ユダヤ人であるレヴィンサールは、ユダヤ人であるがゆえに世間から偏見を持たれていた。ジュー(ユダヤ人=ジューイッシュの略)と呼ばれ、怒りっぽい、傷つけられると復讐する、金にうるさい、と世間から思われていた。時々「ジューのくせに」と理由もなく揶揄されることがあり、ユダヤ人であるがために何かとおかしな目で見られることがあるとレヴィンサールは感じていた。業界紙の編集として活躍するレヴィンサール。彼は下積みを重ね、これまでに実績を上げてきたこともあり、会社からはいなくてはならない存在として認められている。今現在籍をおいている会社は規模からいって望み通りというわけではない――、しかしその昔、職探しに苦労し…

  • アリス・ウォーカー「カラーパープル」 翻訳:柳沢由美子

    話題になることには、どんな意味があるのか? 黒人女性初のピュリッツァー受賞作品――、そのニュースがアメリカを駆け回った時に著者であるウォーカーは言っている。「黒人であること、女性であることに話題性が生まれる意味は何なのか?」と。というのも今作で描いているのは1900年代前半の黒人女性について。この時期、差別のヒエラルキーでは相当下に位置していた黒人女性を描いた話であり、内容はもちろん差別を問うものになっている。栄誉ある賞を受賞したのが黒人女性――、そこに話題性が生まれるということは「あいかわらず……」とウォーカーは言いたかったのでしょう。今作が描かれたのは1983年なので世間の空気は現在とは違…

  • ロベルト・ボラーニョ「ムッシュー・パン」 翻訳:松本健二

    とある詩人にあてた作品 図書館の新刊本コーナーで見つけた一冊。以前から気になっていたロベルト・ボラーニョが置いてあって……どれどれ、奥付を見てみると……発刊されたばかりではないか! やったー(古典をよく読む僕ですが、実は新しいものが好きなんです)。ということで、かっさらうように借りてきて他の本を押しのけて読んだ一冊。読後の感想はというと……あまりよく解らなかった。難しかったという訳ではない。何かを読み逃したという感じでもない。おおよその筋はつかめたような気はしている。でもこのプロットにして、このオチ……解ると言えば解るけど、そこまでの話ではなかったように思える。今作には「コレだ!」という何かを…

  • J.M.クッツェー「夷荻を待ちながら」 翻訳:土岐恒二

    冒頭のあらすじ 舞台は帝国領の辺境にある、とある城壁都市。主人公はその地で長らく民政官を務めていた初老の「私」。郊外には夷狄と呼ばれる土着の民族――、遊牧民、漁を生業にする種族、なにやら不明な蛮族などなどがいる。とにかく帝国の境目である辺境の地とは、中心都市と違って異文化との接触がすぐそばにあるところ。ある時に中央からひとりの軍人がやってくる。ジョル大佐と言われるその人は「夷狄が帝国に攻め入ろうとしているという情報を得た」という理由から、近辺に出没する夷狄を捕まえはじめる。そして大佐は連行してれきた夷狄に対して取り調べという名のもとの「拷問」をしはじめる。人権などは無視をして、とにかく痛めつけ…

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