桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「お洒落なものは何にもないけど、眠気覚ましの珈琲ぐらいならあるから」そう言って彼を招き入れたのは良いけど、よく考えたら部屋が散らかったまま・・・帰る早々財布がないことに焦って探しまくったから鞄の中身もぶちまけていた!自分でもその有様を見て唖然・・・でも西門さんはすぐ後ろにいて、私の頭の上からこの大惨事を眺めてた。「うわ・・・強盗でも入ったのか?」「うわあああぁっ///!!そうじゃないのよ、財布のことでテンパっ...
類が買って来てくれたのは、シンプルだけど着心地最高の上質なものだった。色はスカイブルーで今日の昼間の空のよう・・・フワリと広がるスカートは少し幼さを感じさせたが、つくしにはよく似合っていた。ドレッシングルームでそれに着替えて簡単にメイクし、髪を整えてから部屋に戻ると、類はその姿を見てニコリと笑った。「サイズ、間違ってなかったね」と。つくしは「すごく可愛いね~」と喜び、類の前で一回転し・・・「・・・きゃっ・・・...
やっと合コンが終わり、俺はすぐに店を出た。そしてさっさと帰ろうと思ったが、ここで女に囲まれて二次会への誘いが集中。そんなの冗談じゃねぇと思ったが、啓介の手前、怒鳴ることも出来ず・・・「ねぇ、西門さん♥カラオケ行かない?」「それよりさ、お洒落なBARで飲みませんか?」「家何処ですか~~~?私のマンション、ワリと近いんです~♪」「あんまり話せなかったので、今からが本番ってことでどうですかぁ?♥」そう言ってグイ...
つくしが目を覚ましたのは翌日の朝、9時だった。その時には微熱程度にまで下がっていたが身体が怠く、身体に力が入らない。しかも類の姿はなく、看護師にそれを聞くと・・・「類様でしたら今朝早くに戻られましたよ」「・・・また一晩中付き添わせたんですか・・・?」「また?」「あ・・・何でもないです。すみません、私も自宅に戻ります・・・どうしたらいいですか?」「牧野さんは今日1日ここでお休み下さいとのことです。あなたの会社には...
特に意味もなく聞いた「彼氏歴」・・・そうしたらまさかのバツイチで驚いた。と言うか、バツイチ同士で座ってるとか、マジ面白い。そんな事を思いながら次に聞いたのは「離婚理由」。それを言わなくても別にいいと思ったが、牧野はあっさり話してくれた。しかもその内容が・・・「私、男性が苦手なんですけど、それでもプロポーズしてくれた人がいたんです。勿論ちゃんと自分の事を伝えたし、そう言う・・・関係になりたくないってのも話し...
佐久間の嫌な笑いにビクッとしたつくしは、その時に吹いた強い風のせいで傘を落とした。それまでも部分的に濡れていたのに、防ぐものがなくなったらあっという間に髪はずぶ濡れ、服も透けてしまうほどになった。だがそんな事を言っている場合ではなく、佐久間はつくしを引っ張り、目の前のホテルに入ろうとした。「いやぁっ!!やめてください!」「雨宿りだよ」「タクシーって言ったじゃない!!」「え~、そうだっけ?」「ホント...
食事が終わったら珈琲とデザートタイム・・・そしてここからが合コン本番だと言われてドン引き。その時に啓介がトイレに行ったから追い掛けて、クソ文句を言った。「いい加減にしろよ・・・💢俺がこんなの大っ嫌いだって知ってるよな?」「え~~~、女好きじゃん?」「女が好きとか嫌いとかじゃねぇ💢合コンなんて性に合わねぇんだよ!それに俺が離婚したばかりだって知ってるだろうが!こんな場面を誰かに見られたらどうすんだよ!」「西...
つくしは痛む頭を抱えたまま、朝1番にシャワーを浴びた。そして昨日の事を思い出そうとするが、所々記憶が欠落している。でも思い出せたのはタクシーの中で、類に言われた言葉だった。『あんた、あのままだったら何されてたか判ってる?』『多分、酒に細工されたんだよ』そして、どうして花沢類がタクシーに乗っていたのかを聞いたはずだが、その辺りの記憶が曖昧・・・『アパートまであと少しだから頑張れ』『俺に凭れ掛かってもい...
啓介は1番を引いたらしい・・・俺とは真反対の席に座り、隣は全然知らねぇヤツ。こんな飲み会は大っ嫌いな俺だが、啓介の顔を潰すといけないと思い、渋々座ったが・・・やはり全然面白くない。俺の前の席は空いたまま、時間が来たからパーティー開始。まずは男の方からってことで自己紹介が始まった。啓介はチャラい感じで「文化系の仕事してて~」と職業を濁し、あとはW大卒とか、趣味がドライブとか適当な事を言っていた。2番目の男...
類に相談してから数日間、つくしは溜息しか出なかった。正直なところ自分だけで解決出来ることだったのに、わざと類に話してしまった・・・・・・認めたくないがそれが事実だ。そんな自分に嫌気が差し、自己嫌悪に陥っていた。「牧野さん、最近元気ないね・・・どうしたの?」「えっ?」顔を上げると、そこには佐久間の顔があり、必要以上に近よっていたので驚いた。慌てて椅子を引き、佐久間から遠離ると「なんでもないです」と両手を振っ...
土曜日になった。男に会うのにわざわざ服を考えたりはしないが、独りになったからって落ち込んでるように思われるのも癪に障る。だからTagliatoreのチェスターコートにワインカラーのハイネック、それにブラックジーンズで、ピアスはCELINE、時計はPatek Philippe。以前の俺と何の変わりもないことをアピールするような格好で玄関に向かった。「総二郎様、お出掛けでございますか?」「あぁ、志乃さんか・・・まぁな、ちょっと呼び出...
~~6年前・晩秋~~「・・・昨日さ・・・道明寺と別れちゃった」大学4年のつくしは笑いながらそう言った。それを聞いているのは花沢物産に勤務して1年目の類・・・場所は都内にある小さな喫茶店の窓際、1番隅の席。そこはつくしが長年バイトしている店で、その日はバイト最終日だった。明日からは本気で就職活動をするため、バイトは全部辞めることにしたのだった。なぜ大学4年のこの時期まで就活をしなかったのか・・・それは当時の恋人...
「ほんっーーーーーーとうに馬鹿だよね、あんた!」「そんなに大声で言う?ここ、社食だよ?」「何処で言おうと馬鹿なのは変わんないわよ!」「いいから早く食べなよ。時間無くなるよ」「・・・・・・つくし、あんた幾つになったのよ」「もうすぐ27歳だけど、なにか?」私が怒鳴られてるのは勤め先である岡田ライフネット(株)の社員食堂の隅っこ。そして大声出してるのは同僚の安部涼子・・・その理由は私の早すぎる離婚だ。私の名前は...
世間がイルミネーションで賑やかなクリスマスイブ・・・その日、東京では初雪が降った。クリスマスムードに雪が加わり、恋人たちはそれだけで気分があがるのだろう。手を繋ぎ、街を歩く連中の顔は寒さを感じさせないほどにこやかだった。そんな中、1人の男が人混みをかき分けて病院に向かっていた。その病院とは都内ではあるが千葉よりにある比較的大きな総合病院・・・そして走っているのは花沢類、28歳。花沢物産の後継者で、現在は...
「この大馬鹿者!何を考えてるんだ!💢」「こんなの末代までの恥ですよっ!!」「・・・そう怒るなって。だから言っただろう、俺の好きにさせろって」秋も深まった11月後半・・・口切りの茶事が終わってホッとひと息ついた宗家に激震が走った。それは親父とお袋の怒鳴り声で、怒鳴られてるのは俺。理由は・・・俺の離婚だ。俺の名前は西門総二郎。表千家西門流の次期家元で、現在27歳。英徳の幼稚舎から大学までを通い、その間遊びに遊ん...
5月も6月も穏やかに過ぎていき、7月の七夕の茶会ではつくしと一緒に笹竹の準備をし、それには2人の短冊を同じ場所に吊した。婆様も短冊を持って来たが、それには『曾孫に会えますように』なんて書かれていて、つくしは真っ赤・・・親父は苦笑いだったが嬉しそうにそれを客に見えるところに飾った。そしてつくしに向かってひと言・・・「今回はつくしさんも総二郎が亭主をする茶席にお入り」「えっ?!私がですか?でも・・・」「いいん...
「・・・よし、こんなもんかなぁ~」「つくし、準備出来た?無理しないでよ?」「大丈夫だってば。じゃあ、これだけ運んでもらえればいいと思う~」「了解。あとは業者に任せるからつくしは車に行くよ」「は~~~い!」式が終わった翌週は私の荷物を花沢家に移動・・・つまり、引っ越しだった。それまでも殆ど類の部屋にお泊まりしてたんだけど、思い掛けない妊娠と急な挙式の準備で荷物の移動が後回しだったから。でもこのマンションの...
野点は予定通り始まり、俺はいつもより少し緊張しながら茶を点てた。目の前には今日もお嬢がズラッと並び、お袋の席がねぇから考三郎のところに婦人会の連中が集中・・・親父の席は相変わらず後援会の爺さん達が並び、昨年暮れの騒ぎを忘れさせるほどの賑わいだ。桜の花も7分咲きで、少し風が吹けば舞い散る花びら・・・それに見惚れてる客も多かった。「総二郎様、お湯を替えましょうか」「あぁ、そうだな・・・頼む」普段なら黙って交換...
私の最終出勤日は予定よりも少し早い12月20日になった。その日の終礼にはなんと類が秘書室に顔を出し、私の代わりに挨拶・・・そうすることで嫌味を言われないようにって配慮だったらしく、おかげで安藤さん達からは何も言われなかった。しかも「お世話になりましたギフト」はPARKER SONNETの名入れ万年筆、1本25000円。それに女性にはDiorのシャワージェル&ボディソープ、男性には革張りのシステム手帳・・・当然買ったのは類...
いよいよ週末は桜の茶会・・・あと3日もあるのに私はドキドキが止まらなかった。そのせいでお稽古も上手くいかず、お茶碗を落としそうになる始末・・・それを見て崇子さんが苦笑いし、「少し休憩しましょうか」て・・・それを聞いても「頑張ります!」と言う私に、「今のままじゃお稽古にもならないわ」って厳しい言葉を出された。それも納得。自分でもそう思うんだもん・・・でも、何かしないと落ち着かなくてどんどん焦っていった。気晴らし...
お婆様の宝物を見付けてから1ヶ月後、類が私の両親と会うことになった。両親は現在東京でもド田舎の方に住んでいで、かなり古い木造一軒家・・・しかも部屋は6畳二間しかなく、応接間なんてないからゴチャゴチャした居間で話をすることに。そんな家の前に外車が停まり、居間ではハイブランドのスーツを着た類が、穴のあいた座布団に正座してるのはかなりシュールだった。そして私との事を話すときも両親と弟はポカン・・・「花沢物産っ...
すごく近くにつくしの部屋があるのに、全くと言っていいほど2人の時間は取れなかった。それでもあいつが笑ってるのを遠目で見られるから安心で・・・・・・「ホントか?実はすげぇイラッとしてるだろ、総兄」「五月蠅い💢!!自分で自分に言い聞かせてるんだからお前がガタガタ言うな💢」「あっはは!あっ、つくし姉ちゃん、茶道会館に行くなら一緒に行こうぜ~~」「・・・・・・💢💢!!」「あら、考三郎君、今日も寒いね~~♪じゃあ資料を探し...
まさかの「植物の種」・・・それには茫然としてしまった。問題はなんの種かと言うこと。そこは自称・植物博士の西門さんがいたから、彼が調べることになったんだけど、すぐに閃いたのかスマホで検索開始。そしてあっという間にそれがハナミズキの種だと言うことが判った。「ハナミズキの種?」「木にも種があるの?」「・・・つくしちゃん、当たり前だろ。これ、小学生でも知ってるぞ?ケヤキのような大きな木でも最初は種子・・・所謂種だ...
「それでは行ってきますね。帰りは夕食も食べて帰るから遅くなるわ」「畏まりました。でも大奥様、裏口から出なくても・・・」「志乃さん、何か要る物ありますか?」「牧野様、特にはありませんわ。気を付けていってらっしゃいませ・・・と言うか、車で行かないのですか?」「大通りでタクシーを拾うので心配いらないわ」「私もいるんで大丈夫ですよ~」2月13日、私達は久しぶりに外出した。行き先は崇子さんのお友達が出品すると言う...
今まで2つの絵が並んで飾られていたから気にしなかったけど、薄らと見えた壁の線。それは近寄らないと判らないぐらいで、額縁を退けると金色の鍵穴があった。それも1㎝ぐらいだから、隠そうと思えば絵じゃなくても簡単に誤魔化せるような感じだ。つくしに持って来てもらった鍵をこの穴に差すとピッタリ一致し、回すと小さくカチッと音がした。でも取っ手がないから、その鍵が付いた状態で軽く引くと・・・「うわっ!本当に開いた!...
宗家に入るとまずは崇子さんと一緒に家元への挨拶。そして志乃さんに案内されて、母屋の一室に向かった。そこは6畳5部屋がコの字型に繫がってる棟で、私と崇子さんの部屋とお稽古の場らしい。小さなキッチンがあるだけだがら、お茶ぐらいは煎れられるけど料理は出来ない。でも自分達で洗濯が出来るようにと、中庭にはそれが干せるようになっていた。「本当にこちらでよろしいのですか、大奥様」志乃さんが申し訳なさそうに崇子さ...
「おい・・・・・・これ、純金の鍵じゃね?」「ホントだ・・・・・・」「純金・・・・・・鍵が純金なの?!!」汚れたタオルの中から出てきたのは金色の鍵、そして1枚のメモがビニール袋に入れられていた。それを広げると、『330 月夜橋』・・・それを見てキョトン。月夜橋なんて聞いた事がなくて、急いで調べたら山形県にあるみたいだったけど、その場所と花沢、もしくはお婆様とはなんの関係もなさそうだった。まさかその橋に行けと?そう思って詳し...
俺達が京都から帰った3日の夜、俺は婆様の家に言ってまずは爺様の言葉を伝えた。そうしたら申し訳なさそうに俯き、「でも・・・」と繰り返していた。「なにも復縁するワケではありませんので・・・いや、俺としては復縁も全然OKですけど」「何言ってるの、そんな事は出来ませんよ。私の我が儘で東京に戻らせていただいたのですからね」「でも、お互いに想い合ってるのはバレバレですよ?」「・・・確かに嫌いなワケじゃないけど、そういう...
「それでは行ってきますわ!類様、期待してお待ち下さいね!」「・・・行ってらっしゃい」「つくしちゃん、ピカピカになれよ~~~~♪」「洗車じゃないんだからっ💢!!」「牧野様、行きますよっ!!」加代の暴走に付き合わされて、つくしはエステに行ってしまった・・・が、それはそれで計画通りなので、今度は急いで坂本のところに行き、大小のスコップとエッジナイフを借りることにした。当然この男は驚いていたけど、「この事は他言無...
2日の夕方だったが、そこには初詣に来ている人達がチラホラといた。だが今日は本堂には行かずに、その奥にある墓地へと向かった。西門代々の墓はその墓地の1番西側にあり、少しばかり広めの・・・いや、かなり大きな墓だ。だがそれは土地の事だけで、墓自体は普通で特別なものではない。墓の入り口でバケツと柄杓を借り、密かに準備していた線香を取り出した。つくしは「いつの間に?」と驚いたが、もともと京都に行くなら、こいつを...
「ハナミズキはずっとありましたよ。大奥様が苗木から育てておられましたから」「「「お婆様が?!」」」「・・・ど、どうしたんですか、お坊ちゃま・・・」坂本の言葉につくしと総二郎と俺とで絶叫!でもそれが過去形だったので違う意味で焦った。それを聞くと、どうやらハナミズキは今から10年ぐらい前に枯れてしまい、根元から切り倒したのだとか・・・そう言われても全然覚えてなくて、「どの辺りに?」と言うと・・・「西側の庭のガゼボ...
「もう少し崇子との暮らしぶりを教えてくれないか?」そう言われてつくしはニコッと笑い、「はい!」と元気よく答えた。そしてゆっくりとした口調で、婆様との日常を爺様に話していた。朝起きるのは婆様の方が早く、毎日美味しい味噌汁と作ってもらっていること。つくしが洗濯物をしているときには婆様が掃除をしていること。生け花を教えてもらっているので、その花を一緒に買いに行くこと。婆様に手料理を教えてもらい、着付けも...
その翌週末、類のお母さんはフランスに戻るために羽田に向かい、私と類がそれを見送ることになった。それはいいんだけど、空港でも一際目立つ親子・・・そこに立つ私の惨めなこと!通り過ぎる人達がお母さんと類を見ながら「モデルさん?」なんて言うんだけど、本当にその通り・・・そして私は付き人のような存在だろうと自分でも思った。「それじゃあ、元気でね」「・・・父さんによろしく。日本の事は任せてって話しといて」「うふふ、判...
挨拶が終わると食事が運ばれて来た。勿論正月らしい、そして京都らしい料理ばかり・・・つくしは爺様の前でも「美味しそう~」なんて声を漏らし、嬉しそうに出された小鉢を眺めていた。そんなところも横目で見ている爺様・・・だが、その目は恐ろしいわけじゃなく、むしろ興味深そうだった。つくしは昨日も宗家で食ってるので作法にはそこまで困らず、箸使いも美しく、和食のマナーは殆ど出来ていた。しかも俺がきつめに結んだ帯が功を奏...
「牧野様、本当にお先に行かれるのですか?」「はい!加代さん、いろいろとご用意いただき、ありがとうございました///!では、行ってきます!」「・・・行ってらっしゃいませ・・・」新しく用意してもらったッスーツに着替え、加代さんに見送られて花沢家を出たのは朝の7時45分・・・このまま会社に行けば通常より1時間近く早いけど、それでも構わないのでさっさと花沢の車に乗り込んだ。そして暫し休息・・・身体のあちこちが痛くて、朝...
京都に着いたらすぐにタクシーに乗って一乗寺へと向かった。正月だけあって大渋滞だし人は多いし・・・その時間がすでに12時直前で、俺は森田さんに電話をして遅れることを伝えた。そうしたら昼食を待つと言われたので、運転手を急かして何とか12時30分には爺様の屋敷に到着。つくしはその大きく古い木門と豪勢な門松を見て「はぁ~」と溜息・・・別邸だと話していたから、これほど大きいとは思わなかったのだろう。その門の横のイ...
ニコニコしながら私の話を聞いていたのに、急に真顔で「類、入って来たら?」って・・・それに驚いて振り向いたら、半分開いてたドアの向こうから類が顔を出した。そしてスタスタと私の横に来て、「長すぎない?」と口を尖らせて・・・「あら、女の話は長いものよ。そんな事も知らないの?」「知ってるけど、初対面でそこまで話す事ある?」「初対面だから話すことが山ほどあるんじゃない。馬鹿ねぇ~~」「いいからもうつくしを返して・・...
「私はね・・・美和子さんの教育に失敗した人間なの。そんな私が大きな顔して宗家に戻れるかしら・・・。それに、やっぱりあの人が許さないと思うわ」あの人とは京都にいる別れた旦那様のことだ。自分の我が儘で西門家を出たんだって聞いてるから、その思いは当然だろう。でも、紅葉の茶会の時を思い返せば、誰も崇子さんのことを悪い風に思ってないような気がしたし、むしろ喜んでいた人が多いように感じた。だから、表に出なければそれ...
「類、牧野さんと2人で話したいんだけど、あなたは先にお部屋に戻ってくれない?」その瞬間、私の心臓が凍り付いた。類も驚いたようで、「なんで?」って・・・すっごく不満そうに珈琲カップを置いた。それを見ても副社長はお茶目な顔で「女同士の話がしたいのよ」って・・・・・・いや、そんなの私は苦手ですけど?!って叫びそうになったけど、グッと堪えた。だって「女」の括りが違うと思うもん!!トップレディと下町の小娘の差でしょ...
14時になって食事会も終わりに近付いた頃、崇子さんが私に眼で合図して、持って来た包みを家元に差し出した。それを見てキョトンとしたのは男性陣で、総二郎が「それは何ですか?」と聞いたから・・・「これは昨日、つくしちゃんが作ったお菓子ですよ」「ほぉ・・・牧野さんが作ってくれたのかね?」「へぇ!姉ちゃん、家庭的~!」「・・・まさか、お茶菓子?」「あ///・・・いえ、そんな大した物ではなくて・・・みかん狩りに行って来たので、...
すごく大雑把に類から説明を聞き、あのハワイの部屋の交換が副社長の仕業だったなんて・・・それにガックリしていると、類が腕を差し出して待ってるのに気が付いた。それを見てもどうしていいのやら・・・なんて考えていたら、加代さんの「奥様がお待ちですよ」って声が聞こえて、仕方なく立ち上がった。そして類の腕を持ち、何故か自宅なのにエスコートされてダイニングへ・・・そうしたら昼間とは全然違う副社長がいて、その姿にドン引き...
元旦の朝7時、親父の茶室で大福茶をいただいた。本来ならもう少し早い時間にやるのだが、最近ではこの時間に行っている。除夜釜が薄茶だったのに対し、大福茶は濃茶。そして一緒に出されたのは右が白、左が紅で真ん中には金箔が乗せられている求肥饅頭・・・如何にも目出度いって感じの茶菓子だった。家族だけだから正装でもなく、男たちは比較的楽な着物。つくしと婆様は朝イチだから色無地の着物で、親父の茶席を見守っていた。1...
母さんに何もかもがバレていたとは・・・しかもそれをこんなにも楽しんでいることに安心というか、ガックリしたというか・・・ラッキーなのはお婆様のネックレスについては何も気付いてないことだった。そして俺と話し合った後はいつもの副社長に戻って役員会議や社内巡回などを行い、ランチは役員フロアで常務や各部の部長達が集まって賑やかに行われた。午後には精力的に取引先に出向き、戻ってきたら各事業の進捗具合を総チェック・・・...
除夜の鐘が鳴り続ける中、時間は0時を回った。それまで起きていた親父が「新年、おめでとう」と言い、俺達は低頭して同じ言葉を出した。でもこれは朝になれば大福茶としての行事の時、正式に親父が挨拶するから超簡単に・・・親父も特別改まった様子もなく、ここらで茶席を終えて自分の部屋に戻った。考三郎は久しぶりに祥兄と飲むらしく、2人は楽しそうに母屋へと続く廊下を歩いていった。俺達もその後に続くんだけど、ほんの少し...
それからも数日間、私達はネックレスのことよりも仕事をしていた。と言うか・・・類が忙しすぎてマトモに話す事も出来なかった。理由は佐藤さんが辞めた翌日、突然フランスに滞在している類のお母さん・・・つまり花沢物産副社長が、3日後に帰国するって聞いたから。だから最後のお宝を見付けるとかってよりも、類が仕事を片付けないと不味い・・・そのぐらい実は仕事が滞っていたらしい。しかも第二秘書が辞めたばかりだから藤本さんしか...
除夜釜と聞いたからもっと堅苦しいものと思っていたけど、今日はそういうのじゃないみたい。隣の崇子さんに聞くと、「今日は普通のお食事よ」と言って笑っていた。ただ、食事の後には家元のお茶をいただくのだそう・・・その時には作法を見様見真似ですればいいと言われた。家元もお疲れのご様子だけど、表情は穏やか・・・私にも「今日はあまり気にせず、お食べなさい」と言って下さった。だから隣の崇子さん、向かいの総二郎をお手本に...
佐藤からダイヤを取り戻してから1週間。この間に佐藤は退職願いを出し、それが受理されてあいつの退職日が8月末だと決まった。それまでの約1ヶ月半は有休消化で、もう来週からは出勤もしない。第二秘書だから引き継ぎもないし、送別会は本人の希望でやらないことになった。そしてこいつとつくしの事が少し噂になってたので、彼女は女子社員から退職理由を色々聞かれたらしいのだが、それには佐藤本人が「新しい仕事に就きたいの...
つくしを迎えに行くように・・・そう言われて俺だけが中に入り、つくしの部屋に入ると、そこには上品な訪問着を着たつくしが立っていた。除夜釜には相応しい落ち着いた色合いと、でもその中に華やかさと・・・しっとりとした美しさに目を奪われた俺は暫く時が止まったかのような錯覚を覚えたほどだ。地色は錆御納戸(さびおなんど)と言って、くすんだ深い緑がかった青色の吉澤友禅。それに豪華な金彩加工がふんだんに施されていて、上前...
「それでは皆さん!総ての宝石が集まったことを祝して・・・」「「「「乾杯~~~~~~っ!!!!」」」」「・・・・・・・・・・・・」←類それはダイヤを取り戻した日の夜、つくしのマンションでの祝賀会のこと・・・何故か総二郎の音頭で始まり、あきらがカクテルを作ってた。当然藤本も来ていて、つくしと一緒にデリバリーの料理を並べ中・・・そして俺のすぐ横のテーブルには戦利品というか、戻ってきたネックレスが5つ、綺麗に並べられていた。そ...
「こんなに沢山のみかん・・・どうするつもりなの?」「・・・・・・ご近所に配ります?」「少し宗家にも持っていきましょうか・・・」崇子さんの家の前まで入らない車だから、宗家の前の道に停め、そこまで出て来た崇子さんに呆れられた。仕方なくみかんが詰まった大きな布袋を5つだけ降ろし、残りは宗家に持っていくことに・・・総二郎が正門からお弟子さんを呼ぶと、数人の男性が出てきてくれて、崇子さんの家までみかんを運んでくれた。そし...
佐藤の説明を聞き終えた俺達は、次に自分達の作戦を話すことになった。徳川のことは教えたので、次に前田のサファイヤについて。前田のパーティーに潜入したのは俺とつくしの両方。つくしには司のパートナーとして夫人に接触し、その時に前田の家でのティーパーティーを約束した。そこでつくしが夫人にサファイヤのネックレスを見たいとお強請りし、見せてもらった時に隙を見てイミテーションと交換・・・「イミテーション?もしかし...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。******************************「ねぇ、総二郎、オリオン座って・・・」「いつまで星の話だ?」「えっ///・・・」お風呂の中で総二郎に後ろから抱き締められるように座り、右手は下の方に、左手は胸を弄くられ・・・それだけでも声が出そうになって必死に我慢した。しかも右耳の...
「知った風な口をきくな!!大人に痛めつけられて育った俺の苦しみも知らないクセに!!」そう言って佐藤がつくしに手を伸ばした瞬間、俺はテーブルを飛び越えて2人の間に入った!そしてすぐにつくしを抱き締め、クルッと半回転して佐藤を躱し、彼女を守った。でも同時に何かが倒れる音がして、驚いて振り返ったら・・・藤本が倒れてた。どうやらつくしに襲いかかった佐藤が俺の飛び出しで体勢を崩し、藤本を押し倒したよう・・・さっき...
デザートのお皿を持った総二郎が立ち上がり、私の後ろに座った・・・それだけでも嫌な予感がするのに、何をする気かと思って振り向いた瞬間、両手を回してきて私の身体をホールド!しかも結構強い力で私の両腕を押さえてるから、手が動かし難くて・・・少し頑張れば動くんだろうけど、ここは総二郎に従うべき?と思ってそのまま抵抗しなかった。そうしたら私の右肩に顎を乗せ、アイスを「食べさせてやるな♪」って嬉しそうに・・・「あ、あの...
「もしかして・・・そんな毛利に真実を話されたら困ると考えていたのは・・・佐藤、お前じゃないの?」「なるほど・・・毛利さんから5つのネックレスの事を聞き、そのメンバーも喋らせ、最終的には毛利さんを・・・ってことですか」「うそっ!佐藤さん、本当なんですか?ホントにそんな事をしたんですか?!」既に佐藤は諦めた感じがあった。自暴自棄というか、自分の未来が崩れ落ちたと言うか・・・そんな心のうちが読み取れたのは、こいつが自...
総二郎が特別に予約してくれたみかん農園は伊豆の国市にあり、お昼ご飯を食べたところからそんなに離れていなかった。だから14時には到着し、そこで農園のおじさんに出迎えられ、さっそくみかんの木の近くまで案内してもらった。どうやら予約の時に「必要なものを全部用意して欲しい」と頼んだらしく、鋏と軍手を手渡された。しかも長靴まで・・・それを見て総二郎が「靴も?!」って言ってたけど、勿論木の下は地面・・・しかも少し湿...
つくしが録音した音声を聞いても、佐藤は納得しようとはしなかった。それどころか自分の首を押さえて・・・「あいつと俺に血縁関係なんてない!あいつはこの20年間、俺をずっと疎ましく思って・・・子供の時には容赦なく暴行をしたんだ!その証拠がこの首の傷跡だ!庭で遊んでいた時、ほんの少し車に傷が付いたってだけで・・・それだけで俺を何度も殴り、転んだ拍子に生け垣に突っ込んで首と背中に大怪我したんだ・・・!一応病院には行った...
クリスマスが終わって、26日には居間に置いてたツリーを片付けた。昨日までとは違って気温も上がり、今日は凄くいいお天気・・・予報では明日も明後日も晴れだった。「つくしちゃん、雪が積もらなくて良かったわねぇ~」「本当ですよね~、雪だとお買い物大変だし」「あら、そうじゃないわよ・・・明日、お出掛けでしょう?」「・・・///・・・はぁ・・・まぁ、そうなんですけど、本当にいいんでしょうか・・・宗家は行事が沢山あるんじゃないです...
「この野郎!やっぱり俺を騙してたのか!!」「きゃああああぁっ!!」「佐藤君、やめなさい!!」この俺がいる前で佐藤が立ち上がり、つくしに向かって拳を振り上げた。勿論こんな事を許すはずがなく、佐藤の身体が応接室のテーブルに乗りかかったところでその腕を掴んだ。そして俺の方に顔を向けさせ、逆に俺の右ストレートを喰らわせた!興奮しすぎて隙だらけの佐藤は避ける事もせず、それを顔面に受けて吹っ飛び、止めようとし...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...
遊園地とは文字の如く、楽しく遊べるように、いろいろな遊具やアトラクション、設備を備えた施設。アトラクションの設置に関係なく遊園地と呼ばれている公園もあるんだけど、私の思う遊園地は「乗り物」があること!それは滑り台、ブランコじゃなく、もっとハードでスピード感のあるもの・・・まさか、本当にそれに乗れる日が来るとは・・・っ!!「・・・・・・うっ・・・うっ・・・えぐっ!」「ちょっと総二郎・・・この子、泣いてるんだけど」「悪い...
「ふああああぁ~~~~~~~~!よく寝たぁ~~~~~~~~~~!!」大きく背伸びをして起きたのは6時30分。総二郎がいないおかげで久しぶりに爆睡でき、すっごく気持ちの良い朝だった。カーテンを開けると清々しい朝陽が目に入る・・・「今日は快晴だな~」と呟きながらベッドを降りて服を着替えた。そしてドアを開けて隣の部屋を覗くと・・・ベッドで寝ているのは美作さん1人。花沢さんはソファーで丸くなり、道明寺さんと総二...
私を無視して決められた翌日の予定・・・まさかの、道明寺さん達とのお出掛け?!結婚式の翌日に団体行動?!「ちょっと待ってよ、何処に行くの?」「つくし、行き先が問題じゃねぇよ💢俺達は2人きりでここで過ごし、明日の夜までマッタリするんだから!そうじゃないと明後日からは仕事なんだぞ?これまでの疲れを癒やさないとダメだろ?」「確かに疲れてるかも・・・行き先次第だけど・・・」「そうだなぁ、何処に行きたい?あきら」「俺は...
最後まであきらが仕切った二次会終了・・・考三郎はそれからまた飲みに行くと言い、女達を連れて何処かに消えた。従姉妹・従兄弟達はそれぞれの迎えの車であっさり帰宅。涼子達はつくしよりも景品に浮かれまくり、万歳しながらタクシーに乗った。港に残されたのは俺達5人・・・今日は宗家に戻らず、Tホテルのスイートを予約していたので、そこに向かうと言うと、あきらが「ハネムーンは?」と聞いてきた。答えは・・・「今すぐ旅行には行か...