桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「いらっしゃいませ、西門様。ご案内申し上げます」このホテルの上層階にある展望レストラン・・・そこの特別席は一般のフロアとは別になっていて、ウンザリするほど豪華で広々とした部屋だった。そこに2人分の席が用意され、天井にはシャンデリア、部屋の隅には薔薇のアレンジメントと大人っぽいクリスマスツリー、カーテンが全開で東京湾が一望できた。椅子もテーブルも見るからに極上品・・・お皿もカトラリーもキラキラで、変に緊張...
火曜日の10時・・・予定通り俺は「急遽美作商事に行く」と言い、藤本を連れて執務室を出て行った。・・・と言うのは表向きで、執務室から休憩室を通り過ぎ、いつもの俺専用応接室で待機。当然藤本はその話を秘書室でしており、俺と一緒に外出すると言って社用車のキーも持ちだした状態で応接室に居た。その時に藤本はつくしに資料探しを命じて、つくしも資料室に行ったフリをしてこの部屋に来ていた。この外出の予定時間は1時間。つまり...
家元夫人と伽耶さんがいないと判っていても、正門の前に立つのは憚られる。だから脇道を出た所で待ってると、1台のタクシーがやって来て、門の前で停まった。誰かが降りてくるのかと思って隠れたけど、どうやら今からお客さんを乗せるよう・・・もしかして家元かな?って思ったけど、家元なら宗家の車で出掛けるはず。だから西門に来ていたお客さんが帰るのかと思い、尚更引っ込んだ。そうしたら門の向こうから出て来たのは若い男性・...
月曜日・・・私はクタクタ状態で出勤した。何故なら、類が土曜日から泊まっていたから・・・・・・1度許したら容赦なくなり、日曜日は一歩も外に出ることなく、部屋で襲われまくった。そして言ったのは、「洗濯機、やっぱり業務用にしたら良かったんじゃないの?」・・・確かに日曜日の朝からシーツを2枚洗い、真夜中に類が帰ったあとも洗濯機の準備をした。それを洗ったのは今朝で、サンルームにはシーツが4枚も・・・病院か保育園か!ってぐら...
あきらと類が帰った後、ズキズキする頭を抱えたまま仕事をした。それは殆どが年末挨拶の客の相手・・・親父と考と一緒に並んで、もう何組の客と話したか判りゃしない。その中にはさり気なく西條の話をするヤツも居て、その度に「ご心配かけます」とだけ返していた。伽耶のことが報道された時につくしの名前は出なかったが、『知人女性を誘拐監禁して危害を加え』とあったので、その知人女性と俺の関係を探るヤツも・・・それには親父が「...
早めにランチを済ませ、つくしを連れて古い都営住宅に来たのは13時過ぎだった。そこは5階建て・30世帯が入居できる建物で、全部で5棟あった。俺が聞けたのはこの町の都営住宅だと言うことだけで、何棟の何号室かなんて事は判らない。しかも住んでいたのは毛利君子だろうけど、相手の男の名前も知らない。ただ、兄が養子に迎えたの言うのだから「佐藤」という名前の男だろうと言う事ぐらい・・・そんな程度しか情報がないのに、...
テーブルの上の料理は殆どなくなった。そしてお約束のデザートは私も用意していたけど、総二郎達も買って来てくれたから、小さなケーキが沢山並んだ。それを食べるのは勿論私が中心で・・・でも私が作ったガトーショコラも3人が美味しそうに食べてくれた。それが終わった頃に美作さんが目で合図したかと思うと、花沢類が小さなバッグからガサゴソと何かを取り出した。それは美作さんも同じで、私がキョトンとしてると・・・「はい、牧野...
その日の夜、俺は再び神崎に電話をした。用件は「もう少し詳しく毛利吉弘の事を聞きたい」と言うこと・・・・・・まだ加代には内緒にして欲しいと付け加えて。もう彼は花沢の職員じゃないし、頻繁に連絡を取っているわけじゃない。だから『それは構いませんが・・・』と些か不審がっていたので、この時には俺が調べている本当の理由を教えることにした。お婆様の葬儀の日に盗まれたネックレスのことそれを部屋から持ち出した俺が襲われたこ...
「つくしちゃん、その人達何歳だっけ?」「やだ、お婆ちゃん。総二郎と同じ歳ですから28・・・誕生日まだだから27歳ですよ」「あぁ、そうだわね!じゃあお酒も飲むわねぇ~~、急いで注文する?」「自分達が飲みたい物を買って来ますよ、きっと!それよりも新しいお箸ってありましたっけ?」「それなら食器棚の右端の引き出しにあるわ」「あ、ハンガーも出しておかなきゃ、コートが掛けられないかも!」これから美作さんと花沢類...
木曜日、朝礼の時から佐藤さんは私の事をガン見してる。でもそれにはすぐに反応せずに、午前中は会議室で、午後に行われる会議のセッティングをしていた。今日は本社役員と大阪、福岡、札幌にある関連会社との合同Web会議・・・それ専用のパソコンと、正面にはモニターにスピーカーにマイク。これの接続方法は聞いたんだけど、難しくて今日もこんがらがってた。当然のように誰かに助けてもらわないといけないんだけど、今の時点で手の...
24日のクリスマスイブ・・・この日も夕方まで仕事の予定だった。その仕事も年末年始の行事や初釜の準備が殆どで、生徒の大半はもう稽古納めをしている。だからそこまで忙しいわけじゃなく、事務的な事が多かった。しかもお袋が不在だから、何故か婦人会のアレコレを俺が代行することに・・・・・・とは言え、観劇や食事会に付き合うわけではなく、時々行っていた婦人会の茶話会に出るぐらい。そして今日はそのクリスマス茶会・・・茶道にもク...
俺が帰宅したのは20時で、その頃にはつくしは加代と食事を済ませ、リビングで少々ぐったりしていた。聞けば今日のディナーはフレンチで、久しぶりのフルコース。でもつくしは殆どマナーを忘れていたらしく、カトラリーもマトモに使えずドジを連発し、加代から「もっと頻繁においでなさいませ!」と怒られたらしい。俺にとっては嬉しいことだけど、つくしにとっては地獄・・・「お肉の味が判んなかった」って真っ青な顔してたから笑...
『お久しぶりです・・・総二郎様』その声を聞いて深いため息を1つ・・・一体今頃なんの話があるのかと、俺はスマホを耳に当てたままベッドに倒れ込んだ。しかもどう答えいいのか判らない。お元気でしたか・・・なんてのは嫌味だろう。何か用ですか・・・そう言っても良かったが、そんな事は聞きたくもない。掛けてくるな!・・・これが本心だが、あんな弱々しい声を聞かされたら怒鳴ることも出来ない。しかもこいつは間違いなく起訴される・・・前科...
つくしからの報告は22時だった。今日はランチだけで夕食は自分1人でマンションで食べたって・・・それを聞いてホッとした。何故報告が遅くなったのかと言えば、俺の方が午後からの仕事が(怒りの為に)進まず、残業になったから・・・それを言うと、『でも顔には出てなかったよ♪』って褒めてくれた。「つくしはすごく動揺していたけどね・・・」『あはは!焦っちゃって、類をランチに誘ったりして、馬鹿だよね~』「てか、行かせたくなか...
12月22日・・・私は崇子さんと一緒に街の中を歩いてた。何処を見てもクリスマスイルミネーションで、それを見ながら「可愛いわねぇ」「あれ、素敵ですね」って言葉ばっかり・・・そしてとあるお店に行くと、「こんにちは~」と言って中に入った。それは私と仲良くしてくれた、小さな本屋のおばちゃんのお店だ。「いらっしゃ・・・・・・まぁ、牧野さん?!牧野さんじゃないの!」「あはは!奥さん、お元気そうで~」「あなた、今は北海道じ...
俺がアレキサンドライトを持っているかどうか・・・つくしに頼んだのはそれだった。でもすぐに判るのは逆に怪しまれるから、3日間は「調査中」にすることを決めた。「で、どうやって聞いたことにするの?」『牧野さんは自分が宝石に興味がないって話したんですよね?と言う事は、専務から宝石の話を出した方がよくないですか?』「・・・でも牧野は調査依頼されてるから、聞いてもおかしくないよね?」「そうだなぁ・・・でも自分から聞き...
伽耶の事が実名でテレビ報道されたのは事件から1週間経ってからだった。事件の報道がされる場合とされない場合の違いに明確な基準はないが、重大事件や社会的地位が高い人間の場合は報道される可能性が高くなる。犯罪と一口に言っても軽犯罪から殺人など様々で、つくしの場合は誘拐致傷だからどっちかっていうと重い犯罪だ。だからといって報道されるとは限らなかったが、雇った男達に前科があり、そのうちの1人が執行猶予中だっ...
「よく聞いてないんですけど、お知り合いが結婚するからお祝いに・・・みたいなこと言ってましたよ」「やっぱりそうなんだね・・・」「でもスケジュールに入れてなかったので、今更会社に言えないって言ってました。でも専務ですし、跡取り息子ですし、誰も文句言わないだろうって思うんですけどねぇ。そうしたら藤本さんが日帰りなら何とか誤魔化すって言ってくれたんだそうです。あ!絶対に内緒ですよ?藤本さん、私の教育係なので怒ら...
お袋が宗家を出て行く日・・・朝早くに仏壇の前で手を合わせていた。それは自分のやらかした事を詫びていたようにも見えたが・・・・・・親父も俺も何も言わなかった。国内にあるものなら取り戻すことは出来るだろうが、その理由を言うことも恥だ。だから親父は「自分があの世に行った時、先代には直接詫びよう」・・・なんて言いながら肩を落としていた。志乃さんはお袋が嫁いで来た時からの仲だから、少し冷めた感情の俺達よりは悲しそうにし...
「じゃあ単刀直入に聞くけど、専務・・・大切にしてる宝石の話をしたことはない?」いきなり核心ついてきたーーーーーっ!!でも知らんふりするのよ、つくしーーーっ!!道理で話をするのが五月蠅い居酒屋・・・こんな話、静かなレストランじゃ出来ないもんね?私は顔に出さないように注意して、「宝石なんて知りませんけど?」ってケロッとした顔して答えた。そしてテーブルに置かれた焼き鳥をパクリ・・・あんまり美味しいって思えないの...
「今から色々と説明することがあります。家元には話しているからご安心下さい」「・・・・・・そう、判ったわ」「総二郎?」「以前伝えてあっただろ?宗家であったゴタゴタが解決したから話すだけだ、心配ねぇよ」崇子さんは急に暗い顔になり、総二郎も真剣な表情・・・私は退院の僅かな荷物を持って、総二郎に支えられて居間に入った。そこで崇子さんも座り、私の代わりに総二郎がお茶を入れてくれて、何かの説明が始まったのは10分後・・・...
ランチが終わってからの珈琲タイム。そこで類が私に「佐藤の話に乗っかろうか」って言った。藤本さんの眼鏡の奥の目が光る・・・そして「そうですね、それがいいと思います」と賛成意見。私はどうしていいのか判んないので2人の指示待ち。でも、何となく・・・また私が大変なんじゃない?!って気持ちではある。言葉にはしなかったけど、私の表情からそれが読み取れたようで・・・・・・「まぁ、これまでの経験を生かした集大成だと思ってくだ...
残るのは親父の判断・・・暫く黙った後、お袋に「実家に戻るか?」と聞いていた。それは離婚を示唆したものだと思うが、お袋は「勘弁して下さい!」と泣きながら両手をついていた。それには親父も深く溜息をつき、無理にでも追い出そうとはしなかった。何故なら先代が、話合いの末とは言え離婚しているから・・・それ自体が初めてだったのに、次の代である親父達が離婚するのは聞こえが悪い。それならばと、謹慎と言うことで俺の大叔母・・...
何とか誤魔化せたのか・・・と回りを見たけど、やっぱり上野さんと江藤さんの視線が怖すぎる。でも知らん顔して仕事していたら、課長に資料室に行ってとあるファイルを持ってきて欲しいと言われた。だからすぐに資料室に向かい、そこでファイルを探し中・・・でも多すぎて何処にあるんだか判んない。「ないなぁ~」なんて呟きながらしゃがみ込んで棚を見ていたら、誰かの足音が聞こえた。何の気なしにそっちに目を向けると、入って来たの...
総二郎が戻ってから、私はまた少し眠ってしまった。あれだけ寒かったのが嘘のよう・・・温かくて幸せで、また総二郎に会えて・・・・・・『所詮野良猫は野良猫、西門家には入れないのよ!』「・・・いやあああぁっ!!」夢の中で伽耶さんに怒鳴られ、その言葉が蘇って飛び起きた。そうしたら汗びっしょりで・・・ガクガクと手が震えて心臓が爆発しそうだった。その声に驚いた看護師さんが飛び込んで来て、私に何があったのかを聞いてきたけど、「...
月曜日、私はもうマスクなしで通勤可能だった。だから久しぶりにメトロを利用し、1人で出勤・・・身体中が痛くて、このヘンな姿勢を誰かに見られてる気がしてソワソワした。・・・そんな事よりも、私は1歩オトナに・・・(←充分オトナである)今日、会社で類に会ったらどんな顔をしたらいいのか判んないな~、なんてニヤけながら最寄駅で降りて、ルンルンと歩いてた。「気分が最高だとこんな都会の味気ないビルも、アスファルトの道も、馬...
婚約破棄が決まった・・・その後は今後について、少しだけ話合いがあった。伽耶のことが報道されても西門家は一切無関係で通すこと。これまで伽耶にかかった費用は、俺が相手にしなかったこともあって西門家が負担すること。伽耶が警察から戻ってきても俺に会わせないこと・・・そして被害者であるつくしにも会わせないこと。売ってしまった掛物については、そもそもお袋が自分の意思で持ち出したので、それを買い戻せとは言わないこと・・...
う・・・・・・動けない。どうしてだろう・・・ロープで縛られてる感じがする。しかも何重にも・・・それに重たい。足も縛られてるんだろうか・・・全く身動き出来ないんだけど、どうして?それとは別に身体のあちこちが痛いんだけど、もしかしてまた殴られた?いや、ここはハワイじゃなくて日本だもん、そんな事はないはず・・・そもそもレイだってもらってないし・・・・・・それにしてはイイ香りがするし、あったかい。ううん、これはあったかいを通り越...
伽耶の両親は、俺が伽耶以外の女と付き合っていたことに激怒し、この事件の責任は俺にあると言った。確かに一理あるかもしれないが、問題はそのずっと前だっての。だから俺は怒り狂う伽耶の母親に向けて言ってやった。「横浜の七神堂・・・・・・ご存じですね?」、そう言うと伽耶の母親と・・・お袋が黙り込んだ。親父と伽耶の父親には判らないこのワード・・・・・・俺はお袋にも目をやった。そうしたらサッと視線を逸らせたが、今度は無言でさ...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。******************************何度も何度も優しいキスをされて、頭の中が全部溶け出してしまいそう・・・・・・何も考えられなくなって、ただ類の首に腕を巻き付けてるだけの私。そうしたら突然クスって笑い声が聞こえて、薄く目を開けたら・・・綺麗すぎる瞳が真っ直ぐ私を見...
翌日、つくしは少しだが飯を食うことも出来るようになった。今日は自分の足で歩いたり、車椅子で中庭まで行き、そこでも散歩してみるのだそう・・・そこでフラつきや目眩が無く、昼食と夕食が食べられれば明日には自宅に戻っていいと言われた。ただ自宅でも2~3日は安静にして、食事も消化のいいものを・・・なんてことを詳しく説明されていた。俺は仕事を放り投げて3日目・・・親父には連絡を入れているが、宗家に伽耶のことが伝わって...
いよいよその時が来た・・・・・・なんて考えながらお湯の中に入ってたけど、その先の事が考えられなくて真っ白だった。友達の話を聞いたこともある。一応最低限の知識はあるけど、それは多分中学生のレベル。ううん、もしかしたら中学生にも負けてるかもしれない。しかもテレビを観る習慣がなかったから、そういうシーンも見たことが殆どない。つまり、男性にとってはものすごく面倒な女だと言うこと。「はっ!そんな事考えてる場合じゃ...
新宿歌舞伎町の「CLUB Stella」・・・その高級感溢れたドアの前に立つと、丁度ドアが開いて客が帰るところだった。それを邪魔しないように端に避けると、「送り指名」されたホストが40歳ぐらいの女性を見送っていた。「送り指名」とは、出口まで送ってくれるホストを指名できる仕組みのこと。そのホストを気に入って次も指名したいとなったら、特典チケット等をもらえることもあると聞いたが・・・お袋のこんな姿を祥一郎が見たのなら...
私はワイングラスを持って硬直・・・・・・今、なんて言った?もしかして・・・今晩泊まるって言った?!平然とワイン飲んでる類の顔はマジ・・・私はそれを見て、何て答えていいのか判らなかったけど・・・でも、嫌じゃなかった。だから視線を逸らせたまま、「うん」って答えただけ。でも泊まると言うことは・・・・・・でも泊まると言うことは・・・・・・一緒に寝るって事だよね?!ハワイの時みたいじゃなく、つまり・・・オトナの夜って事だよね?!途端に心...
総二郎が運転する車・・・助手席で彼のコートも掛けてもらって、凄く暖かかった。心配して沢山お茶買ってくれて、そのペットボトルを1つ手に持って窓の外を見ていた。そして聞かされたのが、奥多摩を調べた本当の手段。美作さんのところの人が手伝ってくれて、レンタカー会社に乗り込んだり、その後で男性の家に乗り込んだりして大変だったそうだ。それを警察には言えないから、私のスマホに入れたGPSアプリで判明した事にしていたそ...
マンションの近くまで戻ったら、そこからスーパーで買い物。もう2人で行く何度目かの買い物だから慣れたもので、俺がカートを押して、つくしが食材を選んだ。とは言え、慣れたのはスーパーの雰囲気と買い物の仕方だけで、今でも食材は全然判らない。だからつくしが両手に持って見比べてる意味が判らない。今も肉の塊をガン見して・・・・・・「・・・何を悩んでるの?」「牛角切り肉・・・どれにしようかと」手に持ってるのは「近江牛角切り肉...
つくしが目を覚ましたとナースコールすると、看護師がすぐに病室にやって来た。それから数分もしないうちに医師も来て、俺はしばらく病室から出された。その時間が朝の5時・・・看護師からは「警察に連絡しますけど、明るくなってからにしますね」と言われ、それについては任せると返事した。その後、医師が出てきて、「意識が戻ったのでもう大丈夫ですが、もう少し安静にしなくてはなりませんから」と・・・それを聞いて頭を下げ、すぐ...
毛利の部屋からは何も見付けられなかった。それもそうだろうと思ったから落胆はしない・・・多分、ダイヤモンドは佐藤直人が持ってるんだと言う思いがここに来る以前からあった。だから最後、この事件の首謀者であるこの男に、「もう会うことは無いけど、お大事にね」と別れの言葉を出した。恐らく、もうそんなに長くないだろうこの男に、「あの事件はすでに花沢家が知ってる」と示せたことで充分・・・ビクビクしながら余生を過ごすんだ...
つくしが寝ている病室に警察がやって来た。その時もまだ目が覚めてないから小さな声で・・・その様子を見た警察官は「大変でしたね」と哀れんだ目でつくしを見ていた。「通報された西門さんですね?」「はい、そうです。彼女が危ない状態だったのでその場から移動して申し訳ありませんでした。私にも聞きたいことがあるんでしょう?」「はぁ、まぁ・・・倒れていた男は、あなたが?」「はい、それについては認めます。攻撃されたので、彼...
お爺さんの話を聞いてつくしがヘンな顔してる・・・その考えが読み取れて、俺は一瞬ムッとした。多分、毛利の娘と俺の父さんの不倫疑惑・・・そしてまた俺と佐藤が異母兄弟だと思ったんだろう。そんな事があるわけないじゃんと思いながらも、俺の中でもモヤモヤが・・・・・・とにかく本人に会ってみようと思い、その特別養護老人ホームの場所を聞いた。「会っても話せないよ?それでもいいのかい?」「えぇ、構いません。あの、もうひとつお聞...
伽耶を怒鳴りあげると、こいつはビクッと肩を竦めてガタガタ震えやがった。そんな女を無視してつくしのぞばに駆け寄ると、急いで抱き上げて生存を確認・・・顔色も悪く体温も低かったが、微かに息をしてるのが判ってホッとした。見る限りこの部屋には暖房器具はなく、食事をした形跡もない・・・ベッドはあったがその上の毛布と布団は薄っぺらく、しかもすげぇ汚かった。たった今叩かれたのか、顔が赤い・・・だが大きな怪我はなさそうだっ...
成田についたのは10時30分。まず話にあった中学校を探したら3校ほど発見し、その中でも1番空港に近い学校付近に車を停めた。そこで登録した住宅地図アプリで検索・・・現在画面上では「毛利」という家はこの付近にはない。勿論これが100%ではないと思うから探すんだけど・・・「そこそこ家はあるよね。でも毛利って家は登録されてないんだよね?」「住人に聞いてみるか・・・だよね。お年寄りなら知ってるかも」「スーパーとかは...
曇天の山の中・・・まだ夕方でもないのに薄暗くて気持ちが悪かった。逸る気持ちを抑えながら慎重に進んで行くと、運転手の言っていた分かれ道を見付けた。それを左側に進み、道なりに進むこと3分・・・これも運転手が教えてくれた祠を発見。ここからは100メートルぐらいだと聞いたが、目の前には急なカーブがある。だから山小屋のようなものは見えず、取り敢えずそこに車を停めて降りることに・・・コートのポケットには万が一の時の為...
類のところから秘書室に戻り、午後の仕事に取り掛かろうと思ったら、今日は意地悪お姉様もみんな出払ってるし、部長・課長もいない。頼まれた仕事も終わっていたから、「何かしましょうか?」と男性の先輩秘書に聞いたけど「何も無いんだよね~」って。佐藤さんも今は何処かに行ってて部屋にいないし、それなら秘書検定の勉強でもしようと思い、自分のデスクのパソコンで過去問を眺めてた。でも頭の中に浮かぶのは、明後日の土曜日...
キャンプ場を確かめたら再び鳩ノ巣駅にもどった 。何故ならキャンプ場の付近は電波状況が不安定だったから・・・タクシー会社から連絡が入るのに、万が一にも通じなかったら不味いと思ったからだ。車の中はシーンとしていて、俺がここに車を止めてから通った電車は僅かに3本・・・1時間に1本程度だ。その時も殆ど乗り降りするヤツはおらず、辺りはすぐに人気が無くなる。そんな中、何処を見るワケでもなくジッとしていると、寒さでブ...
「あぁ、類様。そう言えば神崎さんから連絡がありましたよ。吉弘さんの事が判ったって」「えっ?」「夕方、私のスマホに画像が送られてきましてね~、ご覧になります?」「見せて!!」「・・・・・・は、はい!少々お待ち下さいませ」まさか、このタイミングで吉弘のことが判るとは・・・そう思って加代が来るのを待っていたら、神崎が送ってくれた数枚の画像を俺に転送してくれた。それは父さん達が結婚した年、お披露目のガーデンパーテ...
また夢を見た・・・・・・今度の夢は悲しかった。総二郎が西門の門の前で楽しそうに伽耶さんと笑ってる姿・・・・・・あれは青木さんの結婚式前に私が見たものだ。でも今日の夢の中では総二郎は黒紋付きで、伽耶さんは白無垢・・・今から2人の結婚式なんだろうか。私はそれを止めるために総二郎のところに行こうとするけど、足が全然動かない。まるで地面に根を生やしたかのように、何度も足を上げようとするのに全然ダメだった。手だけが空を切...
西門さんが持って来てくれたアルバムは凄く豪華だった。最高に綺麗なドレスに身を包んだ自分・・・こうしてみるとなかなか可愛いじゃん?でも類の方が変装してるからちょっとイマイチ・・・もちろんイケメンに変わりはないけど、いつもの髪じゃないから違和感はある。それでもカッコいい♥加代さんもニコニコだし、西門さんなんて自分の結婚式みたいに嬉しそう♪花沢家の使用人さん達も、この時はすっごくお洒落してたんだな~って、写真を...
辺りが暗くなった頃、その運転手は戻ってきた。予定より少し早かったが、それでもこれから奥多摩に向かえば17時を過ぎてしまう。取り敢えず伽耶を乗せた場所がどんな所かを聞くために、その運転手と話す時間を作ってもらった。男は面倒臭そうに事務所の隅に歩椅子に座り、俺はその向かい側に座って深く頭を下げた。そして昨日のことを教えて欲しいと言うと、深い溜息をつきながらも話してくれた。「確かに代々木公園までお嬢さん...
その日も無事に業務終了。いつものように特別な仕事のない私は定時上がり♪1日中のマスクは大変だったけど、皆さんに挨拶してそそくさと会社を出た。そしてメトロで自宅最寄り駅まで行き、そこでマンションに帰る前にお買い物するため、近所にあるスーパーに立ち寄った。ここは所謂「高級スーパー」で、激安なお肉はない・・・それを知ってる類が昼休み終了時に3万円をくれたから、それを使ってすき焼きの材料を買うことに。「割り下...
車を止めていた奥多摩湖から少し戻り、奥多摩駅付近に来た。そこにコンビニがあったから、店内に入って見慣れない客が来なかったかと聞いてみた。だが俺は伽耶の服装も男の服装も知らないので、「どんな人ですか?」と聞き返されても答えられない。そしてつくしが降ろされるとも思えない。とにかく大柄な男と思われること、女が一緒だったら上品な美人だと言うことぐらいしか・・・勿論それだけでは店員に伝わるはずもなく、それなら...
いつも歩かない場所で会ってしまった佐藤さん・・・「メトロじゃないの?」って言われたからどうし答えようかと動揺してると、今度は「風邪引いたの?」と言われ・・・「そ、そうなんです!一昨日から咳が止まらなくて」「そうなんだ?無理に出勤したの?」「ご、5月にも入院で休んでいるので、申し訳ないので・・・」「そんな事、気にしなくて良かったのに・・・・・・でもこの度は大変だったね」「はい・・・でもお爺ちゃんには持病がありましたし...
婆様の家に戻ったのは午前3時・・・音を立てないようにしたつもりだが、すぐに婆様が寝間着姿で部屋から出てきた。それを見て驚き、「起こしてしまいましたか?」と言うと、「寝てなんていられませんよ」と泣きそうな顔で言われた。ただ濱崎の言う通り、俺も身体を休めないとつくしの救出に行けない・・・だからつくしの部屋に布団を敷いてもらい、そこで僅かな休息を取ることにした。そして6時には起きて宗家に戻り、親父に話をしてか...
フワフワした気分でスーパーファストを運転中・・・ハワイの夜景とは違うイルミネーションを見ていると、昨夜のプールを思い出してしまった。あの時のつくしは子供みたいで可愛かった。もう少し滞在期間が長ければワイキキビーチで遊ばせて、ダイヤモンドヘッドからの景色を堪能し、2人きりでサンセットディナークルーズも出来たのに・・・そしてホテルのスイートに泊まり直して、バルコニーで食事して、一緒に風呂に入り・・・・・・「・・・の...
レンタカーの申込書で判明したT町に住む木下誠司・・・こいつが何者なのかはさっぱり判らないが、その住所に行ってみようという話になった。「・・・でも、今そこに潜んでるとは思えないが」「そうですね。大型ワゴンを借りてるぐらいなので、それなりに荷物が積めて、3日間ですから離れているところに行ったと思います。ただ、西條伽耶が同乗していたのに、19時には帰宅しているのでしたら目的地は都内から往復6時間以内・・・いや、目...
「うひゃあああぁ・・・蒸し暑い~~!」「・・・・・・・・・眠い」「何言ってんの、乗ったらすぐに寝たクセに!私、本当に暇だったんだから~!」「・・・・・・・・・ごめんね」羽田に着いたのはハワイを出た翌日の16時前。俺は疲れ切って、機内に入った瞬間、飲み食いゼロで爆睡した。途中何度かつくしが起こしに来たのは知ってるんだけど、それにも返事出来ないぐらい身体が怠くて・・・しかも目を覚まして機内で疼き出したら困るから、つくしを見な...
時間は19時を過ぎ、辺りはもう真っ暗・・・婆様は夕食も食べずに落ち込んでいるから、親父に電話してここに泊まることを伝えた。その時には婆様にも代わってもらい、アリバイ作りのような事もした。演技でも無く、本当に具合の悪い婆様は力なく親父と会話し、「今日だけ総二郎を借りるわね」と・・・それが終わったらキッチンで婆様に食べさせるものを探したが・・・・・・この家のキッチン事情など知らない俺はどうしていいのか判らない。し...
すっごく幸せな夢を見た・・・・・・・・・今度こそ、本当の結婚式♪あの時着たドレスをもう1回身に纏い、今度はちゃんとお父さんの腕を持ち、教会のヴァージンロードを歩くの。そうしたら白いタキシードの類が神父さんの前に立ってて、優しい笑顔を向けてるの・・・・・・お母さんも泣いてて進もいて、どうでもいいけど安藤さん達も来てて、新郎側には西門さんや道明寺さん、美作さんも来てる。3人とも礼装で凄く格好良くて、その隣にはチョコン...
どのくらい経ったのか・・・閉じていた目を開けるともう窓の外は真っ暗だった。何も見えなかったけど、暫くしたら目が慣れてきて、月明かりで部屋の様子が判る・・・この部屋の電気は点かないようで、スイッチを押しても無駄。でも廊下からは僅かな灯りが漏れてるから、そこにはあの男達が居るようだ。・・・でも声なんて掛けたくない。私は出られないけど、彼等は勝手に入って来られるのだから。もしも変な気を起こして襲われたら・・・その時...
「・・・そんなワケないじゃん。相手が牧野だから・・・・・・キスしたんだよ」そう言った花沢さんの顔が私に近付き、そしてポカンとしてる私にキス・・・・・・その瞬間、傷口に激痛が!!「痛ぁーーーーいっ!!」「はっ?!」「花沢さんのばかぁ!ここ、切ってるんだって💢!」「あぁ、忘れてた・・・」「忘れないでよっ!!」「ごめんごめん」花沢さんはクスクス笑いながら、私の左頬に手を当ててる。私はと言うと、つい大声出したけどさっきの言...
乱暴に目隠しを外され、瞬間眩しくて目が開けられず・・・暫くしたら目を開けることが出来たから前を見ると、そこには着物ではなく、洋服の伽耶さんがいた。そして私の後ろにはあの時の男の人が2人居て、床に寝転ぶ私を見下ろしてる。ここは簡素な洋間で、ベッドとソファー、それに簡単なクローゼットがあるのが見えた。全体的に古いとわかる部屋・・・今にも外れそうな窓にボロボロのカーテン、小さな円卓があって、古めかしいストーブ...
部屋で水着に着替えて、早速プールへ♪顔を人に見られたくないから花沢さんの後ろに隠れてたけど、そのプールを見たら一気にテンションが上がってしまった。学校のプールみたいに四角いんじゃなくて、ヤシの木に囲まれて、ライトに照らされた曲線的なプール♥しかもプールサイドには長い椅子があって、それに寝そべってる男性が2人・・・夜だからパラソルも無く、チョイ大胆にイチャイチャしてるカップルが2組。そしてプールの中で仲...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...
遊園地とは文字の如く、楽しく遊べるように、いろいろな遊具やアトラクション、設備を備えた施設。アトラクションの設置に関係なく遊園地と呼ばれている公園もあるんだけど、私の思う遊園地は「乗り物」があること!それは滑り台、ブランコじゃなく、もっとハードでスピード感のあるもの・・・まさか、本当にそれに乗れる日が来るとは・・・っ!!「・・・・・・うっ・・・うっ・・・えぐっ!」「ちょっと総二郎・・・この子、泣いてるんだけど」「悪い...
「ふああああぁ~~~~~~~~!よく寝たぁ~~~~~~~~~~!!」大きく背伸びをして起きたのは6時30分。総二郎がいないおかげで久しぶりに爆睡でき、すっごく気持ちの良い朝だった。カーテンを開けると清々しい朝陽が目に入る・・・「今日は快晴だな~」と呟きながらベッドを降りて服を着替えた。そしてドアを開けて隣の部屋を覗くと・・・ベッドで寝ているのは美作さん1人。花沢さんはソファーで丸くなり、道明寺さんと総二...
私を無視して決められた翌日の予定・・・まさかの、道明寺さん達とのお出掛け?!結婚式の翌日に団体行動?!「ちょっと待ってよ、何処に行くの?」「つくし、行き先が問題じゃねぇよ💢俺達は2人きりでここで過ごし、明日の夜までマッタリするんだから!そうじゃないと明後日からは仕事なんだぞ?これまでの疲れを癒やさないとダメだろ?」「確かに疲れてるかも・・・行き先次第だけど・・・」「そうだなぁ、何処に行きたい?あきら」「俺は...
最後まであきらが仕切った二次会終了・・・考三郎はそれからまた飲みに行くと言い、女達を連れて何処かに消えた。従姉妹・従兄弟達はそれぞれの迎えの車であっさり帰宅。涼子達はつくしよりも景品に浮かれまくり、万歳しながらタクシーに乗った。港に残されたのは俺達5人・・・今日は宗家に戻らず、Tホテルのスイートを予約していたので、そこに向かうと言うと、あきらが「ハネムーンは?」と聞いてきた。答えは・・・「今すぐ旅行には行か...