そこまで話したとき、時間は15時になっていた。つくしはそろそろ園に電話をしないといけないので、類に断りを入れてスマホを手に持った。「もしもし、牧野ですけど・・・はい、お世話になっています。今日なんですけど、おむかえの時間を17時過ぎに変えても良いですか?用事があって遠くまで出掛けてまして、戻るのがそのぐらいになるんです。・・・はい、本郷美来ちゃんも同じ時間に・・・・・・美来ちゃんの具合は悪くなっていませんか?...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
6日は朝イチから仕事で外出し、戻ってきたのはランチ後。それからは夕方の稽古に備え、自分の茶室で道具の手入れをしていると志乃さんがやって来た。どうしたのかと思えば、宗家に婆様から電話が入ってると・・・そして俺に代われと言っているらしい。そんな事は初めてだったから驚いて、すぐにその電話に出ると・・・・・・『総二郎?あなた、今は仕事中よね?』「はい、そうですけど・・・どうかしたのですか?」『悪いけど、自分の部屋に戻...
牧野が意識を取り戻したのは19時前で、もう外は薄暗くなっていた。せっかく夕日を見たいと言っていたのに間に合わなくて・・・でも、そんな事よりも牧野が無事だったことの方が嬉しかった。だからわんわん泣かれても、俺としてはホッとした気持ちの方が強く、背中に回した手を緩めることも出来なかった。そうしたらだんだん牧野も平常心になったらしく、俺の腕の中で変な顔してる。それに気付いたから手を離してやると、鼻を真っ赤...
4日の朝は大掃除をすることになった。それはまずお風呂からで、崇子さんにバレたら不味いと思ったから///そんなの気付くはずもないと思うんだけど、気不味くて仕方がなかった。だからバスタブは勿論、床も壁も、脱衣場も・・・何度も見直して変な部分がないかを確認。そして今度は自分の部屋で、「総二郎の残したもの」がないかをチェック。お布団を干して掃除機かけて、総二郎の残り香がないかを確認して・・・「・・・別に不自然じゃない...
口に何かを入れられた・・・でもそれを飲み込まないように口の中に留めてた。そのうちに鼻と口を大きな手で塞がれ、凄い力で押してくる・・・恐怖で逆に力が抜け、頭が真っ白になった時・・・「牧野!!」それは花沢さんの声・・・?急いで目を開けて横を見たら、息を切らした花沢さんが驚いた表情でそこに居て・・・助かったと思った私は呻き声しか出せなかったけど、必死に助けを求めた!そうしたら男達はまた何か言ってる・・・でもそんなのどうで...
<side伽耶・西門邸>総二郎様のお誕生日・・・その本人が居ない夕食はいつもより凄く静かだった。風邪気味の家元は自室で召し上がってるし、弟の考三郎さんは何処かに出掛けてる。そして仕事に出掛けた総二郎様からは何の連絡もなし・・・だから私と家元夫人の2人きりだった。次期家元の誕生日ならもっとイベント的な事があると思っていたのに、本当に辛気くさい家・・・正直言えば、こんな堅苦しい茶道宗家なんてイヤだったけど、お母様...
沢山の観光客が居るのに、私が連れ込まれたところはそんな人達が1人も見えない場所・・・さっきまで明るいビーチを歩いてたのに、今は薄暗いビルの間の壁に背中を当てた状態で立ってた。目の前の男の人がニヤリと笑って何か言ってるけど、そんなの聞き取れるはずもなく・・・ただ、すごくヤバい状況になってるってことだけは判った。お金目当てなのか・・・それだったら何も持って無いから、もしかしたら殴られるのかも。お金目当てじゃな...
本文中に微ではありますがR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。******************************つくしは俺が早く帰らないと不味いと思ってるようだが、俺としては時間なんてどうでもいい。会食があったと言えばそれまでだし、酔いが覚めるまで仮眠した・・・なんてことも言える。だから真夜中までこの家にいるつもりだ...
藤本さんと西門兄弟へのお土産を買うと、すぐにホテルに戻って荷物を置いた。その時、会社で朗報を待ってる藤本さんに電話することに・・・日本はちょうどお昼ぐらいで、花沢さんは執務室の様子も気になるみたいだったし。その電話はすぐに通話になり、藤本さんの『どうでしたか?』って焦った声に2人でクスクス笑った。「お疲れ、藤本」「藤本さん、お疲れさまです~~~!」『声が明るいですね・・・もしや、成功しましたか?』「うん...
気怠そうにつくしが身体を起こし、俺はその乱れた髪に手を伸ばした。そうしたら突然「もうっ///、総二郎の馬鹿!」と言われその手を払われた。明るいうちに手を出したからなのか、それともこの部屋だったからなのか・・・確かに婆様がいないとは言え、この家の中ってのはヤバかったかも。つくしが婆様に何か言われたらって考えても無理はないが・・・「まぁ、言わなきゃ判んねぇだろ?」「自分から言うわけないじゃん///!そ、そりゃ私も...
エメラルドを取り戻した・・・・・・それはすごく嬉しかったんだけど、今の私達はと言うと・・・2人でベッドの両サイドに背中合わせで座ってて、シーーーーーンとしていた。何故なら突然キスされた事に驚いた私と、気不味そうな花沢さんだから。しかも私は真っ赤になってるはずだから、それも見られたくなくて・・・と言うか、どうしていいのか判らなくて焦ってた。確かに10日前には結婚式でキスしたんだけど、それは「演技」だと思ってたか...
インターホンを押したら、すぐに開いた玄関の引き戸・・・そして飛び出してきたつくしを抱き留めたら、危うく後ろにひっくり返るところだった!そんな事も気にせず「会いたかった」なんて言うし、それだけでさっきの嫌な出来事も全部吹っ飛んで消えてしまった。それにしても、婆様が居るだろうに「こんな大胆なことして」と言うと・・・「えっ!婆様、居ないのか?」「うん。朝早くにね、ご実家に帰るって出て行っちゃったの。お兄さんの...
「すぐに終わりますんで、失礼します~~~っ!」「チョト、マテクダサイ!」私の事を掴まえようとするメイクさんを無視して中に入ると、楓さんの目がテン。今度は彼女の前に行き、メイクさんに聞こえないぐらいの小さな声でお願いをしてみた。「なんですか、あなた!」「今からパーティーですよね?本当にごめんなさい・・・実は私、昨日ここで同じようにウエディングパーティーをしたんです。でもそれが終わってから部屋を出たら、...
総二郎から電話があったのは夜遅く・・・もう崇子さんは寝てる時間だったから、小さな声で話した。そうしたら明日の午後からここに来るって・・・それを聞いて、少しホッとした。彼の誕生日をまるっと伽耶さんに奪われなくて良かったと思ったから。『泊まることは出来ねぇけど、遅くまではいられるから』「いいの?夕方に家族で食事会とか・・・」『そんなものねぇよ。まぁ、昼は宗家で食うけど、それもパーティーとかじゃなくて普通の飯。...
時間は12時30分になり、花沢さんがホテルの外でランチを買ってきてくれた。大通りのマーケットの中にテイクアウト専門店があって、そこの看板メニューであるロティサリーチキンやフラットブレッドピザ。それに日替わりランチのビーフシチューもあって、めっちゃ美味しそう♥「日本食のテイクアウトもあったよ」「そうなの?!」「うん。カリフォルニア産最高級コシヒカリ・牧田ゴールドを使ってるんだって」「・・・なんだか親近感...
翌日、横浜での講演会は難なく終了。付き添いの弟子が2人で控え室の片付けをしている間、俺は主催者への挨拶やら横浜支部の幹部との談笑・・・そんな面倒臭い事も総て終わらせて、控え室で服に着替えて車に向かった。その時運転していた弟子に告げた行き先は以前電話した骨董品屋だ。都内の茶道具店・骨董品屋などにはこういった仕事の後に立ち寄ることが多々あるため、それを言ったからって不審に思われることはなく、弟子はナビで...
6階の部屋をデイユース出来たのはいいけど、それはドレッシングルームとは少しだけ離れていた。と言っても3部屋隣なだけだから良しとして、その支払いを済ませると急いで牧野のところに戻ろうと・・・・・エレベーターに乗ろうとしたのをやめて、奥の方にある階段で6階まで上がることにした。万が一にもエレベーターのドアが開いた時に織田楓と鉢合わせしないように・・・日本人観光客も多いから、細心の注意を払って通路を歩いた。「・・...
次の日の昼過ぎ、予定よりも少し早めに私の荷物が北海道から届いた。小さなトラックだったから何とか玄関前まで入ってきて、そこに停めたら通路は塞がれるほど・・・だから急いで荷物を降ろしてもらい、奥の部屋へと運んでもらった。とは言え大きな家具も家電もないから、その作業もあっという間だった。崇子さんも「これだけ?」って驚いていたけど、元々北海道に持っていった荷物も少なかったと言うと苦笑い・・・「ベッドが良いなら買...
その仮眠室で話を終えたのが11時。メリアには謝礼を渡し、彼女は『パーティが始まる前、厨房に来たら私を呼んでね♪』と言って仕事に戻って行った。・・・まぁ、厨房に忍び込むと言ったのは嘘だし、メリアも仕事に入れば俺達の事は忘れてしまうだろうから気にしない。ここで牧野に今の話を伝えると、「とにかく現場を見てみないとね!」って気合いを入れていた。「今のうちにレストランに行ってみようか。そこからドレッシングルーム...
崇子さんが干してくれてたんだろうと思われるお布団・・・そんなフカフカの布団で寝たせいで、ついつい起きるのが遅くなってしまった。目が覚めたのは7時20分・・・・・驚いて飛び起き、服を着替えてキッチンに行ったら、もう既に朝ごはんが用意されていた。それを見て茫然・・・私はここに「お手伝いさん」として来たはずなのに、何もせずに作ってもらうなんて・・・勿論怒られたりはしないけど、それでもガックリ肩を落として平謝り・・・「本...
花沢さんの言う通り、暫くしたらさっきのおじさんが朝食を持って来てくれた。その時にも何度も謝ってて、彼はそれに完全無視・・・見てるこっちがヒヤヒヤする雰囲気だったけど、それよりも感動したのは・・・「すご~~~~~いっ!これがハワイの朝ごはん?♪」狭い部屋のテーブル、そこだけカラフルで超可愛いトレイが置かれて、私の気分は一気に爆上がり!エッグ・ベネディクトにアサイーボウルにパンケーキ♪エッグベネディクトっての...
つくしを婆様の家の近くの道路で降ろし、俺は真っ直ぐ裏門に向かった。そして親父に仕事の報告をしてから自分の茶室に戻り、そこで少しだけ片付けたら今日の仕事は終了。その時に志乃さんの姿が見えたからお袋の様子を聞くと、午後からは本邸をウロウロするぐらい回復していたそうだ。でも昼食も殆ど食べず、また夕方早くから東の棟あるお気に入りの部屋に閉じ籠もっているのだとか・・・しかも12月初めにある婦人会の観劇会も、自...
無事にハワイに到着したのは予定通りの9時。ファーストクラスだからすぐに降りることも出来て、入国手続きが済んだら急いでタクシーに乗り込んだ。向かったのは花沢系列のリゾートホテルで、そこまでは車で20分程度。まだ日本は午前4時過ぎだけど、一応藤本に到着を知らせるメールをしておいた。これから15時のパーティー開始までが勝負・・・ホテルに着いたらすぐに支度しなきゃ、と牧野と一緒に気合いを入れていた。そしてうちの...
ビジネスホテルをチェックアウトしたのは8時前。急いでマンションに戻り、引っ越し屋さんがくるのを待つ間、掃除やら退居の書類確認とかで大忙しだった。荷物は日用品、崇子さんちに持っていっても困らない小物、そして衣類が殆ど・・・あまりないと思ったけど大きな段ボール10個分にもなった。もう少し減らした方が良かったかもだけど、まだ使えそうなものは捨てられない。自分のお部屋をもらえるだろうから、そこで活用すればい...
シートベルト着用のサインが消灯して、最初に開始されるドリンクサービス。ファーストクラスの座席の前にあるテーブルが引き出され、そこにテーブルクロスが・・・まさか乗り物内でそんな事されると思わず驚いてると、そこに注文した飲み物が置かれた。ヒョイッと隣を見たら、花沢さんはすでにお洒落なグラスでワインを飲んでる・・・そして私の前には適当に選んだシャンパンが置かれたんだけど、それが美味しいのかって言われるとイマイ...
11月25日、今日は私の最後の出勤日。それからは有休消化して、12月15日が退職日・・・とうとうその日になったんだと、少し緊張しながら会社に向かった。もう外出することもなく、今日はみんなの雑用を引き受けていた。それに僅かな時間お世話になったロッカーと机の掃除、最終的な書類の確認・・・送別会を断わったため、この日の昼食時間に休憩室でお別れ会をしてもらった。当然そこに葛城さんはおらず、彼の名前も出て来なかっ...
30日の午後、秘書課長が牧野の忌引きを了解したと、藤本が報告してきた。そして藤本の親戚が経営してる地方の葬儀場で明後日に葬儀・・・それに総務部長、秘書課長の名前で弔電を打つことになったらしい。「それ、誰がやるの?」「私が教育係ですから、私が引き受けてきましたよ」「じゃあ電報は打たなくていいわけだね」「そうですね・・・でも念の為に勅使河原さんの葬儀の問い合わせがあったら対応してくれと頼んでますから」「・・・...
葛城さんが来なくなって数日間・・・私はあまり人と話さずに仕事をしていた。周りの人達は私は無関係だと判ってくれてるけど、それでも気不味い空気が流れてて・・・しかもあれから何度か調査機関の人が来たり、道警の人が来たりと社内がザワついていたから・・・葛城さんはマンションにも戻ってないらしく、帰宅するときに見上げても部屋の電気がついたことはなかった。私は来週にはここを出ていく・・・引っ越し業者も手配してるし、退居の書...
6月29日の夜・・・ハワイに行く前日の、最終打ち合わせを牧野のマンションで行っていた。その時に牧野が実質何時間ハワイにいるのかって言うから、簡単に時差から説明することに・・・。「日本とハワイの時差は19時間で、ハワイが日本より時間が遅れてるんだ。だから明日の夜に羽田を出ても、到着するのは同日の朝ってことになる」「えっ?そうなんだ・・・30日の夜に出て、30日の朝に着くの?」「そういう事ですね。で、私の調査...
東京に戻った翌日、西門はいつも通りの朝を迎えていた。伽耶もお袋も朝食には普通に加わっていたが、以前のような会話はなし・・・実に静かな時間が流れた。口切りの茶事も終り、今度は12月に行う「夜咄の茶事」の準備が始まる。夜咄の茶事は夕刻から客が寄合、炉辺にて茶を楽しむもので、露地では灯篭や露地行灯に火を灯し、客は手燭で足元を照らしながら腰掛に進み、迎付に亭主と正客は手燭の交換をする。席中での点前や拝見のと...
その週末の土曜日、6月~7月のハワイについて調べてみた。6月のハワイは平均気温は27.4℃。晴天の日が多くて日差しも強く、最高気温は30℃を超える。雨は少なくて、ビーチやハイキングなどのアクティビティがたっぷり楽しめるシーズン♪なるほどね~~♪日差しが強いので外出する際は日焼け止めや帽子などの紫外線対策は絶対。1年で最も日照時間が長くなって、気温は高いけど天候は安定。日本と違って湿度が低い&風があるから過...
「・・・・・・・・・んっ・・・ったぁ・・・・・・・・・あれ?」身体中が痛くて目が覚めた・・・。見慣れない部屋に、フワフワすぎる布団・・・ここ、何処だっけ?と考えながら少しだけ頭を上げたら、もう窓の向こうは白くて朝が近いんだと思った。それと同時に何故か重たい物が私の身体の上にある。なんだろうと思って顔を反対側に向けたら、そこにあったのは・・・・・・げっ!!総二郎?!それに驚いたけど声には出せず・・・しかもヤケに重たかったのは、私の背中...
パスポートを取るために必要な書類を集めることになった。しかも仕事中に、藤本さんの指示で「法務局に行く」みたいなよく判らない理由で、公共交通機関を使って区役所に・・・「え~~と、一般旅券発給申請書はダウンロードしてもらったからいいとして・・・戸籍謄本と住民票の写し、それと写真ね」戸籍謄本は本籍地の市区町村役場でしか取ることができない・・・私の本籍地は引っ越しする前の都内にあったから、今度はそこの役所に向かっ...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願いいたします。******************************まさか2回もあるなんて思ってなかったから身体も心も完全ダウン・・・それなのに目の前の悪魔は私を軽々と抱き上げてベッドから降りた。その時も当然素っ裸で超恥ずかしい///しかも暴れたら落ちそうだし、でも必死にしがみつこうにもこの...
花沢さんが黙ったまま・・・私は後部座席に座ってるから表情は覗えないんだけど、すごくショックを受けてるんだろうなと思うと・・・どう声を掛けていいのか判らなかった。て、言うか私のせいじゃないし、むしろ頑張ったんだけど。それでも取り返せなかったことで、悔しい思いは同じ。エメラルドに関しては振り出しに戻ったわけだし、実物が何処にあるのかから調べ直し・・・それをどうやったらいいのか思い付かなくて、車内の空気はものす...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願いいたします。******************************自分の下着がすげぇ濡れてることに気が付いたつくしが恥ずかしそうに顔を横に向けた。そして震える手で俺の動きを止めようとしたが、そんなのは全部無視・・・と言うか、止める力すら出せてないのが現状だった。ささやかな抵抗・・・それも無...
もうそろそろ来ると思った途端、鳴ったインターホン・・・ここに来るのは1人しかいないから、返事もせずに解錠し、覚悟決めて玄関に向かった。そうしたら数秒後に開いたドア・・・花沢さんがおかしく思ってるのは判ってるし、この状況に困惑してるんだと思う。そして完全にバレてるはず・・・今日の作戦が失敗に終わったこと。私のせいじゃないとは思うけど、もう謝る事しか出来なくて、不思議そうな顔を見せた彼に向かって・・・「ごめんなさ...
バスルームから出ると、総二郎はさっきと同じ位置に座ってスマホを触ってた。私はバスローブ姿や湿った髪を見せるのも恥ずかしかったけど・・・勇気を出して彼のところに戻り、「お先に・・・」とひと言。彼は妖しく笑った後で、スッと立ち上がると私の頬をサラッと触り・・・「すぐに戻って来るからワインでも飲んで待っとけ」「・・・///・・・うん」「飲みすぎるなよ?寝落ちとか許さねぇからな」「そんなに飲めないよ///」目を細めて笑い、そ...
「つくしちゃん、遅くね?」「・・・何かあったんでしょうか・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・」俺達は既に着替えてロビーに出てたんだけど、牧野と加代が来ない。披露宴がないんだから着替えるだけなのに・・・しかもネックレスをすり替えたのなら、一目散に戻って来ると思ってた。だからすごく嫌な予感がして・・・まだ楽しそうな考三郎は少し離れた場所でカメラ機材の片付けをしてて、総二郎が帰るのを待ってる。藤本は1人出来てるから車はそれぞ...
ホテルに戻ったのは18時で、その頃にはすっかり暗くなってた。だから窓の下にはキラキラした夜景と、まだ降り続いてる雪・・・昼間は風に乗って素早く落ちていた雪も、今はまるでダンスをするみたいにフワフワとしていた。そして運ばれて来たのはフレンチのフルコース・・・やっぱりそうなるかと思ったけど、部屋で食べるから気が楽だった。勿論西門さんもマナーなんて五月蠅く言わないし、とにかく美味しく楽しく食べようって言ってく...
気持ちを切り替えなきゃ・・・・・今からが勝負だ!花沢家の皆さんを見送ったあと、花沢さんと私は目を合わせて力強く頷いて・・・でもやるのは私1人だから、彼はこのまま控え室に戻って着替えて終り。西門さんと藤本さんも私の前に来て、「頑張れよ!」「牧野さん、頼みましたよ」って・・・散々巫山戯たくせに、何言ってるんだか!!💢しかもその悪巫山戯のせいで時間がロスしたのに!!勿論花沢さんも西門さんに文句言ってたけど、この兄弟...
駅周辺を観光したあとで駐車場に戻ろうって話になったけど、今から行くのはあのホテルだ。と言う事は・・・・・・「あ、あのさ・・・・・・」「どうした?」「少し買い物したくて・・・」「一緒に行こうか?」「いや、1人がいいから西門さんは何処かで時間潰して///!!」「・・・・・・判った」そう言うと私1人でショッピングセンターに入り、そのままダッシュでとあるお店を探した。それは勿論・・・ランジェリーショップ。だってそんな事言われなかっ...
結婚証明書・・・じゃなくて、今日は婚姻届へ署名することになった。しかもテーブルのすぐ側には証人としての西門さんと藤本さん・・・すっごくニコニコして立ってて、超不気味だった。戸惑ってる私達に、スタッフさんが「どうぞ、署名なさって下さい」なんて言って、花沢さんがペンを持つと・・・西門さんが何かをボソボソッと囁いた。私には聞こえなかったんだけど、彼が「へ?」って聞き返して、また何かをボソボソと・・・一体どうしたんだ...
最上階にあるその部屋・・・そこは広くて豪華で、この前見た道明寺の部屋のように全面窓ガラスの絶景だった。しかも雪が降ってるから幻想的・・・・・・溜息しか出ない光景に、思わず立ち竦んだ。西門さんは動かない私の手を引いて部屋の真ん中に行き、握り締めてる鞄をその指から離してくれて・・・「今日はここで夜景見ながら食おうぜ」「・・・・・・う、うん・・・でも、私の部屋があるのに・・・・・・」「あのマンションじゃねぇのなら、それでも良かっ...
厳かな音楽が響く中、みんなに見守られながらウエディング・アイルを歩いて祭壇の前まで。その途中で何気に客席を見たら、知らない顔がわんさか・・・多分、この全員がうちの使用人だと思うんだけど、みんな装いがパーティー仕様だったり礼服だったりでサッパリわかんない。でもシェフのアランも来てたから、それだけは判った。「おめでとうございます~~♪」「素敵です~~、類様~~♪」「え~~?!黒髪って新鮮~~♥」なんてドキッ...
「ど、どうぞ・・・狭いし、片付けの最中だから散らかってるけど」牧野が照れ臭そうに言いながら入れてくれたその部屋・・・散らかっているというより、ただ単に物がなくて段ボールがいくつかあり、引っ越しの準備をしていると言った感じ。チラッと見たら天井の照明器に盗聴器がある・・・もう機能してねぇから問題ねぇけど、毎日あれを見ながら暮らしていたのだと思うと胸が痛んだ。それに相変わらず生活感に溢れた部屋。特に台所には沢山...
楓さんのメイクスペースは私の隣・・・その距離、約1.5メートル。私はもうヘアメイクを済ませていて、加代さんがティアラを着けてくれているところだった。それをチラッと見られて・・・「うわぁ、あの人のティアラ、綺麗♥」って・・・それを聞いて少しだけ横を見てニコッと笑った。秀子さんも一瞬私を見たけど、特別な反応はなし・・・やはり私の事は覚えてないみたいだった。今のこの部屋には全部で6人いて、私達が2人、楓さん達は4人・・・...
「500万も出して女を監視せた道明寺も、それが世間に知られたらスキャンダルだ。だからあんたの不正にも目を瞑って解放されたと思うし、返金要求なんてしないはずだが?」「・・・・・・・・・・・・・・・」「それとも、今度は別の理由でもあったのか?」「・・・・・・別にないが・・・向こうが中止を言い渡すまでが約束だからな」確かにそれは西田からも聞いたこと・・・だが、無駄とわかって監視するなんて意味不明だ。それに牧野に辛い思いをさせてま...
ホテルに着いたらすぐに受付に行き、それぞれの控え室に向かった。無理矢理割り込んだってこともあってすごく小さな部屋だったけど、親族なんて来ないし、花沢さんは着替えることが出来たらそれでいい。私の方は控え室に鞄を置いたら、すぐに花嫁の支度室に向かうことに・・・加代さんと2人で挙式用の大きな荷物抱えて、案内されたそこに行くと、まだ誰も来ていなかった。でも10時挙式の織田楓さんは8時ぐらいに来るはずだし、私...
西門さんのお財布を持って車を走らせたのはいいけれど・・・頭の中では2人のやり取りを想像して気が気じゃなかった。彼は相当怒ってるはずだし、葛城さんは罪を犯してるのは事実。それに最近の葛城さんは気が抜けてる感じだし、とても西門さんに言い返す力もないような気がするし・・・庇うつもりも許すつもりもないけれど、出勤出来ない程の怪我を負わせて西門さんが傷害罪で訴えられたらどうしようかと、そればかりが気になって・・・「...
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメだ、寝られないっ!!」スマホの目覚ましを掛けてるんだけど、それでも寝過ごしたらどうしようと思うと目が冴える。それにエメラルドのネックレスを取り返せなかったら・・・そんな事を考えてたら指先がウズウズして寝られない。とうとう明け方4時半になってしまい、もう起きてしまおうと思ってベッドから這い出た。そして珈琲を入れてリビングですり替えの練習・・・自分のおもちゃネックレスをテーブルに置い...
西門さんと手を繋いで車に向かう・・・今まで隣を歩くことは何度もあったけど、こうして繋ぐのは初めてでドキドキした。本当に、心臓が口から出そうなぐらい・・・。さっきは喧嘩腰の再会だったけど、そんな事ももう忘れてしまった。沢山あった不安も恐怖もなくなってく・・・私のドキドキが指を通して伝わりそうで、ちょっと怖かった。「マジ寒い・・・」「だからどうしてそんな薄いコートなのよ・・・北海道に来るつもりだったんでしょ?」「い...
土曜日になり、私達の結婚式・最終打ち合わせが行われた。当然偽名と変装で、今日も花沢さんは「総一郎さん」になり、私は「くるみ」。花沢さんは初めてだけど、私は3度目の偽名でこんがらがってた。だから名前を呼ばれても返事しない時があって、花沢さんが何度も私の脇腹や足を小突いたり蹴ったり・・・「牧野様、ドレスの手配は大丈夫でしたよね?花沢様、指輪もありますか?」「は、はい!なんとか間に合いました」「明日持って...
土曜日の朝、いつもより早くに目が覚めた。彼が来る時間は決まってるんだから急がなくてもいいんだけど、何故かソワソワして落ち着かない・・・御馳走も作りたいけど、西門さんの食べたいものを作ろうと思ってそれも後回し。洗濯をしようと思ったけど、この狭い部屋で洗濯物を見られなくなかったからやめて、取り敢えず掃除に専念した。その間も何度もスマホで時間を確認して、「まだ9時かぁ~」、「まだ9時半?」、「10時10分・...
「えっ?!佐藤さんと花沢さんが兄弟?!」「牧野さん、異母兄弟です。でもそんな事があるでしょうか・・・あの社長に限って」「・・・・・・独りっ子の俺が言うのもなんだけど、すごく仲がいいんだよね、うちの両親・・・」総二郎から衝撃の言葉を聞かされた翌日の昼・・・再び応接室で3人のランチタイムが始まり、そこで昨日の報告をした。結果、小早川朝子も佐藤の事を「毛利」と呼んでることと、ルビーは自分の物だと主張していることから、...
司と話して、西田と会って、牧野に報告して・・・・・・それから数日間が過ぎた。紅葉の茶会のあと3日間も部屋から出なかった伽耶と、俺と会おうとしなかったお袋。だがそんな事をいつまでも続けられず、漸く昨日から稽古を始めた。それは茶道だけじゃなく、華道や禅語、茶道具などの説明まで・・・今まで数ヶ月間、ほぼ外出して遊んでいただけに、今回は親父の監視の目がキツかったようだ。志乃さんから聞いた話だと、時々は俺じゃなく親...
次の日の夜、自宅で寛いでいたら総二郎がやって来た。早速情報屋が小早川朝子に接触し、その時の会話を録音したものを手に持って・・・何故かこの件に関しては動きが速く、西門流は暇なのかと思ってしまった。「まぁ、西門様、お久しぶりでございます~」「加代さん、元気そうだね♪」「はい、お陰さまで♥それと、今度の日曜日はお世話になるそうで~」「あぁ、類の結婚式ね?うん、俺、花沢総二郎になるんだってさ♪弟も来るからよろし...
「・・・これしかないのか・・・・・・こりゃすぐに終わるわね」夜になってから部屋の片付けをしてみたら、本当に荷物が少なくて驚いた。前の引っ越しでも殆ど処分したんだけど、今回は崇子さんの家に行くんだから最低限のものでいい・・・だからここでも手放す物の方が多い。「分厚い防寒着を買わなくて良かった~」と・・・そんな独り言を言いながら段ボールに詰めたのはぬいぐるみ達。これだけは捨てたくないから、あの家の隅っこにでも置かせ...
月曜日・・・いつも通りに出勤して、今日も頼まれた事務処理をする私。その横でこれまた静かに仕事をする佐藤さん・・・ちらっとその横顔を見たけど、やっぱり昨日ホテルで見たのはこの人だと確信。「・・・・・・ん?どうかした?牧野さん」「えっ///!いや、佐藤さん、鼻が高いなぁ~って思って!」「鼻?そんなの君だって・・・・・・あぁ、牧野さんのは可愛らしいんだね」「・・・・・・・・・・・・」それ、間接的に低いって言ってるよね?!どうせ唇の方が...
話の大半は聞けた・・・でも、牧野に恐怖を与えたヤツへの直接制裁はまだだ。それを聞いたら、中村は涼しい顔して「スタンガンを使ったのは私ではありませんから」と言いやがった。「牧野にストーキングしていたのはあんただろ?」「そうですが、あれは・・・地元のバイトですよ」「・・・バイト?」「そうです。私はNYで牧野さんと接しているので、声や体型でバレると思いましたので。適当に声を掛けたら乗って来た男にスタンガンを提供...
ドレスのコーナーから出てきたら花沢さんがいない・・・ふとロビーの方を見たらそこには沢山の人が右往左往してた。でもあの人はそんな中でも超目立つはず・・・そう思って眺めてたら、右側の窓際に居た。てか、スーツ姿の人の中で、普段着だから余計に目立つ!「一応、ご来店のカードにお名前を・・・」「あっ・・・彼を呼んできますので!」「はい♪では珈琲をご用意しますので、先程のテーブルにお越し下さいね」「は~~~い!」・・・なんて簡...
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そこまで話したとき、時間は15時になっていた。つくしはそろそろ園に電話をしないといけないので、類に断りを入れてスマホを手に持った。「もしもし、牧野ですけど・・・はい、お世話になっています。今日なんですけど、おむかえの時間を17時過ぎに変えても良いですか?用事があって遠くまで出掛けてまして、戻るのがそのぐらいになるんです。・・・はい、本郷美来ちゃんも同じ時間に・・・・・・美来ちゃんの具合は悪くなっていませんか?...
「勝手に熊にしたり星にされちゃたまんないわ💢女を何だと思ってんの?!」「その文句は俺に言うな、ゼウスに言ってくれ!」「だってさ~~~~・・・・・・はっ!」「どうした?」気が付いたら湯船にのんびり浸かって足を伸ばし、総二郎と肩がくっついた状態で夜空にクソ文句・・・真横を見たら麗しい顔が私を見てるし、ちょっと濡れた前髪が色っぽい。私はあれだけしっかり巻いてたバスタオルが緩んでて、身体が半分以上見えてる・・・「うわ...
それからも話合いは続き、「どうして真音の保育園が判ったのか」というつくしの疑問に入った。「俺が頼んだ情報屋が、偶然本郷って男の子どもが通う保育園に行って聞き込みをしたんだ。そこでつくしに見覚えがある人がいて、そこから保育士に接触したんだ」「あ・・・もしかしてひろみ先生?」「名前はよく覚えてないけど、その保育士が本郷を狙ってて・・・みたいな?その保育士から真音の保育園を聞いたんだ。でも真音がずっと休んでて...
総二郎が先に露天風呂に行ってから、私は1人でどうしようかとウロウロ・・・普通の旅館ならあるはずの脱衣場がないし、わざわざあそこまで行ってパンツを脱ぐのもヘン。それならテントの中で素っ裸になって、バスタオル巻いていく?そのタオル類が何処にあるかと探したら、部屋の隅にある棚に置いてあった。フェイスタオルにバスタオルも何枚か・・・「てか、それよりもシーツの替えが多いんだけど・・・どうしてだろう?」それは深く考えな...
この3年間の、類と真利愛の生活についての話は続いた。結婚式では総二郎、司、あきらも呼び、真利愛はすでに対面をしていること。そしてつくしの失踪は花沢家の仕組んだことであり、行方を捜しているということも話した、と。「そう言えば司がね・・・」「・・・道明寺・・・何か言ってた?」「ううん、特になにも・・・ただ真利愛を肩に乗っけて笑ってたよ、あいつ・・・」「えっ!真利愛があの人の肩に?!」「総二郎とあきらは花沢にすごく怒...
「はぁ~~~~~~!お腹いっぱい♪」「お前は飲まずに食ったからな・・・」もうバーベキューの網の上には焦げた野菜しかない。用意されていたお肉も殆どなくなり、総二郎は途中からビールばかり飲んでる。今はもうトングも置いてお皿に移したお肉をツマミに、すっかり暗くなった空を見上げ・・・・・・内心、これからどうするんだろう?ってドキドキしてた。しかもこのバーベキューテーブルのすぐ近くに露天風呂がある。嫌でも目に入るそれ...
西門邸・・・この広大な敷地を持つ屋敷は、正面から入ると美しい日本庭園に圧倒される。その庭にも色んな表情があり、竹林や梅園、桜の庭に紅葉の庭、そして石庭などもあって、その時期の茶会に相応しい庭を眺めながら茶会が出来るようになっていた。その中でも竹林に囲まれた庵・・・そこは躙り口のある本格的な茶室があり、特別な茶事にはそこを使うのだ。その反対側である北の庭は自然のままの庭があり、椿などの茶花となる花木が植え...
何とか予約したグランピングのフロントに到着・・・17時までって言われていたんだけど、そのギリギリの16時50分だった。私は運転席でぐったりしていたので、総二郎が元気よく手続きに行ってくれて、私達の泊まるテントの位置を聞いてくれた。「お待たせ~♪」「・・・すごい山の中だね~。車はどうすればいいの?」「ドームテントのすぐ近くまで行けば、そこに駐車場があるってさ」「了解・・・」「その場所聞いたんだけど、この道を左...
27日の夕方、類はいつものように執務室で仕事をしていた。その時に私用のスマホが鳴り、類はそれをチラッと見る。掛けてきたのは総二郎だ。当然そこには藤本もいたが、類はその電話に出ると「総二郎、どうかした?」と言った。その相手の名前で藤本が手を止め、類の方を見る・・・2日前の事があるので当然だろう。類はそれを見ないフリして席を立ち、窓の外に目を向けて話し始めた。これは「計画」の一部であり、前回のように類の...
もうすぐ5月という季節だから気温はぐんぐん上がってきた。だから着替えは嵩張らず、薄手の服に上着があれば大丈夫・・・?でも山の中だから寒いかも・・・と、なかなか持って行くものが決まらない。いや、昨日の夜に粗方決めてたんだけど、どうしても不安・・・必要ないのは可愛いワンピだって事ぐらいだ。「まぁ、いっか・・・国内だし、最悪どこかで買えば・・・」湯治の温泉だとかグランピングだとか言っても、場所は東北自動車道矢板ICを降...
キッチンで夕食をつくるつくし・・・その手にはスマホがあった。味噌汁を作りながら見ているのは真利愛の動画で、音を小さくして繰り返し見ていたのだ。子ども用ではない大きなベッドに寝かされている真利愛・・・そのベビー服は如何にも上質だとわかるもので、可愛らしいワンポイントの模様があるだけの真っ白なものだ。余計なフリルもリボンもない襟付きのロンパース・・・おそらくオーガニックコットンなのだろう。小さな手で顔を擦った...
とうとう来てしまったゴールデンウィーク初日・・・昨日の夜は目が冴えて眠れず、やっと寝たと思ったらもう朝だった。だから頭がぼんやりしちゃう・・・でも今日はそんな事言ってられない!だって再び5000万円のハンドルを握らなきゃいけないんだもん!僅かな傷だって許してくれないだろうから、ここは一発気合いを入れないと!!そしてその先は・・・・・・総二郎と山の中で1週間の監禁生活///!それがどんな感じなのかを想像したら頭が...
今日は通いの家政婦が来ているようで、無表情な女性が1人、せっせとテーブルに軽食を運んでいた。リビングには大きなクリスマスツリーがあり、壁にもクリスマスリース、窓辺にはポインセチアが並び、まるで12月のホテルロビーのような派手な飾り付けだ。そのクリスマスツリーはゴールドのライトが光るだけの大人っぽいもので、瑛翔も冷めた性格なのか感心はなさそうだ。真利愛は美央に後ろに隠れ、無言でこの部屋を見回している...
野田の話が気になり、俺はつくしの部屋に向かった。花と木(それとエロ本)にしか興味のない野田にも判ったぐらいの高嶋の態度・・・はやり何か企んでるな?と思ったから。「つくし、入るぞ~」そう言ってドアを開けたが・・・・・・そこにつくしの姿はなかった。でも鞄はあるし、着ていた服も脱いである。それに部屋の隅には小さなスーツケースが広げられていて、そこにはカラフルな下着が山ほど置いてあった。・・・なるほど、これがグランピ...
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...
どうしてこうなったんだか・・・・・・。確かに今日の夜にはマンションに集まることになったけど、ご飯は「私の手料理」なんて。しかも藤本さんのリクエストでオムライス。まさかのオムライス・・・あの人がオムライス!!あの顔でオムライ・・・・・・・・・いや、言い過ぎか。そして花沢さんのひと言でデミグラスソースのオムライスになり、私は帰り道で足りない材料を買うことになった。もちろんお金は藤本さんから1万円もらった。380円しか持...
葛城が言った「デート」って言葉にカチンときた。が、すぐに俺がどうこう言う立場にないことを思い出し、それまでの苛立ちを胸の奥底に隠した。牧野と俺は友人・・・・・・それ以上でもそれ以下でもない。同性なら親友になれたかもってぐらいの仲・・・・・・多分、こいつもそう思ってるはずだ。だから強張っていた表情筋を緩め、いつもの笑顔を作っていた。そして俺の方はと言うと、腕にそっと触れた伽耶が、「こちらは?」と聞いて来た。「あ...
「牧野さん、12時になったから休憩したら?」「あ、は~~~い」秘書室の会議室で、今日も朝から秘書検定の勉強中・・・そんな私に佐藤さんが声を掛けてくれたから、ゆっくり立ち上がってフロアに戻った。そこに居たのは極僅かな男性の先輩達・・・安藤さん達は全員お出掛けで助かった。「・・・はぁ・・・」「あれ?牧野さん、顔色悪いけど大丈夫?」「あはは・・・ずっと文字を見てたら疲れちゃって」「そうだよね~、午後からは書類整理、頼...
美術館から出ると、俺達は真っ直ぐ駐車場に向かうはずだった。だが、ここで急に伽耶が駅の中にあるショッピングセンターに寄りたいと言いだし、そっちに足を向けた。「申し訳ありません、総二郎様。ちょうどそこに母が好きなお店があって、かや織のストールを母の日にプレゼントしようと思いまして・・・」「いえ、構いませんよ。かや織ですか・・・夏にはいいでしょうね」「あら、ご存じなのですか?」「えぇ、向こう側が透けるほど薄い...
牧野はお婆様の部屋のあちこちを調べ始めた。机の引き出し、本棚の中、チェストの引き出し・・・もちろん俺に断わってからだけど、そこを開けては「何もないなぁ~」と。それは当たり前。今、牧野が調べた所は俺だって見てる。しかも引き出しを開けるための鍵の在処を教えてくれるのが宝石達・・・だからお婆様の宝物がこの部屋から簡単に出てくるはずがない。そう言うと、「ですよね~~」と苦笑いしてた。「ドラマとか映画でよくあるじ...
今日は汗ばむほどの陽気・・・少し歩いただけで汗が滲む。日傘を持ってくれば良かったな、と片手で顔を隠しながら歩いた。そして動物園の西側に入ってすぐ、子ども連れの人達中心に沢山集まっていたのはパンダの展示。とても近づけないので苦笑いして通過し、少し早いけど休憩所に向かった。そこは藤棚があって、その下には既に沢山の人が・・・でも丁度2人なら座れるスペースを見付けて、葛城さんがそこを取ってくれた。私も汗を拭いな...
お肉料理までとにかく散々な目に遭った。私の前のテーブルクロスだけ汚れがすごい・・・そして花沢さんのお皿は見事に綺麗。お手本と言われたけど、彼を見る暇はあんまりなかった・・・と言うか、肝心な時にこの人はさっさと食べてた。私のペースに合わせて食べてって加代さんも言ってたのに💢「それでは牧野様、これが最後ですわ。デザートと珈琲でございます」「うわぁ、美味しそう♥」「おほほほほほ、ちゃんとしたお席では嬉しくても叫...
駅前の駐車場に車を入れたら、私達は並んで動物園までの道を歩いた。開園は9時半だけど、私達が着いたのはその15分前・・・でも、もう沢山の人が並んでた。それを待つ間も葛城さんが重たい鞄を持ってくれて、逆に私は申し訳なくて・・・でも、この人は嬉しそうに「このぐらい軽いって」と笑ってくれた。こんな人混み・・・恋人なら腕ぐらい持つのかもしれないけど、私にはそれがまだ出来なくて・・・勇気を出して掴んだとしても、その先に進...
加代さんって人がにこやかに「お料理はもう出来上がっておりますからね」と言い、花沢さんは固まってる私に「前にも話しただろ?テーブルマナーだよ」と・・・いやいやいや!テーブルマナーって!今度のパーティーは立食って言ったじゃん!!「花沢さん?!私が勉強していたのは立食のマナーで・・・」「あぁ、それも今度やるよ。でもマナーの基本はテーブルだろ。だから初めにそっちからね」「類様から聞いております。牧野様は今までそ...
28日は月末近くて大忙しだった。勤務を終えたのは21時で、それから急いでマンションに戻った。でも部屋には入らずに車に乗り込み、すぐに向かったのは深夜まで開いてる近所のスーパー。そこで残り少ない食材の中から、お弁当に出来そうな物を買い込み、帰宅したのはもう23時だった。「まぁ、仕方ないよね・・・手の込んだ物は作れないけど、葛城さんなら許してくれるかな・・・」お風呂の準備をした後でお弁当の下拵えをして、それ...
一体この会社に何をしに来てるのやら・・・・・・そんな疑問をゴクンと飲み込んで、今日も業務終了。秘書課の仕事なんてほぼしてないんだけど、指導係が藤本さんだからなのか、みんな何も言わない。それに最近はお姉様達も忙しそうで、私に嫌がらせなんてしてこない。3月末が決算で、4月からは新しい年度・・・その関係で本部長さん達も忙しいみたい。上司が忙しいと当然秘書も忙しくなり、常務が長期出張だから安藤さんも居ないし・・・って...
「よかったら明後日の29日、私にお付き合いくださいませんか?」思い詰めたような表情の伽耶がそう言って、両手を胸の前で組んで震わせていた。それが演技なのか、それともマジなのか・・・・・・普段から俺を困らせるような態度をとったりしない人だから、それは後者の方だと思ってやりたいが・・・「29日ですか?」「はい・・・その日だけでいいです。総二郎様とお出掛けしたくて・・・」「出掛けるとは・・・何処へ?」「何処でも・・・ドライブ...
1週間が過ぎて3月の後半・・・私は先輩達に頼まれた雑用の時以外は会議室に籠もってひたすらパーティーマナーの勉強と、秘書検定3級の勉強をしていた。まさか、こんなにも覚えなきゃいけない事があるとは・・・しかも会社の業務って言うより、一般常識とかマナーの動画研修ってどうなの?と思いながらも画面の中の料理に釘付け♪そうは言ってもこれでお給料をもらうんだから仕方がない。単語の意味から調べなきゃいけない分野だけど、...
牧野と再会してから半月が経った。電話番号を交換したからと言ってお互いに電話をかけるわけでもなく、時々LINEで『どうしてるんだ?』と聞くと、それなりに返信があるぐらいだ。その文面からは俺に対する警戒心も感じられないし、数年前に戻ったかのよう・・・時々文字を打ち間違えて送ってくるから、相変わらずドジなんだと思えて笑った。『今度一緒にご飯食べようよ』とか送ってくるけど、それの計画を立てたことはない。『お前の...
「はぁ~~~~~!やっぱり美味しい~~♥」花沢さんが持って来てくれた社食の特上日替わりランチ(夜に食べたけど)、冷めてても十分に美味しくて大満足!藤本さんは「昼にも食べたのに」って呆れていたけど、それでも涙が出そうなぐらい美味しかったんだもん♪花沢さんと出会ってから、毎日御馳走食べてるから、ホントに嬉しくて・・・もしかしたら3㎏ぐらい太ったかも!?なんて1人で喜んでるけど、花沢さん達にもちゃんとご飯を...
『・・・・・・・・・・・・ったな・・・・・・・・・野・・・』会社のみんなと飲み会に行く途中、私の後ろから聞き覚えのある声がした。自分の名前を呼ばれたと思ったから振り向いたんだけど、そこには沢山の人がいるだけで声の主が見えない・・・しかも、この人達は全員グレーの影だけで顔が見えない。そうしているうちに私の前を歩いてる人がサーッと移動して、その向こうに唯一色の付いた人が・・・・・・その独特なシルエットに胸がトクンと鳴った。私は小さな...
甘く見ていた秘書検定3級・・・パソコンで過去問やってみたけど、結構間違えた。秘書検定は社会人に欠かせない能力が身についていることの証明・・・らしい。試験に合格すると、秘書に求められる知識・技能、一般常識、敬語の使い方、電話応対やビジネス文書の作成等の能力が身についていると見做されるっていうけど、就職に有利なのは2級からで、3級を受験するのは大半が高校生・専門生・・・らしい。その学生中心で受ける3級の合格率...
タクシーはM町に向けて静かに走り出した。牧野は初めに比べて随分表情が柔らかくなり、言葉も増えた。それは俺に会って謝る事が出来たからなのか・・・こいつの胸のうちは判らねぇけど、ホッとしたように口元を緩ませてた。再会したときのようなピリピリとした緊張感もなく、俺から遠離る仕草もない。俺は牧野の方にある自分の腕が疼くのを感じながら、そいつが暴走しないように反対の手で押さえた。「あぁ、そうだ。お前、今の電話番...
結局ひとつ余ってしまった社食のランチ・・・どうするのかな~と思って眺めていたら、それを藤本さんが持ち上げた瞬間に目が合った。思わず視線を逸らしたけど、そのあとで言われたのが・・・「牧野さん、これ、晩ご飯にしますか?」「はいっ!いただきます!!」「・・・・・・・・・ぷっ・・・」「花沢さん、今笑いました?」「いや、そんな事はない。午後の仕事に取り掛かろうか」「牧野さん、会社では専務と呼んでいただけませんか?」「あっ!そ...
自分では説明は出来ないと言い、俺に質問しろという・・・1度は目を合わせたが、牧野はすぐに何もない部屋の壁に視線を移した。心底困ったという顔・・・まるで俺が悪人のような気分にさえなった。それでもこの機会を逃したら、またこいつが居なくなるような気がして・・・まずは現在の住所を聞いた。それは都心のM町だと言い、ワンルームマンションを借りていると。ワンルームなら1人暮らしか・・・と何故かホッとする俺。携帯の番号を変えた...