桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「よかったら明後日の29日、私にお付き合いくださいませんか?」思い詰めたような表情の伽耶がそう言って、両手を胸の前で組んで震わせていた。それが演技なのか、それともマジなのか・・・・・・普段から俺を困らせるような態度をとったりしない人だから、それは後者の方だと思ってやりたいが・・・「29日ですか?」「はい・・・その日だけでいいです。総二郎様とお出掛けしたくて・・・」「出掛けるとは・・・何処へ?」「何処でも・・・ドライブ...
1週間が過ぎて3月の後半・・・私は先輩達に頼まれた雑用の時以外は会議室に籠もってひたすらパーティーマナーの勉強と、秘書検定3級の勉強をしていた。まさか、こんなにも覚えなきゃいけない事があるとは・・・しかも会社の業務って言うより、一般常識とかマナーの動画研修ってどうなの?と思いながらも画面の中の料理に釘付け♪そうは言ってもこれでお給料をもらうんだから仕方がない。単語の意味から調べなきゃいけない分野だけど、...
牧野と再会してから半月が経った。電話番号を交換したからと言ってお互いに電話をかけるわけでもなく、時々LINEで『どうしてるんだ?』と聞くと、それなりに返信があるぐらいだ。その文面からは俺に対する警戒心も感じられないし、数年前に戻ったかのよう・・・時々文字を打ち間違えて送ってくるから、相変わらずドジなんだと思えて笑った。『今度一緒にご飯食べようよ』とか送ってくるけど、それの計画を立てたことはない。『お前の...
「はぁ~~~~~!やっぱり美味しい~~♥」花沢さんが持って来てくれた社食の特上日替わりランチ(夜に食べたけど)、冷めてても十分に美味しくて大満足!藤本さんは「昼にも食べたのに」って呆れていたけど、それでも涙が出そうなぐらい美味しかったんだもん♪花沢さんと出会ってから、毎日御馳走食べてるから、ホントに嬉しくて・・・もしかしたら3㎏ぐらい太ったかも!?なんて1人で喜んでるけど、花沢さん達にもちゃんとご飯を...
『・・・・・・・・・・・・ったな・・・・・・・・・野・・・』会社のみんなと飲み会に行く途中、私の後ろから聞き覚えのある声がした。自分の名前を呼ばれたと思ったから振り向いたんだけど、そこには沢山の人がいるだけで声の主が見えない・・・しかも、この人達は全員グレーの影だけで顔が見えない。そうしているうちに私の前を歩いてる人がサーッと移動して、その向こうに唯一色の付いた人が・・・・・・その独特なシルエットに胸がトクンと鳴った。私は小さな...
甘く見ていた秘書検定3級・・・パソコンで過去問やってみたけど、結構間違えた。秘書検定は社会人に欠かせない能力が身についていることの証明・・・らしい。試験に合格すると、秘書に求められる知識・技能、一般常識、敬語の使い方、電話応対やビジネス文書の作成等の能力が身についていると見做されるっていうけど、就職に有利なのは2級からで、3級を受験するのは大半が高校生・専門生・・・らしい。その学生中心で受ける3級の合格率...
タクシーはM町に向けて静かに走り出した。牧野は初めに比べて随分表情が柔らかくなり、言葉も増えた。それは俺に会って謝る事が出来たからなのか・・・こいつの胸のうちは判らねぇけど、ホッとしたように口元を緩ませてた。再会したときのようなピリピリとした緊張感もなく、俺から遠離る仕草もない。俺は牧野の方にある自分の腕が疼くのを感じながら、そいつが暴走しないように反対の手で押さえた。「あぁ、そうだ。お前、今の電話番...
結局ひとつ余ってしまった社食のランチ・・・どうするのかな~と思って眺めていたら、それを藤本さんが持ち上げた瞬間に目が合った。思わず視線を逸らしたけど、そのあとで言われたのが・・・「牧野さん、これ、晩ご飯にしますか?」「はいっ!いただきます!!」「・・・・・・・・・ぷっ・・・」「花沢さん、今笑いました?」「いや、そんな事はない。午後の仕事に取り掛かろうか」「牧野さん、会社では専務と呼んでいただけませんか?」「あっ!そ...
自分では説明は出来ないと言い、俺に質問しろという・・・1度は目を合わせたが、牧野はすぐに何もない部屋の壁に視線を移した。心底困ったという顔・・・まるで俺が悪人のような気分にさえなった。それでもこの機会を逃したら、またこいつが居なくなるような気がして・・・まずは現在の住所を聞いた。それは都心のM町だと言い、ワンルームマンションを借りていると。ワンルームなら1人暮らしか・・・と何故かホッとする俺。携帯の番号を変えた...
<side藤本>牧野さんが大発見とか言うから、今日もこの応接室でランチ・・・毎日こんな事は出来ないのにと思うものの、その大発見が気になって、専務の指示で社食に日替わりを注文。つい、調子に乗って「特上」にしてしまったが、それが届いていつでも食べられるようにしていたら、牧野さんがノックしてきた。廊下で待ってると誰かに見付かるリスクが高いと思い、すぐに開けると彼女は大荷物を抱えて入って来た。「役員フロアの受付...
「お~~~~~~い、俺の事を忘れてないか?」「あ?あぁ、完全に忘れてたわ」俺の後ろで書道家の友人が叫ぶ・・・でも、そいつもすぐに何かを察したのか、苦笑いしながら「んじゃ、俺は帰るわ」と言って踵を返した。俺もその背中に手を振って、「また飲もうぜ」というと、ヒラヒラと手を振られた。そのあと再び牧野の方に顔を向けると、こいつはバツが悪そうに下を向いてやがった。ゆっくりそこに近付くと、何故かこいつの身体が逃...
秘書室に着くと藤本さんは社用と私用の電話番号を教えてくれた後、パソコンで出退勤システムの入力をしてからすぐに「専務の出迎えに行ってきます」と言って出ていった。私は更衣室に入ってコートを脱ぎ、お弁当の入った紙袋をロッカーへ入れた。その時にも後ろにはお姉様達・・・挨拶はもちろんしたけど、怖いから振り向く事も出来ない。でも背中を向けてたら、また何かをされるかも・・・そう思うと恐ろしくて、勇気を振り絞ってクルッ...
「もしも何も予定がないならさ、俺と沖縄にいかない?」葛城さんが真面目な顔でそういうから一瞬キョトン・・・「今年のゴールデンウィークは最大9連休取れるだろ?牧野は無理なのか?」って言われて、慌てて無理だと言った。だって告白はされたけど、その返事をしていない私に旅行の誘い?それって・・・友達とか同僚って意味じゃないよね?行ってしまったら、自然と同じ部屋に・・・そう考えてるって事だよね?彼が石垣島とか宮古島とか...
昨日俺が買った白米・・・その炊きたてのご飯と、キノコの味噌汁。肉じゃがと言う料理は聞いた事があるけど、ひじきと大豆の五目煮は知らない。茶碗蒸しは料亭で食べたことはある・・・温かいプリンみたいなヤツだ。それに綺麗な黄色の卵焼き・・・これを牧野が作ったんだと思ったらすごく不思議だった。「はい、じゃあいただきま~~~す!」「・・・・・・いただきます」「お口に合うといいんだけど♪」はじめにキノコの味噌汁を・・・・・・それはほん...
18時になり、今日は残業無しで帰ることにした。葛城さんとの約束もあるし・・・・・・それに最近帰宅が遅かったから結構疲れていた。デスクの上には今にも崩れそうな書類の山・・・それを片付けていたら、手元が狂って床にばらまいてしまった。慌てて拾ってると先輩がそれを手伝ってくれて・・・「牧野さん、顔色悪いよ?風邪引いた?」「えっ?ううん、大丈夫です。今日は早く帰るんで」「そお?寄り道せずに早く帰ってゆっくり寝なさいね」...
翌日の日曜日。この日もお天気だったから、早速私はサンルームでお布団を干した。超高級な物干し竿&台・・・正直、どうしてそんなに高いのか、私にはさっぱり判らなかったけど。でも「高級品」と言われたら、この銀色も特別な輝きに見えるから不思議だ。それが済んだら洗濯機の説明書を読み・・・・・・「今までが壊れかけの二槽式洗濯機だったからなぁ・・・ドラム式ってなんで斜めなんだろう?」取説によるとドラム式洗濯機は洗濯槽の回転軸...
牧野のマンション前から移動しても、バックミラーに映る姿を何度も見ていた。でも曲がってしまえばそれも見えなくなり・・・俺は溜息を漏らして自宅方面に向かった。本当に平気か・・・なんて、大丈夫だと言ってるあいつに他の言葉を言わせたかったのか?俺は自分が牧野をコントロールしようとしているような気がして、その瞬間すげぇ情けなかった。平気じゃないと言われたらどうするつもりだったのか・・・助けてくれと言われたとして、ど...
私の聞き間違いだろうか・・・今、米100㎏と聞こえたのだが。米100㎏を誰が食べるというの?私がキョトンとしていたら、花沢さんはスタスタと車に向かって歩き出して・・・はっ!と気がついて後を追った。そして背中に向かって「どういう事ですか?」って聞いたら・・・「あそこに精米店ってのがあったから、空き時間に米買った、それだけだよ。すごいよね、マンションまで持って来てくれるって」「配達してくれるんですか?それはす...
お蕎麦を食べ終わった頃、外はもう真っ暗・・・西門さんは「絶対に無理すんな」って言葉を残してマンションから出て行った。私は駐車場まで降りて、そこでもう1度お礼を言い、マンションの契約手続きも全部任せてしまった。彼はレンタカーの窓をあけて片腕を掛け、少し苦笑いしながら「本当に平気か?」と・・・「うん、もう言葉にも困らないし、引っ越しも出来たし・・・めっちゃ遅いけど就活始めるよ」「まぁ、のんびり探せばよくね?家...
花沢さんが景気よくカードでお支払い・・・私はその時、店員さんが抱えてきた高級そうな長い箱を眺めていた。しかも私の買い物だって特大の袋に4つ分で、それがあの車に乗せられるのかと・・・そうしたらあの日に配達してくれた人がすっ飛んで来て、「本日もお運びします!」って。・・・うん、確かに花沢さんの車は大きいけど前だけがびょんと長いだけだし、二人乗り出し、後ろが狭すぎて入りそうにないんだけどさ。「ちょっ・・・なんでそん...
引っ越し業者に頼むほどの量もない・・・そんな牧野の引っ越しは俺1人でやった。まだまだフラつくあいつには荷物の片付けだけさせて、俺は借りていたワンボックスへの積み込み作業で汗だくになった。常日頃大事にしている手だが、あちこちに小さな傷が出来る。それを牧野に見せないように隠しながら、俺は段ボールを運び出した。大半は不用品回収業者が持っていくから、僅かな食器類と、メインは衣類・・・牧野はそれを段ボールに詰めな...
花沢物産に入社して数日後、初めての土曜日が来た。仕事が休みで、このマンションでは初めての休日・・・・・・空気はまだ冷たいけど、小鳥の声も聞こえてサイコー!!そしてめっちゃ天気がいい♪光合成できたらいいのに~って感じ♪「・・・とは言え、お布団が干せないのよね・・・あぁ、この日差しが勿体ない!!」バルコニーに出て眩しい朝日を見上げ、そんな言葉を吐き出した。お隣との境は高く、覗いて見ることも出来ない・・・一体どんな風に...
羽田に着いて西門さんの顔を見た瞬間、それまで張り詰めていたものがプツッと切れた気がした。それは自分でも驚く程に・・・全身の力が抜けてしまった。悲しいというよりは心底疲れたって感じで・・・西門さんが支えてくれる手に甘えてしまった。帰国する時、向こうで買ったものは全部置いてきたから小さな鞄だけ・・・それさえも鉛のように感じていたから、西門さんがヒョイッと持ってくれたときには嬉しくて・・・駐車場は遠かったけど、そこ...
「うわああぁっ!すっごい豪華な海鮮ちらしのお弁当~~~~っ!!」「うん、美味しそうですね♪」「そう言ってもらえてなにより・・・」「じゃあ専務、遠慮無くいただきます。では、私がお茶を煎れましょうか」「あぁ、この弁当には玉露が付いてるよ」「きゃあ♥至れり尽くせりですねっ♪」昨日と同じようにマンション前で待ち合わせ、花沢さんが到着したら3人で部屋に戻った。そして手渡されたお弁当の蓋を取って、1人で大はしゃぎし...
正月になっても牧野から連絡はなく、今頃何処で、どうしているのか・・・それを確かめる立場にない俺は、ただ悶々とした冬を過ごした。近年になく大雪が降った庭を眺めては・・・アメリカで大きな事件が起きたとのニュースを見ては・・・殺風景な庭に紅梅が咲いたときには、その小さな花があいつに見えて・・・この感覚はなんだろうと自分に問うてみたが判らなかった。半袖薄着だった牧野・・・空港でそんなあいつを見送ってから半年近く。NYの真...
「一体どういう神経をしてるんだ?!男子トイレに潜んだ挙句、そんな質問をするなんて・・・・・・信じられないんだけど!!」専務執務室に戻ってから自分のデスクをバン!と叩きながら叫んだ瞬間、戻ってきた藤本に「どうかしたんですか?」と言われ・・・俺はさっきの牧野の言葉を伝えた。そうしたら藤本も「えっ?」と軽く驚き・・・その後、額を抱えた。「そんなに人のトイレ事情が気になる?確かに女性から見れば男のそういうのは疑問かも...
庭の木で蝉が喧しく鳴く・・・・・・それを聞きながら思い出すのは、1週間前に渡米した牧野の顔だった。痩せ我慢がバレバレの笑顔で、引き攣りながら手を振って・・・ちゃんと会えたって言うメール以降、なんの連絡もなかった。牧野には言わなかったが、西田を頼らなくても司の居場所を知る手段は・・・あるっちゃある。俺の立場では難しいが、あきらや類を使えば簡単に情報は入手できる。そう思ってあきらにそれを依頼した。当然あきらは理由...
写真の選別が終わると私の仕事はなくなり、1人で秘書室に戻って入社書類を改めて提出。それ以外はどうしていいのか判らないから、藤本さんに言われたように社内規定でも読んでおこうと、そのファイルを手に持ってデスクにもどった。その1枚目は.基本経営・・・定款とか企業理念ってやつ。読んでもちんぷんかんぷんで、日本語が摩訶不思議な記号に見えるぐらい。次に組織規程・組織図を見たけど、細かすぎて目が痛かった。関係会社管...
アッパー・イースト・サイドにあるマンションに行くと、そこは昨日のホテルほどの豪華さはなく、急いで住めるようにしてくれたって感じだった。それでもそんなに素早く、すべての家具家電が手配出来るものなのだろうかと不思議・・・というか流石だと思った。でもそれを聞くと、この部屋は元々道明寺が日本から来た幹部社員のために用意していた部屋だそうだ。だから寝具を替えただけで、後は少し前まで誰かが使っていたらしい。「ハ...
「この前田さんの写真、見落としてたけど一緒にいるのは徳川さんじゃないですか?斜め後ろ姿だからわかりにくいけど、この髪型とか体形、徳川さんに似てません?」「・・・・・・・・・・・・」私がそう言って一枚の写真を差し出すと、それを見た花沢さんが沈黙&凝視・・・どうしたのかと思ったら、急に立ち上がって執務室の方に向かって走って行った。そしてすぐに藤本さんを連れて戻ってきて、彼は「なんですか、仕事に専念して下さい!」と言...
スマホを握り締めてるけど、道明寺からの電話もメッセージもない。ホテルの部屋から出るなと言われ・・・でもお腹が空いた。思い返すと、今朝は珈琲しか飲んでない・・・緊張で身体がガチガチだったから。それに今頃時差ボケが始まったのか、頭が痛くて・・・でも、ジッとしていると嫌な想像ばかりしてしまう。少しぐらいなら出掛けてもいいかと思い、ここではガイドブックを見てもいいよね?と、それを広げた。パラパラと捲っていると、グ...
昼休みが終わって、1度秘書室に戻った。そこで藤本さんが課長に、「牧野さんは資料室で自習してもらいますので」と・・・それに対して課長は、私が居ると揉め事が起きるからなのか、あっさり了承してくれた。そして如何にも勉強するかのように大きなファイルを持って、藤本さんの後ろを歩いてさっきの応接室へ・・・その時には受付のお姉さんが戻ってきてたけど、藤本さんは至極普通に「お疲れ様です」と言って通過。相手が藤本さんだか...
「総二郎様、野点の道具類の片付け、すべて終了いたしました」「・・・あぁ、ご苦労さん」「次は葵の茶会ですねぇ。今年は暑いという予報ですし、あっという間に夏が来そうですね~」「そうだな・・・・・・」西門の庭で咲く桜・・・今年は例年になく桜の開花が早かった。今は遅咲きの桜が満開で、それ以外の花は散ってしまった。これを見ると思い出す・・・・・・牧野がアメリカから帰って来た日の事を。痩せこけて、真っ青で、笑顔もない。まるで魂...
若干赤味が残った顔・・・ドアと大喧嘩したとはいえ、骨折なんてしてるわけもなく、目にも鼻にも異常なし。そんなことよりも、本当に藤本さんがメイク直しを依頼して、2人いた看護師さんは快くOKしてくれたことに吃驚した。ついでに「最近流行のメイク術」ってのも教えてもらい・・・とは言え、自分で出来るかどうかは判らない。スマホで「メイク術」も学べると言われ、そんな動画を見せてもらったりして、初めてこんなガールズトークみ...
また桜が散る季節が来た・・・・・・・・・交差点の信号待ち、会社近くの公園を見て溜息が漏れた。私はこの季節が好きじゃない。あいつとの別れを思い出すから・・・・・・昔は淡いピンク色のこの花が咲くとワクワクしたのに、今じゃ見るのも苦しいと思うほどだ。それほどあの時は辛かった。魅惑的なマンハッタンの街が巨大な怪物に見えて、暑さで汗が止まらないのか、寒さで震えが止まらないのかも判らなかった。勉強したはずの英語ですら意味不...
昨日と同じところで降ろされ、花沢さんはまたあっさり発進・・・あっという間に見えなくなってしまった。そして後ろから「おはようございます」と藤本さんの声がして、クルッと振り向いてから「昨日は遅くまでお疲れさまでした」と・・・そうしたら少しだけ眉間に縦皺寄せて、「昨夜のことは口に出さないでください」と言われてしまった。回りには誰もいないのに、と左右を見てると・・・「何処で誰が聞いてるかなんて判らないものです。特...
11時を少し回った・・・この時間が合格発表だと知っていたから、俺はソワソワ・・・そうしたら、15分ほど経ってつくしから電話があった。メッセージだと思っていた俺はビクッとしたが、万が一不合格でも人生が終わるわけじゃねぇ。だから自分に「落ち着け~~」と言いながら、その電話に出ると・・・『総二郎~~~~っ!!合格したよ~~~♪』『マジか!!』『マジマジ!!午後には免許証もってそこに行くね~~~!!』「良かったな、...
お風呂の準備をしてる間に台所用品の片付けをした。引き出しは沢山あるけど本当に使った事がないらしく、そこに私が初めて物を入れていくという緊張感・・・花沢さんが使うことはないのかもしれないから、自分の好きなように入れていった。こんな高級なシステムキッチンはもちろん初めてで、調理器具は何処に入れていいのやら。今までだとシンクの上に壊れかけの棚があって、そこにボウルとか置いてたのに。「あぁ、この下が調理器具...
「は?一昨日卒業検定受けたのに、もう来週の月曜日に本試験に行くのか?」「行く!!頭が覚えてるうちに行かなきゃ忘れちゃう!」「・・・・・・・・・そうか」「だから合格するまでベッドは別だから」「えっ?!!」えっ?!と言われても、そう決めたんだもん!だってその次の土曜日には引っ越し、日曜日は桜の茶会・・・だから今のうちに試験を受けて、絶対合格して運転免許をこの手に持つんだもん♪そう言ったらガクッとしている総二郎・・・で...
時間は既に0時を回り、花沢さん達は帰り支度を始めた。そして最後に、「ここまで話したんだから暫く俺の言うとおりにしてくれ」って・・・藤本さんは相変わらず不機嫌な顔で何も返事をしなかったけど、私はコクコクと頷くことしか出来なかった。同時に・・・花沢さんが探しているものを一緒に探してあげたらどうだろうかと・・・そんな思いも浮かんだ。漠然としたものだけど、私も何かを探しているから・・・だから、帰りかけた後ろ姿に、「あ...
3月になったらすぐにあるのが「桃の茶会」・・・雛の茶事と呼ばれるものだ。3月3日は五節句の一つ、上巳の節句で別名・桃の節句。西門では桜の野点茶会の前の恒例行事として、毎年これを開催している。宗家に娘がいなかったからイマイチ不思議な光景ではあるが、お袋が1年で1番好きな茶事だ。・・・俺達のせいじゃねぇのに、いつも「お雛様は華やかでいいわねぇ」と嫌味っぽく言ってやがった。何度か「じゃあもう1人産んだら?」っ...
<side藤本>突拍子もない話に驚き、そのまま黙って聞いていたが・・・よく考えたら仕事中に調べていたってことか?そう言えば専務になりたての頃、1人で出掛けることが何度かあった。それが徳川建設を調べていたとしたら・・・それを聞いたら、「その通り」とあっさり認めた💢「そう言う事は土日の休みの日にしていただけませんか💢」「公的機関にいくなら平日だろ。だから仕方なかったんだ」「それでも私的なことです。どうしてもと言う...
京都に両親を送り届けてから数日後、総二郎から仕事を辞めないかと言われた。それには一瞬驚いたけど、3月末でこの部屋を引き払って宗家に戻ろうと・・・この前見たあの部屋で暮らさないかと。もちろんいずれはそうなると思っていたし、総二郎がこのマンションも春までだと言ってたから引っ越すのは判ってた。でも仕事まで同時にやめるとは思っていなくて・・・「辞めるとなれば2ヶ月ぐらい前には会社に言わなきゃならねぇだろ?」「う...
花沢さんが内線でコンシェルジュさんに連絡・・・そうしたら20分もしないうちに部屋におつまみとノンアルコールのスパークリングワインが届けられた。そのおつまみはコンビーフとクリームチーズのディップ、チーズとハムのピンチョス、パプリカとカマンベールチーズ焼きにミニトマトのカプレーゼ風・・・名前を聞いてもサッパリだけど、見た目はすごく可愛かった。しかも生ハムとかオリーブとかアンチョビとか・・・食べた事がない食材で...
新年になって初めての日曜日は初釜だった。でも私はまだ何も判らないから表には出なくて、志乃さんにくっついて裏方の仕事をすることになった。その時に着たのは大晦日にも借りた江戸小紋で、西門の紋付き。だから自然とそこに目がいった人もいて、「あれは何方?」なんて声もチラホラ・・・でも愛想良く笑うだけで何も応えず、チョコマカと動き回っていた。初釜式・・・年が明けて最初に行われる茶会のことだけど、1年の稽古初めとなる...
ドラッグストアから戻ったら、部屋にあったデリバリーの容器は全部綺麗に片付いていた。そして藤本さんがテーブルを拭いてて、「買い物は出来ましたか?」と・・・ちゃんとしたハンカチとポケットティッシュを用意したと言えば・・・「デスクの上で使う物は品良く揃えて下さい。どんな些細な事でも標的にされますからね」「はいっ!」「元気良すぎる返事も狙われる原因の1つです。目立ちすぎず陰キャラになりすぎず、出しゃばらず常に謙...
人生初の路上研修が終わり、私は無事に自動車教習所に戻ってきた。戻ってきたけど・・・車の中で放心状態だった。何故なら普通に走ってる車による圧迫感が半端ないんだもん・・・。後ろからトラックが来た時には恐ろしくなり、思わずアクセルじゃなくブレーキを踏みそうになった。もちろんぬりかべ教官が丁寧に指導してくれて事故にはならなかったけど、トラックからは思いっきりクラクションを鳴らされた。その時の速度が時速40㎞・・・...
デザートも終り、私達の前には珈琲カップが置かれた。元々置いてあった白い高級そうな珈琲カップが花沢さんと藤本さん・・・私の前にはホームセンターで買った200円のマグカップ。珈琲を入れてくれたのは花沢さんだけど、無意識に私には安物をチョイスしたんだろうと思って複雑だった。それよりも藤本さんが一昨日の私と同じ顔になって、混乱してるのがよく判る。そうだよね~と納得しながら2人のやり取りを聞いてると、藤本さん...
4日の朝、いつものようにつくしを会社に送り届けたが、流石に今日は俺にも緊張があった。何故なら・・・初めてこいつがハンドルを握って公道に出るからだ。それは教習所内の運転とは全く違い、一般走行車と一般人がウヨウヨいる場所だ。しかも夜間・・・昼間よりは格段に難易度が上がる。とは言え教官同乗だから、今のうちに夜間走行を経験するのはいいと思う・・・昼間しか乗らずに卒業して、たった独りで夜間を走ることになったら、その...
藤本がキレている・・・それは判ったけど、今から話す内容はそんなに簡単じゃない。だからまずはイライラしない為と、理解度を高めるためにも食事をして脳に糖分を・・・と思ってのこと。俺がそう言うと、藤本が「とにかく早くいただきましょう」とムスッとした顔でそこに座った。「それにしても、ダイニングテーブルじゃなく、リビングのローテーブルですか・・・」「その方が牧野が食べやすいかと思って」「すみません!気を遣っていただ...
元旦の夕食・・・考ちゃんが帰ってこなかったけど、志乃さんや料理長、西村事務長も加わってみんなでワイワイ食べた。この時の話題の中心は祥兄ちゃんで、オーストラリアでの暮らしぶりをみんなが聞いていた。「どんな所にお住まいですの?」「研修先のドクターが所有してる小さな一軒家を借りてるよ。もう1人研修生がいるから2人で住んでるんだけど」「えっ!それは男性?女性?!」私が大声で聞くと、笑いながら「男性だよ」って・...
ちゃんとルームキーのことは話したのに・・・私の言うことなんて全然聞いてないんだな、とちょっとショックだった。花沢さんが来るまでに藤本さんとそんな話をしていたら、「他人に感心がない人なので」とあっさり。総務の人もそんな事言ってたけど、本当にそうなのかな~と不思議だった。もっと感情豊かな人で、実はそれを自分でも気付いてなかったりして・・・それか、感情はあるんだけど上手に出せないだけで、その方法が判ればもっと...
初詣から帰ったら、私が向かうのは総二郎の部屋・・・・・・ちょっとドキドキしながらベッドをチラ見。その時総二郎はコートを脱いでハンガーに掛け、私に向かってトレーナーをポイッと投げてくれた。驚いてそれを受け取ると、「それに着替えろ」って・・・あの総二郎が寝るときに服をくれることがあるんだと吃驚してると、少し怒ったように言った。「西門では・・・と言うか、今でもそうしてる家もあるだろうけど、元旦は風呂に入らねぇんだよ...
藤本さんが電話を終えて戻ってきたら、今度は会社の外に出た。そこで地下の駐車場に向かい、乗せてくれたのはグレーの普通車・・・花沢さんの外車はすぐ近くに停めてあったけど、そのスペースは他の車よりも広くて、特別扱いなのがよく判った。しかもその隣にも広いスペースがあるけど空いてる。それにしてもあんなに社員がいるのに、そこまで広くない駐車場だなぁ、と見回していたら・・・「ここは花沢家の自家用車と、営業車しか停まっ...
「それではお気をつけて・・・」「また来年もよろしくお願い申しあげます」「家元、若宗匠に考三郎様、良いお年をお迎えください」・・・大晦日の21時、やっと大晦日の茶事が終わって客が帰っていった。それを見送ってから部屋に戻ると、今度こそ身内での「除夜釜」・・・ホッとした気分で親父の茶室に向かった。もともと除夜釜に客を招いて行っていた頃は、席入りが22時。待合で暖かい柚子茶を出して、露地で迎え付けで手燭の交換を行...
自分の住所欄、何処を書けばいいのか聞いた途端に眉が歪んだのは藤本さんだった。私の指導担当で花沢さんの秘書だから、ここではなんでも話していいと思ったのは間違いだったのか・・・慌てて会話をやめて、目の前のうなぎ弁当に目を向けた。そうしたら藤本さんが「○町のマンションですか?それとも✖町の方ですか?」と・・・他にも持ってたんだ?って驚いたけど、もう何も言わない。黙々と1人食べてたら、花沢さんが深く溜息ついて・・・...
14時になったら総二郎の部屋を出て、ルンルン気分で宗家に向かった。何故なら・・・祥兄ちゃんに会えるから~~~♥お兄ちゃんと別れたのは2ヶ月前で、まだそんなに経ってないけどやっぱり嬉しい♪総二郎とのことを知られるのは恥ずかしいけど、そのうち義理の妹に・・・とうとう祥兄ちゃんと家族になれるかと思ったら気分が良かった。勿論そんな私を真横で見る総二郎は機嫌が悪いけど、それを無視して私はニマニマしていた。「お前・・・...
入社手続き・・・こんな大企業だから沢山の書類を渡されたけど、そこに書く内容に困惑した。住所に給与振り込み口座、そして保証人、雇用保険被保険者証番号に基礎年金番号に源泉徴収票・・・住所不定とは書けないし、口座は持ってたけどほぼ預金がない上にバイト先を追い出された時に年金手帳と共に何処かに消えた。雇用保険には入ってなかったし、源泉徴収ももらえない・・・実にヤバい社会人だ、私。課長が「どうかしたの?」と言うけど...
29日は仕事納め・・・この日は事務所の大掃除があるんだけど、私は完全に腰が曲がってた。もちろん原因は総二郎だけど、もう誰もそんな事は聞きもしない。桃子は「そういうの、年末年始の暇な時にしてくれません?」って、酷い事を言ってたけど。それにも反論せず、ただ黙って窓を拭いた。そして定時になったらみんなが集まって1年間の労をねぎらう・・・でもって、1人ずつが来年の抱負を言うのが我が社の決まりだった。社長に始まり...
「それはご紹介します。本日より花沢物産に入社、秘書課に配属された牧野つくしさんです。専務のご友人の紹介と言うことなので、いきなり役員フロアに来られたわけですが特別扱いなどはしないようにとのことです。まぁ、異例ではありますが・・・皆さん、指導をよろしくお願いしますね」朝礼終了後に始まった秘書課長からの紹介・・・照れちゃうなぁと思うと同時に、専務の友人って誰だ?と不思議な気分。そして目の前には素敵な先輩たち...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
パーティーは無事に終了し、最後はまた家族で壇上に立った。その時にもたくさんの拍手と声援を浴び、つくしは何度も頭を下げていた。招待客が帰るときにも通路で夫婦が並んで挨拶をし、子ども達も最後まで挨拶を頑張った。だが真利愛はすでに限界で、加代がそっと双子を控え室に・・・そして最後まで残っていたのは友人3人で、スタッフ達が片付けを始めた会場の隅でネクタイを緩めていた。「・・・親父さん達、どうしてるんだ?」そう聞...
それから数日後、野田が忙しい中、休みを取っていると聞いて驚いた。庭師の師匠である前田さんに聞くと、どうやら嫁さんの病院に付きそうとのこと・・・その理由を聞いて「似合わねぇことしやがって!」と思ったが、敢えて言葉には出さず。「総二郎、支度できたよ~~」「おぉ、今行く」「ねぇ、おかしくない?これで大丈夫?」「いいんじゃね?着付けも上手くなったな」「えへへへへ///志乃さん、厳しいからね~~」今日はとあるホテ...
「・・・・・・・・・ママは・・・・・・まいあのこと・・・」「どうした?」「・・・・・・なんでもなぁ~い」「・・・・・・・・・・・・」小さな子どもの相手など苦手なはずの司・・・だが、それがつくしの子どもだからなのか、その淋しそうな表情が気になったのだろう。つくしが戻って来ていないのに、双子を連れて会場横にあるルーフトップテラスに出た。そこはさながら小さな公園のように仕立てられていて、芝生にはベンチが置かれていた。真音はそこに設置されてい...
梅雨が明けた7月後半。この頃は庭木の手入れで野田は忙しくなる。梅雨明けの前と後では天候が大きく変化し、新しい枝の生長も一段落。これからの暑さの備え、風通しをよくしたり、光がまんべんなく当たるように剪定していかなくてはならない。春に花が咲いた木には「お礼肥え」を与えたり、茶花でよく使うナツツバキにも肥料が必要。それまでよく雨が降っていたのに、急に降らなくなって水分バランスが悪くなることから、木が弱る...
招待客の視線が類の家族に集まった。何故なら、隣にいるのは1年と少し前に行われた類の結婚式とはちがう女性だから・・・だがその理由は既に知れ渡っているので、ここで改めて類が紹介するという形になっていたのだ。美央のことも「花沢家の被害者」というニュアンスで伝わっている。そしてすでに彼女も本来の家族と過ごしていることも、あの事件の時にそれとなく報道されていたため、ここでは説明しない。それよりも真利愛と一緒に...
「サッちゃ~~~~~ん!!」野田さんから話を聞いて、今サッちゃんがいるという母屋の一室にダッシュで向かった。どうやらそこで使用人さんの制服でもある夏の着物を準備しているとか♪その部屋の襖をパーンと開けると、目の前に年配の使用人さんとサッちゃんが!その顔を見ただけで嬉しくなって、「おめでとう~~~!」と言って両手を広げたら・・・「うわああああぁっ!つくし様、飛び付かないで下さいっ!!」そう言って、彼女も...
類の社長就任記念パーティー当日。類は朝早くから会場入りしていたが、つくし達は式典に参加しないのでパーティーが始まる1時間前に会場に行くことにしていた。その頃には真利愛もすっかり元気になっていたので、先日用意した可愛らしいドレスに着替えていた。勿論真音もスーツに着替えていたが、上着を着るのは窮屈だろうからと、シャツとズボン姿でソワソワしていた。普段は動きやすい格好で走り回っているので、蝶ネクタイが鬱...
確かに・・・・・・確かに、祥一郎は「妊娠している」とは言ってない。「妊娠してないよな?」と言っただけで、俺の早とちりだ。そう・・・俺が早とちり&勘違いしたまでだ💢!!でも、もう少し説明を加えてくれても良かっただろうに!しかもさっき・・・『つくしちゃんから聞くと誤解するだろうから言っておくけど』『は?』『あの子がスケート初心者だったから両手握って教えたけど、他意はないから』『・・・・・・・・・』『スケート靴履かせるときも...
類が帰宅したのは21時。すぐに使用人から真利愛のことを聞き、部屋に入る前に加代のところに行くと、そこでは真音がウトウトしていた。スーツのまま真音を抱き上げると、安心したのかすぐに肩に顔を乗せて目を閉じる真音・・・類はそのまま夕食後の様子を聞くこととなった。「じゃあつくしが子供部屋に?」「はい、付き添うと仰いまして・・・風邪かどうかもわかりませんから、取り敢えず真音様を私の部屋でお預かりしましたの」「主治...
「・・・・・・・・・総二郎・・・お前、ちょっと・・・」「つくしちゃんは大丈夫なの?!」祥一郎が何か言い掛けた時、同時に特別室のドアが開いて、お袋が飛び込んで来た。しかも付き人が誰もいない・・・家元夫人が1人で外出なんて普段なら有り得ないが、それほどこの人もつくしと「孫」が心配だったんだろうと・・・俺はベッドに横たわるつくしの手を握ったままで、お袋はその手前にいた祥一郎を突き飛ばす勢いで俺の横に走ってきた。そしてつくし...
「こら、真音!遊び終わったらおもちゃは片付けなさいって言ってるよね?」「うわ!ママがおこったぁ~~~~!」「もうっ!人に任せちゃダメなのよ?そんな事するならもうおもちゃで遊ばせないんだから!」「やだやだぁ~~~!」「はい、じゃあ片付けて。いくらあなた達のプレイルームだからって、散らかしたままはダメなのよ?」「・・・・・・おこりんぼ!」「なんですって?!」「うわああぁ、またおこる~~~~っ!!」1階奥のプ...
『つくしちゃんがスケート場で倒れたんだ!今から救急車で西門の主治医の病院に運ぶから、お前もすぐに来い!』つくしが・・・・・・倒れた?一瞬何のことか判らず、思考回路停止・・・でも祥一郎は冗談を言うヤツではないし、その声はマジだった。しかも電話の向こうから聞こえるのは『返事はありません!』とか『病院まで何分ですか?』とか・・・そんな雑音が耳に入った途端に背中がゾクッとした。『お連れさんですか?救急車に同乗願います...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...