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sirosorajpnonikki’s blog https://sirosorajpnonikki.hatenablog.com/

主に純文学小説を最近は載せています。

連載的でもありますが、大体読みきり作品(一話で完結的な意味を持つ)が多いです。

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2017/01/12

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  • Sad Satan

    彼女と別れて、4年半が過ぎた頃のことだった。同僚の送別会のあと、ウェイターの男はタクシーを呼んだ。酷くお酒を飲みすぎてしまったからである。皆、帰ったあとの薄暗いカフェにはウェイターの男の姿だけが窓から見える。ソファーの席に深く腰を沈めて目を瞑ってタクシーを待っている。時間は午前の二時半になろうとしている。車が店の前に止まる音が聞こえ、ウェイターの男は店の灯りを消して店を出て、鍵を閉めるとタクシーに乗り込んだ。タクシーの運転手にマンションの場所を教える。すると少しの変な沈黙が過ぎた。だがそのあと車は何事もなく発車した。ウェイターの男は安心して重い瞼をまた閉じた。いつから雨が降りだしてきたのだろう…

  • ミルク先生とシスル

    『わたしは以前、数ヵ月間だけ、シスルという生き物を飼っていたことがある。』 教室の窓から、肌寒い春の風がシスルの真っ直ぐな少し伸びた前髪を揺らし、ミルク先生は静かに目を瞑る。シスルは今日も、大好きなミルク先生に自作の詩を放課後に読み聴かせている。最後まで読み終わると、シスルはミルク先生の目をじっと見つめて静かに立っている。そして彼は彼女に向かって言った。「先生、終わったよ。」すると彼女は目を開けて唸った。「う~ん、今日の詩も難解だ。でもシスルという名前が出てきたのは初めてだね。」ミルク先生はそう少しいつものように困った顔で薄く笑って言った。十四歳の彼は、この時四十四歳の彼女に向かってこう答えた…

  • 暗灯

    今、きみを知るとき。きみが生まれる。宇宙の、見えない場所で。きみには未来もなく。過去もなく。今もない。きみは今も、いない。きみには夢もなく。世界もなく。星もない。きみは今も、観ない。今、時が過ぎ去るとき。きみが生まれる。闇の底の、独りの宇宙で。静かに一つの生命が、消滅してゆく。その姿を、今きみは見ている。安らかにきみの星が、滅びゆく。神はきみを、ゆっくりと、忘れゆく。神はもう、きみを作らない。君はもう、作られない。かつて在ったものだけを、きみと呼ぶ。かつて在ったものは、きみのすべて。神はもう、きみを観ない。同じものは、作られない。かつて在ったすべてを、神はきみと呼ぶ。未来に在るすべてを、きみと…

  • ひよこまめのぽーぽー

    (この行を消して、ここに「迷い」と「決断」について書いてください) こう、俺の部屋の窓から、俺は遠くを観てるとするやんか。 すると、あの長い、直立して立っている棒はなんなんだと気づくんだね。 あれあんな棒、立ってたっけ。 で、あれはなんなんだと、俺はじっと見つめて、考えるんだ。 すると、約一分くらい経ったあとに、あああれは、あれは。 避雷針やんけ。俺はそれにやっと気づくのだけれども。 その気づくまでの約一分間、俺は別のことを想像しているんだ。 あれは人間が、天から降ってきて突き刺さるために、あすこに生えておるのだと。 で、その為に、あれはあすこに生えているというのに、何故。 天からヒトが降って…

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