Sad Satan
彼女と別れて、4年半が過ぎた頃のことだった。同僚の送別会のあと、ウェイターの男はタクシーを呼んだ。酷くお酒を飲みすぎてしまったからである。皆、帰ったあとの薄暗いカフェにはウェイターの男の姿だけが窓から見える。ソファーの席に深く腰を沈めて目を瞑ってタクシーを待っている。時間は午前の二時半になろうとしている。車が店の前に止まる音が聞こえ、ウェイターの男は店の灯りを消して店を出て、鍵を閉めるとタクシーに乗り込んだ。タクシーの運転手にマンションの場所を教える。すると少しの変な沈黙が過ぎた。だがそのあと車は何事もなく発車した。ウェイターの男は安心して重い瞼をまた閉じた。いつから雨が降りだしてきたのだろう…
2019/06/20 01:46