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2016/02/26

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  • 場の空気

    「…あれが東郷社長とその夫人。その後ろが娘の智花だ。」いつの間にか現れた総二郎の声に目もくれず、小さく頷く。俺自身に面識はないが、父さんたちの厳しい表情を見ればそれが誰か聞くまでもない。「どうする?」「別に。こっちから出向く必要ないでしょ。」「まぁな。けど…こっちに来んぞ。」「ん。つくし…絶対離れないで。」「…わかった。」繋いでいた手を離し、そっと腰へと回し自分の方へと軽く引き寄せる。触れたところから...

  • 初釜

    今日から再び『波の悪戯』の更新を再開します。相変わらずな亀更新ですが、よかったらお付き合いくださいませ。☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆初釜当日。類の手を取って降り立ったそこは、数日前に訪れた場所とは思えないほど多くの人で賑わっていた。広々とした日本庭園に手入れの行き届いた枯山水は見事で、思わず溜息が出る。「…すごいね。」「この前の方がゆっくり見られたでしょ?」「うん…でも、何度見てもすごい…」数日...

  • Be together【続編】 ~幸せのカタチ~

    それから10年の時間が経った。類とつくしは30歳を過ぎてもなお、変わらず互いへの愛情を深め合っている。変わったことといえば、家族が増えたこと。結婚前の約束通り、二人は3女3男の子供に恵まれた。長女の菫(すみれ)は結婚して半年後に生まれた。類譲りの薄茶色の瞳。少しお転婆なところはつくし譲り。英徳の小学部に通い、友達も多く社交的。部屋で本を読むよりも外で走り回ることを好み、幼少の頃から周囲の大人たちをあた...

  • Be together【続編】 ~望む場所~

    「社長!これって…」ノックもそこそこに勢いよく開いたドアに、社長である快の妻、茜が顔を上げた。その表情はつくしの訪室をあたかも知っていたかのようで、然して驚いた風もない。「なぁに?朝から騒々しいわね。」「『なぁに?』じゃないですっ! 何ですか、これっ!」「ああ、それ?本社の社長からの指示よ。」「そうでしょうけどっ! だからって、何で異動先が…」「だって、結婚するんでしょう? 今更驚くことでもないじゃ...

  • Be together【続編】 ~着々と~

    嵐の去った週明け。カーテンの隙間から見える秋晴れの空に、つくしの溜息が漏れる。「快には連絡しといたから、ゆっくり休みな。」「むぅ…何で類はそんなに元気なのよ…」不満を漏らす唇に小さくキスを落とすと、類はベッドを降り、立ち上がった。それを見上げるつくしは、未だベッドの中の住人と化している。「まぁ…ちょっとヤリすぎたとは思ってるよ。 でも煽ったのはつくしだからね?」「煽ってなんか…っ!」「じゃあ、嫌だった...

  • Be together【続編】 ~幸せな結末~

    つくしを促して向かった先に、その足が止まる。日常的に見慣れたその場所でも、この場に類と二人で立つのは些か羞恥が上回る。「ちょ…類、ここ…」「ん。まずはつくしに付いた匂い消さないと。」「…へ?」「抱きしめられたでしょ?あいつに。」「あ…」瞬間的に思い出した感触につくしの視線が足元へ落ちる。不可抗力だったとはいえ、あの時感じたのは懐かしさ。一瞬過った記憶がつくしの抵抗を遅らせたのも事実だった。ホッとして、...

  • Be together【続編】 ~それぞれの夜~

    「チッ…何なんだよ、あいつ…」悔し紛れの独白を零しながら戻ってきた司に、ククッと笑う声が向けられる。その主に一瞥をくれると、もう一度『チッ』と舌打ちをする。「よかったな、玉砕できて。」「はぁ?何言ってんだ!俺は…」「だから言っただろ?勝算ないって。 ま、これでまた仕事に励めんだろ。」「うっせ!…あぁぁぁ!くそっ! 快っ!飲みに行くぞ!」「へいへい。そう言うと思って、あきらと総二郎も呼んどいた。 今日は...

  • Be together【続編】 ~ぶつかる想い~

    一気に駆け上がった階段の先から、よく見知った男がまるで鬼のような形相で歩いてくる。その背後にチラリと見えたのは、見慣れたエプロンの裾。さっきから聞こえていた声とその様子に、類の怒りは頂点に達した。「…いい加減にしなよ、司。」自分でも驚くほど、その声は低く、温度を持たない。心は怒りでいっぱいなのに、それが却って、類を冷静にさせた。「…類、てめぇ…」「自分が何してるのか、わかってる?」「あん?そんなの、...

  • Be together【続編】 ~待ち人、来る~

    不穏な雲行きに増えた交通量が長い車列を作る。その隙を縫うように何とか先を急ぐが、そのスピードは思うように上がらない。「チッ!」思わず漏れた舌打ちが、類の心の焦りを物語る。司の、つくしへの思い入れはある意味異常にも感じる。『俺に手に入れられない物はない』と豪語する司だ。もしつくしが嫌だと言っても、力ずくで連れ去ってしまうかもしれない。早く…早く、行かなきゃ!またつくしを失うなんて、考えたくもない!運...

  • Be together【続編】 ~怒りの矛先~

    司の腕の中に閉じ込められながらも、つくしが想うのは類のことばかり。こんなところを類には見られたくない。なのに、心は類を求め、声にならない助けを叫ぶ。早く…早く、帰ってきてよ!司と別れたあの日、類の胸を借りて号泣したのを思い出す。あの時は辛くて、悲しくて。本当に涙が枯れるんじゃないかってくらい、思いっきり泣いた。そんなつくしを、類はただ黙って抱きしめた。類がいてくれたから、今のあたしがいる。なのに、...

  • Be together【続編】 ~睨み合い~

    終業時間間際、思いもよらない電話に類の表情が曇る。『Takamuraの受付担当の小菅と申します。社長より至急の伝言が…』快の会社に司が乗り込んできた、という一報。それが意味するものが何なのか、わからないはずはない。懐かしい再会を果たし、昔のよしみであきらと総二郎とも連絡を取っていた。司はずっと忙しく世界各地を飛び回っていて、あきらでさえ連絡を取ることができなかった。が、たまたま繋がった通話で話した、快との...

  • Be together【続編】 ~嵐のような男~

    時間は1時間ほど前に遡る。一日の仕事を終え、帰宅の途に着く人波の中、ひと際異彩を放つ男がエントランスへと姿を見せた。周囲よりも頭一つ飛び出た高身長に高級なスーツを纏い、威風堂々とした風格に誰もが恐れ戦く。「社長を呼べ。」あくまでも高圧的な物言いに、受付担当者はビクッと肩を揺らし、恐る恐る声を発した。「し、失礼ですが、お名前を…」「あ?てめぇ、俺のこと、知らねぇのか?」「い、いえ…念のため、確認を…」「...

  • Be together【続編】 ~突然の来訪者~

    平穏な日常――それは、いつ壊れるとも限らない、砂の城。誰が、いつ、何の目的を持って、壊すのか。誰も知らない。しかし、それは偶然ではない、必然。愛する者との絆を試される、刹那。一瞬か。永遠か。近付く気配は不穏な色を纏って、忍び寄る――。***類とつくしが想いを通わせて一年。この日も、あの日と同じ、灰色の重たい雲が空を覆い尽くしていた。物凄いスピードで流れる雲間に、時折チカチカと閃光が走る。それはまるでこれ...

  • お礼とコメ返とお知らせ

    こんにちは。お越しいただき、ありがとうございます♪『Be together』お楽しみいただけましたでしょうか?ちょっと前に書いたお話だったので、いろいろアレな感じでお恥ずかしいかぎりです。たくさんの拍手、それにコメントをくださった方々、本当にありがとうございます。早々にコメントを返そうと思ったのですが、リア事情で時間がなくて遅くなってしまったこと、お許しください。最初、類ではなく快とつくしの絡みで始まったこの...

  • Be together ~種明かし~

    そして、その翌日。類の出勤を見送り、つくしも職場へと向かう。女性ばかりの職場はいつも賑やかで、笑顔が絶えない。しかし、その日は何だか少し空気が変だった。「何かあったんですか?」隣のデスクのスタッフに声を掛けると。「今日は本社のお偉いさんが来るんですって。」「…そうなんですか。」緊張、というよりは、どちらかというと色めき立ってる感じで、何だか落ち着かない。とりあえず給湯室でお茶の支度を、と立ち上がっ...

  • Be together ~甘い時間~

    長年の両片想いを実らせた類とつくしは、離れ難い気持ちのまま、動くことができずにいた。が、そんな二人にも容赦なく雨が襲う。「あ、雨…」「ん、帰ろ。」「うん。」類はつくしの手を取り、来た道を戻る。その先には見覚えのあるスポーツカー。「自分で運転してきたの?」「そうだけど?」「いいの?そんなことして。」「休みの日くらい、好きな所に行きたいからね。」「そっか。」フフっとつくしが笑った、その瞬間。ザーッ…「う...

  • Be together ~告げた想い~

    一年半ぶりの再会は突如として訪れ、快の心を浮き立たせた。が、それと同時に、目の前に現れた男によってその想いは打ち砕かれる。知ってたさ…お前の気持ちなんてよ。あの日掛かってきた電話。はっきりと言わなくてもその声から伝わってきた、この女への想い。…ったく、面倒な女と出会っちまったな。「る、い…?」「牧野!」腕の中の華奢な肩がピクッと揺れ、小さく震えた声が類を呼ぶ。ゆっくりと向けられた視線の先に立つのは、...

  • Be together ~突然の再会~

    それから1年以上の月日が経った。つくしは無事大学を卒業し、4月から輸入雑貨を取り扱う会社へと就職した。規模としてはまだまだ小さい、設立から1年しか経っていない会社。社員の大半が女性で、主婦やママさんも多く、家庭的な雰囲気で働きやすい。窓から見える隣の建物は保育施設になっていて、いつでも社員や近所の子供たちの笑い声が聞こえる。「牧野さん、お昼にしましょ。」「あ、はい!」「今日は子供たちと一緒に近所の...

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